妹 その3 (ジャンル未設定) 69794回

2009/11/05 15:11┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:アニ氏

今年も満開に咲き誇った桜を少し気の荒い春風が吹き散らし
3月の学内の地面を桜色にしてしまった。
大学の図書室で課題に取り組む僕の耳にも
新入生へのサークル勧誘の声が賑やかに響く

「お、アニじゃん何やってんの?」
学内の友人のが数人僕を見つけて声をかけてきた。
「なにって図書館でする事は一つだろ」
「真面目だねぇアニは」
「あのさ、今から新入生の女の子を飲み会に誘いに行くんだけど一緒にいかね?」
「相手を見て言え、お前の目の前で今俺が何やってたと思ってんだよ」
「え〜付き合い悪いよお前・・」
「彼女居るのは知ってるけどさぁたまには遊んだって罰あたんねーだろ!」
「そうだぞたまには男の友情を大事にしやがれ!」
「それにほらコレを見ろ!」
そういうと仲間の一人が携帯電話を出して俺に見せる
「今日来る女の子の中でも飛び切り可愛い子の写メ撮ったんだw」
友人は僕に見えるように
次々と隠し撮りしたと思われる数人の女の子の画像を見せた。
「お前そういうの勝手に撮ってるとそのうち捕まる・・」
その中の一人の画像に思わず言葉が止まる
「お、この子とか特にスゲェな!レベルタケェ!」
「あ、この子か!可愛かったよな!」
「この子も来るのか?」
「おっwアニ来る気になった?w」
「来るのか?」
「ああ、来るらしいよwでも抜け駆けは無しだぜ?」

その時だった僕の携帯が短く震える
僕は直ぐに携帯を取り出しメールを確認する
「・・・・」
「なに?彼女?」
携帯の文章を見つめる僕の側で友人達は話を続けている
「なーアニいこうぜ!コッチ微妙に面子足りないんだよ!」
「人数多いほうが盛り上がるし、やり易いだろ・・色々」
「お前そういう発想だからもてねーんだよw」
「こないだもお前が一人がつがつしたせいでな・・」
ワイワイと話す友達の側で僕は短くメールを返信すると
無言で携帯を閉じポケットにしまい課題をカバンに片付けた。

「わかった・・俺も行く」
「そう来なくっちゃ!w」
「やりぃw」
僕は久しぶりに友人達と男の友情を確かめる事になった。

家に電話すると「はい●●です。」と5年生の可愛い声が元気に響いた。
「あ、ユキか?もう帰ったのか?」
「うんw今丁度玄関で靴脱いでた所だよ、なあにお兄ちゃんw」
「マサミさんかお婆ちゃんいるかい?」
「お母さんなら今台所みたい、代わる?」
「いや、忙しそうだからお前伝えておいて、今日は俺もお姉ちゃんも遅くなるから晩御飯は要らないって」
「うん解った言っとくー」
「じゃあ頼むね」
「お土産アイスが良いなぁw」
ユキは甘えたように言う
「いやしんぼw解った買ってかえるよw」
「毎度あり〜じゃね〜」

ユキはそう言うと僕の残りの台詞も聞かずに電話を切ってしまった。
こういう慌てん坊な所はマサミさんそっくりかもしれない

電話をしまい学内の廊下を歩いていると
丁度別館の方から加奈子先輩が歩いてきた。
「あ、先輩ちわっすw」
「おう!アニ君じゃないか!」
「今日の飲み会来るんだって?」
「あ、ハイw」
「どういう風の吹き回しだね?w」
「いやwははwたまにはねw」
「私も今年こそ可愛い男の子ゲットするんぜ!」
加奈子先輩は握りこぶしを高く上げて張り切っている
「そんな事いって毎回凄いピッチで飲んでつぶれてませんか?w」
「いやいや!今年こそ過去の反省を踏まえて御淑やかなお姉さんキャラで可愛い後輩彼氏をゲットするんだよ!」
「はははw応援しますよw」

