続々々 中1の妹に援助交際を申し込まれた (ジャンル未設定) 39291回

2011/05/01 00:56┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
眼球の奥を圧迫されるような刺激に 俺は顔をそむける 
少しずつ目を開けると 全ての輪郭がぼやけた世界が広がっている 
二度 三度の瞬きで 見慣れた妹の部屋が 戻ってきた 

兄「……ん…あれ…」 

身体を伸ばす 心地よい疲労感が残っている 
先に起きたのか 右腕に温もりだけを残して 妹は居なくなっていた 
時計は午前を差している 窓の外は 爽やかな青と白で満ちていた 


兄「…服……」 

俺は朝のぴんと張った空気に触れて まだ裸で居る事に気がついた 
シンプルなピンク色の布団をめくって 服を探す 
そこかしこに出来た染みが 昨夜が夢でない事を俺に教えてくれた 
妹の服はもう無い 俺の服も 見当たらない 

兄「おかしいな……」 

寝ぼけた頭を掻きながら辺りを見回すと 机の上に 綺麗にたたまれた服を見つけた 
あの妹が こんな細かな気遣いが出来るとは 今まで気付かなかった 
少しにやけた顔をぱんと叩いて 俺はベッドから立ち上がった 




下着とTシャツだけを身につけて 階段を降りる 
すると洗面所から聞こえる水音 たぶん 妹だろう 
俺は足音を立てないように こっそりと音の方に向かう 

妹「んーんー…んー…」 

他よりもトーンの明るい色の洗面所  
妹は 部屋着代わりの大きなTシャツだけを着て 顔を洗っていた 
軽快な鼻歌は 機嫌のいいサイン 

兄「……」 

妹はヘアバンドで髪をまとめて ばしゃばしゃと顔を濯ぐ 
その姿に 俺はまた愛おしさが込み上げてくるのを感じる 
水に濡れた目をつぶったまま タオルで顔を拭う妹の背中を 俺は思わず抱きしめていた 

妹「…っ!!びっくりしたぁ……」 

妹は声に鳴らない悲鳴をあげて 
手に持ったタオルをぎゅっと握りしめながら 身体を強張らせた 

兄「……おはよ」 

さらさらとした髪に額をあてる なんだかまともに顔を見れない 

妹「おにぃ……おそいよ、おはよ」 

肩に回した腕に頬を当てながら くすりと笑う 

妹「……どうしたの?」 

兄「いや…なんか、顔見れない」 

妹「……もー…」 

腕の中でこっちに向き直る妹 
きょろきょろとよく動く瞳が 可愛らしい 

妹「……あたしだって、なんか照れくさいよ」 

まだ少し水滴の残る額に 俺はキスをした 

妹「あー…。おはようの…ってやつ?」 

顔を見上げながらくすくすと笑う妹は 俺の唇にそっとキスをした 
ふわりと香るミントの匂い こんな幸せな時間が 永遠に続けばいいのに 


妹「顔、洗いなよ。あたし、朝ごはん作るね」 

兄「ん…お前、身体大丈夫か?熱とか…」 

妹「大丈夫!おにぃのせいでいっぱい汗かいたから…治った」 

そう言うと もう一度強く 俺に抱きつく 
こういうのを きゅんとする というんだろうか 胸が締め付けられる 

兄「なんかごめん……。なんか、今日は可愛いな」 

妹「え……ばかぁ…早く顔洗え…」 

俺の腕をするりと抜けだし 洗面所を出ていく妹 
腕に残る水滴と温もりに幸せを感じながら 歯ブラシを取りだす 
冷たい水が 心地いい 
背後で音がする 妹が突然戻ってきた 俺は歯を磨きながら振り返る 

兄「……んー?」 

妹「今日は!……甘える日!!大好き!」 

唐突に叫ぶと また 走り去る 
やっぱり熱があるんじゃないか 妹の顔は 真っ赤だった 

妹「……おいしい?」 

ハムエッグ 味噌汁 お漬物に 白いご飯 どう見ても朝食だ 
湯気を立てる味噌汁を啜る俺を 妹が不安そうな目で見つめている 

兄「……どっちだと思う?」 

妹「もー…!」 

眉間にしわを寄せて怒る妹 
そういう仕草がいちいち可愛くて つい悪戯してしまう 

兄「おいしいよ。料理、上手くなったな」 

妹「ほんとに?ほんと?」 

兄「嘘ついたって、ためになんないだろ」 

満面の笑みで喜ぶ姿に 何故か俺まで嬉しくなる 

妹「頑張って練習したんだよ、この日のために!」 

兄「ほんとかよ」 

妹「それは嘘だけどね」 

二人きりの食卓は 暖かい笑顔で包まれていた 


和やかな食事を終え 二人で片付けを済ませると 
俺達はソファーに腰かけた あのソファーに 
妹はちゃっかりと俺の足の間に座り テレビを眺めている 

兄「……お前、風呂はいった?」 

妹「え?やっぱり汗臭い…かな」 

兄「……俺もな」 

妹の髪は昨日にも増して汗の匂いがする 
その匂いにさえ愛おしさを感じる俺は 馬鹿なのだろうか 

兄「起きてから入ってると思った」 

妹「入りたかったけど……だって…」 

兄「だって?」 

妹「おにぃと……入りたかったから…」 

兄「……今日は甘える日だもんな。ほら、服とっておいで。俺の適当に頼む」 

妹「…うん!」 

跳ねるようにニ階へと上がっていく妹の後ろ姿 
今日は 今日だけは 


どうしよう どうしよう 顔が 変 

妹「おにぃの服…。これでいいか」 

兄の服 兄の下着 兄の部屋の香り 
そしてこれから二人で入るお風呂 
あたしのから笑みが消えない どうしよう 

兄「先入るぞー」 

下から兄の声がする どんどん心臓が早くなってくる 

妹「ま、待って!今おりるから!」 

服をまとめて 急いで階段を降りる 
緊張のせいか足がもつれて 転びそうになる 
階段の途中に兄の服を落としてしまう 

妹「あー…もう…っ!」 

拾い上げると兄の香りがして また顔がほころぶ 
駄目だ あたし 今日はおかしい 


水音 すりガラス越しに見える兄のシルエット 
兄と入るお風呂は 初めてじゃないのに こんなにも緊張するなんて 
鏡の前で裸になる この小さな乳房を 兄の細い指が 
そして ここに 兄が入ってきていたなんて 

