ばあちゃん (泣ける体験談) 15793回

2004/09/12 23:49┃登録者:名無しさん┃作者:名無しの作者
糖尿病を患ってて、目が見えなかった、ばあちゃん。 

一番家が近くて、よく遊びに来る私を随分可愛がってくれた。 
思えば、小さい頃の記憶は殆どばあちゃんと一緒に居た気がする。 

一緒に買い物行ったり、散歩したり。だけど、ばぁちゃんの体が弱っているのは子供だった私でもわかった。 

高校に入ると、友達と遊ぶほうが多くなっていて、ばあちゃんの家に行くことが少なくなっていた。 

たまに行くと、「さぁちゃんかい?」と弱々しい声で反応してた。 
もう、声だけじゃ、私だってわからなくなっていた。 
「そうだよ、さぁちゃんだよ。ばーちゃん、散歩行こうかー?」 
手を取って、散歩に行ったけれど、もう昔歩いた場所まで、ばぁちゃんは歩けなくなっていた。 

それから、あまりばあちゃんの家に行くことは無くなってた。 

暫くして、母さんから「ばぁちゃんがボケちゃったよ」と聞いた。 
誰が誰だか、わからないんだって。 私のことも、わからなくなってるらしい。なんとなく、覚悟は出来ていた。けれど、悲しかった。 


それから。半年くらい過ぎた頃。 
ばぁちゃんが死んだっていう報せが届いた。 
泣くこともなく、通夜、葬式が終わった。 



葬式が済んだあと、私は叔父に呼び出された。 
叔父はばぁちゃん達と最後まで暮らしていた人だ。 

「箪笥の中にな、『さぁちゃんの』っていう封筒が入ってたんだよ。」 
そう言って、私に封筒を手渡した。

ばぁちゃんの字で、"さぁちゃんの"って書いてあった。中身は、通帳だった。私名義の。二十万ほどの預金が入っていた。働いてないばぁちゃんが、こつこつ貯めたお金。 

そういえば、昔、ばあちゃんが話していた。 
「さぁちゃんが結婚するときのために、ばーちゃん頑張ってるからね。」 
「だから、ばぁちゃんにも孫抱かせてね。」 

その夜、初めて泣いた。 

ばぁちゃん。 
あれから5年も経っちゃったけど、さぁちゃん、来年結婚するよ。 
孫抱かせてやれなくてごめんね。 

でも、喜んでくれるよね。

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