「所で彼女がいるのに大丈夫なのかね?君は」
先輩がニヤッと笑って言います。
「ああw付き合いで顔出すだけですから僕はw」
「・・・ふむ・・否定しない所を見るとやっぱり西木君の言うとおり彼女は居るのね・・」
「あれ?言ってませんでしたっけ?」
「言ってないよwそういうのは早めに言っといてよねw」
先輩がわき腹を突いてくる
「ははwすみませんw」
「・・・何年くらいの付き合い?」
「え、えーと幼馴染ですね・・」
「へーw今時珍しい漫画みたいだねw」
先輩が感心したように言います。
「ははw結構一途でしょ?w」
「アニ君の性格だと尻にひかれるタイプね、彼女怖いでしょ?」
先輩が上目使いで覗き込んでくるように笑う
「あ、はははw解りますか?w」
「そりゃ解るよwそういうキャラだもん君w」加奈子先輩は笑いながらヤレヤレという顔をする
「はははw」
笑うしかない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

歓迎会は大学でよく使う飲み屋さんで行われた。
駅前の地下街で結構広い大衆居酒屋だ値段も安く品数も豊富なので
うちの大学の連中は大半がココを利用する
面子は揃ってみると結構な人数だった。
男女は新入生男子女子交えて半々という所か
悪友が言うだけあって女の子は皆可愛い子が多い
幹事役の友人が仕切る中自己紹介が進んでいく
「あの子可愛いな」
「俺あの子にする」
「えwお前あんなのが趣味かよw」
「あの子とあの子友達ぽいから俺とお前で挟み撃ちな・・」
友人達が好みの女の子を報告し合って協定を結び始める中
僕は淡々と料理を楽しんでいる、男性陣は女性陣より少し高めの
会費なのだ、元を取らねば勿体無い

「●●学部1年●●ミカです。よろしくお願いします。」
ビール片手に串焼きを頬張る僕の耳にもその聞きなれた声は良く響いた。
彼女が立ち上がり自己紹介をした瞬間その場に居た殆どの人が一斉に注目した。
「うお、やっぱ可愛いな・・」
「やべぇ・・芸能人かよ」
「腰の位置たけぇ・・モデルとかやってんのかな?」
彼女に話題が集中するのを感じながら固い砂肝を噛む

ミカのメールは友達に飲み会に誘われて断れないから
少し遅くなるけど顔出すだけ出して帰ります。
という短いものだったが直前に友人にミカの画像を見せられていた僕には
この展開はわかっていたことだった。
ミカには折り返しメールし僕がそのメンバーに居る事を伝えてある

ミカは奥の座敷の僕から見て斜め向かい側の離れたテーブルだ
女の子グループの中心で楽しそうに談笑しているが
早くも男達がアタックを始めている、明らかにミカ狙いの男が大半だ

加奈子先輩はアレだけ言ってたのに既に飲みに走っており
気の弱い新入生の男の子に絡んでいる・・・
(あの分だと今年もダメだな・・)
そうこうしてる間に
友人達は狙いを定めていた女の子の所へ散って行った様で
僕の周りだけポツーンとスペースが出来てしまっている
まあ、おかげで料理食べ放題だから良いのだけど・・

料理は出揃い酒が回り皆ドンチャン大騒ぎになっていく一方で
まるで僕の周りだけが別世界
(コレじゃまるで飲み会ではぶられている人みたいじゃないか?w)
自分の状況が冷静に可笑しくて一人で笑っていると隣に誰かが戻ってきた。
最初は友人だと思ってた僕はその人物の顔を見て一瞬驚いた。
「へへwビックリしたwアニの友達だったんだねあの先輩達」
「お、おう・・」
皆の視線が痛い・・さっきまで女の子グループの真ん中で
男達のアタックを受けていたはずのミカがいつの間にか
ポツーンと孤島のようになった僕の隣に座っていたのだ。

今更だが、僕とミカは離婚したために姓が違う・・・
だから僕達が実の兄妹である事は誰も知らないのだ
飲み会に集まった他のメンバーからすれば
女の子無視で空気読まずにガチ食いする彼女持ち男と
大注目の超美人の女の子の異様な2ショットにしか見えない
しかも美人の方から集団を離れて態々隣に座ったのだ
コレが目立たないわけが無い

