あー警備さんボッキしてるぅ (その他) 24972回

2005/03/07 14:12┃登録者:えっちな名無しさん┃作者: 高崎 ◆2Nikchpy9M
本性を覆い隠す真面目という名の鋼の鎧
それは誘惑と理性の闘いでありました

業務遂行か、あるいは‥

「あー警備さんボッキしてるぅ」
あどけない笑顔から放たれたその言葉が、鋼の鎧を打ち砕いたのです

今日、ここ『にちゃんねる』にスレッドを立てます
あるいは暴走する自分を止めて欲しいと願う気持ちからなのか
あるいはこの幸せな境遇を人に知らしめたいだけなのか
その真意は私の心の深層に



2004年11月某日、近所の中学校のガラスが割られるという事件が発生しました。 
体育館や多目的教室など計役30枚の被害。 
地方紙の隅に掲載されたこの事件が、後の私にこれほどの影響を与える事になろうとは、この時知る由もありませんでした。

「高崎さん、今日ちょっと寄られます?」 
「はい?」 
「例の新しい現場の話が具現化しつつあるので、それで」 
「ええ、構いませんが」 
「お手数です、では後ほど」 
「はい」

バス停に向かう途中、私が電話で指令室に下番(かばん)報告を入れた際に交わされた内容です。 
それまで常駐していた建築現場の引き継ぎもほぼ終え、信頼出来る新任のリーダーが立った矢先の事でした。 
この仕事に就いて十余年。 
四十路半ばという身であります。 
過去には隊長と呼ばれ、内勤、つまり事務仕事を担うような立場に身を置いた時期もありましたが、デスクワークがどうも性に合わず、志願して現場に復帰したのでした。

「おおよそは聞いています?」 
「守衛だと、そのくらいは」 
「はい。それで、お客さんが公のそれなんで、どうかと思っていたんですが‥」 
「取れたんですね?」 
「ええ、大きい仕事ですよ」 
「多人数って事ですか?」 
「いいえ、多額という事です」

聞けば中学校の警備だというのです。 
『公のそれ』と説明された私立中学は、先の損壊事件による警戒を学校の職員の交代により賄って来たようで、しかしながらいつまでもその体制を続けるわけにもいかず、我が社に依頼するに至ったようです。 
私は今まで様々な土木や建築の現場を経験してきましたが、このような守衛業務は初めてでした。

「一号ですか?」 
「ええ、高崎さんは適任者だと思うんです」 
「一号は‥あの‥、そもそも内勤を辞退させていただいたのは何より外の空気を‥」 
「解ります、解るんですけどね」 
「‥‥」 
「お願い出来るのは高崎さんしかいないんです」 

一号とは正しく一号警備と言い、我々はこのような守衛業務を二号である交通誘導などの雑踏警備と区別してそう呼んでいました。 
私には躊躇がありました。 
仕事内容のおおよその見当がつき、それが自分の望んでいるものではなかったからです。


【一号警備】事務所、住宅、遊園地等における盗難等の発生を警戒し防止する業務 
【二号警備】人や車両の雑踏する場所等における負傷等の事故の発生を警戒し防止する業務 
【三号警備】運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し防止する業務 
【四号警備】人の身体に対する危害の発生をその身辺において警戒し防止する業務


「‥‥」 
「ひとつには現場が『学校』という場であるという事です」 
「‥‥」 
「そしてもうひとつは年頃の女の子が居る環境という事です」 
「‥年頃‥と言っても、中学生ですよね?」 
「ええ、でも先日の内田のクレームの件もありますしね。最近は中学生といっても大人びてますから。それに大人びていない所に興味を抱く歪曲した大人も増えている世の中ですから、真面目な話ですよ、これ」 
「はぁ‥」

内田警備士の一件は良く知っていました。 
何故ならその後任として私が現場を引き継ぐ事になったからです。 
ある住宅展示場の駐車場警備の話です。 
内田警備士は二十代の若い隊員で、その風貌や言動はいかにも今風の軟派なものでした。 
この内田警備士、よりによって警備中にアルバイトのコンパニオンの女の子を口説いていたのです。 
それも一人二人では飽き足らず、何人も。

やがてこの事実が客の耳に届き、いやしくも警備員たる立場の者がけしからんと憤慨、あわや契約破棄という所の首の皮を私がつなぎ止めるというものでした。 
果たして私は先方に気に入られ、事無きを得たわけですが、そんな経緯もあって私はいつの間に『真面目な』とか『頼りになる』とか、そんな類いの言葉で形容される事が多くなったのです。

しかし、そんな私の内心は決してそのような立派なものではありませんでした。 
それは人様には知られたくない破廉恥極まりないものなのです。 
実はその住宅展示場の警備においても、私にとって激しく性的興奮が沸き上がるような毎日でした。 
丈の短いスカートを履いた若い女の子たちが、一日に何度も私の目前を往来するのです。 
張りのある肌、しなやかな脚、爛漫な笑顔で私に挨拶し、ほのかに香る女の子のいい匂いを残して行くのです。

聞けばこの女の子たち、既に何人かは内田警備士と関係を持ったとの噂。 
羨ましいと嫉妬する気持ち以上に、今私の目の前にいるこの娘が内田警備士と関係したその人なのかもしれないと憶測し、 
(ああ、このふくよかな胸を内田警備士に揉みしだかれ、この尻に男の下半身を幾度も打ち当てられては甘い声を発し肢体をよじらせていたのだ) 
そんな想像をして、私は歳甲斐もなく陰茎を固くさせていたのです。 
私は自宅に帰った後も、彼女らの姿を反芻し、自らの手によって射精していました。

『年頃‥と言っても、中学生ですよね?』 
そう応えたのには理由がありました。 
私の中には世に言う”ロリコン”の芽があったからです。 
勿論、前述のコンパニオンの女の子たちにも大いに魅力を感じたわけですが、何と言いますか、少女にも惹かれる処が多々あるのです。 
この歳にもなり、結婚どころかこれと言った恋愛経験もない私は、殊それに関しては自信もなく、いくらそんなコンパニオンに恋心を抱いたとしても、それが成就する事などないことを良く知っていました。

しかし少女なら‥そう少女なら 
少女はその無垢な心で私を受け入れてくれそうな、そんな気がしてならないのです。 
汚れなきその身体を抱きしめ、キスをして、そしてこの手で、私のこの手で少女の身体を愛撫したい‥そんな願いが心中で育まれてきていたのです。 
私はそれを悟られまいと『中学生ですよね?』などと、いかにも自分には及びもしない発想のように反応したのでした。


私立○○女子中等学校 警備業務 概要 

1.業務内容(主たるものについての記述) 
 a.生徒の安全、および校舎その他施設の正状、確保 
 b.不審者の発見と報告 
 c.その他、異状箇所の報告

2.配置 
 a.警備員の配置は常時二名とし、休憩仮眠時間に於いても必ず一名は稼動するものとする 
 b.警備は24時間体制とし、二交代にてこれに対応する 
  日勤8:00〜17:00、夜勤17:00〜翌8:00(仮眠6時間含む) 
 c.本拠は校門脇の守衛室に置き警備にあたるが夜間に限り休憩用途で用務員室を開放する

3.機械警備(S■COM)との連携 

   -- 略 --

7.留意事項 
 a.己が警備のプロであるという常なる自覚 
 b.お客様の尊い財産を守る任務を担っている重要性 
 c.××警備の隊員であると同時に一個人として良識と誇りある行動の必要 

以上 


果たして私はこの仕事をふたつ返事で受けることになりました。 
生来、人から頼まれると断れない性分であったこともその理由の一つでしたが、私は何よりも心の奥底に揺れ動く内田警備士の偉業?を押し殺すことは出来ず、その破廉恥な本性に導かれ結論を出したのかもしれません。 
女子中学校 
少女への想い、少女への期待‥ 

「高崎さん、制帽似合いますね」 
「おい、からかわないでくれよ、宮本君」

私のパートナーには新人の宮本警備士が抜擢されました。 
宮本警備士も内田警備士同様若い隊員でしたが、その容姿はお世辞にも良いとは言えず、そういう意味では安心してこの現場に置いておける人材でした。 
一号は普段の雑踏警備で使用するヘルメットと違い、制帽をかぶります。 
靴も安全靴から革靴に履き替え、やはり仕事内容も考慮されたのか新品の制服が支給されました。 

「装備品点検!」 
「制帽、ヨシ!」 
「モール、警笛、ヨシ!」

いつになく気合いが入ります。 
心機一転、私はこれから始まる未知の業務に『純粋に』そして『不純に』胸を踊らせていたのです。 

「お世話になります、私が夜間警備を担当させていただきます、夜間責任者、高崎と申します」 
「同じく夜間警備を担当、宮本です、よろしくお願いします」

我々は職員室の担当職員に挨拶を済ませ、守衛室に向かいました。 
移動中、やはり私の目線は生徒にばかり行ってしまいます。 
それを悟られぬよう宮本警備士に語りかけます。 

「さすがに私立だね、校庭にチャペルだよ、宮本君」 
「そんなことより高崎さん、女の子みんな可愛いっすねぇ」 
「‥‥!!」 

内心ドキリとしました。

こういう感情を隠そうとすればするほど、過敏になってしまうようです。 
しかしながら、一方ではやはりそうなのか、という納得もありました。 
健康男子であれば、このくらいの歳の女の子は十分に性の対象になり得る、それは宮本警備士も然りで私だけが特別なのではないという納得です。 
身体のラインは早い子で既に完成に近く『女』であり、私にとっては魅力以外の何でもない処でした。 
またそうでない子も、その未完成で控え目な身体の線を体操着のわずかな膨らみで測り知ることが出来る様は、これもまた私にとっては眩い光景なのでした。 
そして納得の反面、宮本警備士の言葉はあるいは、そうは言っても中学生など所詮は子供であるという意味を含んだ私などと到底一致しない考えから放たれたものなのかもしれないという思いもありました。

守衛室は校門の脇に建てられていたというより『設置』されていました。 
建築現場でよく見る、いわゆるプレハブです。 
わずか三畳くらいの広さでしたが此所が私の城、住めば都となるでしょう。 

「おつかれ様です、高崎さん、宮本君」 
「お疲れさま、田山君、交代です」 
「では、引き継ぎ事項を」 
「はい、お願いします」


引き継ぎ事項 

・警備開始10分前には上番(じょうばん)、引き継ぎを終了し交代する 
・客来の際は来客本人に『来客記録簿』に記入してもらい入退校時刻を記録する 
・車の来客も上記同様、車は指定駐車場を案内し、車番と色、判る範囲で車種名を記録 
・その他、気付いた事は『警備録』に記入 
 来客記録簿、巡回記録簿は学校側に提出、警備録は内々の連絡事項に用いる、と区別 
・日勤巡回 
(略)

・夜勤巡回は二時間に少なくとも一回、必要であれば回数を増やす 
・夜勤巡回中は自分の存在を知らしめるよう心掛ける(懐中電灯の使用、足音を鳴らす等) 
・夜勤巡回中は無線を携帯する 
・休憩者も無線を携帯、充電中も電源は必ず入れておく 
・夜勤巡回は守衛室を起点とするが、そのコースを単一化しない 
・損壊に使用し得る道具や物を発見した際はそれを排除、翌朝報告の義務 

云々


日勤担当の田山警備士の要点を押さえた説明に感心しつつ引き継ぎは終了しました。 
田山警備士も内勤に勧誘されるほど経験を持ち、また機転の効く人物でした。 
しかし劇団に所属し役者になるという夢を持つ彼は、あくまでもこの警備という仕事に束縛されたくないようで、勤務は専ら日勤、休む時は休む‥など、ハッキリした男でした。 

「なるほど、守衛といってもいろいろやる事はあるんだね」 
「ええ、でもまあ暇ですよ」 
「まあ暇と言ってしまっては、良くないのだがね」 
「そうなんですけど‥相変わらずですね、高崎さんは‥‥」

私が頭の固い堅物であると皮肉でも言おうとしたのでしょう。 
その時でした。 

「さよおなら〜あっ♪」 

ひと際甲高い声に振り返ると、そこには女子生徒が三人、腕を組み、もつれながらこちらに会釈しているところでした。 

「はい、さようなら」 

そう応えたのは田山警備士です。

やがて小走りになった彼女らの腕がほどけ、その一人がまたこちらに振り向いて、そして手を振ったのです。 
そして田山警備士もまた、手を振って応えているではありませんか。 
何たる羨ましい光景! 

