女勇者「強くてニューゲームっ♪」 (笑える体験談) 86019回

2009/06/16 09:24┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:◆r3yksmPHg2
女勇者「…」パチ 

女勇者「…ふわぁ…眠い…」 

女勇者「さて、と。また旅立つ朝がやってきた」 

女勇者「これで10週目か!記念すべき旅立ちだなぁ」 

女勇者「パラメータと所持金が持ち越されてるから…うわ!50万Gもある」 

女勇者「うふふ、前回の旅では武装しかしてなかったし、今回はちょっとオシャレしちゃおうかな?」 

ガチャ 

母「あら勇者、起きてたのね」 

女勇者「うん!おはようママ」 

母「…今日は旅立ちの日ね」しゅん 

女勇者「そんな悲しい顔しないでよママ。私は大丈夫!」 

母「そうね。あなたは勇者だもの」 

女勇者「そうそう!強いんだからっ。じゃ、行ってきます!」 

母「勇者…」 

女勇者「まずは王様に挨拶だっけ。それから仲間を見つけて…」 

女勇者「前回は一人旅、前々回は全員戦士…今回はオーソドックスに行こうかな」 

女勇者「よし!戦士(男)、僧侶(女)、魔法使い(女)に決定!」 

女勇者「ふふ、戦士くんはハーレムになっちゃうなぁ」 

・ 
・ 
・ 

女勇者「という訳で、君達が私と共に旅してもらう仲間です!よろしくね」ニコ 

戦士「うむ。出来るかぎりの力になろう」 

僧侶「あ…あの、よろしくお願いします」もじもじ 

魔法使い「よろしくお願いいたします」ペコリ 

女勇者「うんうん、頼りがいのあるメンバーだねっ。よろしく!」 

女勇者(とは言え…みんなレベル1なんだよなぁ…) 

女勇者「じゃあ早速だけど、武器防具を揃えようか?」 

戦士「そうだな。戦いに備えよう」 

女勇者「うん!敵は手ごわいからねー。じゃあ戦士くんにはこれっ!買ってあげるよ!」 

【はがねの剣 1500G】 

戦士「ぬぉあ!?こ、これを…俺に?」 

勇者「もちろん。戦士くんみたいな強い人には良い武器が似合うもんね」ニコ 

戦士「かたじけない。有り難く使わせてもらう」 

勇者「ついでに兜と鎧と盾も買っておいたからねー」 

僧侶「あ、あの…勇者様…?」 

勇者「うん?」

僧侶「すみません、その…はじめからお金を使い過ぎじゃないでしょうか…?」 

勇者「僧侶ちゃん」がしっ 

僧侶「ひぁ!?す、すみません私なんかがでしゃばっちゃって…」わたわた 

勇者「ふふふ、かわいいなぁ僧侶ちゃんは。大丈夫大丈夫!お金はあるからね」 

僧侶「そ、そうなんですかぁ…」 

勇者「ちょっと色々あってね。ほら、僧侶ちゃんにも法衣と金の杖!」 

僧侶「うわぁ。これ、私が使っても良いんですか?」ぱぁっ 

勇者「あーん、もう!僧侶ちゃんかわいい!おまけに魔法のイヤリングもつけちゃう!」 

魔法使い「…」じーっ 

女勇者「ふふ、もちろん魔法使いちゃんにも。杖とマント、それに道具一式も!」 

魔法使い「わぁ。私うれしいです。お役に立てるよう頑張りますね」ニコ 

女勇者「うん!ふふ、魔法使いちゃんもかわいいなあ」 

戦士「勇者どの。あなたの装備はどうする?」 

女勇者「あ、私?別にいらないかなー」 

戦士「?」 

女勇者「代わりと言っちゃあなんだけどさ…これ、似合う?」 

戦士「……ドレスだと?」 

女勇者「うんっ。さっき買っちゃったぁ!ちょっとは女の子らしいかな?」 

戦士「あの、非常に似合ってはいるが…何と言うか、旅を嘗めてはいないか」 

女勇者「むぅ…」 

女勇者「なめてないよぅ!ちょっと男前だからって勇者をバカにしないでよー」 

戦士「しかしそれでは危険だ。勇者とは言え、君は女の子だ」 

女勇者「女の子でも強いもん!」 

戦士「…女が怪我をするのを見たくないんだ」 

女勇者「…もう。ちょっとドキドキしちゃうじゃない」 

戦士「俺が守れる時は良い。だが自分の身は自分で守るのが鉄則だろう」 

女勇者「大丈夫だよ!危なくなったら助けてね」ニコ 

戦士「う、うむ…」 

女勇者「では、装備も調った所で!さっそく旅立ちますよー」 
ニコニコ 

戦士「いざ!」 

僧侶「が、頑張ります…」びくびく 

魔法使い「頑張りますね、勇者様!」 

女勇者「うん!さぁまずは…おっと、モンスターが出たよー」 

魔物「ぐるる…」 

戦士「!」ざっ 

僧侶「ひぁ!?モ、モンスター!」 

魔法使い「…怖い…」 

戦士「勇者殿、俺と前衛へ。僧侶は最後列で回復、魔法使いはサポートを頼む!」 

僧侶「は、はぁい!」 

魔法使い「わかりました。勇者様、お気をつけて!頑張って下さい」 

勇者(えへへ…初々しいなぁ。1週目はわたしもこんな感じだったっけ?)クス 

戦士「ぬりゃああ!」ばっ 

魔物「ぐがぁーーー」 

ずばっ 

女勇者「ねぇねぇ戦士くん」 

戦士「むん?勇者殿、戦闘中だぞ。集中しよう」 

女勇者「えへへ、戦士くんって強いんだね」ニコ 

戦士「…はっ?」 

魔物(戦士にスキが!) 

魔物「ぎゃーす!」ずばぁっ 

戦士「う!!」ズキ 

僧侶「きゃ!せ、戦士さん!回復をっ!」 

戦士「いや…たいした事はない。勇者殿も戦闘に集中してくれ」 

勇者「う〜…ごめんなさい」 

魔法使い「よし、火炎魔法の詠唱できました!皆さん伏せて下さい!」 

勇者「今まで詠唱してたんだ…」 

魔法使い「えい、火炎魔法ー!」 

ぼっ 

魔物「ぎゃーー!」 

魔物を倒した! 

戦士「危なかったな。…勝ててよかった」 

僧侶「実践は怖いですぅ…」 

魔法使い「ごめんなさい、私がもっと早く魔法を出せるようになれば…」 

戦士「…」ズキズキ 

女勇者「あ、戦士くん…」 

女勇者(腕を怪我しちゃってる…) 

戦士「さぁ、先を急ごう。もっと強くならなければ」 

女勇者(回復魔法(小)…)ボソッ 

ぱぁぁぁ 

戦士「ん?腕の痛みが…なくなった?」 

女勇者「さぁ!戦士くんの言う通りだねー!先を急ごう!」ニコニコ 

戦士「まず最初の目的は、北の洞窟にいく事だったな」 

女勇者「そうだよー。近くの村が被害にあってるらしいから、そこの魔物を退治してくれって」 

僧侶「被害…」びくびく 

女勇者「被害って言っても、時々農作物を荒らされるくらいだからね。怖がらなくて大丈夫だよ」ニコ 

魔法使い「あ!あれが洞窟の入口ですね!」 

女勇者「うん!皆、準備は良い?行くよー?」 

戦士「勇者殿。その前に陣形を組み直してはどうだろう?体力の多い私か勇者殿が前、僧侶は最後列にした方が良くないか?」 

女勇者「それもそうだね!じゃ、戦士くんが先頭、僧侶ちゃんが最後!二番目に私が行くよ」ニコ 

戦士「了解だ。さぁ、入ろうか」 

ざっざっざ 

女勇者「戦士くん、しっかり誘導してね」 

戦士「うむ。迷ったら済まない」 

女勇者「大丈夫だいじょうぶ!皆のレベル上げにもなるしね」ニコ 

戦士「そうだな。勇者殿は向上心があるな。いいことだ」 

女勇者「向上心…向上心かぁ」 

戦士「?どうかしたか?」 

女勇者「ううん。ありがと」ニコ 

僧侶「あ、あのぅ…勇者様ぁ」トテトテ 

女勇者「僧侶ちゃん、なぁに?」 

僧侶「あの、あの…少しお願いがあるんです…でもただのワガママだし…」 

女勇者「えへへ、全然構わないよ!言ってみて?」 

僧侶「その…最後列、怖いです…」うるうる 

女勇者「!」きゅん 

女勇者「僧侶ちゃんはかわいいなぁもう!よし、じゃあ私と交代しようか」ニコ 

僧侶「すみません…」 

戦士「勇者殿」 

女勇者「はいはーい、なんですか?」 

戦士「すまない、道に迷ってしまったようだ…」 

女勇者「えへへ、だろうと思った!さっきから何回も同じところ歩いてるもんね」 

戦士「かたじけない…」 

女勇者「いいのいいの!誰だって最初は迷うよね」 

戦士「?」 

女勇者「それに、レベルアップにもなったじゃない!戦士くんも強くなったでしょう?」 

戦士「うむ…一応レベルは4になったが」 

女勇者「ほら、迷った事もあながち悪いことばっかりじゃないよ!ね?」ニコ 

戦士「そうだな。俺も勇者殿のようにプラス思考を心がけなければ」 

女勇者「えへへ、私はバカなだけだよぅ」 

戦士「しかし勇者殿、先ほどから体調でもわるいのか?」 

僧侶「ふぇ?勇者様、体の調子わるいんですか?悪いならすぐ言ってくださいよぉ…」おろおろ 

女勇者「いや、全然?大丈夫だよ?どうして?」 

戦士「さっきから戦闘中も身を守ってばかりなのでな。少し気になった」 

女勇者「…」 

戦士「勇者殿?」 

女勇者「ううん、大丈夫。心配してくれてありがとう」 

戦士「まぁ…無理に戦闘に参加せずとも構わない」 

女勇者「…戦士くん」 

戦士「戦いは強制されるものではないしな。ましては勇者殿は女の子だ」 

戦士「武器よりもドレスを望むような子だ。勇者として生まれなければ、別の生き方があっただろう」 

女勇者(…勇者として生まれなければ、かぁ…) 

戦士「しばらくは戦闘は俺たちに任せておくといい。なぁみんな?」 

魔法使い「もちろんです。勇者様、私たちにお任せください」ニコ 

僧侶「勇者様は、私の後ろで応援しててください。頑張りますからね」 

女勇者「みんな…」 

魔法使い「そして、ちょっとずつでも良いから戦闘に慣れていきましょう?」 

魔法使い「はじめは見てるだけで良いんです。ちょっとずつでも、必ず戦えるようになります」 

戦士「俺も最初はそうだった。敵が怖くて仕方なかった」 

戦士「しかし場数を踏むほど、恐怖は薄れていくものだ」 

女勇者「ありがとう。でも…私、戦いが嫌いなわけじゃないんだよ。ううん、むしろ好きかも」 

女勇者「ただちょっと訳があって、皆に戦ってるところは見られたくないの。ごめんね?」 

僧侶「良いんですよぅ。皆で協力して、勇者様を守っていきますから」ニコ 

僧侶「だから、怪我したり病気になったらすぐに言ってくださいね?」 

女勇者「僧侶ちゃん…ありがとう」 

僧侶「あ!あそこの扉…」 

魔法使い「…どうやら、最奥部のようですね」 

戦士「皆、準備は良いか?勇者殿、心の準備は?」 

女勇者「えへへ、大丈夫!」 

戦士「ここで待っていてもいいんだぞ?」 

女勇者(…なんだか、こんなに女の子扱いされるの久しぶりだな…) 

女勇者「大丈夫!私も行くよー!」 

戦士「よし、では!いざ!!」 

バタン!! 

ボス「なんだ貴様らは?」 

戦士「村人から話は聞いた。お前がここの親玉か」 

ボス「ふん、人間ごときが私に叶うとでも思うのか?かかって来い!」 

女勇者(ここの魔物も変わらないなぁ…) 

女勇者(身体ばっかり大きくて、それに見合った攻撃力もないし) 

女勇者(見かけは怖いけど、実際はただのノロマだもんなぁ) 



バシュ!! 

戦士「ぐあぁ!!!」 

僧侶「きゃぁぁあ!せせ、戦士さん!回復魔法ー!!」 

ぱぁぁ 

戦士「はぁ、はぁ、…かたじけない。魔法使い、サポートしてくれ!」 

魔法使い「了解!詠唱の間時間稼ぎをお願いします!」 

ガキィィン! 
バシッ!! 

