俺の妹がこんにイライラしているわけがない (アニメキャラの体験談) 32066回

2011/09/21 22:31┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
女「あの・・・高坂君、私と付き合ってくださいっ」

京介が、告白された。
相手は黒髪ロングでめがねをかけていた。腹立つ。

京介「あー・・・。悪い、今は付き合うとか考えられないわ。

兄貴が告白を断った。
ま、まあ、アタシという妹がいれば当然だよね。

女「好きな人とか・・・いるの?」
京介「いや、そういうわけじゃないんだけど・・・ごめん」

断られたんだからさっさと離れてくれないかな?
京介はアンタみたいなポッと出の女に興味なんかないんだから。

女「私のこと・・・嫌い?」
京介「そんなわけないだろ? 恋愛感情は別として、お前は俺にとって大切な存在だよ。」

兄貴が優しい。
黒猫でもなく、地味子でもなく、あやせでもない女に優しい。

桐乃「・・・。」イライラ

女「・・・そっか。ゴメンね、急にこんなこと言って。」

そうだそうだ、早く京介から離れろ。

京介「俺こそ、悪いな。よかったら家の前まで送っていくよ、すぐそこだろ?」

なぜそうなる!
アタシが好きな京介の優しさ。
でも今日は、アタシの嫌いな京介の優しさ。
そうやって誰にでも優しくするから・・・、勘違いする娘がでるんでしょう?

あの女の家に向かって歩いているであろう京介の後をつける。
ここからでは聞こえない会話の内容が気になってしょうがない。

女2「あーっ!高坂君と女ちゃん!」
女3「え、え?2人って付き合ってるの?」

また、新しい女が出てきた。

京介「別にそんなんじゃねーよ。ただそこでバッタリ会ったから一緒に帰ってるだけ。」

さりげない嘘。
アタシは、京介のこういうところが好き・・・じゃ、なくて!

女2「そうだよね!京介君には田村さんがいるもん!」
京介「だから、アイツとはただの幼馴染だって。」
女2「じゃあ、高坂君って彼女とかいないの?」
京介「いねーよ。」
女2「ふ〜ん。・・・よかった。」

今の会話を聞いて背筋に悪寒が走る。
まさか・・・あの女も京介を狙ってるの?

でも多分、京介はあの娘のキモチには気づいてないんだろうな。
日本を代表するような鈍感だもんね。

女子3人に囲まれて歩く京介を見るのは、楽しくない。
黒猫や地味子ならまだいい。アタシが知らない女と歩くのは許せない。
しかもそのうち2人は確実に京介を狙ってるなんて。

桐乃「・・・。」イライラ

女達「じゃあね、高坂君!また明日!」
京介「おう」

京介が女達と別れた。
嬉しいはずなのに、胸の奥ではモヤモヤが消えてくれない。
この感情の根源はなんだろう?

多分、京介を必要とする女が増えたこと。
京介が、アタシのものだけじゃなくなったこと。
黒猫が京介を必要とするのは構わない。
黒猫の良さを、悪さを、アタシは知っているから。

でも、顔も始めてみるような女なら別だ。
小さいころから一緒にいて、アタシを護ってくれた京介を好きにならないで。
アタシの知らないところで、アタシの知らない感情を育まないで。
そんな感情がフツフツと心に沸いて出てくる。
これを独占欲っていうのかな?

家に向かってアタシの前を歩いている京介の背中が夕日に照らされる。
その見慣れた背中を見ながら、そんなことを考えていた。

桐乃「ただいまー」

京介が帰っているはずの家に挨拶をする。
返事は返ってこない。腹立つ。
靴をきれいに並べたあと、のどが渇いたのでキッチンへ向かう。
キッチンへ向かう途中のドアを開けたところで、京介を見つけた。

京介「おう、おかえり。」

なんだか腹が立ったので無視をする。
でも実は嬉しいので、口角は上を向いていた。
キッチンのすぐ前ですれ違った京介は小声で「返事ぐらいしろよ」と言った。
うるさい、最初に返事をしなかったのはアンタだからね?