「た、田山君、一日でなつかれちゃったのかな?」 
「ええ、あの子たち、昼休みにこの守衛室に遊びに来てたんですよ」 
「遊びに‥」 
「高崎さん、無邪気でいいですよ、中学生は」

何たる羨ましい境遇! 
私は自分が日勤ではないことが悔やまれてなりませんでした。 
『守衛室に遊びに』とは‥ 
窓の内と外で、言葉をひとつふたつ交わしただけなのでしょうか? 
それとも田山警備士は守衛室の外へ出て、女の子に近づき、話をしたのでしょうか? 
まさか時折、女の子の頭を撫でたり、あるいは女の子が田山警備士の腕を掴んだり‥

考えれば、考えるほど頭の中が混乱し、それは紛れもなく田山警備士への嫉妬でありました。 
『無邪気でいいですよ』その言葉は本心なのか、私と同様、彼女たちを性の対象としている自分の内心を覆うためのカモフラージュなのでしょうか‥ 

「いいっすね、ジェーシー‥」 

こうして宮本警備士の間抜けな声で、私たちの夜間警備は幕を開けたのです。

「ふわああぁぁ‥暇っすね、高崎さん」 
「暇と言っては良くない」 
「あ、質問なんすけど」 
「なんだい?」 
「この『夜勤巡回は自分の存在を知らしめるよう心掛ける』って違くないすか?」 
「なぜ?」 
「だって、泥棒にバレちゃったら捕まえられないでしょ?」 
「捕まえなくても良いんだよ」 
「え?だって逃げちゃいますよ?そしたら」 
「我々の業務は不審者を捕らえる事ではないからね」 
「え?でも逮捕出来るんですよね?警備員って」 
「出来るとも、ただ自身の安全が最優先だ」


【逮捕の意義】 
 逮捕とは、人の身体を直接に束縛して自由を拘束することをいう。 
 身体を束縛する方法は手錠や縄を使用するなどがあるが必ずしもこのような方法によらなくとも逮捕者が被逮捕者の身体に寄り添って看視し何時でもその身体を捕捉し得る態勢をとり、その逃走を防止する方法により自由を拘束する場合も逮捕ということが出来る。 
 逮捕の種類には予め令状を準備して行なう「通常逮捕」と、一定の犯罪を犯したと疑うに足りる充分な理由のある者を逮捕後に令状を請求することを条件に逮捕する「緊急逮捕」、そして「現行犯逮捕」の三種類がある。 
 この逮捕の中で「通常逮捕」と「緊急逮捕」は、検察官、検察事務官、司法警察職員でなければ行なえないが、「現行犯逮捕」は刑事訴訟法第213条に「現行犯人は、何人でも逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」と定められていることにより他の二つとは異なる。


ここで宮本警備士の言葉に間違いがあることが判ります。 
『でも逮捕出来るんですよね?警備員って』 
逮捕は現行犯であれば『なにびと(なんぴと)』でも行使できるのです。 
つまり私が、後に起こしてしまった私の過ちを誰かに目撃されていたら、何人かにその場で逮捕されていても、それはそういう道理なのです。

「え?じゃあじゃあこれは?『夜勤巡回は守衛室を起点とするが、そのコースを単一化しない』」 
「宮本君は、何故だと思う?」 
「飽きるからっすか?」 
「簡単に言えば、そういう事だが、あのね‥」 

初日にして電気ポットの存在を何処から聞き入れたのか、上番するや否やその湯でカップ麺を作り、それをすすりながら私に質問する宮本警備士の態度に、些か行く末が不安になってきたのでした。

宮本警備士との話し合いの末、交代ローテーションは以下のようになりました。 

17 高崎○ 宮本○ 
18 高崎○ 宮本○ 
19 高崎● 宮本○ 
20 高崎● 宮本○ 
21 高崎○ 宮本● 
22 高崎● 宮本○ 
23 高崎○ 宮本● 


91 高崎 ◆HotPink0gc 05/02/02 19:00:50 ID:L3sWBtli0
00 高崎● 宮本○ 
01 高崎○ 宮本● 
02 高崎○ 宮本● 
03 高崎○ 宮本● 
04 高崎○ 宮本● 
05 高崎● 宮本○ 
06 高崎● 宮本○ 
07 高崎○ 宮本○ 

○は守衛室駐在、または巡回 
●は休憩


宮本警備士が先にこのようなローテーションを懇願し、私が承諾することとなったのです。 
聞けば勤務中に睡眠をとっておけば『昼間遊べる』という理由からでした。 
これでは警備をしに来ているのか、睡眠を取りに来ているのか、全く‥ 
しかし若い人を諭そうとしても説教がましくなりそうで、それはやめました。 
そういう私も上番早々に二時間の休憩、下番間際にも二時間の休憩、これで仕事をした気になれるのだろうかと思う一方、内心、楽できるという怠け心も湧いて来てしまっていたのは事実でしたから。 
ちなみに休日は週一日〜二日程度、これは指令室の都合で一方的に決まるもので全く不規則とのことです。

警備開始から一週間ほどが経ち、私も日勤の田山警備士ほどではないにしろ生徒たちとの接点を持つことができ始めました。 
登下校の挨拶は勿論、守衛室の前にタムロしてなかなか帰ろうとしない生徒に下校を促したりするのです。 

「はいはい、みんな家の人が心配するから、そろそろお帰りなさいよ」 
「はぁ〜い」 

先生とは違い、絶対に怒らない警備さん‥そんな印象なのでしょうか? 
彼女達はとても素直にこうして私の言う事を聞いてくれます。 
また例え言う事を聞いてくれなくても私はそれを咎めません。 
そういう曖昧な存在が彼女達の抵抗感を取り除いてくれていたのかもしれません。

「さよなら」 
「さよならー」 
「寄り道しないようにね」 
「はあぁい」 

そんな時さりげなく彼女たちの頭や肩をポンと触ったりするのです。 
(な、なんという幸せ!) 
私はこの警備という仕事が、これほどまでに楽しいと思えた時は、過去を振り返っても思い当たりません。 
クラクションと罵声を浴び続けた片側交互通行。 
凍え死ぬほどの辛い思いをした真冬の夜の高速道路。 
通行止めの看板の横でする事もなく、ただひたすら時計を見るだけで過ごした一日。 
嗚呼、私は今ついに、此所へ辿り着いたのです。

この現場に対する思いは宮本警備士も同じだったのかもしれません。 
私に負けじと生徒とのスキンシップを試みる宮本警備士は、鼻の下が伸び放しでいかにもだらしなく、あるいは私もあのような顔になってしまっているのかもしれないという嫌悪すら覚えます。 
その姿は私にとってあまり気分の良いものではありませんでしたが、私は彼が生徒達の間でひそかに『フグポン』と呼ばれていることを知っていたので、そんな彼の行為にさほどの嫉妬はなく、むしろ『フグポン』の由来におおよその察しがつくゆえ、優越感すら感じていました。

そんな楽しい一時が過ぎ、職員方々、そして最後に用務員が帰宅すると、学校はいよいよ姿を変えます。 
巡回の時間は私にとって憂鬱な時間でした。 
夜の校舎‥いつぞやに聞かされた怪談がよみがえるのです。 
誰も居ない闇の学校、それはそれは気味の悪いものでした。 
まず校舎の外周を調べ侵入の形跡が無いかを見て歩きます。 
そして体育館に通じる渡り廊下の扉の鍵を開け、スリッパに履き替え、一度施錠し直して校内に入るのです。 
この自分を閉じ込める行為に他ならない『施錠』が私を何とも言えない不安にさせたのでした。 
廊下を歩き、特別教室(理科室や音楽室)など施錠された教室以外の教室とトイレの巡回、そして時折窓から眼下の校庭などの異状の有無を確認します。

そして再び校舎外に出ると、体育館、プール、チャペル、職員駐車場、給食センター、テニスコート諸々の順で廻り、守衛室に戻るのです。 
ただしこの順番は前述の通り単一化しない指示により決まっていません。 
丁寧に巡回すると、およそ30分〜40分くらいはかかるのですが、フグポン警備士などは用務員室でうかがっていると15分足らずで戻っているようです。 
「マジこえぇよ」が口癖の彼は相当に臆病のようで、彼にとってもまた巡回は憂鬱な時間だったのでしょう。

毎日校門の脇に居ると、さすがに生徒の顔も段々と記憶され、その数は日に日に増えてきているのですが、それは可愛いとかそうでないとかに関係なく、私にとって覚えやすい顔とそうでない顔があるということのようでした。 
そうとは言いながらも、やはり気になるのは可愛い子です。 
どうしても若い子たちですから、皆が皆、可愛く見えてしまうのですが、その中でも私にとって群を抜いて可愛いと思える子が一人いました。 
それは忘れもしない、警備開始から三日目の出来事です。

「警備さーん」 
「はい?何でしょう」 
「これ落とし物かと思う」 
「それでしたら職員室‥いや‥、‥私が預かりましょう」 
「昇降口のところに落ちてたから」 

その女の子は色白で小柄、目がクリッとしてまつ毛が長く、頬はほんのり赤らんでいて『お人形さんみたい』などと形容すると、これはまたオヤジ扱いされそうですが正にそんな感じでした。 
そして舌足らずで、ちょっとおかしな日本語が一層可愛さを増しているようです。 
彼女のそのつぶらな瞳に見守られ、私は段ボールの切れ端にマジックで『落とし物です』と書くと、彼女が届けてくれた小さな巾着とともに守衛室の窓の脇にそれを置きました。

「これでヨシっと!持ち主さん見つかるといいね」 
「はい」 

それからまもなく持ち主が現われ、落とし物は無事受け渡されたのですが、何しろそれは昼間の出来事で、またしても私は田山警備士に美味しいところを持って行かれた形になったのでした。 
しかしながらこの件で私はその女の子と顔見知り(あいにくフグポン警備士もそうなのですが)になったのは事実で、私の中には、どうやら恋心が生まれてしまったようです。 
毎朝、毎夕、少しはにかんで私に挨拶をしてくれる彼女はまるで天使のようでした。 
学年カラーから察するに一年生だという事は分かるのですが、それ以外の事は何も分からず、それでも私が彼女の事を想う時間は日に日に増していったのです。

そんなある日のこと、彼女の友人が彼女を呼んだことで、彼女の名前が『カホ』だということが判りました。 
(カホちゃんか‥なんて可愛らしい名前なんだろう) 
そしてまもなく今度は先生が校舎の中から帰宅しようとするカホちゃんを呼び止めたことがあり、ついに私の中の空欄が埋まることとなりました。 

『マミヤカホ』 なんて可愛らしい名前でしょう!? 

『マミヤカホ』 なんてドキドキする響きでしょう!?

私は携帯のアドレスに『まみやかほ』と入力し、メモ欄に『未来のお嫁さん』などと登録してみました。 
携帯を閉じ、にわかに溢れ出る満足感。 
バカバカしいと笑われるかもしれませんが、嗚呼、これが恋なのでしょう。 
こうしてカホちゃんと巡り逢えたのはきっと運命で、そう、私にこの現場の話が来た時も、私がそれを承諾した事も‥ 
いや、もっと逆上れば、この警備という仕事を選んだ事、いや、この世に生まれて来た時から全ては運命で、その運命が今日この瞬間につながっていたのだと思えてなりません。

警備開始から二週間くらいたった某日、巡回もいよいよ慣れて来てその『気味悪さ』が徐々に薄れ始めた私は、夜の校舎内で便意をもよおしました。 
女子校と言えど職員トイレ以外にもどういうわけか男子トイレが少なからずあるのですが、その時、私の中に良からぬ考えが浮かんだのです。 
(女子トイレを使ってみよう) 
確かに既に巡回中に何度も女子トイレには入っていたわけですが、用を足すために入るということが何か特別な事のように思えて少しばかりの緊張感を覚えました。

警備員の使用が許可されているトイレは用務員室のそれだけでしたが、もはや私の冒険心は止まりません。 
私は誰も来るはずのない女子トイレの個室に入り、用を足し始めました。 
便を排出するしばしの爽快感に代わって、にわかに沸き上がる性的興奮。 
このトイレを昼間はあの子たちが使っているのだ。 
今の私と同じく、こうして下半身をあらわにして‥ 
そんな破廉恥な想像をしながら、私はその個室の隅に置かれている三角の小さなゴミ箱を見つめていました。 
これはおそらく‥例の‥それなのでしょう。

巡回初日からその存在は意識していたものの、やはりどこかに人として、警備員として、理性が残っていたようで今日まで触れずにいた物。 
私は尻を拭き水を流した後、下半身を露出したままでその箱に手を伸ばしたのです。 
ありました。 
掃除の時間の後に出た物は明日の掃除の時間までそのままなのでしょう。 
全校生徒385人、その全てが女の子なのですから当然これが出ない日などあるわけがありません。 
使用済みナプキン。 
それは見た目にはあまり気味の良いものではありませんでしたが、ここにあるものは全て間違いなく女子中学生が使用したナプキンであるという確証が価値を高めているのに他なりません。 
トイレットペーパーにくるまれた物、そうでない物、私は中でも血の量が少ない一つを選び出し、手に取りました。

私にとって初めて見る物でした。 
両側に粘着テープがあって、そして中央に血。 
つまりこの中央の部分に女の子のアノ部分が‥ 
私はおもむろに鼻を近付け匂いをかいでみました。 
(うっ) 
血の臭いでした。 
血の臭いなど知ってるはずもないのですが、歯みがき途中に歯グキから血が出た時、血と私の口臭が混ざり口の中がこんなカンジになるのを思い出していました。 
私はにわかに興ざめし、ナプキンを元のゴミ箱に戻すと守衛室に引き返したのです。

しかしあのナプキンがもしカホちゃんの使用したものだったら私はどうしたのでしょう? 
大切に持ち帰るのでしょうか? 
陰毛が付いていないか隅々まで観察するのでしょうか? 
アノ部分と接していた箇所に優しくキスをして、そして‥ 
(駄目だ駄目だ!カホちゃんをそんなことで侮辱してなるものか!) 

記 
校舎内巡回 異状なし


フグポン警備士はよく遅刻します。 

「高崎さん、お疲れさまです」 
「田山君、お疲れさま」 
「あ、そういえば宮本君が寝坊したって、今電話が‥」 
「またですか?彼は」 
「しょうがないヤツですよ。ま、仕方ないんで僕が居残りです」

勤務中のフグポン警備士は超厚遇の睡眠シフトで何故寝坊?と不思議でなりませんが、ただそのために田山警備士が残業しなくてはならないのが気の毒に思えました。 
我が社では遅刻の罰則は厳しく、一回の遅刻でもそれ相当の罰金が課せられます。 
その痛手を回避したいのか、このフグポン警備士ズルイところがあり、駅から学校に向かう途中であたかも現場から電話しているがごとく上番報告を入れて遅刻を免れていたりするようです。 
最近では指令室も彼を疑っているようで、私にその真偽を探る為の電話を入れて来たりするのです。

「指令室です、あれ?高崎さんですか、番号間違えました。すみません宮本に換わってもらえます?」 
「宮本君は職員室ですよ。先週の報告書と巡回記録簿を届けさせてます。何か急用ですか?」 
「いえ、いいんです。では高崎さん、今日もよろしくお願いします」 
「了解しました」

この電話がかかっている時にフグポン警備士はまだ現場にまだ到着していないわけですが、私はこのようにフォローするのです。 
ただでさえこの現場『おいしい』と評判で(それは他ならぬフグポン警備士が吹聴した結果なのですが)他の隊員が入りたがっているのです。 
遅刻などを頻発すれば通常の現場であればすぐに外されてしまうでしょう。 
ただ学校側に提出した警備員名簿にない者を派遣するには些か面倒があり、それは面子を固定して欲しいとの学校側の意向に反するという意味で、更にはこうした私の『計らい』によって彼はここでの命を長らえているのです。

この私の計らいには理由がありました。 
それは言う間でもなくフグポン警備士がフグポンである限り、女の子には相手にされないという安心があったからです。 
四十路過ぎの私が若いフグポン警備士に対してそこまでに言えてしまうのは、申し訳ないがそういう事なのでした。 
「昨日の帰り、駅のホームでウチの生徒さんに会いましたよぉ」 
こんな話を私に持ちかけ、それはまさかカホちゃんではなかろうか、もしそうだったら!?などと私に胸が締め付けられるような思いをさせるのは田山警備士一人で十分なのです。 

しかしこの夜、私とカホちゃんとの距離がまたひとつ近づく事になったのです。

その日、私には一つの決意がありました。 
(巡回中にカホちゃんの机を探してみよう!) 
私の記憶の中で、学生時代の『席順表』なるものがよみがえっていました。 
それは今もきっと、そしてこの学校にもあるはずです。 
教室の何処か、教壇の上か、先生の机の中か‥ 
一年生は3クラス、教室は二階。