魔法使い「よし、出来ました!戦士さん、伏せてください!」 

戦士「おう!」 

魔法使い「ブツブツブツ…火炎魔法!!」 

ぼぉっ!! 

僧侶「はぁ…はぁ…やりましたか…?」 



魔物「なんだ今のは?人間」 

戦士「!!」 

バキッ 

戦士「ぐわぁあ!??」 

女勇者「あ!…レベル4じゃちょっと早かったかな…?睡眠魔法!(大)」 

戦士「む?」ぐら… 

魔法使い「え…え?」ばたっ 

僧侶「すぴー…すぴー…」 

女勇者「わぁ!僧侶ちゃん立ったまま寝てる!?やーん、かわいすぎ!!」 

ボス「な!?仲間を眠らせた…バカか貴様!?」 

女勇者「ごめんね?私、何回やっても仲間が怪我するの嫌いなの」 

女勇者「この子達まだレベル4だよー?そんな本気になってどうするの?」 

ボス「いや、でもボスは強いもんだし、一回くらい全滅してもらわないと…」 

女勇者「ふぅん、ボスは強いかぁ。じゃあ君も、『勇者は強い』で納得できるんだね?」 

ボス「お前が勇者?フリフリのドレスを着た、武器も持たない小娘が!ははは、笑わせるな!」 

女勇者「勇者がドレス着たら悪いの?」 

ボス「へ?」 

女勇者「ねぇ、勇者がドレス着たらおかしい?」 

ボス「魔物と戦おうという勇者が、戦闘の場にドレス?はははは!こんな勇者では人間も不憫だな」 

ズカァァァァン!!!!! 

ボス「!?」 

勇者「もう、ひどいこと言わないで」 

ボス(え?え?壁に穴開いてる?外見えてる?) 

ボス(今素手で壁殴った?) 

勇者「女の子なんだよ、これでも」 

勇者「このドレス、戦士くんも似合ってるって言ってくれたんだよ」 

ボス「ふん、その人間も頭がおかしいのだろう!」 

勇者「もうしゃべらないで」 

がしっ 

ボス「うぎゃああああああああ!?な、なんて握力…!?」 

ボス「体重500キロを超える私を…片手で…」 

女勇者「何回会ってもムカつく事ばっかり言って…」 

女勇者「ねぇ、私が望んで勇者に生まれたと思った?」 

女勇者「こんな恰好して、普通の子みたいに暮らしてみたいと思うのがそんなにおかしい?」 

グググ… 

魔物「…ぐぁ…!!」 

女勇者「おかしいよね。私は勇者だもんね!」 

ググ… 

魔物「……!」 

グ… 

女勇者「良いよ、私だって勇者に生まれた責任があるもんね」 

女勇者「バカな魔物に教えてあげる。勇者は強いんだよ」 

魔物「ぎゃああああ!!」 

ぐしゃっ 

・ 
・ 
・ 

【宿屋】 

戦士「はっ!?」ガバッ 

女勇者「あ、起きた?身体は大丈夫?」 

戦士「俺は…敵はどうなった?」 

女勇者「なんとか勝てたよー。皆眠らされちゃって、危なかったけどね」ニコ 

戦士「俺は眠っていたのか…済まない」 

女勇者「えへへ、大丈夫!誰も大怪我はしてないみたいだしね」 

戦士「ここは…宿屋?どうやってここまで…」 

女勇者「うん。私…じゃなくて、通りすがりの人に手伝ってもらって、ここまで皆運んできたんだよー」 

僧侶「…う〜ん?」むくっ 

魔法使い「ん…」 

女勇者「あ、みんな起きたみたいだね。おはよ!」ニコ 

魔法使い「あれ…ここは…?」 

僧侶「あれ?勇者様、ドレスは…?」 

女勇者「え?えへへ、捨てちゃった」 

戦士「捨てた?あんなに喜んでいたのに?」 

女勇者「うん。私は勇者だから、やっぱりあんなの似合わないしね。えへへ」 

戦士「…」 

女勇者「さ、みんな疲れたでしょう?今日はここで休んで、出発は明日にしようよ」 

戦士「そうだな。今日はゆっくり身体を休めよう」 

僧侶「賛成ですぅ。私疲れちゃって…」 

女勇者「ふふ、僧侶ちゃんったら立ったまま寝てたくせにぃ!」 

僧侶「ふぇ?そ、そうなんですかぁ?」かぁぁ 

魔法使い「まぁ。立ったまま寝るなんて、なかなか出来ませんよ」くす 

僧侶「す、すみませぇん…」 

女勇者「あはは!可愛かったからよし!」 

戦士「勇者殿…ひとつ頼みがあるんだが」 

女勇者「はいはぁい。なんでもどうぞぉ!」 

戦士「あの…俺も他のメンバーと同じ部屋というのは抵抗があるんだが…」 

女勇者「えー?どうして?」 

戦士「女性と同じ部屋で眠ることはできないな。もう一部屋借りられないだろうか」 

女勇者「うーん、一緒がいいなぁ。二部屋だとお金もかかるし、それに」 

戦士「それに?」 

女勇者「こうやって皆でお話して、パーティの結束を固めたいの!ダメかな?」 

戦士「…むぅ……。わかった、そういう事ならばしかたがないな」 

女勇者「えへへ、ありがと」ニコ 

僧侶「あ、もう夕方ですねぇ。そろそろお店が閉まっちゃうなぁ」 

魔法使い「本当ですね。なにか必要なものがありましたら買いに行きましょうか?」 

戦士「いや、俺が行こう」 

魔法使い「え?戦士さんが?」 

戦士「うむ。個人的にほしいものもあるのでな。勇者殿、構わんか?」 

女勇者「うん、私はいいよー?」 

戦士「では。なにか必要なものは?」 

女勇者「うーん、じゃあ薬草を5個お願いできる?」 

戦士「了解した」 

ガチャ 

女勇者「さて!じゃあ行こうか!」 

僧侶「ふぇ?どこにですか?」 

女勇者「決まってるじゃない!戦士くんの後をつけてみようよ」 

魔法使い「え…」 

女勇者「だって、個人的にほしいものって何だか気にならない?」 

僧侶「そ、それは気になりますけどぉ…」 

魔法使い「もしかしたら武器とかじゃないですか?戦士さんは武器好きそうだし」 

女勇者「そうかな?えへへ、とにかくついていってみようよ!ね?」 

魔法使い「もう、しょうがないですねぇ…」くす 

女勇者「やったぁ!」 

戦士「…」スタスタ 

女勇者(お、まずは道具屋さんだね) 

僧侶(まず最初にお使い頼まれたものを買いに行くんですね。偉いですぅ) 

魔法使い(え?普通そうじゃありませんか?) 

僧侶(えへへ、私は最初に自分のほしいもの買っちゃって、お金足りなくなったりするんです) 

戦士「すまないが、薬草をくれ。5つ」 

道具屋「はいよ、薬草。誰か病気でもしたのかい?」 

戦士「いや、旅の途中なのでな。備えだ」 

道具屋「ってことは、あんた勇者様一行かい?そういう事なら、ほら。これサービスだよ」 

戦士「おお、かたじけない」 

僧侶(道具屋のおばちゃん優しいですねぇ) 

女勇者(戦士くんが男前だからだね。感謝感謝) 

戦士「…」スタスタ 

魔法使い(今度は武器屋に向かいましたね) 

僧侶(やっぱり武器好きなんですね。うふふ、この前鋼の剣買ってもらったばっかりなのに) 

女勇者(新しい武器欲しいのかな?言ってくれれば買うのに) 

戦士「親父。すまないが、買い取って欲しいものがあるんだが」 

親父「おう。品物見せな」 

戦士「以前私が使っていた武器だ。古いものだが、買い取ってくれるか?」 

親父「ほぉ…かなり使い込まれてるな。悪いが、400Gが限界だな」 

戦士「おお!十分だ。それから、この…」 

女勇者(昔の剣を…売っちゃった…あんなに大切にしてたのに) 

僧侶(そんなにお金が必要なのかな…?) 

魔法使い(…?) 

魔法使い(あ!) 

女勇者(魔法使いちゃん?どうしたの?) 

魔法使い(いえ、その…お金の使い道…っていうか、その) 

僧侶(?) 

魔法使い(えっと…この街の外れに、そういうお店があるんです)かぁぁ 

女勇者(ああ、そういえばあったかも) 

僧侶(??) 

魔法使い(もしかしたら、そこに…行かれるのかもしれません) 

女勇者(えへへ、戦士くんも男の人だもんねぇ。そっかぁ) 

僧侶(どういうことですかぁ?) 

魔法使い(ですから…今日は、女の人と泊まるでしょう?だから…そう、転職!転職しに行くんですよ) 

僧侶(ふぇ?もう転職できるんですかぁ?) 

女勇者(あはは、僧侶ちゃんは知らなくていいよー)なでなで 

戦士「ありがとう。すまないな、ワガママを聞いてもらって」 

親父「おうよ。頑張りな。応援してるぜ」 

戦士「うむ。それでは、また寄らせてもらう」 

親父「おー。またよろしくな」 

僧侶(あ、今度は防具屋さんですね) 

魔法使い(あ、あれ…?違うのかな?) 

女勇者(戦士くんが剣を売ってまでそんな事するはずないって信じてたよ!) 


戦士「邪魔する」 

防具屋「いらっしゃいませ。何をお求めでしょうか?」 

戦士「…ドレスを見せてくれ」 

防具屋「……はい?」 

女勇者(!!) 

戦士「あー。その…仲間に女性が居るんだ」 

防具屋「なるほど。でしたら、こちらがございますよ」 

防具屋「皮のドレス 450G 
    シルクのドレス 2000G 
    花嫁のドレス  8000G」 

戦士(所持金460G…) 

戦士「…この、皮のドレスという奴は、女性が着ても恥ずかしくないものか?」 

防具屋「そうですねぇ。おしゃれとは言えませんが、普段着になさるなら問題ないかと」 

戦士「そうか…。よし、これをくれ」 

防具屋「かしこまりました。ありがとうございます」 

女勇者(戦士くん…) 

魔法使い(戦士さん、疑っちゃってごめんなさい…) 

僧侶(わぁ…。戦士さん、優しいなぁ) 

戦士「ありがとう。では…邪魔したな」 

防具屋「ありがとうございました」ペコリ 

がちゃ 

戦士「…」スタスタ 

女勇者「戦士くん!!」 

戦士「うわ?!ゆ、勇者殿?」 

女勇者「えへへへ」ニコニコ 

戦士「…見ていたのか」 

女勇者「えへ、ごめんなさい!!」ニコニコ 

戦士「……お恥ずかしい」 

女勇者「これ、私に?」 

戦士「…高価なものではないのだが。本当はもう少しいいものをあげたかった」 

女勇者「ううん。嬉しいよ!ありがとう戦士くん!」 

戦士「喜んでくれれば幸いだ。…君は、俺たちとは違って望んで戦っているわけではない」 

女勇者「…戦士くん」 

戦士「しかし、これくらいの事は罰が当たらないだろう。似合うと思うぞ」 

女勇者「…えへへ。泣かそうとしてるでしょ?」 

戦士「いや、そんなつもりでは…」 

女勇者「ふふ。さっそく装備して来ていい?」 

戦士「ああ、もちろんだ」 


たったった 

女勇者「えへへ。戦士くん、ありがとう…」 

女勇者  
皮のドレス E 
防御力 999 → 999 

【宿屋】 

女勇者「はー、今日はいい日だったなぁ」ニコニコ 

魔法使い「うふふ。戦士さん、優しいんですね」 

僧侶「勇者様もよく似合ってますよ。戦士さん、あんなに喜んでくれるとうれしいですね」 

戦士「まったくだ。勇者殿、本当によく似合っている」 

女勇者「本当?かわいい?」 

僧侶「とってもかわいいですよ。きっとモテモテでしょうねぇ」 

女勇者「…えへへ、そうだったらいいなぁ。普通の街娘に生まれてたらねぇ」 

戦士「…」 

戦士「勇者殿。はやく戦いを終わらせよう」 

女勇者「…」 

戦士「きっと戦いが終われば…世界が平和になれば、勇者殿も普通の生活が出来るようになる」 

戦士「戦いのない、平和な世界のために…今は頑張ろう」 

女勇者「うん。そうだね。いつか…いつか、平和な世界を見てみたいな」 

戦士「?」 

女勇者「もし、もしもだよ?世界が平和になったとき、私がその世界にいなくても…」 

女勇者「皆、その世界をしっかりよろしくね?」 

僧侶「勇者様、それって…途中で死んじゃったりしたらってことですか?」 

僧侶「嫌ですよぅ、そんなの嫌…絶対、みんなで世界を平和にしましょうね?」 

女勇者「僧侶ちゃん…。うん、そうだね。今はとにかく頑張ろう!」ニコ 

魔法使い「勇者様」 

女勇者「なぁに?魔法使いちゃん」 

魔法使い「勇者様はなにか抱え込まれているようですね。私たちにはどうする事もできない何か」 

女勇者「え?そう見える?」 

魔法使い「はい、なんとなくですが…。無理にとは言いません。それでももし、一人で抱え込むのが辛くなったら」 

魔法使い「そのときは、ぜひ私たちに打ち明けてください。私たちは、仲間ですから」ニコ 

女勇者「…魔法使いちゃん。ありがとう」 

魔法使い「いえ。まぁ、なんとなくなんですけどね」くす 

女勇者「ふふ、そっかぁ。ま、今日は寝ようか!」 

戦士「そうだな。明日も早い。今日はゆっくり休もう」 

僧侶「おやすみなさぁい」 

女勇者「うん!おやすみー」ニコ 

〜♪ 

女勇者「ふあぁ…よく寝たー!ん?」 

僧侶「すぴー…すぴー…」 

女勇者「な、なんで僧侶ちゃんが私のベッドに…?」 

僧侶「すぴー…すぴー…」 

女勇者(それにしても可愛い寝顔だなぁ…) 