冷蔵庫から麦茶を取り出し、置いてあったコップにそれを注いで飲む。
乾いたのどに冷たい麦茶がしみこんで、気持ちいい。

気持ちいいのもつかの間、リビングの方から大きな物音。
一体なんだとリビングを見ると、京介が自分のかばんの中身をぶちまけていた。
こういうところで、どんくさいのが京介。

桐乃「ん?」

京介がぶちまけた荷物の中に、見覚えの無いものがある。
他の物に見覚えがある件については、勘ぐらないで。
あれは・・・ラブレターか。しかも3枚も。
間違いない、あの感じはラブレターだ。
アタシもよくもらうラブレター。
男が出す物と女が出す物が一緒かは分からないけど、多分そうだ。

3枚・・・。
一枚はさっき告白していた女だと仮定してもあと2枚余る。
すると京介を必要としている女は4人にのぼるわけだ。
余った2枚の送り主は顔も声も知らない人間。

桐乃「・・・。」イライラ

心にかかったモヤモヤが、さらに濃くなった。

これ以上モヤモヤを増やしたくないので部屋に戻る。
かばんを放り投げてベットに飛び込んだ。
考えたくなくても京介のことが頭に浮んでしまう。

大切なものが私の知らないところでいろんな感情を抱いている。
物理的な距離は離れていなくても、ずっと遠い所で・・・。

私の気持ちがどんどん滅入ってきたところで隣からドアの開く音が聞こえた。
数秒後、すぐ横からドサッという何かが落ちるような音。

壁をはさんだすぐ傍で、兄貴も寝転がっているんだ。

こんな小さい音ですら聞こえるほど薄い壁なのが、なぜか今はベルリンの壁のようだ。
国をも分けてしまうような境目。それが京介とアタシを遮っている。

京介「もしもし? ああ、気にすんなって。」

その壁の奥から聞こえてきた京介の声。電話をしてるみたい。
相手の声はもちろん聞こえない。

京介「さっきもいっただろ? お前は大切な存在だって。」

なんだ、あの女か。
スッキリしたような、スッキリしないような。

桐乃「・・・。」イライラ

やっぱりスッキリはしなかった。

京介「ん、じゃあな。また明日。」

兄貴の電話が終わったらしい。
だけどモヤモヤは大きくなったまま。

どうしたらこれが消えてくれるかをちょっと考えて思いついた。
もう隠れて兄貴の行動を探る必要は無いじゃん、と。
どうせ2mにもみたない距離にいるんだから会いにいけばいいじゃないか、と。
アタシは部屋から飛び出してすぐにあるドアを押し開けた。鍵が存在しないのはこういうときに便利だ。

京介「うわッ・・・。おいお前!ノックぐらいしろ!」

あの女達といたときには無かった少し強めの口調。
これは兄貴の本当の声だということを知っている。
その口調を引き出せるアタシは、まだアイツらには負けてないよね?ニシシ

京介「一体何の用だよ?」

しまった、用件を考えてなかった。
見知らぬ女達に嫉妬したとは言えない、

「アンタさァ・・・、部屋で電話するときぐらい壁から離れてくんない?」

また、思ってもいないことを口走ってしまった。
これはアタシの悪い癖。

京介「ああ、聞こえてたか? ごめんな。」
桐乃「え? べ、別に・・・分かればいいけど。」

それでも誤ってくれる京介。
今度は、そんな優しさに甘えてしまう自分自身にイライラ。

桐乃「ねえ、ちょっとそのパソコン使ってもいい?」
京介「はあ? 別にいいけど・・・お前のパソコンじゃダメなのか?」
桐乃「ちょっと今、ソフトをインストールしてるから。」

もちろん嘘。

京介「用が終わったら、ちゃんと閉じといてくれよな。」

そう言って京介は隣の勉強机に座る。(京介のパソコンは勉強机の横に置いてあるからねっ!)
パソコンを起動している最中にふと隣を見てみた。
ノートにペンを滑らせている京介の顔は真剣で、私もあまり見ない大人の顔。
学校でこれを見ている女子が惚れてしまうのも・・・分からなくもない。

私の視線に気づいたのか、京介と目が合う。

京介「ん?どうした?」
桐乃「なんでもない。」

今回は本当に何でもないんだな、これが。
そうしているうちにパソコンが起動していたので、特に用事は無いがインターネットを開いてみる。
お気に入りのサイトをひとしきり訪問しても時間は10分しか経っていなかった。
正直今の状況がもっと続いてほしいのでなんとなく検索ツールバーの履歴を見てみる。

