遠い日の思い出

2019/05/15 20:12 登録: えっちな名無しさん

あれは、確か1990年初期だったと思う
俺は、研究所の仕事が終わってから神奈川某駅の裏道に車を止めて、ぶらぶらと歩いていた
ふと、横目で視界に入った情景に違和感を感じ、行き過ぎた道を戻った

そこには、みちばたで立ちつくす少年と、うずくまる少女
そして、タイヤのフレームがゆがんで横たわる自転車
少女を見ると、足がぽっきり折れて、痛々しく不自然な方向に向いている
少年の自転車が路地に入ろうとして、出会い頭に少女と衝突したのだろう
俺はあわてて、近くの店の人に救急車を呼んでもらった

その後、俺は言葉をかけることもできずに、ただ少年のそばにしゃがんでいた
本当は、少女の手を握って、励ましてあげればいいのに、いろいろ考えてしまってできない
その時、ひとりのOLが状況に気づいて、少女に寄り添った
俺は少しほっとした

待つ時間は、とても短かったように感じた
やがて、サイレンとともに救急車が到着して、少女と少年は病院へ向かった
俺とOLは、救急隊員に名前と電話番号を聞かれた
たぶん、少女と少年に意見の食い違いが出た場合、聞かれるのではと思ったが、その後問い合わせはなかった
俺とOLは救急車を見送ると、会釈をして別れた

あの後、少年は親に叱られて、警察には厳重に注意されただろう
少年には、忘れることのできない苦い経験だったに違いない
けれど、この経験を教訓に、慎重に生きていると信じてる

ちなみに、そのOLは今の俺の嫁ではないし、その後一度も会っていない
また、その少女と少年が結婚したのかは、わからない

出典:a
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