ありがとうという口癖 (その他) 63913回

2010/06/15 17:23┃登録者:B◆.mNmMeyA┃作者:チャモ
病院で働いている人の話のだけど
仮にAとする
Aはのほほんとした性格で、厳しいことも多い病院では悩むことが多かった
仕事が遅いので、上司や、他の部署の人に怒られることが多い
いつの間にか「すみません」が口癖になって
病院で働くのは向いてないかもと、求人募集の雑誌を開くこともあった

ある日、衰弱してしまって動けなくなった80過ぎの男性が呼吸苦がでて
救急車で運ばれてきた
食べるものはあったけれど、病院に通うお金がなくて
休んでいたらどんどん悪化したらしく、酷い肺炎だった
もちろん即入院と決まった

お付き添いは奥さん
といってももちろん高齢で、80歳くらい
着物をきっちりと着ていて
サザエさんの船さんをもっと歳とらせた感じの上品な人

杖を使って歩くのがやっとの方なんだけど、
救急車を呼んだときに気が動転してしまって
杖を忘れてきてしまったとのことだった

家は遠方にあって
(都会ではたらいまわしなんて当たり前になってしまったから、
どうしても病院は遠くなるケースが多い。
実はこの人も十件近く断られて来た)

7階建ての市営住宅の一室、上の階ね
杖がなければ上れない
病院へ行く金がないくらいだ
タクシーや介護タクシーを利用するお金なんてなかった
生活保護の方だから普段は役所がなんとかしてくれるんだけど、
もう深夜2時過ぎ 役所あいてない

困った様子で
「歩いて帰りますので、申し訳ないのですが、
杖を忘れてしまったので、傘を貸して下さい」
といった

深夜二時過ぎの都会
真っ暗闇を、普段杖でやっとの人が
80越えた人が
歩いて帰るという

Aは危ないと思い、病院のスタッフに相談した
話し合い、病院の車を使ってAが送ることとなった

市営住宅に向かう間、
奥さんは感謝しながら
今までの事を話した

一生懸命だんなさんと働いてきたこと
子供に恵まれなかったけど頑張ったこと
奥さんも実は体が弱いこと
医療費が重なり、市営住宅に引っ越しをせざる終えなかったこと
年金は手違いがあって、貰えず
生活保護を貰っていると
有難いと

やがて市営住宅についた
市営住宅にはエレベーターがなくて
やったら急なコンクリの階段だけ
しかも部屋4階
Aは奥さんが落ちないように背中側に回って
ゆっくり上った
階段は長くて、Aはまだ二十そこそこなんだけど、
その間、
「神様がみてくださる」
「頑張ろう」
そう、奥さんは呟いていたそうだ
Aも心の中で同じように、呟いた

やっと部屋に入ると、
がらんとした部屋に仏壇とせんべい布団が二枚敷いてあった
奥さんはまた感謝をのべて
Aに部屋にあったお菓子をくれようとしたけど、
Aは病院職員だったし、それを断った
かわりに病院の電話番号を書いたメモを渡して、
「困ったらすぐに来て下さい」といって帰った
奥さんはAが帰る間ずっと
「ありがとう」といっていた

病院の仕事が向いてないなと悩むことが多かったAだが
それでも、その夜から、人の役に立ちたいと強く思うようになり
辛くなった時は、
「神様がみてくださる」
「頑張ろう」
「ありがとう」
奥さんから頂いた言葉を思い出し、自分を奮い立たせている
今でも病院でなんとか働いている

今のAの口癖は「すみません」と「ありがとう」だ

出典:オリジナル
リンク:ちなみに旦那さんは奇跡的に回復し退院した
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