ゾンビ天国 (恐怖の体験談) 44328回

2011/09/26 21:26┃登録者:痛(。・_・。)風◆pvNbTqv.┃作者:名無しの作者
まえがき



まず初めに、ご挨拶をば。

このSSはオリジナルであり、ジャンルとしては題名通り『ゾンビ系』+『サバイバル系』です。

ホラーとかグロとかエロとかそういうのが苦手な方は止めておいた方がいいです。

念のためR-15設定と題名にも表記しておきますので純粋なお子様が見るときはご注意して下さいね。

予定では全26話で終了するつもりです、長編小説ではなく中編小説になるでしょう


ちなみに、このSSを書くに当たって参考にさせていただいたゾンビ系(サバイバル系も含む)の商業作品を紹介しておこうと思います。

知らない方は是非この機会に探してみるとより一層このSSが楽しめるかもしれません。

・「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968年 原題=NIGHT OF THE LIVING DEAD)
・「ゾンビ」(1978年 原題=DAWN OF THE DEAD)
・「死霊のえじき」(1985年 原題=DAY OF THE DEAD)
・「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記」(1990年 原題=NIGHT OF THE LIVING DEAD)
・「ドーン・オブ・ザ・デッド」(2004年 原題=DAWN OF THE DEAD)
・「ランド・オブ・ザ・デッド」(2005年 原題=LAND OF THE DEAD)
・「ショーン・オブ・ザ・デッド」(2004年 原題=Shaun of the Dead)
・「バトル・ロワイアル」(2000年)

・「バイオハザードシリーズ」 (1996年〜 ゲーム)
・「DEAD RISING 」(2006年 ゲーム)
・「絶体絶命都市シリーズ」(2002年〜 ゲーム)

・「漂流教室」(楳図かずお コミック)
・「寄生獣」(岩明均 コミック)
・「ドラゴンヘッド」(望月峯太郎 コミック)
・「学園黙示録 HIGH SCHOOL OF THE DEAD」(佐藤大輔×佐藤ショウジ コミック)




非才な者ゆえ誤字・脱字等の間違いや、話の展開におけるアドバイスなどいただけたら幸いです。

最後に、このSSにおいて間違った情報・誤解があった場合それらは全て作者の責任であり創作です。



では稚拙な駄文ではありますが楽しんでもらえればと思います。 m(_ _)m


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■01



ゾンビが世界中に溢れるようになって3日目。

自宅のボロアパートに篭城していた俺は備蓄食料が心許無くなってきたのでついに脱出を決意した。



いや、ぶっちゃけゾンビ大発生した当日は寝坊してお昼過ぎに目覚めたんだけどさ。

もう皆あらかた逃げ出した後で俺はバッチリ逃げ遅れてました。



幸い俺の部屋は二階にあったからか扉をぶち破ってゾンビが突入してくるなんてことは無かったけど、ベランダから見た風景は映画の『ゾンビ』そのまんま。

そこら中を血塗れの連中がフラフラ歩いていて、腕が欠けてたり、内臓飛び出してたり。

とあるエロゲでグロ耐性付けてなかったら危なかったね。



さてここで問題です、銃社会なアメリカンならまだしもここは平和なニッポン、ゾンビ相手に戦える武器などあるでしょうか?

答え:《ありません》

HA HA HA! OWATA!



法治国家日本の悲しさか、一般市民の持ってる武器なんて包丁や鉄バットが精々だし。

俺も焦って家探ししてみたけど見つかったのは、フライパン、包丁、ダンベル、ドライバー。

武器として使えそうなのはこれくらいしかありませんでした、俺オワタ。

一匹・二匹ならまだしも外には何十・何百とゾンビが徘徊しているので勝ち目がありません。



そんな感じで絶望した当日、俺はあっさり脱出を諦めて大人しく家に篭城することにしました。

一応、携帯電話も試してみたけど何処にも繋がらなかったしね、テンプレというべきか。

TVやラジオも「各地で大規模な混乱が起きています、原因はまだわかっていません!」しか言わないし。



それに上手くいけば機動隊とか自衛隊がさっさとゾンビどもを掃討してくれるかもしれないし、最近の自衛隊は武装も充実しているしゾンビなんかにゃ負けないでしょうよ、多分。

そんな淡い期待に胸を膨らませて大人しく積んであったエロゲをすることに、現実逃避ともいう。

エロゲの内容は謎のウイルスで人々がエロゾンビになってしまうという某人気(?)シリーズ。

外の連中もこんな感じのエロゾンビだったら良かったのにねぇ。



そんな俺『高田了輔(タカダ リョウスケ)』、今年で24歳、いまだ童貞のオタです。







話は昨日にさかのぼる。

ゾンビ大発生から2日目、買い置きのカップラーメンを朝食代わりに啜りながらTVを見ているとビックリするようなニュースが流れてた。



『さ、先ほど入った情報によると、暴動鎮圧に向かった自衛隊が壊滅したもようです!!』



ブーッ、とカレーヌードル噴いた。

映像にはゾンビ集団に混じってフラフラ歩いている迷彩服の方々が、どう見てもゾンビです、本当にありがとうございました。



続く報道ではアメリカを含む世界各国の状況も似たようなもので、どこもかしこも壊滅状態。

そんなにゾンビって強かったけっけ?

こうして二階のベランダから見る限り、フラフラしててあんま強そうには見えないけどなぁ。



それともゾンビの強さには地方差でもあるんだろうか。

都会のゾンビは強くて、田舎のゾンビは弱いとか? まさかね?

試しに床に無造作に捨ててあるゴミを外をうろつくゾンビにむけて投げてみた。

スコーン、とゾンビの頭部にゴミが上手く当たった、命中したゾンビは周囲を見渡すも特に目新しいものが見つからず再びうろつきだした。

……自衛隊はこんなマヌケな連中に負けたのか、日本はもう終わりかもしれんな。







そう言えば、下の階にいる婆ちゃんはまだ生きてるんだろうか?

俺の部屋真下の部屋には痴呆症の婆さんが住んでいて、たまに大声で何事か叫んだりする。

時々迷惑代わりといってヘルパーさんが食べ物くれたりするので一人暮らしの俺的には大助かりだ。



ちょっと気になったので様子見してみようか、このアパートはボロくて壁も薄い。

床だって当然薄い、以前俺の本棚が床をぶち抜いて婆ちゃんの部屋に落っこちたことがあるくらいだ。

今は板で補強してあるが、床板を外せばすぐに下の部屋を覗ける。



「婆さん、生きてる〜? って、ゾンビ入りまくりじゃんっ!?」

「………………」



下の部屋を覗き込んでビックリ、婆さんの部屋にゾンビが三体もうろついてるし!

で、何故か婆ちゃんは無事、いつもどおり座椅子に腰掛けてモグモグみかん食ってた。



どういうこっちゃ? 黙々とみかんを頬張る婆の周囲をうろつくゾンビども、シュールすぎる光景だ。

ていうかなんで婆ちゃん襲われないんだ?



「おーい、婆ちゃん大丈夫かよ!? 早く逃げた方がいいぞ、ゾンビに囲まれてるぞ!」

「………………」



返事がない、これは別に婆ちゃんがゾンビ化してるわけじゃなくていつものこと。

末期の痴呆症だからろくに返事も返してくれないんだ、でも一部のモノにはよく反応してくれる。

例えば金、特に小銭のジャラジャラ音が大好きなのだ。

何でもこうなる前はかなりのケチケチ婆だったらしく、守銭奴と家族からも嫌われていたらしいとヘルパーさんが愚痴っていた。



こうなったら小銭で婆ちゃんの意識を覚醒させてなんとか脱出するよう誘導するしかないな。

こんな婆ちゃんでも見捨てるのはちょっと忍びないし。



だったら俺が直接降りて助けに行ったらどうかって? 

それは御免被るね、さすがにそこまで危険を冒すほどお人好しじゃないんで。

俺にできることは精々ここまで、それ以上何かしてあげる義理もないしね。



「婆ちゃん、ホラ、お金だよ」

「!!?」



財布から取り出し、ジャラジャラと小銭を鳴らしてみる、案の定婆ちゃんは超反応し始めた。

ガバッ、と立ち上がり天井から覗き込む俺に向けて大興奮しながら婆とは思えない動きでピョンピョン跳ねまくる。

よし、元気になったな、ちょっとなりすぎたという感じもするが、ともかく後はできるだけ穏便に脱出するよう誘導して―――



「あたしんだよ! あたしんだよ! あたしんだよ! アッーー!!」

「ちょ、おまっ!?」



婆ちゃんが元気になった瞬間、これまで大人しかったゾンビどもが一斉に婆ちゃんに齧り付いた。

ものの数秒で婆ちゃんは屍と成り果て、小銭をジャラジャラ鳴らしていた俺はいろいろ気まずい状況になってしまった。



……な、なんかごめんな婆ちゃん、俺が余計なことしたせいで死んじゃったみたいでさ。

とりあえず両手を合わせて「南無〜」とだけ言っておいた。



だけどなんで婆ちゃんは最初襲われなかったんだろうか、大声を出さなかったから? 暴れなかったから?