『めがね 巨乳』
『黒髪ロング 巨乳』
『黒髪 めがね 巨乳』

う、うわぁ。
アタシは隣にいる兄貴が気づかないうちに、そっと履歴を閉じた。

検索履歴に妹が入っていないのはいけ好かないケド、性欲の面は多めに見よう。
男子高校生なんて大体こんなもんだよね。

あまりにもやることがなくなったので好きな絵師さんのホームページを開いてみる。
すると、アタシ好みの絵が期間限定で配信されているではないですか!
ほとんど亜音速で保存ボタンを押したところで気づく。これ、兄貴のパソコンだっけか。
しょうがない、手間がかかるけど今保存した画像は消しておいてやろう。感謝しなさいよ。

画像を消そうと思ってファイルを開いてみると、ある画像が目に付いた。
ただサムネイルでは小さくてよく見えないので、なんとなくその画像をクリック。
拡大されたその画像には、夏コミの際に漆黒のコスプレをした兄貴が写っていた。

う、うわあ。
私は兄貴が気づく前に、そっと画像を閉じた。

まとめサイトを見てショックを受けながらも画像を残している京介にちょっと引いていると
勉強机においてあった京介の携帯がブルブルと震えだした。

外側のディスプレイに表示されている名前は「岩崎 眞由」
・・・誰?こんな名前だから女であることは間違いないだろう。
だとすれば告白していた女か、あるいそれ以外か。
気になるけど、さすがにメールを見ることはしないし、まずできない。
何か出掛けるお誘いメールだったらどうしよう?

もしそうだとすれば気に食わない。
でも、こういうときは先手必勝だよね。

桐乃「ねえ、アンタ次の土曜日ってなんか予定入ってる?」

携帯をコチコチ弄くっている兄貴に問う。
もしも今のメールで誘われていたならアウトだ。
ああ見えて人との予定とかはしっかりしてるから。

京介「別に、何もないけど。」

ニシシ、私の勝ち。土曜日に兄貴と出掛けることが決まった。
心のモヤモヤが、すこし晴れた気がする。

京介「で、どこに行くんだ?」

こんどはアタシが京介に問われる。
もちろん予定は考えていなかった。

桐乃「できれば普段いけないところに行きたい。」
京介「いきない条件がきついな・・・。お前、土曜日前後の部活の予定はどうなってる?」
桐乃「土曜日も日曜日もオフ。だから誘ったんじゃない、バカなの?」

また悪態をついてしまった。
すると京介はちょっと嫌そうな顔をして「そーですかい」とため息をつく。
でもすぐにいつもの顔になって、こう提案してきた。

京介「夏休みが終わってもまだ暑いからな、海でもいくか?」

8月下旬に海とはどうしたもんかと思ったけど、確かにまだ暑いからそれもアリかな?
モデル仕事で貰って着てない水着も置いてあるしね!

桐乃「じゃあ、それでいっか。水着持ってんの?」
京介「夏休みに黒猫と行ったときのがある」

ああ・・・そうですかい。

桐乃「朝から行ったほうが楽しいよね? 到着するまでに時間がかかるし・・・」
京介「そうだな。詳しくはお前が決めろよ、提案者なんだし。」
桐乃「わかった。」

自分の都合より相手の都合を気にする京介の、こういうところもアタシは好き。

京介「黒猫と沙織には俺から連絡しとくよ」

・・・。人の都合を気にしすぎてお節介になるのが、玉に傷。
晴れかけていたモヤモヤが、また少し濃くなってきたような気がする。

土曜日。
空はよく晴れ、海の青が際立ってきれいに見える。
8月ももう終わるというのに日差しが強くて肌が痛い。
でも・・・。

桐乃「海だぁー!」

何歳になっても海にはテンションが上がってしまう。

黒猫「全く子供ね・・・」
沙織「いいじゃないですか、微笑ましいですし。」

黒猫と沙織に子供のように見られた。
京介はというと、その後ろでニコニコと私達を見ていた。
私達というか・・・沙織の胸だよね。

桐乃「ちょっとあんた!なに沙織の胸ばっかりみてんの!? チョーキモイんですけどっ!」
京介「バッ!見てねーよ!」

嘘、絶対にみてた。
沙織はというとお嬢様モードなので顔を赤らめてうつむいている。
胸なんて、やたらとおおきればいいって物じゃないじゃん。

むぅ、大きければいいってものじゃないもん。

京介「おいおい、こんな時期でも以外に人って多いもんだな」
沙織「まあ土曜日ですからね。それに、まだ暑いですし。」

沙織と京介が、パラソルを立てながら話している。
あんなことがあった後だから、ちょっとだけ嫌な感じがする。
でもそんな葛藤は、今から海に入ることを考えるとすぐに無くなってしまう。