妹「……はぁ…」 

胸に手を当て 深呼吸してから あたしは扉に手をかけた 

妹「お、おにー…はいるよー」 

兄「おー」 

響く声 開いた扉から白く湿った湯気が素肌を濡らす 
後ろでで扉を閉める ぽたぽたと水の滴る愛しい人が居た 


妹「お、おっす…」 

兄「あれ、なんでタオル?」 

あたは身体にタオルを巻いて 浴室に入った 
だって なんだか恥ずかしかったから 

妹「い、いいじゃん別に…恥ずかしいの」 

兄「ふーん…最初の時は普通に裸だったのにな」 

妹「ーっ!それとこれとは別なの!」 

あの日は あの夜は まだ兄を兄だと思っていたから 
思おうとしていたから でも今は違う 

兄「…でも隠されると、見たくなる」 

妹「え……ちょ…!」 

あたしは兄の手で 一気にタオルをはぎ取られてしまった 
それと同時に 濡れた手で抱き寄せられる 

兄「……すげー可愛いよ」 

素肌で触れる兄の身体 奥からまた 何かが溢れてきそう 


兄「…やべ…」 

妹「…?どしたの…」 

二人でくっついたままシャワーを浴びていると 兄の様子がおかしい 
抱き合っていた手を離して あたしに背を向ける 

妹「おにぃ……?」 

あたしは一瞬 風邪が移って気分でも悪いのかと思った 
水滴が流れ落ちる兄の背中に しがみつく 

妹「おにぃ…?気分悪い?大丈夫?」 

兄「いや……ごめん、大丈夫だけど……」 

妹「けど…?」 

兄がゆっくりと振り向くと 
先端からぽたぽたと水を垂らすものが 硬く 膨張していた 

妹「わ……なんで…?」 

わからない と恥ずかしそうにする兄が可愛くて 思わず笑ってしまった 

妹「…あたしのせい?えっちだなー…」 

そっと触れると 小さくぴくんと脈打った 


妹「これが……入ってたんだよね…すごい…」 

熱くて 硬いそれを触りながら 昨日の事を思い出す 
兄を見上げると あたしがきゅっと握る度に 切なそうな顔をする 
あたしの手で 感じてくれているのだと思うと 胸がくすぐったい 

兄「う……あ…」 

妹「……きもち…いい?」 

兄「そりゃ……そんなとこ触られたら、気持ちいいって…ぁ…っ」 

先端を指先でつついてみる 兄はあたしの肩を痛くなるほど握ってくる 
流れ落ちるシャワーのせいか 身体が熱くなってきた 

妹「……誰に触られても……気持ちいいの?」 

指先一つで身を震わせる兄 急に不安な気持ちに駆られてしまう 
手を離し 抱きつく お腹のあたりに 脈打つ熱いものが当たる 

兄「……お前だけだよ…。お前にしか、触られたくない」 

妹「……ほんと…?」 

兄「…ほんと。それに……お前を誰にも…触らせたくない」 

湯気の中 濡れた二人は抱き合って キスをした 


浴室の椅子に座ると 丁度目の前に 兄の硬いものがある 
片手で握ると 指がくっつかないほど太くて 熱い 

兄「ふっ…ぁ…」 

妹「すっごい動くね…生きてるみたい…」 

膨張したそれは あたしが手を動かすと 陸にあがった魚みたいに 
びくんびくんと手の中で跳ねる あたしはそれが楽しくなって 更に手を動かす 

兄「ちょ…あー……」 

タイルにもたれた兄は ため息のような声を漏らして あたしの髪を撫でた 
本当にこれが あたしの中に入っていたなんて 
あたしは無意識のうちに 空いた手で 自分の下半身に触れていた 


シャワーを止めた浴室の中に 響く二人の呼吸 
兄の甘い声が あたしの奥から蜜を溢れさせる 

兄「うぁ…はぁ…くっ…」 

唾液を溜めて 口を開ける 
一瞬 兄が一際切なそうな目をした 
熱いものが舌先に触れる 歯を当ててしまわないように そっと そっと 

兄「あぁー……っ…きもち……い…」 

あっという間に口の中が兄でいっぱいになる 
髪を掴んで身をよじる兄 もっと もっと見たい 
あたしは唇を唾液まみれにしながらも 精いっぱい快感を与える 
左手で擦るあたしの割れ目は もう止めどないほど濡れている 

妹「んっ……ぷはぁ……ぁ…ん…」 

口内で 舌で 右手で 先端からぬめる液体を出すそれを 弄ぶ 
舌に感じる太く浮き出た血管 張り詰めた 裏の筋 
首を横にして 下から上に 舌を這わせる 
それを握る右手も もう唾液にまみれ ぬるぬると滑っている 

兄「やば……もう……」 

風呂場で 裸の妹に 果てさせられる 
こんなにも背徳的な事が 他にあるだろうか 
頬も耳も赤く染めて 俺自身に快感を与え続ける妹の姿に 
俺の射精感は限界近くまで高まっていた 

妹「ぷぁ……はぁ…はぁ…」 

兄「あ…ぁ…」 

腰の奥から湧き上がる快感が 噴き出そうとした途端 
妹は口から俺を引き抜き その手も離してしまった 
生殺しという言葉では到底表せないほどの 寸止め 
俺は思わず 情けない声をあげる 

兄「どした…?疲れた…か?」 

びくびくと射精を請う俺自身をなだめながら しゃがみ込む 

妹「おにぃ……ょ…」 

自分を抱きながらうずくまる妹の声は 
震えていて よく聞き取れない 

兄「なんだって…?」 

妹「……したいよぉ…おにぃ…」 


絞り出すような声 潤んだ瞳で俺を見上げる 
肩は上下に大きく揺れて 足の隙間からは いやらしい水音が聞こえる 

妹「おにぃ…駄目だよ…あたしおかしいの……したいよ…おにぃに…触ってほしいの…」 

兄「お前……おいで」 

震える妹を立ちあがらせて 抱いてやる 
硬くなった乳房の先端が当たって くすぐったい 
上を向かせて 唇を重ねる 
妹の口内は 暖かい唾液に満ちていた 

妹「んっ…ふぁ……あっ…!あっ…」 

割れ目に指を這わせると もうぐっしょりと濡れてる 
ぬめった愛液で 俺の指を簡単に受け入れる 

妹「あっ…だめぇ…っ…そこ…へんに…なるっ…!」 

俺は十分に妹の肉壁を指で味わってから 引き抜いた 
つぅっと透明の糸が垂れる 


妹「はぁ…はぁ…」 

兄「後ろ…向いて」 

妹を振り向かせてから 首筋に舌を這わす 
さすがに代謝がいいのか シャワーをしたばかりなのに もう汗の味がした 

妹「ふぁ……え…後ろ…から…するの?」 

兄「だって、ここじゃ寝転がれないだろ?ほらそこ、手ついて…」 

妹「こう…?うわ…これ…すっごい恥ずかしいよぉ……」 

湯船の淵に手をついて 張りも形も良い尻をこちらに向けさせる 
足を内側に折り曲げて 不安そうにこちらを振り返る妹 
そのあまりにもいやらしい光景に 眩暈さえする 


妹「うー…こ…こけそう……」 

兄「支えてやるって…入れるぞ…?」 

妹「うん……」 

丸見えになった妹の割れ目は 綺麗なピンク色をしていた 
きらきらと光る愛液にまみれたそこは とても少女とは思えない色香で俺を誘惑する 
すぐにでもそこに挿入したい気持ちを堪えて 先端で 優しく上下に愛撫を繰り返す 

