力になれなくてゴメンね…。 (泣ける体験談) 23180回

2004/11/11 21:14┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
毎朝同じ電車に乗るK女の2人。
1人はキツイ感じだけど、美人だったから俺の学校でも評判だった。
友人は、その美人を見るために、わざわざ遠回りして同じ電車に乗ってくるくらいの美人。
だけど、俺は美人よりも、もう1人の方が気になっていた。
美人でも可愛いわけでもなかったけど、何か大人しい感じで、守ってあげたくなるような子だった。
その子と美人は全くタイプが違うのに、いつも一緒で仲良さそうだった。
「むかし、ココまで探検に来たことあったよね〜。」
などと話していたのを耳にした事があったので、おそらく幼馴染なのであろう。
大人しい子が香奈(仮名)美人は明子(仮名)と、2人の会話で知った。
俺は、いつも仲良さげな2人を見て暖かい気持ちになった。

1年のバレンタインに、いつも通り俺は電車に乗った。
けれど、いつもと違ったのは例の2人が乗っていなかったのだ。
どうかしたのかな?と思ったが、そこまで気にはしてなかった。
俺の高校の駅に着いて、俺がホームに下りると同時に、「あの…。」と、声をかけられた。
いつも聞いてた声なので、あの大人しい子だと分かった。
俺が振り返ると、香奈は赤い顔で俯いていた。
さすがに俺も鈍感じゃないから、今日が何の日かも分かってたし、これから渡される物も分かった。
香奈は手の平に乗るくらい小さい箱を、俺に差し出してきた。
「ずっと好きでした…。」
すっごく小さい声で、雑踏とか駅員のアナウンスで聞き取りにくかったけど、確かに聞こえた。
俺は告白されるなんて初めてだし、何よりも気になってる子からだから、
舞い上がりすぎて何も言えず箱を受け取った。
香奈は、頭を下げると何も言わず電車に飛び乗った。

初めての告白も、チョコも嬉しくて嬉しくて。
俺は噛み締めるように食べた。
明日会ったら、俺も好きだと伝えようと思った。

次の日、俺は勇んで電車に乗った。
伝えなきゃ!!そう思って、電車を見渡した。
香奈は、いつも通りの場所に明子と立っていた。
香奈も俺を意識していたのか、視線がぶつかった。
その時、何でか分からないけど無性に恥ずかしくなってきた。
俺は顔が熱くなるのを感じて、とっさに香奈から視線を外すと俯いた。
明日言おう…。心の中で好きだと呟いた。

俺は意気地なしだ。
今日こそは…今日こそは…と思っているうちに、言うタイミングを失ってしまった。
言えないまま2年の5月になろうとしていた。
心の中では好きだと言えても、口に出して言う事が出来なかった。
4月の中旬頃に、本当に本当に言おうと思ったけど、
まだ俺の事好きでいてくれるのかな…?と、そんな思いが過ぎった。
それから、その事が不安で余計に言えなくなってしまった。
そんな不安を抱えてる時に、ある噂を耳にした。
香奈が同じクラスの女の男を寝取った。
そんな噂を耳にして、俺はアホだと思うけど信じてしまった。

その噂を耳にした頃から、香奈と明子の様子も変だった。
いつも楽しそうに話していた2人だったのに、何も話さず、ただ一緒にいるだけだった。
夏の終わりには、2人は離れて電車に乗っていた。
そして香奈の表情は、日に日に暗くなっている気がした。
俺は心配で話しかけようと思ったが、俺の中で香奈は男を寝取るような女だった。

2年のバレンタインが、あと一ヶ月に迫った。
香奈から貰ったチョコレートの箱を、俺は捨てた。
未練たらしいし、良い思いでとは言えない状況になっていたからだ。
何度も言うが、俺の中の香奈のイメージは寝取るような女なのだ。

チョコレートの箱を捨てた日に、香奈は電車に乗ってこなかった。
俺は何となくホッとしたのを覚えている。

けれど次の日も次の日も香奈は乗ってこなかった。

一ヶ月も香奈の顔を見ないのは、夏休みぐらいだ。
俺は心配になって、明子に声をかけた。

「あの…いつも一緒にいた香奈さんって風邪か何か?」
いきなり声をかけたせいか、明子は驚いたような表情を浮かべた。
その後、困ったような悲しそうな表情で俯くと
「電車…降りて話しませんか?」
明子は、自分の降りる駅じゃない俺の降りる駅で一緒に降りた。

「で?香奈さんは?」
俺は、答えを急かすかのように質問した。
胸騒ぎというか、電車の中で話せない内容なのだから凄い病気じゃないかと思ったのだ。
明子は、ゆっくりと目を閉じて、深呼吸すると
「香奈は死んだの…先月に自殺したの。」
最後まで言い終わる前に、明子の声は震え出し、泣いているのが分かった。
俺はズシンって感じの衝撃を感じて、足元が揺れている気がした。
「な、何で…?」
頭が混乱して、何が何だか分からなかった。
立っていられなくなり、俺はホームのベンチに座った。
「香奈…ずっとイジメにあってて…。
 香奈がクラスメートの子の彼氏を奪ったって言われてて…
 それが原因でシカトとか始まって、どんどん酷くなって…。」
明子は泣きながら話してくれた。
「その噂ウソで男の方が勝手に香奈の事を好きになっただけなの。
 だから私も香奈のことかばってたんだけど、
 イジメが酷くなるにつれて、香奈の事かばうなら私もイジメるって言われて…。」
そこまで一気に話すと、明子は鼻水をすすった。
俺は2人が話さなくなった原因が分かった。
「だから離れたのか!?友達だろ!!
 困った時に助けてやれなくて、何が友達だよ!!」
俺は大声で怒鳴ると、ベンチを拳で叩いた。
肩で呼吸を整えると、俺は明子を見上げた。
明子の表情で、俺は言ってはいけない事を言ったのだと思った。
その事を悔やんでいるのは、誰でもない明子なのだ。
明子は涙を止める事無く、ずっと泣き続けた。

俺だって、異変に気付いていながら何もしなかった。
もしかしたら…もしかしなくても支えになれたはずだった。
それなのに噂を信じて、何もしなかった。
好きな子なのに…俺が意気地なしだったから…。
力になれなくて本当にゴメンね。
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