二階まで上り私はまず一年A組の教室に入りました。 
窓から見下ろすと先ほどまで校庭を照らしていた用務員室の灯は消えています。 
どうやらフグポン警備士が眠りについたようです。 
私は席順表を探すべく教壇に歩みよったのですが、それは探すまでもなく教壇の上にありました。 
なるほど意識していない時には意識していない物が、いかに見逃し易い物なのかという教訓です。 
これは今後の巡回の留意点であるとその時考えたりしたのでした。

さておき、ビニールシートに挟まれている席順表をライトで照らし『マミヤ』の文字を探します。 
(マミヤ‥マミヤ‥、‥あった、間宮!) 
『マミヤ』なのか『イマミヤ』なのか少なからず自分の耳を疑い、実は私の全く勘違いで全然違う名字なのかもしれない‥そんな心配も今、消え去ろうとしています。 
心臓の音がまた一段と早くなったのを感じつつ、教室に並んだ机の列と席順表を照らし合わせました。 
(窓際から二列目、前から四番目) 
私はその机に歩みよって膝をつき、机の中を覗き見ました。 
教科書とノート、筆記用具が入っています。 
私はノートのひとつを手にし、その表紙に小さな丸い文字を見つけたのです。 
『間宮香保』 
間違いありません、カホちゃんの机です。

(『香保』って書くのかぁ、可愛いなあ) 
私はノートをパラパラとめくり、何か香保ちゃんの事がわかるようなヒントを探してみました。 
英語の翻訳、歴史の考察‥ 
香保ちゃんの素性が判るものはありませんでしたが、所々に登場するクマさんの落書きが香保ちゃんのお茶目な一面をかもし出していました。 
(やっぱり可愛いなあ、香保ちゃん)

そして私は香保ちゃんの椅子に自分の頬を当ててみました。 
冷たい感触でしたが、昼間はこの椅子に毎日香保ちゃんが座っているのです。 
私は目を閉じ、香保ちゃんのイメージを浮かべます。 
香保ちゃんの椅子、香保ちゃんのオシリ 
程なく私の瞑想劇場が発動します。 

((香保ちゃんのオシリは可愛いねぇ)) 
((警備さん、だめだよ)) 
((おじさん、もう我慢できないよ)) 
((いやぁ)) 
((あ、あ、香保ちゃん、オシリの上に出すよ))

そして、 
「あふっ」 
何とも情けない声を出し、私は精液を香保ちゃんの椅子の上に放出したのでした。 
(ごめんね、香保ちゃん‥) 
私はそれをティッシュで拭うと一年A組を後にしました。 

【登録番号】00 
【名前】間宮香保 
【電話番号】 
【メールアドレス】 
【メモ欄】未来のお嫁さん


最近の私はアダルトビデオを見なくなりました。 
なんというか、つまりそれは、香保ちゃんを裏切る行為のように思えて来たのです。 
見ず知らずの女が金欲しさにカメラの前で己の肢体をさらけ出し、さらには恥も知らず男とセックスをしている光景を、私が好んで見ている事を香保ちゃんが知ったら何と思うでしょう? 
そう考えると、とてもそのような汚らわしい物に手を出す気にはなれなくなったのです。

それに何より、もう香保ちゃん以外の女に興味が無くなり始めているのかもしれません。 
私の心の中には香保ちゃんだけ。 
そう、私が愛すべきは香保ちゃんだけ。 
そして香保ちゃんが愛するのは他の誰でもない、私なのです、私だけなのです。

仕事が終わり家に着きシャワーを浴びます。 
帰り際にコンビニで買った弁当を温め、それを食べながらテレビを見ます。 
はなまるマーケットでも見ながら、以前の私は時折わけもなく虚しくなってしまったりしていましたが、最近はそんな事がすっかりなくなりました。 
香保ちゃんのおかげです。 
私は今、毎日が楽しくて仕方ないのです。 
あの屈託のない笑顔‥勇気の源!

ここまでの私の人生、振り返れば何かと上手く行かなかったような気がします。 
学校を出て就職した会社は15年目にしてバブル崩壊のあおりを受け倒産。 
その後、仕事を転々とするも定着できず、気がつけば年齢制限とやらで面接すら受けられぬ歳になりました。貧困の挙げ句『週払いOK』のうたい文句に誘われこの業界に、しかし頼まれると断れない性分が禍いして人の嫌がる辛い現場ばかりに派遣される始末。 
恋愛に関しても数える程のもので、それも二度三度、女の子を食事に誘った程度で、実に初体験は三十路を過ぎてから意を決して出向いた風俗にて。

仕事や恋愛だけではありません。 
免許を取得、車に乗れば初年度に三回も事故に遭い、 
レストランで注文した私の料理だけがいつまでたっても来ません。 
釣りに誘われれば私だけが釣れませんし、 
人ごみに現われたハチがどういうわけか私だけを追って来ます。 
宝クジや馬券どころか自動販売機のジュースすら当てた事はなく、 
そうかと思えば野球のファウルボールが背中に直撃したりします。

私の人生、何だったのでしょう? 

‥でも 

‥今、私は 

‥とても幸せなんです 

香保ちゃんに出逢えて本当に良かった


香保ちゃんの机を発見した翌日、私は上番前から考えていた事がありました。 
教室が特定出来た今、ロッカーを探し当てる事も難しくないという事です。 
確か教室の後ろのロッカーには番号がふってあり、それはおそらく出席番号で、香保ちゃんは『間宮』のマ行、番号は後ろの方(つまり教壇から向かって右側、窓際近く)のはずです。 
机と同様に中に入っている物を見れば香保ちゃんのロッカーは特定出来るかもしれません。

そしてその日も上番、引き継ぎ、生徒の見送り、先生の見送りなど、一連の仕事を終え深夜になりました。 
香保ちゃんのロッカーには何が入っているのでしょう? 
(まさか下着はないにしても、もしかしたら体操着くらいは‥) 
期待は膨らむ一方です。 
私は私の巡回担当時間である深夜二時が待ち遠しくなっていました。

巡回は一晩で四回、22時から二時間ごと、最初二回はフグポン警備士、後の二回は私。 
(>>90-91) 
つまり私の巡回は深夜二時スタート、草木も眠る〜と言いますが、フグポン警備士も熟睡する時間なのです。 
今になって思えば、フグポン警備士が懇願したこの一見理不尽なローテーション、結果的に私にとって実に都合の良いものになっていたのでした。

いよいよ、その時が来ました。 
この学校の警備を開始した当初の夜の校舎の気味悪さなど、みじんも感じなくなっていました。 
むしろここは今や大好きな香保ちゃんと私のワンダーランドなのです。 
私は鼻唄まじりに適当に各教室をやり過ごし、一年A組に着きました。 
教室の窓から用務員室の灯が消えている事を今一度確認します。 
灯は無く、私はフグポン警備士が熟睡中であることを確信しました。

私は香保ちゃんのロッカーを探し始めました。 
一番右の43番から開けました。 
教科書やノートがゴチャゴチャっと入っています。 
(おや?) 
小さな巾着、それは見覚えのある物でした。 
『これ落とし物かと思う』 
そうです。 
あの日、私と香保ちゃんが初めて出逢った時、香保ちゃんが届けてくれた落とし物と同じ巾着がそこにはありました。

中身は見当が付いていましたが、開けてみると体育館で使用するのでしょうか?シューズです。 
シューズには名前が書いてあります。 

『1-A 和田』 
(この43番のロッカーは違う)

42番 
ここにも同じ巾着が入っていました。 
どうやらこれは学校指定の体育館シューズ入れのようです。 

『1-A 谷田部』 
(‥ここも違う)

41番 
(‥‥!) 
41番のロッカーを開けた時、何か直感めいたものが私の中に走りました。 
整頓されたその中は、ひと際私に期待感を持たせました。 
巾着を開け、シューズを取り出します。 

『1-A 間宮』 
(か、香保ちゃんだ!) 
その小さなシューズには机の中のノート同様、丸い可愛い文字で名前が書いてありました。

(香保ちゃん‥) 
私はシューズに鼻を近付け嗅いでみます。 
シューズのゴムの臭いに混じって、他の匂いがわずかに感じられます。 
(これが香保ちゃんの匂い‥足の匂い) 
それは私の足の裏の、納豆のパックを二三日放置してしまった時のようなあのクサイ臭いとは全くの別物で、嗚呼、こんな匂いが世の中にあるものなのかと、そんな気にもさせてくれる良い匂いでした。 
(足の裏がクサイだなんて、誰が決めつけたんだろう?だってこの香保ちゃんのシューズは‥はあぁ)

私は一度シューズを置きました。 
その他、香保ちゃんのロッカーに入っていた物は、教科書、ノート、縦笛です。 
縦笛はソプラノリコーダーとアルトリコーダーの二本が置いてありました。 
(この笛に、香保ちゃんの唇が‥) 
私は思考はすでに小学生レベルくらいまでに退行していました。 
たまらなくなりベルトを緩めズボンを下ろすと、例によって妄想劇場が発動します。

((香保ちゃん、キスしていいかい)) 
((警備さん、香保のことすき?)) 
((好きだよ、大好き。だからキスしよう)) 
((うん‥)) 

私はソプラノリコーダーを口に含みレロレロと舐め回しました。 
こうして私は念願の『香保ちゃんとのキス』を果たしたのです。 
私の舌が香保ちゃんの舌に絡み、香保ちゃんの舌がそれに応えて絡み返します。

((香保ちゃんはエッチだね、中学生なのにこんなキスをして)) 
((んん)) 

二人の唇が離れる度に、チュッ‥チュッ‥とイヤらしい音を立てます。 

((香保ちゃん、あ、あ))

そして、 
「あふっ」 
やはり情けない声を出し、私は精液を香保ちゃんのシューズの中に放出したのでした。 
(ごめんね、香保ちゃん‥) 
私は精液を拭き取り、精液臭くなったシューズを巾着に入れロッカーに戻すと、一年A組を後にしました。


六畳一間、辛うじて風呂便所付き 
小さな電気ストーブでは隙間だらけのボロアパートの一室を温めきれず、部屋の中だというのに寒い‥ 
学校の用務員室ですら、ここに比べれば立派と言えてしまう私の部屋の有り様です。 
私は布団にくるまり、天井を見つめながら考えました。

(今日は音楽の授業があるのだろうか? 
あのリコーダーを香保ちゃんが使えば間接キスが完成するんだなあ 
香保ちゃんの唾液の付いた笛を私が舐めて、今度は私の唾液の付いた笛を香保ちゃんが‥ 
なんか、たまらないなあ 
嬉しいな 
恥ずかしいな 
体育はどうだろう? 
今日は体育の授業はあるのだろうか? 
あのシューズを、私の精液がしみたあのシューズを香保ちゃんが‥

そう言えば最近、歳のせいか精液の量が少なくなって来たと思っていたのに、あの時はたくさん出たなあ 
その前の日の香保ちゃんの椅子の上に出した時もたくさん出たなあ 
二日も続けて、たくさんの精液 
気持ちよかった 
香保ちゃんがあんまり可愛いからたくさん出ちゃうんだな 
若い女の子はいいなあ 
香保ちゃんはいいなあ 
いいなあ‥

香保ちゃんは一年生だから13歳かな?
13歳か‥ 
胸もまだ膨らみかけなんだろうなあ 
アソコの毛は生えてるんだろうか? 
いやらしいな‥ 
そろそろセックスにも興味を持ち初めているんだろうな 
いけない事を考えて、アソコが濡れちゃったりするんだろうか 
いやらしいな‥香保ちゃん‥) 

私はそうして、また興奮し、精液を出したりするのです。

ある日のこと、守衛室の電話が鳴りました。 
指令室からです。 

「高崎さん、相談が‥」 
「はい、何でしょう?」 
「来週の○○町の交差点工事の件ですけど知ってますよね?」 
「あ、はい。歩道橋吊上げるんですよね?」 
「はい。で、相談なんですけど‥」 
「連勤ですか?」 
「あ、ええ、ハハハ、するどいッスね‥」 
「まさか、三連勤ですか?」 
「申し訳ないんですが‥」

たまに大きな仕事が入ります。 
今回は歩道橋設置工事のため、その交差点を夜間全面通行止にするというものでした。 
あらかじめ地上である程度まで組まれた歩道橋本体を、ラフターと呼ばれる移動式クレーン二機で吊上げるのです。 
その吊られた橋と支柱との結合部のボルトの仮締めが終了するまでの間、直下の道路は通行止になるのです。 
それが今回は比較的規模の大きい交差点であるため夜間の誘導要員も大勢、さらには昼間の準備工と広報にも大勢の隊員を要するのでした。

このような事態になると私の所のように大きな警備会社でも欠員は免れません。 
そんな時、苦肉の策として隊員を日勤から夜勤、あるいは夜勤から日勤へと継続して勤務させる『連勤(れんきん)』という手段をとります。 
もちろんこれは客(工事業者など)にとっては不本意で、それは連勤で集中力を欠いた警備員に現場を任せたくないという当然の理由からなのです。 
とは言え、頭数が揃わず工事も開始出来ないような事態になる事を考えれば、やむなく、この『連勤』を黙認しているのでした。

「どうしても、田山君をお借りしたいんですよ」 
「いいですよ」 
「え?」 
「やりましょう、三連勤」 
「本当ですか?いやあ、助かります、高崎さん」 

つまり日勤の準備工の欠員を田山警備士で補い、その田山警備士の穴を私が補うという事でした。 
私が工事の方に借り出されなかったのは指令室の気遣いだったのかもしれません。

何はともあれ、私はこの学校の警備で初めて日勤を体験する事になったのです。 
私の常駐場所がこの学校でなく普通の現場だったら、この連勤は断っていたかもしれません。 
眠そうな顔や、居眠りをしてしまっている私を他人に見られたくないのです。 
集中力を欠いてミスをするのが恐いのです。 
そして、何より体力的に連勤をする自信がないのです。 
若い隊員の中には、この連勤を『稼げる』と喜ぶ者もいるようですが、私にはとても理解出来ませんでした。

しかし‥ 
私の心は少しばかり弾んでいました。 
その理由は言うまでもなく香保ちゃんです。 
昼の香保ちゃんを見てみたい、ただそれだけの理由です。 
それだけの理由で、今まで頑に拒否し続けてきた連勤を引き受けたのです。 
意外にあっさり引き受けた私に、指令室の隊長も少し驚いた反応をしていたようですが、人の心は案外こういう事で動いてしまうのでしょう。 
(香保ちゃん‥愛してる)