妹「ふぁぁ…あっ…おにぃ…それ…気持ちいい…ょ…っ」 

兄「濡れ方…すごいな…うぁ…」 

細い腰を持って もう片方の手で俺自身の狙いを定める 
下から上に 濡れた割れ目の熱い部分を探し当てて 腰を突き出していく 


もう何度も俺を受け入れてきた妹は 昨日よりもすんなり俺を飲み込む 
ずぶずぶと 綺麗な色をした尻の合間に飲み込まれていく 
狭くても広がりのある肉壁は 寒気のような快感を背中に走らせた 

妹「あ…あぁー…っ…っく…!」 

兄「はぁー…はぁー…」 

力なく崩れ落ちそうになる妹の腰を支えながら 
俺までも快感で腰がぬけそうになる 

妹「おにぃ……これ…気持ちいい…よぉ…」 

まだ入れただけで 妹の中は果てる直前のように きゅっと収縮を繰り返す 
それだけでやっと収まった射精感が また湧きたってくる 

兄「動くけど…大丈夫か?」 

妹「ん……うご…いて…んっ…!」 

細いくびれを抱いて 俺はストロークを開始した 

妹「やぁっ…!はっ…はっ…んっ…!」 

妹の肉壁がこすれる音が 静かな浴室に響く 


背を反らせキスを求める妹 口が開きっぱなしなのか 
下の先から唾液が糸を引いて垂れる 

妹「んっ…ぷはぁ…っ!はっ…!あっ…!おにぃ…!も…駄目…!」 

いつまでも繋がっていたい いつまでも味わっていたい 
そう思えば思うほど 湧き上がってくる衝動 
一度は収まった妹の口淫で高められた波は 
更に破壊力を増して 舞い戻ってくる 

兄「俺も…っ!もう……!」 

妹「あぁあ…!あぁ…っ…!おにぃの…欲しっ…いっ…!」 

より一層狭くなり ぐにゅぐにゅと動く肉壁の奥からは どんどん愛液が溢れだし 
潤滑油のように 自然とストロークを早めていく 

兄「はっ…はっ…!イく…!!」 

痙攣するように仰け反った妹の両腕を握って 俺はまた 
妹の子宮へ 熱い射精を繰り返した 


妹「ふぁ…はー…っはー…熱い…よ…」 

兄「く…ぁ…あ…」 

最後の一滴までも絞り出すように きつく入口が閉まる 
淵につかまったまま 力なくへたり込む妹 
俺は抜けてしまわないように気をつけながら それを支えてやる 

妹「はぁー…はぁー…。た…立てないよ…」 

兄「俺も……腰抜けそうだ…」 

大量の射精を終えた俺自身は 次第に縮小していく 
溢れそうな精液に押し出されるように ぬるりと抜け落ちた 

妹「んぁ…っ…また…おにぃのこぼれる…」 

兄「……欲しかったら、いつでも注いでやるよ」 

白い泡と透明の愛液にまみれた精液が ひくついた割れ目から流れ落ちる 
振り返ってへたりこんだ妹を 抱き上げながら 湯船の蛇口を捻った 

兄「汗流しに来て…また汗かいちゃったな」 

妹「ほんとだぁ…今日は…甘える日だからいいの…」 


熱い湯船に浸かると 骨にまで染みるような暖かさが身を包む 

妹「あーぁー……っ」 

妹は先に浸かっている俺の足の間に すっぽりとはまり込んで 長いため息を吐く 

兄「おっさんか」 

妹「おにぃだってさっき言ってたじゃん。あー…あったまるぅー…」 

胸の上でくつろぐ妹 濡れた髪が頬にあたる 
もう汗の香りはしなくなって いつもと同じ あの甘い香りがする 
もっとも 今は俺も 同じ香りがするはずだけれど 

兄「ちょっと熱くないか?お湯」 

妹を構うのにかまけて 水とお湯の配分を間違えたのか 
今日の風呂はいつもりか少し熱く感じた 

妹「えーそうかなぁ…?あたしと一緒に入ってるからだよ」 

振り返り悪戯っぽい笑顔を振りまく 揺れた髪からは光った粒が散る 

兄「そうかな…?まぁ、確かにお前は、すぐ身体が熱くなっちゃうもんな」 

妹「…っ!もうっ!馬鹿!!」 

思い切り顔面にお湯を浴びる 二人して笑いが止まらない 
確かに妹と一緒なら 例え真冬の海でも 心の底から暖かいだろうなと 思う 


自分の頭にタオルを乗せたまま 妹の髪を拭いてやる 

妹「あーあーぁー…ゆーれーるー……」 

下着だけを履いた妹は 首の力を抜いて ぐらぐらと頭を揺らす 
ちらちらと鏡に映る顔はほころんでいて 湯上りだけに 頬は紅潮している 

兄「あーもー拭きにくい…子供か!」 

妹「子供じゃないけどー今日はいいの」 

結局自分の髪を拭こうとするころには 既に半分以上乾いていた 
首にタオルをかけて 手慣れた手つきでドライヤーをかける妹は 
なんというか 女の子らしかった 

妹「なにみてるのー!」 

その姿に見とれていると 
ドライヤーに負けない音量で 妹が声をあげる 

兄「なーんーでーもーなーいーよ!」 


俺も負けないように声を張り上げた 
やかましい音が止むなり 妹はさらさらと髪をなびかせて 俺の身体に腕を回す 

妹「出来たー!おにぃは乾かさないの?」 

いつもより柔らかな香りが 鼻をつく 

兄「お前の頭拭いてる間に、乾いたよ」 

妹「えー…それはおいといて、今何時くらいかな?」 

兄「おいとくのかよ…」 

声をあげて笑う妹は 俺の腕の中で前に後ろにと 
くるくると回ってはしゃいでいる その姿に俺まで顔がほころんでしまう 

妹「じゃあ…おやつの時間だね?」 

大きな瞳を一際輝かせて 俺を見つめる 

兄「そ、そうだな…」 

妹「じゃあ…、これからデートだね!よし、着替えてくる!」 

ぽかんと口を開けた俺を尻目に 鼻歌まじりにニ階へ駆けていく妹 
俺は突然一人になった洗面所で 頭を掻きながら笑ってしまう 


妹が持ってきてくれていた服を着て 乾いた髪を一応整えていると 
ばたばたと騒々しく足音が近づいてくる 

妹「おにぃ!」 

色とりどりの服を抱えた妹が 洗面所に現れた 

妹「…ど、どれがいい…かな?」 

キャミソール姿の妹は 照れくさそうに服に顔を隠す 
その気合の入り方に 俺は自然と笑みがこぼれる 

兄「……お前は何着ても似合うよ」 

妹「んー…っ!そういうのじゃなくて!」 

足を踏みならしてむくれる妹 選んでやるまで帰りそうにない 

兄「じゃあ…白がいいんじゃないか。それが可愛い」 

妹「ほんと?あたしもこれにしようと思ってたの…さすがおにぃだね」 

服を抱えたままかけよって 軽く跳ねるようにして 頬にキスをしてくれた 
そしてまた慌ただしく駆けていく あんな妹は見た事なかった 
きっと妹は 今を楽しもうとしているんだろう 
そう割り切って考えられる妹のほうが 俺より大人なのかもしれない 