桐乃「さ、泳ぎに行こう!」
京介「海に入る前は準備運動ぐらいしろよ」

それぐらい分かってる、私だってもう子供じゃないんだし
だけどこんなやりとりも今はなんだか嬉しい。

桐乃「さ、みんなも泳ぎにいくよ!」
京介「いや、俺は荷物番でも・・・」
桐乃「大体の荷物はロッカーに預けてきたでしょ! ホラ、早く〜!」

アタシは京介の手を引いて海へ向かう。
黒猫と沙織が、やれやれといった感じで私達を追ってくる。
私の知らない女なんて気にしなくていい、最高の瞬間が流れている気がした――

京介に水をかけた。びっくりしている顔が面白かった。
京介に水をかけられた。笑っている京介にむかついた。

みんなでご飯を食べた。海を見ながら食べるご飯は格別だね!

みんなで岩辺へ行った。足が磯巾着に触れたときの黒猫の顔ったらもう!

そうやってアタシの楽しい時間は少しずつ過ぎていく。
だけどこの楽しい時間にも、神様は楽しくないことを盛り込んでくる。

京介とアタシが二人で歩いていると、前方でナンパをしているらしい男が2人。
ナンパをされている女性はどうやら嫌がっているようだ。
そこまではいい、そこまではいいんだけど。

京介「岩崎じゃねーか!」

ダメなのはナンパされてる女性が兄貴の知り合いであり、兄貴に好意を寄せている女だということ。

知り合いが無理やりナンパされているのを京介は見てしまった。
そうなったらもう京介がとる行動は決まってる・・・。

京介「よー、眞由! こんなところにいたのか。」
女2「こ、高坂君?」

兄貴の思惑は分かってる。
彼氏のフリをして男共を追い払おうって魂胆でしょ?
分かってるけど、腹立たしいな。

男「なんだよ、彼氏持ちか」

そういって男達は去っていく。あきらめ早いな!

女2「ありがとう、助かったよ。 それにしても用事って海に来ることだったの?」
京介「ああ、妹達と。」

そういって京介はアタシの方を指差す。
女の視線がこっちに向いたので、軽く頭を下げておいた。

女2「可愛い妹さんだね〜。 ねえ、向こうに友達がいるんだけど一緒にこない?」

この女、妹と来てるって京介が言ったのにとんでもない要求をしてくる。
ここで、さっきまで晴れていたはずのモヤモヤがまた心の中に現れた。
気持ちいいはずの波の音が雑音に変わる瞬間だった。
向こうにいる友達ってだれだろう? またアタシの知らない女の人?

それと同時に新しい心配が頭の中に浮ぶ。
――京介は、向こうにいったりしないよね?

だけどぐるぐると頭の中を回っていたその心配は、杞憂に変わった。

京介「いや、妹がいるから遠慮しとくわ。 みんなによろしく言っといてくれ。」
女2「・・・そう、わかった。じゃあまたね!」

京介に背を向けだんだんと小さくなっていく背中。
でもその背中は、またアタシの中にモヤモヤを残していった。

京介「すまん、待ったか?」
桐乃「・・・別に。」

だからこうやって、そっけない返事をしてしまうんだ。

京介とアタシが黒猫達のもとへ戻ったときには、時間はもう夕方だった。

傾いた日に海が照らされて赤く光っている。
黒猫や沙織は綺麗だとつぶやいていたが、アタシはこの間の嫌な日を思い出してしまったなんだか嫌だ。
それに今日が終わってしまうと思うと、なおさら悲しくなってくる。