(今夜は隊長も含めて総出になるのか‥) 
いよいよ例の歩道橋工事の当日になりました。 
昨夜の夜勤からの続投、いわゆる二連勤務目なのですが思ったほど眠気はありません。 
フグポン警備士が下番し、一人守衛室に残った私は、この昼の校舎で起きる未知なるハプニングに胸踊らずにはいられませんでした。 
今、香保ちゃんは何の授業を受けてるんだろう、そんな事を考えながら私は頬をゆるませていたのです。

気がつくと、グランドの遠くの方で体育の授業らしい声が聞こえていました。 
その声は次第に私の居る守衛室に近づいてきて、やがて先生を先頭にした一クラスの姿が見えました。 
ぞろぞろと移動してきた集団は校門の前で、つまり守衛室の前で止まりました。 
すぐに先生の指示が出ます。。 
「じゃあ、ここをスタートにしまーす、なるべく頑張って出来るだけ早く走れるようにして下さーい」 
「はあい」 
一年生のようです。 
先生が笛を吹くなり、生徒達はパタパタと走り出し、校門から外へ出て行きました。 
校庭のフェンス沿いに続く長い歩道を、小さなオシリたちがプリプリしながら遠ざかって行きます。 
(えへへ、いいなぁ、日勤‥)

女の先生はこちらに軽く会釈をするとそれ以上は私にかまわず、それからは時折ストップウォッチをチラと見ては生徒の帰りを待っていました。 
(香保ちゃんのクラスも今日は体育あるんだろうか?) 
しばらくして先頭の生徒達が戻って来ました。 
「24秒‥25‥26‥ はい、もう一周、頑張れ!」 
息を切らせ、軽快にトップグループが通過します。 
その後、二番手、三番手グループが追走し、かなり時間をおいてワイワイおしゃべりをしながら通過する最終グループ。 
「こらー、ちゃんと走るう!」 
「先生、アタシもぅしんどいよー」 
「アタシもー」 
「はい、あと一周がんばれ、ほらー」 
先生にオシリを叩かれながらキャッキャ走り過ぎて行く生徒達。

早く走る事が出来る生徒、自分なりに早いタイムを目指す生徒、全然走ろうとしない生徒。 
どの生徒もそれなりに可愛いく見えるのでした。 
頑張る姿も、甘える姿も、全てが許される年頃なのでしょう。 
私は仕事をしばし忘れ、そんな彼女たちをほのぼのと見守るのでした。 

「はい、そこー!歩かない、走れっ!」 
最終グループの背中に再び先生が叫びます。 
「こらー歩くな、佐藤っ!水谷っ!間宮っ!」 
(‥!!) 

間宮‥!? 
香保ちゃんがいるのでしょうか?

二週目が終了し、次々と生徒がゴールして来る中、私は香保ちゃんを探していました。 
ゴールした生徒は自分のタイムを自己申告で先生のバインダーに記入しています。 
「57秒‥58‥59‥ はい、7分‥あとちょっと頑張って走れえ!」 
先生の声に促されて走ったり歩いたり、その集団の中の、その一人の姿を、私はついに見つけ出しました。 
(来た!香保ちゃんだ!) 
それは間違いなく香保ちゃんでした。 
不真面目な、いえ、甘えんぼな最終グループの中に香保ちゃんがいたのです。 
香保ちゃんは他の生徒と背中をつついたり、つつかれたりしながらこちらに走ってきます。 
(か、可愛い‥) 
普段見慣れた制服姿も勿論可愛い香保ちゃんなのですが、体操着の香保ちゃんもまた、これはこれで格別なものでした。

ハーフパンツ(?)というのでしょうか、ジャージの膝下を切り落としたようなアレです。 
香保ちゃんはそれがとても似合っていて可愛いのです。 
やがてゴール地点である校門つまり守衛室の私の目の前に、香保ちゃんと他の生徒は、やはりキャッキャ言いながらようやく到着しました。 
「はい、少し休憩〜!」 
そう先生の声がして私の目の前には地面に座り込んだ生徒達の輪がいくつも出来ました。

冬とは言え走った後はいくらか暑くなったようで、何人かの生徒はジャージの前を開けちょうど鳥が羽ばたくようにパタパタとしています。 
ジャージの下の白い体操着は生々しく生徒の体格を形取り、一年生と言えども既に胸が立派に膨らんでいる子もいました。 
(香保ちゃんの胸の形が見たい!) 
私は香保ちゃんを手元の書類に目を通すフリをしながらチラチラと見ていました。 
しかし甘えんぼ最終グループの香保ちゃんは涼しい顔をして仲間と談笑しているようでした。 
それはそうでしょう。 
汗をかくほどには走っていない風でしたから。 
しかし私はそれでも満足でした。 
香保ちゃんが今、こんなに近くにいるのですから。 
地面にオシリを付き、ハーフパンツからのぞいたシシャモのように小さなふくらはぎを、これもまた小さな拳でペシペシと叩いています。 
その姿の可愛いらしいこと!

しばらくして香保ちゃんのグループの一人が私の顔を見ている事に気が付きました。 
その生徒はそのグループの中でも先程走っている最中もひときわ大きな声で騒いでいた生徒で、少しマセた顔立ちをしていて、その眉毛は抜いたのか揃えたのかほとんど無く、香保ちゃんのような可愛さには程遠い感じでした。 
その生徒が突然言ったのです。 
「あれ?夜の警備の人じゃん?」 
注目される‥私 
当然香保ちゃんもこちらを向いています。 
(ハハ‥ど、どうも) 
眉無しは続けて言いました。 
「やっぱそうだ!夜の警備さんじゃん!おーい!」 
眉無しが手を振ります。 
私は動揺を隠せません。

眉無しの予想のつかなかった行動にとっさに反応し、後から思えば軽く会釈でもしておけば良かったのですが、事もあろうに私は手を振り返してしまったのです。 
するとどうでしょう、今度はそんな私に対し、手を振り返した別の生徒がいたのです。 
香保ちゃんです! 
何という幸せ!! 
(嗚呼、神様、私などに何故ここまで) 
制帽をかぶり直し平静を装おう私の顔は自分でも分かるほどに真っ赤になってしまっていたのでした。 
「はい、じゃあ移動しまーす!立ってえ!」 
先生の指示で生徒たちは立ち上がり、オシリの砂を払いながら歩き始めます。 
私は去って行く香保ちゃんの背中を、いえオシリを、校舎の向こうに消えるまで目で見送っていました。 

日勤‥それはパラダイス 
日勤‥それは香保ちゃんとの至福の時 

(香保ちゃん、愛してる)

結局、一番期待していた昼休みには何事も起こらず、夕方にはフグポン警備士が上番し三連勤目の夜勤に入りました。 
そうは言っても昼休みには数人の生徒が守衛室に立ち寄り『今日は昼なんですかあ?』などと声をかけてくれましたが、私にとってはもはやその生徒が香保ちゃんでない限り、日常の取るに足らんエピソードにしかなり得ないのでした。 
それでも私は香保ちゃんが体育の授業中に手を振ってくれた事だけで、今なお天にも昇る気持ちなのです。

「どうすか?眠いっすか?高崎さん」 
「うん、それは眠くないはずがない」 
「ローテ、変えます?」 
「いや、大丈夫」 

フグポン警備士にも意外に優しい一面もあるのだなと感心しつつ、断ります。 
私はまだまだ元気でした。

「さよ〜なら〜っ!」 
「はい、さようなら」 

香保ちゃんと眉無し達が挨拶をしてくれ、下校して行きました。 
(シアワセ‥) 
これこそが私の元気の源、仕事のやり甲斐なのです。

やがて陽が落ち、校舎は見慣れた夜のそれになりました。 
なぜか蒸し暑い夜でした。 
(この季節に汗ばむなんて妙だな) 
そう思いながら私は巡回を始めたのです。 
しばらく歩き、私が一年A組に着いた時です、なんと中に誰がいるのです。 
私の鼓動が急激に早くなります。 
「誰だ!?」 
私は震えた声でそう叫びながらライトで中を照らしました。

「香保‥ちゃん?」 
「はい」 
「どうしたの?こんな時間に」 
「ここにいれば警備さんに会えると思ったから」 
私はこのおかしな状況を不思議がる以前に、香保ちゃんが私に会いに来てくれたことがたまらなく嬉しかったのです。 
そうです、香保ちゃんも私を意識していてくれたのです。 
「そうか、そうなんだね!香保ちゃん、警備さんは嬉しいよ!」 
私は香保ちゃんに抱きつき、スカートをたくし上げ、夢中でオシリや内腿のあたりを触りました。 
「やっ」 
「香保ちゃん、警備さんね、警備さんね‥」 
「いやぁ」 
香保ちゃんは私の腕からするりと抜し、教室の外へ走って逃げます。

「香保ちゃん、待って!どこ行くの!?」 
追いかける私。 
逃げる香保ちゃん。 
そして階段に差し掛かった時、私は足を踏み外しました。 
「ああああっ!」 
足がビクンとなって、私は目を覚ましたのです。

用務員室のストーブが『強』のままで陽炎を発し、その横で私は随分汗をかいていました。 
やはり三連勤目の疲れは、その幸せな気分とは別に現実としてあったようで、休憩中に私はいつの間にか眠ってしまっていたようです。 
窓を開け、外の空気を入れました。 
汗をかいた首筋に、冷たい夜風が心地よく当たります。 
見れば校庭の方にライトアップされたチャペル。 

(もうすぐクリスマスか‥香保ちゃん、私は君のサンタクロースになれますか?)


ここ数日間、気になる事があります。 
フグポン警備士が私といる間、ずっと携帯電話をいじっているのです。 
そして休憩中も普段なら熟睡するはずの彼が、最近では起きている事が多いのです。 
また持参した携帯の充電器を用務員室に持ち込み、使用しているようでした。 
私といる間、そして私といない時にもおそらく彼は携帯を触っているのです。 
ある時、彼に訊ねました。

「宮本君、携帯で何をしてるんだい?」 
「え?あ、出会い系っすよ」 
「出会い系?」 
「知らないっすか?」 
「いや、聞いた事はある」 
「おもしれっすよ」 

出会い系 
ニュースで何かと耳慣れた言葉です。 
面識のない男女がネット上で知り合い、実際に会ったりする。 
しかしそれは私にとって常に犯罪の臭いがする如何わしいものであるという認識でした。

「女の子と知り合えるのかな?」 
「ガンガンっすね!」 

『ガンガン』の根拠や実績もないくせに、嬉しそうに語るフグポン警備士がどこか憎らしく思えました。 
もしフグポン警備士に彼女が出来たりなどしたら、彼の性格上、その彼女との行動の全てを私に報告(正確には自慢)するでしょう。 
そんな事は私にとって不快これ極まりない事です。

「相手は本当に女の子?」 
「どういう意味ッスか?」 
「ほら、ネカマとかいるじゃない」 
「高崎さん、よく知ってますね、ネカマとか言って」 

言葉は知っています。 
私だって『にちゃんねらー』の端くれですから。 
思えば初めてこの仕事に就き、まもなく内勤に抜擢された頃には一番の苦手分野だったパソコン。 
そのパソコンも周りの人のありがたい熱心な教育の末、何とか身に馴染み、その便利さや面白さ、加えて破廉恥さを実感し、ついには自宅にパソコンを構えインターネットを引く事になったのでした。

「まあ、私もこう見えて現代人だからね」 
「はあ、そすか‥でもコツっすよ」 
「なにが?」 
「ネカマなんてイッパツっすよ、見分けるの」 
「ほう‥」 
「ネカマって、わざとらしいんですよ」 
「ふむ‥」 
「こう、なんか逆にすげえ可愛いんですね、それが見え見えなわけ」 
「ふうん」 
「でね、妙に物分かりがいいの、例えばエロ話にめちゃノって来たりとかね」 
「なるほど」 
「結局、ネカマって‥、‥あっ!来た!」

興奮のあまりタメ語になっているフグポン警備士の言葉を気にしていた矢先、彼にメールが届いたようです。 
活き活きとネカマについて語りながら、携帯の画面をチラチラと気にしていたフグポン警備士は、その携帯がメール受信画面に切り替わったのを見て息を荒げました。 

「直メですよ、直メ、高崎さん」

フグポン警備士がポチポチと携帯を操作します。 
直メ、直アド、なんとなく想像のつく言葉でした。 
つまり彼は出会い系の有料サイト内で知り合った女の子の一人と、メールのアドレスを直接交換し、今まさにその子から直接メールが来たのでしょう。 
しばし携帯の画面を凝視するフグポン警備士。 
やがて『うほっ』と声を出して首を退け反らし、また再び画面を見て、もう一度『うほっ』と言いました。 
そして私の方にその携帯を向け、言うのです。 

「メッチャ可愛くないすか!?」

画面には携帯のカメラで撮ったような女の子の画像が表示されていました。 
可愛い女の子でした。 

「この子は?」 
「さっきゲットしたんですよ!」 
「可愛い娘だね」 
「すげ、すげ、俺、すっげ」 
「ハハハ」 
「しかもこの娘、チョーいい性格なんすよ〜!!」

大ハシャギのフグポン警備士。 
私はそんな彼を見て今にも吹き出しそうになるのをじっと堪えていました。 
その女の子の画像、実は私の自宅のパソコンにも保存してあるのです。 
どこかの画像掲示板から落とした、たしか『rina』という名のネットアイドルでした。 
そのいわゆる『ネトアのrina』の画像を、どこかの誰かが拝借してフグポン警備士に送信したのでしょう。 

(フグポン、どうやらそれ、ネカマみたいだ‥ ぷっ)


その夜も私は例によって香保ちゃんの机とロッカーを物色しました。 
机の中には相変わらず教科書などの物、私にとってあまり興味を示さない物が入っていました。 
しかし次にロッカーを開けた時、私はその中に見慣れない巾着を見つけたのです。 
それは体育館シューズの巾着より少し大きめで、ふんわり柔らかい感触でした。 
(もしかして‥) 
私はその巾着をロッカーから取り出し、開けて見たのです。 
体操着でした。 
紺色のジャージの上着と同じく紺色のハーフパンツ、そして純白のシャツでした。 
私はこの日を待っていたとばかりに一気に興奮し、ズボンを下げ、香保ちゃんの体操着を手に取ろうとした瞬間‥ 
「ガヒュ」 
私の無線機が音を立てました。