「・・・いいのか・・注目されてるぞ・・」
変なドキドキ感と優越感が入り混じっていた。
「あんまり楽しくないからおトイレ行くふりしてこっち来ちゃったw」
そう良いながらミカは女の子の友達の方に軽く手を振った。
すると女の子の集団がキャーと手を振って答え
何人かの女の子達や男共が一斉に集まってくる
「きゃーミカちゃん超大胆!」
「えなになに?知り合い?」
皆僕とミカの意外性満載の組み合わせが腑に落ちないのか物珍しいのか
たちまち質問攻めにあう
「おめミカちゃんと知り合いだったのかよ!!」
「早く言えよアニ!!」
悪友達も駆けつけてくる
「ミカちゃんアニ先輩の知り合いなの?」
女の子達が興味深々で聞いてくる

僕は一瞬ミカの方を見るミカもその視線をキャッチする
一瞬のやり取り
「えw何今の目線w」
感の良い女の子達が気がつき一層騒ぐ
するとミカが悪戯を考えたような表情になり
立ち上がりると僕の直ぐ側に・・
「つまりね・・・・w」
行き成り僕の腕に腕を回してきた。
「こういう事ですw」

「おおおお!!」
「うそおおお」
「きゃーーw」
飲み会一同大騒ぎになった。
「なんだよおめぇえええ」
「くそっそういう事か!!」
悪友達が僕が飲み会に来る気になった理由を悟ったのか悔しそうに言う

「ミカちゃん何時から付き合ってんの?」
「小さい時から一緒だけど・・付き合い始めは小学校の時からかなw」
ミカが嬉しそうに質問に答える
おいおい・・という視線を送るがミカは気にしない
「くそ〜付き合い悪いと思ってたけど・・こんな可愛い彼女が居るからだったんだな・・」

「なぜだ・・なんでこんな奴がいいんだ・・」
「えーw真面目で優しい所かなw」
僕の腕に強くしがみ付きながら、ミカが嬉しそうに言います。
「うわ・・毒にも薬にもならないノロケじゃん・・ベタ惚れじゃんw」
女の子達が騒ぐ
「あ〜でもアニ先輩って確かにがつがつして無い感じがいいかもw」
「うんw落ち着いてて良いよね」
「そりゃそうさ・・こんな彼女居たら俺だって・・」
「ははw先輩かわいそーw」
がっかりしている悪友を女の子達が慰めます。

「お〜アニ君!」
盛り上がる僕達の所へ加奈子先輩がハイテンションで登場する
「ややっ!この子が噂の彼女?!」
「あ、はい・・紹介します・いも・・っと彼女のミカですw」
一瞬妹と言いそうになってミカに足を抓られる
「うひゃ〜凄い!アニ君の彼女だから可愛いだろうなぁと思ってたけど、本当に可愛いな!」
加奈子先輩は大げさな位に驚いている
「●●ミカです。アニがお世話になっています。w」
ミカが礼儀正しく加奈子先輩に挨拶する
「うわ・・しかも超良い子じゃんwミカちゃんね・・私は3年の加奈子よろしくねw」
加奈子先輩はミカと握手をしてまた別のテーブルに去って行った。

その後姿を見送った後ミカのほうを見て言う
「加奈子先輩面白いだろw」
「・・・・・」
ミカは僕の方を一瞬困ったような目で見た。
「どうした?」
「うん・・今はちょっと・・後で教えるよ」
「?」
「おいアニ!2次会いくよな?」
悪友達が聞いてくる
答えようとした僕を制してミカが代わりに言う
「ごめんなさい私と彼はこの後予定が有るんで先に帰ります。」
「あ、ああ・・そっか・・残念だなぁ」
僕ならいざ知らず
ミカのような女の子にきっぱりこう言われては食い下がれない

