目の前には漆黒の闇・・。剛田たけしは鈍い頭痛と共に目を覚ました。 空気に湿気の混じった部屋。足元のぬるぬるした感覚・・。 頭痛の所為か、事態がうまく把握できない・・。 ブクブク・・ゴボボボボボ・・バシャアア!! ???「ぶはっ!ゴホゴホッ!」 突如、向かいの奥から何者かが水から上がってきた様である。 ジャイアン「お前・・。スネ夫か!」 スネ夫「ジャイアン?何処だい?此処は、一体・・。」 ジャイアン「わからん。俺もさっき目が覚めたばかりだ。気づいたら、此処にいた。お前こそ一体何処にいたんだ?なんか水の音がしてむせてたが。」 スネ夫「僕もわからないんだが、どうやら水中に放置されてたらしい。目が覚めたら、ずいぶん水を飲んじゃったよ・・。」 ジャイアン「まあいい・・。それよりも状況を確認しなきゃな。二人で手分けして・・。ちょっと待て!スネ夫、足に違和感を感じないか?」 スネ夫「え?ああ、感じる、感じるよ!何だこれ、金属の肌触りがする。」 ジャイアン「目覚めてからうすうす感づいてきてはいたが、どうやら監禁されちまったらしいな。喚いても仕方ねぇ。さっき行ったように状況確認しろ。壁伝いに歩いて、何かあったら報告するんだ。くれぐれも慎重にな。」 スネ夫「ああ。わかったよ。」 壁伝いに歩く二人、互いの距離もわからぬままかび臭い匂いのする部屋を慎重に進む・・。 スネ夫「!! ジャイアン、スイッチだ。何かのスイッチがあるよ。」 ジャイアン「・・押してみてくれ。」 まばゆい光が頭上から降り注ぐ。ここは、どうやら今は使われていないバスルームのようだ・・・。ジャイアンとスネ夫は両端の壁に向かい合う様に位置し、それぞれ足枷が柱に括りつけられていた。 スネ夫「此処は・・。僕はこの場所を知っている!此処は僕の別荘のバスルームじゃないか!」 ジャイアン「何だと!俺はお前によく別荘に連れて行かされるが、こんな所は知らないぞ。」 スネ夫「此処はもう、使わなくなってしまったんだ。雰囲気が悪かったからね。このバスルームも地下にあるんだよ。ジャイアン達を連れて行った別荘は新築の方だから・・。」 ジャイアン「なるほどな。俺も思い出してきたぞ。確か、俺達はお前の家でゲームをしていた筈。そしたら突然、停電があったんだ。この頭痛からわかるが、恐らく俺達は何者かに眠らされ、監禁されたわけだ。」 スネ夫「そんなぁ、嘘だ。助けてママァァァ!」 ジャイアン「バカヤロウ!泣いても状況は変わらねぇぞ。見てみろ、足のこいつはやっぱり足枷だ。ご丁寧に鎖で拘束してやがる。こいつは誘拐なのか?」 スネ夫「グスン・・。多分、そうだよ。だとしたら、此処で助けを待った方がいい。パパが身代金を払って助けてくれるよ。ん?真ん中に何かあるよ。」 スネ夫が指差した方向には、中央に大きく膨らんだ長めのゴルフバッグとその脇にカセットテーププレイヤーが置かれていた。 ジャイアン「くそっ!この距離じゃどっちにもギリギリ届かねぇな。ゴルフバッグもそうだが、まずはカセットテープが気になる。スネ夫!上着を貸せ!」 スネ夫から上着を借りた剛田たけしは自分の上着と結び付け、何とかプレイヤーを引き寄せる事に成功した。そして、中のテープを確認し、再生ボタンを押した。 「ガガガ・・くくく、これを手にしているということは無事目が覚めたようだな。此処が何処だか知りたいか?恐らく君達いずれかが死ぬ場所だ。ところで、君達はこれが誘拐であると 勘 違 い しているのではないかね?」 変音機から聞こえてくる無機質な声はなおも続ける。 「その答えは、傍らのゴルフバッグに隠されている。だが、届かないかもな。スネ夫君、君が入っていたバスタブに鉄製の棒がある筈だ・・。君の為にも、バッグは君が引き寄せてみたまえ。五分待とう。・・・」 手間取りながらもスネ夫は鉄製の棒でバッグを引き寄せ、中身を確認した。すると、そこには・・・ スネ夫「ママァァァァァッァァァァ!!!!!」 中には冷たくなり、硬直したスネ夫の母が横たわっていた。五分たったのか、テープの声の主も話し始めた。 「わかっただろう。私は、金などという私腹の為にやっているわけではない。私は君達の親には何も要求しない。寧ろ、私は君達にこそ要求したいのだ。ゲームをな。タイムリミットはその時計で3時まで。」 二人は、壁にかけられた時計を見た。12時半やや過ぎ・・。窓がない為、午前か午後かの区別はつかなかった。 「それ以内に君達は互いを殺さなくてはいけない。そうすれば、片方の命は助けてやることを約束しよう。剛田君、君は周りの人間に感情のままに暴力を振りかざしてきた・・。どうだね?今、君は監禁によって理不尽な暴力を受ける側となった。 見せてくれ、君のそれすら覆す暴力を。君の心の友とやらに振りかざすことによってな・・。骨皮君、君は何時も剛田君の陰に隠れることによって闘争を回避し続けてきた。今、その隠れ蓑は引き剥がされた。今度は回避できるか? この状況を・・。ガガガ・・ピー のびちゃ〜ん、ご飯ry プツン!」 ---10月24日 13:15----------------------------------------------------------------- ここは、のび太達の暮らす町の繁華街・・。ここには、もぐりにはわからない有能な探偵のいる事務所があった。その名は「毛利探偵事務所」。 ???「おい、工藤。大阪からこっちに急に呼び出しおってからに。お前、一体何様のつもりや?」 ???「まあ、そう言うなって平次。せっかく、面白い事件が見つかったからお前を呼んだってのによ・・。」 『2,3日前から報道してまいりました雛見沢少女誘拐事件。未だ被害者少女L.Rさんは行方不明のままだそうです。 この雛見沢村では以前から「オヤシロ様のタタリ」といった奇怪な事件も起こっているようで、県警はそれとも絡めて捜査を行っているそうで・・』 「プツン!」 飽きてしまったのか、眠気まなこでテレビを消した派手な服と大きな眼鏡が特徴的な少年は、高校生風の青年に向き直り、笑みを浮かべた。 彼の名は江戸川コナン。 元は工藤真一という名で、向き直って立っている青年、服部平次の同級生であり友人である。 彼はとある組織(笑)に薬で姿を子供にされて以来、毛利家に預けられ大黒柱毛利小五郎を利用し、探偵としての充実した毎日を送っている。彼は、事務所の机に並べられた依頼届をつまみ上げて話した。 バーロー「昨日、おっちゃんに依頼がきたんだけどな・・。剛田たけし君と骨皮スネ夫君。昨日から行方不明になってるらしい。」 平次「アホらし・・。たかが人探し、誘拐事件のためにこの「西の名探偵」服部平次様を呼び出したっちゅ〜んかい?そんなん、警察に任せときゃ十分やろが。」 バーロー「バーロー、ただの誘拐事件じゃねぇ。昨日から、身代金の要求すら来ないらしい。そして、スネ夫君の母親とたけし君の母親、妹さんも行方不明だ。 さらに剛田家と骨皮家には 『警察に通報するのは勝手だが、ゲームを妨害するのはルール違反だ。 ルールを守らないものには私は容赦するつもりはない。心配するな。 君の息子の選択が正しければ、すべて元通りに返すことを約束しよう。』 といった脅しの手紙が送られてきている。それで、おっちゃんに白羽の矢がたったって訳だ。」 平次「模倣犯か?おもろそ〜やな。工藤、勿論俺達で解決する気なんやろ?」 バーロー「たりめ〜だ。大体、この事件はおっちゃんには荷が重過ぎる。」 平次「へっ、「東」と「西」の名探偵の凄さ、犯人さんに教えたろ〜やないけ!」 かくして、二人の名探偵は動き出すのであった・・。 ---10月26日 12:41----------------------------------------------------------------- ジャイアン「ゲームだと!一体何処のどいつだ。ふざけやがって、ここから出たら、ギッタギタにしてやるからな!」 スネ夫「落ち着けよジャイアン、犯人はもうわかったんだしさ。」 ジャイアン「何?誰だ一体。」 スネ夫「(やれやれ、全くこの単細胞は・・。)のび太だよ。テープの最後にのび太のママの声がしてた。あんな馬鹿なミスするなんて、本当にのび太らしいよ。」 ジャイアン「のび太か・・。グフフ、脱出したら、二人でリンチ確定だな。」 スネ夫「そうだね。互いを殺し合わせるなんて小賢しい真似した事を死ぬほど後悔させてやろうよ。その為には、まず此処から抜け出さなきゃね。ジャイアン、何か使えそうな物があるか周りを調べてみてくれ。僕は携帯が繋がるか確認してみる。」 ジャイアン「わかった。」 スネ夫は自分のズボンのバックポケットを探った。携帯の存在を確認・・と、同時に紙が入っていることも確認した。 全く覚えのない物だ。携帯を取り出しながら、紙を掌で広げてみる。メモのようだ・・。 内容を読んだスネ夫は唾を飲み込んだ。そしてジャイアンに気づかれていないことを確認し、メモをポケットに戻し、携帯を開く。 ・・案の定、圏外。 スネ夫「くそっ!やっぱり駄目だ、圏外みたいだよ。ジャイアン、そっちは何か見つかったかい?」 ジャイアン「ちっ、駄目だ。何もねぇよ!」 「プツン!」 スネ夫「うわぁ、停電だぁ!」 突如、電灯が消え、辺りは再び、漆黒に包まれた。偶然の停電。いや、これは意図的・・スネ夫がスイッチを自分で切ったに過ぎなかった。 ジャイアン「スネ夫、無事か!」 スネ夫「大丈夫だよ。僕らがやられた時も停電だったからね。ビックリしただけさ。それよりジャイアン、後ろ・・何か光ってないか?」 ジャイアン「あん?」 ジャイアンが後ろを振り返ると、確かに壁のタイルが光っていた。 スネ夫「ジャイアン、剥がすんだ!タイルを!何かがある!」 ジャイアン「お、おう!」 ジャイアンは力づくで、タイルを剥がす。そこには、ロッカー程の奥行きを持つくぼみが空いていた。 中には、金属製の古びた鋸が二つ、・・そして、またもカセットテープ。スネ夫が電気のスイッチを入れ、元の光景が戻った。 ジャイアンはスネ夫に目で合図を送り、テープを入れ替え、再生した。 