妹「鍵、ちゃんと閉めた?」 

兄「ん…おぉ、思ってたより外寒いな」 

妹「ほんとだね…。でも、くっついて歩けるからいいよ」 

兄「……そうだな」 

お気に入りの短いパンツに ニーハイ 
妹の私服姿を見るのは 随分久しぶりだった 
ぴったりと腕にくっついて歩く妹 傍から見れば 仲のいい兄妹だろう 

兄「どこ行きたいんだ?」 

妹「んー…どこでもいいよ。おにぃと一緒なら」 

俺も そう思っていた 
行く先知らずは俺達の道と同じ 
何処へ行こうと 俺達は迷子だ 

街は もうすぐ夕暮れ時だ 
俺はしっかりと妹の手を握る 離したくない この小さな手を 

ゆっくりとした足取りで 俺達は二人で 歩き出した 







妹にせがまれて 最近出来たという大型のショッピングモールにやって来た 
新しい上に休日というだけあって 人の多さは 俺の想像をゆっくりと超えていた 
家族連れやカップルが俺たちの前を 何組も通り過ぎていく 

兄「すごい人だな…。話には聞いてたけど、でかいな」 

妹「でしょ?あたしもまだ何回かしか来たことないんだー」 

長い睫毛を揺らして 妹はきらきらと笑っている 
俺の手を握る力も 少し強くなった 

妹「この中のね、パフェ屋さん雑誌とかによく載ってるの。早く、はいろっ!」 

兄「わかったわかった、急ぐと転ぶぞ」 

妹「転んでもだいじょーぶ」 

握った二人の手を掲げて 俺の指間に自分の指を絡める妹 
触れば冷たそうな赤い頬で 得意げに笑った 

兄「んじゃ、行くか」 

妹「いこーいこー」 

膨大な車に 広大な建物を眺めながら 
エントランスに向かって歩きながら 
街も人も 何もかも変わっていくんだな なんて ひとりぐちる 



建物の中は随分と暖かい そういえばもう そんな季節だった 

妹「どっちだっけなー…こっちかな?」 

吹き抜け三階建て 少し騒がしい通路を妹に引っ張られるまま歩く 
きょろきょろと目当ての店を探す姿は さながら小動物のようだ 

兄「焦らなくても店は逃げないだろ?」 

最初は可愛らしいと思って眺めていたが 妹はぐいぐいと歩くスピードを速めていく 
俺は思わず声をあげた 

妹「だって!あのお店、すっごい並んでるから早く行かないと」 

俺の手を引いて 半歩先を歩く妹はこっちを見ず答えた 

兄「な…並ぶ?」 

俺は思わずその場に立ち止まってしまった 
女性が怪訝な顔をして追い抜いていく どうやら真後ろを歩いていたようだ 

妹「へ?並ぶよ?だって日曜日だもん」 

勘弁してくれ 喉元まで出掛かった言葉を飲み込む 
二十歳を過ぎた男がパフェを食べるために並ぶ光景を想像して 俺はまた引きずられ始めた 



昇り降りを暫く繰り返して 俺達は目的の店にたどり着いた 
目が痛くなるほどのけばけばしいピンクの店構え 
店の前に並べられた これもまたピンク色の椅子には 十組程度のカップルが肩を寄せ合っていた 

妹「やった!今日は結構空いてるみたい」 

兄「これで……?」 

妹「あ、椅子空いたよ、座ろ」 

並んだ男女たちの視線が刺さる 嫌でもどう見られているのか 考えてしまう 
俺はあくまでも自然に絡めた手を離して 妹と少女趣味な椅子に腰かけた 

妹「……待つの、嫌?」 

立ったり座ったりを何度か繰り返していると 妹が小さく呟いた 
その眼を見て 少し胸が痛くなる 

兄「俺、嫌そうな顔してた?」 

妹「んー……こーんな顔してた」 

妹はそれを察したのか 努めて明るく 俺の顔真似をした 
もちろん 笑えるだけで似てはいないけど 


兄「俺そんな顔してたか?こーんな顔?」 

俺もその空気を払拭しようと その真似をする 
周りの恋人達がそうしているように 二人して笑った 

兄「嫌なわけじゃないって。ただ…恥ずかしい」 

妹「おにぃでも、照れるんだね」 

兄を差す言葉に 妹の隣に座っていた女性がちらりとこちらを見た 
俺は背中に妙な冷たさを感じて 眼を合わさないように 妹だけを見る 
それから数秒たってから 俺はもうごく自然に妹と手を握り合っていた事に気が付いた 
急に離すのも不自然に思えて 意味はないだろうが 握り方だけを変えた 

兄「それにしても、長いな」 

妹「次の次だよ。おにぃ、何食べるの?」 

兄「そうだなぁ……」 

店員に渡された色とりどりのメニューを眺めていると やっとの事で店内へ案内される 
想像を超えた余りにもファンシーな配色と内装 俺の背中はまた妙な冷たさを感じた 



店の最も奥 壁際の席に落ち着いた 
隣に誰も座っていないというだけで 何故か安心感がある 
鼻をつく甘ったるいバニラの匂いと 内装にやっと慣れ始めた頃 パフェが二つ運ばれてきた 

店員「お待たせしましたー!スイートラブベリーと、チョコバナナキュートになります」 

大きい 余りにも 
本当に女の子が食べられるのか怪しく思えるほどのサイズだ 
何より 注文するのも恥ずかしい名前をどうにかしてほしかった 

妹「わぁ…ありがとー!」 

店員「ごゆっくりどうぞー!」 

たぶん この時妹が店内で一番瞳を輝かせていただろう 
その笑顔を見ただけで 連れてきてやってよかったと思える 

妹「おいしそー……食べて良い?」 

兄「駄目って言ったら、食べないのか?」 

妹「え…!おにぃが駄目っていうなら……我慢する…」 

予想外の反応 いじらしい表情が俺の愛護欲をくすぐる  
今の光景を傍から見たら どう見てもイチャつくカップルだろう 
旅の恥はかき捨てなんて言葉を頭の中で繰り返して 俺は開き直っていた 