よくわからんがこれは考えてみる価値がありそうだ、婆ちゃんの犠牲は無駄にはしないよ。



■02



昼間を過ぎてもTVで流れるニュースは相変わらずで、ゾンビ大発生はいぜん進行中。

ちょっと変わったことと言えばアメリカが敵対国家に対して核爆弾を落とした事くらいだろうか。

ドサクサに紛れてやらかしちまったっぽい、報復攻撃でアメリカも何発か喰らったらしいけど。



いよいよリアル世紀末の様相を呈してきたわけだが、ネット掲示板では相変わらずのお祭り騒ぎ。

ゾンビスレで溢れ返る掲示板を見る限りまだまだ生き残りの暇人は多そうだ。

そこで俺はちょっとした思い付きでこんなスレを立ててみた。


−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−

【篭城】ゾンビから逃げ延びるスレ【脱出】 

1 :名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:05:29 
現在ゾンビに囲まれたボロアパートで篭城中。
自衛隊が頼りにならないんで自力で脱出したいんだけど何か良い方法ない?

ちなみに漏れのスペックうp
・24歳、身長174cm、体重68kg、普通のサラリーマン。
・アパート二階部屋、扉は一応鉄製。
・特技なし、普通免許あり。
・家で探した武器っぽいの(フライパン、包丁、ダンベル、ドライバー)

童貞のまま死にたくねぇ! オマイラの知恵をかしてくれ!

2 :名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:05:41
童貞乙wwww

3 :名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:06:19
童貞乙wwww

4 :名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:07:50
それはともかく童貞乙wwww

5 :名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:12:43
童貞スレと聞いて

6 :名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:15:27 
オマエラwwwwwwwww

18:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:35:19
無理じゃね?
どう見ても勝ち目なし。

>>1のように貧弱一般人はゾンビの餌でしょ。
アメリコ人も核で吹っ飛んだっぽいしwww

こうなったら皆でゾンビっ娘といかにセックルするか考えようぜ!

21:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:38:14
他のゾンビスレでまとめられたゾンビの特徴をあげてみる。

ゾンビの特徴 《確認済み》
・動きはそんなに早くない(ロメロ映画みたいなカンジ
・持久力は抜群(体力無限?
・筋力も凄い(死んでいる為かリミッターが飛んでいるみたい、腕を引き千切るレベル
・噛まれると毒かウイルスかで死にます(確認済み、別スレ参照 
・噛まれて死んだ後はゾンビ化します(ただし時間差あり 
・頭を撃たれる、破壊されると活動を停止します(確認済み、別スレ参照 
・生きている人間以外は襲いません(犬、猫は完全無視、猿も無視
・隠れてても人間がいそうな場所が分かる(視覚?嗅覚?聴覚? 
・一旦人間を見つけたら猪突猛進(ワラワラ群がります、ゴキブリのごとく
・集団行動が大好き、バスすら取り囲んで押し倒す 

ゾンビの特徴 《未確認》
・傷口からゾンビ体液に触れても大丈夫、噛まれる事だけが危険(未確認、別スレ参照 
・引掻かれてもゾンビ化はしない、噛まれる事だけが危険(未確認、別スレ参照 
・死にたては全速力で走る、しかも怪力(火事場の馬鹿力状態? 
・何故か数年経っても活動して死後硬直や腐敗等の理屈が通じない(未確認、映画での設定?

27:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:43:33
ゾンビスペックを見たところスレ主どころか日本人には勝ち目が薄そうなんだがどうよ?

29:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:45:56
>>18 ゴムすればおk
フェラさせたかったら抜歯、モムモム良い感じかもしれんwwww

35:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:58:37
漏れもスレ主と同じ境遇だからageてみる

44:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:05:09
自衛隊の避難所から携帯で書き込んでるけど
ヤバイはここ、さっきからゾンビ発生しまくりんぐ
運び込んだ怪我人とかどんどんゾンビ化しとる

チャンスだからどさくさに紛れて銃GETしてみるwwww

45:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:08:41
>>44 オワタ\(^o^)/

69:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:22:30
なんかgdgdだな
ここいらでちょこっと漏れの考えた作戦を聞いてくれ

ベランダから紐つけたダンベルとか投げてゾンビ攻撃 
↓ 
届く範囲でゾンビ倒す、ダンベル回収
↓ 
繰り返せばそのうちゾンビ殲滅
↓ 
ウマー

73:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:27:34
>>69 どんだけ日数かかるんだよwwww

76:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:28:03
きっと>>69はイチロー並みの投手なんだよwwww

105:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:39:00
逆に考えるんだ

『ゾンビを倒すんじゃなくて、ゾンビから倒されない』

つまりゾンビのマネをすればおk!!!

106:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:40:17
>>105 天才降臨 
ありがとうジョースター卿

109:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:43:52
>>105 おまwwwwゾンビ映画界のタブーをwwww

113:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:45:09
だけど実際>>105の考えは良いかもしれない
連中なぜか仲間同士は襲わないし

問題はいかにゾンビに正体バレないように誤魔化すかだな

133:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:59:11
見た目、匂い、後は足音?
でも一番の問題はゾンビのど真ん中を歩く度胸があるかどうか

148:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:05:07
見た目はそんなに気にしなくてもよくね?
ゾンビって白内障みたいになってるし、あんなんじゃ光の強弱くらいしかわからんぞ。

と、医学生の漏れが意見をいってみる。

153:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:07:51
三日間着っぱなしの黄ばみパンツを釣り竿でゾンビの前に晒してみた
狂ったみたいにむしゃぶりついとるwwwwwうぇwwwwうぇwwwww

154:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:08:32
>>153 これは酷いwwww

161:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:11:34
>>153はフェロモンマスターwwww女は股を開くwwww

165:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:15:28
>>153だけど、さっきのパンツにファブリーズしたら寄ってこなくなったwwww
消臭効果バツグンwwww

173:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:23:07
じゃあ俺もファブってくるわ

177:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:25:53
漏れはゾンビの群れに目覚し時計投げてみた
超集まってるよ、全員でガチャガチャ弄くってものの数分で壊されちゃったけど

音で感知してるのは間違いないね!

225:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:43:12
今までのまとめると

視覚→光の強弱程度
嗅覚→体臭?フェロモン?(ファブリーズで無香化
聴覚→大音量に寄って来る

228:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:45:47
つまり重要なのは匂いと音というわけだ
結構いけそうじゃね?

239:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:54:41
対ゾンビ用ステルス迷彩作ってみた

・ファブった服
・布巻いた靴

とりあえず突貫してきま

240:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:55:11
>>239なんという勇者wwww

241:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:55:43
>>239せめて棍棒もってけwww

255:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 15:00:03
>>239はどうなったん?

278:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 15:17:52
>>239 連絡なし、死んだっぽいな、南無〜

293:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 15:33:37
>>239です、何とか逃げ切ってきますたwwww

途中でバレてメチャクチャ追いかけられて死ぬかと思った。

294:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 15:34:01
>>294勇者の帰還wwww

295:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 15:34:53
>>294 お帰り、無事で何より

327:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 15:47:58
いや、ぶっちゃけ自分でも「死んだ!」って思ったんだけど
近所の掃除用具しまってるステンレスロッカーに隠れたらあっさり逃げ切れた
 
331:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 15:52:24
>>327 それなんてクロックタワーwwww

344:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 16:00:41
個人的な感想だけど漏れの場合、視覚とか嗅覚とか聴覚じゃなくて
何か別の原因で見つかったっぽい
自分で言うのもなんだけど結構完璧にゾンビ演じてたし

346:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 16:01:02
ヘビの熱センサーとかコウモリの超音波センサーみたいなもんか?
もしくは蚊みたいに二酸化炭素を感知してるとか?

どんだけ進化してるんだゾンビどもwwww

351:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 16:05:49
息止めればおk

359:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 16:08:38
>>351 それはキョンシー対策wwww 

361:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 16:10:06
じゃあ身体に泥塗って体温を誤魔化す

362:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 16:10:44
>>361 それはプレデター対策wwww

387:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 16:24:18
なんか万策尽きたっぽいな、他になんか考えある? 

442:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 16:50:09
スレ主だけど、ちょっと気になったことがあった
漏れの下の階の痴呆婆さんなんだけど、三匹のゾンビに囲まれても襲われて無かったよ 
平然とみかん食ってたwwww
漏れが声かけて騒いだら襲われちゃったけど

444:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 16:51:43
>>442は外道過ぎるwwww

さすがに痴呆婆に食欲は湧かなかったのでは? 

447:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 16:53:35
婆無双wwww

451:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 16:55:50
>>442の話で気になったのが騒いだら襲われたということ
つまり音が原因なのか?
加齢臭でわからなかったとか? 
それとも別の原因?

483:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 17:12:23
痴呆症の特徴は脳に現れるよ
一部の機能がダウンする
一昔前に騒がれたゲーム脳と同じ感じ
α波だかβ波だかの脳波がほぼ無くなる
で、キレやすくなったり、物忘れが激しくなる

つまりゾンビみたいになるわけだwwwww

487:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 17:14:01
ゲーム脳、オマイラのことだなwwww

495:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 17:16:28
>>483 つまり頭にアルミホイル巻いて毒電波を防げばおk 

496:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 17:16:56
>>495は月島兄wwwwレイパー乙wwww

566:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 17:38:03
ファブっても3時間くらいしか持たないんじゃ正直話しにならないな
せめて6時間はもって欲しいところだ

572:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 17:44:25
汗をかくから臭いが発生する
汗を利用して細菌が繁殖することで臭いが出る

・自分自身→制汗スプレー
・服→ファブリーズ

この併用でおk
少なくとも効果時間は倍くらいには伸びるはず!

582:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 17:52:42
>>566 じゃあ香水とか匂いのきついので誤魔化すのは?
電車とかバスに乗ったときのババアみたいなアレ

587:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 17:53:53
香水自体が無い、男で香水持ってる椰子とかいる?

599:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 17:58:17
>>587 俺持ってる、彼女から貰ったwwww

600:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 17:58:54
>>599死ね、氏ねじゃなくて死ね!!

601:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 17:59:21
うぇwwwwうぇwwwwうぇwwwww

633:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 18:07:58
じゃあゾンビの血でもかぶれば?
死臭すごいし、少なくとも匂いは誤魔化せる

635:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 18:09:34
>>633 発想がサバイバルすぎるwwww
どこのコマンドーだよwwww

641:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 18:11:46
>>633 そう言えば前にもののけ姫でそんな奴いたな
いのししとかクマの皮かぶって人間の臭い誤魔化すとかいうの

646:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 18:14:03
いまこそ言える

生きろ!

648:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 18:15:18
>>646 アシタカ乙wwww

694:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 18:37:58
結構意見も出尽くしたっぽいからそろそろまとめるか

《効果確認済み》
視覚対策→黒っぽくて地味な色の服、頑丈なの、皮ジャン
嗅覚対策→ファブリーズor香水、両方無い場合はゾンビの血でもかぶれ
聴覚対策→底が柔らかい運動靴or布巻いた靴

《効果未確認》
熱センサー対策→身体に泥塗りたくれ
超音波センサー→自分も超音波出して相殺だ
二酸化炭素センサー対策→息止めろ
脳波センサー対策→アルミホイル頭に巻け

703:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 18:48:31
結論:諦めろ

さて、人生最後のオナヌーでもするか

754:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 19:23:09
スレ主です、いろいろご意見ありがとうございました
一応スレに出た内容で実行できそうなのはやってみようと思います
とりあえず生き残れたら結果報告します、でわ!


−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−

■03



一通りスレが終わるまで掲示板に張り付いていたらいつのまにか夜七時を回っていた。

外は暗く、ゾンビの呻き声もする、電気はつけない。

誘蛾灯に集る虫みたいに家の光に集まって来られても困るからね。



さてと、スレでも議論されていたようにゾンビと戦おうとかそういう勇者的な考えはナシだ。

ろくに武器もない状態で勝てるわけがない。

目指すはゾンビの目(?)を誤魔化し、戦うことなく脱出するための作戦。

一応スレでまとめられた対策でも一通り実行してみますか。



で、しばらく家探ししたところ代用品となりそうなものをいくつかを見つけた。

まず服だが、皮ジャンは高価で持ってなかったので厚手のコートで代用する。

これなら噛みつかれても容易くは食い千切られまい。

怪力で骨は折られるかもしれないけど。



次に靴、これはいつも履いている皮靴にタオルを巻いた、ちょっと履き心地はよくなさそうだが仕方ない。

で、問題のファブリーズor香水なんだが、ちょうどファブリーズを切らしてしまっていた。

香水などもちろん無い、いまさら後悔しても遅いが買って置けばよかった。



仕方が無いのでコートにゾンビの血をぶっ掛けることに、正直嫌だけど。

最も手近なゾンビとして一階の婆さんに目をつけた。

床板を外して覗き込むと案の定婆さんがゾンビ化してうろうろしている。

好都合なことに他の三匹のゾンビの姿は見えない、これはチャンスだ。



「婆さん、成仏してくれよ!」



俺はダンベルに荷造り用の紐を括り付けたやつを構え婆さんの脳天めがけて投げつけた。

ガズンッ、という嫌な音を響かせて倒れこむ婆さん、一発ストライクだ!

倒れた婆さんはピクリとも動かない、死んだかな?

一応ダンベルを回収し、もう一度婆さんの頭へと投げつける。

グシャリ、と音がして婆さんの頭半分が崩れた、グロい。

ここまでやれば流石に大丈夫かな、そう判断して今度は婆さんの遺体を回収にかかった。



とはいえ、この状態で一階に下りるのはあまりに危険、そこで手間はかかるが安全策をとることにした。

輪っかを作った紐を首、手足にそれぞれ通して引っ張り上げるようにして婆さんの体を回収する。

途中で力の加減を間違えて何度か落としてしまったがなんとか無事回収に成功。

婆さんを回収するために広げた床の穴はかなり大きい、塞ぐ気にもなれないので放置しておこう。



とりあえず俺は婆さんの死体を包丁で刻んでコートの上にばら撒いた。

念のため軍手にも血の臭いを付けておくことにした。

正直、作業中は自分の正気を疑ったが、やり終えてみればそれほどたいしたことも無かった。

社会見学で豚の解体作業を手伝ったことがあるのが幸いしたのかもしれない、やっておいて良かった。



バラバラにされた婆さんには悪いが、生き残るためなら俺は何だってするつもりだ。







ともかくコートに血の臭いが染み付くまで俺は別の作業に映ることにした。

本当かどうかわからないがその他の対策もできることはやっておくべきだろう。

超音波を出したり、息を止めるのは流石に無理。

泥を塗りたくるのも、肝心の泥が手元に無い。

よって唯一手元にあるアルミホイルで脳波対策をしておこうと思う



直接頭に巻くのは難しいしちょっと手間だ。

そこで今は使っていないフルフェイスヘルメットにアルミホイルを貼り付けようと考えた。

ちなみに今バイクは持っていない、三年前に車検が切れたので中古屋に売り払ってしまったのだ。

外側にアルミホイルを張ると銀色が目立ちそうなので内側に貼り付けることにした。



この安物ヘルメットの中身は基本的に三つの構造からなるわけだが、外装のプラスチック部分、中層の発砲スチロール部分、内装のクッション部分。

俺は分解したヘルメットの外装内側部分にペタペタアルミホイルを貼り付ける作業に没頭した。

やがて手持ちのアルミホイルを使い切る頃には二十層以上の厚みを誇る手作り脳波遮断ヘルメットが完成した。

本当に効果があるのかどうか怪しいが、痴呆婆の件もあるので俺はこの脳波説を意外と当たりなんじゃないかと踏んでいる。



その他に少量ではあるが水(ペットボトル)と食料(カップラーメン)も持っていく。

着替えも一日分用意してリュックの中につめた、安全圏に辿り着けたら着替えよう。

そのほかにノートパソコンと包丁、ドライバーも入れておく、できればこの二つは使うことが無いことを願いたい。

一通り脱出準備が完了し脱出決行は明日の朝にすることにした。

今日はもう暗いし寝よう、明日に備えて体力を温存しとかなきゃね。







さて、本日はゾンビ大発生から三日目、いよいよ脱出当日である。

玄関前に立ちながら両手を合わせてどこかの神に祈りをささげる。



「神様どうか上手くいきますように、もし失敗したらあまり痛い思いしないで死ねますように」



ナムナムと両手を擦り合わせてたっぷり10分ほど祈ってから玄関の鍵を開ける。

ギギギ、と錆びた音が響く中静かにドアを開けていく。

恐る恐る慎重に顔を出して外の様子を伺うと通路の一番奥隅ゾンビが一体。

だがこちらに気がついている様子はない、だけど油断は出来ない、いつでも部屋に駆け込めるようにしながらそっと玄関から出る。



ゾンビは全く気が付いていない、慎重に階段を下りると階段終わりにも一体ゾンビがいる。

丁度すぐ側を横切る形になってしまうが、覚悟を決めるしかない。

ゴクリと唾を飲み込みこれまで以上にゆっくりと、慎重に階段を下りていく。

念のため手に持っているドライバーを握る手にも力がこもる。

神様、どうか俺にご慈悲を、南無三ッ!

ついにゾンビと横切る瞬間、一瞬だけ目が合ったような気もした……。

が、特に何もしてこず俺は無事通過できた。



ゾンビと離れようやく一息つける距離まできた時、俺は小さくガッツポーズを決めた。

や、やった、成功だ、これでもうゾンビを必要以上に恐れる必要はないぞ!