「ガガガ・・。おめでとう、予定通り事が進んでいるようだね。安心したよ。 さて、プレゼントは受け取ってくれたかな? それらは「道具」だ。自由に使ってくれたまえ。そして、もう一つ・・君達に脱出のヒントを与えよう。 「N」を探すんだ。さらに遅ればせながら、宣言させてもらおう。ゲームスタート!」 ---10月24日 14:16----------------------------------------------------------------- 平次「ほんなら、まずは周辺の聞き込みやな。工藤、お前は剛田家近辺を、俺は骨皮家近辺を探す。これでええな?」 バーロー「ああ、怪しいところを見つけたら、各自携帯で連絡だ。」 平次「よっしゃ、ほな行こか。」 骨皮家に到着した平次はまず、骨皮邸に向かった。あいにく、留守であったが庭先に人影を視認した。 平次「すんませ〜ん!この家の方ですか?ちょっとお聞きしたいんですけど・・。」 ???「はい!僕で宜しければ・・。」 平次が見たものは全身青色で妙に短足、頭のでかいなんとも異様な生物だった。 平次「(どぎついコスプレやなぁ・・。)あの、ここで何してはったんですか?」 ドラえもん「あ、はい。僕はみ〜ちゃん達とよくこの庭で合コンを開いて遊んでるんですぅ。」 そういって、ドラえもんは庭先にいた毛並みのいい雌猫達を指していった。 平次「は、はぁ。そうですか・・。どうも。(あかん、ただのキ○ガイや・・。 話すだけ時間の無駄か。不法侵入やけどメンドイし、見逃したるわ。ほか行こ・・。)」 その後もぶらついたが、平次は進展がなかった。 一方、コナンは剛田家へ到着。ジャイアンの父親から事件の詳細を聞いていた。 バーロー「なるほど。つまり、たけし君はスネ夫君の家に遊びに行って、行方不明になったというわけですね。」 剛田父「そうなんですよ。それにしても、毛利さんから使いを遣すって聞いてたけど・・。坊や、しっかりしてるね。」 バーロー「いえ。おじさんから、言われた事をやってるだけですから。・・・それでは、これくらいで、失礼します。ご協力ありがとうございました。」 剛田家を出たコナンは途中で、記憶にある人物を見かけた。 調査書にあった剛田たけしと骨皮スネ夫共通の友人、野比のび太である。 バーロー「あいつ!確か、二人の友達の野比のび太か。とりあえず、後をつけてみるか・・。」 コナンが気配を消しながら、あとをつける。どうやら、のび太は先程からやけにオロオロしている様子だ。 コナンは感づかれた事を疑ったが、なにやら焦った様子が見てとれた。 のび太「くそっ!ここにもいない。このままじゃ僕の身まで危ないってのに畜生!なんとかしないと・・。 今日はもう家に帰るか。ドラえもんを騙せば道具を貸してくれるだろうしな。」 その後も後をつけたが、のび太は言葉どおり家路に着いただけだった。 ―――・・・。 バーロー「服部、そっちはどうだ?」 平次「あかん。おかしなコスプレおっちゃんを見かけただけや。お前は?」 バーロー「剛田君の父親から事件の詳細を聞いた。それと、二人の友人野比のび太を見かけた。何か探している様で酷く焦ってたな。」 平次「そいつは臭いな・・。はぁ、結局今回はお前の方が豊作だったみたいやな。」 バーロー「とりあえず、いったん合流だ。事務所でな。」 平次「おう!」 ---10月26日 12:53----------------------------------------------------------------- テープの再生が終わり、静寂となった。 そこでジャイアンがタイルを見つめながら、口火を切る。 ジャイアン「このタイル、蛍光塗料が塗ってあったみたいだな。 それはそうと、スネ夫。一つ気になるんだが、お前はなんでタイルの中に何かがあるなんてわかってたんだ?」 スネ夫「そ、それは・・。光ってたから、何かの目印じゃないかな、と。」 ジャイアン「そうだな。光ってた・・。 問題はなんでお前が、俺の真後ろに位置してたお前からは決して見えるはずのない視点から、それが見えてたかって事だ!」 スネ夫「ご、ごめん。実は、最初にメモを見つけたんだ。 そいつにジャイアンの後ろのタイルに宝が隠されているって書いてあってさ・・。 停電も僕が意図的に消しただけなんだ。」 ジャイアン「そのメモをよこせ!」 スネ夫「ごめん。ジャイアンに疑われるのが怖くって、さっき電気を消したときバスタブの排水溝に流して捨てちゃったんだ。」 ジャイアン「ちっ、まあいい!それより、さっさとこの鋸を使って鎖を切るぞ。」 スネ夫「わかったよ。」 ギャリギャリギャリギャリ・・・室内に金属の擦れる耳障りな音がしばし続く。やがて、スネ夫の鋸が折れてしまった。 スネ夫「くそっ!糞糞ぉぉぉぉ!」 怒りのあまり、スネ夫は壊れた鋸を中央の壁に取り付けられた鏡に投げつけた。 「ガチャァン!!」 鏡は端が少し割れてしまい、辺りに破片が散乱する。 ジャイアン「あぶねぇな、今度はお前が少し落ち着けよ。どうやら、こいつは鎖を切るためのものじゃなさそうだな。 こいつは・・足を切るための道具ってわけか。」 スネ夫「くっ、考えたくなかったけどやっぱりそうか・・。洒落にならないんだよ、のび太の奴!」 ジャイアン「さっき、のび太は言ってやがったな。「N」を探せ、と。 どうやら、あいつの言う通りにするしかないみたいだな。勿論、殺し合いは御免だが・・。」 スネ夫「そうだね。周りに「N」なんて文字は見つからなかったけどなぁ・・痛っ!」 スネ夫が足元を見ると、先程自身が割ってしまったガラスの破片で足を切ってしまった事に気づく。 スネ夫は破片を拾い上げ、見つめた。 スネ夫「くそっ、さっきのやつか。痛いなぁ・・。!!!」 スネ夫は破片を裏返し、見比べる。 スネ夫「ジャイアン!これ、鏡じゃない。マジックミラーみたいだ!真ん中の鏡を割ってくれ!」 そう言って、スネ夫は始めに見つけた鉄棒をジャイアンに投げて渡した。ジャイアンは鏡をたちどころに破壊していく。 ジャイアン「はぁっ、はぁっ。どうだ、スネ夫!」 鏡はほとんど破壊され、中には機械に取り付けられたレンズがあった。 そして、傍らには「N」の文字の入った木箱。これはジャイアンの届く側に置かれていた。 ジャイアン「な、なんだよ。これ?」 スネ夫「カメラだよ!ふざけやがって、のび太の奴!どっかから僕達を覗いて見てるんだよ。」 ジャイアン「何だと!おい、のび太。男なら正々堂々闘えよ!聞いてるのか、おいこのヤロー!」 スネ夫「のび太のくせに、生意気だぞ〜!!」 ――モニターに映った喚く二人を眺めながら、人影は薄ら笑いを浮かべた。 ???「五月蝿いなぁ。聞こえてるよ・・。」 ---10月24日 15:06----------------------------------------------------------------- 平次「つまり、工藤。お前はその野比って奴が事件の鍵を握ってるって言いたいんやな?」 バーロー「少なくとも、事件と関係はある筈だ。」 平次「実はな、お前からそいつの連絡を受けた後、俺は奴の母親に会うてきた。 そしたらな、野比は事件の日に骨皮の家に遊びに行ったと言われたで。お前の推理は正しいと思う。」 バーロー「のび太に気づかれたらどうするんだって言いたい所だが、お前の行動力には感服するよ。全く・・。」 平次「まぁ、野比はマークって事で決まりやな。ただ、俺らはこの町の事をようけ知らんさかい。もう少し、情報を集めた方がいいと俺は思う。」 バーロー「そうだな。今度は、二人の友人を徹底的に洗ってみるか。出来杉って奴と源しずかちゃん・・。」 ---10月21日 22:56----------------------------------------------------------------- ???「んーっ!んーっ!」 一人の少女が椅子に座って呻いている。頭には金属の異様な装置が取り付けられていた。 どうやら、歯の上と下を拘束されている様で声が出せないようだ。 少女が上半身を前へ引き寄せると、ワイヤーで繋がったピンが外れ、カセットテープが再生された。 「ガガガ・・おはよう、しずか。恐らく状況が理解できないと思っているのだが、説明させてもらおう。 君の口を塞いでいる忌々しいその装置、時間が経つと君の顎を上と下に引き裂くようになっている。前を見たまえ。」 声の主が指示した位置には小型のテレビが置かれ、それには頭蓋骨に装着されたこの装置があった。ややあって、頭蓋骨は粉々に粉砕した・・。 「当たり前だが、装置が起動すればこのように死ぬことになる。 死にたくなければゲームに勝ち残る事だ。制限時間は5分。 周囲を探してみろ、装置の鍵が何処かに眠っているはずだ・・。それでは、ゲームスタート!」 テープの再生が終わると、少女の後頭部にあったタイマーが作動した。傍らに懐中電灯が置かれていたので、しずかはそれを持って立ち上がった。 しずか「んーっ!んーっ!んーっ!」 しずかは辺りを必死に徘徊した。薄暗いせいか、まるで何も見当たらない・・。 すると、足元に何かが当たった。恐る恐る懐中電灯を向ける。中年の小太りな男が半裸で眠っていた。 しずか「(先生!)んーっ!」 そう、彼はしずかの学校の担任教師だった。しずかが起こそうと近寄ると、先生のポケットに何かが入っているのを確認した。 取り出してみると、テーププレイヤーが出てきた。再生ボタンを押す・・。 「ガガガ・・やぁ、しずか。この男に見覚えがあるだろう。君の学校の担任教師だ。 実はこの男は聖職者でありながら、君達生徒の中から一部の生徒を度々売春していた。 うらやま・・けしからん、恐らく私には永遠に訪れない機会だろう。私はかつて自身をこれほど呪った事はない! ・・・さぁ、本題に入ろう。君の鍵はもうすぐそこにある。わかるだろう?」 しずかは正直、告げられた事実に対し困惑していた。あの厳しくも優しかった先生が、そんな事をしていたなんて・・。 