兄「嘘だって。ほら、溶けるぞ?」 

妹「…うんっ!いただきまーす」 

一口目を食べた幸福の表情を見届けてから 俺は喉が焼けるように甘いパフェを 食べ始めた 


白は 甘い 黒は もっと甘い 
赤は ちょっと酸っぱい 
細くて長い銀のスプーンを口に運ぶ度に 色んな味が広がっていく 
こんなにおいしい物を 大好きな人と一緒に食べられる 
今日は 本当に 甘い一日 

兄「お前……食べるの早いな」 

妹「んっ…ん…。だって、おいしいんだもん」 

兄の器には まだ半分以上残っている 
そういえば あんまり甘いのが得意じゃなかったのを思い出した 

妹「おにぃ、甘いの駄目じゃなかった?」 

喋ってる間もスプーンは止まってくれない 一口 もう一口 

兄「駄目じゃないよ、量が食えないだけ。ここのは……まだマシ。おいしいよ」 

眉を上げて微笑む 冗談を言う時の 兄の癖 
こういう小さな優しさが パフェで冷えたあたしの身体を 暖めてくれる 

妹「おにぃ……」 

兄「ん?」 

机の下で 手を握る 
筋張ってて 暖かい手が 心地よかった 

妹「それ、おいしい?なんだっけ…チョコバナナ…」 

兄「チョコバナナキュート。恥ずかしいのに言わせんな」 

いつも落ち着いている兄が照れてる姿は すごく新鮮で不思議 
あれ以来 あたしは兄の色んな顔を見るようになった 
優しい顔 辛い顔 切ない顔 気持いい顔 
本当に一緒に暮らしていたなんて忘れてしまいそうになる 忘れて しまいたくなる 

妹「ちょっとちょーだい?」 

握った手を引っ張る 

兄「ん?いいよ」 

スプーンを置いて器をあたしの方に押しやってくる 
優しいのに こういう時はちょっと鈍感 

妹「もー……」 

兄「え……?あー…、なるほど」 

また肩眉を上げて スプーンの上に小さなパフェを作ってくれる 
食べやすい大きさに色んなフルーツも載せて  

兄「ん、あー…」 

妹「あー…ん…。おいしい!」 

本当においしかったけど たぶん こうやって食べたら 何を食べたっておいしいだろうな なんて 

結局 兄が残したパフェもあたしが平らげて お店を出た 
レジでお金を払う兄の背中を見てると なんだか誇らしいような 照れくさいような気になった 
なんというか 本当にデートなんだと 感じた 

兄「うぁー……。甘い」 

妹「おにぃにはちょっと、しんどかったかもね」 

兄「お前と一緒じゃなきゃ、たぶんもう二度とこないな」 

前を向いたまま言う兄 何気なく言っているけど 
そういうのがすっごく胸に響いてるの わかってるのかな 
広い背中に 抱きつく 

兄「おわっ…!いきなりくっつくなよ…、歩きにくいだろ」 

暖かい背中 見上げた顔は 言葉の割に笑っている 

妹「じゃあ、おんぶにする?」 

兄「それも却下」 

妹「じゃあ……手」 

兄「それなら…よし。ん」 

差しだされた手を握って カップルだらけの通路を通り過ぎる 
皆が見ていたけど そんな事 今はどうでもよかった 


夕方 たくさんの人でごった返すモールの中を 二人で歩きまわる 
通路に面した色んなお店は 見ても見ても 見きれそうにない 
モールの中ほどには 待ち合わせや イベントなんかに使われる噴水がある 
うろうろと歩きまわったあたし達はそこのベンチで少し 休憩をする 

兄「あー…ほんと広いな」 

隣に座った兄の顔 周りを歩く人は皆ぼやけていて 
あたしの視界には 兄だけが鮮明に映る 

妹「歩き疲れた?…ん…しょっと」 

左腕を持ち上げて その下に滑り込む 
ここはあたしの特等席 

兄「まだ若いのに、こんくらいで疲れないよ。どっか見たいお店とかないのか?」 

くしゃくしゃと乱暴に頭を撫でられる 
髪は滅茶苦茶になるけど 好き 
あたしは髪を直しながら 頭の中でこの前読んだ雑誌の特集を思い返した 

妹「んー……行きたい所…ある!」 

兄「うーし、んじゃそこに行きましょうか。案内よろしく」 

妹「はーい。迷子にならないでね?」 

兄「なったら、アナウンスで呼ぶよ」 

妹「やめてよ恥ずかしいなぁ…ばか」 


ウィンドウに透明のクマのオブジェが飾ってある店に あたし達はやって来た 
白で統一された店内には キラキラと光る装飾が眩しい 

兄「これはまた…さっきのパフェの店とは違う目の痛さだな」 

妹「サングラス持ってきたらよかったね?」 

大袈裟に瞬きする兄が可笑しくて 口の中で笑いをかみ殺す 
手を繋いだまま 煌びやかな商品を眺めて回った 
明るいスポットを浴びたクリスタルの花や動物達が きらきらと光を乱反射している 

兄「すげー綺麗だけど…何か欲しい物あるのか?」 

妹「えっとねー……これ?」 

一際豪華なウィンドウに展示されたクリスタルのティアラを指差す 
ぱっと見ただけでは ゼロの数が数えられない 
兄が目を見開いて 見を乗り出す 

兄「え……えぇ?これ?」 

あんまりにも本気で驚いている姿に 今度は声を出して笑ってしまった 

妹「嘘嘘!これは、もっと大人になってから買ってもらうよ」 

大人になってから 
そんな事 きっとあり得ないのに あたしは笑いながら 兄にけしかけた 


目当てのコーナーに張り付いていた数組のカップルが退いてから 兄を連れていく 
六角形に仕切られたコーナーの中で 菱形のクリスタルが輝いている 

兄「おぉ…可愛いな」 

妹「でしょ?これはね…」 

ああしが説明しようとしていると 商品を耳や首につけた店員さんがやってきて 話始めた 
少しむっとしたけど あたしよりは丁寧な説明をしてくれるだろう 

店員「こちらの商品はお好きな文字をこのクリスタルの内部に彫る事が出来るんですよ」 

兄「中にですか?すごいな……」 

サンプルを指の間で転がして関心する兄 それを横から覘くと 確かに綺麗 
中に浮かぶように彫られたハートの模様 どうやって作っているのか 本当に不思議 

店員「耐久性の強い素材で、他の商品よりも大変お安くなっております」 

妹「ね?綺麗でしょ?連ねてストラップにするんだよ」 

顔中に光をくっつけて 見入る顔に あたしは見入る 

店員「是非彼女さんとお揃いでどうですか?」 

あたしを見て微笑む店員さんの言葉に ちょっとだけ本当に 心臓が止まった 



妹「えっ…あ…!」 

息が 言葉が詰まる 思わず兄の後ろに隠れてしまった 
たぶん 店員さんから見たら すごく怪しい子だったと思う 

兄「あぁ…まぁ、そうですね。これ、時間かかりますか?」 

兄の背中にもたれながら 胸に手を当ててみる 乱暴な脈 胸が痛い 
顔色一つ変えずに流せる兄は やっぱり大人なんだと思う 
でも 妹だって訂正しなかった所が すごくすごく嬉しい 