女勇者(こうして見ると、ほんとにただの女の子みたい…)なでなで 

僧侶「すー…う、ぅ…?」 

女勇者「あ、起きちゃった」 

女勇者「おはよー、僧侶ちゃん!」ニコ 

僧侶「ふぇ?あ、おはようございますぅ…」ごしごし 

女勇者「ふふ、まだ眠そうだね。で、どうして私のベッドにいるの?」 

僧侶「え…?え?」 

女勇者「まさか、寝ぼけて?」 

僧侶「え?えぇ!?すすす、すみませぇんっ!」がばっ 

女勇者「いいんだけどねー。どうしたの?怖い夢でも見た?」 

僧侶「え…と、そういえば見た気がします…で、誰かのベッドに一緒に入らせてもらって…」 

女勇者「あはは、もう!朝っぱらから僧侶ちゃんだねぇ。戦士くんのベッドだったらどうするのー?」 

僧侶「あぅ…すみません」 

魔法使い「おはようございます」 

戦士「もう起きていたのか。おはよう」 

女勇者「おはよー!二人ともはやいねー」 

魔法使い「はい、私は朝は早いので…」 

戦士「俺は早朝稽古があるのでな」 

女勇者「うんうん、頼もしいね!今日は出発したらさくさく進めちゃおうね」 

戦士「そうだな。一刻も早く魔王を倒そう」 

女勇者「うん!」 

【数日後・中盤】 

戦士「もうずいぶん遠くにきたな…」 

女勇者「そうだね。皆見違えるくらい強くなったよ!」 

僧侶「次の街はどんな所なんでしょうねー?」 

女勇者「ああ…そうか、次の街は…」 

魔法使い「?勇者様、どうなさいました?」 

女勇者「え?うん、ちょっとねー」 

【新しい町】 

僧侶「わぁ。綺麗な町ですねぇ!」 

魔法使い「本当。でも…町人達がなんだか暗いような…」 

戦士「勇者殿。そういえば、ここは確か『いけにえの町』と呼ばれる所では?」 

女勇者「うん、そうだよー。そんな呼ばれ方もしてるみたいだね」 

戦士「しかしいけにえとは…一体なぜ?」 

魔法使い「宗教の関係でしょうか?とりあえず町長さんに話を聞きに行きましょう」 

僧侶「そうですね!」 

女勇者「うん、そうしよー!戦士くん、先頭よろしくね」 

【町長の家】 

町長「おお、ではあなた方が勇者様ご一行ですか…」 

女勇者「そうです!」 

魔法使い「あの、町長さん。失礼ですがここは『いけにえの町』なんて呼ばれているそうですね」 

女勇者「…」 

魔法使い「なにか儀式があるのですか?」 

町長「……わしらの問題です。余計な事はせんで下さい」 

僧侶「え?」 

がちゃ 

バタン 

戦士「なにか、重大な事のようだな…」 

魔法使い「困っている事は間違いなさそうなんですけど」 

僧侶「あれ?誰か私達の所に走って来ましたよ」 

タッタッタ… 

町人「失礼します…あなた様が勇者様ですか」 

女勇者「はい、そうですよー!どうしました?」 

町人「実は…ご存知かも知れませんが、この町はいけにえの町と呼ばれています」 

僧侶「らしいですね。…どうしてなんですか?」 

町人「…魔物に…差し出されるのです。毎年、齢16を迎える娘を一人差し出さなければ、町を襲われると」 

戦士「なんだと…」 

町人「そして…今年いけにえにされるのが、私の娘なんです」 

僧侶「そんなの、許せません!」


町人「この町は今までそうしてもってきました。今年もそうして町は無事に済むでしょう」 

町人「…しかし、私には我慢できないのです。私一人のわがままで町を危険に晒すわけにはいかないのですが」 

町人「…なんとか、助けていただけないでしょうか?私の…ただ一人の家族なのです」 

戦士「もちろん。引き受けましょう」 

僧侶「はいっ。こんなの黙って見過ごせません!ね、勇者様?」 

女勇者「…うん!」 

女勇者「…」 

僧侶「魔物を倒せば、いけにえもなくなるんですよね?その魔物というのはどこに居るんですか?」 

町人「南の洞窟に居ます。そして…いけにえにされるのは、明日なのです」 

戦士「時間の猶予はない訳だな。勇者殿、疲れているだろうがすぐに出発しよう」 

女勇者「そうだね!皆、大丈夫?」 

僧侶「もちろんですぅ!魔法使いさん、大丈夫ですよね?」ぐっ 

魔法使い「はい。すぐに行きましょう」 

町人「ありがとう…ございます……」 

女勇者「お父さん」 

町人「はい」 

女勇者「あなたのした事は間違ってないよ」 

【いけにえの町】 

町長「……」 

町人A「捕らえました!」 

町人B「来いこの野郎!なんて事をしてくれたんだ!!」 

いけにえの父「…すみません」 

町人A「お前一人のわがままで!俺達の家族まで危険な目にあってるんだぞ!!」 

町長「…なんという事を…」 

いけにえの父「…申し訳ありません!しかし、勇者様達ならばきっと…!」 

町長「仮に南の魔物を倒せたとしても、それで終わると思うのかね…」 

いけにえの父「…」 

町長「……処刑しなさい」 

町人A「おら、来い!この疫病神!」 

いけにえの父「私のした事は…間違っていない…」 

【南の洞窟】 

女勇者「来ちゃったね」 

戦士「この扉の前に並べてある人骨は…」 

魔法使い「今までのいけにえでしょうか…」 

僧侶「…」ぐす 

魔法使い「僧侶さん、泣いてもしかたないです。今は魔物を倒す事に専念しましょう?ね?」 

僧侶「…この子たち、16歳だったんですよぅ…?怖かったでしょ…?」ぽろぽろ 

僧侶「せめて…この子たちのために祈らせてくれませんか?」 

僧侶「お願いします…勇者様…!」 

女勇者「うん…。祈ってあげて。僧侶ちゃんは優しいね」ニコ 

僧侶「…お待たせしました。行きましょう」すっ 

女勇者「うん。戦士くん、行こっ!」 

戦士「うむ。この忌まわしい因果を断ち切ろう」 

魔法使い「行きましょう、勇者様」 

ガチャ… 

きぃ… 

魔物「いけにえか?」 

僧侶「違います。あなたを倒しに来ました…!」きっ 

魔物「ほう、では勇者か。そのくだらん正義感のために町がひとつ滅ぶ…実に愉快だな」 

僧侶「私達があなたを倒します…!そうすればあの町も!」 

魔物「浅はかな…こんな愚かな者に未来を委ねざるを得ない人間も不憫だな」 

魔物「良いだろう、かかってこい!」 

魔物「ふはは、その程度か!よくもそれで挑んできたものだ!」 

バキィッ 

僧侶「あぅッ…!!」 

戦士「僧侶!!」 

僧侶「もう…もうMPが……」 

魔物「弱すぎる。よくここまで来れたな」 

魔物「勇者が最後列で怯えているだけのパーティーに、俺が倒せる訳がない!」 

魔物「もう諦めろ。お前達を殺した後、逆らったあの町も皆殺しにしてやる」 

女勇者「……」 

女勇者「みんな、ごめん…。睡眠魔法(最大)」 

ぱぁっ… 

戦士「くっ……」トロン 
魔法使い「…」 
僧侶「……」くた… 

魔物「くく、諦めたか?仲間を眠らせるとは」 

女勇者「…お願い。あの町を許してあげて」 

魔物「ふははは!命乞いか、勇者!心配するな、死ぬお前には関係のない事だ!」 

女勇者「…」 

魔物「ふん、失望で声も出ないか。つまらん。自分の無力を嘆いて死ね!」 

魔物「ぐぉぉおお!!」バキィッ 

女勇者は1のダメージを受けた 

魔物「か、顔で平然と受け止めた…?」 

女勇者「…お願い。あの町を見逃してあげて」 

魔物「なんだと!?俺の全力の攻撃が…?当たらない?当たってるのか?」 

バキィッ バキッ バキィッ 

1のダメージ ミス ミス 


女勇者「許してあげるから」 

魔物「バカな!?こんな小娘が…」 

女勇者「今までの事は許してあげるから」 

魔物「愚かな奴だ、お前がこうしてちっぽけな正義感など携えて乗り込んでくるからこんな事になった」 

魔物「いつも通りにいけにえの小娘を一人差し出すだけで、あの町の人間が生きながらえたのに」 

魔物「お前が殺したんだ、あの町の人間を!くははははは!!」 

女勇者「…そうかもね」ニコ 

魔物「な…」 

女勇者「少ない人間が犠牲になって、より多くの人間が助かるなら…それも正義なのかなぁ?」 

女勇者「わかんないよ、私には。10回目になってもまだわかんない」 

女勇者「えへへ、私…バカだからなぁ」 

女勇者「じゃあどうすればよかったかな?いけにえの子を見殺しにすればよかったの?」 

魔物「ふん、気でも違えたか」 

女勇者「わかんない。でも、どうせあの町は滅ぶなら」 

女勇者「とりあえずお前は倒すよ」ニコ 

魔物「笑わせるな。ドレスなど纏った小娘に 

ぐしゃ!!! 