だが、今のしずかにはそれよりも優先すべき事柄があると脳が命令を与えていた。しずかは先生を観察する。 腹部にハテナマークが描かれているのを視認した。 「鍵は男の腹の中だ。道具は周りにあるのを適当に使いたまえ。男はもうすぐ、麻酔が切れる頃だ・・。早くした方がいい。」 辺りに目をやると、メスやらチェーンソーやら物騒なものが無造作に散らばっていた。しずかはチェーンソーを手に取り、先生ににじり寄った。 タイマーは残り2分をきっている。すると、先生が目を覚ました。 先生「源君?君を買った覚えはないんだが、ここはホテルかね?」 最早、先生の言動など耳に入らなかったしずかは冷淡にチェーンソーを振り下ろした。 先生「ぐぉぉぉぉぉぉっぉおっぉぉぉぉぉぉおぉぉっぉぉぉぉぉぉ!!!!!」 辺りに鮮血と臓物が飛び散ったのを確認し、しずかはチェーンソーを捨て、先生の内臓を掻き分けながら一心に鍵を探した。 金属の手触りがあり、しずかは安堵した。急いで、後頭部の鍵穴へ差し込み180度回した。 「ガチャァン!!」 重々しい音と共に装置が取り外されたのを確認したしずかは堰をきったように泣き喚いていた・・。 ---10月26日 13:38----------------------------------------------------------------- ジャイアン「畜生!まだ怒りがおさまらねぇぜ!」 スネ夫「僕もだよ・・。それより、ジャイアン。今度はその箱を開けてみようよ。」 スネ夫はジャイアン側に置かれた「N」の文字の木箱を指した。 ジャイアン「すっかり忘れてたぜ。」 ジャイアンは箱の前に立ち、木箱を開けた。中には、拳銃が一丁。そして、一枚の写真(ジャイ子と母親)とテープ・・。 ジャイアン「何で・・。ここに、母ちゃんとジャイ子の写真なんてあるんだ?」 スネ夫「テープを聴いてみれば何かわかるかもしれないよ!」 ジャイアン「そ、そうだな・・。」 ジャイアンはテープを入れ替え、再生ボタンを押した。 「ガガガ・・やぁ、剛田君。今この声を聞いている君は、一抹の不安を抱えているに違いない。 手元にある一枚の写真だ。・・はっきりと言わせてもらおう。現在、彼女達は私の手中にある。 最初に話したタイムリミットが過ぎれば、君同様彼女達の命も危ない・・。」 ジャイアン「ふざけるな!ジャイ子と母ちゃんは関係ないだろ!今すぐ放しやがれ!」 ジャイアンの怒号を無視するかの如く、声は続ける。 「ルールだ。ゲームのルールを忘れるな。君がゲームに勝てさえすれば、全ては問題ない。 今、君は骨皮君よりも不利な立場にある。そこで、君には攻略の糸口を与えよう。 そこにある拳銃は本物だ。無論、発砲できる。それをどう使うかは君の選択次第だ・・。」 ジャイアン「・・・。」 スネ夫「じゃ、ジャイアン?冗談だよね?僕達、親友だろ?」 ジャイアンは何も語らず、ただその銃口を静かにスネ夫へと向けた・・。 --10月24日 16:25----------------------------------------------------------------- しずか「・・・知りません。私、最近二人と遊んでいないし・・。」 バーロー「そうですか。どうもありがとうございます。」 しずか「・・・いえ。」 「バタンッ。」 平次「なんや無愛想な子やな。」 バーロー「仲の良い友達って調査書には書いてあったんだけどな。 ま、おっちゃんの調査ミスかもな。親御さんと食い違いもないみたいだし・・。じゃ、次は出来杉の家に行くか。」 コナンと平次は源家での聞き込みを終え、出来杉家へと向かっていた。 捜査は依然、難航していた。そうこうしている内に二人は出来杉家へと到着する。 「ピンポーン!」 ???「は〜い!」 バーロー「どうも、出来杉君ですか?」 出来杉「はい。お二人はどちら様ですか?」 平次「すいませんなぁ。わしら、毛利探偵事務所の者です。実は先日から、骨皮君と剛田君が行方不明になってましてな。 ちょっと調査してるんですわ。お宅、最近二人に変わった所若しくは先日、二人を見かけませんでしたか?」 バーロー「(馬鹿、服部。堂々と名乗りすぎだ。少しは警戒しろよ。焦り過ぎだ。)」 平次「(大丈夫や、ただの聞き込みやし相手は小学生やぞ。)」 バーロー「ったく・・。」 出来杉「すいません。わからないですし、先日は見かけてませんからね・・。ただ・・」 平次「ただ・・・なんです?」 出来杉「先日でしたら、本屋に行く途中でのび太君を見かけました。どうやら、スネ夫君の 家から帰ってくる途中だったみたいです。彼なら何か知ってるかも・・」 バーロー「野比に会ったんですか!?何かおかしな様子はありませんでしたか?」 出来杉「う〜ん。おかしな所はなかったですよ。 ただ、明日僕の家で宿題を教える予定だったんですけど、その日は学校に行かなきゃいけないから無理になった。と、ものすごい剣幕で言われました。 学校は休日でない筈なのに。いや、それよりも僕はあんなのび太君は見たことなかったな・・。」 バーロー&平次「!」 出来杉「あの・・これくらいで良いですか? 僕、一日おきに塾に通っててそろそろ行かなくちゃいけないんですけど。」 平次「すんませんなぁ、手間取らせてしもうて。」 二人は出来杉家を出て、神妙な面立ちで話した。 バーロー「服部、どう思う?」 平次「ますます、野比が怪しくなってきたとしか、言えんの・・。」 バーロー「そうだな。だが、これだけのび太に疑いがかかってくると、逆に不気味だぜ。」 平次「どっちにしても、明日は学校で張り込みするしか手はないで。」 バーロー「そうだな・・。」 二人は奇妙な感覚を覚えながらも、事務所へ戻った。 ---10月26日 13:59----------------------------------------------------------------- ???「ゲームも遂に佳境を迎えたか、そろそろ次の準備に取り掛からなきゃね。」 先程までテレビから二人のショーを見物していた人物は、椅子から立ち上がり奥の部屋へと向かっていった。 ジャイ子「んーっ!んーっ!」 剛田母「モゴモゴ・・。」 二人の様子を見ていた人物は、両方の猿ぐつわを外してやった。 ジャイ子「どうして、あなたがこんな事を・・。」 剛田母「誘拐かい?身代金目当てだったら、残念だったね!ウチにはそんな大金置いてないよ!」 ???「・・・。」 二人の威勢の良さに安心したのか謎の人物は再度、二人に猿ぐつわをした。 ジャイ子「んーっ!んーっ!」 剛田母「モゴモゴ・・。」 ---10月26日 14:04----------------------------------------------------------------- ジャイアン「・・・。」 スネ夫「や、やめてよ。僕は君の親友だろ・・。」 ジャイアン「悪いな・・。家族を人質に取られたんだ。お前だって俺の立場だったら、この選択肢を選んでたはずだ。」 ジャイアンは静かに引き金を引く・・一撃で終わらせる為、スネ夫の胸を狙って・・。 「ガチャン!!」 スネ夫がうずくまった姿勢から、顔を上げる。 スネ夫「弾・・・切れ?」 ジャイアン「ふざけやがって!何処まで俺達を弄べば気が済むんだ!」 ジャイアンは激昂し、拳銃をスネ夫の横に投げつけた。 スネ夫「じゃ、ジャイアン・・。」 傍に転がった拳銃を拾い上げたスネ夫。 ジャイアンはへなへなとその場に座り込んでしまった。 ジャイアン「す、済まなかったと言っても許してもらえそうにないが・・。 これは心の友を裏切ろうとした罰なんだな・・。へへへ、嘲ってくれよスネ夫。」 スネ夫「い、いいよ。ジャイアン、確かに僕も君の立場だったら、同じ道を選んでいたよ・・。」 スネ夫は銃を握り締め、哂いながら言った。 ――カードは揃った・・。スネ夫はこの時を一日千秋の想いで待っていたのだ・・。 ---10月25日 15:46----------------------------------------------------------------- 平次「ふわぁぁぁぁぁ〜あ。犯人さん、来ないのぉ。」 バーロー「お前、少し緊張感を持ったほうが良いぞ。 犯人がのび太だったら、格闘戦もあり得るんだ。恐らく、凶器も持ってるだろう・・。」 平次「ホンマに来るんかいのぉ・・。」 平次が校門を見ると、黒いフードで体を覆った人物が現れた。 バーロー「服部!」 平次「わかっとるわ、待ちくたびれたで!」 二人は気配を消しつつ、人物が校内に入るのをやり過ごした。 ???「・・・。」 足早に歩く人物をつける二人・・。休日の学校というのもあるが、それ以上に張り詰めた空気を二人は感じていた。 人影は「工作室」へと入っていた。二人はつけるのを止め、 平次「どうする?強引にでも入って行くか?」 バーロー「待て、中で何かしているみたいだ。」 コナンと平次はドアに耳を当て、息を潜めた。 ???「ふぅ、どうやら完成したか・・。後はこれを例の場所に持って行けば完成か・・」 平次「声が低すぎて誰かわからへんな・・。」 フードの人物は「N」と書かれた木箱に拳銃を梱包していた。 ???「・・それにしても、よくこんな所に隠して見つからなかったもんだよ。我ながら自分の幸運に感謝するよ。・・・っ!!!!」 突如、フードの人物はドタバタと走り出した。コナン達が耳を済ますと部屋の奥でもう一度扉を閉める音が聞こえた。 バーロー「しまった!感づかれた!服部、突入だ!」 平次「オウ!」 ドアを開けて突入する二人、奥には「工作準備室」のドアがあった。 バーロー「ちっ!鍵をかけたか。服部、入り口を開けろ!奴は準備室から廊下を通って逃げ るつもりだ。」 ???「はぁっ、はぁっ!見つかる事も想定に入れて仕掛けを作っておいて正解だったね!」 フードの人物は息を切らしながら、手元のリモコンを押す。 「ガチャアン!!」 金属製の格子が入り口を塞いだ。 平次「工藤!あかん、トラップや。お前のキック力増強なんたらでこいつ、ブチ破ってくれ!早く!」 