飲み会はソコソコ盛り上がりで2次会へ
僕達はそこで帰ることになった。
加奈子先輩は2次会へ行くようでもう既にかなりのハイテンションだった。
「おう!アニ!またな!」
「あ、加奈子先輩おさきっすw」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰りの電車の中でミカは妙にだんまりだった。
「どうかした?」
「・・・・・・」
何か機嫌を損ねるような事があったのか?
僕は飲み会での事を急速に思い出そうとする
「アニって鈍感だよね・・」
ミカがあきれた様に言う
「え?」
「ど・ん・か・ん!」
「何だよ急に・・」
「加奈子先輩の事よ」
「加奈子先輩がどうかした?」
加奈子先輩は気のいい人だ別にミカが怒る様な事はしないと思うが・・
「加奈子先輩はあんなだけど気さくで良い人だぞ?」
「そうね、ソレは解るわ、凄く良い人ね・・不器用だけど・・」
「えw加奈子先輩アレで結構器用な人だぜ?見た目ガサツだけどなw」
「俺達も初めて会った時は男かと思ったけど加奈子先輩が描いた絵とか彫金類みたら凄い細かいぜwびびったわw」
「ちがう!そういう事じゃないの!」
ミカはイライラしたように言う
「加奈子先輩、アニの事多分好きだよ」
「へ?」
一瞬ミカの言ったことが理解できずに考えてしまった。
耳から入って脳が言葉を理解するのに5秒くらいかかった気がした。

「えええ、そりゃ無いよw確かに凄い面倒見はいいし、人間としては俺も好きだし多分先輩も気に入ってくれてるけどさwナイナイw」
「気がついて無いのは多分アニだけだよ」
ミカは冷たく言う
「さっき飲み会で凄く楽しそうにアニの側に来たのに、私がアニと腕組んでるの見た瞬間あの人凄い悲しそうな顔をしたよ?」
「お別れの時も、私の方一切見てなかったよ」
「・・・・・」
全く身に覚えがありません・・
ミカに指摘されるまで
僕は一度もそんな可能性を考えた事がありませんでした。
僕にとって加奈子先輩はあくまでも
世話好きの気の良い先輩の一人でしかなかったのです。
「だからアニは鈍感だって言ったのよ」
「・・本当に?」
まだ信じられません
「本当よ・・アニの事好きな人は私には解るの・・」
「加奈子先輩は偶々男の優しさを利用したりするような器用な人じゃなかったけど」
「世の中強引な女なんか沢山居るんだからもっと注意してよね!」
「・・・ごめん・・」
怒ったようにいうミカにすまないと謝ったが
(ソレを言うならお前も十分強引だろ・・)
と内心思わずには居られなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

玄関の扉を開けると奥のリビングから元気の良い足音が駆けて来る
「おかえり〜」
「ただいま」
「なにアンタまだおきてたの?」
ミカがツッケンドンに言う
「えーまだ10時だよ?」
ユキがむくれて言う
「子供はもう寝る時間でしょ」
ミカはトゲトゲしい物言いで言う
「ふーんだ!ミカ姉ちゃんを待ってたんじゃないよーだ!」
ユキは舌を出してミカに対抗する
つい半年前まではミカに怯えていたユキも最近は打ち解けた(?)のか
本当の姉妹のように喧嘩が耐えない・・
「お兄ちゃんアイスは?!」
「おう、コレコレスーパーカップでよかったよね?」
「うん!さすがお兄ちゃんw」
そういうとミカは僕の手からスーパーの袋をとると台所へ走っていく
「お兄ちゃん達の分冷凍庫入れとくよ〜」
「おう」
「もう!アニはあの子に甘すぎる!」
ミカはそう言いながら靴を脱ぐ

最初一緒に住み始めた頃は2人はソレはもう険悪だった。
ユキはミカを怖がるし
ミカはどういう態度でユキに接するべきか困っていた。
ある日ユキが僕のベットで一緒に寝ようと我侭を言いに来た際に
あっちで寝なさい!とミカが突っぱね
ユキが大泣き・・流石にミカもかわいそうだと思ったのか
その後はキツイ言葉ではあるがユキを少しずつ妹として
扱うようになり、ユキも慣れたのか最近は対等に口喧嘩らしい事が
出来るようになっていった。
それなら良いのだが事あるごとに僕をダシにして喧嘩をするようになる

例えば
ミカと部屋でくつろいでいると、ユキが宿題を教えてくれと邪魔をし
僕がユキを構いすぎると後でミカがヤキモチを焼く
ユキはユキでミカは僕には逆らえないと理解してからは
何かと僕を盾に使うようになってきた。
まあ、一緒に住み始めてまだ1ヶ月ほど喧嘩は多いが
後々2人の話を別々に聞くと「言い過ぎた」とかお互い言ってるので
特に深刻には考えてる必要は無いようだった。