魔法使い「…う…?私、また…眠らされてたの…?」 

女勇者「!」くるっ 

魔法使い「ひっ!?」ビクッ 

女勇者「あ…魔法使いちゃん、起きた?大丈夫?」ニコ 

魔法使い「あ、ゆ…勇者様…?敵は…?」 

女勇者「倒したよ。えへへ、危なかったけど、なんとか…」 

魔法使い「敵はどこに…?」 

女勇者「魔法使いちゃん、待って。見ない方が良いかも」 

魔法使い「は…?」 

魔法使い「…勇者様?」 

女勇者「えへへ、さ…皆起こして早く出よう?」 

魔法使い「…そうですね。戦士さん、僧侶さん。起きて下さい」ぺちぺち 

戦士「…むん?」むく 

僧侶「ふぇ?お母さん…?」パチ 

女勇者「ふふ、皆起きた?さぁ、アイテムも手に入れたし、行こうか!」ニコ 

戦士「敵が持っていたアイテムか。何かの鍵になりそうだな」 

僧侶「そうですね。大事に保管しましょう」 

魔法使い「では、いけにえの町に戻りましょうか!」 

女勇者「…うん」 

【いけにえの町】 

女勇者「…着いたね」 

戦士「さぁ、早速あの人に報告しに行こう。喜んでくれるだろう」 

魔法使い「そうですね。娘さんも助かったんですし」 

僧侶「勇者様?早く行きましょう?」 

女勇者「私、行かなくっても良いかなあ?」 

僧侶「ふぇ?」 

女勇者「えと、ちょっと疲れちゃって……えへへ、ダメだよねやっぱり…」 

戦士「疲れているのならばなおさらだ、早く宿に行こう」 

女勇者「はぁい…」 

・ 
・ 
・ 

戦士「処刑された!??」 

町長「はい。いけにえの件をあなたがたに漏らしたばかりか、助けを求めた罰として」 

戦士「バカな!?現にこうして魔物を倒して来たではないか!」 

町長「それで解決とはいかないのです。あなたがたのせいでこの町は滅ぶでしょう」 

僧侶「な、なぜですかぁ…?」 

町長「南の魔物を倒したところで、我々は助かりませぬ…じきに次の更に強力な魔物が来るでしょう」 

町長「そして今度は我々は、いけにえの儀式を放棄し、逆らった人間として扱われる」 

町長「…女はさらわれ、男達は皆殺しになるでしょう」 

戦士「な…」 

町長「さぁ、出ていってくだされ。あなたがたを恨んでいる町人も少なくない」 

戦士「く…こんなバカな事があるか!!」 

女勇者「戦士くん、行こう…ね…?」 

女勇者「町長さん、申し訳ありませんでした…」ぺこり 

戦士「勇者殿…!!」 

女勇者「よし行こう、みんな!次の町を目指さなきゃ!」 

戦士「く…!!」 

町長「…」 

女勇者「行くよ、戦士くん!」ぐいっ 

戦士「うぉ!?」どてっ 

女勇者「あ…ご、ごめん…」 

戦士「いや、良い…行こう」 

ガチャ 

バタン 

少女「お待ち下さい!」 

戦士「!」 

魔法使い「あら、お嬢さん…どうしましたか?」 

少女「あなたがたは、勇者様ご一行ですか?」 

僧侶「はい…そうですよぅ」 

少女「私は、明日いけにえになる予定だった者。今日処刑された男の娘です」 

女勇者「…」 

少女「私が死ねば、町は生きながらえ…父も死ぬ事はありませんでした」 

戦士「…!」 

少女「怖くなかったと言えば、嘘になります。でも私なりに…覚悟を決めておりました」 

少女「町を、皆を守るために死ぬのだと。皆、私のために泣いてくれました…」 

僧侶「う、うぅ……うぇぇえん……」ぽろぽろ 

少女「…でも…私は、あなたがたを憎めません。あなたがたは父の遺志を聞いてくれたのですから」 

僧侶「ごめんなさい…ごめんね…」ぽろぽろ 

少女「でも、でも!私は…何を憎めば良いんですか…?」 

女勇者「私を憎むと良いよ」ニコ 

少女「え…勇者様…?」 

女勇者「私のせいで皆を狂わせてしまったんだから」 

少女「でも、勇者様は父の…」 

女勇者「私はあなたを助けるとどうなるか知っていた。でもあなたを助けたの」 

女勇者「あなたのお父さんを殺したのは、私なの」 

少女「う…うぅ…うわぁあああん!!」ぽろぽろ 

女勇者「さぁ、行こうみんな」すっ 

僧侶「ゆ、勇者様っ!!でも!」 

女勇者「えへへ、良いんだよー、もう慣れっこだから!行こ!」 

少女「うわぁぁん!パパぁ!パパーー!!」 

【次の街・宿屋】 

女勇者「ふぅ。今日は疲れたねぇ」 

戦士「うむ…」 

魔法使い「…」 

僧侶「えぐ……ひっく…」 

女勇者「僧侶ちゃん、もう泣かないで。私まで悲しくなっちゃうよー」 

僧侶「ゆ…しゃ、さまは…なんで平気なんですかぁ…!」 

女勇者「…平気じゃないよ。でも、私は…」 

僧侶「…うえぇん…」 

女勇者「えへ…私は、勇者だからねー!」 

戦士「!」 

魔法使い「あ…」 

僧侶「…!」 

女勇者「私が泣いちゃったら、ダメでしょ?」ニコ 

女勇者「あはは、ちょっとカッコつけすぎかな…?」 

僧侶「……ごめんなさい」 

女勇者「さってと!そろそろお風呂入って寝よう!寝ちゃえばきっと気持ちも晴れるよー」 

僧侶「そうですね。しっかりしなくちゃ…」ぐい 

魔法使い「勇者様、一緒に入りましょうか?お背中流しますよ」 

女勇者「んー、私ちょっと汗かいてからにするよ。先に入っちゃって!」 

魔法使い「そうですか?じゃあ…」 

女勇者「うん!素振りでもしてくるよ。戦士くん、剣貸してくれる?」 

戦士「ああ、構わんが…」 

女勇者「じゃねー、行ってきます」ふりふり 

ガチャ 

バタン… 


僧侶「勇者様、大丈夫でしょうか…?」 

魔法使い「一人風呂を好むのはいつもの事ですけど…今日はなにか思い詰めていましたね」 

戦士「いや、それよりも…」 

僧侶「なんですか?」 

戦士「勇者殿が、剣を握るのは初めてだな」 

魔法使い「あ。そういえば、武器は持たれた事がありませんね」 

僧侶「装備はいっつも皮のドレスだけですもんね…」 

【街の外】 

女勇者「えへへ、剣なんて久しぶりに握るなぁ…」 

女勇者「戦士くんの覇者の剣借りて来ちゃった」 

女勇者「よっと」 

ブォォォォオン!!! 

女勇者「おー…あはは、軽いなぁ。確か1周目は重くて振れなかったのになぁ」 

女勇者「私も強くなったんだな。1周目の仲間達は元気にしてるかなー?」 

女勇者「あ、柄に血が染み付いてる。ふふ、戦士君もがんばってるんだね」 

女勇者「戦士くんは男前だし、優しいし…日に日にかっこよくなっていくなぁ」 

女勇者「僧侶ちゃんは可愛すぎるし、ちゃんと回復魔法も(大)まで使えるし」 

女勇者「魔法使いちゃんはいつもサポートしてくれるし、強力な全体魔法も使えるし」 

女勇者「私だけが、成長しない…」 

女勇者「えい、究極の一撃〜」 

ズバシャアアアア!!! 

女勇者「全体回復魔法〜(最大)」 

ぱぁぁぁ… 

女勇者「そらに向かって…極大破壊魔法〜」 

キュウウン…ズガァァァン!! 

女勇者「あ…雲なくなっちゃった」 

女勇者「強くなれば何か変わるかと思ってがむしゃらに強くなった事もあった」 

女勇者「仲間に打ち明けた事もあった、一人で旅した事もあった…」 

女勇者「魔物との共生共存を目指した事もあったのになぁ…」 

女勇者「自爆魔法でも死ねない身体になっちゃったけど、心はまだまだ子供だなぁ」 

女勇者「もうわかんないよ…何が正義なのかも見失いそう」 

女勇者「あはは、今日の町は何回やってもダメだなぁ。毎回泣いちゃう」ぐい 

女勇者「もう、やめちゃいたい…かも」 

女勇者「いけないいけない、私は勇者なんだから」ぶんぶん 

女勇者「心の回復魔法もあればいいのになー」 

女勇者「素振りして気分転換しようかー!」 

ブシャア!!ブシャア!! 

僧侶「勇者様ぁ〜」トテトテ 

女勇者「!」ビクッ 

女勇者「僧侶ちゃん?どうかしたー?」 

僧侶「えっと…えへへ」 

女勇者「?」 

僧侶「あの、失礼かも知れませんけど…勇者様が悩んでるのを、私…ほっとけなくて」 

女勇者「悩んでる…のかなぁ?えへへ、顔に出ちゃってたか」 

僧侶「あの、私がなんとなく思ってただけで、そういう訳じゃ…」 

女勇者「ううん、良いんだよ!ありがと僧侶ちゃん」ニコ 

僧侶「ね、勇者様。もしよかったらお風呂、一緒に入りませんか?」 

女勇者「え…」 

僧侶「今まで一緒に入った事なかったし、ゆっくり勇者様とお話したかったから…」 

女勇者「お、お風呂は…あのー…」 

僧侶「ダメですか…?」 

女勇者「う、わかった。……入ろうか」ニコ 

僧侶「はい!じゃあさっそく行きましょう!」すっ 

女勇者「あ、手は…」 

ぎゅ 


僧侶「!」 

女勇者「……ごめんね、こんな手で」 

僧侶「ちょっとびっくりしちゃいました…」 

女勇者「やっぱり、気持ち悪いよね?ごめん、隠しとくつもりだったんだけど」 

僧侶「勇者様、そんな事ありませんよぅ」ニコ 

女勇者「え?」 

僧侶「ちょっとボロボロだけど、優しい、女の子らしい手じゃないですか」 

女勇者「…えへへ、ありがとう。そんなの言われた事ないよ」ニコ 

【宿屋・風呂】 

魔法使い「お帰りなさい、勇者様」 

勇者「ただいま!」 

魔法使い「失礼だったらすみません。待たせていただきました」 

勇者「ううん、そんな事ないよ。ありがとう」 

魔法使い「ふふ、じゃあ入りましょうか」 

女勇者「…初めてだねー、一緒にお風呂入るの!」 

僧侶「そうですね。なんだか緊張しちゃうなぁ」 

魔法使い「僧侶さんはスタイル良いですから…私はお二人が羨ましいですよ」 

女勇者「本当、僧侶ちゃんは反則だもんなぁ」くす 

女勇者(覚悟を決めるしかないよね…) 

する…する… 

ぱさっ 

僧侶「…!」 

魔法使い「…」ごくり 

僧侶(胸元から太ももにかけて、すごいおっきい傷痕が…) 

魔法使い(右肩と腹部の皮膚が…あれは火傷の痕でしょうか…) 

僧侶(体中に小さな切り傷がいっぱい…) 

女勇者「えへへ、ごめん。気持ち悪い……?」 

僧侶「傷くらいで、私の勇者様への尊敬は変わりません」 

魔法使い「その傷に救われた人がたくさん居るんですね。決して恥じるものではありませんよ」ニコ 

女勇者「……この傷に、救われた人達…か。これを見て、気持ち悪いと思わないの?」 

魔法使い「ふふ。そんな事で揺らぐ程、私達がここまで勇者についてきた気持ちは弱くありません」 

女勇者「魔法使いちゃん…」 

魔法使い「はい、なんですか?」 

女勇者「…泣かそうとしてるでしょ?」 

魔法使い「ふふ、ちょっとだけ」ニコ 

僧侶「泣くの我慢しないで下さいね、勇者様。たまには私達に、弱い勇者様を見せて下さい」 

女勇者「…」ぽろ 

女勇者「!」ぐいっ 

女勇者「もう!さっさとお風呂入ろう!素振りしてたから汗臭いんだからー!」だっ 

魔法使い「あ、勇者様…そんなに走ると滑って危ないですよ」 

つるっ 

女勇者「きゃっ!?」 

ゴツン!! 

