「まだチャンスはあるよ・・・」 (その他) 64628回

2011/02/04 15:32┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
高校のころイジメにあっていた俺はやっぱりというか
ちょっと暗い感じで女子とは当然距離を置かれてる存在で
漫画とかアニメとか大好きで一人で部屋にいたりするのが
凄く快適。そしてそれが当たり前のような生活をしていた。
別に外に出るのがイヤな訳ではなくただ単に居場所が欲しかった
だけだった。

10人くらいのグループで虐められてて、ボスクラスが4人。
後は金魚の糞みたいに虐めないと自分も虐められるという人が殆ど。
ボスクラスというのはカップルなんだけど、地元ではそれなり?に
悪さしてる奴らで美人局して恐喝容疑で警察に事情聴取されたり
そんな奴らだった。男はゴリラみたいな顔の小太り。
女は今で言うデビュー当時の木下優樹菜に似ていて
こんな事しなければ可愛いのにとは心の片隅では思っていた。

後の2人は兄弟で太郎次郎みたいにいつもつるんでて
シンナーとかバイクの話、女とやった話しかしない頭カラッポな奴ら。
高校一年から始まったイジメは主にトイレで行われてて
弁当は毎日トイレに捨てられてた。歯向かえば便器に頭突っ込まされ
水を飲まされる始末。自分でも悔しい思いで唇から血が出るほど
食いしばった記憶がある。

だんだんとエスカレートしてきて、裸で女子更衣室のロッカーに
猿轡と手枷足枷されて押し込まれ、そこへ木下がわざとらしくあけて
「わぁ〜変態!」とか騒ぎ出す。
当然俺の周りには友達なんて居なかった。
みんな次は自分かもしれないからと恐れてるし、それは当然で
仕方がない事だと知っていたし、あんまり傷つきもしなかった。

職員室で誰にやられたんだ!と聞かれるが殆どの教職員は知ってるはず
知らないのは校長くらいでみんな見てみぬふり。
俺は親にも言えなかったし共働きでそもそも家にあまり居なかった。
ある日校舎裏に来いよと連れて行かれて殴る蹴るされた後
全裸で校舎裏の倉庫に閉じ込められた。だんだんと外が暗くなり
そしてだんだんと学校が静けさを帯びて人声もしなくなってくる。

ドンドン、ドンドン、叩いても誰も来ない。
倉庫内の電気のスイッチを手探りでようやく探し出し
体育マットの間に挟まって寝た。なんだかマットが自分の鎧のように
なってくれる変な錯覚になり重たさやガサガサ感も気にせず寝た記憶がある。

そして一時間位してだろうか、誰かがドアを開けてくれた。
そこには先生ではなく同学年の女のグループだった。
開口一番「なにしてんの?」と言われた。
当然「その辺に俺の服落ちていない?」と聞くと
「ここにあるけど・・・」とズボンとシャツを取ってくれた。

「ごめん、一回出て。今パンツ履いてないんだ」
というと嫌悪感丸出しの顔で「今日も虐められたの?」
「う、うん」
それが彼女との出会いだった。見かけたことはあるけど
話したのは初めてだった。

身支度を整えて彼女が「なんで?どうして?」とかしきりに聞いてくる。
当然「先生には言ったの?」と聞いてくるが曖昧な返事だったんだと思う。
そのまま変な流れで一緒に校門の方へ歩き出し途中まで一緒に帰った。
ちょっと相武紗季に似た可愛いらしい子だった。
馬鹿な話で簡単に恋してしまって、報われる訳ないしキモイ扱いされる
だろうと判っていながらも夜は考えずに居られなかった。

夏が過ぎ、二年生になるころイジメはさらにエスカレート。
顔は大丈夫なんだけど、あばら骨が2本折れてた。
通院しても結局また折られる。なら病院なんて行かなけりゃいい。
そんな考えだったが、体育の時間にゴリラに後ろから蹴り飛ばされ
意識がとんだ。気がつくと病院で何故かサキ似の子(サキとしますね)
が隣に居た。彼女は隣のクラスの保険委員。授業は二組合同。
先生に指名され先生の車で病院へ。そして今先生は親を迎えに行ってると聞いた。

退院するまで一日おき位サキが来ていた。
母親からは「彼女なの?」なんて聞かれて俺のほうは「ちがうよ!」
なんて答えて、彼女も「ち、ちがいます!保険委員なんです」と答えた。
毎日が嬉しくて、好きという気持ち伝えられなくてモジモジしていた。

でも退院してしまえばまたイジメが始まる。
先生がやっと今回の件で目を光らせる様になって少しはマシだが
今度は放課後の帰り道や校門出た後に捕まる。
公園の公衆便所でまた殴る蹴る。ゴリラと木下の時もあれば
太郎次郎の時、4人の時。毎日が地獄の様な日々だった。