マサミさんも2人を見て
「ユキはミカさんとの喧嘩でたくましくなってきた」と言っていた。
なんでもお兄ちゃんに甘える以外の事をミカから学んでいると言うのだ
同性の兄弟や姉妹というのはそういうものなのだろうか?
何はともあれ最初の頃に抱いた不安はどうやら解消されたようだった。

面白いのはアレだけ日ごろ大人っぽいミカが
ユキと喧嘩してるときだけまるで子供みたいで
実にくだらない事で小5の女の子と本気で喧嘩する・・
例えば
ユキがTVでジャニーズの男の子を「お兄ちゃんに似てる」と誉めると
「全然似てないよ、あんた趣味悪い」と言う
実にくだらない張り合い方をするので後で注意すると
「アニはユキの味方ばっかりする!」と驚くことに涙目でスネるのだ
「ユキは兄貴として慕ってるだけだよ」と慰めるが安心できないらしい
「アニに近寄る女は皆敵!」
小5の女の子にソレは無いだろと思うのだがコレばっかりは本能らしい

まあ、ユキにはちゃんとクラスに好きな男の子が居るそうで
時々僕に「ミカ姉ちゃんには内緒だよっ」て色々と教えてくれる
ソレはそれで兄として寂しいのですが・・・兄として・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2人で交互に風呂に入り
僕が風呂上りのアイスを食べ終わる頃には12時近くになっていた。
ユキは既に自分の部屋で寝ており
僕はミカと2人で一緒に洗面台で歯を磨き
今は僕とミカの名前シールが貼られた部屋の扉を開ける
(因みにミカの名前シールの頭にはユキが悪戯して貼った鬼のシールをミカがムキになって汚く剥いだ跡がある)
狭い部屋にベット二つは入らないので
ミカは一応床に布団で寝てることになっているが、当然ソレは建前である
ユキが一緒に寝に来る時以外は毎日一緒のベットで寝ているが

そのユキもココ数週間一緒に寝たいと言わなくなってきた。
ミカに遠慮か?と最初は僕達の事を感ずいたのかと心配したが
ミカ曰く
「小5になれば恥ずかしさも出てきて当たり前・・女のなったのよ」
と言うのでそうかもしれない・・
実際、ユキは父やマサミさん達とも最近は一緒に寝ていないらしい
「ユキもそういう歳になったんだなぁ・・」
と父が寂しそうに言っていた。

そういう父とミカの仲は相変わらず深刻だ
ミカが一切父とコンタクトしないので
取り付く島が無い・・ソレと比べれば
ユキとミカは喧嘩するだけ仲が良いとすらいえる
「仕方が無い・・都合よく許して貰おうなんてむしが良すぎるからな・・」
「ユキと仲良くしてくれるだけ良かったと思うべきだな」
父は諦めたように言っていた。

ミカとマサミさんは微妙だった。
料理洗濯家事全般を得意とするミカと一生懸命が心情のマサミさん
始めはぶつかるかと思ったが
ミカ曰く「女が2人台所に立つのは一緒に住む男が大成しないんだって」
とお婆ちゃんの受け売りらしいが
「私は居候だし、勉強もあるから素直にあの人に譲るわ」という事らしい
それでも休みの日はちょっとした物を作ってくれる
台所に立つミカに感心したようにユキが言う
「ミカお姉ちゃんって性格悪いけど料理は得意だよねぇw」
「あんたの分のエビピラフ作ってあげないよ?」
振り返る事無く勢い良く包丁で材料を刻みつつミカが言う
「あ〜うそうそ!ごめんなさい!」
(ちょーこわい・・)僕に向かってミカに聞こえない様にユキが言う
「聞こえてるわよ!」
「えっうそ・・」
(ユキ気をつけろミカは地獄耳だぞ)ミカに聞こえないようにさらに小さい声で言う
「えっ地獄耳って何?」
素で意味が解らなかったらしく普通の声でユキが復唱する
「あっバカ!」
「・・・・・・・・」ミカがその会話には一切入ってこないで
料理を続ける後姿が又余計に怖かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼下がり別館の屋上のベンチに座る
ココは食堂のある本館から離れているので
弁当持参の学生でもないと昼時にココを利用する人間は居ない
ミカと一緒に暮らすようなってから僕の昼飯は
ミカの手作り弁当になった。
それ自体は別に恥ずかしくは無いのだけど
飲み会での話しはいつの間にか伝わっていて