バーロー「わかった。」 コナンはキック力増強シューズを使って、格子をへし折った。 平次「よっしゃ!後は俺に任せてくれ!いい道具も持っとるしな!」 そういって、平次はポケットから黒々と鈍く光った拳銃を取り出した。 平次「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 平次は遠くにいる人影に向かって、拳銃を連発。 「ビシッ!」 ???「痛ッ!!」 弾はフードの人物の左足を掠めた程度だった。 弾切れの拳銃を投げ捨て、平次は悔しそうに立ちすくんだ。 平次「くそっ!これで犯人を捕まえれば全て終わる筈やったのにのぉ・・。」 バーロー「服部、お前なんで拳銃なんか持ってるんだ・・?」 平次「悪いな。工藤ぉ、俺は此処でゲームオーバーや・・。」 言い終わる刹那、平次は血を吹いて倒れこんだ・・。 バーロー「服部ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」 コナンは自分よりも体の大きな平次を抱き起こした。平次は最早、虫の息だった。 現状が全く理解できないコナンは平次のポケットに何かがあるのを見つけた。 取り出してみると、そこにあったのは一つのカセットテーププレイヤーだった。 意を決して再生ボタンを押すコナン。テープはゆっくりと動き始める・・。 ---10月24日 14:45----------------------------------------------------------------- 「ガガガ・・おはよう、目覚めたかね?服部平次君。 どうやら、君は私にずいぶんと興味があるらしいな・・。私もだ。私も君に興味がある。 いや、一つ訂正しよう。私は君の好奇心がどれ程のものなのかに興味がある。 ところで話は変わるが、私は君にある処置を施した。単刀直入に言おう。毒物を打たせて貰った。 致死率は100%、効果はおよそ24時間程で現れるだろう。 人によって個人差はあるがね・・・。もちろん、助かる方法も用意してある。 傍らに拳銃がある筈だ。弾もそこそこ装填されている。 もしも、君がそれで身近にいる一番大切な人間を殺すことが出来たら、私は君に解毒剤を進呈しよう。 さて、そこでゲームがしたい。君はその拳銃で誰を狙い撃つ?好奇心のままに私を狙い撃つか? それとも、我が身可愛さに身近な人間を殺すか? ・・あるいは、自らの頭に向けてこの苦悩から脱出するか?いずれにしても、決めるのは君次第だ。 幸運を祈る。ゲームスタート!」 テープを聴き終えた平次はようやく事態が飲み込めたようだ。 そう、10月24日14時45分頃、平次はのび太の母から聞き込みを終えて変える途中、何者かに襲われた・・。 そして、町の片隅にある廃屋へと連れてこられたのだ。 平次「くっ、不覚や!まさか、襲われるなんての。・・身近な人間。 こいつ、工藤の事にも感づいとるんか?犯人は野比じゃない?若しくは複数犯か? とにかく、24時間経つ前に犯人を捕まえるしかないな。ダチを殺すなんてもっての他や!」 平次は決意を固め、廃墟を後にした。 ――平次「まぁ、野比はマークって事で決まりやな。ただ、俺らはこの町の事をようけ知ら んさかい。もう少し、情報を集めた方がいいと俺は思う。」 ――平次「すいませんなぁ。わしら、毛利探偵事務所の者です。実は先日から、骨皮君と剛 田君が行方不明になってましてな。ちょっと調査してるんですわ。お宅、最近二人に変わっ た所若しくは先日、二人を見かけませんでしたか?」 バーロー「(馬鹿、服部。堂々と名乗りすぎだ。少しは警戒しろよ。焦り過ぎだ。)」 平次「(大丈夫や、ただの聞き込みやし相手は小学生やぞ。)」 ---10月25日 16:06----------------------------------------------------------------- バーロー「服部!目を開けろ!」 親友の呼びかけに重くなった瞼は再び、開いた。 平次「工・・・藤・・か・・?」 バーロー「バーロー!何で俺に相談しなかった。 二人で対策を立てれば、何とかなったかもしれないだろ!」 平次「あかんな・・。正直、犯人がどこまで把握しとるのか、見当もつかん。 お前に言ったら、さっきみたいな犯人に会うチャンスすら失いかねん・・。 工藤、気づいたやろ?犯人はたぶん、野比やない・・。」 バーロー「だな。お前のテープレコーダーを聞いてみたが、のび太は俺が尾行してたんだ・・。 あいつがお前を襲ったとは考えにくい。だが、奴も関係していることは確かだ。 窓、見れるか?」 コナンは平次を支え起こし、校庭を指した。 そこには、出来杉の証言通りのび太がやって来て辺りを見回していた。 平次「ホンマやな・・。」 コナンは平次を再び、床に寝かせた。 バーロー「俺達のやったことは無駄じゃなかった。新たな可能性を見つけだしたんだ。 俺はこれから、のび太を追う。ただ、その前に一ついいか?何でお前は俺を殺さなかった。」 平次「へへ・・。決まりきったこと・・聞くなや。」 バーロー「そうだな。あばよ、相棒!」 そういってコナンは走り出した。目に涙をためて・・。 平次「後は・・頼んだで。工藤・・。」 平次は安らかに瞼を閉じた。 走りながら、コナンは自分の中で何かが弾けて切れてしまったのを感じた。 バーロー「服部、お前の死は無駄にはしない。お前が導いてくれたんだ。 俺にはやっと真犯人がわかったぜ!あのフード、ようやく確信した。 真犯人は・・・黒 の 組 織 (笑) だ!!」 ---10月26日 14:17----------------------------------------------------------------- スネ夫は知っていた・・。 ジャイアンの拳銃には弾が入っていない事を・・。上手く演技もして見せた。 改めて自分が最初に読んだメモに感謝をした。 そして、犯人が完全に自分の味方である事も確信した。 スネ夫の読んだメモには、次のように書かれていた。 私は君の味方だ。それを証明しよう。 1、電気を消してみたまえ。剛田君の真後ろに光るタイルがある。剛田君に剥がさせるんだ。 中には鋸が二つ入っている。 2、剛田君は妹と母親が人質になっている。その事を剛田君は知らない。試しに教えずに、傍観してみろ。 いずれ、わかる事だからな。 3、拳銃が現れたら、チャンスだ。恐らく、剛田君が持つことになるだろうが弾は入っていない。 そして、弾は君が最初に入っていたバスタブの底に隠してある。 今のうちに回収する事をお勧めする。拳銃は何とかして手に入れろ。 ---10月26日 12:43----------------------------------------------------------------- 「プツン!」 スネ夫「うわぁ、停電だぁ!」 メモの通りにスネ夫は停電を引き起こす。そして、彼は一目散にバスタブへ向かった。 スネ夫「(くそっ!暗くてわからないな。!)」 手に小さな金属の質感を感じたスネ夫はそれをバックポケットへしまった。無論、弾丸である。 急いで、バスタブから上がり、元の位置へ戻る。丁度、そこへジャイアンの声がした。 ジャイアン「スネ夫、無事か!」 スネ夫「大丈夫だよ。僕らがやられた時も停電だったからね。 ビックリしただけさ。それよりジャイアン、後ろ・・何か光ってないか?」 ジャイアン「あん?」 ジャイアンが後ろを振り返ると、確かに壁のタイルが光っていた。 スネ夫「ジャイアン、剥がすんだ!タイルを!何かがある!」 ジャイアン「お、おう!」 ・ ・ ・ ---10月26日 14:20----------------------------------------------------------------- 正直、鋸が使えない事を知ってから、弄ばれているだけかとも考えたスネ夫。 だが、メモの第二項部分が事実であった事を知り、信憑性が再び芽生え始めた。 そして、虎の子の拳銃が出てきた時、スネ夫のそれは確信へと変貌を遂げた。 さらに、あの単細胞自らが拳銃を自分の方へと投げ捨ててくれた事は嬉しい誤算でもあった。 今、自分は強運さえも味方についていると信じて疑わなかった。 ジャイアン「うっ、うっ・・。母ちゃん〜。ジャイ子〜。」 目の前の単細胞は家族の写真を見て泣いている。スネ夫はその隙を見逃さず、銃に静かに弾を装填した。 ・・・それにしても。なんという無様な姿だろうか。自分は今まで、こんな間抜けに淘汰さ れ続けてきたのだ。今は自分が立場が上。そう思うと笑いがこみ上げてくる。 ジャイアン「・・スネ夫、少し小便していいか?」 急にジャイアンが切りだしたので、スネ夫は焦った。 スネ夫「う、うん。いいよ。ただ、後ろ向いてやってよね・・。」 ジャイアン「安心しろ。そこの隅でするからよ。」 だが、上手く切り返せた。後ろ向きならば、この男を殺す隙も出来るというもの・・。 ジャイアンは隅によってもぞもぞしている。殺るなら、今か・・。 スネ夫は銃を構えてゆっくりと安全装置を引いた。 スネ夫「随分、長いね。」 ジャイアン「ああ、だいぶ溜まってたからな・・。」 ――いいぞ・・。せいぜい時間をかけてくれ。僕もそっちの方が狙いを定めやすい。 ゆっくりと引き金に指を伸ばすスネ夫。その時、 「ビーーーッ!!」 今まで二人が決して届かず、たいして興味もなかった外へ出る電子ドアが静かに開いた。 銃をとっさにバックポケットへ隠すスネ夫。 小便の姿勢のまま、前を向き小便を撒き散らすジャイアン。 予想外のイレギュラーの出現に戸惑う二人。 ジャイアン「お、お前は!?」 ???「ようやく、見つけたよ・・。」 ---10月25日 16:37----------------------------------------------------------------- のび太を追っている間にコナンはある仮説を立てた。つまり、全ては黒の組織の陰謀・・。 のび太や恐らく他にもいるだろう犯人は全て黒の組織の「駒」であると踏んだのだ。 