ボサボサの頭をダサい格好。
恋をしたからかちょっと変わらなきゃ!と自分でも思い始め
床屋に行き思いっきりカット!洋服も安物屋だけどそこの店員の
お姉さんにいろいろ選んでもらい小遣い無くなるまで買いまくった。
ある日、校門の出口でふとサキに出会った。むこうはこっちの
変わりようにびっくりしてたが「治ったの?もう大丈夫なの?」と
健気に聞いてくれて嬉しかった。けれどそういう行為が木下に
見つかってしまい、女子いじめの対象がサキに移っていった。

今度は自分が見て見ぬふりする番なのか・・・
そう思うと高校生ながら自分に対する怒りや矛盾がぐるぐると
してしまい手が震える程だった。
二年の終わり。携帯電話を始めて購入した。
親の方針でなかなか買っては貰えなかったが
小遣い貯めて初めて購入。クラスでは一番遅い方だったと思う。

さらにサキともあんまり会わなくなった。
すれ違い様に「よっ!」と声をかけてくれるが
もう一緒に帰ることはなかった。
たぶん虐められるからだろう、よそよそしかった。
でもそれを責めたりは出来ない。自分も同罪だから。

寒い冬の日。
近所の神社でお祭りがあった。
たまたま母親の車で通りかかった際にサキが一人で
タコ焼き屋の前に居た。母親に止めて!といい先に降り
サキのもとへ走る。「やぁ」と声をかけた。
向こうはタコ焼きを頬張りながらビックリした顔して
なんかもごもご言い出した。「落ち着いてw」と笑うと
向こうも頷きながらニコッとしてくれた。

久しぶりに2人で歩いた。そして確信に触れた。
やっぱり木下に俺と話してるところ次に見たらアンタ虐めると
言われていた。彼女の提案は学校じゃ素っ気無いけど
またお祭りあったら行こうね。と言ってくれた。
電話番号とメールアドレスを始めて交換した。
「私達交換するの遅くない?」とまた笑顔を見せた。

夜。凄いトキメキながらメールしてた。
早く返信来ないかな…別に付き合ってる訳じゃないから
返信なんてあんまり期待してはいけないんだけれども
着信音が鳴るたびに飛び付いてた記憶がある。

サキとしばらくメールしているうちに、彼女は
何故俺が仕返ししないのか?としつこく聞いてくる。
復讐してもあんまり意味がない、と言っても
やられ損だよ。とか悔しくないの?とか。

実際やられ損だし、悔しくないのかと言われれば悔しい。
倍にして仕返ししたい。復讐したい。でも俺じゃ無理。
男らしくないと言われればそれまでだが
実際またやり返されるのが怖かった。

サキは寝る前のメールで

「まだチャンスはあるよ・・・」

とだけメールしてきた。
俺はバカだがこの最後のメールで変われたんだと思う。
歯向かってみよう。そう決めた。

でも上手くはいかない。
四人から八人かかりで笑いながらボコボコされてるのに
どうやって復讐するというのか思いつかない。
よく「一番強い奴を狙って、一人狙いでいけ!」なんて
書いてあるが、なかなか容易じゃない。
でもそれが一番効果的なんじゃないか?とも思っていた。

決行日なんて決めていない。
ただ成り行きまかせの復讐劇。上手く行くはずなんてない。
でもサキのメールの言葉がいつも頭の中にある。

そんな日はそれから二ヵ月後。冷たい雨の日に起こった。
偶然+偶然=奇跡としか言いようのない瞬間だった。
サキの弟の誕生日プレゼントを男の俺の目で選んで欲しいという
名目で初めてデートした。
デートと言ってもキスする訳でも手を繋ぐわけでもなく
店に行って選んで、お茶してバイバイみたいなルート。

お茶を済ませてファミレス店を出る。
すると向こうから歩いてくるカップルがゴリラと木下だった。
向こうはこちらを発見するとニタニタしながら近寄る。
「金ねぇんだよwww貸してくれよwww」
当然ない。イヤ。と告げると
「ちょっとこっちこいよ」と裏へ連れて行かれる。

木下はサキに「金かしてくんね?w」と笑いながら脅してる。
もうこのチャンスしかない。ズルでも卑怯でも武器でもなんでもいい
こいつをコテンパンにしなくては!という思いしかない。
ボディに一発食らう。痛い。ゲロが出そうな感じで咳き込む。
なかなか立ち上がれない。「はやく金出せよww」
手足がすくんで反撃すら思いとどまる。

すると後ろから「ちょっとイヤ!やめてよ!」
「うるせーな!バッグ貸してみろよ!」と揉め始めた。
木下がサキを突き飛ばす。
サキが垣根みたいな所へ飛ばされゴロンと突っ伏した。