僧侶「ひゃあ!勇者様、頭打っちゃいましたよ!?大丈夫ですかぁ!?」 

女勇者「えへへ…大丈夫、大丈夫。恥ずかしいけどね…」ちろ 

かぽーん… 

女勇者「はぁ…生き返るねー」 

僧侶「ふぃー。ちょっと熱いですぅ…」 

魔法使い「そうですか?これくらいがちょうど良いですよ」 

女勇者「ふふ、僧侶ちゃんはいちいち言う事もやる事も子供みたいだねー。かわいいなぁ」なでなで 

僧侶「勇者様はお姉ちゃんみたいですもんねぇ」ニコ 

女勇者「そう?私もまだまだ子供だけどなぁ」なでなで 

僧侶「私、こうして勇者様に頭撫でられるの好きですよ」ニコニコ 

魔法使い「ちょっと、僧侶さん!のぼせてませんか?」 

僧侶「ふぇ?」 

女勇者「…ん?うわ!」 

魔法使い「鼻血出てますよ…!」 

・ 
・ 
・ 

僧侶「すびばせん…」 

女勇者「あはは、僧侶ちゃんならなんでも許しちゃうよー」 

魔法使い「ふふ、ほほえましいですね」 

女勇者「だねー。魔法使いちゃん、ありがとうね」 

魔法使い「はい?」 

女勇者「ずいぶん元気もらっちゃったみたいだよ。僧侶ちゃんも、ありがとう」ニコ 

僧侶「そんなことないですよぉ」 

魔法使い「そうです、私達は仲間なんですから」ニコ 

女勇者「うん!大事な仲間だね!」 

女勇者「だからね、二人とも。私の事忘れないでね?」 

魔法使い「え?もちろんですよ。忘れたくても忘れられません。ねぇ僧侶さん?」 

僧侶「はい!」 

女勇者「ふふ、ありがとう。ちょっと涼んで来ようかな。戦士くんは?」 

魔法使い「戦士さんは、下の酒場に居ると思いますよ」 

女勇者「そっかぁ。ちょっと行ってみるよ!ありがとうね、二人とも!」 

魔法使い「はい、行ってらっしゃい」 

僧侶「いってらっしゃぁい」ふりふり 

【酒場】 

戦士「マスター、もう一杯くれ」 

マスター「あいよ。旦那酒豪だねぇ。飲み慣れてるのかい?」 

戦士「いや、たまに嗜む程度だ。今日は相棒との別れの日だからな」 

マスター「ほう、剣でも折れたかい?」 

戦士「ああ…コイツにも世話になった。ゆっくり休ませてやりたい」 

マスター「覇者の剣…。あの伝説の鉱物で作られた剣か。そいつを折っちまうとは、相当のやり手だね」 

戦士「…それはわからんが…世話になった相棒だからな。別れは惜しいものだ」 

女勇者(あ…剣、折れちゃったんだ…) 

女勇者(…ごめんなさい、戦士くん) 

女勇者「隣、良いかな?」 

戦士「おお、勇者殿。どうぞ」 

女勇者「剣折れちゃったんだね…。ごめんね?」 

戦士「いや、勇者殿のせいではない。こいつも疲れたんだろう。まるで力尽きたように折れた」 

女勇者「戦士くんが素振りしてた時に?」 

戦士「うむ。勇者殿から返してもらい、俺が振りに行こうとしたらな」 

戦士「持ち上げただけで、根元から折れた。…なんだか、満足げだったよ」 

女勇者(本気で振っちゃったからなぁ…) 

女勇者「戦士くんは剣を愛してるんだね。剣も幸せだなぁ」 

戦士「はは、相棒だからな。最後くらいはこうして杯を共にしたいんだ」 

女勇者「それなのに、このドレス…剣を売ってまで買ってくれたんだね」 

戦士「ああ、旅立ってすぐの頃の…。うむ」 

女勇者「どうして、そんな大事なものを売ってまで?」 

戦士「恥ずかしながら、俺の持論でな」 

女勇者「へぇ?聞かせて欲しいなぁー」 

戦士「…人に言うほどのものではない」 

女勇者「えー、聞かせてよ!お願い!」 

戦士「……剣を愛するのはもちろんだが、その剣で守るべき者が悲しんでは意味がない」 

女勇者「……」ニコニコ 

戦士「だから言いたくなかったんだ。笑って構わんぞ」 

女勇者「ん?いや、やっぱり戦士くんはかっこいいなぁと思ってね」ニコ 

戦士「……」 

女勇者「マスター、私にもカクテルを一杯くださいなー」 

戦士「大丈夫なのか?勇者殿は未成年では…」 

女勇者「大丈夫だよ。ちょっとだけだしね」 

戦士「まぁ宿屋の下だから大丈夫か…。もし潰れてしまってもすぐに運べる」 

女勇者「えへへ、頼りになるなぁ。じゃあ潰れたらよろしくね」 

戦士「出来るだけ無理はしないようにな」 

マスター「はいよ、嬢ちゃん。お待ちどうさま」 

女勇者「えへへ、ありがとう。お酒なんて久しぶり」 

女勇者「…」くいっ 

女勇者「…うん、おいしい」 

戦士「マスター、俺にももう一杯」 

マスター「あいよ」 

戦士「…」ごくっごくっごくっ 

女勇者「おお…酒豪だねぇ」 

戦士「今日だけだ。次は…平和になってからだといいな」 

女勇者「その時は、また一緒にお酒飲もうね」ニコ 

戦士「そうだな。今日よりもっと美味い酒が飲めそうだ」 

女勇者「…えへへ」 

女勇者「戦士くん、今日の町のことなんだけど」 

戦士「……」 

女勇者「正義って、なんだろう?」 

戦士「……俺も、その事を考えていた。俺たちの行動は正しかったのか……」 

女勇者「……わからない。まだ、わからないよ」 

戦士「仮にあそこで、あの生贄の親子を見捨てていたら、こうして酒を嗜んでいることなどできない」 

女勇者「……もし、もう一回あの選択ができるなら。戦士くんなら、どうする?」 

戦士「もう一度あの親子を助ける。エゴかも知れん。だが俺の正義とはそういうものだ」 

女勇者「もう一回後悔するかもしれないよ?」 

戦士「それでもだ。もしあれを見捨てるような選択をすれば、俺は大切なものをなくしてしまう」 

女勇者「それってさ、すごいエゴだよね……それで街がひとつ滅ぶんだから」 

戦士「そうだな。しかしそれが俺の正義だ。正義は数や理論で計れるものではない。情こそが俺の正義だ」 

女勇者「それが正しいのかはわからないけど…そこまで言い切れるなんて、戦士くんはすごいなぁ」くいっ 

戦士「…言い切らなければ、やりきれないからだ。俺は結局自分の為にこうして…」 

女勇者「…自分のための正義、か」 

戦士「勇者殿の正義は、自分でしっかりと持っているといい」 

女勇者「私の正義は、まだわからないんだよ…」 

戦士「ならば見つければ良いだけの話だ。もちろんその責任は大きいが」 

女勇者「私の正義が、戦士くんとは違うものかも」 

戦士「心配はいらん。勇者殿がどんな正義を見つけても、それを勇者殿が正義だと信じる限りは」 

戦士「俺は必ず最後まで勇者殿についていく」 

女勇者「…私が悪を正義だと信じたら?」 

戦士「俺が目を覚まさせてやる」 

女勇者「……」 

戦士「……済まない、言い過ぎたか。忘れてくれ」ぐいっごくごく 

戦士「話しすぎた。俺も飲みすぎたかも知れんな」 

女勇者「あはは、私も。難しい話しちゃったね」くす 

戦士「まったくだ。頭がない二人がこんな話をしても仕方ないか」 

女勇者「む…私も頭ないって?」 

戦士「ふっ、言葉のあやだ。悪意があるわけじゃない」 

女勇者「ふふ、戦士くん」 

戦士「む?」 

女勇者「ありがとうね……」 

戦士「こちらこそ。多くを学ばせてもらった」 

女勇者「…えへへ……」 

戦士「マスター。もう一杯くれ」 

マスター「あいよ。旦那、お暑いねぇ。いやいや、羨ましいよ」 

戦士「はは、バカを言え」 

戦士「……」ごくごくごく 

女勇者「くぅ……くぅ……」 

戦士「……勇者殿」 

女勇者「くぅ…くぅ……」 

戦士「心配せずとも、こうして居ると普通の女の子だ」 

戦士「マスター、そろそろ上がるよ。ご馳走様」 

マスター「そうかい。お代はいただいてるよ」 

戦士「……勇者殿か?」 

マスター「はは、内緒だよって言われてるんでな。それは言えねぇや」 

戦士「そうか。ではそれは次にとって置いてくれ。今回は俺が払おう」 

マスター「そうかい。次は平和になってから…か?」 

戦士「そうなるといいな。その時はまた勇者殿と仲間たちを連れてこよう」 

マスター「よろしく頼むよ。期待して待ってるぜ」 

戦士「ああ。勇者殿、そろそろ帰ろう。勇者殿」ゆさゆさ 

女勇者「…くぅ…ママ……も……ちょっと…」 

【宿屋】 

戦士「軽い……」 

女勇者「…くぅ…」 

戦士(む…いかん、ドレスがはだけてきているな…) 