俺は上機嫌で歩き出した、あくまでゾンビのマネをしたゆっくりした歩調でだが。

なにはともあれ俺の脱出は成功したのだ。







脱出に成功し、フラフラ闊歩するゾンビどもを尻目に街中を悠々と歩く。

ちょっとだけ優越感があるが、油断は禁物だ。

もしこの場で俺の正体がゾンビどもにバレれば間違いなく命は無い。



体力的にも貧弱一般人な俺は100mも全力疾走すれば息が切れてしまうほどなのだから。

多分ゆっくり走っても2km持たないんじゃないかと思う。

高校時代には10kmマラソンとか余裕だったのに、どれだけ体力が落ちていることやら。



などと考えながら今後の計画を思い返す。

とはいえそう大そうな計画じゃない、昨日考えた行き当たりばったりな計画だ。

.▲僉璽斑出(済)

△匹海大きな避難所に転がり込んで、三食面倒見てもらう

自衛隊がゾンビを退治するorゾンビが腐敗して全滅するまで待つ

だ欧譴銅由に、平和万歳

まあ、概ねこんな感じ。



というわけで、とりあえず近所で一番大きな指定避難所であるS市第三中学校を目指そうと思う。
※イニシャルだけなのはカンベンしてね、実名だすとイロイロあれだし。

確かあそこの体育館が災害時に避難所になるって聞いたことがある。

つまり少なくとも避難民を守るために警察なり自衛隊が常駐しているはず、つまり安全地帯というわけだ。

ゾンビに負けたらしい自衛隊だけど、銃を持ってるぶん個人でいるよりはマシだろう。



あ、でもここからだと結構距離あるんだよなぁ、しかも俺はゾンビウォークだし、今日中に辿り着けるだろうか?


■04



半日ほど歩いてようやく目的地までの距離を半分歩ききった。

正直疲れた、四六時中ゾンビに囲まれているというのもあるけど慣れないウォーキングで足も痛い。

どこか空き民家でもあれば一休憩したいところなんだが。



とはいっても大抵の家は脱出する際にしっかり鍵をかけてあるらしく玄関はガッチリ閉まっており。

窓ガラス等を割って入ろうとすれば音でゾンビを呼び寄せかねない。

中には未だ篭城中の民家も多く迂闊に入れば先住人にゾンビと間違われ襲われかねない。

そういった理由から、なかなか希望の叶う民家は見つかるものではなかった。



キョロキョロ周りを見渡しながら歩いていると、ようやく丁度良い具合に玄関が開きっぱなしの民家を発見した。

玄関が開いているということはまず無人であるということ。

一方でゾンビが侵入している危険性もかなり高いということでもある。

慎重に足音を立てないように玄関をくぐり扉を閉める、鍵はかけない、いざという時すぐ逃げ出せるようにしておかないと。



一階のリビングと台所、和室等を一通り見回ってゾンビがいないことを確認。

続いて二階へ、音を立てないように上ったつもりだが階段が古いためか一歩毎にギシギシ音が響く。

もしこれでゾンビがいたら気が付かれてしまうのだろうか?

戦々恐々しながら三つある部屋を一つずつ確認していく。

まず二つの部屋を確認、ゾンビはいなかった。

残る一室を調べようとしてゆっくり扉を開く、ドアの隙間を3cmほど開けて中の様子をそっと伺う。



ビクリ、と体が硬直した、いた、ゾンビが一匹いた。

こちらに背を向けてぼうっと突っ立っている、血塗れパジャマ姿の男。

辛うじて見える横顔からわかるのは高校生くらいの年齢だろうか。



未だこちらに気がついてはいないが、これからの判断にちょっと困る。

殺すべきか、逃げるべきか。

危険は冒すべきじゃないと理屈ではわかっているが、好奇心は倒せるかどうか試してみたいと思っている。

アパートで婆さんゾンビを倒した時とは違いリスクは高い、だが今後のためにも試しておいた方が良い気がした。

それに今の俺の装備なら完全不意打ちが可能だ、頭部に必殺の一撃を加えてやればきっと大丈夫だろう。



この時、俺はきっと調子に乗っていたんだろう、アパートを上手い具合に脱出できたこともこの無茶な行動を後押ししていたのかもしれない。



そーと近寄りかなりの至近距離まで接近していく。

ドアは開けっ放しだ、いざという時はすぐに逃げ出す準備はおk。

右手にドライバーを構え狙いをゾンビの後頭部に定める。

未だこちらの存在に気がつかないゾンビは「あぁー」とか「うぅー」とかうめきながら何をするでもなく突っ立っている。



殺るなら今ッ! 渾身の力を込めてドライバーを振り下ろす、南無三ッ!

ズガッ、という音とともに手元に伝わってきた頭蓋骨を付き割る感触、あまりの気持ち悪さについドライバーを突き刺したまま手放してしまった。



ゾンビは一度倒れるものの、未だ死にきれていない様子でドライバーを頭に突き刺したまま俺のほうに這いずってきた。

その姿は地獄から道連れを求めて這い上がってきた亡者を連想させた。

世にもおぞましい光景につい我を忘れて逃げ出してしまう、すぐさま部屋を出て扉を閉める。



俺はドアを押さえたまましばらく震えていた、ドア一枚を隔てて向こうではゾンビが弱弱しい様子で扉をカリカリと引っかいていた。

しばらくそうしていると、やがてゾンビの声が聞こえなくなりドアを引っ掻く音も途絶えた。

恐る恐る扉を開けてみるとゾンビはドアの前で息途絶えていた。



ホッ、と一息つく、なるほど今回のことで少し学んだ。

ゾンビは頭にドライバーを刺したくらいじゃすぐに死なないんだな、痴呆婆ゾンビがダンベル一撃で死んだことでちょっと勘違いしていたようだ。

頭部は急所ではあるが、大きく破壊しないとゾンビが死ぬまでに反撃を受けてしまう危険性があるということ。



今後は一撃必殺を心得よう、といっても銃火器があればそんなこと考えなくてもいいんだろうけど。

つくづく日本が銃規制されていることを恨みたくなってきたよ。

俺は動かなくなったゾンビに対して手を合わせ「南無〜」と冥福を祈った。



そして最大の反省点、当初の『ゾンビと極力戦わない』という前提を無視して危険を冒した俺の無謀。

迂闊に命を危険に晒してしまったことは深く反省しなきゃね。

今後は自重しよう、危険には近づかない! 戦闘は避ける! 敵からは逃げる!

戦うのはどうしょうもないときだけにしよう、どこまで守れるかわからんけど。

テンション上がると忘れそうだし、ちょこっと不安だ。







ゾンビをブチ殺し一応の安全を確保した後、俺は改めて家内の探索をはじめた。

正直、火事場泥棒をしているようで最初は気が咎めたが、やっているうちになんだか楽しくなってきて気にならなくなってきた。

なんだか宝捜しをしているようでワクワクしていたのだ、元来男というのはこういった単純な生物なのかもしれない。

海外では墓荒らしのことをトレジャーハンターって言うらしいし、浪漫だよね。



とりあえず缶詰めとカップラーメンをいくつか補充できたのは助かった。

いざという場面に備えて食料はいくらあっても困るものじゃない。

ついでに薬箱もあったので貰っておく、一通りの常備薬は完備しているようだ。

あと、念のためアルミホイルも補充しておくことにした、どこかで使うことになるかもしれないしね。



そして一番嬉しいのはファブリーズ等の消臭アイテムが複数見つかったことだ。

消臭スプレーに制汗スプレー、これさえあればもうゾンビの血生臭いコートを着る必要もない。

俺は急いでコートを脱ぎ捨て風呂場を借りてシャワーを浴びた。

ライフラインはまだ生きていたので電気も水も供給されている、いつ止まるかわかったものではないが。

俺は既に鼻が麻痺していたので気にならなかったがさっきまでの俺は相当血なまぐさかったに違いない。



綺麗さっぱりした後、代わりとなる上着を探してまた家探しさせてもらった。

例のゾンビ高校生の部屋で皮ジャンを見つけたのでありがたく頂くことに。

下着から上着まで全部ファブって自分自身にも制汗スプレーを吹きかけておく。

ゾンビスレでも言っていたように5・6時間毎に吹きかけ直せば大丈夫だろう。

心強いアイテムも増えて俺はホクホク気分であった。



だが残念なことに武器になりそうなめぼしいモノは見当たらなかった、ドライバーではイマイチ頼りない。

いざという時のためにも、できればもっと強力な鈍器が欲しかったところであったが。



ふと、リビングから庭先に目をやると庭の隅に小さな物置が見えた。

あそこなら何か武器になりそうなモノが見つかるかもしれない、そう思って庭へ出る。

それなりに広い庭だ、芝生も植えてある、軽く見回しリビングからは死角となる位置に犬小屋を見つけた。

覗いてみると首輪を鎖に繋がれた様子の犬が衰弱した様子で蹲っていた。

ちらりと俺に目を向けるも吠える気力も無いのか眼を伏せてまた蹲る。

大型の、狼っぽい見た目の犬で、確かシバリアンハスキーっていったか、いや、シベリアンか。



この三日間水も餌も貰ってないのだろう、このまま放置しておくのも哀れなので台所から水とドックフードを探して持ってきてやった。

犬はすごい勢いでそれらを平らげ、少しだけ元気を取り戻した様子だった。



俺は犬を繋いでいた鎖を外し解放する、もうこの家の主人は帰ってこないのかもしれないし。

俺が殺した高校生ゾンビが家の主人とは思えないが、少なくともこの家がこんな状態になっている以上まともに脱出したとは考えにくい。

このまま鎖でつながれて飢え死にするよりも野良犬として生きていくチャンスを得るほうが良いだろう。







犬を解放した後、俺は改めて物置を物色しはじめた。

その中でなかなか有用そうだったのがシャベルと金槌である、特にシャベルは重量もあり振り回せばかなりの攻撃力を発揮してくれそうだった。

無闇にゾンビと戦うつもりは無いがいざという時は一撃必殺を心得なければならない、その点でシャベルは非常に心強いアイテムである。

ただし、大きくて重いので持ち運びには多少不便しそうであるが。



その後は2時間ほどリビングで休憩を取り、ついでに昼食も済ませた。

カップラーメンと缶詰めという妙な組み合わせだが腹は十分に膨れた、腹が膨れれば元気もでる。

こんな状況で我侭は言わない、無駄だってわかってるし。



なぜかその間、元気になった犬に懐かれ遊び相手をすることになったがこの犬はわかっているのだろうか?

