俺と嫁の話を聞いてください。 (エロくない体験談) 83409回

2008/01/15 13:32┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日:2008/01/14(月) 22:01:14.51 ID:cUBy9Yi/O

半分の月がのぼる空という本を貸してもらって読んだら昔を思い出したから書いてみる

携帯厨だけどごめん
長くなるかもしれない…



今から約10年前の話。

1998年、俺は高校2年と3年の間の春休みに、ある大学病院に入院した。
特に重い病気でもなくただの難治性潰瘍治療のための入院だったから
食事制限や運動制限もあるわけじゃなくてかなり自由な入院生活を送れることもあって
半分楽しんでたのも正直なところ。
ただ、俺の通ってた高校が学区トップの進学校だったから宿題の量が半端無かったから
病院でやらなくちゃいけなかった。
夜の方が勉強はかどるんだけども9時消灯だから病室ではできない。
だから俺は地下の自販機コーナーですることにした。

昼間は売店と食堂も隣接してることもあって活気(?)のあるそこでも、
夜になると電気も落ちて自販機の明かりだけになる。その雰囲気も気に入った。
勉強には少々暗いけどそこがいいと思った。

そこが始まりだった。


夜9時くらいに降りてきて11時くらいに戻る。
そんな感じで2、3日たった時、
いつも俺の10mくらい横の椅子に座って飲み物を飲みながらずっと座ってる女の子がいることに気付いた。
背は小さくて140cmくらいで小学生か中学生かなと思った。
いつも俺が勉強初めて10分くらいして降りてきて、俺が帰る時もまだそこにいた。
またそれから数日が過ぎた日、なんか気になって話し掛けてみた。
俺「いつも何してるの?」
女の子「病室にいるのが嫌だからできるだけここにいるの。でも昼間は出さしてくれないから…。
君もいつもいるよね」
俺「この雰囲気が気に入ってね。まぁ本当は宿題しないといけないからなんだけど」
女の子「勉強できるの?」
俺「まぁ…一応○○高の中くらいにはいるんだけどさ…」
女の子「賢いみたいね」
俺「君は…中学生?」
女の子「小さいけどこれでも高2。来年3年。」
俺「……マジかwww俺と一緒www」

はっきりとは覚えては無いがだいたいこんな感じだったと思う。
何が驚いたってやっぱ年齢だ。どう上に見ても中3くらいだったからさ。
でもなんか空気は俺より大人だったの覚えてる。


その日からなんか自然に俺が勉強してる横にその子が座ってるような構図になった。
ありがちな話だがおれはいつのまにかその子を好きになってた。
別に俺はロリコンじゃないんだが。

「なんで入院してんの?」

ちょっと聞いてみた。
返答は素っ気なかった。

「心臓の手術しないといけないから。」

正直大学病院に入院してんだから何かあるかなーと思ってたんだが、
ちょっと動揺した。
高校もほとんど行けずに病院暮しなんだそうだ。


彼女の病気は大動脈弁狭窄症だった。
小さい頃から何度か手術したけど、
またしないといけなくなったらしい。

(彼女やら女の子やらややこしいから今から絵梨でいこうと思う)

絵梨「今回は死ぬかもね」

これにはかなり動揺した。
なんというかもう達観した感じの言い方で、
悲しくなった。
でもその時は俺は未熟だったし何も言えなかった。

絵梨「明後日だから。」

そう言って珍しく先に帰っていった。

ェレベーターの停まった階は3階。
胸部心臓外科病棟。
なんか泣きそうになった。


次の日は一日中悩んだ。
絵梨が居なくなることが恐かった。
たった2週間くらい一緒にいたくらいなのにこんなにも好きになってたのかな
と今思えば恥ずかしながら考えてた。