女勇者「くぅ…」こて 

戦士「…!!」 

戦士「この大きな傷は……間違いなく斬られた跡だ…」 

女勇者「……うん…?」 

戦士「……守るべき者、か。出来るならば戦わせたくないものだ」 

戦士「早く戦いを終わらせなければな、勇者殿」 

女勇者「……や…」 

戦士「ん?」 

女勇者「いやだ…よぅ……くぅ…」 

戦士「寝言か…」 

魔法使い「あ、お帰りなさい、戦士さん」 

僧侶「勇者様、寝てるんですねぇ。ふふ、かわいい」 

戦士「うむ。少し酒を飲んでいたのでな。ベッドに寝かせてやってくれるか」 

僧侶「はぁい。勇者様、ベッドで寝ましょうね」 

女勇者「う……うぇぇん……」 

僧侶「勇者様?」 

女勇者「もういやだ…いやだよぉ……!」 

僧侶「勇者様、どうなさいましたか?泣かないで…」 

戦士「なにか夢を見ているようでな。先ほどから寝言を繰り返しているのだ」 

女勇者「……もう………もぅ……くぅ……くぅ」 

【数ヵ月後・終盤】 

女勇者「いよいよ最終決戦も近いねー!」 

僧侶「そうですねぇ。長かったなぁ」 

魔法使い「いよいよですね。もうすぐ世界に平和を取り戻すことができるんですね…」 

戦士「そうだな。もうすぐ俺たちが望んだ世界が実現する」 

女勇者「うん!そしたら皆で祝杯あげようね!」 

僧侶「えへへ、楽しみだなぁ。きっと楽しいでしょうね」ニコニコ 

魔法使い「本当に、今思えば色々ありましたからね」 

戦士「うむ。今の俺たちが協力すれば魔王も必ず倒せるだろう」 

魔法使い「私たちも強くなりましたもんね。頑張りましょう、勇者様」 

女勇者「うん。頑張って、平和な世界にしよう!」 

魔法使い「ここが魔王城への最後の街ですね」 

戦士「ここで最終の調達になるのだな。何度も聞くが、勇者殿」 

女勇者「はい、なぁに?」 

戦士「本当に、その装備でいいのか?」 

女勇者「うん!もう随分古くなっちゃったけどねー」 

魔法使い「そうですね。勇者様がそれが良いというならば、それで行きましょう」 

僧侶「はい!勇者様、すごく似合ってますもんね」 

女勇者「えへへ…ありがとう」 

女勇者「皆、装備のチェックは良い?」 

戦士「うむ。問題ない」 

僧侶「大丈夫ですぅ!」 

魔法使い「はい。道具もすべて問題ありません」 

僧侶「いよいよ出発ですね…緊張しますけど、感慨深いですぅ」 

戦士「さぁ行こう、勇者殿。平和は目の前だ」 

女勇者「……うんっ!」 

【魔王の城】 

僧侶「ふぇぇ…すっごい大きいですぅ…」 

魔法使い「ここに、巨悪の根源…魔王が居るのですね」 

戦士「最後の城だ、敵はかなり手強いはず。心してかかろう」 

女勇者「うん、そうだね!僧侶ちゃん、魔法使いちゃん、MPは出来るだけ温存してね」 

僧侶「はぁい、わかりましたぁ!」 

魔法使い「了解です」 

女勇者「よし、じゃあ行こうか!」 

ギィ…… 

トテトテ 

トテトテ 

女勇者「怖がらなくても大丈夫だよ、僧侶ちゃん。こんな心強い仲間がいるんだから」 

戦士「うむ。なにかあっても俺が守ろう。僧侶たちがしっかりサポートしてくれ」 

魔法使い「私も、できる限り力になります。勇者様、皆でかならず魔王を倒しましょうね」ぐっ 

女勇者「ほら、この仲間がいるんだから。負けるはずないよ、僧侶ちゃん」ニコ 

僧侶「勇者様…そうですよね。ありがとうございます。私も精一杯がんばりますね!」 

女勇者「えへへ。私も頑張らなくっちゃね」 

戦士「勇者殿」 

女勇者「うん?」 

戦士「無理はするなよ」 

女勇者「うん!ありがとう。心配かけないように頑張るよ!」 

僧侶「絶対誰も欠けることなく、平和を取り戻しましょうね!」 

女勇者「…誰も欠ける事無く、か。そうだね」 

戦士「…勇者殿?」 

女勇者「戦士くん、いつか私が宿屋でした話、覚えてるかな?」 

戦士「…すまない、なんだろう」 

女勇者「私が平和な世界を見られなくても、その世界をよろしくねって」 

戦士「ああ……」 

女勇者「もし、私がいなくても……みんながいれば大丈夫だよね。きっと、ずっと平和は続くんだろうな」 

戦士「弱気になるな。誰も欠けることなく、平和をとり戻そうではないか」 

僧侶「そうですよ、勇者様!みんなで魔王を倒しましょうよぅ」 

魔法使い「そうです。ここまで苦楽をともにしてきた仲間なんですから。皆で喜びを分かち合えるよう、頑張りましょう」 

女勇者「えへへ……本当、いい仲間に恵まれたなぁ」 

トテトテ 

女勇者「平和な世界って、どんなだろうね?」 

戦士「それは素晴らしいものだろう。争いもなければ、理不尽に傷つくものもいない」 

僧侶「そうですねぇ…。きっと、世界中皆がやさしい気持ちになれるんじゃないでしょうか」 

魔法使い「今までの色んな犠牲の上に立っての平和ですものね。きっとそれ以上に素晴らしい世界になりますよ」 

女勇者「そうだよね。きっと、良い世界なんだろうなぁ」 

女勇者「いつかの生け贄の時みたいに、誰も傷つかなくてすむような世界」 

女勇者「……私も、見てみたいよ」 

戦士「そうだろう。ならば、今は生き残れるように戦うしかない」 

魔法使い「ええ。私たちが勇者様を必ずお守りしますからね。頑張りましょう」ニコ 

女勇者「……ありがとう」 

女勇者「ああ、なんだか皆に会うために今まで旅を続けてきたような気さえするよ」 

女勇者「皆……私についてきてくれて、ありがとね」ニコ 

戦士「勇者殿。なにか不安なことがあるのか?」 

女勇者「えへへ……。ちょっと恥ずかしいけどね。皆と別れるのが怖いの」 

僧侶「勇者様……」 

女勇者「こんな事言うと怒られちゃうかもしれないけどね。私……」 

戦士「……?」 

女勇者「この戦いが終わったあと、皆と一緒に居られる気がしないんだ」 

魔法使い「そんな、どうして……」 

女勇者「わかっちゃうの。私には、わかっちゃうの……」 

女勇者「勇者なのにこんな事言ってごめんね?ちょっとだけ、弱音吐いていい?」 

戦士「構わんよ。俺たちの前でなら、いくらでも弱さを見せてくれていい」 

僧侶「私、勇者様に言った事あるでしょう?弱い勇者様も見せてくださいねって」 

魔法使い「勇者様…私たちのことを信頼してくださるならば、どうぞいくらでも…」 

魔法使い「私たちはそれを受け入れられるくらいには、強くなったはずですよ」ニコ 

女勇者「皆…!!」ぽろぽろ 

女勇者「私…戦いが終わってほしくないよ…」 

女勇者「世界が平和になって、皆と離れ離れになるくらいなら…」 

女勇者「…う…うぐ…こんな事言ってごめんね?勇者なのに…」ぽろぽろ 

女勇者「でも、私……それなら、平和なんていらないから…皆、私を置いていかないで…!!」ぽろぽろ 

戦士「……勇者殿。俺たちは勇者殿を置いていったりしない。絶対にだ」 

僧侶「そうですよぅ。私たちは勇者様に命を預けてここまでついてきたんですから!」 

魔法使い「私たちの絆は、何があっても切れたりはしませんよ」 

魔法使い「たとえ死んでも、相手が神様だろうと、私たちの絆を断ち切れはしません」 

戦士「うむ。だから、安心するといい」 

女勇者「……うぇええん……」ぽろぽろ 

僧侶「だから、ほら。勇者さま。もう泣かないで?」 

なでなで 

女勇者「僧侶ちゃん……!!」 

女勇者「…ふぅ。ごめんね、取り乱しちゃって。恥ずかしいなぁ」 

僧侶「ふふ、良いんですよ。私だってしょっちゅう泣いちゃってますから」 

女勇者「…勇者なのにね。私がこんな事言っちゃだめって、わかってるのに」 

魔法使い「それでいいと思いますよ」 

戦士「勇者殿は、勇者である前に一人の女の子だ。俺たちにまで弱さを隠す必要はない」 

女勇者「そうだね。私、女の子だったんだ…」 

戦士「なんだ、忘れていたのか?」 

魔法使い「こんなに美しいお顔をしていらっしゃるのに。他の女性が聞くと怒りますよ」 

僧侶「ふふ、ほんとですよぅ。女の私から見たって綺麗なのに」 

女勇者「…あはは、褒めすぎだよ。でも、ありがとう」 

女勇者「ふぅ、なんだかすっきりしちゃったな」 

魔法使い「そういうものかもしれませんよ。弱さを見せるのもまた強さですから」 

女勇者「そうだね。皆の前だからこそ思いっきり泣いちゃったんだと思う」 

女勇者「でも、大丈夫。やるべきことは見失わないからね!」ニコ 

女勇者「魔王を倒そう。そして、世界に平和を取り戻さなくっちゃ!」ぐっ 

僧侶(…あぁ、本当に強い人。この人についてきてよかったなぁ…) 

戦士「む…!」 

魔法使い「あ…。どうやら敵のようですね」 

僧侶「そうみたいですね。敵は一人ですかぁ…」 

女勇者「ああ、そうだったね、確か。あれは……」 




コツ… 
コツ… 
コツ… 

魔物「お久しぶりですね」 

戦士「な!?」 

僧侶「あ…あなたは……!」 

魔法使い「どうしてここに…!?」 

女勇者「……」 


コツ… 


魔物「覚えていただけたんですね。私は忘れもしなかった」 

魔物「あなたたちに復讐するこの日を、夢にまで見ましたよ」 

魔物「父を殺され、町を滅ぼされた恨みを、今ここで晴らしましょう」 

魔物「私の町を滅ぼし、今もまだのうのうと世界平和を謳い続けるあなたたちを」 

魔物「世界中の人々が許しても…あなたたちを自分を許しても」 

魔物「私が、許させはしません」 


コツ…コツ… 


僧侶「あなたは…生け贄の町の……!!」 

僧侶「戦えません……私には無理です……」 

魔物「貴方たちが去ってから数日、私たちの町は魔物に襲撃を受けました」 

魔物「男は嬲り殺され、女はさらわれ、見るに耐えない光景でした…」 

魔物「私もあなたたちを呪いながら、死を覚悟した時…」 

魔物「私にとって神にも見えるお方から、チャンスをいただいたのです」 

魔物「この惨事を招いた元凶に復讐するチャンスを、いただいたのです」 

ざっ 

魔物「覚悟してください」 

戦士「くっ…!!戦うしかないのか…!?」 

魔法使い「そんな…!!勇者様!!」 

女勇者「……」ぎり 

女勇者「みんな、先に行ってくれる?」 

戦士「なんだと!?」 

僧侶「そんな…!!できません!!」 

魔法使い「勇者様はほとんど戦闘に慣れていらっしゃらないのに…!!戦うなら私たちが!」 

女勇者「いいの。戦士くん、酒場で言ってくれたよね、私の正義を見つけなさいって」 

戦士「しかし!!」 

女勇者「これが私の正義だと思う。だから、私についてきてくれるんでしょ?」 

戦士「……」 

女勇者「ここまで信じてついてきてくれたんだから。私を信じて!ね?」 

戦士「よし。信じよう。最後まで勇者殿の正義についていく」 

魔法使い「戦士さん!!」 

戦士「我々が命と見立ててついてきた人の決断だ。信じよう」 

僧侶「…わかりました!」 

戦士「ただし、勇者殿。絶対に追いついて来てくれ。俺たちは先に行くだけだ」 

女勇者「うん、必ず!ありがとう戦士くん!」 

たったった… 

魔物「ふふ、いいのですか?お一人で」 

女勇者「良いの。これは償いでもあるからね」 

魔物「説得しようというおつもりでしょうか?無駄ですよ」 

女勇者「うん、知ってるよ。君は死ぬまで私に襲い掛かってくるもんね」 

魔物「…そのつもりです。あのお三方をみすみす行かせたのもそう。あなたを倒すため」 

女勇者「そうか。えへへ…一人で残るのは初めての試みだなぁ。…どうなるんだろう?」 

魔物「何を仰っているのかわかりませんが、私の目的はひとつ」 

魔物「あなたを殺します」 

女勇者「…よし、来い!」きっ 



魔物「ぐぅおおおおおおおおお!!!!!」 

ズシャアッ!! 

女勇者に1のダメージ! 

魔物「……!?」 

女勇者「守備力低下魔法(最大)」 

ひゅううん…… 

魔物「じ、自分の守備力を下げた…!?」 

女勇者「守備力低下魔法(最大)、守備力低下魔法(最大)、守備力低下魔法(最大)!」 

魔物「何を考えていらっしゃるのです?気でも違えましたか?」 

女勇者「痛みを伴わない償いなんてないでしょ?」 

女勇者「これでいいんだよ。大丈夫、私は死なないから」 

魔物「…馬鹿にするのもいい加減に…してください!!」 

魔物「グゥオオオオオオオ!!!!!」 

ザシュッ!ドカッ!!! 

女勇者に20のダメージ! 

女勇者「守備力低下魔法(最大)」 

女勇者に68のダメージ! 

女勇者「痛い……えへへ、こんなの久しぶりだな」 

グサァ!! 

痛恨の一撃!女勇者に291のダメージ! 

女勇者「きゃう…!!!」 

魔物「はぁ、はぁ…ぐがぁぁあああ!!!」 

ザシュ!! 

女勇者に103のダメージ! 

女勇者「ぐ…あ……」 

グサァ!! 

痛恨の一撃!女勇者に320のダメージ! 

魔物「どうして……どうして……」 

グサァ!! 

痛恨の一撃!女勇者に314のダメージ! 

魔物「反撃しないんですか…!!!」 

魔物「はぁ……はぁ……」 

女勇者「…復讐は……?終わり……?」 

魔物「ぐがぁぁ!!!」 

ザシュ…!! 

女勇者「あがぁ……」 

魔物「う……う、ぅ……」 

女勇者「………私、死ねないから…これくらいでしか償いはできないけど」 

魔物「うぇ……え…」ぽろぽろ 

女勇者「あなたが受けた苦しみを、少しでも私にが和らげることができるのなら…」 

魔物「私がやっていることは…復讐は……結局、同じことなんですか…?」

魔物「そうやって、自己満足の正義を…もう見せびらかさないで…」ぽろぽろ 

女勇者「……ご……め、なさ……」 

魔物「もう……もう、終わりにしましょう。空しいだけです…」 

女勇者「……もう一突きで…私は、死…ぬと思うよ…?」 

魔物「そしてまた復讐を呼び、悲しむ人が増えるだけ……」 

女勇者「……そ、…か」 

魔物「パパも、そんな事望んでないよね…」 

女勇者「……」 

魔物「勇者様、お仲間の所へ。もう…終わりましょう。ごめんなさい…」ぽろぽろ 

魔物「回復魔法(大)」 

ぱぁぁぁ 
女勇者のHPが500回復した 

女勇者「…い、いの…?」 

魔物「私も許されざる過ちを犯しました。もう…私も…」 

魔物「この姿になったからには、もう人としては生きられません。私を…殺していってください」 

女勇者「だめ…!その姿でも、きっと…!」 

魔物「いいのです…。過ちは過ち。罪は償わないといけない。そうでしょう?」 

女勇者「…生きて償おうよ」 

魔物「あなた様は、魔王様を倒して平和な世界を手に入れるのでしょう?」 

女勇者「…うん」 

魔物「でしたら、元より私は魔王様が死ねば滅びる運命…」 

女勇者「!!」 

魔物「それならば、せめて…あなたの手で、眠りにつかせてほしいのです」 

女勇者「……私は」 

魔物「お願いです…。もう、父のもとへ…」 

女勇者「……わかったよ」 

魔物「…ありがとうございます」ニコ 

魔物「…パパ。パパ」 

女勇者「……」 

魔物「パパ、ごめんね?みんなごめんね?」 

女勇者「睡眠魔法(最大)…」 

魔物「パパ、もうす……あえ…パ………」 

魔物「ぱぱぁ……」 

女勇者「……」 










魔物を倒した。 
経験値10032ポイントを獲得。 
女勇者は『思い出のペンダント』を手に入れた。 

女勇者「『思い出のペンダント』か。こんなアイテムがあったんだぁ…」 

女勇者「ごめんなさい…ごめんなさい」ぽろぽろ 

女勇者「……うぅ……」ぽろぽろ 

女勇者「…」ぐいっ 

女勇者「泣いてちゃダメだよね。この子のためにも…」 

女勇者「一刻も早く、世界を救わないと!」きっ 

女勇者「えへへ。今回の旅で、またちょっと強くなれたかな?」 

女勇者「さぁ!ここからは未知の領域。気を引き締めて行こう!」 

女勇者「まずは先に出発した皆に追い付かないと」 

女勇者「皆のレベルなら大丈夫だと思うけど、急ごう…!」 

トテトテ 

トテトテ 

女勇者「…ずいぶん時間もかかっちゃったな。皆かなり行っちゃったかも」 

トテトテ 

トテトテ 

魔物「ぎゃぎゃぎゃぎゃ!」 

女勇者「…邪魔しないで。邪魔しなければ何もしないから」 

魔物「ぎゃぎゃー!」 

女勇者「もう!」 

ぐしゃ! 

