メグミ (泣ける体験談) 44243回

2005/01/28 20:27┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
泣けるかどうかわからないが。
俺の中でもそろそろ気持ちの整理がついたから話そうと思う。

当時俺は高2だった。
そのときのクラスメートにメグミって子がいたんだ。
メグミは学校のアイドル的存在だった。
1年のときはクラスも違ったしな。
よく休み時間に見に行ってたものだったよ。
だからメグミと同じクラスだってわかったとき、
すげー嬉しかったよ。
メグミは明るくて優しかった。
おまけに頭も良かった。
俺はそんなにも特別顔がいいとかではなかったからな。
正直、メグミと釣り合わないことくらいわかってたんだよ。

7月のある日、部活が終わったんだよ。
その日はたまたま先生の都合で早く終わったんだよ。
俺は忘れ物したことに気が付いて教室に行ったんだ。
そうしたら、そこにメグミが一人で外を見ているんだ。
俺が入るのに気付いたメグミは俺のほうを振り返ったんだ。
俺、サッカー部だったんだけど、グラウンドで練習してたんだ。
メグミはにっこり笑って、
「今日、シュート決めてたね、カッコよかったよ。」
『あぁ。』
俺にはこれが精一杯だった。
というか見ててくれてたんだ、なんか嬉しい。
「ねぇ、サッカーって楽しい?」
えっ・・・
俺は困った。
何故だかわからないが返事に困ってしまった。
『あぁ。』
俺はこれしか言うことが出来なかった。
それでもメグミは笑いながらいろいろ聞いてくるんだよ。
改めてかわいいと思ったよ。
そのうち時間が経つのも忘れて話してたら7時を過ぎてたんだ。
俺らは電車通学だったけど、逆方向だったわけよ。
だから駅まで一緒に行って、明日も話そうねと言って別れたんだ。

次の日はもうそのことでいっぱいだったよ、授業どころじゃなかった。
休み時間に目が合うともう心臓が止まってしまいそうだったよ。
その日も部活は外で練習だった。
教室のほうを見ると窓際の席に座ってこっちを見ているメグミ。
俺はドギマギしながらボールを蹴ってたよ。
そして部活が終わった。
もう6時になっている。
俺は走って教室に行った。
そこには、さっきと同じ場所に座っているメグミがいた。
メグミはいつもの笑顔で話しかけてきた。
いろいろ話したんだよ、休日は何やってるかだとか。
俺の場合、ほとんど部活だったけど、メグミは違うんだよ。
メグミは部活はやってなかったし、休日は友達と遊びに行っていたようだ。
メグミは、言ったんだよ。
「こんどシュウ(俺)君が休みのときに一緒に遊びに行こう♪」
俺には断る理由がなかった。

ただ問題があったんだ。
そのころは練習試合が多くてほとんど休みがなかった。
そのまま夏休みになった。
ほら、その頃なんて連絡手段がないんだよ。
だからメグミと遊ぶことはなかった。
それに俺も遠征があってそんなに時間があったわけでもなかった。
しかも俺、バカなことに怪我したんだよ、全治1ヶ月。
そんなこともあって、夏休みが明けて1週間ほど休んでた、リハビリで。
何も知らないメグミはすごい心配したみたいなんだよ。

俺が松葉杖で学校へ来るようになったんだ。
もちろん部活は出来ない。
顧問の先生が、もう帰っていいというので、俺はいつもの通り教室へ向かった。
そこには夏休み前と同じように微笑むメグミの姿があった。
メグミは俺の怪我を相当心配していたようだった。
その時俺の怪我はほとんど治っていたんだ、松葉杖でも。
俺は大丈夫だからと言っておいた。

俺の怪我も治って部活もできるようになった。
メグミとの関係は続いていた。
その頃になると、放課後だけでなく休み時間一緒に話したり、弁当を食べてたりした。
気付いた頃、俺達は付き合っていた。
それはすでに周りから「公認の仲」に思われるようになっていた。
まさかメグミと付き合えるなんて思ってもみなかった。
メグミも俺のことが気になっていて、最初に教室で話せたときは嬉しかったって。