その日の夜、
俺は絵梨に告白するつもりでいた。
万一居なくなる前に伝えたかったから。
けど来なかった。

俺は焦った。
結局次の日の朝に3階に行った。
でも看護婦に手術直前だから会えないって言われた。

俺は看護婦さんからもらったメモ紙に手紙を書いた。
好きだ、って内容を。
見られたら恥ずかしいから厳重に折った。
それを渡してくれるように頼んだ。


それから何日も一人で地下に居た。
宿題は終わってて何もすることがなかったけど
以前の絵梨と同じように飲み物飲みながら座ってた。

結果は恐くて聞けなかったし、
聞いても教えてくれなかったと思う。
だからそうやって待つしかなかった。

結論から言うと手術は成功した。
手術から5日くらいして
車椅子で地下に看護婦さんと降りてきた時は正直泣いた。
後から聞いた話だと、絵梨が無理を言って連れてきてもらったそうだ。
そして何も言わないまま手紙をくれただけで帰った。


その手紙探したらあったから内容書くわ。


「気持ち、受け取りました。
初めて告白されました。
今まで、この容姿だから浮いてたし
私から避けてたのもあって、
そんなこと考えたこともありませんでした。


初めて手術が恐くなりました。
初めて死にたくないと思いました。

けどこうやってまだしぶとく生きてます。
麻酔からさめた時は本当にうれしかった。

でも私は長く生きられない。
明日死ぬかもしれない。

○○君なら賢いからそれも分かってると思うけれど。

もしそれでもいいのならよろしくお願いします。



あと、恥ずかしいから私がまた地下に行ったらいつも通りでいて。」


手紙読んだ後は嬉しくて、
んでもって口調が違いすぎて可笑しかったのを覚えてる。


その頃から、一つ俺の中に考えができてきていた。

若さからくる無謀とも言うべきか、
「医者になろう。絵梨を治そう」だった。

まだ進路を決め切れてなかったし、
幸いにも理系にいた。
けどいくら進学校だからといって、それまで真面目にしてなかった俺にとっては
医学部は雲を掴む位置にあった。


次の日から猛勉強しはじめた。
昼間も夜も。
絵梨は体調が優れなくて地下に来ることはできなかったけど、
俺は退院するまで地下で勉強し続けた。

始業式から10日ほど経って退院する時には
初めて絵梨の病室に行って、見舞いに来ることを約束した。

学校の授業も真面目に聞くようになったし、
きちんと予習復習もしだした。
そして毎日5時間勉強するように努めた。
土曜は出来るかぎり絵梨に会いに行く。
そんな生活が続いた。


周りの友達が引くくらい、
以前の俺とは違ってた。
人は目標ができたらこんなに頑張れるのかと思った。

でもそれまでのツケは大きい。
10月の時点でもE判定。
担任からは「3浪くらいする気か」って言われた。
悔しかった。

でも土曜に絵梨に会うたびにその週の疲れがリセットされる気がした。
模試とかで会えないと辛かった。
ちなみに、絵梨は12月頃に一時自宅療養に入った。
絵梨の家と俺の家は比較的近くかったが
俺が忙しかったからあまり会えなかった。


受かった。
地方駅弁医学部(つまり、絵梨の居た病院の医学部)だったし、
後から公表された最低点で引っ掛かってた。
ドラマみたいだが、本当に奇跡だとしか思えない。

実は俺受かるまでは絵梨に進路は内緒にしてたんだけど、
言ったら凄く喜んでくれた。


ちなみに、この時初めてキスした


大学生活は大変だったけど充実してた。
体調崩して入院してる絵梨のところに講義の間に会いに行けるし、
一緒に昼ご飯も食べれたし、
車椅子で散歩にも行けたりした。

何度か絵梨が危ない時もあったがそれも乗り越えてこれた。


その頃は絵梨の背も150cmくらいで
やっとつるぺたじゃ無くなってきた感じだった。
けどやっぱり幼く見えるからなんか俺が親戚のお兄ちゃんみたいに周りからは見えてたかもしれない。