魔物を倒した! 

トテトテ 

女勇者「あれは…!」 

女勇者「戦士くんの剣!?」 

床に戦士の剣が落ちている。 
女勇者は戦士の剣を手に入れた。 

女勇者「……戦士くんが武器を置いて行くはずないよね」 

女勇者「ここで何かあったんだ…!!」 

女勇者「……死んでないよね。だって戦士くんだよ?」 

女勇者「当然だよね。約束したんだから!私に後から追いつけって」 

女勇者「……言ってたもんね…?」 

女勇者「…私の今までの旅で、1番の仲間達なんだから」 

女勇者「……床に血が…」 

女勇者「……」 

女勇者は戦士の剣を装備した。 

女勇者 皮のドレス E 
戦士の剣 E 

女勇者「…待っててね、戦士くん」 

タッタッタッタ 

女勇者「僧侶ちゃん、魔法使いちゃん…!」 

タッタッタッタ 

女勇者「私が追い付くまで、どうか無事で…」 

タッタッタッタ 

女勇者「約束は、必ず守るからね!」 



魔王の側近「残念ですが、約束は果たされません」 

女勇者「!!」 

魔王の側近「いや、まさかあの半魔を一人で倒してしまうとは。なかなかの腕前」 

魔王の側近「それとも、やはり半人半魔など出来損ないに過ぎなかったのか」 

女勇者「この外道…!あの子を魔物の道に逸れさせたのは…」 

魔王の側近「その通り、私です」 

女勇者「く…!戦士くん達は!?」 

魔王の側近「言ったはずですよ。約束は果たされない。貴女は彼らに追い付く事はないと」 

女勇者「……!!」ぎり… 

魔王の側近「さて、貴女は選択する事が出来ます」 

女勇者「…なに?」 

魔王の側近「貴女達は確かに強い。私達魔物を脅かすパーティです」 

魔王の側近「しかし所詮は人間の群れ。ばらばらになれば私達に敵う事はありません」ニヤニヤ 

女勇者「まさか」 

魔王の側近「くくく…」 

女勇者「お前!!!」がばっ 

魔王の側近「おっと。貴女にはまだ選択肢を与えていませんよ?」 

魔王の側近「単刀直入に言いましょう。選びなさい。世界を取るか、お仲間を取るか」


魔王の側近「貴女のお仲間は死んではいません。大切な人質ですからね」 

女勇者「戦士くん達は生きてるの?!」 

魔王の側近「ええ。そして……魔王様は今、この城にはおられません」 

女勇者「え…」 

魔王の側近「ようやくお気づきですか。そう、すべては貴女方をここに留まらせるための囮」 

女勇者「そんな!じゃあ魔王は今どこにいるの!?」 

魔王の側近「つい先ほど、魔王軍を引き連れて…人間共を滅ぼしに」 

女勇者「くっ…!今すぐに追いついて倒せば…!」 

魔王の側近「ほう?お仲間を見捨ててですか?」 

女勇者「!」 

魔王の側近「貴女のお仲間は今この奥の部屋に拘束しております」 

魔王の側近「それぞれ、別々の鍵を使ってね」 

魔王の側近「そしてその鍵は…この広い城のどこかに」 

女勇者「どこまで…私をバカにするの?」 

魔王の側近「くくく…。選択権はあなたにあります。どちらを選ぶのも貴女しだい」 

魔王の側近「ひとつの村よりも一人の小娘を助ける貴女が、仲間を見捨てて世界を救えるのならね!」 

魔王の側近「はっはっはっはっは!!」 

女勇者「とことん外道だね…。でも、おかげさまで」 

魔王の側近「なに?」 

女勇者「…私の正義を貫けるよ!!」 

魔王の側近「ほう。では、仲間を見捨てるというのですね」 

女勇者「えへへ。どうやら、私の10回の冒険は無駄なんかじゃなかったみたい」 

魔王の側近「は…?」 

女勇者「なんにも迷うことなんかないじゃない!みんなを助けて、魔王を倒しに行く。順番どおり!」 

魔王の側近「おやおや。窮地に立たされて現実逃避ですか」 

女勇者「どうだろうねー?皆はこの奥にいるんだよね?」 

魔王の側近「その通り。鍵はもちろん別の場所にありますが」 

女勇者「よーし」ぐいっ パキッ パキッ 

魔王の側近「おや、私と戦うとでも?」 

女勇者「もちろん!ふふ、久しぶりだなぁ…本気で戦うのなんて!」 

魔王の側近「でかい口は私を倒してからにしてもらいましょう」 

女勇者「もう謝っても許さないよ?それだけのことをしてくれたんだから」 

魔王の側近「それは…この魔法を受けてからにしてもらいましょう!」 



魔王の側近は両手を掲げて詠唱を始めた。 
悪の気が側近の両手に集まっていく! 

魔王の側近「暗黒魔法(最大)!!!!」 

魔王の側近は溜まった気を放った! 

女勇者「初めて見たときはびっくりしたなぁ、この技」 

女勇者「もう…さすがに何十回も見たら迫力ないね」ピン! 

しかし魔法は弾かれた。 

魔王の側近「…え?え?」 

魔王の側近「私の魔法、弾き返され…え?」 



女勇者は戦士の剣を鞘におさめた。 

魔王の側近「な、なんだ?諦めたのk 


魔王の側近を倒した! 
牢屋の鍵Aを手に入れた! 

女勇者「よし!待っててねみんな!」 

トテトテ 

女勇者「…この奥の部屋に、皆がいる!!」 

トテトテ 

ガチャ 

きぃ…バタン! 

女勇者「……みんな!!お待たせ!」 

戦士「勇者殿!!!」 

僧侶「ゆ、勇者様ぁ…!!」 

魔法使い「いけません、勇者様!私達のことはいいです、早く魔王を追いかけてください…!」 

女勇者「大丈夫。みんなで魔王を倒しに行こう!」 

戦士「いかん、勇者殿…俺達に構っている間にも、人々が魔王の手に!!」 

女勇者「大丈夫。戦士くん、これが私の正義だから!」 

僧侶「だめです!勇者様、鍵を探している時間なんてないんです!」 

魔法使い「一人でも、やるしかないんです…お願いします、行ってください」 

女勇者「…私がもし今ここで皆を見捨てて平和を手にしても、私はそんな平和見たくもないよ」 

僧侶「勇者様!!だめですぅ!!」 

女勇者「私一人のわがままで世界を滅ぼすわけにはいかないよね、わかってる」 

戦士「だったら、頼む…!勇者殿、行ってくれ!」 

女勇者「だけど、私はそれをワガママで終わらせないだけの事をしてきたんだよ!」 

魔法使い「でも、鍵をひとつずつ探す時間なんて…」 

女勇者「鍵はひとつ持ってるし、他の鍵の在り処もわかってる。それに…」 

女勇者「鍵は必要ないから!」 

戦士「は?何を言っているんだ、勇者殿!」 

女勇者「みんな、私を怖がらないでね?しゃがんでくれる?」 

僧侶「え…こうですか?」すっ 

魔法使い「戦士さん、ここまで来たんです。勇者様を信じましょう」すっ 

戦士「…うむ。わかった。これでいいか?」すっ 

女勇者「オッケー!いくよ!」 

ブンッ 

ガシャアアアアア!!!!!! 

戦士「…な」 

魔法使い「檻が……切れた……?」 

僧侶「ふ……ふぇぇぇえん……!」 

女勇者「……さぁ、行こう!みんな!」 

戦士「………うむ。行こう」 

魔法使い「はい。…勇者様、行きましょう!」 

僧侶「うぇぇぇん…死ぬかと思ったよぅ…!!」ぷるぷる 

女勇者「僧侶ちゃん、ごめん。ちょっと掠っちゃった?」 

僧侶「帽子が…溶けちゃいましたぁ…。でも大丈夫です…ちょっとビックリしちゃっただけだから」ぐすん 

戦士「よし、行くぞ勇者殿!一人も欠けることなく、魔王を倒しに!」 

魔法使い「そうですね!そして一人も欠ける事無く、世界に平和を!」 

女勇者「…!」 

女勇者「うん!!!」 

タッタッタッタ 

女勇者「…ねぇ、戦士くん」 

戦士「む?どうした勇者殿」 

女勇者「聞かないの?」 

戦士「…勇者殿は勇者殿だ。俺達がついていくと決めた人だ」 

女勇者「…戦士くん」 

戦士「過去に何があろうとも、どんな力を持っていようと、俺達の信じる人は変わらない」 

戦士「何があっても、勇者殿の正義についていくと言っただろう?」 

女勇者「…!!うん。ありがとう。本当に、皆と仲間になれて良かった」 

戦士「それはこちらもだ。最後の最後で足を引っ張ってしまって済まない」 

女勇者「そんなことない!仲間のおかげで、私はやっと答えを見つけられそうだから…!」 

戦士「…そうか」 

女勇者「戦いが終わったら、全部話すよ。とにかく今は、魔王に勝とう!」 

タッタッタ 

魔法使い「!!……間に合ったみたいですね」 


【最終決戦】 

僧侶「ついに…ここまで来ましたね」ぐっ 

魔法使い「こ、これが…魔王!」 

戦士「ものすごい威圧感だ…強い……!!」チャキ… 

女勇者「……さすがに、強いね。他の魔物とは桁が違う」 



魔王「来たか」 

魔王「!」 

魔王「ほう。勇者一人で来るものだと思っていたが…」


女勇者「魔王。あなたを倒して、私達人間の世界に平和を取り戻すよ」 

魔王「良かろう。余は貴様を倒して魔族の平和を作り上げる」 

女勇者「…勝つよ!」 

魔王「もはや言葉は不要。勝てば正義、負ければ絶滅。それだけのことだ」 

女勇者「…そうだね。行くよ、皆!!」 

戦士「応!!」 

僧侶「サポートはお任せください!」 

魔法使い「必ず勝ちます!」 

女勇者「私も…全力で魔王を倒す!!」ぐっ 

魔王「破壊を」 

魔王の邪気が空を覆っていく…! 
邪気が雷雲となり、悪魔の雷(いかずち)が起こる! 

女勇者「みんな伏せて!!」 

戦士「勇者殿!?」 

女勇者「たぁっ!!」 

なんと女勇者が高く飛び上がり、自らの身体で雷を受け止めた! 
女勇者に23のダメージ! 

僧侶「勇者様!!大丈夫ですか!?」 

女勇者「うん、大丈夫。それよりも、皆に防御魔法をかけてあげて。そう何度も全体攻撃を防げない」 

僧侶「わかりました!」 

僧侶「神よ…この者達を護りたまえ。魔法防御(全体)」 

ぱぁぁ… 

女勇者は魔法攻撃に強くなった! 
戦士は魔法攻撃に強くなった! 
魔法使いは魔法攻撃に強くなった! 
僧侶は魔法攻撃に強くなった! 

戦士「はぁぁ!!」 

がちぃ! 

戦士の攻撃。 
魔王に17のダメージ! 

魔王「なんと非力な…。これが人間の力か。去ねい」 

ごしゃっ 

魔王の攻撃。 
戦士に212のダメージ! 

戦士「…が…!」 


魔法使い「戦士さん!!…灼熱魔法(最大)!!」 

魔王「魔法というのはこう使うのだ」 

魔王の指から一筋の光がほとばしる! 
魔法使いに198のダメージ! 