俺が主人(二階にいた高校生ゾンビ)を殺した相手かも知れないということを。

懐かれるのは素直に嬉しいが、状況を考えるとあまり喜んでもいられないというのが正直なところだった。







再出発の準備を整えて玄関を出た。

右手には新しい軍手をつけてシャベルを携えている。

少々重たいが、今のところコイツが一番攻撃力ある武器なので手放す気にはならない。

ついでに役に立ってくれるよう願いを込めて『シャーリーン』という名前をつけた。



リュックも荷物が増えて少し重たいがどれも必需品だ、捨てる気はさらさらない。

つまりこれからの道程はより疲労しやすいということで、いざという時に体力が空というのも危険すぎる。

自身の体調に気を使いながら細々と休憩を取りつつ移動する必要性があるだろう。

休めそうな空き家があったらチェックしておこう。



家を出てしばらくして、先ほどからずっと俺の後をつけてくる存在が気になってきた。

犬である、さっきの家で助けた犬がずっと俺の後をついてくる。

餌をあげたから懐かれたのだろうか? いやいや、どんだけ人懐っこい犬なんだよ。

振り返れば尻尾を左右に揺らしながら犬が俺を見上げる、うーん、無垢な瞳だ、癒される。



とりあえずゾンビだらけのこの場で吠えないだけ良い子だとは思うんだが。

俺はしゃがんで犬を撫でると甘えるように擦り寄ってきた。

ふと、首輪に目がいく、小さな文字で名前が書いてあった。

『ラッキー』と書いてある、ふむ、これがコイツの名前か。

顔を寄せてヘルメットのバイザーを開け小さな声で「ラッキー」と呼ぶとベロベロ顔を舐められた、正解らしい。



何を考えてかよくわからんがラッキーが俺についてくるなら邪魔にならない限りは世話するとしようかな。

ドッグフードならそこいら辺でも手に入るだろうし、流石にこれを人間は食わないだろう、相当追い詰められない限りは。

それに、いざとなれば貴重な非常食にもなりそうだしな。



こうして俺に奇妙な相棒が出来た。



■05



出発してから二時間ほど歩いただろうか、そろそろ夕暮れだ。

目立たないようゾンビのマネをしながらゆっくり歩くのでえらい時間がかかる。



今日は避難所到着を諦めてどこかで休んだ方が良いかもしれない。

暗い中で歩き回るのは危険だし集中力もいるだろうから疲労も大きいだろう。

真っ暗闇でゾンビとぶつかって襲われた、なんて洒落にもならない。



めぼしい空き家が無いかどうかチェックしながら歩いていると、かなり気になる家を見つけた。

玄関が開いているとか、ゾンビが少ないとかじゃなくて、その全くの逆。

厳重なバリケードで入り口が固められ、異常なほどのゾンビが群がる家を発見した。

家の周囲は高さ2m程のブロック塀で囲まれ、家への入り口には大量の家具が積み上げられて容易には突破不可能なバリケードと化している。

ゾンビ連中はそれでも家の周りに群がり虚しく呻き声を上げている。



なんとなく中に誰かが篭城しているということはわかるのだが、なぜこうもゾンビが集まっているのだろうか?

これまでも人が篭城しているらしい家はいくつか見かけたがゾンビはそれほど群がっていなかった。

この家だけゾンビの密集率が異常だ、何か気になる。

バリケードが頑丈だから? いや、逆だろう、侵入できないなら意味がない。

大きい音でも立てているのだろうか、だが今のところ全く何かしらの音は届いてこない。



周囲のゾンビに注意しながらそっと中を覗こうと近づく、正面玄関はゾンビが多すぎるので側面の庭側から。

転がっていた大型ゴミ箱を足場にして塀越しに中を覗き見る。



「……うわ、こりゃ酷い」



そこにはかなりヘビーな光景が広がっていた。

こちらから見える家の中、大きな窓ガラス越しに見えたリビング内では5人の男女が見える。

男四人、女一人、なんとなくこれだけでも想像できそうだが、一応簡単に説明しておこう。

・女 → ガムテープで両手足縛られ、全裸、でもって体中に青痣っぽい痕

・男 → 全員裸、ガラの悪そうな兄ちゃん集団、チ○コまるだし

まあ、この状況だけで十分過ぎるほど何があったのか想像できるだろうけど。

リアル陵辱ですね、わかります。



ゾンビが発生して三日目にしてもうコレかよ、まさにリアル世紀末だな。

エロゲとかでレイプとか輪姦とかNTRのジャンルはそれなりにやってきたけど、現実は遥かにグロいなぁ。

エロ本とかなら俺みたいなのぞき野郎はアレ見てハァハァするべきなんだろうけど、正直無理ッス。

あんなリアルな陵辱風景見せられたら一般人はドン引きして勃ちもせんわ。



俺がそんなことを考えているうちにも男の一人が女の股を無理矢理開いて腰を振りはじめた。

そのうえ何が気に入らなかったのか怒鳴りながら、女の顔や腹をボコボコ殴る殴る。

うわぁ、なんというかサディスティック、今度は首絞めてるし、流石に死ぬんじゃないかアレは?

でもって周りの連中はそれ見てゲラゲラ笑ってやがる、まさしく外道と言うべきか。

人間ああはなりたくないものだ、反面教師とすべきか。



さてと、様子見はこんなところでいいか、あんまりじっと見てて向こうに見つかるのはご勘弁だし。

ブロック塀から降りると俺はゾンビ集団の群がる家から少し離れて手ごろな地面に腰を下ろした。

同じように、後を付いてきたラッキーも俺の横におすわりする。



まずは落ち着いてこれまで集めた情報で少し考えてみよう。

なぜあの家にだけゾンビ連中が群がるのか。

最初に原因として考えられるのは騒音、あれだけレイプ祭りで馬鹿騒ぎすれば多少は寄ってきてもおかしくはない。

だが、それでも大音量というわけではない、家から10mも離れたら殆ど聞こえてこないレベルだ。

じゃあ他には? 臭い、そう臭いだ。

ゾンビ連中は『生きた人間』の臭いを嗅ぎ取ってくる、一日中セックル三昧のあの連中ならさぞかし『生臭い』だろう。

それと脳波も関係しているかもしれない、さっきの光景を見た限りでもすさまじくエキサイティングしながら腰振ってたし、興奮関係で何か脳波がビンビン出ているのかも。



結論としては『エロいことするとゾンビが寄って来る』でいいだろうな。

ホラー映画でも真っ先に死ぬのはカップルからだし、こんなところでもまた一つ謎が解けたぜ。

童貞の俺にはあまり関係ない事柄かもしれないけどね。

あ、でもオナヌーする時は気をつけた方がいいのかも、あれだって結果的には同じようなもんだし。



……安全地帯に辿り着くまではオナ禁だな!