俺ら、高校生ながら結婚しようなんて言ってたんだよ、いや本気で。
その頃にはもう経験してたんだ。
お互い初体験だったよ。
俺はこんなに可愛い子と付き合えてこんなに可愛い子と初体験が出来るなんてさ。
俺、本当に幸せだったよ。
だけど、そのころからメグミの様子がおかしくなってきたんだ。
やっぱり心配だったよ。

ある日を境にして、メグミはあまり学校にこれなくなったんだ。
最初は週1くらいの割合で休んでたのが、だんだんよく休むようになってさ。
俺、1ヶ月くらいしてメグミに呼び出されたんだ。
どうやら俺に話があったようだ。
でもここは・・・?
ここは病院。
まさか・・・?
俺が入ると、メグミと白衣を着た医者が来た。
そう、メグミは病気だった。
ただ、病気といっても、白血病とかいうものではなかった。
メグミは鬱病だった。
そう、ここは精神科だ。
医者は口を開いた。
「彼女は軽度の鬱病なので心配いりません。
 抗うつ剤を飲めば治りますから。」
メグミはいつものように、にこっと笑って、
「心配しないで。」とだけ言った。

何言ってんだよ。
心配しないはずがないだろ。
メグミが俺を心配したように、俺もメグミのことが心配なんだよ。
その日は眠れなかった。
メグミが気がかりで仕方なかった。
ずっとメグミのことを考えていた。
俺は決めた。
その日学校を休んでメグミの家に行った。
母親が出てきた。
突然の訪問だったが、快く俺を受け入れてくれた。
今にはメグミの姿があった。
驚いた目をしつつも笑ってくれた。
俺はメグミの部屋に上がらせてもらった。
付き合っていながら、メグミの部屋に入るのは初めてだった。
メグミの話によると、ずっと前から鬱病の治療をしてたって。
もうだいぶ回復してるって。
そんな状態でも俺は安心した。

しばらくして、メグミは学校に来るようになった。
俺達はいつものように過ごした。
でもそれもしばらくの間だったんだ。
メグミは入院した。
今度は重度の鬱病だったそうだ。
すごい不安だったよ。
たまにメグミに会いに行ってた。
だんだんメグミは痩せていった。
それでもメグミのやつ、俺といるときは笑っているんだよ。
治ったら、あのときの約束守ってね、だって。
そう、俺達はまだ遊びに行ってなかった。
何言ってんだよ、行くに決まってるだろ。
俺がお前との約束を破ったことあるか?
俺はいつまでも待ってるから。

それからしばらくして、メグミの母親から連絡があったんだよ。
俺は驚いたよ、いやそんなものではなかった。
もう夜の10時を過ぎていたんだが俺は走った。
病院へ着いたそこにはメグミがいたんだ。
ただひとつだけいつもと違った。
メグミは死んでいた。
手首を切って自殺したそうだ。
まだ暖かいメグミは眠っているようだった。
俺は泣けなかった。
メグミがいなくなったんんて嘘のようだった。

何やってんだよ、メグミ。
死んじゃったらあの約束守れないだろ?
もう一緒に話すこともできないんだよ?
まだたくさん遊ぼうって、治ったら遊ぼうって言ったじゃないか。
何で嘘なんかつくわけ?
俺達、結婚しようって言っただろ?
もう俺のこと嫌いになったのか?
俺はメグミのお通夜から納骨まで参列させてもらった。
俺は納骨が終わって初めて泣いた。

1ヶ月位して、俺は再びメグミの両親から呼び出された。
そこで渡された。
それはメグミが俺に宛てて書いた手紙だった。
これは俺の思い出にしまっておきたいから詳しくは言えないが、
なんとなくそろそろ死んでしまいそうだ、
とかいろいろ書いてあった。
最後にピンクのかわいい字で「ありがとう」って書いてあるのを見たら、
俺はメグミの両親の前で大泣きしたよ。

あれから8年ほど経った。
毎年墓参りにも行っている。
俺はメグミとの約束を守るために、遊びに行った。
メグミの写真を持って。

メグミ、俺は君に出会えたから本気で人を好きになれた。
そして、大切な人を失う悲しみも知った。
俺は今でもメグミが好きだ。
メグミとの約束を守るために、俺は結婚もしないでおくつもりだ。
あのときの手紙のちゃんともっている。
次に生まれ変わったら、もう1度彼氏にしてくれますか?
そしてそのときは共に歩んでいこうな。

ありがとう、メグミ。
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