誰にでも嫌いな音があると思う。 例えば黒板を引っかく音。ヘッドホンの音漏れ。クチャクチャと咀嚼する音。蚊の羽音。 自分の場合の苦手な音は「鼻声」だった。 小学生の頃にアレルギー性鼻炎の同級生が居たのだけれど、性格云々を知る前に声の時点で苦手になってしまった。 あからさまに避けていたと思う。今から思うと申し訳ない。 それから中学高校大学と、鼻声の人と関わる機会がなかった。 それを、自分が鼻声嫌いを克服したかのように錯覚してしまっていた。 ワサビ、ピーマン、セロリなど、嫌いだった食べ物を次々に克服できたのがその時期だったのだ。 努力したわけではない。時を経て、ふと食べてみると美味しかった。 だから、大人になると不思議と嫌いなものが無くなるのだと勘違いした。 今、隣の席の同僚が蓄膿症だ。 総務が注文したものでなく自腹で買っているらしい特殊な高級ティッシュを、すごい勢いで消費している。 ズルズルと鼻をかむ音。話しかけられる鼻声。 その人が悪いわけではないのだ。どうしようもない。自分が蓄膿症で、人から差別されたり嫌われたらどんな気持ちがするか。 顔に出してはいけない。笑顔で応える。 生理的嫌悪感を顔に出さないのはマナーであり、社会人の義務だ。 空腹時に激痛が走るようになって病院に行った。胃潰瘍だった。 出典: リンク: |
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