考察も一段落して、さて、どうすべきか。

勿論あの家に捕まってリアル陵辱されてる可哀想な姉ちゃんを助けるべきかどうかという問題だ。



人道的には助けに行くべきなんだろうが、個人的にはちょっと躊躇してしまう。

なぜかって? もちろん俺が一般人だからだ、シャベル(シャーリーン)で武装していようと所詮は貧弱一般人。

あんなガラ悪そうな兄ちゃん四人組に勝てるわけない、銃で武装するか、変身ベルトでもないと逆に殺されてしまうわ。



かといって見殺すのもちょっと気分が悪い、何よりも若い姉ちゃんだしね。

上手く助ければ、お礼にヤラせてくれるかも、いや、流石に夢見すぎか。



助けるとしても正面突破は無理、となると側面から攻略すべきだろう。

つまりはゾンビ戦略と同じというわけだ、要は『四人組と戦わず、姉ちゃんだけを助け出す』。

あの連中だって24時間休まずレイポォしているわけじゃないだろうし、深夜になれば眠るだろう。

その時が狙い目だ、こっそり忍び込んで姉ちゃんだけを助けて即離脱、これしかない。



あの家の対ゾンビ防御力は正面のバリケードを見た通り大したもんだが、人間に対しては意味がない。

たった2m程度の塀なんて足場を使えば簡単に乗り越えられるし。

問題はどうやって家の中に侵入するかだが、おそらく流石の連中でも戸締りには気を遣うだろうし、大きい音を立てると連中にバレる恐れもある。

ゾンビ連中は聞こえようがバリケードに阻まれて入って来れないだろうし、さてどうすべきか。



考えに煮詰まった俺は気分転換にリュックを漁り何か使えそうな道具がないか探してみる。

カッター、流石にこれで窓ガラスは切れないだろう、それほど頑丈でもないし武器としてもあまり期待できない。

ペンライト、リビングにいる姉ちゃんに合図でも送るか? でも彼女縛られてるし無意味っぽいな。

ガムテープ、なんに使えと? あ、いや、まてよ、コレは使えるんじゃないか!?



俺はとある妙案を思いつきそれを実行に移すべく、夜がふけて連中が寝静まるまでゾンビ蔓延る屋外で静かに座り込んで待つことにした。



■06



深夜、時計を確認すればもう3時半である。

実はゾンビが襲ってこないのを良い事に油断していた俺はちょこっとだけ寝てしまっていた、もちろん座ったままの姿勢であるが。

我ながら豪胆というか、無謀というか、阿呆というか。

寝ている間に襲われなくて本当に良かった、目覚めた瞬間は冷や汗が止まらなかったよ。

春先とはいえまだ肌寒いし、風邪をひいても病院に頼れそうもないので気をつけなければ。



未だ周囲にはゾンビがフラフラ歩いているが、その動きは昼間のそれとほぼ変わりはない。

まだライフラインが途絶えておらず街の街灯も普通についている、明るさ的にはゾンビがよく見えるのだが、それはこちらも同様なので移動する時には細心の注意が必要だな。

俺は立ち上がり目的の家へと向う、隣で蹲っていたラッキーも起き上がり俺に続く、今回こいつの出番はないんだがな。



昼間と同じくゾンビが群がりひしめきあっているが、屋内はいたって静かだ。

昼間使った大型ゴミ箱を足場にブロック塀から様子を覗き込む、電気はついていない、物音もしないので大丈夫だろう。

連中が二階で寝ていることを願ってそっとブロック塀を乗り越える。



実際、俺には男連中が女のいる一階のリビングで寝ることはないだろうと予想していた。

なぜなら誰だってあんなドロドロで生臭い部屋で寝る気は起きないだろうから、セックル中ならまだしも、寝る時はベッドのある寝室に行くだろう。

そして大半の寝室は何故か二階にある、あくまで俺の私見だが。



忍び足でリビング正面の大きなガラス戸ではなく、横の小さなガラス窓に狙いをつける。

鍵のある付近にガムテープをベタベタ貼り付けていく。

さあいくぞ、覚悟を決めろ俺、南無三ッ!

ガムテープを貼り付けたガラスに向けて肘鉄、パキャ、という小さな音を立てて窓ガラスの一部に穴が空いた。

後はガラス片を落とさないように静かに慎重にガムテープと一緒に剥がしていくだけだ。

以前、なにかのコミックで読んだ泥棒が家に侵入するテクニックの一つである、こんな状況で役に立つとは思わなかった。



ガムテープを剥がし終わり、窓の鍵を開け静かに侵入。

いざという時の為に包丁を握っておく、ゾンビ相手には無力だが、人間相手ならコレでも心強い武器となる。







室内に入るとなんともいえない強烈な悪臭が鼻につく、なんというか一週間連続でオナヌーした後に使い捨てたティッシュを集めたゴミ箱に顔から突っ込んだような臭いだ。

ごめん、表現がわかりづらかったね、わかりやすく言うと『腐ったイカ臭い』。

ゾンビの血生臭いコートに勝るとも劣らない悪臭を放つ室内を進むと、例の縛られた姉ちゃんを見つけた。



うへぇ、ドロドロだ、手首と足首をガムテープで縛られて常にくぱぁ状態だし、体中にいろいろこびり付いてる。

顔や腹はボコボコにされたように青痣と腫れ上がった痛々しい部分が目立ち、試合後のボクサーみたいになっていた。

流石に女体全裸に見慣れない童貞の俺といえどもこんな酷い状態の女の人に興奮を覚えることは出来ない。

やはり、エロゲは偉大だな、リアルじゃSMとかレイプは無理だわ。



俺は気絶しているのか、眠っているのかよくわからない姉ちゃんの肩を軽くゆすって目を覚まさせる。

何度かすると、薄っすらと目を開けた姉ちゃんは驚いた様子で俺の姿を見て声をあげそうになったので、人差し指で「しー」のジェスチャーをして黙らせた。

手足を拘束しているガムテープを包丁で切りながら、小声で俺が来た目的を教えておく。



「助けにきた、連中は二階で寝ているっぽいから静かに、急いで脱出しよう」

「あ、あのアナタは?」

「ただの避難民だよ、偶然この家の惨状を見かけてね、さすがに男四人は倒せないけど逃げ出す手助けはできる、さ、早く」

「……あの、ありがとうございます……でも……私いけません」

「え、なんで?」

「あの連中にあんな酷いことされて、このまま逃げることなんて……それにもう、こんな汚れた体で生きていたくないんです」

「………………」

「このまま逃げるくらいなら、連中に復讐します……多分私も死ぬでしょうけど」

「君は、マジでそれでいいの?」

「ハイ、あの……助けて頂いてこんなこと言ってゴメンナサイ、でも」

「あー、うん、まぁ、気にしなくていいよ、俺が勝手にしたことだし、それよりも君が復讐するなら俺は手伝えないよ? さっきも言ったように男四人には俺たちが協力しても勝てる見込みが低いし」

「えぇ、わかっています、こうして解放してもらっただけでも十分です」

「……餞別代わりと言ってはなんだけど、この包丁あげる、あった方がちょっとは心強いでしょ? あと裸のままだとアレだから俺の服もあげるよ、男物で申し訳ないけど」

「ありがとうございます……私は阿部育代(アベ イクヨ)と言います、あの、貴方のお名前は?」

「高田了輔、復讐、上手くいくといいね阿部さん」

「ハイ……ありがとうございました、高田さん」



俺は阿部さんに包丁と予備に取っておいた着替えを渡し、急いで家を去った。

彼女が復讐を成功させれるかどうかわからなかったが、失敗した場合俺の存在を知られる可能性もある。

念のため一刻も早くこの場から離れる必要があった。







ブロック塀を乗り越え、待っていたラッキーと合流、疲れるができるだけ早足で歩き出す。

そろそろ夜が明け始める時間帯だ、微妙に薄暗い道を進みながら今回の自分の行動をふりかえってみる。



結果的には彼女を助けられたのかどうか微妙なところだが、少なくともあのまま肉便器として生きていくよりはマシだろう。

一緒に四人組へ復讐するのを手伝っていれば彼女は助かったのかも知れないが、それでは俺の危険度が許容範囲を大幅にオーバーしてしまう。

第一、連中が眠っているとはいえ一般人たる俺に寝込みを暗殺者のように襲うスキルはない、接近する際に物音を立ててしまうだろうし、一撃で仕留められるかどうかもわからない。

それらリスクを考慮して唯一妥協できた部分が彼女を解放してあげることまでなのだ、それ以上は無理。



自分に害が及ばない範囲で、自分にできる範囲で、可能な手助けはする。

だけどそれ以上の事はしない、それが俺の昔からのスタンスでもある。

今回は残念ながら許容範囲オーバー、阿部さんには悪いが見捨てさせてもらった。



おそらく、これからも似たような場面は何度かあるんだろうが、慣れておかなきゃな、人を見捨てることに。

少なくともゾンビが地上から掃討されて社会秩序が回復するまでこんな状況はどこでも起こるだろう。

一時の正義感や勇気で死ぬのは御免だ、俺はまだまだ生きていたいし。



それにしても、あの四人組みたいな悪党連中は今後どんどん増えてくるんだろうな。

今はまだ平和な時の感覚が抜けてないから皆大人しいけど、だんだん今の状況を受け入れ始めると理性のタガが外れた連中が続々と湧いてくるに違いない。

俺にとって用心すべきはゾンビよりもそんな連中かもしれない。



こちらから攻撃さえしなければゾンビは俺にとって基本的に無害な存在だし、人間の方が知恵もある、武器だって使う、考えようによってはゾンビよりも遥かに凶悪だ。

生き残るためには『石橋を叩いて渡る』くらいが丁度良い、今後は出会った生存者にも十分注意していこう。

迂闊に信用して騙まし討ちされるなんて絶対嫌だ、ぶっちゃけ俺が騙すのは良くても、騙されるのは嫌だ。



そうなってくると今の俺の対ゾンビ用ステルス装備もしばらくは秘密にしておいた方が懸命だな、ゾンビの脅威を無視できるっていうのはきっと凄いアドバンテージになるだろうし。

誰か別の奴が考えつくまでは精々独占させてもらおう。



ああ、そうなると本格的に対人用の武器も欲しいな。

包丁は阿部さんにあげちゃったし、できれば次は銃火器が欲しい、持ってるだけで威嚇になるだろうし。

「ヒャッハー」と殺人強盗みたいなことするつもりは無いが、護身用には使える。

撃つ必要がないのが一番だが、まあ、しょせんは理想論だな。

暴徒はびこるリアル世紀末な状況になってからでは遅いだろうし、今の内から覚悟は決めておこう。

よし、銃はチャンスがあれば是非ゲットしておこう、ゾンビが溢れる世の中だし必ず機会はあるはず。



夜明けの道を歩きながら今後の行動方針を固めた。

耳を澄ますと後方から男の声で微かに「アッー!」という断末魔が聞こえてきた、彼女は上手くやったのだろうか?