兄「で、何て入れて欲しいんだ?」 

振り返りながら にやつくあたしに聞いてくれる 
どうやら あたしのおねがりはOKが下りたみたいだった 
心の奥で あたしは飛び跳ねた 



店員「彼女さん、可愛いですね」 

あたしが必死になってクリスタルを選んでいると 
店員のお姉さんがどちらにともなく 笑いかけた 
アップで纏めた髪が綺麗で 笑顔の奥から優しいのが伝わってくる 
あたしはわざとその言葉を聞こえなかった事にして うつむいたまま石を選んだ 

兄「そうですか?生意気ですよ」 

下を向いたまま 思い切り足を踏み付ける 

兄「いっ…!!!」 

妹「どうしたの?」 

兄「お前…!」 

店員「仲、良いですね」 

くすくすと上品に笑われてしまった なんだか 嬉しい 
社交辞令だとしても 誰かに恋人だと 認めてもらったみたいで 

兄「決まった?」 

妹「うん!じゃあ、これでお願いします」 

あたしは 薄いブルーがかかったクリスタルに決めた 
一番綺麗だったし 青は 兄が好きな色だから 


店員「では、彫られる文字はどうなさいますか?お互いの名前を横文字で彫られる方が多いですね」 

名前 その言葉を聞いてあたしは固まってしまう 
あたし達の名前は 苗字が同じ フルネームを書いたら おかしい 

兄「……じゃあ、名前だけでお願いします。それでいいか?」 

妹「えっ…!う、うん。それでいい」 

そうだ 冷静に考えれば名前だけでいい 
それでもさっきからどっぷりと恋人気分に浸っていたあたしは 
急に現実に引き戻された気がした 

店員「お二人のお名前よろしいですか?」 

兄「はい、俺は――」 

そんなあたしを知ってか知らずか 兄は要領よく話を進めていく 

兄「こいつは――」 

あたしといえば うつむいて 兄の服の裾を掴む事しか出来なかった 


細工が終わるまでの間 ウィンドウショッピングをして時間を潰して 受け取りに来た 
箱には綺麗な白のラッピングが施されていて 店の外まで店員さんが見送ってくれる 

店員「ありがとうございました」 

兄「どうも」 

店を後にして 少しばかり人が減った通路を歩く 
なんだかさっきの事で 気分が盛り上がらない 
手じゃなくて 裾を掴んだまま 兄の後ろをついていく 

兄「…どした?さっきから元気ないな…。違うのがよかったの?」 

振り返りあたしを覗き込む兄の顔は 本当に心配そうだった 

妹「え…!違う!違う違うよ…。ごめん、なんでもない!」 

兄「ほんとか?ならいいけど…。しかし、やっぱり女の子だな、ほら」 

強く握りすぎて 少し冷たくなった手を握りながら 兄が言う 

妹「え?」 

兄「こういうの、お前にあげたくても俺じゃあとても見つけらんないよ」 

兄の手の温もりと 優しさが 胸を締め付ける 
眼の奥が熱くなったけど 今泣いたら 面白くない 
あたしは笑って 兄の手をもう一度強く握った 


兄「晩御飯、どうしようか?さっき電話したら食べといてって言われたけど」 

妹「ほんと?やった!」 

腕にしがみつく 
さっきまでの不調は何処へやら あたしは結構単純らしい 
もう母が帰ってきてしまう事には 少し残念に感じてしまうけど 
それよりもまだ兄と二人で居られる事で 顔がにやついてしまう 
飲食店の写真が並んだ案内板の前で立ち止まって 晩御飯の相談会 

妹「んー…。こういうの見てると、お腹すいてくるね」 

兄「そうだなぁ…。そういえば、今日まともなもの食べてないからな」 

うんうん と納得したけれど 
そういえば今朝あたしが朝食を作った事を思い出した 

妹「ちょっと!あたしが作ったご飯はまともじゃないの?」 

兄「そういう意味じゃないって!おこんなよ」 

妹「知らない!ばか!」 

お腹の虫も鳴き始める頃 あたし達はすっかり恋人に戻っていた 


如何にもカップルが好みそうな店に決めて そこに向かう 
途中 色んな話をして笑ったり 追いかけたり追いかけられたり 
本当に今日は とても幸せな一日だと思った 

妹「あーあ、ほんと今日が永遠にループしたらいいのにな」 

兄「どっかのアニメじゃあるまいし、永久にモールの中ってのも俺は嫌だけどな」 

妹「えー、あたしはおにぃと一緒だったらいいよ?」 

兄「モールが嫌って言っただけで、俺だってお前と一緒だったら別にいいよ」 

妹「なにそれ……ばーか」 

兄に後ろから抱かれながら歩く 
歩きにくいけど それはそれで 楽しい 

女「あれ……?」 

あたし達の前で スーツ姿の女の人が立ち止まった 


女「久しぶりー!わーすっごい偶然!」 

兄「おー…!久しぶりだなぁ、何してるの?仕事?」 

妹「え……?あ……」 

女「ううん、今仕事帰りで……」 

あたしは いつの間にか兄の腕の外に居て 
久しぶりの再会に 旧友を深める二人の隙間に取り残された 
ヒールを履いて 兄と同じくらいの身長の女の人 顔は 綺麗 
一瞬 あたしは自分が消えてしまったような錯覚に陥った 
あたしは? どうしてあたしを無視するの 
周りの音が すごく遠くに聞こえる 兄の声も 見知らぬ人の声も 
時間にすればほんの数十秒 いや 数秒だったかもしれないけど 
あたしには 永遠にさえ思えた 




兄の手が頭に触れる あたしの心は一瞬で兄の隣に引き戻された 
たぶん 手持ち無沙汰になった人が腕を組むような そういう意味の 触れ方だったけれど 
あたしは兄の少し後ろで 服の裾を引っ張る 
きっと この人はあたしが小さいから 見えなかったんだ そう思って 

兄「あ、ああ…悪い。高校の友達だよ」 

やっと兄があたしの顔を見た 冷え切った心臓 やっと血液が巡る 

女「あ…ごめん、思わず声かけちゃったけど……邪魔だったかな?」 

邪魔だよ 兄を あたしの時間を盗らないで 
あたしはその人を見上げながら 心の中で絶叫した 

兄「あぁ、大丈夫だよ」 

妹「え…?」 

あたしの頭を撫でながら 何を言ってるの? 