コナン「それにしても、あいつは一体何がしたいんだ?さっきから、町内をぐるぐる徘徊しているだけ・・。」 のび太「やっぱり、学校しかないな・・。ドラえもんの道具なんだし、大丈夫だろ。 まあいいさ。指定されたのは明日。それより、早く家に戻ってスペアポケットを返さないと、ドラえもんに道具勝手に使った事がばれちゃう!」 バーロー「ドラえもん・・?道具・・?意味がわからない・・。ちっ、まぁとにかく「指定された日」・・。 これがキーワードか。今の所、確実に黒と言えるのはのび太だけか。仕方ない、今日から明日にかけてのび太に張り付くか・・」 その後もコナンは徹夜でのび太家の前を張り込んだが、この日、のび太にこれ以上の動きは なかった。 ---10月26日 13:13----------------------------------------------------------------- 真昼の中、未だコナンはのび太を張り込んでいた。 バーロー「くそっ!一睡もしてないってのに、のび太の奴まだ出てこないな。」 コナンが手にした缶コーヒーを飲み干すと、ようやくのび太が出てきた。なにやら傘のようなものを携えて現れた。日傘だろうか? のび太「ようやく、今日という日が来た。これさえ成功すれば、僕は晴れて自由になれるんだ!場所もわかってるし、あとは行くだけだ。」 バーロー「そう、お前は使われてるだけだ・・。黒の組織にな。 お前を餌に今日こそ奴らをおびき出す!俺のためにも・・そして、服部の為にもな!」 のび太は足早に歩き出す。数分経って、足を止めた。目的地に着いた様だ。小学校である。 のび太「待ち合わせまでもう少しあるな。早く来てくれよ・・。」 バーロー「小学校・・。果たして、お前は一体誰を待っている?まさか、ジンか?」 数分経つと、黒いフードを被った人物が合流した。 ???「待たせたな!」 黒フードの人物は先日とは違って変音機をつけている為、誰なのかはわからない。 バーロー「(来たか・・。お前は一体誰なんだ?)」 のび太「こ、こんにちは。」 ???「フフフ・・。君が探し当てた場所は此処だと言うんだね? 私は答えを知っているが、教えることはできない・・。なぜなら、それがルールだからだ。」 のび太「わ、わかってますよ。貴方も着いて来てくれるんですか?」 ???「残念ながら、仕上げが残っていてね。心配要らない。 私も小一時間経ったら、合流させてもらう。君は先に中で待っていてくれ。 最も、「あれば」の話だがね・・。 勿論、私が戻ってきた時、君が間違えているのを確認したら、私は君を殺すだけだ。」 のび太「ううう・・・。わかってますよ。」 そういうと、のび太は校舎の中へと歩を進めた。フードの人物はのび太とは反対方向に踵を返した。 バーロー「ヤバイな。二手に分かれやがったぞ。のび太も気になるが、今はフードが先だな。奴が真犯人に間違いない!」 コナンは見つからない様にフードの人物を追っていく。男はビル街へと進んで行った。 バーロー「歩調の早い奴だ。しかもこのビル街、入り組んでるから油断したら、見失っちまうぜ。」 コナンの不安通り、フードの人物は大通りのホテル街に出ると、姿をくらました。 バーロー「畜生!まだ、近くにいるはずだ。何処に?」 辺りを見回すと向かいのホテルに見覚えのある顔を見つけた。出来杉である。 バーロー「出来杉?何で、こんな所にアイツが?まぁいい、今はフードを探すのが先だ!」 踵を返そうとしたコナン。ふと、立ち止まる。 バーロー「小学生がホテルに何の用がある?それも、さっきの奴が消えたすぐ傍の地点に偶然現れた・・犯人はまさか?」 妙な感覚と共に、嫌な予感がしたのかコナンはすぐさまホテルに直行した。 ロビーには、まさにエレベーターに乗り込む出来杉の姿。出来杉の止まった階を記憶し、階段から追うコナン。 廊下の隅で身を潜めていると、出来杉が一室に入っていくのが見えた。 バーロー「さぁて、追い詰めたぜ!」 ・ ・ ・ ・ 剛田母「誘拐かい?身代金目当てだったら、残念だったね!ウチにはそんな大金置いてないよ!」 出来杉「・・・。」 二人の威勢の良さに安心したのか出来杉は再度、二人に猿ぐつわをした。 ジャイ子「んーっ!んーっ!」 剛田母「モゴモゴ・・。」 出来杉「ふぅ、準備は万端か。後はステージに経つだけ・・。 どうやら、のび太君は正解を見つけられたみたいだし、お二人の命も残り僅かですね・・。おや?」 不適に笑う出来杉。一方、コナンは博士からもらったピッキングツールでドアの開錠作業に勤しんでいた。 バーロー「まさか、博士に貰ったオモチャがこんな所で役に立つなんてな・・。よし、開いたか?」 ロックが解けた事を確認し、コナンはゆっくりと扉を開いた。 廊下以上に静まりかえった室内をコナンはゆっくりと進んでいく。寝室に入った。 ベッドには二人の女性ジャイ子と剛田母が全裸で横になっていた。 出来杉「あれ、こないだの探偵さんじゃないですか?どうやって入ったんです?」 いきなり、後ろから出来杉が現れた。咄嗟に身を翻すコナン。 バーロー「出来杉君、どういう事か説明して貰えるかな。どうして、行方不明になった二人が此処にいるんだい?」 出来杉「え?そんな風に言われてるんですか?まいったなぁ、長いこと連れ出してこのホテルにいましたからね。 無理もないか・・。僕はただ二人と肉体関係を持っているだけですよ。二人とも盛んでね・・。」 コナンは不毛な問答をしたくなかった為、質問を変えた。 バーロー「なるほどね。ところで、出来杉君。左足を見せてくれないかな?」 出来杉「え?な、何でだい?」 バーロー「いや、確かめたいことがあってね・・。」 そう言うや否や、コナンは素早く出来杉の左足の裾を捲り上げた。包帯の後・・。 それは確かに平次が先日、掠めた弾痕を物語っていた・・。 出来杉「ボクに触るなぁぁぁぁ!」 間髪入れずに出来杉のハイキックがコナンに命中した。コナンの小さな体は壁に叩きつけられる バーロー「ぐはっ!!」 よろよろと起き上がるコナン。 出来杉「あと少しなんだよ!いつも僕は完璧だったんだ。 これだってもうすぐ完璧に終わる!なんで、邪魔するんだよ。 こそこそ嗅ぎ回りやがって!昨日の学校でだってそうさ。まさか、拳銃を持っているとは想定外だったよ。」 バーロー「で、出来杉・・。」 出来杉「はぁはぁ・・。多少計画は狂ったけどね。まだ、僕には道が用意されてるんだ。仕上げが残っているんだよ!」 そう言うと、出来杉は部屋から走り去っていった。 コナン「くっ!待て!!」 すぐさま後を追いかけるコナン。ジャイ子と剛田母は放置・・。 余程動転していたのか、出来杉はエレベーターを使わず、階段で逃げていた。 身軽な分もあってか、コナンは容易に出来杉の姿が視認できるほどまで追いつく事ができた。 出来杉「くっ!しぶとい奴だ。まだ追ってくるのか!」 コナン「(無駄だ。お前にはさっき蹴られた時に、博士の小型発信機を取り付けておいた。 最も、俺の推理が正しければ、奴が向かう先はたった一つなんだけどな!)」 ---10月26日 14:33----------------------------------------------------------------- のび太「ようやく、見つけたよ。」 声の主はのび太であった。 スネ夫「お、お前!のび太!」 ジャイアン「満足か!俺達の苦しむ姿が見れてよぉ!!」 口々に罵声を浴びせる二人。 のび太「何、言ってんだよ!僕だって被害者なんだぞ!」 そう言って、のび太は上着を脱いで、半裸になってみせた。 見ると、上半身に金属の拘束具が取り付けられていた。 幾つもの金属がのび太の胸部にことごとく、突き刺さっている。 おもむろに、のび太はポケットからテープレコーダーを取り出し、二人の目の前で再生した。 ---10月23日 04:11----------------------------------------------------------------- 「ガガガ・・やぁ、のび太。君は常に人任せで世間を渡り歩き続けてきた。だが、そろそろ一人立ちする時だ。 まもなく君の友達が二人、行方不明になる。剛田君と骨皮君だ。彼らを探せ。 君自身の力のみでな。幸い時間はたっぷりある。Xデーは三日後の午後3時。それを過ぎれば、君の体はアジの開きの様になるだろう。 私は君のそんな姿は見たくない。そこで、ヒントをやろう。 彼らはこの町内のどこかに隠されている。但し、制限も受けて貰う・・。 それは、彼らを見つけ出すのは、三日後のXデーのみ許可するという縛りだ。 それまでの期間、彼らと接触するのは認められない。だが、町を歩き回って探索するのは自由だ。 三日経って、二人の居場所を特定したら、同封の電話番号の人物をそこへ呼び出してくれ。 後は指示通りにさえすれば、君の装置は外してあげよう。 わかってるとは思うが、他人に話した時点で、このゲームは意義を失う。気をつけてくれ。ゲームスタート!」 町外れの廃屋でのび太は胸の痛みと共にテープを聴いていた。 突然の出来事に耳を疑うのび太。 ――何言ってるんだ?こいつ、あの二人が消えるはずないじゃないか・・。 それもその筈、彼は今日、当の二人にスネ夫の家に呼び出されているからだ。 大方、スネ夫が新しく買ったゲームの自慢かジャイアンに気の済むまでボコボコにされるかの二択が待っているに違いない・・。 考えるだけで吐き気がしてくる。 上着を着て、のび太は家に戻る。この時、のび太は装置の恐怖など微塵も感じていなかった。 なぜなら、 「まっ、ドラえもんに頼めば何とかしてくれるだろ・・。」 と、考えていたからである。 ---10月26日 14:35----------------------------------------------------------------- スネ夫「僕達が捕まった日、僕はのび太を家に呼んでいた。 だから、僕はてっきり僕達を襲ったのが,後からやってきたのび太だと考えていた。 