付き合い初めてから4年。

俺が3回生の終わりの頃に
突然絵梨がこんなことを言いだした。


絵梨「ねぇ……いつまで私と一緒にいるの…?」
俺「え、どういうこと?」
絵梨「だって私いつ死ぬかも分からないし、絶対○○に迷惑かけるよ」

この辺りから絵梨は泣き始めた。

俺「それは覚悟してるけど…」
絵梨「……それに………それに私…実はターナー症候群なの……!」



低能でも仮にも医学生だった俺はそれくらいは知っていた。
簡単に説明すると、

人間の性決定は2本の染色体で決定されていて、
男はXY、女はXXで決定される。
けどターナー症候群は女性なんだが染色体をX一本しか持ってない。

絵梨の場合はモザイクと言われる、
ターナー症候群独特の特徴がほとんど無いし
外見も普通なタイプだった。

絵梨の場合の症状としては、
低身長・二次性徴が見られない。
小さかったのはこの為だった。

そして合併症として大動脈弁狭窄症。
染色体異常の病気には心臓病の合併症が多い。

そして、卵子が作れない。


絵梨「その……子供……も産めないし……」
俺「うん…まあ驚いたけど…
でも俺は医者になろうと思った時からずっと絵梨と一緒にいようと思ってたから」
絵梨「……それって……」
俺「…うあ、思いがけずプロポーズになってしまったよーはずかしー」
絵梨「本当に……いいの?」
俺「俺はな。
絵梨の気持ち次第。
まぁすぐにとはいかないな、卒業しないと。」

絵梨はそのまま泣いて俺が抱き抱えて病室まで連れ戻したよ。


この辺りの会話は鮮明に覚えてるんだよなあ



  セクロスは心臓に負担かかるからしてません。

  あー、うん童貞。

  でももういいと思ってるよ。
  絵梨と一緒にいようと思ったらあらがえない事実だし

  ただ、卵子までないのは正直ショックだったのは認める



俺が6回生になっても絵梨の心臓は頑張っていた。
でも一度大きな発作がくると危ない状況にもあった。
俺は胸部心臓外科教室に入って学んだ。
そして無事卒業。国試も通った。

卒業式の翌日に絵梨の両親に話をしに行った。
絵梨の親は最初反対した。
これから短いのに俺の荷物になります、とか言われたけども粘った。
「でも俺は絵梨と一緒にいたいです。」
とかなんとか色々言った気がする。
勝った。二人で泣いた。

俺の親は片親でかーちゃんだけだったがあっさり了承。
「○○がその人がいいと思ったのならそれが正しいんでしょ」
とか言われた。



給料はほとんど医療費に回るため、結婚式は挙げれなかった。
けど幸せだった。
絵梨はあまり無理はできないけど
少しの家事くらいならできた。

でもやはり入院することの方が多かったが、
俺は研修医として大学病院にいたから空き時間にはいつも会えた。
研修医の時は大学より大変だったけど頑張れた。

研修医2年目の夏からは絵梨の体調も芳しく、
初めて家で年を越せた。
病院の近くの狭いアパートだったけど、
家に帰ったら明かりが着いてるっていいなって実感した。



けど3月、
あと少しで研修医も終わるという時に絵梨が家で倒れた。
俺はちょうど回診中だったけど、
絵梨の主治医つまり俺の上司と一緒に救急に駆け付けた。

緊急手術が必要だった。
身内切りはできないから俺は何時間も手術室の前で待ち続けた。


絵梨は持ちこたえた。
でももう病院からは離れられない体になってしまっていた。
色んな文献や論文を漁ってみたがどうしようも無かったし、
最高の手術をしてもいつまで保つかは分からない。
二人で話し合った結果、
最期までこの二人の過ごした病院でいることに決めた。