私は慌ててズボンを上げ、体操着を巾着に押し戻しロッカーにしまい込むと無線を取りました。 

「フグポ‥えーあー、宮本君、聞こえますか?」 
「‥‥ ‥‥」 
「えー、宮本警備士、無線取れますか?どうぞ」 
「なんすか?高崎さん、どうぞ」 
「今、無線で何か言いましたか?どうぞ」 
「あ、充電器に挿しただけっす、特に用事はないっすよ、どうぞ」 
「了解、以上」

血の気が引いていました。 
私は一瞬、私の行動がフグポン警備士に察知され、無線でそれを知らしめられるものかと思ったのです。 
『ガヒュ』に続いて『高崎さん!何してるんですかっ!』と。 
そうなったら私は‥私はこの職を退かなければならないでしょう。 
いえ、それだけでは済まされません。 
会社は憤慨。 
学校側も憤慨。 
警察から聴取され、フグポン警備士や他の隊員、そしてこの学校の全校生徒から軽蔑される。 
そして何より香保ちゃんに何と思われるでしょうか。 
ともすればこんな奇天烈な事件、いかにもマスコミが喜びそうで、夕刻のニュースで実名を報じられてしまうかもしれません。 
私は『変態』のレッテルを背負い、この先の人生を生きて行かなければならないのです。

それだけのリスクを背負っているのだと改めて認識をした瞬間でした。 
眼下には用務員室の灯が地面を照らしています。 
フグポン警備士が出会い系にハマり出してから、私の行動の自由度は下がっていました。 
それでも‥ 
やはり、どうしても‥ 
私の欲望は押さえきれず、この香保ちゃんの体操着が欲しくなり、またこの機を逃したら香保ちゃんが体操着を学校に置いたままで帰るなどという事は二度とないのかもしれないと考え、私は制服の腹の部分に香保ちゃんの体操着の入った巾着をしのばせたのです。 
そして用務員室にいるはずのフグポン警備士の動向に細心の注意を払い、守衛室に戻ると自分のバッグの中にそれをしまったのです。 
その後、交代して私が用務員室で休憩をしている間、彼がこのバッグを開けはしないかと心配でしたがそれはなく、無事に朝をむかえて私は香保ちゃんの体操着をまんまと自宅へ持ち帰ったのです。

香保ちゃんが翌日、守衛室に来たのは夕方になっての事でした。 
先日、落とし物の別の巾着を私が預かった件で、私が遺失物を担当しているかのように勘違いしているようでした。 

「教室に忘れたと思ったんだけど、ないから違うと思う」 
「下校中に落としちゃったのかな?」 
「うん、たぶん電車の中かと思う」 
「そうかあ、早く見つかるといいね」 
「‥‥」 
「どうしたの?」 
「おこられる‥」 

消え入るような小さな声でそう言い、寂し気な顔をしてうつむいた香保ちゃんを見て胸が痛みました。 
こんな年頃の子は、この程度の些細な事でも深刻だったりするのです。

気の毒‥ 
いえ、そんな言葉を私が口にする資格などはありません。 
紛失した体操着 
その原因は何を隠そう、当の私、この変態破廉恥警備員、高崎なのですから。 

「ま、元気出して。そうだ警備さんの方でも探してあげよう、ね?」 
「はい」 
「じゃあ、そうだな、体操着出て来たら連絡しようか」 
「はい」 
「えっと、携帯あるのかな?」 
「あ、はい、あります」

我々の世代の常識では、中学一年生が携帯電話を持ち歩くなんてあり得ませんでした。 
ひと昔前には考えられなかった状況です。 
携帯電話が普及していなかった頃は、上番の前に公衆電話を探す事が必須でした。 
バスで向かった現場など近くに公衆電話がなかったりして、そのまま警備に入り、やむなく昼休みに事後報告したり。 
そんな時、公衆電話を探すためだけに昼休みの半分を費やしてしまったり。 
便利な世の中になったものだと、つくづく実感させられます。 
ただ中学生にこんな物を持たせて良いものなのでしょうか? 
見ず知らずの悪い男と連絡をとり、その清らかな身体を危機にさらす道具になり得はしないでしょうか? 
それとも可愛い我が子といつでも連絡をとりたい、いつでも我が子の無事を確かめたい、そんな親心なのでしょうか。 
その『見ず知らずの悪い男』の第一候補は、言う間でもなく私なのでしょうけれども‥

余談ですが体操着の事を香保ちゃんは『体育服』と呼んでいました。 
私の学生時代とは呼び方が違うのか、香保ちゃんだけがそうなのか、それは最後まで結局判らなかったのですが、その『たいいくふく』の発音が舌足らずの香保ちゃんは上手く出来ず、何回聞いても『たいこほく』になしまっていたのが印象的でした。 

たいこほく‥ 
たいこほく‥か 

可愛いなあ、香保ちゃん。

「じゃあここに、名前と電話番号ね」 
「はい」 

私はメモ帳を一枚ちぎり、差し出しました。 
例の丸い文字で書き始める香保ちゃん。 

「へえ、『間宮香保ちゃん』かあ‥可愛い名前だねえ(知ってたけど)」 
「あ、はい、そうですか?」 
「可愛いのは、おカオだけじゃないんだねえ」 
「え?‥あ、はい、ありがとう‥ございます」

『香保ちゃん、名前も顔も可愛いよ』‥私からの精一杯のメッセージでした。 
相手が自分の事を好きだと判ると、自分も相手を意識せざるを得なくなる‥と何かで読んだ記憶があります。 
しかしそれが、果たして私と香保ちゃんの場合でも当てはまるのかどうかは些か疑問なのですが。 
そして電話番号も書き終え、香保ちゃんは『おねがいします』と会釈をして小走りに去って行きました。 
こうして私は、ごく自然な成り行きの末、大好きな香保ちゃんの電話番号を手に入れたのです。 

【登録番号】00 
【名前】間宮香保 
【電話番号】090□□3□□5□□ 
【アドレス】 
【メモ欄】未来のお嫁さん

「優しそうなお姉さんだったよ」 
「はい、よかったぁです」 

数日後、私はフグポン警備士を職員室に派遣し、その間に再び持ち込んだ香保ちゃんの体操着を自分のバッグから取り出しました。 
彼が職員室に行っている間、誰かが届けてくれた事にするつもりでした。 
しかしそんな作り話をフグポン警備士にするまでもなく、その時タイミング良く下校しようと校門を通りかかった香保ちゃんを呼び止める事が出来たのです。 
安心で笑顔満開の香保ちゃんに、 
届けてくれたのは近所の人で、駅に向かう途中の商店街で拾ったらしいよ、とか、 
中身を見てすぐこの学校だと判ったみたいだよ、とか、 
世の中には親切な人がいるもんだね、だから間宮さんも‥とか、 
そんな様々な嘘を添付し、少し私の体臭が染み付いた体操着を香保ちゃんに返したのです。

『おこられる‥』 
やはりあのような悲し気な顔をされては返してあげたい思うばかりで、それは香保ちゃんを想うほどに強く、結局そうしたのでした。 
しかし一方でロッカーの笛と同様、私のぬくもりが付いた体操着を(洗濯するにせよ)もう一度香保ちゃんに着て欲しいと願う変態心が動機だったのかもしれません。 
そして暫くの間は、その私の臭いや精液の痕などで疑いが浮上するかもしれないという不安があったのも事実でした。

あの日私は自宅に帰るや否や、バッグから香保ちゃんの体操着を取り出しました。 
私はそれらを布団の上に並べ、組み立て、体操着の仮想香保ちゃんを造ったのです。 
そして全裸になり、その香保ちゃんに覆いかぶさりました。 
香保ちゃんの胸に顔をうずめ息を吸い込みます。 
女の子の匂い。 
香保ちゃんの匂い。 
洗剤の匂いと香保ちゃんの匂い。 
汗なのか、なんなのか、その初めて体感する甘い匂いに興奮し、私は香保ちゃんの胸にむしゃぶりつきました。

手でさすったり、キスしたり、時には乱暴に口に含み、激しく舐めたりしました。 
そして私は破裂しそうな私の陰茎に、香保ちゃんのハーフパンツを巻き付け、そのままシゴいたのです。 
「あぁ、香保ちゃんっ!」 
香保ちゃんの胸を唾液でベトベトしながら、香保ちゃんの大切な部分に大量の精液を出したのでした。 
ドロッとした濃い精液。 
それが香保ちゃんのハーフパンツに染み込んで行く様子を見ながら、私は充実感に包まれていました。 

(ごめんね、香保ちゃん‥たいこほく、汚しちゃった)


チャペルの方から賛美歌が流れて来ます。 
土曜日の夕方から生徒が登校するなんて今日以外に一年を通してなさそうですが、私もフグポン警備士もこの異国の宗教の儀式とその雰囲気に心を和ませていました。 
終業式は昨日で今日の登校は任意だと聞かされていましたが、香保ちゃんが来ているかどうかはその時まだ確認出来ていませんでした。 
また多くの生徒は父兄同伴で典礼に出席しているようでした。 
やがて拡声器を通した神父(あるいは教員兼任の神父?)の声が『主よ帰路につく我々の足をお守り下さい』などと話しているのが聞こえ、儀式の終了を予感させました。 

「アーメン」

雑談の声が聞こえ始め、切れ切れに生徒やその父兄が校門を通過し帰って行きます。 
生徒達は私やフグポン警備士までにも皆が皆『メリークリスマス』と言ってくれ、私は少し恥ずかしい気持ちで同じ言葉を返していました。 
しばらくして聞き覚えのある甲高い声が聞こえてきました。 
眉無しのようです。 
眉無しの声は聖なる静かな夜に、容赦なく響き渡っていました。 
「かほー、ちょっと、かほー!」 
香保ちゃんを呼ぶ眉無しの声が、香保ちゃんの存在を知らせてくれていました。 
(香保ちゃん、来てたんだ!)

やがて眉無しと香保ちゃんが私の視野に登場しました。 
そして香保ちゃんの横には、香保ちゃんの襟を直す大人の女性が付き添っています。 
その美人で何とも品のある清楚な女の人は香保ちゃんのお母さんだと、ひと目で判りました。 
目もとなどは香保ちゃんにそっくりで、いえ正しく言えば香保ちゃんがそっくりなのですが、それは香保ちゃんも大人になったら間違いなく美人になるという事の証明でした。 

「あ、警備さんメリークリスマス」 

眉無しが私とフグポン警備士に言います。 
続いて香保ちゃんの声 

「メリークリスマス」 
(か‥香保ちゃん‥)

私はもうこのまま洗礼を受けてクリスチャンになってしまっても良い心境でした。 
嬉しかったのです。 
この時期になるとラジオやテレビはクリスマスの一点、街は鮮やかに飾り付けられ、世の中はすっかりクリスマス一色。 
それなのに私は、この人生に於いて、女の子にメリークリスマスなどと言ってもらった事がなかったのです。 

「メリークリスマス」 

私は精一杯冷静を装って、香保ちゃんに言葉を返したのです。 
香保ちゃんのお母さんが私に会釈し通り過ぎます。 
相変わらずトーンの下がらない眉無しの声とともに、香保ちゃん達の姿は遠ざかって行きました。

やがて先程までの賑わいが嘘だったかのように、いつもの静寂が訪れました。 
満面の笑みで方々に去って行った生徒やその父兄達に何となく取り残されたような、虚しい気分が残ります。 
私はそんな気分を振り払うかのようにフグポン警備士に言いました。 
「宮本君、彼女は?」 
フグポン警備士は一瞬ドキッとした感じになり、すぐに冷静な口調で答えます。 
「いますよ」 
(ウソつけ)

「へえ、どんな娘なんだい?」 
「え?ああ、こないだ画像見せませんでしたっけ?」 
「(あのネトアのrina?)あ、出会い系で知り合った娘?」 
「そうすよ、今付き合ってるんすよ」 
「へえ、いいねえ、昨日は平気だったの?宮本君、イブの夜に仕事したりして」 
「大変でしたよ、彼女怒って」 
「だろうね」 
「マジ今も険悪っすよ」 

こんなホラ吹き男とクリスマスイブ、クリスマスの夜を過ごし、私は香保ちゃんの『メリークリスマス』がなかったら相当に落ち込んでいたのかもしれません。

新年を迎え、私が指令室に警備報告書の提出とその他の諸用で立ち寄った時、支社長に呼ばれました。 
私は内心今でもあの体操着の件が心配で、何の用事なのか、その話が切り出されるまで不安で一杯なのでした。 
果たしてそれは思い違いで、もちろん思い違いでなくては困るのですが、思いがけない話でした。 

「高崎さん、どうですか最近?」 
「は?順調ですよ。問題もなく」 

支社長は私より少し年上でしたが、それでも私を『さん』付けで呼んでくれるのでした。

「それは良かった、ところでですね、田山君の事なんですが」 
「田山警備士が何か?」 
「彼が劇団員だっていう事は高崎さんも知ってると思うんですが」 
「ええ」 
「今年早々に地方に出ると言うんですよ」 
「巡業ってやつですか?」 
「ええ、そんな所ですかね、詳しくは分からないんですが」 
「それじゃあ長期休暇ということに?」 
「辞めるんです、田山君」 
「は?」 

急な話で驚きました。

「それで高崎さん、高崎さんには日勤の方に回ってもらおうかなと」 
「はあ、日勤ですか?」(それは願ってもない) 
「ま、拘束時間は短いし、やはり夜勤よりは楽だと思うんですがね」 
「ええ、でしょうね」 
「ただ収入はこれまでより‥」 
「構いませんよ」 
「‥」 
「やりましょう、日勤」

この際、収入だとか拘束時間だとか関係ないのです。 
あの時の三連勤のように香保ちゃんとの接点が増える日勤警備を断る理由などありません。 
まさに天から振って来た幸運です。 
夜勤に関しては私の御墨付きのフグポン警備士がリーダー。 
パートナーは当面、学校側に提出した隊員名簿の中でローテーションを組むという事になりました。 

「あーあ、これでスーパー宮本シフトも終了かあ」 

フグポン警備士はボヤいていましたが、とにかく、こうして私は1月10日をもって念願の日勤に移行したのです。

待ち焦がれたチャンス? 

想い焦がれた日勤? 