ミカや僕の事を知る人の間ではちょっとした注目を浴びる事になっていた。
居心地の悪さを感じた僕達はココで食事をする事にしたのだ。
「お待たせ!」
ミカが大きなバスケットを抱えて息を切らせて階段を上ってきた。
「おう」
2人でミカの作ってきた弁当を食べる

「朝からずっと質問攻めにあっちゃったw」
ミカが嬉しそうに言う
「なにを?」
「私とアニの事色々聞かれたw」
「・・あんまりペラペラ話すなよ・・俺達の事知ってる人は多分居ないと思うけど、何処から知れるか解らないんだぜ?」
「うん、大丈夫・・大事な所はある程度嘘も交えてぼかしてるから」
「・・・ミカかなり男に人気あるらしいね?」

「ww気になる?」
ミカが又嬉しそうに言う
「そりゃね・・」
「今日だけで10人くらいメルアド聞かれたかなw」
「で、教えたの?」
「まさかw」
ミカがクスクス笑いながら言う
「はっきり言ったよw私が彼氏にぞっこんだから教えませんって」
「女の子友達にも男の子には教えないでって言ってあるし、大丈夫だと思うよ」
「それに、飲み会で一緒だった子達がそれとなくガードしてくれるから
大丈夫だよw」

そういうとミカがバスケットを横に退けて側に詰めてくる
片手にオニギリを持ったままの僕に息が掛かるくらいに顔を近づけてくる
「安心した?」
「・・・べつに・・疑ったわけじゃないし」
ドギマギする僕をミカはクスクス笑う
「うそだぁw命いっぱい心配そうな顔してたくせにw」

なんだか見透かされすぎて面白くない僕は反対を向いて
無言でおにぎりを頬張る
ミカはソレも面白いのか笑うと
僕の手から食べかけのオニギリを取り上げる
「おい、俺のだぞ!」
「はいw」
ミカはそう言うとバスケットから新しいオニギリを取って手渡してきた。
「アニが食べると思って大きく握り過ぎちゃったの」
「残りは私が食べるからアニはコッチ食べて」

「それっぽっちで足りるのか?」
「うんw前は結構食べてたんだけどねwコッチにきて1キロくらい痩せたかもw」
「おい・・大丈夫か?ダイエットするような体型じゃないだろ」
「どっか悪いんじゃないだろうな?」
ミカが食事制限なんかしてる所は見た事が無いので心配になります。
「大丈夫だよw」
ミカはソレが又嬉しいのか笑う
「なんていうかね・・最近お腹あんまりすかなくなったのw」
「ギン爺ちゃんの家に居た時は結構食べてたんだよw」
「何度か体重増えそうになった事もあったんだよ?」
「その度にダイエットしたり大変だったんだよ」
「でも、最近はなんだか満たされてて前みたいな食欲がなくなったの」

「じゃあ今はちゃんと食べてるんだろうな?」
「うんw体重が増えもしない減りもしないようにしてるから大丈夫だよ」
「多分・・寂しかったんだと思う・・」
ミカがしみじみと言う
「私寂しいと食べに走るみたいwだから今はコレで正常だよ」
「ならいいけど・・」

ニコニコ笑うミカの頬っぺたにご飯粒を見つけたので
思わずとって食べてしまった。
「ふふふw」
ソレが嬉しかったのか喜んでいる
「何喜んでんだよw」
「べつにぃw」
僕はお茶を取ると一口飲む
ペットボトルを置いてもう一度ミカのほうを見たら
又ミカの頬っぺたにご飯粒が付いてた。
しかも3つ・・・

「おい・・」
「なにw?」
ミカは必死に笑いを堪えている
「バカップルみたいだからそういうの辞めようぜ」
「えー」
ミカはぶつぶつ言いながら自分でご飯粒を取って食べる
「又して欲しかったのに・・・」