そして、最初に聴いたカセットテープのミス・・。!!!」 不意にスネ夫は何かが閃いた。 スネ夫「ジャイアン、最初のテープをもう一度再生してくれ!」 ジャイアン「お、おう。」 ジャイアンは自らが最初に聴いたテープを再生する。 聞き慣れた声の声明が終わる・・。 ジャイアン「何だってんだよ!?」 スネ夫「最後のくだり、もう一回頼む!」 スネ夫は目を瞑り、神経を集中させて一連の流れを聴き直す。 スネ夫「ジャイアン、僕が犯人がのび太だと最初に断定した理由。思い出せる?」 ジャイアン「確か、お前が・・。最後にのび太の母ちゃんの声が聞こえたとか・・。」 スネ夫「そう、でももう一度聴いてみてくれ。途中にノイズと「ピー」という機械音が入っている。」 ジャイアンは耳を当てて、聴きなおす。 ジャイアン「あ、ああ。確かに入ってるな。それがどうかしたのか?」 スネ夫「二重録音だよ!のび太のママの声はそこからさらに録音されてたんだ。 これは犯人が僕達にのび太を疑わせる為のフェイクだったんだよ。」 ジャイアン「そ、それじゃあ。のび太は犯人ってことじゃねぇのか!?」 のび太「だから、言っただろ。僕も被害者だって!」 スネ夫「ところで、のび太。お前、どうやって僕の別荘なんか調べたんだ?」 のび太「え?ここスネ夫の別荘なのかい?僕はただ、「入り口」を使って学校から入ったんだよ。」 ジャイアン「「入り口」って何だよ?」 ---10月23日 12:51----------------------------------------------------------------- 少し家で寝た後、のび太はスネ夫の家に向かう準備をしていて気づいた。 ――そうだ、行く前にドラえもんにこの変なのはずしても〜らおっと。 のび太「どらえも〜ん!ちょっと話があるんだけどさ〜。」 自分の部屋はもぬけの空だった。どうやら、ドラえもんは留守らしい。 のび太「何だよ!肝心な時に使えないなぁ・・。まぁ、手はあるけどね。」 のび太は押入れの中からスペアポケットを取り出した。 ドラえもんが普段隠しているものだ。 のび太「へへへ・・。ごちそうさまぁ〜!」 のび太は軽快なステップで家を出発した。 のび太「とりあえず、最初はスネ夫ん家に行って用事済ましちゃうか。」 スペアポケットを手に入れて安心したのか、のび太はやや楽観的になっていた。 スネ夫の家に着くのび太。 「ピンポーン!」 チャイムを押すが、しばらく待っても誰も出る気配はない。 のび太「また、嫌がらせの居留守かなぁ・・。」 しぶしぶ、のび太は庭の植え込みをかき分けて、庭に入った。 「ガチャッ」 ドアを開けて中に入る。鍵はかかっていなかった。 妙だ。やけに辺りが静かだ。隠れているのだろうか? のび太「ジャイア〜ン?スネ夫〜?出てきてくれよ〜。」 二人の名を呼びながら、次第に以前の言葉が頭をよぎる。 ――まもなく君の友達が二人、行方不明になる。 全ての部屋を探すが、誰もいない。のび太は再び、居間へ戻る。 先程は目がいかなかったソファーにテープが置かれていた。 のび太はポケットに入れっぱなしだったプレイヤーにそれを入れて再生する。 「ガガガ・・やぁ、また会えたなのび太。 これで先刻、私の言った言葉を信じてもらえたはずだ。 もう君に逃げ場はない、問題はどう進むかだ。 さて、ここで君には次なるヒントを与えよう。 先刻、私はこの町内の何処かにいると言ったが、それはいささか正しくない。 問題はその内部だ。君にはその「入り口」を見つけだして欲しい。頑張ってくれたまえ。グッドラック!」 事実!のび太の脳裏にはただこの単語が浮かび上がった。 自身の胸部に取り付けられたこの装置も、ジャイアンとスネ夫が消えたということも。 のび太「た、助けて〜、ドラえも〜ん!!」 のび太は力ない悲鳴をあげ、外へと飛び出した。 のび太「何でもいい!二人を探すのに役立つ道具よ!出てくれ!」 スペアポケットを必死に探すのび太。手に覚えのある感触があった。それを無心に引き上げる。 のび太「やった!人探し傘だ!これを使えば、二人を見つけられるぞ!」 のび太は傘を差し、矢印の方向に進んでいく。たどり着いた先は小学校。 のび太「今日、中を探るのは危険だな。普段の日だから、先生達もいるだろうし・・。 探すなら、明後日の休日を狙うしかない。 念のため、他の場所も探しておこう。でも、「入り口」って一体、どういう事だろう?」 のび太はすごすごと学校を後にした。商店街を通ると、出来杉がいた。 出来杉「あ、のび太君。ちょうどよかった。明後日の宿題を見てあげる約束なんだけど・・無理になっちゃった。ごめんね!」 のび太「(そういえば、出来杉とそんな約束してたな。まずい、怪しまれないようにっと・・) そう、奇遇というか僕もなんだ。ちょっと、学校に行かなきゃいけなくなっちゃって!」 出来杉「・・・そう。本当にゴメンね。」 のび太「いいっていいって。0点なら取り慣れてるしね!」 何気ないうやり取りを終えて、のび太は家路に着いた。 ---10月26日 14:39----------------------------------------------------------------- のび太「ストレートホールだよ。ドラえもんの道具さ。 きっと、あのフードの奴がドラえもんから盗んだんだよ。 この扉入ってきた突き当りの右の壁が学校と繋がってるんだ。見つけるのに苦労したよ。 学校の倉庫に付いてたんだからね。昨日も探しに来たんだけど、人に見つかるのが怖くて探せずじまいだった。」 スネ夫「ちょっと待て!お前、犯人に会ってるのか?」 のび太「うん。顔とか声とかは全然わからなかったけどね。」 ジャイアン「使えねぇなぁ・・。」 「ガチャァァァン」 のび太「な、何だ!?」 三人が話していると、のび太が入ってきた電子ドアが突如、閉まってしまった。 ---10月26日 14:48----------------------------------------------------------------- 出来杉を追いかけていたコナンは小学校にたどり着いた。 出来杉はコナンをチラチラ確認しながら、校内へと入った。 バーロー「もう、逃がさねぇぞ!」 眼鏡の発信機越しに出来杉の事を凝視しながら、追うコナン。 出来杉は明らかに何処かを目指して走っている。 出来杉がある一室に入っていった。 コナンが見ると、「倉庫」と書かれていた。 バーロー「追い詰めたぞ!出来杉!」 そこで、コナンが見たものは異様な光景だった。 壁に開いた黒い穴に向かって出来杉が飛び込む姿である。穴に入った出来杉は忽然と姿を消した。 バーロー「な、何だこれは?ええい!考えていても仕方がない。 出来杉はこれに入っていったんだ。俺も入るしかない!」 意を決して、コナンは穴へと飛び込んだ。 ――・・・・。 そこは、薄暗い地下室の廊下である。奥には上へと続く階段と途中に左への曲がり角。 その曲がり角を出来杉は曲がって行った。当然、出来杉を追うコナン。 バーロー「待て!出来杉!」 曲がり角を曲がった先には出来杉がスタンガンを持って立っていた。 出来杉「かかったね!」 バーロー「し、しまっ!!・・・グワァァァァァァァァァァァ!!!!!」 コナンの体に押し付けられたスタンガンから電流がほとばしる。 出来杉「数分は動けないだろう。僕は仕上げを済ませてくるよ。 戻ってきたら、次は君の番だ。幸い、ここなら後始末もし易いしね・・。 誘き寄せた甲斐があったよ、小さな名探偵さん。」 そう言って、出来杉は奥の扉へと進んでいった。 バーロー「で、出来杉ぃぃぃぃ!」 痙攣したコナンの腕は出来杉に届くことはなかった。 ---10月26日 14:44----------------------------------------------------------------- のび太「どうしよう!ドアが開かないよ!!」 スネ夫「この別荘の地下はセキュリティ万全に作られたからね。 のび太、入り口に指をかざす装置があっただろう。そいつは指紋認証装置だ。 一定時間経つと閉まる仕組みになってる。でも、安心しろ。 脇にも同じ装置があるだろ?お前の指紋が登録されてるなら、お前が指をかざせばまた開くはずさ。」 のび太「う、うん。わかった。」 のび太が脇を見ると、スネ夫の言う通り指紋認証装置があった。のび太が指をかざす。 「ピーッ」 が、ドアはピクリとも反応しない。 ジャイアン「おい、全然開かねぇじゃねぇか!」 スネ夫「そんな、なんで!?」 「ガガガ・・」 聞き覚えのあるノイズに三人は上を見上げた。 バスルームに取り付けられた二つのスピーカーから声は響く。 「やぁ、のび太。まずは君がここにたどり着いたという事実を褒め称えておこう。 おめでとう。 だが、君はいささかアンフェアな方法を使ってここにたどり着いた様だな。 私は言った筈だ。君自身の力で探せ・・とな。」 声を聞き、のび太ははっと手元の人探し傘を見据えた。 「しかし、君がここにたどり着いたというのもまた事実。そこで、君にチャンスをやろう。 目の前の二人を殺せ。武器もあるぞ。君が入ってきたドアの右手側のタイルを剥がせ。 急いだ方がいい。ここにはもうじきさらなる人物がやってくる。そして君のタイムアップも残り僅かだ。ゲームスタート!」 のび太はすぐさま右手側のタイルを剥がした。中にはロッカー程の空洞。中には拳銃が一丁。 のび太は弾丸を確認し、安全装置を外して二人に向き直った。 スネ夫「や、やめろのび太・・。」 ジャイアン「もう、お前の事は殴らない!約束する。」 のび太「そういう問題じゃないんだよ。ゲームに負ければ、僕も死ぬ。 ごめんよ、ジャイアン。まずは君からだ。」 ジャイアン「助けてくれぇ!心の友よぉ!!」 「パァァァァンッ」 一発の銃声が室内に響いた。 のび太「ぐ、ぐぐ・・。」 「ドサッ!」 倒れこんだのび太の後ろに見えたのはスネ夫だった。 先程、ジャイアンを殺すつもりだった拳銃を構えている。銃口からは薄い煙が出ていた。 