京介「さーて、もう充分遊んで疲れたし、帰るか」

嫌だ、帰りたくない。
心の中はそういった感情でいっぱいだったけど、そんな我侭は言ってられない。
それに楽しかったことは事実だから・・・まあいいよね。

「桐乃ー? 早く行くぞー」

京介に急かされて海を後にする。
楽しかったけど、あの女と会ったせいで後味悪いな。

恒例となった蟠りを心に残しながら、アタシの楽しい時間は過ぎていった――

日曜日。昨日の海ではしゃぎすぎたからか、少し体が重い。
しかも起きてみたらもう昼だ。

もう少し寝ていようとも思ったけど、さすがにこれ以上寝ていると
休日を無駄にしてしまう感じがするので体を起こす。
普段陸上で使っていない筋肉に違和感を覚えながら階段を下りていく。
リビングに入ると、部屋着にしてはおしゃれな格好をしている兄貴と出くわした。

桐乃「なに・・・アンタもしかして今日も出掛けるの?」
京介「ああ、誘われちまったもんだから。ちょっと体がだるいけど。」

若い男って本当に無駄に体力あるよね。ちょっと関心する。
それにしても出掛けるって、またあの女だったりするの?
あんまり聞きたくないけど・・・気になるからさりげなく聞いてみよう。

桐乃「ふーん。誰と出掛けんの?」
京介「ん? 今日は赤城と・・・」

なんだ、せなちーのお兄さんか。
男友達と行くのに嫉妬するほどアタシは心が狭くない。

京介「あと岩崎と麻奈実だな」

プチッ

またも出てきたあの女(+地味子)の名前に、アタシの中で何かが切れた。
傍観?なにそれおいしいの?
ここまで来たらもう我慢はできない。
その岩崎とか言う女と京介の間で起こることすべてを

邪 魔 し て や る。

アタシは自分でも嫌気が指すぐらい性格の悪い女だ。
独占欲が強くて、我侭で、自分勝手。

それでも京介と知らない女の仲を傍観なんてできない。

だって、性悪女だもん。

赤城「映画なんて見るの久しぶりだなー」

日曜日の街、少しうるさいその場所でアタシは兄貴達を尾行している。
変装のためサングラスをかけて、準備は万端。
思う存分邪魔してやんよ、覚悟しなさい!

「映画まで随分と時間があるけど、なんかしたいことある?」

せなちーのお兄さんがそう呼びかける。
京介と地味子は「どこでもいい」といかにも平凡な返答。
それに比べてあの女は・・・。

眞由「プリクラとか、撮りたいな〜」

ですって。
いきなり・・・邪魔のしようがないことを・・・。
地味子よりイマドキで積極的な分タチが悪いよ〜。

出鼻をくじかれた、というか早くも心を折られそうになったアタシ。
でもとりあえず京介たちが入ったゲームセンターに入ってみることにした。

ゲームセンターの中は街よりさらにうるさい。
4人は早くもプリクラコーナーへ向かったらしく、もう姿は目に見えなかった。
この状況で邪魔はできないけど、あることを思いつく。

プリクラって言うのは、写真を撮る場所と落書きをする場所が離れている場合が多い。
つまり4人がプリクラを撮り終わった瞬間に落書きコーナーを覗けば、
どんなプリクラが撮れているかが確認できるってこと。頭いい!
そうと決まれば行動は早いほうがいいよね。プリクラコーナーへ向かおう。

足元だけを見て兄貴のいるプリクラ機を特定したアタシは、なるべく近くで会話を盗み聞きする。
目がでかく映りすぎだの、他愛も無い会話が耳に入ってきた。
それと同時に入ってきた音は『ラクガキコーナーで落書きしてねっ♪』という甘ったるい声。
機は熟した。アイツらの前に軽い障害物を置いたら作戦スタート!

あたしはアイツらが通るであろう道に立っていた看板を倒して障害物を作る。
これで少しは時間が稼げるはず。あとはプリクラを見るだけってこと。
ここまで練られた作戦を瞬時に考え出せる今日のアタシは冴えてる。
自画自賛を脳内で繰り返しながら、ラクガキコーナーへと足を踏み入れた。

桐乃「ちょっ地味子と兄貴の距離近すぎっ!」
桐乃「これは岩崎とかいうヤツとの距離が果てしなく近い・・・!」イライラ

むぅ〜!
ふざけんな!なんでアタシ以外の女が京介とこんな近くでプリクラ撮ってるワケ?
せっかく偽デートの時に苦労してあんなプリクラを撮ったのに・・・。

桐乃「こ、これなんかせなちーのお兄さんが兄貴に抱きついてる!」

・・・これはいいか。
最後の一枚を除いてこのプリクラは許せない。
どうしたものか・・・。

赤城「あの、どちら様ですか?」
桐乃「!!!!!!」シュッ 

あ、危ない。興奮しすぎて敵の接近に気づけなかった、不覚!
京介はいなかったみたいだし・・・バレてないよね?