その時。何かがキレたんだと思う。

あれは体験した人じゃないと判らないと思うけれど
ブチッと言うような音が実際頭の中で鳴るというか感じる。

叫ぶのが先か、走るのが先か判らない。
立ち上がり木下の居るほうへ走りより止まらずにそのまま木下に
体当たりし髪の毛を引っ張りながら垣根の中に何度も差し入れる。
止めて、とかゴメン、だからやめて!と聞こえるがお構いなし。
聞こえてても身体が止まらない。

手を見ると木下の髪の毛が手にまとわりついてる。
でもお構いなしで今度はゴリラにそのまま体当たりする。
仰向けに倒れたところに馬乗りになり・・・そこから覚えていない。

気がつくと周りは赤色灯だらけだった。右腕にはサキがギュッと
しがみ付き手を握っていてくれた。血だらけのシャツに引っかき傷。
木下が苦し紛れに引っかいた傷は肉までえぐれていた。
そしてその傷の一つには木下のであろう爪が刺さったまま残ってる。

ゴリラは仰向けでストレッチャーで運ばれる所で
木下は救急の人だろうか?毛布で肩を抱かれて救急車に乗る所だった。
「あれ?」不自然にも発した第一声は今でも覚えている。
警官らしき人が俺を立たせてくれて後は署で聞くから。とサキと俺を離した。
サキは俺をじっと見つめ涙を流しながら頷いて、その後少し笑った。

連れて行かれ家族を呼ばれ事情を聞かれる。覚えてない。
こうなる経緯は話せるんだけど、思い出せない。
残念ながら学校は退学になった。暴力事件と認定された。
仕方ない事だとは思っていたけどサキとも会えないのは寂しい限りだった。
木下は鼻が潰れてたと聞いた。垣根の枝で何針が縫ったらしいが知ったことではない。
ゴリラは一時は一命をどうのこうのと言われていた時期があったが
鼻を骨折し口の中をだいぶ縫ったらしいがどうでもいい。
悪いとは思ったけれど、人のそういう心の闇みたいのは恐ろしい
その悪いと思った事すら正当化してしまう。

家に太郎次郎が来たが、話してるうちに「許してやるから」と
訳がわからない事を言い出し家から去っていった。
その後何年も経つけれど次郎はバイク事故で、太郎は自動車事故で
命を失った事を後から知った。

卒業までサキと一緒に居たかったけれど
残念ながらサキはこの件で俺と会ったりすることを親から厳しく
制限されてしまい、うちの親にも向こう両親が厳しく言いに来た。

卒業近い春の日。
見知らぬメールアドレスからメールが届く。

「まだチャンスはあるよ・・・」

すぐにサキだと判った。
公園で待ち合わせして、久しぶりに会った。
馬鹿なことして!とやんわりと怒られ、でもうれしいと喜ばれ
私達付き合ってないよね?とほんのり告白を催促され
また会えたよ!と泣きべそかかれ
付き合ってください。とお願いして、涙顔でいいよ。と言われた夜。

初めてキスした。いい匂いがしてリップクリームのちょっと
ベトって感じの男には馴れない感覚。抱きしめてもう一度キスした。

出会った時から好きでした。と言われて照れくさくて
これから親とかに内緒にするのかどうか悩んだり考えながら。
UFOキャッチャーでおそろいの縫いぐるみを取り
公園の道を手を繋いで仲良く歩く夜。

卒業して、サキは大学へ。
俺は高校ぐらいは・・・と思い夜間高校へ。
めげずにもう虐められることなくみんなとわいわい騒げる自分が居た。
楽しかった。世界が変わった。いままで一人部屋に居て
何を大事にしてきたんだろう?と思える程だった。

親には卒業してからバレた。サキの両親にもばれた。
で、駆け落ちしよう!という所までいったけれど
むこうの親父は絶対に俺に手を上げなかった。
根気強く毎日挨拶に行った。特に嫌がられる訳でもなくなるまで
半年かかった。当然だと思う。キれて何するか判らない奴を
自分の娘の彼氏になんて普通の親が考えたら絶対ダメだ。

ある日「もう来なくていい」と言われた。
奥から母親が出てきて「いいのよ。もう大丈夫よ」と肩をそっと叩いた。
自然と涙が出た。深々とお辞儀をしたその地面にいくつもの水滴が落ちてゆく。

自分がすべて正義ではないし、まっとうだとは思っていない。
殴り倒したりしたことは暴力だし、評価される事ではないと思っている。

でも好きな人位は守れるようになりたい。
今でもそれは変わらない。
共に歩んでいくサキを守れるようになりたい。

出典:なげーよ!
リンク:2chじゃない
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