何が大丈夫なの  
帰ってきたはずのあたしの心は また何処かへ流れ去っていく 
どうして笑ってるの 
脈動は早くなるけど 全身を巡る血は 氷のように冷えていく 

女「えっと……、彼女…さん?」 

遠い遠い 遥か遠くから知らない人の声 
砕け落ちそうな意識が かろうじて形を保つ 

兄「えーと……」 

違う やめて 

兄「こいつは…」 

いや いや いや いや 

兄「俺の……」 

さっきは何も 言わなかったじゃない 

兄「………妹だよ」 

あたしの心は 潰された 



旧友との再会 その事実に喜んだ俺は 一瞬 
たった一瞬だけ 妹の存在を小さなものにしてしまった 

女「えっと……、彼女…さん?」 

浮かれた心に深く刺さる言葉 全身が泡立つ 
当然の疑問を 戸惑うように問いかける友人に 
さ迷うように中空に浮かんだ俺の心は 何故 そう言わせたのか 

兄「えーと……」 

違う やめろ 

兄「こいつは…」 

違う 違う 違う 違う 

兄「俺の……」 

さっきは何も 言わなかったじゃないか 

兄「………妹だよ」 

俺の手を振り払って 何処かへ駆けていく妹の後ろ姿は 
見た事もないほど 暗い色をしていた 



女「あ……、あたし…まずい事、言った?」 

それは 俺の方だ 
走り去っていく背中を見つめたまま 俺は取り繕う 
ここで取り乱したら 妹を突き落とした嘘は なんの意味もなくなってしまう 

兄「いや、大丈夫大丈夫。たぶん、お手洗いだと思う」 

女「そう……。大丈夫?随分慌ててたよ。気分悪かったんじゃない?」 

本当は すぐにでも追いかけて行きたい 
追いかけて 流れる涙を拭ってやりたい 
でも 今は 

兄「大丈夫、すぐ追いつくよ」 

女「そっか……。妹、すっごい可愛いから、彼女かと思った」 

兄「そんな訳ないだろ…!それに、可愛くないよ」 

嘘 うそ ウソ 

俺達はもう 誰にも本当の事は言えないから 
俺は 自分にも嘘をつく 握った拳が ぎりぎりと音を立てた 

兄「じゃあ俺行くわ。また、どっかで」 

女「う、うん!妹さんによろしくね」 

走り出す俺の手の先で 二人の絆が揺れていた 


もう人の少ないモールの中を 走る 
心臓が悲鳴をあげている それでも構わない 
もっと悲しい声をあげているのは あいつのはずだから 

兄「はっ…!はぁっ…はぁっ…!っはぁ…!」 

苦しい 胸が裂けるそうになる 
身体は酸素を求めている 俺は そんなものいらない 
まだそう遠くには行っていないはずなのに 妹の姿何処にもない 
あの小さな後ろ姿が 瞼に張り付いて離れない 

兄「……くそっ…!」 

壁にもたれかかる 耳の奥で暴れる脈動が響く 
俺は今更ポケットに入った携帯に気付いた 
汗ばむ手で キーを押す 
一度 二度 三度 無機質なコール音 

兄「…出てくれよ……」 

十数度目のコールで 消えいりそうな 水っぽい呼吸音が聞こえた 


兄「……もしもし?お前…何処に」 

長い 長い沈黙 
電話の向こうからは 同じ音が聞こえている 
妹は 泣いている 俺にはそれしか分からない 

妹『……っく…ごめ……んね…っひ…っ』 

兄「…もしもし?もしもし…!」 

消えるような妹の声を残して 電話は切れた 
その声は あまりにも弱々しくて 俺は 唇を噛む 
どこに居るんだ 教えてくれ 
繰り返しリダイヤルボタンを押してみても もう 電波は届かない 
俺は足元の段差に座りこんで 暴れる鼓動を落ち着ける 
胸に手を当て 大きく呼吸を吸いこんでいく 

兄「………」 

次第にゆっくりと打つ脈の音を聞きながら 
俺は不意に 妹がまだ小さい頃を思い出した 
妹は小さい頃 叱られると いつも階段で泣いていた 
誰も居ない夜の階段の中腹で 一人小さくなって 
それと同時に さっき電話越しに聞いた 響く妹の声を思い出す 

兄「……あそこか…」 

俺は 通り過ぎた道を戻り 
緑の蛍光灯がついたドアを開けた 


冷たくて 薄暗い もう涙を拭う力も出ない 
散々に暴れまわった心臓は もう落ち着いたけれど 
兄が可愛いと言ってくれた服に落ちる滴は 止まらなかった 

妹「……おにぃ……っく…」 

どうして? 仕方なかったじゃない 
わかってるよ わかってる 
早く戻りなよ 
それもわかってる でも嫌なの 
終わりのない自問自答を繰り返して 
あたしはどんどん 深い闇に沈んでいく 

妹「寒いよ……おにぃ…」 

今日は本当に 幸せだった 
兄と二人で 抱き合って お風呂に入って 
あたしが作ったご飯 笑って食べてくれて 
パフェもおいしかったな ちょっと 甘すぎたけど 
何もかもが幸せで 暖かかったのに 
終わりなんて 唐突にやってくるみたい 


あの日 あのソファーで兄に触れられてから 
あたしのぼんやりした気持ちが 急速に形を作っていった 
漠然とした想いが 純粋な想いに 
心のどこかでストップをかけていたはずなのに 
いつの間にか 止まらなくなっていた 

会えない日が 会えない時間が 
あたしの気持ちを増幅させていったんだ 

兄妹だから 兄妹なのに 
それの何がいけないの? 
誰も傷つけないから 誰も壊さないから 
どうか どうかあたし達を許して下さい 神様 

うつむくあたしの遠くで 何かが聞こえる 
でも もう何も期待しない 
こんなわがままな妹は きっと嫌われたはずだから 

冷えた頬を伝う涙 
ぽたり ぽたり 
あたしの身体に 落ちる雨 
雨は嫌い 
冷たくて 暗いから  


鉄製のドア 隙間からは嫌に冷ややかな空気が流れてくる 
後ろで重い音を立て ドアは閉まった 
この薄暗い階段の何処かに 妹は必ず居る 
耳を澄ましても 何の音も聞こえない 
無機質なコンクリートの壁は 俺の心を更に灰色に染めていく 

どうして 俺達はこうなってしまったんだろう 
あの日 あのソファーで妹に触れてから 
ずっと抱えていた心のしこりが 取り除かれたのかもしれない 
無意識のうちに押し殺した自分を 取り戻せたのかもしれない 