悶々とした日々が続いていました。 
日勤に移行して確かに香保ちゃんの顔を見る機会は増えたのですが、私は何か歯がゆいというか無力感というか、そんな感情に包まれていました。 
当たり前だと笑われるかもしれませんが、私と香保ちゃんの仲は一向に進展しないのです。 
朝夕、顔を合わせると挨拶をして、昼休みや体育の時間に遠めに香保ちゃんを見つけたり‥その程度。 
こんな事になるなら、いっそ夜勤の方が良かったのかもしれません。


告白? 
ラブレター? 
番号を知っているのだから電話という手段もあります。 
しかし40歳を過ぎたこのオジサンが13歳の女の子に愛を告白して成就するのでしょうか? 
するわけないのです。 
告白し、失敗し、その噂は眉無しによって全校生徒に知れ渡り、私は笑い者になるのでしょう。 
ロリコン、変態、キモい‥私の勇気を賞賛する数々の罵倒。 
考える程に私は臆病になるのです。 
そうして、このどうにもこうにも手の打ちようもない状況下で、私は一体、自分の容姿や年齢を棚に上げて香保ちゃんに何を期待しているのだろう、そんなふうに考えるようになっていました。

ある日の事でした。 
私は家に居る時、香保ちゃんに電話しました。 
そうは言っても、私は非通知で発信しているので『番号を通知してもう一度〜』などと機械の音声が聞こえるだけの、つまり繋がらないと分かっていてそうする私のくだらない遊びでした。 
しかし香保ちゃんに発信する、その行為だけで何かドキドキするような感覚を得る事が出来、このくだらない遊びは私にとって満更くだらなくもない処なのでした。 
また発信履歴の『間宮香保』の文字が連なって行く、これもまた一興なのです。 
そんな事を繰り返していた私に思わぬハプニングが発生したのです。 

「もしもし」 
「‥‥」 
「だれぇ?」 
「‥‥」 
「あれ?もしもしー?」 
「‥‥」

私は電話を切りました。 
不意の事で頭が混乱しています。 
どういうわけか、非通知設定が解除されていて本人につながってしまったのです。 

(これは、どうしたものか、よもや本当につながるなんて。 
うむ 
もう一度かけて卑猥な質問でもしてみようか? 
いや、彼氏がいるか、いないかだけ、匿名で訊いてみようか? 
それとも‥何かもっと‥) 

それから私は頭をフル回転させました。 
私は思い付くままペンを走らせメモを作ります。 
計画は綿密、用意は周到、完成したシナリオは完全でした。 
少し時間をおいた後、私はそのメモを手元に置き、ひとつ深呼吸をしてリダイアルしたのです。

「もしもし」 
「あ、間宮香保様でしょうか?」 

この計画は後に大成功をおさめる結果となったのです。 
それは私が賢すぎるのか、香保ちゃんに警戒心が足りなさ過ぎたのか。 
いずれにせよ、人を信じて疑わない香保ちゃんへの私の悪のアプローチはこの電話から始まったのです。

「もしもし」 
「あ、間宮香保様でしょうか?」 
「はい」 
「こちら、マックス生活研究社のアンケート部の佐藤と申します」 
「まっくす‥?」 
「ええ只今ですね、当社のキャンペーンで地元の中学生の方を対象にアンケートをさせていただいているのですが」 
「どうしてカホの番号知ってるんですか?」 
「はい、それはですね、協力関係機関から当社の名簿管理部の方へお知らせが参りまして、それで今、間宮さんにお繋ぎさせていただいているんですよ」 
「はぁ‥」

完璧な声色、実存しそうな社名、そして全く説明になっていない強引な言い回し。 
大人ならともかく、こんなあり得ない嘘も13歳の中学生には通用してしまうのです。 

「では、簡単な質問をさせていただき‥」 
「そーゆーの、いいです」 

いきなりのピンチでした。 
しかしここで電話を切られたら私の計画は終わってしまいます。 
私は間髪入れません。 

「ええ、それでですね、ご協力いただいた方には今話題のiPodミニを抽選でプレゼントさせていただいてるんですよ」 

「アイぽっと‥?」 
「ではではでは、ということで早速、最近買った音楽CDはなんですか?」 
勢いを落とさず、勝手に質問に入る私。

「んー‥ クリケイ」 
素直に答える香保ちゃん。 

「はい、では二つ目の質問、購読している雑誌は何ですか?」 
「んー‥ ニコラ」 

「はい、最後です、好きなタレントは誰ですか?」 
「たちばなけいた!」 
どれも知らない私。

「はい、ご協力ありがとうございます、それではですね抽選に見事当選された場合メールでお知らせしたいのですが、アドレスを教えていただけますか?」 
「アドですか?」 
「ええ、ええ、あのせっかく当選されてもアドレスがないとですね、ええ」 
「いま教えるんですか?」 
「ええ、ええ、メモしますんで私、はい、どうぞ、はい、どうぞ」 
「えっとぉ、ケイ、エー、エッチ、オー、ドット‥」 

(騙してごめんね、香保ちゃん)

【登録番号】00 
【名前】間宮香保 
【電話番号】090□□3□□5□□ 
【アドレス】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【メモ欄】未来のお嫁さん 


さらに数日後。 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】元気? 
チース!香保ちゃん 
俺の事、おぼえてるかな? 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:元気? 
ナニ〃れ? 

私は香保ちゃんにメールしてみたのです。 
そして香保ちゃんからの返信。

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:元気? 
香保ちゃん‥だよね? 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:元気? 
ヵホナニ〃け`⊂〃?ナニ〃れ? 
了├〃レス変ぇナニひ`⊂ヵゝナょぁ?

私は戸惑いました。 
計画がこんな序盤でつまずいてしまっている事に少し苛立ちました。 
私はまず文字化けしてしまっていると思ったのです。 
しかしすぐに、これがいつかテレビで報じられていた例の文字だという事に気が付いたのです。 
そうです、香保ちゃんの打っているのはギャル文字なのです。 
今どきの中学生はこんな難解な文字を使うのです。 
それが一般的なのか、香保ちゃんが少数派なのかは判りません。 
眉無しが使うのなら納得もいきますが、これは彼女の影響なのでしょうか?

私はこのギャル文字の存在をマスコミが殊大袈裟に報じた半フィクションのように思えて仕方なかったのですが、今こうしてその文字を目の前にし多少の驚きを感じています。 
いずれにしても今考えなくてはならない事はこのメールに『何が書いてあるのか』です。 
私はこのギャル文字をじっと見つめました。

ナニ〃れ? 
だれ? 

(なるほど) 

ヵホナニ〃け`⊂〃?ナニ〃れ? 
カホだけど?だれ? 

(ふむ) 

了├〃レス変ぇナニひ`⊂ヵゝナょぁ? 
アドレス変えたひとかなあ? 

(ふむふむ)

目を細めたり遠めに見たり、試行錯誤しながら少し時間はかかりましたが、何とか解読出来ました。 
香保ちゃんはこんな文字を入力して大変なのではないのでしょうか? 
予め、辞書登録でもするのでしょうか? 
それとも何か変換するツールでもあるのでしょうか? 
しかしこの面倒なこのギャル文字、完全否定は出来ないと私は解読していく作業の中で感じていました。 
可愛いのです。 
この文字の可愛いさが私には解るのです。 
(しかし良く考えるものだな) 
私は見る度にこの良く出来た文字に感心をしながら、このギャル文字に少しずつ慣れていったのでした。

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】アド変 
そうだよ、アド変したんだ (^o^)/ 
拓哉だよ、覚えてる? 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:アド変 
こ〃めω★マシ〃ぉレま〃ぇτナょレヽ★ 
`⊂〃こσ人?イ可歳? 
”ごめん。マジおぼえてない。どこの人?何歳?”

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:アド変 
確か香保ちゃんの家の近くだよ。 
歳は17。高校生だよ! 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:アド変 
高校生σ人`⊂乂→儿Uナニ覚ぇナょレヽヵゝらまちヵゞレヽヵゝ`⊂思ぅ★ 
”高校生の人とメールした覚えないからまちがいかと思う。” 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】(-_-; 
間違いじゃないよ? 
俺覚えてるもん。 
まあいいや、暇な時メールしてもいい? 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:(-_-; 
レヽレヽ∋ 
”いいよ”

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:(-_-; 
じゃあまたね! 
バイバイ (^o^)/ 

こうして高校生の『拓哉』となった私と香保ちゃんのメル友関係は始まったのです。 
以下ギャル文字表記なし 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】ばんわ♪ 
香保ちゃん今なにしてる? 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:ばんわ♪ 
今テレビみてるよ

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:ばんわ♪ 
そうなんだ。俺は部活帰り 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:ばんわ♪ 
何部?

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:Re:ばんわ♪ 
サッカー部だよ。 
一応エースなんだけどね(^o^)/ 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】エース ('-'*) 
マジで?すごいね。 
カホとこは男子いないからそうゆうの憧れるよ 
あ、画像とかある?

喰い付きました。 
サッカー部のエースストライカー。 
香保ちゃんはそんな私の文字に何の疑いもなくその興味をあらわにして来たのです。 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
?ub】あるよ 
こないだ撮ったやつ 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:あるよ 
送ってぇ

私は携帯を伏せ、パソコンで夢中になって検索しました。 
キーワード『写メ』 
掲示板みたいな、そんな場所は‥ 
ヒット! 
私はそのBBSから若くて顔の良い男の画像を選んでそれを拾い自分の携帯に転送し、 
香保ちゃんへの返信メールに添付しました。 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】自信ないけど(画付) 
どぞ

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:自信ないけど 
拓哉君かっこいいね! 
ねーね彼女とかいる? 

さらに食い付く香保ちゃん。 
サッカー部のエースでルックス良し。 
興味を示すのは当然なのでしょう。 
しかし一方で、だからと言って何の警戒もなくすり寄って来る香保ちゃんの態度が心 
配でもありました。 
『彼女とかいる?』 
いなければ何なのでしょう? 
彼女になってあげる!とでも言い出すのでしょうか?

私のメールに対し期待通りの反応を見せる香保ちゃん。 
しかしそんな香保ちゃんに失望しそうな私。 
奥床しい 
香保ちゃんにそうあって欲しいと願う気持ちと、私のシナリオが思うまま進行して行 
く楽しさ 
心の中には矛盾した二つの感情がありました。

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:自信ないけど 
彼女は今いないよ。 
最近別れたからね。 
ところで香保ちゃんの画像も欲しいな。

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】えへへ(画付) 
カホで〜す。。 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】わお 
香保ちゃんマジで可愛いね。 
俺のタイプだよ。

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:わお 
ありがとう。 
拓哉君に誉めてもらえて嬉しい。 
あ、香保でいいよ 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:わお 
じゃあ俺も拓哉でいいよ

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】('-'*) 
拓哉〜 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】(*'-') 
香保〜 

私はフーフーと鼻息を荒めながら携帯を握りしめていました。 
ラブラブ‥ 
こんな経験は生まれて初めてです。 
鼻の奥がムズかゆくなり、赤面していたようです。 
(なんか‥嬉しい)

この後、私の(いえ拓哉の)高校の話などを訊かれ始め、現在の高校生事情など全く 
知らない私はそれを今日の引き上げ時と見極め、香保ちゃんとのメールを終了したの 
でした。 

拓哉 
私ではない男‥ 
しかし拓哉と呼ばれて、香保ちゃんとこのようなメールのやりとりをしているのは紛 
れもなく私。 
この充実感と、そして虚無感。 
私はこの時、この私の心が何を感じているのか、自分で自分をどうしたいのか分から 
なくなっていたのです。


【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】 
拓哉に話したいことがある 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re: 
なに?香保

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re: 
カホのこと 
カホの年齢のこと。 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re: 
年齢がどうかしたの?

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:Re: 
カホ13才なんだよ。 
もしかして年齢ゆったら拓哉に嫌われるかなと思って 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:Re:Re: 
マジ13歳なのっ?‥なーんて。 
ほら、前にもメールした事があるって言ったじゃん。知ってたよ。 
それに画像やアドレスで大体分かるし。 
そんなことで嫌いになんかならないよ! 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】よかったぁ
ほんと? 
ガキ扱いされるのかと思った。 
でも拓哉にウソつくのいやだったし。 
でもカホなんで拓哉とメールしたの忘れちゃっただろごめんね 
(脱字有) 

From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:よかったぁ 
香保の歳がいくつだって俺はいいよ。 
嫌いになんかならないし。 
香保、好きだよ。

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:よかったぁ 
ありがとう 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】ねえ 
香保は俺の事どう思ってるの?

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:ねえ 
好きだよ ('-'*) 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【SubRe:Re:ねえ 
ありがとう (*'-')

嬉しくて涙が出そうになっていました。 
私は今、私の大好きな女の子に『好き』と言われているのです。 
これが両想い、私が私の人生に於いて初めて経験する両想い‥ 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:ねえ 
拓哉に会いたいよ

(それは無理だ、香保ちゃん‥ 
拓哉に会いに行ってもそこに拓哉はいない 
サッカー部のエースでイケメンの拓哉はいない 
代わりにブサイクなオヤジがそこにいて、それは良く知ってる君の学校の守衛で 
嗚呼、君はガッカリするんだろうね 
君の好きな拓哉が、こんなオジサンなんだから 
ガッカリか‥ 
でもなぜ? 
なぜガッカリなの? 
君は拓哉に何を期待しているの? 
『会いたいよ』 
君は拓哉と会って、どうするの?

会って‥ 
ファミレスにでも行って 
その後二人で歩いて 
そして日も暮れかけた頃に拓哉は君にキスを求める 
ファーストキス 
見知らぬ男、その日初めて顔を知った男とのキス 
君の大切なものを、そんな男に? 
君の人生の記念日を、そんな男と? 
やがて男の手は君の胸に触れ、君は震える、しかし拒まない 
不安、そして、不安を乗り越える好奇心 
男への、そして性への好奇心

やがて男の手は君のスカートの中へ、さらには下着の中へ侵入し‥ 
身体はもう子供じゃない 
そこはシットリと濡れているんだろう? 
ゆっくりと動く男の指 
恥ずかしさと、くすぐったさをじっと我慢して 
耳を真っ赤にして男の肩にしがみつくんだろう? 
そうして今までに味わった事のない(変な)気持ち‥ 
「‥ん」 
ついに君はまだ誰にも聞かせた事のない甘い吐息を発するんだ。)

「駄目だ!香保ちゃん!」 
私は事もあろうに自分が作り出した幻影『拓哉』に嫉妬していたのです。

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】ごめん 
実はね、俺、合宿中で長野に来てるんだ。 
だから無理だよ。 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:ごめん 
そうなんだ。 
でもいつか会えるかなぁ?