阿部さんの安否は気になるが今は自分のことを心配すべきだ、俺は振り返らず前に足を進めた。



■07



ゾンビ大発生から四日目、避難所に合流する前に俺は寄り道することにした。

昨夜、目撃したレイパー四人組の極悪犯罪者っぷりに、ちょこっとだけ危機意識というか緊張感を高めたのだ。



つまり、今後に出会うかもしれない暴徒・略奪者・犯罪者に対する用心として武器および自分専用の隠れ家を見繕っておこうと考えた。

もちろん避難所においてそういった類の連中は少ないだろうし、警察や自衛隊の見張ってる中で好き勝手できるわけもない。

だけどゼロじゃない、一定数の人々の中に犯罪者は必ず潜んでいるし。

これまで善良だった人が何かのきっかけで凶悪犯罪者に変貌することも珍しくない。



まして現在は地上にゾンビが溢れ、社会秩序が半ば崩壊しているのだ、何が起こっても不思議じゃない。

そしていざという時に逃げ隠れできる場所を確保しておくのは物理的にも精神的にも安心感を与えてくれる。

俺は避難所に接触する前にこうして自分専用の『退路』を確保しておこうと考えていた。







今回俺がやってきたのはS市の中央区、県内最大規模のS駅を中心にさまざまな店舗がひしめきあっている。

平日・休日を問わず毎日およそ百万人が往来し、県内における経済・流行・文化の発信地でもある。

だけど今は全くの異界と化していた、行き交っていた人々は百万のゾンビと化し道路は事故車や進むことも戻ることもできなくなり乗り捨てられた放置車で埋め尽くされている。

市内にはゾンビの呻き声以外の音は響かずS市は完全に死の街と化していた。



ある意味で壮観ともいえる光景を目にしながら俺は市内を歩き回った。

隣に並んで付いて来るラッキーは大量のゾンビを見ても特に吠える様子も無い、もしかしたら散歩気分なのかもしれない。

しばらく歩いてようやくめぼしい本屋を見つけたので店内に入る。



中にはゾンビが三体いたが俺達には特に感心も示さずただ何をするでもなくフラフラと彷徨っていた。

俺はゾンビに注意しながらも目的の本を数冊手にとってリュックに仕舞った。

支払いをする必要はない店員は既にいないのだから、だんだんこの泥棒じみた生活にも慣れてきた。

ちなみに俺が選んだ本は三つ、ミリタリー関係の本、不動産関係の本、防災関係の本。



俺は本屋の片隅に設けられている個室トイレに入りもって来た本を広げた、ここなら安心して本が読める。

ちなみにラッキーはご飯タイム、コンビーフ一塊を与えたのでかなりご機嫌っぽかった。







さてと、まず今最も欲しい武器について、どこで、何を、調達するべきか本で調べようか。

いくつかページをめくるとお目当てのカタログ欄が見つかりさまざまな説明が載っている。

もっとも、流石に銃火器についてはモデルガンくらいしか載っていなかったが。



いくつか有用そうな品にチェックをつけていく、具体的には対人用と対ゾンビ用の武器に分けた。

日本国内では法律で銃や刀剣類は基本的に買っても持ってもいけないことになっている、所謂銃刀法というやつである。

だが許可が必要ない武器もある、例えばボウガン(正式にはクロスボウだが)。

これは所持に免許もなにも特に必要なく、ミリタリーショップや場所によってはアウトドアショップでも気軽に購入できる。

その上威力が高く鹿など大型動物のハンティングにも利用されている。



つまり使いようによってはライフル銃とそう変わらない性能を発揮できるのだ。

もちろん人間にもゾンビにも有効になるに違いない、銃が容易に手に入らない以上なにかしらの代用品でカバーするしかないのだから。

そういった感じでチェックを続けそれらしい目星をつけることが出来た。







武器関連のチェックが終わったら次は不動産関連だ。

地元のアパート・マンション・一軒家を掲載した情報誌を取り出し希望に添いそうな物件を探す。

俺の希望とする隠れ家の条件はいくつかあるが、最も大切なのは三つ。

/紊確保できている場所(井戸や温泉等)

⊇撒錣ゾンビの近寄れない高層、または高い塀に囲まれていること

今のところゾンビだらけで人間の近寄れない都市圏内であること



,砲弔い討論犬てくうえで必須条件でもあるし、いつインフラが死んでライフラインが途絶えるかわかったものじゃない現状において水道水にいつまでも頼るのは自殺行為だからだ。

△牢望をそのままかなえるなら高層マンションかどこかの金持ちの豪邸になるだろう、できれば後者だといろいろ楽しみもあるのだが、この場合誰かが既に篭城している可能性も高いので要注意だな。

については人間、とくに暴徒・犯罪者・略奪者に対しての対策でもある、連中も生きた人間である以上ゾンビの脅威からは逃げるだろうし、襲撃範囲も自然とゾンビの少ない郊外中心になるだろう、その時ゾンビだらけの都市圏内に住んでいれば安心ともいえる。

もっとも、に関しては俺が対ゾンビ用ステルス装備を持っているから可能なのであって普通だったら絶対に選べない条件であることは確かだ。



パラパラとページをめくるも条件に合う物件がなかなか見つからない。

△鉢に該当する物件はそれなりにあるのだが,鯔たす物件が殆ど無い。

あったとしても築50年を越える古民家とかでゾンビに対する防御力は無いに等しい。

なんだよ、最新物件なら井戸くらい備え付けて置けよ!

結局最後まで全ての条件を満たす物件は無かった、落胆しながら広告ページをパラパラめくる。

ふと、デカデカと写真つきで紹介されている超高級マンションの広告が目に付いた。



「……S市グランドハイツ、今月末に抽選会で優先購入権をゲットしよう……ね」



購入権を争うほど人気があるのかよ、どんだけすげぇマンションなんだか。

興味を引かれて軽く内容を読んでみると俺はこれまで知らなかったセレブな世界の一端を垣間見ることになった。



なになに、全邸天然温泉付マンション、全室家電完備、一階から三階までは天然温泉を利用した温水プール、大浴場、フィットネスジム等充実な共有施設、最上階にはスカイラウンジもありスカイバーでお酒を楽しみながらS市の夜景も楽しめます、屋上には最新の太陽光発電施設を備え、災害時、停電時にも安心の電力供給、環境にも優しい設計で安心の住居を提供します、ときたもんだ。

こりゃあすげぇや、お、まだある、災害対策として最新技術を使った耐震構造と各所に設けられた防火扉を完備、犯罪者対策として各通路やエントランスに監視カメラを設置、任意で自室から外の様子を確認できます。

ストーカー対策とかそんな感じかね? 有名人とかは結構喜びそうだけど。



あ、そう言えば肝心の値段はどうなんだろう……はぁっ!? に、2億8000万円だと!?

じゃ、じゃあ賃貸料はどれくらいなんだ、ひゃ、ひゃ、180万円!!?

これが一ヶ月の家賃かよ、マジで世界が違いすぎるな、俺んちなんか月3万だぜ、180万円あったらまるまる五年住めるわ。



俺は金銭感覚の違いにビックリしながらも広告にのっている説明文を読み進める。

ん? ちょっと待てよ、この物件って丁度俺の示した条件に当てはまらないか?

……温泉……高層マンション……都市圏内……うは、バッチリじゃん!

あ〜、でもここって、人が住んでいないってことはまだ未完成なのかな?

条件としては一番完璧なんだけど、ここ以外には条件に当てはまる物件もないし……。

よしっ、駄目もとだ、後で直接チェックしに行こう!