「ごめんね、新婚旅行にも行けなくなっちゃったね」そう言われて、
「行かなくてもいいさ、
俺は県外に出たくないしね」

強がりを言ってみた。



絵梨はいつもと同じ病室に、
毎日同じパジャマでいた。

胸部心臓外科の先生方や
その病棟の看護婦さん達も俺の嫁だと知ってるから、
みんながいつも俺に半分同情で半分尊敬のことばをくれた。


11月になって状態が悪化して絵梨はICUに入った。
それまでの経験や学術上、
こういった患者がICUから生きて出てくることがないというのを知っていた。

主治医も俺と話をする度に俺を慰めてくれるようになっていた。

俺の無力を実感して泣いた。
絵梨を治す為に医者になったのに

全然目標は達成できなさそうだった。



俺はできるだけ絵梨と居たくて、休職した。
新米医師は物凄くやることが多すぎるから。

休職してるのに病院でいる奇妙な生活だ。

絵梨はあまり喋らなかったけれど俺がいる時は手を握ってくれてた。



そして先月、俺とICUの機械に囲まれながら亡くなった。
kwskは書きたくない。

覚悟はしていたけれどやはりいざとなると辛すぎて
数日間は廃人状態だった。
葬式もあまり覚えてない。

亡くなってから1週間くらい経って、
上司から絵梨の手紙を渡された。
死んだら渡してくれるよう頼まれていたそうだ。


「今まで本当にありがとうございました。
これを読みながら○○はどんな顔をしてるかな。
やっぱり悲しい顔かな。
直接言うのはやっぱり恥ずかしいのであの時のように手紙です。
ごめんね。

私たちが初めて出会って、
過ごしてきたこの病院で一生を終えれるのはある意味幸せと言えるかもしれません。
○○の日々頑張ってくれている姿をもう見られなくなると思うととても残念です。
あの時の○○の手紙で私は生きる嬉しさを知った気がします。
そしてその嬉しさを○○と共有できて幸せでした。
こんな私を妻にしてくれてありがとう。
私が遺せるのはこんな手紙だけだけど、たまには私を思い出してください。

○○ならいいお医者さんになれると思う。頑張って。

最後に、私はこれからもずっと○○を好きでいます。
これは決定事項です。

でもまた他にいい人が見つかれば、
その人を大事にしてあげてください。

最愛の○○へ

絵梨」

手紙見てやっぱり泣いた。
今も泣きまくり。もう立ち直れたと思ったんだが




そんなわけで俺の話は終わり。
また明日も病院に行く。
絵梨の居た病棟に行くのにも慣れてきた。

俺がもっと時間に余裕ができれば養子でもとろうかなと考えてる。
母親がいないのは将来辛いかもしれないけど、俺は子供にこの話ができたらなと思っている。

そして絶対俺は絵梨を忘れないだろう。

ちなみに、半分の月がのぼる空は患者の女の子が貸してくれたんだよな。
「病院の話だから」って。
俺と絵梨のことはなんも知らないのに、なんか運命的なのを感じたよ。

半分の月がのぼる空を読んでみて
なんか込み上げてきてしまったからこんなの書いてしまった。すまない。

あ、半分の月がのぼる空と俺らはまったく関係ありません。



みんなも、自分の大切な人を大事にしてあげてください、本当に。
いつかは別れが来るけれど、
それまでが楽しめたらいいと思う。




寝れるかと思ったけど手紙見てしまってまた泣いてきてしまった

10年間本当に幸せだったよ



やっと落ち着いた。
こんなに泣いたのはあれ以来かもしれん。

やっぱり失ったものは還ってはこないけど、
たくさんのものを残してくれたよ

やっと寝れそうだから寝てみる。






久々に夢を見ました。
寝る前に泣きすぎたからな。
絵梨と美術館に行ってる夢でした。
実際に一緒に行ったことはないけど…

あーまた泣けてきたけど
もうそろそろ出勤だから頑張るわ。
本貸してくれた子にも「泣いたわ」って言おうと思う。

行ってきます





出典:俺と嫁の話を聞いてください。[ニュー速VIP]
リンク:http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1200315674/
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