魔法使い「きゃぁ!?」どさっ 

女勇者「魔法使いちゃん!!く…全体回復魔法(最大)!」 

ぱぁぁぁ… 

戦士「かたじけない…!!」 

魔法使い「助かりました…」 

女勇者「良いよ!それより、ほら!次が来るよ」

魔法使い「魔法防御をかけてもらっていなければ、死んでいました…」 

僧侶「でも、これじゃ一向に攻撃できません…!」 

女勇者「…皆、一度だけ身を護ることに専念してくれる?」 

僧侶「は、はい!わかりました!」ぐっ 

魔法使い「身を守ればいいのですね?」ぐっ 

女勇者「うん!私が攻撃してくる!!」 

僧侶「あ!!戦士さん、勇者様の声が聞こえてません!!」 

女勇者「え?!」 

戦士「うおおおおお!!!」 

女勇者「戦士くん!今はダメぇ!!!!」 



魔王は鋭い眼光で戦士を睨んだ。 

女勇者「戦士くん!」 



戦士は石になってしまった! 





魔王「愚かな…人間とはなぜこうも愚かなのか」 

魔王「力も持たぬのに、なぜ希望を持つのか?余にはわからぬ」 

魔王「わかる必要もないがな」 

女勇者「やめてぇえええ!!!!」 

魔王の攻撃。 
戦士の身体は粉々に崩れ去った…… 

女勇者「あ……あ…」 

魔王「貴様もだ。余にはわからぬ。なぜこの足手まとい共を連れているのだ」 

魔王「貴様一人のほうが強いのだろう?なぜ一人で戦わない」 

魔王「邪魔ならば殺せばよいではないか。余は貴様と戦いたい」 

魔王「邪魔者を排除してやったのだ。さぁ、来い」 

女勇者「………」すっ 




女勇者は戦士の剣を装備した。 

女勇者「…した」 

魔王「む…?」 

女勇者「たし……大事な…ころしたな」 

魔王「ふ、なにを悲しむことがある?貴様も足手まといが居なくなって喜ぶべきだろう」 

女勇者「殺したな…!!」 

女勇者は戦士の剣を強く握り、力を溜めた。 

女勇者「私の、大事な仲間を…!!!」 

女勇者「殺した!!!!!」 

女勇者「強い私と戦いたいなら!望みどおりにしてあげる!!」 

魔王「む…!!」 

女勇者「うあああああああああ!!!!!!!!!!」 



女勇者は握り締めた戦士の剣で思い切り魔王を叩き切った!! 

魔王の身体は真っ二つに断ち切られた!! 

斬撃は地面を割り、山を斬り、海を裂いて進んでいく!!! 





魔王を倒した! 

僧侶「ゆ…しゃ、さま…」 

魔法使い「終わりましたね……」 

女勇者「……うん」 

僧侶「…戦士さんは、その…」 

女勇者「わかってるよ。復活魔法じゃ生き返らない…よね」 

僧侶「はい。あまりにも肉体の損傷が激しくて…すみません…」 

女勇者「僧侶ちゃんが悪いんじゃないよ」ニコ 

女勇者「…それに、復活の方法がないわけじゃないしね」 

魔法使い「え?」 

女勇者「…えへへ。私、はじめて勇者に生まれて良かったと思うよ」 

僧侶「え?まさか…」 

魔法使い「いけません!!」 

女勇者「私の命を与えられる魔法。勇者にだけ許される魔法があるんだ」 

僧侶「……そんなの、いやです」ぽろぽろ 

女勇者「私のHPMPなら、きっと生き返ると思うんだよね」 

魔法使い「…戦士さんは、喜ぶでしょうか?勇者様が犠牲になって、喜ぶでしょうか?」 

女勇者「…どうだろー?ただ、私が助けたいだけだから…」 


女勇者「これも、私の正義だから…反対しないで欲しいんだ」 

僧侶「…えぐ……ひ、…う……」 

魔法使い「……」 

女勇者「二人には、話しておくね。本当のこと」 

僧侶「本当の…事…?」 

女勇者「うん。私が今まで生きて、体験してきたことを…伝えなくちゃね」


女勇者「どうやったらこのループを抜け出せるのか、必死に考えて、色々試してみて…」 

女勇者「色々あったんだよ、本当に。傷の事で仲間から見放されたりもしたの」 

僧侶「そんな…ひどい…!」 

女勇者「時には、気がおかしくなっちゃうような時だってあったんだ。そして今回…」 

女勇者「やっと答えを見つけられたと思ったんだよ…?」 

魔法使い「勇者様…」 

女勇者「傷の事も受け入れてくれて、私っていう人間も受け入れてくれて…」 

女勇者「正義の葛藤の答えにも近づけて…やっと、やっと…終わると思ったのに!」 

女勇者「初めて出会えた素晴らしい仲間を…死なせてしまった…!!」ぽろぽろ 

僧侶「勇者様…」 

魔法使い「わかりました。…もう泣かないでください。ね?」 

女勇者「うっ…うぅうう……!!」ぽろぽろ 

魔法使い「辛かったですね…。勇者様」なでなで 

女勇者「うん…うん…!辛かった…辛いよぅ…!!」ぽろぽろ 

魔法使い「私達を素晴らしい仲間だと思ってくれて、本当に幸せです」 

女勇者「うん…!だ、から…戦士くんを……!生き返らせ…て…!」 

女勇者「私はどうせ、も、一回…」 

魔法使い「……勇者様が決めたことですものね。私達も、最後までお付き合いします」ニコ 

女勇者「う…うぇぇん……」 

僧侶「落ち着きましたか、勇者様?」 

女勇者「うん。…えへへ、最後までみっともないところ見せちゃってごめんね」 

僧侶「ふふ、そんなことありませんよぉ」 

女勇者「本当に…今までありがとうね、二人とも」 

僧侶「私こそ…本当にありがとうございました」 

魔法使い「勇者様、私達の事…忘れないでくださいね」 

女勇者「もちろんだよ。戦士くんにも、目覚めたらありがとうって伝えてね?」 

僧侶「…はい。必ず、伝えます」 




女勇者は静かに目を閉じ、自分の生命力を両手に集め始めた。

女勇者の命が光となってパーティの頭上から降り注ぐ。 

僧侶の体力が回復した。 

魔法使いの体力が回復した。 

戦士は生き返った。 




女勇者は力尽きた。



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【SCENARIO】   ○○ ○○ 

【WRITER】   ○○ ○○ 

【CHARACTER DESIGN】   nanashi 

【SPECIAL THANKS】   VIPPER 

【PRESENTED BY】   ◆r3yksmPHg2 

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女勇者「……ふぁ。……また、かな」 

女勇者「…これで、11回目の旅立ちかぁ」 

女勇者「……あは、ははは」 

『…さま』 

女勇者「あぁ、まだ…幻聴が聞こえる」 

『…しゃさま…』 

女勇者「さっきまで、一緒にいたんだもんね…」 

『勇者様!』 

女勇者「……」 

・ 
・ 
・ 


女勇者「!?」がばっ 

僧侶「ああ、良かった…!!!勇者様!!」 

女勇者「え…?僧侶ちゃ…ん?あいたた…」ズキ 

僧侶「あ、まだ無理なさらないでください…ボロボロなんですから」おろおろ 

女勇者「ど、どうして…私…自己犠牲魔法で、死んだはずじゃあ…」 

戦士「…勇者殿、申し訳ない…!!俺がふがいないばかりに…!!」 

女勇者「戦士くん!生き返ったんだね!良かったぁ…でも…どうして…?」 

僧侶「ふふ、私も忘れてたんですけどね、勇者様…一緒にお風呂入った夜、覚えてますか?」 

女勇者「うん…素振りしてた日、だよね?」 

僧侶「あの日、私隠れてちょっと見てたんですけど、勇者様一人でなんて言ってましたか?」 

女勇者「え?なにか言ってたっけ…?」 

僧侶「覚えてませんか?ふふ、勇者様はね…こんな事言ってたんですよ」 

女勇者「…あ!私も忘れてた!」 

僧侶『自爆魔法でも死ねない身体になっちゃったけど』 

女勇者「あは、あはは…」 

僧侶「あの時はただの冗談だと思ってましたけど、さっきのお話聞いて思い出して…」 

僧侶「倒れた勇者様も、まだやっぱり息があって…必死に回復魔法かけたんです」 

女勇者「そうだったんだ…」 

僧侶「でも…良かった」じわ 

女勇者「そうだね、ありがとう僧侶ちゃん…」ニコ 

僧侶「よかったですよぅ、勇者さまぁ!!」ぎゅ 

女勇者「自爆魔法なんて最近は絶対に使わないから、忘れちゃってたのかな…?」 

魔法使い「…勇者様、ループは抜けられたんですね」 

女勇者「うん。みんなのおかげだよ…本当にありがとう」 

魔法使い「…良かった。私も、本当にうれしいです」じわ… 

戦士「うむ。本当に……勇者殿についてきて良かった。ありがとう」 

女勇者「私も…戦士くんがいてくれて、本当によかったよ」ニコ 

女勇者「…えへへ、約束…果たせたね」 

戦士「うむ」 

女勇者「一人も欠ける事無く、平和な世界を…!!」 

戦士「さぁ。その平和な世界を…俺達が望んだ光景を、皆で見に行こう」 

女勇者「あ、待って!まだやらなくちゃいけない事があるんだ」 

僧侶「ふぇ?なんですかぁ?」 

女勇者「魔法使いちゃん、移動魔法で連れてって欲しいところがあるの。いいかな?」 

魔法使い「はい、どちらへでもお連れしますよ」 

女勇者「…皆、生贄の町へ行こう」 

戦士「あの町に?構わんが、いったいなぜ?」 

僧侶「…あの町、ですか…」 

女勇者「うん。さ、行こう!」 

【エンディング・生け贄の町跡地】 

女勇者「あの、生け贄の子がこれを持っていたんだ…」 

『思い出のペンダント』 

女勇者「お父さんのお墓に備えて欲しいって…」 

戦士「…俺達は、この町を救えなかったんだな」 

女勇者「うん…」 

僧侶「忘れてはいけませんね。私達だけじゃなく、世界中の人々も…」 

魔法使い「様々な犠牲の上、やっと手にした平和だという事を…ですね」 

女勇者「…このループで、本当に色んなことを見つけたよ」 

戦士「そうか。そのために勇者殿はループを繰り返してきたのかもしれないな」 

女勇者「…うん。そうなのかも」 

戦士「そして…ループの答えはわかったのか?」 

女勇者「えへへ、いっぱいありすぎて。自分の正義とか、本当の強さとか…」 

女勇者「でもね、どれも私だけじゃ見つけられなかった…戦士くん、僧侶ちゃん、魔法使いちゃん」 

女勇者「皆に会えたからこそ、私は…成長できたんだと思う」 

女勇者「やっぱり、皆にめぐり合うためにループしてたんじゃないのかな」ニコ 

女勇者「ああ。やっと望んだ平和に会えるんだね……」 

女勇者「さぁ、これを供えて…」 

女勇者は思い出のペンダントを墓の前に置いた。 
廃墟と化した町の片隅に暖かい風が吹き、墓の前に咲く花が静かに揺れた。 


女勇者「………」 

戦士「さぁ、行こうか勇者殿。いつかの約束を果たしに行こう」 

僧侶「え?なんですかそれ?」 

戦士「前に勇者殿と飲んだときにな。平和になったらもう一度行こうと約束したんだ」 

魔法使い「え、私知りませんよ?連れて行って欲しいなぁ」 

戦士「もちろんだ。みんなで行くに決まっているだろう。なぁ勇者殿?」 

女勇者「うんっ!!さぁ、私達の望んだ平和を見に行こう!」 

僧侶「あ、あの私、あんまりお酒は…」 

女勇者「あはは!気にしない気にしない!つぶれちゃえばいいよ!さ、行こ!」 

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【SCENARIO】   ○○ ○○ 

【WRITER】   ○○ ○○ 

【CHARACTER DESIGN】   nanashi 

【SPECIAL THANKS】   VIPPER 

【PRESENTED BY】   ◆r3yksmPHg2 

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  強くてニューゲーム 
 ニア保存して終わる 
  保存しないで終わる 

保守・支援thxでした。 
そして何より、遅筆で申し訳ありません。 
読んでいただけてうれしい限りです。 
勇者もののSSを書くのは初めてで、四苦八苦しながら書いていました。 
書き溜めが苦手なので… 
また何か書くときはよろしくお願いします。ありがとうございました 












出典:女勇者「強くてニューゲームっ♪」
リンク:http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1239983580/l50

出典:女勇者「強くてニューゲームっ♪」
リンク:http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1240117946/l50
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