京介「どうした?」
赤城「いや・・・このラクガキコーナーに茶髪のねーちゃんが入っててさ」
京介「なんだそれ? 変なヤツだな」

危険を感じながらもゲームセンターを出たアタシは、まだ尾行を続ける。
どうやら次こそ本命の映画館に向かうようだ。

見る映画は・・・前売り券の色から『Back to the gunma』かな?
今世間で話題沸騰中の映画だ、チョイスとしては王道中の王道だよね。
4人が奥に歩いていったことを確認してから、アタシもチケット売り場に向かう。

桐乃「あのー、『Back to the gunma』のチケットってありますか?」
店員「申し訳ございません、満席となっております。」
桐乃「(´・ω・`)」ショボン
桐乃「どうしても・・・ダメ?」ウルウル
店員「(カワイイ・・・)申し訳ございません。」

しょうがない・・・同時上映のココリコ坂でも観るか。

観たくもない映画を観たアタシは、映画館の外へと足を運ぶ。
いまさらになって気づいたケド、別に無理やり映画を見る必要は無かったよね。

もともとは京介達の尾行だったわけだし・・・。
・・・尾行?

しまった、尾行をしていたことを忘れていた!
アイツらが観た映画よりアタシの観た映画の方が上映時間は長い。
つまりもうアイツらは映画館をでている! 急がなきゃ!

陸上で鍛えた足をフルに活用して町中を走り回る。
こういう事態を想定してスニーカーを履いてきてよかった。
そんなアタシはスニーカでアスファルトを蹴りながら、京介の姿を探す。

なぜだろう、人ごみを掻き分けて走っている最中にその昔迷子になった時のことを思い出してしまう。
今日みたいに休日で、小学生の京介に街につれていってもらったんだっけ。
そしたらアタシが迷子になって・・・。結局京介が見つけてくれて。もう、随分と懐かしい思い出。

桐乃「あっ!」

そのおにいちゃんを、今度はアタシが見つけた。

京介を見つけたのはなにやら小物店のような小さなお店。
どこか見覚えのある店だけど、その感覚は曖昧だから気のせいかもしれない。

京介はせなちーのお兄さんと何かを見ていて、女組は女組で何かを見ている。
何を見ているのかはさすがにこの位置からは見えない。

すると4人が図ったかのように同時にレジへ向かった。
どうやら各自、別々に目当てのものを選んだようだ。
京介たちが店を出てくる。時間も時間だからこの店でお出かけは終わりかな?

店を出てきてからすぐ、岩崎とかいう女は京介に今さっき買ったものを渡した。
おそらく、いや、きっとプレゼントだ。あのニブチンはこのアプローチに気づくだろうか。

桐乃「・・・。」イライラ

また、この感じだ。
きっとあのプレゼントごときで京介の気がアイツに向くわけじゃない。
それでも、なぜか苛々が働いてしまう。
京介に彼女ができるのはおろか、京介を誰かが好きになるのすら嫌なのがこの感情の根源だ。
独占欲という言葉では括りきれない、特別な感情。なんて言い表せばいいんだろう。

感情を自分でもうまく噛み砕けないことに、さらに不快感を感じる。
そしてついに、心の中にたまったどす黒いモヤモヤがあふれて体からあふれ出す。

桐乃「ちょっとアンタ!最近色んな女にデレデレしててキモイんだけど!」
京介「!!? き、桐乃?」

バレた。いや、バレに行った。
人間、ストレスや不快感が溜まってるときは一時的なテンションで行動してしまうものなんだ。
その結果、京介を尾行していたという恥ずかしい事実が本人にバレてしまった。