ジャイアン「す、スネ夫。なんで・・。」 スネ夫「弾は僕が持ってたんだよ。 本当はこいつで君を殺して、僕がゲームの勝者になる筈だったんだけどね。・・・もう、お手上げさ。」 ジャイアン「ありがとな・・。助けてくれて。」 スネ夫「何言ってるんだよ!僕は君を殺そうとしてたんだぞ!」 ジャイアン「それなら、最初に俺だってお前を殺そうとした。」 スネ夫「・・もう、いいよ。僕達これからどうなるんだろうね?」 ジャイアン「安心しろ。俺が死ぬ。」 スネ夫「え?」 ――・・・ ---10月26日 14:51----------------------------------------------------------------- 「ビーーーッ!!」 電子ドアが開き、一人の男が現れた。出来杉である。 彼の目の前に広がった景色は凄惨なものであった。足元にはのび太の遺体。 遠くにはうつ伏せに倒れこんだジャイアン。一方で、力なく俯いているスネ夫。 出来杉「何だ、こいつ死んじゃったのか?」 出来杉はのび太の頭を無情にも踏みつけ、ゴリゴリと靴底で擦った。 スネ夫「お、お前が真犯人だったのか!出来杉。」 出来杉「それにしても、骨皮君。まさか、君が勝つとは思わなかったよ・・。 てっきりここには剛田君か武器を持ってるのび太君がいるとばかり思っていたからね。」 スネ夫「・・僕は助かったのか?」 出来杉「勿論さ。さ、僕の開けたドアからご自由に出て行ってくれて構わないよ。」 スネ夫「その前にこいつをなんとかしてくれよ・・。」 スネ夫は自らの足枷を指差した。 すると、出来杉はジャイアンの傍に落ちていた鋸を拾い上げ、スネ夫の足元に落とした。 出来杉「これで、自分の足を取っちゃえばいいじゃんwww」 スネ夫「ルール違反だろ。僕はちゃんとジャイアンを殺したんだぞ!」 出来杉「そうだよね。僕も最初はルールに忠実でいるつもりだったよ。 でも、よく考えてみたら君達が全員いなくなれば、静香ちゃんは僕のものになるんだ。一石二鳥だろ。」 そう言って、出来杉は携帯していた拳銃をスネ夫に向け、安全装置を外した。 スネ夫「なるほど、ルールを破ったのはお互い一緒って訳か・・。」 出来杉「意味がわからないよ?恐怖のあまり、頭がいかれちゃったかい?」 今や遅しと出来杉はトリガーに指をかける。 出来杉「さよなら・・。」 「パァァァァンッ」 出来杉の腹部に空洞が空いていた。 何が起こったのか理解できないまま、出来杉は倒れこんだ。 後ろからピストルを構えるジャイアンを見ながら・・・。 ---10月26日 14:45----------------------------------------------------------------- ジャイアン「まぁ、俺が死ぬってのは冗談だ。いい考えがある。」 スネ夫「な、なんだよ。いい考えって・・。」 ジャイアン「こいつを見てくれ。」 ジャイアンが差し出した掌にはスネ夫が見つけたのと同じ銃弾があった。 スネ夫「ど、どうして。ジャイアンも持ってるんだよ?」 ジャイアン「実はな・・・。」 ---10月26日 14:20----------------------------------------------------------------- ・ ・ ・ ジャイアン「うっ、うっ・・。母ちゃん〜。ジャイ子〜。」 ジャイアンは二人の写真を見て泣いていた。もう自分は生きては戻れないかもしれない・・。 せめて、二人だけは助かって欲しい。一心の願いだった。何気なく、写真を裏返すジャイアン。 その表情は一気に変わった。写真の裏にメモが書かれていたのである。メモにはこう書かれていた・・。 私は君の味方だ。それを証明しよう。 部屋の隅のタイルは剥がれかけている。そこに銃弾が眠っている筈だ。君が手に入れた拳銃 に装填できる。これでゲームを終わらせろ。 ジャイアンは自らの軽率な行動を呪った。 目の前にあったこんなチャンスに気づかなかったのもそうだが、何よりゲームを終わらせる重要な鍵であった銃本体をスネ夫に与えてしまった。 奴は弾こそ持っていないものの、狡賢い性格を持っている。 拳銃を渡せとストレートに言えば、何か、感づかれるに違いない。 だが、チャンスはある筈だ。その為にもまずは弾丸の回収が先決か・・・。 ジャイアン「・・スネ夫、少し小便していいか?」 咄嗟に切りだした方法はこれよりなかった。 スネ夫「う、うん。いいよ。ただ、後ろ向いてやってよね・・。」 ジャイアン「安心しろ。そこの隅でするからよ。」 上手く隅に行く口実も作れた。 なるほど。確かにタイルの一角が剥がれかけている。 ゆっくりと丁寧に剥がすと、弾丸が挟まっていた。それをポケットに突っ込む。 スネ夫「随分、長いね。」 ジャイアン「ああ、だいぶ溜まってたからな・・。」 ジャイアン「(小便を出しておかないとな・・。)」 ジャイアンはチャックを下げた。 ・ ・ ・ ---10月26日 14:46----------------------------------------------------------------- ジャイアン「と、言うわけだ。」 スネ夫「まさか、僕が君を狙ってた時にそんな事をしていたとはね・・。」 ジャイアン「そこでだ、さっきスピーカーの声の奴は言ってた。「ここにはもうじきさらなる人物がやって来る」ってな。 恐らく、そいつが真犯人だ。俺はここで横たわって、銃を隠し持ってお前にやられたふりをする。 お前は奴の注意を引き付けといてくれ。」 スネ夫「ちょっと待てよ!君に弾丸の入った拳銃を持たせるなんて御免だよ。 犯人の目の前で、君が僕を撃ち殺せば、君が勝って終わりじゃないか。」 ジャイアン「俺を信じろスネ夫。それにな、もう俺の目的は此処から出ることだけじゃなくなっちまった。 ジャイ子や母ちゃんを酷い目にあわせた奴をブチ殺さなきゃ気が済まねぇ!・・・もう、俺は止まれねぇよ。」 スネ夫「わ、わかったよ。君を信じる。」 ジャイアンに気圧されたのか、信頼したのかスネ夫はジャイアンの作戦に乗ることにした。 ---10月26日 14:53----------------------------------------------------------------- ジャイアン「う、上手くいったみたいだな。」 スネ夫「そ、そうみたいだね・・。」 真ん中に倒れた出来杉を見下ろしながら、二人は座りこんだ。 ジャイアン「さぁ、次だ。スネ夫、その鋸を俺に貸せ!」 スネ夫は言われるままに鋸をジャイアンに投げて渡した。 スネ夫「そ、そんな物どうするんだ?鎖は切れなかったんだぞ!まさか!?」 ジャイアン「真犯人は死んじまった。もう、俺達で何とかするしかない。 さっきのび太が言ってたストレートホールを使って、助けを呼んでくる。」 話しながら、ジャイアンは自分の口に上着で猿ぐつわをしている。 スネ夫「や、やめろよ。そんな事しなくても、まだ手はあるかもしれないだろ!」 スネ夫の言うことなど聞こえないかのようにジャイアンは血走った目で自分の足枷の付いた足に鋸を近づける。 スネ夫「や、ヤメロォォォ、ジャイア〜〜〜〜ンッッッ!!!」 ジャイアン「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 部屋には肉と金属そして骨が削れあっていく音が響き渡った。 ――ややあって、ジャイアンは自らの足が自分と離れたのを確認し、ズボンで簡単な止血を施した。 ジャイアン「あ、安心しろ。お前の事も後で助けに来させるからな・・。」 スネ夫「・・・・。」 友人が目の前で足を切断する様を見て、スネ夫は呆然自失と化してしまった。 ジャイアン「また閉められちゃ、敵わねぇからな!」 「ガチャアン!!」 ジャイアンは指紋認証装置を壊し、ロックできない様にする・・。 そして、ゆっくりと部屋を後にした。 一人残されるスネ夫。その時、倒れていた出来杉が再び、起き上がった。 出来杉「ぐ、ぐぅ・・。よかった。急所は外れていたみたいだね。つくづく、僕は神に愛されているのかな・・?」 スネ夫「た、助けて・・。」 ---10月26日 15:02----------------------------------------------------------------- 結局あの後、気絶してしまったコナンはようやく目が覚めた。彼はすぐに状況を把握した。 バーロー「まずい、出来杉があの中に!!」 走って部屋に入るコナン。そこには、スネ夫に拳銃を構えた出来杉がいた。 出来杉「・・ああ、動けるようになりましたか・・。はあっはあっ、そこで見ていてくださいよ。もう終わりですから・・。」 ―まずい! コナンがそう思った時、コナンは目の前にのび太の拳銃を見つけた。 ―間に合ってくれ! コナンはキック力増強シューズを使い、出来杉の右腕へ蹴り飛ばした。 「ベキィィィィッッッ!!」 出来杉「ぐぎゃぁぁぁぁ・・。」 骨の折れた右腕を支えながら、出来杉はよろよろと部屋から飛び出した。ポケットから、何かが落ちる。 バーロー「もう、観念しろ!」 またも、後を追うコナン。余程の逃げ足か、もう姿は見えない。 バーロー「まずい、今あの穴から学校に逃げられたらおしまいだ!」 突き当たりを右に進む。だが、そこは壁。行き止まりだった。 バーロー「さっきあった穴が無くなっている?なら、向こうか!」 コナンは反対側を見据える。・・上へと続く階段。コナンはすぐさま階段を駆け上がる。 上は広々とした綺麗な木造の居間で、上に階段がない事から地下付きのコテージである事が把握できた。 一通り中を探るが、隠れている気配はない。恐らく、外に逃げたのであろう。コナンは玄関を開けて、外に飛び出した。 コナンの目の前には閑静な田舎の村が広がる。 目の前には、可愛らしい少女が体に似合わぬ鉈を持っていた・・。 ―――・・・。 ---10月26日 15:04----------------------------------------------------------------- スネ夫は先刻、出来杉の落としたものを手に取り、震えていた。カセットテーププレイヤーである。恐る恐る再生のスイッチを入れる・・。 「ガガガ・・やぁ、出来杉。君はいつも完璧でいるな。いや、完璧を偽っていると言って良い。 大変な努力が必要だったはずだ。テストでカンニングし成績を良くする事に努め、妊娠した女子には脅してまで堕胎を強要。 ・・・人間とは思えん。だが、君には今日から本当に完璧な人物に生まれ変わって貰おうと思う。 腰に取り付けたベルト型のそれは、爆弾だ。爆発すれば、君の上半身と下半身は分断される。死ぬということだ。」 スネ夫「な、何だよこれ?」 理解できないスネ夫・・。テープは尚も続ける。 「安心しろ。ゲームを滞りなく完了させれば、君は助かる。 君にはゲームの中核になって貰う為、話す必要事項はかなり多い。 これから、私が説明する事をよく聞け。 まず、君には私名義のホテルに監禁した剛田君の母親と妹を確認してもらう。 同封された部屋番号に行けばわかる。 それとは別に同じく、同封された設計図を使って木箱を作り、君の手に握られた拳銃を梱包してくれ。」 「今度はそれを持って、君の通う小学校の倉庫に空いた穴から左の突き当たりに位置する部屋に入る。 指紋認証装置があるが心配は要らない、君の指紋は登録してある。 入ると、中央には取り外し式のマジックミラーがある。外せば、そこにはカメラが備え付けられている。 木箱は横に空きがあるから、そこに置いてくれ。代りにカメラの受信機が置いてある。 そいつを使って、君には次のそこで始まるゲームを見届けて欲しい。ある二人の男のゲームだ。 午後3時になっても、いずれかが死んだ様子がなければ、剛田君の母と妹を殺せ。さらに、現場に向かって二人も殺すのだ。」 「さらに別のゲームも担当してもらう。といっても、簡単なものだ。 恐らく、26日に君に一本の電話が入る。 その男が、君が倉庫を抜けて入ったあの部屋にたどり着くかを見届けて欲しい。 もし彼が間違っていたら、同梱したスイッチを押せ。彼を殺すためのものだ。」 「警察は動かないとは思うが、注意しろ。周りに不審な人物を見かけたら、始末するんだ。 なるべく、穴を抜けて入った「例の場所」で殺せ。あそこなら、後始末がしやすいからな。 随分と長くなってしまったが、君なら完璧にこなせると信じている。頑張ってくれ、ゲームスタート!」 スネ夫「・・・・。」 最早、スネ夫にはいまだ謎の真犯人の長ったらしい説明など、耳に入ってはいなかった。 頭がどうにかなりそうだった。スネ夫は頭を抱えてうずくまり叫んだ! スネ夫「くそぉ!!そもそも、こんな場所に別荘なんて建てるべきじゃなかったんだ!!この 雛 見 沢 なんかに!!!」 ---10月26日 15:07----------------------------------------------------------------- レナ「どうして、子供がこんな所から出て来るのかな。かな?」 コナンの脳裏にふと、一昨日のニュースがよぎった。 ――『2,3日前から報道してまいりました雛見沢少女誘拐事件。未だ被害者少女L.Rさんは行方不明のままだそうです。 この雛見沢村では以前から「オヤシロ様のタタリ」といった奇怪な事件も起こっているようで、県警はそれとも絡めて捜査を行っているそうで・・』 バーロー「君は・・・。誘拐事件の被害者、竜宮レナちゃんじゃないか!?どうしてこんな所に・・。」 レナ「可笑しな事を言うんだね、ボク。ここは雛見沢村。私の住んでる村なんだよ?」 バーロー「(ひ、雛見沢村・・?。俺達の町からだいぶ離れてるな。どういうことかさっぱりわからないぞ・・。) そ、それより、今この家から腕をおさえた男が出てこなかったかい?」 レナ「・・ああ。出来杉君のこと?あの子はルールを破ったから死んじゃったよ。」 バーロー「な、何!?」 レナ「君も死ぬんだよ。私はゲームの審判さんだからね・・。」 「ズバァッッッッ!!!」 レナは手にした鉈でコナンを一閃した。 鉈はコナンの頚動脈を的確に斬りつけている。 薄れゆく意識の中でコナンは思った・・。 バーロー「(く、黒の組織じゃなかったのか・・。)」 ――・・・。 ???「終わった?レナ。」 レナ「うん。終わったよみ〜ちゃん。そっちは片付けたの?」 コテージ横の森の奥から出来杉の遺体をひきずって園崎魅音は現れた。 魅音「バッチリ。後は、あの人が来るのを待つだけだね。」 245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[]:08/11/02 20:43 ID:jLsX/Ij40 ---10月26日 15:08----------------------------------------------------------------- スネ夫「ううう・・・。僕はどうしたらいいんだ!?早くこんな地獄から抜け出したいよ・・。」 スネ夫が取り残された部屋で泣いていた。 手元に母親が入っていたゴルフバッグを抱えて。 スネ夫「ママ・・。助けてよ、ママ・・。」 今は亡き母親を見つめるスネ夫。その時、急にその目が開いた! それどころか、彼女は立ち上がったではないか! ???「ふぅ、もうゲームも終わりザマスか。」 混乱のスネ夫。 スネ夫「どういう事?どうしてママが生きてるの?」 ???「ああ、口調と容姿がそのままだったザマスね。」 そういうと、スネ夫の母は光に包まれた。 腕で目を庇いながら、スネ夫は母を見据える。そこには馴染みのある姿が目に入った。 全身青色で妙に短足、頭のでかいなんとも異様なロボット、ドラえもんである! ドラえもん「ゲームオーバーだ!」 ドラえもんの腕には出来杉の物と思われる拳銃が握られ、銃口をスネ夫に向けた。 「パァァン!!!」 ---10月24日 14:21----------------------------------------------------------------- ・ ・ ・ ・ 平次「すんませ〜ん!この家の方ですか?ちょっとお聞きしたいんですけど・・。」 ドラえもん「はい!僕で宜しければ・・。」 平次「(どぎついコスプレやなぁ・・。)あの、ここで何してはったんですか?」 ドラえもん「あ、はい。僕はみ〜ちゃん達とよくこの庭で合コンを開いて遊んでるんですぅ。」 平次「は、はぁ。そうですか・・。どうも。(あかん、ただのキ○ガイや・・。話すだけ時間の無駄か。 不法侵入やけどメンドイし、見逃したるわ。ほか行こ・・。)」 平次がいなくなったのを確認してドラえもんは後ろに向き直った。 ドラえもん「さて、話の続きを始めようか。み〜ちゃん。」 ???「ですから・・私の事、そういう風に呼ぶのやめてくださいよ!」 ドラえもん「くくく。ごめんごめん。園崎魅音さん・・。」 魅音「それより、さっきの奴。何か嗅ぎまわってますよね?」 ドラえもん「まぁ、待て。これを見ろ。宇宙完全大百科だ。 名前は・・服部平次か。魅音、彼にゲームの用意を・・。」 魅音「わかりました。」 そういって、ドラえもんから渡されたレーダーらしき物を手に、魅音は平次を追った。 ドラえもん「さて、竜宮レナ。私の意志に賛同してくれるというのは本当かね?」 レナ「はい、最初はびっくりしたけど、世の中にこんな事をできる人がいるなんて知りませんでした。 何でもお手伝いします。」 ドラえもん「人ではなく、ロボットだがね・・。 私の周りには生きていることに感謝をしていない人間がたくさんいる。 別にそれが悪いとは言わん。ただ、そのような奴らは今を必死に生きることができるのか? 命懸けで何かを成し遂げることができるのか? 私は人間というものの本質が知りたい。 ・・さて、君にはゲームの「審判」となってもらいたい。万一、邪魔者が現れた場合は君に消してもらう。 これから君に雛見沢の別荘を案内する。そこから、村へと出てきた奴が私達以外なら、全て殺せ。」 レナ「わかりました・・・。」 ドラえもんとレナは庭の茂みに隠されたどこでもドアに入っていた。扉はゆっくりと閉まる。 「ギィィィ・・バタン!」 ――「うらやま・・けしからん、恐らく私には永遠に訪れない機会だろう。私はかつて自身をこれほど呪った事はない!」 ――出来杉「そうだよね。僕も最初はルールに忠実でいるつもりだったよ。 でも、よく考えてみたら君達が全員いなくなれば、静香ちゃんは僕のものになるんだ。一石二鳥だろ。」 ---10月26日 15:15----------------------------------------------------------------- 「バタン!!」 ドラえもんがコテージの玄関から現れた。 二人の少女が出迎える。 魅音「お疲れ様でした。」 レナ「お疲れ様でした。」 ドラえもん「ストレートホールの回収は?」 魅音「既に済ませました。出来杉が使おうとしていたので消しておきました。ただ、残念な がら、剛田たけしは脱出に成功したようです。申し訳ありません。」 ドラえもん「まぁいい。ストレートホールがなければ、あんな馬鹿の言うことなど、狂人の 戯言にしかならん。レナも邪魔者を消してくれたかな?」 レナ「はい。そこにあります。」 レナはコナンの遺体を指差す。 ドラえもん「ご苦労。遺体の始末は任せられるか?」 魅音「はい。骨皮スネ夫の母親を沈めた底なし沼が近くにあります。其処へ・・」 ドラえもん「よろしい。任せよう。」 ドラえもんはどこでもドアを取り出し自分の住む街へと戻っていった。 「ギィィィ・・バタン!」 ――多くの人間は生きている事に感謝をしない。私は人間の本質というものをこの目で確か めたい。 出典:ジャイアン「んん?ここは何処だ?」 リンク:http://www2.2ch.net/2ch.html |
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