「じゃあコレ!はい、アーンw」
そういうとオカズの卵焼きをお箸で摘んで口元に持ってくる
「ベタベタの直球過ぎるだろ・・ソレ・・」
「アーンw」
しかしミカは辞めない自分の口までアーンとあけてしつこく粘る
「一回だけだぞ・・」
人が見てたら絶対やら無いところだが幸い誰もいないので
言われるまま口に入れる
「美味しい?w」
ミカが嬉しそうに聞いてくる
「美味いよ・・」
やってみて解る事がある・・・想像以上に恥ずかしい

「はい、じゃあ次私の版ね」
ミカがこの上極め付けにベタなことを言い出す。
「アーン」そういいながら目をつぶって口をあける
「・・・・・・・・」
僕は黙ってオニギリの中の梅干を一個抜きとって口に入れてやった。
「!!!」
「うう!すっぱい!!」
「www」
「もー!酷いよ!」
「すまんwついなw」
「ダメ、許しません!!」
「ごめんってw」
「じゃあ1チューね」
「1チュー?」
そういうとミカは目をつぶって唇を突き出してくる

「なんかさっきからバカップル全開じゃないか?」
「チュー!!」
「はいはい・・」
念のため周りを見回して人気がない事を確認するとキスをする
ミカの唇に僕のが触れた瞬間ミカが僕の首に腕を回して離れない
そのままミカは舌を入れてくる
「ん・・んぐ・・」
タップリ30秒くらいネットリ舌を絡めてのキス
さっきの梅干のスッパさがミカの舌に残っていて
舌が絡まるたびに唾液がじゅわっと出てくる・・・
「ぷはっ!!」

「この梅干すっぱいな!」
「もぉ〜第一声がそれ?w」
ミカがあきれて言う
「梅干でムードもへったくれも無いだろ・・」
「そう?w」
「でも・・なんか何時もよりジューシーだったねw」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日の予定が終わった僕とミカは
駅前のレンタルショップと本屋に寄ったあと電車に乗り
自宅のある駅でおりる

「なんの本買ったの?」
2人で商店街を抜けながら話す。
「うん、栄養士の資格とかの本」
「やっぱり将来はレストランとか?」
「細かい事はまだなんだけどね・・出せたら良いなって思ってる」
「もうやりたい事が決まってるんだな・・」
頼もしい気もするが、兄としてはなんだか置いてけぼりを食ってる気がする

「アニも直ぐに見つかるよw」
「そうかなぁ・・」
僕は、サッカーも陸上も別にコレと言って人より秀でたものはなく
勉強もソコソコです。
趣味も体を動かす事以外特に無いし
将来やりたい事なんて何も思い浮かびません
「・・・・・・・」
そんなことを考えていると自分がとても無価値な人間に思えてきます。

すっかり考え込んでしまった僕の気持ちを察したのか
ミカが顔を覗き込んできます。
「・・・ね」
何か思いついたのかミカが僕の手を取ります。
「ん?」
「いつものところいこ・・」
ミカは頬っぺたをうっすらを赤くして
商店街を行きかう人に聞こえないくらいの小さい声で言います。

ミカとしてる時、僕は初めてミカとこうなった時の事を思い出していました。

中学2年の夏休みその日は部活が休みで、リサちゃんは家族で海外旅行
僕は遅めの朝食の後ソファーに寝そべってTVを見ていました。
ミカは掃除や洗濯を母から頼まれていたので朝からテキパキと家事をこなしています。

「お兄ちゃんお昼何食べる?」
ミカが台所からエプロンで手を拭きながらやってきます。
「うーんミカが作るなら何でもいいよ」
僕はソファーに横になってクッションに顔を埋めながら言います。
「じゃあナポリタンでいい?」
ミカが嬉しそうに側にきて足側のソファにそっと座ります。
「ナポリタンいいね」
「決まりねw」
ミカはエプロンを取るとソファの背もたれにかけてそのまま僕の上にかぶさって来ます。
「うお」
いきなりの事でビックリします。
「えへっw」
ミカを見ると頬を薄く染めてニコニコしています。
「どうしたん?」
「べつにー♪」
僕は気を取り直してミカを上に乗せたままTVに視線を移します。
僕の上にカエルの子供のように被さったまま一緒にTVを見ているようです。
ミカは軽いので別段重くはありません
たまにゴソゴソしていますがクーラーの効いた部屋で
結局そのままの体制でしばらくTVを見続けていました。