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:ごめん 
そうだね。いつか会おう。 

『女孑きナニ〃∋ ('-'*)』 

生まれて初めて味わった両想いは、複雑な愛のカタチでした。


拓哉の長い長い合宿生活は続きました。 
合宿が終わってしまえば、また新たな『会えない理由』を考えなくてはなりません。 
スポーツ推薦だから他の単位は必要ないとか、Jリーグの関係者が視察に来る大事な 
大会への出場が決定したため合宿が長引いているとか‥ 
私が香保ちゃんにつく嘘は日に日にエスカレートして行くのですが、そんな嘘にも香 
保ちゃんは『すごーい』などと何の疑いもなく返信して来るのでした。

そんなある日 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】 
どうしても駄目なの? 
香保、俺の事ホントは好きじゃないみたい。 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re: 
そんなことないもん

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re: 
俺の事好き? 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re: 
好きだよ

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:Re: 
俺も香保が好き。 
だから見たいんだよ。 

レスが来るまで時間がかかりました。 
怒ってしまったのでしょうか? 
悩んでいるのでしょうか? 
それとも香保ちゃんは自分のパンティにカメラを向け、今まさに‥ 
少し勝負所を間違えたかもしれない、そんな思いもあって、この時間が一層長く感じ 
られました。


【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】はい(画付き) 
誰にもみせちゃだめだょ 
拓哉とカホのひみつにして 

キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!! 

にちゃんねる風に表現するとまさにこんな感じなのでしょう。 
私は歓喜しました。

今までの私の人生で嬉しかった事‥ 
例えば、小学校の図画コンクールで入選した事 
例えば、中学校のクラスで合唱コンクールの全国大会への出場が決まった事 
もちろん先日、香保ちゃんと(変則的に)両想いになれた事‥など色々ありました。 
しかし今私の目の前にあるこの画像を手に入れた喜びは、完全に別方向へのベクトルではありましたが、その中でも格段のものでした。 
香保ちゃんのパンティ 
白いパンティ 
つま先を内側に向かせた小さなふくらはぎ 
立てられた二つの膝と、その向こうの柔らかそうな太股 
そしてその間に、くっきりと、白いパンティが三角を作っていました。

何という充実感なのでしょう! 
こんな事あり得るのでしょうか? 
いえ、あり得たのです! 
現実にこうして、私は香保ちゃんのパンティの画像を手に入れたのです。 
拾い物?違います 
ネカマ?違います 
本物の女子中学生のパンティ! 
大好きな香保ちゃんのパンティ!!

私はさらにマジマジと見つめます。 
白いパンティは、その奥にある香保ちゃんの秘密を、わずかに形取っていました。 
女の子の‥大事な部分 

「あ、香保ちゃん今、パンツ見えちゃったよ」 
「やー」 

そう言って隠そうとする香保ちゃんの手をギュッと掴み、私は唇を重ねました。 
二人のキス、長いキス 
私は香保ちゃんの手を、自分の硬直した股間に導きます。 
優しく上下してくれる小さな手 
私はぶるるっと体を震わせ、香保ちゃんのパンティの上に勢いよく射精しました。 
その夜、香保ちゃんのパンティ画像で三回もオナニーしたのです。 

(香保ちゃんごめんね、パンティ汚しちゃった‥)


天気予報によれば三月上旬の暖かさ、昼休みにこれほど多くの生徒が外に出て来ているのは初めて見ました。 
校門の傍の桜の木の下に、香保ちゃんと眉無しが腰を下ろし何か話をしています。 
私は守衛室からそんな香保ちゃんの姿をチラチラとうかがいます。 
それは言うまでもなく座っている香保ちゃんのスカートの中にパンティが見えないか、そのチャンスを伺っていたのです。 
しかしすぐに香保ちゃんはスカートの下にハーフパンツを履いている事が判りました。 
残念 
しかし夏になれば、もしかして生パンティが拝めるかもしれません。 
この仕事がいつまでも続く事を願う私なのでした。

私は携帯で香保ちゃんのパンティ画像を開きました。 
可愛いパンティ 
香保ちゃんの‥ 
携帯の画像と、目の前の香保ちゃんを交互に見つめます。 

このパンティは、あの子ので 
あの子が、このパンティを履いていて 
このパンティは、あの子ので 
あの子が、このパンティを履いていて 
このパンティは‥

(嗚呼、香保ちゃん、パンティ見えてるよ、香保ちゃん‥ 
香保ちゃん、どうして欲しいの? 
ここんとこグリグリしてあげようか? 
ねえ?香保ちゃん 
グリグリしてあげようか?香保ちゃん‥) 

突然、赤い車が視野に入って来ました。 
私は我に返り、手元の警備録に目を移します。 

『14:00 防火水槽定期点検』

来訪者でした。 
消防署の赤いワゴンは校門の開門を待っています。 

「すみません、ちょっと早く来てしまったんですけど?」 
「結構ですよ、只今お開けします」 

私はスクと立ち上がり、歩み寄って校門を開け、消防署の職員を中に入れます。 
事前の指示通り来客用の駐車場を指差し、案内しました。 
そして会釈する二人の消防署の職員を乗せた車が去り、私が敬礼する右手を下ろしたその時です!



「あー警備さんボッキしてるぅ」



そうです。 
私は勃起していたのです。 
香保ちゃんと、香保ちゃんのパンティ画像を見比べながら興奮し、勃起していたのです。 
私はとっさに我が股間を確認しました。 
何と言う事でしょう。 
そこは恥ずかしい程にハッキリと大きく尖るように盛り上がっていたのでした。 
もはやズボンのシワだとか、たわみだとか、そんなレベルではありません。 
私の陰茎はズボンの生地を内側から力強く押し上げ、その様相は誰がどう見ても『勃起』そのものでした。

「してない、してない」 
そう言いながら引きつった笑顔を見せ、慌てて守衛室に戻る私は自ら『はい勃起しています』と証明してしまうほどの動揺ぶりでした。 
私は来客記録簿に記入しながら 
「ああ、そうだ、この記録簿は本人に記録してもらうんだった、しまった、ミステイク、ミステイク」 
などとボソボソ言いながら、頭の中を落ち着かせようと必死でした。 
正面では香保ちゃんと眉無しがクスクスという感じで私の方をチラチラ見ています。 
香保ちゃんが眉無しの耳もとで何かを囁き、眉無しが「ぎゃはははっ!」と大きく一つ笑った時、全てが壊れて行くのを感じました。 

(終わりだ、終わりだ、終わりだ、終わりだ、終わりだ‥)

(香保ちゃんが、よりによって香保ちゃんが‥ 
眉無しならともかく、香保ちゃんがあんな事を言うなんて!) 

私の知っている香保ちゃんは、楚々として、奥床しくて‥ 
そんな香保ちゃんの口から『ボッキ』なんて言葉が! 
それとも今の子は皆そうなのでしょうか? 
溢れる情報、有害な情報 
テレビも雑誌もインターネットも、セックス!セックス!セックス! 
13歳の女の子だって、それが何たるか十分に理解し得る筈でした。

そして更には拓哉に対する香保ちゃんの態度、嗚呼。 

(もう明日にでもその清らかで尊い貞操を捧げてしまいそうな勢いじゃないか!) 

考えてみれば中学の保健体育の授業で『勃起』という言葉は出て来ます。 
『性的な刺激を受けると、せき髄の勃起中枢の働きにより陰茎の海綿体に〜』 
こんな授業をもキャアキャア言いながら受けるのでしょう。

好奇心>不安 

興味>躾による禁止 

性欲>理性 

快楽>羞恥心 

そうです。 
これこそが思春期の構図なのです。 


「今日元気ないっすね、高崎さん」 

フグポン警備士の言葉に力無く、疲れているからと答え、私は帰路に着きました。 
あの昼休み以後、今日は香保ちゃんの姿も眉無しの姿も見ていません。 
校門ではなく正門の方から帰ったのか、それともまだ校内に居るのか‥ 
私は二人の動向が気になって仕方ありませんでした。 
噂はもう広まっているのでしょうか? 
学校側はその事実関係の調査を始めていたりするのでしょうか? 
すでに指令室に連絡が行き、今まさに私の進退について議論されているのかもしれません。

(私はもう‥) 
駅のホームにアナウンスが流れ電車が近づきます。 
いっそ、飛び込んでしまいたい‥そんな事すら考えていたのです。 
(あっ!!) 
その時、私は対面のホームに香保ちゃんらしい女の子がいるのを発見しました。 
次の瞬間その姿は到着した電車に覆い隠され見えなくなりましたが、私は駆け出していました。 
何故そうするのか自分でもよく解らないまま階段を駈け上がり、そして下りて反対側のホームに着きます。 
遠くで香保ちゃんが電車に乗る姿が見えました。 
間違いありません、香保ちゃんです。 
そして私も一番近くの扉から同じ電車に乗ったのでした。

やがて電車は動き出しました。 
私の家とは反対方向に進む車内で、私は自分の心が高ぶって行くのを感じていました。 
(香保ちゃん、私だって男なのだよ!) 
私は車内を移動し、香保ちゃんの方へ近づいて行きます。 
香保ちゃんを発見すると、私は彼女が見える位置に身を潜めました。 
携帯を操作し、電車に揺られる香保ちゃん。 
どうやら一人のようです。 
ここで酒に酔った男が香保ちゃんに絡みでもしたら、私は『電車男』に成れたのでしょうか? 
しかし今の私は、そんなヒーローには程遠い、ただのストーカーでした。

そして私の胸ポケットからメールの着信音‥ 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】やほ 
拓哉、いまなにしてる? 

(そんなに拓哉とセックスしたいか!香保ちゃん!)

香保ちゃんを愛するが故の失望か‥ 
香保ちゃんを愛するが故の怒りか‥ 
報復、愛欲、それとも? 
私の心の中で様々な感情がグルグルと渦巻いていました。 
犯罪者が後に言う『ムシャクシャしてやった』と語るあの『ムシャクシャ』とはこんな精神状態の事なのでしょうか?

学校から五つ目くらいの駅で香保ちゃんは電車を下車しました。 
私は後を尾けます。 
改札を出て、古い商店街を抜けて行く香保ちゃん。 
歩調に合わせ、ヒラヒラと舞い上がるスカートから突き出した二の脚。 
ムシャクシャ?いや、ムラムラ? 
犯罪者は‥性犯罪者はこんな心境になるのでしょうか? 
私はオドオドし体も震えているような感覚でしたが、それ以上に私を駆り立てる何かが私の歩を進めていました。 
何も押さえ付けてレイプしようなんて思っていません。 
何も脅して何かを強要しようなんて思っていません。 
思ったところで私にはそんな事をする勇気もないのです。 
少しだけ、ほんの少しだけ、私が気持ち良くなるために協力してくれるだけでいいのです。

香保ちゃんは、あんな言葉を恥ずかしげもなく平然と口にする女の子。 
香保ちゃんは、あんな疑わしい電話アンケートに応じる女の子。 
警戒心がまるでないのです。 
所詮子供なのです。 
子供を騙したり、子供を言い包めたり、そんな事は大人にとって造作もないこと‥ 
狭い路地に入って行く香保ちゃんを追い、私は一度後ろを振り返り誰もいないのを確認すると、自分もその路地に小走りで入って行きました。

「わあぁっ!」 
私に肩を叩かれ驚いて声を上げる香保ちゃん。 

「私だよ、私」 
「あーもー、びっくりしたぁ」 
「すまないね」 
「てゆか警備さん、なんでここにいるの?」 
「近くに実家があるんだよ、今日寄ってみようと思って、そしたら商店街で君を見つけてね」 
「そうなんですか?てゆかマジびっくりしたぁ」 

敬語とタメ語が入り交じる香保ちゃん。 
間近で見るその顔はやはり可愛いのでした。


本性を覆い隠す真面目という名の鋼の鎧 
それは誘惑と理性の闘いでありました 

そして、鋼の鎧が砕ける瞬間‥

私はもう一度後ろを振り返り、人が来ていないのを確認しました、そして‥ 

「ちょ、ちょっと、あのね、いいかな?」 
「やっ!」 

私は何やら口走りながら香保ちゃんの胸をムギュッとつかみました。 
香保ちゃんは身をよじらせ背中を向けます。 
そんな香保ちゃんに私は後ろから抱きつき、さらに胸を揉みます。 
香保ちゃんの髪のいい匂いがしました。 
必死で胸をガードしようと手で押さえる香保ちゃん。 
その手首をつかみ、除けようとする私。

「んっ、んんっ」 
声にならない声を出し応戦する香保ちゃん。 
「ごめんね、ごめんね」 
何故か謝りながら行為を強いる私。 

しばらくそんな攻防が続いた中、香保ちゃんはついに泣き出したのです。 
「ぅえええぇぇん」 
それは子供の泣き声、そのものでした。

香保ちゃんの泣き声に我に返ったのか、罪悪感がこみ上げたのか、良く憶えてはいません。 
気がつくと私は路地を抜け、商店街を走り、駅の近くまで戻っていました。 
上がる息、震える膝。 
そして私は、自分のしてしまった事を十分に理解出来ていました。 

(やってしまった‥ついに‥)

思えば学校で勃起した事など取るに足りない笑い話だったのかもしれません。 
勃起など健康な男子(私は男子と呼ばれる歳ではありませんが)に起こり得るごく当たり前の生理現象です。 
せいぜい香保ちゃんと眉無しと周辺の数名の友達の中で私が笑い者になる程度だったのでしょう。 
例え職員の耳にそれが入っても、思春期の生徒の戯れくらいにしか思わないはずです。 
それを私ときたら、クレームだの、解雇だの、そこまで考えてしまっていたのですから。 
動揺していたのでしょう。 
しかしその過剰妄想が、果たしてこのような結果を生んだのです。


刑法第176条・強制わいせつ 
13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。 
13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

重い罪です。 
嫌がる香保ちゃんに抱きつき体を触った、暴行。 
そしてもし一年生の香保ちゃんが誕生日を迎えていなかった場合、12歳の香保ちゃんの合意があっても罪(条例を除き、刑法に違反するという意味で)になるという事です。 
加えて私の場合、更に事情が違ってきます。 
加害者は警備員。 
アルバイトであろうが、そのような雇用形態に拘わらず、警備員の立場には責任があるのです。

裁判に於いて、罪人の職業がその刑罰の重さを左右した判例を私は多く知っていました。 
私には既に裁判官の言葉が聞こえてくるのです。 

『被告は警備員と言う立場に有りながら、自らの欲望を満たしたいという勝手極まりない動機で少女にわいせつな行為をはたらいた。 
この事が社会的に信頼を置かれるべき警備業界全体に与える影響は軽視出来ない。 
また自分の通う学校の警備員のその手により被害を受けた少女が、心に受けた傷は大きく、また多感な時期にある少女の今後の生活に与える影響は量り知れない、よって‥云々』 

嗚呼、もう何もかも終わりです。

私は家に着きました。 
灯を消し、布団に包まって怯えていました。 
時折、バイクの音が私のアパートに近づき、いよいよ警察官が来たのではないかなどと思慮し緊張していました。 
(どうすれば、どうすれば‥) 
その時、突然電話が鳴り出しました。 
ゾワッっと背筋に悪寒が走り、心臓がまた一段と早く脈打ちます。 
(申し訳ありません‥私は‥私は‥) 
鳴り止んだ携帯を手に取り着信履歴を見ます。 
『指令室』 
来たのでしょうか? 
お告げが来たのでしょうか? 
メッセージは入っていません。

(もう駄目か‥) 
その時、携帯の画面がメール着信中のそれに変わりました。 
香保ちゃんです。 
私にメールをくれるのは香保ちゃんぐらいしか居ないのですぐに判ります。 

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】 
拓哉 (;_;) 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re: 
どうしたの、香保?