京介「桐乃・・・これ、どういうことだ?」
桐乃「っ・・・」

もちろん答えられない。

京介「ハァ、まあいいよ。とりあえず後でじっくり話してもらうからな。一緒に来い」

アタシは無理やり兄貴に手を引かれ、あの嫌な夕日の中を渋々と歩いていった。

赤城「今日は楽しかったぜ、じゃあな」

せなちーのお兄さんと別れた。

岩崎「じゃあね、高坂君。また明日。」
桐乃「・・・。」イラッ

あの女と、別れた。

京介「すまん、麻奈実。ちょっと桐乃と話があるから、先に帰っててくれ。」
麻奈実「うん、わかった。 今日はありがとうね〜。」

地味子と、別れた。
最近になって嫌いになった夕日に照らされながら今は京介と2人きり。
地味子と別れたのはいつもの公園の前で、アタシ達はいま公園の中にいる。
ちょっと前に京介が告白されているのを見た、あの木の下で。

京介「さて・・・詳しく話を聞かせてもらおうか、桐乃。」

桐乃「詳しく?」
京介「そう、詳しく。 特に俺を尾行していたという件について。」

私の中で2つの選択肢が飛び交う。
京介に本当のことを打ち明ける?適当にごまかす?

いや・・・後者は結局逃げているだけだろう。
本当に心の中の障害物をなくしたいなら、本当の気持ちを打ち明けるしかない。
でも、これを本当に言葉にできるだろうか?
言葉にできたところで、京介に理解してもらえるだろうか?

・・・心配ないか、アタシの兄貴だもん。

桐乃「えっとね、アタシ、アンタが告白されてるところを見たの。」
京介「ゲッ」

桐乃「でね、それをみたときになんだか頭にきて」
桐乃「兄貴を必要としていいのは、アタシと、アタシと親しい人だけでねっ」

息継ぎを忘れてしまったのか、随分と息苦しい。
血の流れる感覚が全身に亘っている。

桐乃「それで、あの岩崎さんが・・・兄貴のことが好きで、
    でもアタシ・・・み、認められなくってっ・・・」

嗚咽がこみ上げてくる。
今までおぼろげにしか伝えられなかった思いを、
言葉にならない言葉で京介に伝える。
きっと、理解はしてもらえない。
またアタシの馬鹿げた感情は、大きく空振りをして宙を舞う。

涙をこらえる作業に限界が近づいてきたころ、アタシの体が大きい何かに包まれる。
滲んだ視界を凝らしても目の前は暗くて何も見えない。
視界が奪われた代わりに、限りなく近くで聞きなれた声が聞こえた。

「馬鹿だな、お前。」
「小さいころから迷子になったお前を見つけてきたのも、
 困ってるお前を助けてきたのも。
 全部お前だからだ。」

「俺はお前以上に誰かを必要としねーし、必要ともされねーよ。」

確かに、伝わった。
アタシの言葉も、兄貴の言葉も、全部不恰好で私たち以外には意味の分からない言葉。
それでも、いい。一番傍にいるただ1人に伝わればいいんだ。

アタシを包んでいるものの感触を手で確かめる。
ひとしきり確かめたあと、それを強く手で抱き寄せる。

この体を離したら、京介はどんな顔をするだろう?
多分、ちょっと気まずそうに笑っているだろうな。

桐乃「兄貴、ちょっと息できないよ・・・。」
京介「ああ、すまん。」

京介「・・・。なんか気まずいな」

ほらね?

京介「そうだ、桐乃に渡すものがあるんだ。」

場の空気から逃げ出すように、京介が言う。
ポケットから出てきたのは、小さな紙の包み。
中身は、太陽をモチーフにしたヘアピン。

京介「ホラ、今お前がつけてるヘアピン、昔お前が迷子になったとき俺が買ってやったやつだろ?」

照れくさそうに「昔と同じ店で買ったんだぞ」と自慢げに話してくる。

桐乃「クスッ・・・、ありがとう。」

アタシは今つけているのヘアピンを外し、新しいヘアピンへ付け替える。

顔を上げると、赤い夕日と京介の顔が目に入る。
さっきまでつけていたヘアピンから反射した日の色が、まぶしかった。

京介「よく似合ってるな」

昔も、そんなことを言われた気がする。
やっぱり京介は、昔から変わっていない。

桐乃「ねえ」
京介「どうした?」

一生に1度の夕日。
でも一生忘れない、記念の夕日。
一年前まではあんなに嫌いだった兄の顔と、さっきまで嫌いだった赤い夕日。
今は大好きなその2つを、目に焼き付けるように見つめた。

桐乃「アタシね、アンタを。兄貴を日本で、世界で一番――――。」

出典:web小説達
リンク:http://novelhiroba.com/?cat=207
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