心地よい時間、2人とも喋らずにかといって離れずゆったりと過ごしていました。
そんな風になってどのくらい時間がたったのか・・・
気持ちよくなったのか、いつの間にか僕は眠っていました。
真っ暗な中で尿意のようなムズムズを感じトイレに行かないとと言うような気持ちで目が覚めます。
少しずつ覚醒する意識が目の前に映る光景を認識するまでタップリ数秒ありました。
「・・・・・・・・・・」
「・・・ミカなにしてるの?」寝ぼけ半分でした。
「ん・・アニ・・おきちゃった☆?」ミカが苦しそうに顔を歪めています。
同時に両手で握られるような強い刺激が下半身に走ります。
「ミカ!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「どうしたの?w」
頭の中のミカより数段大人になった顔が僕を見つめます。
丁度あの時のような体勢で繋がったまま僕を覗き込んでくる
「ん、初めての時のこと思い出してた・・」
「私としてるときに昔の私の事思い出すなんて・・」そう言いながら腰をグラインドさせて抗議する
「昔の自分に嫉妬するなよw」
「昔の自分でもなんか悔しい・・ん・・」
「今の貴方は私だけのものなんだもん・・」
ゆっくり確かめるように動かしながら話します。

「私ね、焦ってるんだ・・・」
「なぜ?」
一歩もニ歩も先を行くミカ・・焦るのは僕の方なのに・・
「早く一人前になって少しでもアニとの事、認めて貰えるようになりたいの・・」
「今のままじゃ私はまだ子供だし、人は真剣に聞いてくれないと思うから」
「俺だって・・何もやりたい事無いしお前の方が全然確りしてるよ・・」

自信ない僕の言葉にミカはニコッと笑います。
「アニは自分で解ってないだけで皆アニの事信頼してるんだよ?」
「銀爺ちゃんもお母さんも・・他の皆もアニの事一番信頼してる」
「そうかな・・」
全く実感がありません
「そうだよ」
「皆口では言わないけどアニのお陰で救われてるんだと思う」
「・・・・・」
「だから元気出して・・大丈夫、アニなら必要になった時ちゃんと見つかるよ自分のしたいことが」
「私はその時にアニに付いていけるように焦ってるんだから・・」
「私の方がアニより絶対惚れてるんだからね、自信持ちなさいよw」
そう言うとミカはゆっくり糖蜜色の瞳で視線を絡めるようにしながらキスしてきました。
僕にとってソレは優しく包むように元気付けられる女神のキスでした。



僕と妹の事はコレで一応終わりになります。


その後・・僕は大学を卒業して食品関係の仕入れなどを行う企業のサラリーマンに
ミカは調理師の免許をとり銀爺ちゃんの紹介で学校の給食を作る仕事をしていました。
しかし数年後に僕の勤める企業が倒産、ミカの方も大規模給食センターの創設で
学校から給食調理場が無くなることになりました。
せっかくだという事なので銀爺ちゃんや母の支援もありミカは小さい定食屋さんを始める事になり
僕はサラリーマン時代の経験をいかしてミカのお店で使う食材の確保と帳簿の管理・接客などを手伝っています。
ミカのお店は安くて美味しいと評判のようで、何よりお客にサラリーマンのおじさんや
大学生の男の子高校生の男子と男性の常連が多くて多分ミカ自身の人気も有るのだと思います。
僕としてはその状況に不安な面もあるのですが相変わらずミカとは至極上手く行っています。
最近ミカは子供を欲しがっていて如何するべきか2人で真剣に悩んでいます。
僕としては、覚悟を決めているのでミカの望むようにしてあげたいのですが
料理担当のミカが働けない状態になる事や銀爺ちゃんへどうやって打ち明けるかなど
問題は山積みです。

でも、2人で必ず乗り越えて行きたいと思います。

出典:萌えちゃんねる
リンク:http://us.moech.net/cgi-bin/moe/patio.cgi?mode=past&no=1046&order=asc
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