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re: 
今日チカンにあったよ (;_;) 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re: 
マジで? 
相手は誰?もう捕まったの?

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:Re: 
相手は少し知ってるひとだよ 
捕まってないよ 
だってカホ誰にもゆってないもん 

(なに?) 
まだ誰にも言ってない‥ 
光が射しました。 
私はまだ助かる見込みを残していたのです。 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】え? 
誰にも言ってないの? 
どうして?

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:え? 
なんか親とかには言いたくないし。 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:え? 
そうか、でも言わない方がいいよ。 
親以外にも先生とか警察にも。

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:え? 
どうして? 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:Re:え? 
相手は香保の知ってる人なんでしょ? 
誰かに言ったら、そいつ怒るよ? 
香保、後で何されるかわかんないよ?

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】うーん 
ぼこられるかなあ 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:うーん 
そうだよ絶対。 
絶対に人に話したら駄目だよ。 
友達にも言わない方がいいよ。 
すごい仲のいい友達にも言わない方がいい。 
絶対に言わない方がいい。 
俺、香保が心配だもん。

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:うーん 
拓哉がそうゆうなら誰にもゆわない 

【From】□□□□.tks@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:うーん 
そうだよ、誰にも言っちゃ駄目。 
俺が合宿から帰ったら何とかするから。 
マジ俺がそいつシメテやるよ。 
だからそれまで香保と俺の秘密だよ。 
絶対約束だよ。

【From】kaho.□□□□.1991@ezweb.ne.jp 
【Sub】Re:Re:Re:Re:うーん 
うん。約束する 
なんか拓哉ってかっこいーね ('-'*) 

九死に一生 
この女の子、どこまで頭が悪いのでしょう? 

(ウフフ、香保ちゃん、次はセックスでもしようか?)


香保ちゃんを襲った直後、確かに私は恐怖の中で怯えていました。 
私の名誉が失墜する恐怖。 
私への法的制裁の恐怖。 
しかしどうでしょう? 
今日まで私は平然と、何事もなかったかのように暮らしています。 
あの拓哉とのメールのやりとりで、私は香保ちゃんを完全に封じ込める事が出来たのでした。 
(もう安心だ)

私は指令室に電話を入れます。 

「高崎ですが」 
「あ、どうですか調子は?」 
「ええ、もう平気です、いつまでも休んでいられませんよ」 
「そうですか、それは良かった」 
「明日から復帰します」 
「助かります、高崎さんが居ないと、こっちはヒヤヒヤですよ」 
「いえ」 
「ま、よかったですよ、他の隊員も結構インフルエンザに〜」

あの件以来の出勤。 
私は香保ちゃんにどんな顔を見せればいいのでしょうか? 
不安、いえ。 
何かむしろ期待感のような気持ちがありました。 
私に胸を触られた香保ちゃんは、果たして私にどんな表情を見せるのでしょう? 
私に怯え、目を背けて走り去るのでしょうか? 
頬を赤らめ、恥ずかし気に会釈でもするのでしょうか? 
そんな風にさえ考えられる程に、私の気持ちは優位に立っている気がしたのです。

それには理由がありました。 
私の中で持論が生まれていたのです。 
犯罪者となり、犯罪者の視点から考える犯罪。 
そこには一つの結論がありました。

例えば車を運転して一度も違反しないドライバーが、どれ程いるでしょうか? 
駐車場所は?走行速度は? 
ひと度ハンドル握れば、その身はすぐさまルールの鎖にがんじがらめにされるのです。 
守れなければ、当然、道路交通法違反。 
他にも例えば道で千円札を拾って届けなければ、遺失物(占有離脱物)横領。 
歩きタバコは(地区により)条例違反、そのタバコを捨てれば廃棄物処理法違反(不法投棄)。 
階段を上がるミニスカートの女性の下着を覗き込めば迷惑防止条例違反、逆にスカートの丈が短すぎて故意なく見えてしまう状態なら女性の方に公然わいせつ罪。 
それだけではありません。 
年金は?NHK受信料は? 
決められた日の朝に出されないゴミは?

条例、法律に拘わらず、世の中の有りとあらゆるルールと名の付くものに違反しない事など、奇跡に近い逆ハプニングなのです。 
法律遵守というユートピアに向かって地雷原を丸腰で歩いているようなものです。 
知りませんでしたで、ドカン 
ついうっかりで、ドカン 
つまり今回、私が香保ちゃんにした行為などは取るに足らん日常的に方々で起きている事で、それは誰もが罪悪感もないままに犯している上記の『ルール違反』と相違ないのです。 
犯罪は検挙されて初めて犯罪と成り、その犯罪を、検挙されていないだけの罪人がやれケシカランと喚いている、ただそれだけの事です。 
そうです、誰が私を責められましょう?

罪人に石を投げ付ける民衆にイエス・キリストは言いました。 
「あなた方の中で自分は今までにどんなに微々たる罪をも犯した事がないと神に誓って言える者が居るならば、このまま彼に石を投げ続けるが良い」 
そうすると民衆は静まり帰り、やがて方々に散って行ったのです。 
そしてイエス自身も最後にこう付け加えたのでした。 
「私も投げられない」 
いつかチャペルの神父から聞いた話‥良い話ではありませんか。 

『彼も罪人、そして私もまた』 

この言葉に込められた真意が、私の結論なのでした。

このようにして心に落ち着きと自信を取り戻した私はすっかり立ち直ったのです。 
平静を取り戻すほどに沸き上がる記憶と興奮。 
香保ちゃんの感触。 
私はこの手で感じた香保ちゃんの手触りを反芻していました。 
それは未だ発展途上のそれらしく、手のひらに収まるサイズ。 
それは制服の上から確かに捕らえた感覚。 
たわむブラジャーの中でぷるんと柔らかかった香保ちゃんの胸。 
下半身に感じた香保ちゃんオシリの弾力、そして香保ちゃんの髮の香り。

香保ちゃんの‥ 

ぬくもり‥ 

おっぱい‥ 

「ああ、香保ちゃんっ!」 

私は自慰の始末を終えると、久々の出勤を控えた明日の為に眠りについたのです。 

「あ、高崎さんじゃないっすか!」 
「やあ、宮本君ひさしぶり」 
「もう平気っスか?インフルエンザ」 
「まあね、すまんね、いろいろ」 

昼間の警備はフグポン警備士が私の代理をしていた事は聞いていました。

「でも高崎さん、いいっすねー日勤も」 
「何がだい?」 

ドキリとしました。 
フグポン警備士は私の居ない間に何か良い思いでもしたのでしょうか? 
それが何に対する嫉妬なのか、とにかく私にとってフグポン警備士が良い思いをする事は不快のようです。

「いや、生徒多いし、巡回とか、あは」 

何か胸騒ぎがします。 
いつになく上機嫌なフグポン警備士。 
それ以上、私がフグポン警備士を問いつめる事はありませんでしたが、内心私は気になって仕方がありませんでした。 
(何があったんだ?フグポン!)

昼間の巡回は私が休んでいる間に増えた仕事です。 

8.追記 
 日勤の巡回警備は来訪者の予定がない時間に限り、任意で行う 

この『任意』という言葉の解釈が解らず指令室に訊ねたところ『時間が空いていれば巡回してくれても良い、あくまで任意』とのことでした。 
つまり守衛室に一日張り付いている必要もないが、守衛室にいつも居ないのでは困る、と言う事なのでしょうか? 
指令室に訊く前にフグポン警備士に訊ねたところ『テキトーすよ、散歩、散歩』と相変わらずの返答。 
確かにそうなのかもしれません。 
私はどうも深く考え過ぎるようです。 
それが真面目と言われてしまう由縁なのでしょうか? 
そう思い、私もフグポン警備士同様、この昼間の巡回を散歩程度に考える事にしたのです。 
(そうだな、気楽に行こう)

挨拶をしてくれながら通り過ぎて行く生徒達。 
中には私がインフルエンザ(にかかったという嘘)で休んでいた事を知っている生徒も居て、そのような気遣いの言葉をかけてくれる子もいました。 
なるほど、おそらくフグポン警備士が上機嫌だったのは、こういう生徒との会話を持てたからだったのでしょう。 
いつもの警備員さんが休みなのは何故かとの生徒の問に答えるフグポン警備士。 
なんだ、生徒達の興味はフグポン警備士ではなく私にあるのではないか。 
そんな都合の良い発想などをして私は安心していたのでした。

しばらくして香保ちゃんが登場しました。 
私を上目遣いで一見し、走り去ります。 

(うふふ、香保ちゃん、恥ずかしいのかな? 
そうだよね、私は香保ちゃんの胸を触ったのだから。 
香保ちゃんのおっぱいを知っているのは私だけなのだから。 
おはよ、香保ちゃん‥) 

私はその香保ちゃんの態度を見て、あの一見が表沙汰になる事は完全になくなったと確信しました。 
そうして私の久々の勤務は鼻唄まじりに再開されたのです。 

「あんな体験、普通出来ないよなあ」 

私はつぶやきました。 
守衛室の椅子にもたれながら、窓から射し込む眩しい午後の陽射しに暖められて、気分は上々です。 
世の中の男が持つ好きな女の子の身体に触れたいという当たり前の願望は、なかなか叶う事ははないはずです。 
例えば会社に好みの女子社員が居ても、すでに恋人がいたりとか。 
例えば道行く女の子が自分の好みであっても、その胸に触れる事など出来ないでしょう。 
私は幸せでした。 
強引ではありましたが、私は私の望みのひとつを叶えたのですから。

そしてそれは更なる発展の可能性を秘めていました。 
相手は香保ちゃんです。 
後ろから抱きすくめられ身体を触られても誰にも言えない女の子なのです。 
私はあるいは本当にセックスできるかもしれないと思い始めていました。 
強引に持ち込んで拓哉により封印するか。 
拓哉を利用して私とのセックスをそそのかすか。 
普通では絶対に通用しないような手段が、意外にも通用してしまいそうに思えるのです。 
あるいはお金で簡単に身を捧げてくれるかもしれません。 

(これはいよいよ本当に香保ちゃんと‥) 

私は意味もなく拳を握り胸の前で小さく力んでみました。

これは恋? 
そうです恋なのです。 
一般的で支配的な、法律や教育などのつまらない概念に基づいて生まれた発想から言えば、これは変質者の犯行計画に過ぎないのかもしれません。 
しかし私はもっともプリミテブな観点から物事を考えた時、私の想いは実に純粋でそれが人間を構成する精神の根本であるように思えるのです。 
悟り? 
そんな大袈裟なものではないのかもしれませんが、間違いなく私の精神は平凡な人間のそれとはひとつ上の境地にあると自負していました。 
幸せでした。 
幸せを感じていました。

私はこの幸せを誰かに話したくて仕方がありませんでした。 
フグポン警備士に? 
いえ無理です。 

(そうだ!) 

私は以前から時々閲覧しているインターネットの掲示板『にちゃんねる』に書き込もうと考えたのです。

その日の勤務を終え、小躍りする気持ちを押さえつつ帰宅し早速パソコンを立ち上げます。 
そして私は適当なスレッドを探し始めました。 

援交が止められないPart2 
http://love3.2ch.net/test/read.cgi/kageki/1105373094/l50

ここでは見切り発射が過ぎるのでしょうか? 

誰か真面目に聞いて! 恋とか色んなお悩み相談 7 
http://love3.2ch.net/test/read.cgi/kageki/1105890574/l50

相談というか、ノロケになってしまいそうです。 
第一変態オヤジの不真面目な相談を真面目に聞いてもらえるはずがありません。 
結局、適当なスレッドが見つからず、私は自分で立ててみる事にしたのです。

様々なモチーフを造り出す私。 


【ヤター】ホントに現役中学生とヤッタ俺【ヤター】 

1 :高崎 ◆HotPink0gc :05/01/30 01:54:35 ID:gngG0eP90 
どうよ? 


イマイチです。 
馬鹿っぽすぎる気がしました。


【リア厨】女子中学生とエッチ【マンセー】 

1 :高崎 ◆HotPink0gc :05/01/30 01:54:35 ID:gngG0eP90 
告白します 

いかにも荒れそうです。


私は考え込んだ末、スレッドの主旨と運営の方向性を決定しました。 

1.あくまでも手記である事 
2.その手記によってのみ私の境遇を報告する事 
3.住人とは馴れ合わない事

この三つに共通して言える意図がありました。 
『素性を明かさない』 
これにつきます。 
高ぶる気持ちから軽率なレスをして、素性が知れ、事件の発覚、やがては逮捕。 
そんな結末だけは避けたいと願っていました。 
手記であればフィクション小説と言う解釈も出来るでしょう。 
馴れ合わなければ私の素性公開は私の定める範囲までの安全圏に留める事が出来ます。 
そして更に念のため当初予定していた『過激な恋愛板』からピンクちゃんねる『えっちねたロビー』にスレッドの場所を変更したのも『ネタですから』という最後の逃げ道を確保するためでした。

果たして2005年1月30日、私のスレッドは立ち上がったのです。 

【女子中学】あー警備さんボッキしてるぅ【守衛業務】 

1 :高崎 ◆HotPink0gc :05/01/30 01:54:35 ID:gngG0eP90 

あるいは暴走する自分を止めて欲しいと願う気持ちからなのか 
あるいはこの幸せな境遇を人に知らしめたいだけなのか 
その真意は私の心の深層に










<出典>
【女子中学】あー警備さんボッキしてるぅ【守衛業務】
http://sakura01.bbspink.com/test/read.cgi/hneta/1107017675/
【女子中学】警備さんボッキしてるぅ 2【守衛業務】
http://sakura01.bbspink.com/test/read.cgi/hneta/1109307470/
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