兄妹だから 兄妹なのに 
止めるべき想いは 止まらない 
もしも世界に神が居るなら 俺は殺したっていい 
あいつを愛せない世界なら 滅びたっていい 

昇り続ける俺の遠くで 何かが聞こえる 
きっと そうだ 待っていてくれ 
こんな優柔不断な兄は きっと嫌われているだろうけど 

一段 一段 
ゆっくりと階段を昇る 
もう 吐く息も白く変わっていた 


薄暗い蛍光灯の下で 小さな声をあげている 
耳を澄まさなければ聞こえないような 小さな小さな 俺を呼ぶ声 
一人の少女が 俺を 呼んでいた 

声が出ない その弱々しい姿に 胸が 心が 苦しい 
俺に気付いた少女は 茫然と顔を上げる 
途端 時間が 止まる 
音が消え去った世界で 二人は見つめ合う 


兄「――っ!!!!!」 


身体の底から その少女の名を叫んだ 

妹「……お…にぃ…ぃ…!」 

白い肌の 綺麗な顔は 俺の名を呼びながらくしゃくしゃになる 
俺は 何度も名を呼んで 走り寄る 
ふらふらと立ちあがった身体を 壊れるほどに抱き締めた 


妹「お…にぃい…!おにぃ……!」 

兄「――っ…!」 

抱きしめた細い身体は 雪のように冷たい 

兄「…ごめん…!ごめんな……寒かったな…寂しかったな…」 

妹「う……ぇ…ふ…ぇ…ええぇ……!」 

非常階段に響く泣き声は 冷酷なほど 俺の胸に響く 
子供のように 胸の中で泣きじゃくる妹を 
俺はただひたすらに 抱きしめた 
二人の身体が溶け合って もう二度と離れなくなればいい そう思いながら 


冷え切った頬に 熱いほどの涙が伝っていく 
俺はいつから こんなに涙脆くなったのだろう 
妹の震える髪に 幾粒もの滴が落ちていく 

どれ程の時間 そうして居たかは分からない 
不規則に揺れる小さな肩は いつの間にか 落ち着いていた 
俺は妹に見られないように 顔に流れる涙を乱暴に拭いた 

妹「………っく……」 

兄「………大丈夫か…?」 

妹「……ん……」 

兄「…冷たい身体して……また風邪ひくぞ…」 

冷えた髪を そっと撫でると 
妹が やっと 口を開いた 

妹「……おにぃ…」 


暖かい兄の胸の中で あたしは涙をやっと止める事が出来た 
暗い暗い闇の中に あたしを迎えに来てくれた 
声を上げて あたしの名を呼んでくれた あたしのために 泣いてくれた 
例えそれが最後だったとしても あたしには 何よりも嬉しかった 
でも 

妹「……おにぃ…」 

兄「…どうした」 

顔はまだ 見れない 胸に顔を埋めたまま 話す 

妹「……おにぃにとって……あたしは…何?」 

話しながら あたしの声は どんどん潤んでゆく 

妹「…ただの……妹なの…?」 

兄「…そんな…お前は…」 

妹「だって…!あたしは…!どうやったって…、それ以上に…なれないもん…」 


そう あたしは妹 
それ以上には 絶対になれない 
頭の上で 兄の息使いだけが聞こえる 
きっと 困ってる 貴方は優しいから 

兄「……聞いてくれ」 

妹「……」 

兄「お前は俺の……妹だ。その事実は…変わらない」 

一言一言 絞り出すように話す 
あたしを抱く腕の力も 痛い程にきつくなってくる 

兄「でもな……俺はお前が大好きだよ。いや……、愛してる」 

兄の言葉一つ一つで 胸が 苦しい 
また 瞳の奥から 涙が溢れてくる 

兄「ほら…、これ見て」 

妹「…え…?」 

兄の手には さっきのクリスタルが握られていた 


妹「…これ…」 

手の平でキラキラと光るクリスタル まるで 涙みたい 

兄「…よく見て」 

菱形の石の中に 浮かんでいる文字 
名前だけのはずだったのに 二つとも フルネームで彫ってある 

兄「……普通は誓い合ってやっと、同じ名前が持てるだろ」 

妹「……」 

兄「でも、俺達の身体には、悔しいけど同じ血が流れてる」 

妹「……」 

兄「俺は、こんな運命にした世界が恨めしいけど」 

妹「………」 

兄「俺達は、生まれる前から誓い合って、同じ家に生まれたんだって、思うんだ」 

あぁ 
あたしはやっぱり 


兄「だから、この名前は、俺達の証だ。俺は、これから先も、ずっとお前を…」 

あぁ やっぱり 
あたしには 貴方しか見えないよ 
だから 今すぐに ここで 

妹「……キス…して…おにぃ…」 

兄「……」 

あたし達のキスは 涙の味 
苦くて しょっぱい 涙の味 

何度も何度も 溶け合うほどキスをした 
あたしは兄を愛してる 誰よりも 何よりも 


妹「顔……ぼろぼろだよ」 

兄「…お前だけじゃないって」 

妹「……ばか兄」 

兄「……ばか妹」 

繋いだ手は もう離す事は無いと思う 
例え 何があっても 

妹「……いっぱい泣いたら…お腹すいた」 

兄「…俺も」 

きっとこれから色んな事がある 
もしかしたら 立ち直れないような事だって 

妹「あ…ここ…屋上に出れるよ」 

兄「え…?ほんとだな」 


妹「ほらほら頑張って!」 

兄「もー…ちょい…錆びてて…このっ…!」 

妹「開いたぁ!」 

でも それでも 
あたしはこの手を離したくない 
こんなにも愛しい 貴方の手を 

妹「わぁ……きれー…」 

兄「…ほんと…だな…」 

冬の香りがする十月の空は 何処までも広がっている 

あたし達の手の中には どの星よりも輝く 青い星がある 

妹「あ……!」 

兄「あ……!」 

今 一筋の光が あたし達の空を いっとう明るく 輝かせた 



fin 


出典:中1の妹に援助交際を申し込まれた
リンク:2ch
  投票  (・∀・):461  (・A・):152  →コメントページ
読み終わったら評価を投票してください。押してもらえるだけで更新意欲がわくです。
コメント書かなくても投票だけでもできます。
作者の創作意欲を削ぐような発言は絶対に止めてください。
既出や重複の登録を見つけたら掲示板までお知らせください。
イイ→ イクナイ→ タグ付→
ココ
コメントがあれば下に記入してから押してください(30秒規制)
名前: トリップ:
コメント:

  トラックバック(関連HP)  トラックバックURL: http://moemoe.mydns.jp/tb.php/25373/
トラックバックURLは1日だけ有効です。日付が変わるとトラックバックURLが変わるので注意してください。
まだトラックバックはありません。
トラックバック機能復活しました。

  Google(リンクHP)  このページのURLを検索しています
検索結果が見つかりませんでした

TOP
アクセス解析 管理用