あ、ちなみに俺が最後に選んだ防災関係の本。

これは災害時に取るべき行動や気をつけることをマニュアル化した本で、まあ、今後の活動で参考程度になるかなと思って選んだんだ。

どこか安全な環境に落ち着いたらゆっくり読む事にしよう。


■08



本屋を出て30分ほど歩き目的のミリタリーショップに到着した、本に紹介されていた店舗だ。

ここはミリタリーショップというよりも、アウトドア用品やモデルガン、防犯・防災グッズなどを幅広く販売する総合店で、もちろんクロスボウも売っている。



で、店舗前に辿り着いたは良いが、今ちょっと困ったことになっています。

いやね、店閉まってるんですわ、シャッターまで下りてるし、そのうえ人為的に補強した後も見られる。

間違いなく誰か篭城してるよね、さて、どうするべきか?



いっそ避難民らしく保護を求めてみるか? 

うーん、でもこんな状況じゃあ平然とやって来た俺がゾンビじゃないのかと疑われそうだし、そうでなくても果たして素直に俺を受け入れてくれるだろうか?

食料不足とかだったら間違いなく門前払いだろうな、食い扶持が増えても良い事なんか一つも無いし。



そもそも警察や自衛隊が指揮していないんなら施設内の治安に期待するのもアホらしいし、どれほどの人数が篭城しているのかもわからん。

最悪、この前のレイパー四人組みたいに犯罪天国になってるかもしれん。

武装した暴徒なんて洒落にもならない、いっそこの店は諦めるべきだろうか?



閉じられたシャッターを前に俺はしばらく思案に耽っていた。

すると店内からいきなり激しく言い争う声が聞こえてきた。

「お前のせいだ!」とか「もうこんなの嫌!」とか「どうせ皆死ぬんだ!」とか。

喧嘩というよりも、これは罵り合いだな、内乱か?



しばらくして、罵り合う声はやがて争いあう戦闘音へと変わっていった。

何かが割れる音や金属同士がぶつかり合う音、破壊音がひっきりなしに響く。

続けて「アッー!」と絹を引き裂くような悲鳴や絶叫がし、「ウボァー!」耳を塞ぎたくなるような断末魔までもが聞こえてきた。



……これは、中で人間同士が殺しあってるのか。

迂闊に接触しなくて良かったな、後ちょっと早く接触していたら俺も巻き込まれていたかもしれない。

やはり気を付けるべきは人間か、極限状態だと何が起こるかわからんしな。







店内から全く音が聞こえなくなっても俺は様子見を続けた。

さっきの殺し合いの生き残りがいるかもしれない、もし生きていたら間違いなくマトモな精神状態じゃないだろう。

うっかり姿を晒せばいきなり撃ち殺される可能性すらある。

シャベル(シャーリーン)しか武器を持たない俺が無防備に接触するのはあまりに危険だ、ここはしっかり安全を確認してから接触すべきだろう。



たっぷり一時間ほど時間をかけて俺は店内の様子を伺った、物音は聞こえてこない。

全員相打ちになって死んだのだろうか? 

生きていても俺の害にしかならなさそうだし、そうしてくれるとありがたいのだが。



俺は慎重に店の周囲を回りながらどこか侵入できそうな場所はないか探った。

店の裏側に回った時、裏口の扉が見えたがしっかりした鉄製で、そのうえ鍵もかかっていたのでここからの侵入は諦めた。

だが、ふと見上げた店の二階に窓が見え、それがガラス製であることも確認した。

自動販売機を足場になんとか二階によじ登るとガムテープを利用して以前と同じ要領で窓ガラスを叩き割った。

できるだけ音を立てないように店内に侵入し、周囲を警戒。

人気がないのを確認してホッと一息つく。



室内の様子を見るにこの部屋は在庫保管庫らしいな、ダンボールがそこかしこに積み上げられている。

そっとダンボールの一つを開けてみれば卵型の携帯防犯ブザーがぎっしりと詰め込まれていた。

この店は護身用品も扱うって紹介してあったからこういったモノも取り扱っているんだろう。



部屋から出る、出入り口の扉を少しだけ開けて様子見。

人気は無く相変わらず静かだ、部屋を出て階段を下りいよいよ店内へ。

再び窓を少しだけ開けて様子見するも人の気配は無し、ただし濃密な血の臭いがした。



いざと言う時に備えてシャベル(シャーリーン)を持ってくればよかったかもしれない。

二階に上るときに邪魔だったんで置いてきてしまっていた、今の手持ちは金槌ひとつだけだ。

今更ながらちょっと後悔……まぁ、仕方ない。

より注意をしながらいくしかないか、神様、俺にご加護を、南無三ッ!



覚悟を決め、そっとドアを開けて店内を見渡すが物音はしない。

足音を立てないように進むと数人の男女が床に倒れていた、血溜まりの中で。

急いで駆け寄るような真似はしない、どう見ても死んでいる。

頭に矢が刺さった者、ナイフで心臓を突き刺された者、鈍器で骨を砕かれた者。

死因はさまざまだが、全員に共通していることは夥しい血を流しながら床に骸を晒していると言うこと。



転がっている死体をそのままに、俺は店内を一回りして他に誰かいないか見回った。

結果、店中をくまなく探して合計5人の死体を発見した、男2人に女3人だ。

何が原因で殺し合いに発展したのか今では知る由も無いが、きっとくだらない理由だろう。



閉鎖空間で周囲をゾンビどもに囲まれ援軍も望めない状況下でのストレスは凄まじいと思う。

ちょっとしたことで喧嘩になったり、口汚く言い争うことになるのは容易に想像がつく。

それだけなら普通は致命的な結果にはならないが、彼等は武器を持っていた、それもすこぶる凶悪な。

感情のまま『つい』撃ってしまうことだってあるだろう、それが破滅への第一歩だとしても。



同情はすまい、全ては彼等の自業自得なのだから。

仲間同士で話し合って融和をはかったり、脱出計画を立てたり、気分転換をしたり。

殺し合いにまで発展する前に出来たことは幾らでもあったはずなのだ、それをしなかったのは彼等の責任だ。



人の集団で一番恐ろしいのはこういった仲間割れだと思う。

俺もどこかの集団に合流する時はそのことに十分気をつけておこう、場合によっては一人で離脱する必要性もあるだろう。

ゾンビだけではない、人間同士の脅威にも注意を払わねば。



俺は彼らの死体を一箇所に集め、手を合わせて「南無〜」と彼らの冥福を祈った。

さらに集めた彼らの死体がゾンビとして甦らないように金槌で頭部を念入りに破壊し二階から外に投げ捨てた。

その際、一人の死体のポケットから『ミリタリーショップの鍵』が見つかったのでありがたく貰っておくことにした。



その後、一階裏口の鍵を開けラッキーを招き入れゾンビが侵入してくる前にすぐ閉めて鍵をかけた。

あとついでに置いてきていたシャベル(シャーリーン)もしっかり回収しておいた。

ずっと持ってたせいか何気に愛着わいてきてんだよね。


■09



念願のミリタリーショップに辿り着き、ようやく一応の安全を得た俺はとりあえず休憩をとることにした。

昨日からずっと外で活動してきたので疲労も溜まっている。

幸いこの店のバリケードは前住人が念入りに補強してくれたおかげか頑丈だし、もともと店の性質上防犯意識も高かったのだろう、かなり堅牢だ。

容易にゾンビは侵入できまい、安心して休むことができる。

リュックから食料を物色して取り出す、カップラーメンは既に食べきってしまっていたので缶詰だけだ。



メニューはサバの味噌煮とみかんの缶詰だ、相性なんか知ったことか、腹が膨れれば良い。

とはいえ、みかんはともかく生温かいサバの味噌煮は正直マズイ。

ここはアウトドア用品も扱っている店なんだから何か暖めることができる道具は無いものだろうか?



俺がアウトドアコーナーへ向かい何か無いかキョロキョロしているとさっそくそれらしいのが見つかった。

『シングルコンロ』というかなりコンパクトなバーナーだ、ガスボンベと一体型で手の平サイズ。

それを持ち出してサバの味噌煮をさっそくセットする。

意外と火力が強いのか、あっという間に暖め終わり、味噌風味の良い匂いが漂ってくる。



俺はアツアツのサバを味わいながら完食した。

このコンロはかなり便利だ、とっておこう。



そして腹が膨れたら今度は眠くなってきた、丁度良い、昨日からろくに寝てないしここで仮眠も取っておこう。

ラッキーを呼んで枕代わりにする、少し窮屈そうにしていたがまあ数時間だけ我慢してくれ。

俺はふかふかモフモフの枕で心地よい眠りに落ちていった







食事と休息を取ったおかげで気力・体力も回復した。

さて、そろそろ店内を物色するか、前にチェックを入れていたミリタリー本を取り出し広げる。

本のカタログと照らし合わせながら幾つかのめぼしい品々を選んでいく。



20分程度であらかた集め終わり、死んだ先住人の武器も合わせて目の前にズラリと並べた。

なかなか壮観な光景であるが、いくらなんでも全部持ち歩けるわけじゃない。

これから優先度ごとに餞別して持っていくモノを決めなければならない。

今後、自分自身の命に関わってくる重大な問題だ、真剣に考えなきゃな。



まずはこれだ、『軍用リュックサック(35,960円)』

サイズも大きく、とにかく頑丈、背面にメッシュパネルが入っており通気性と背負い心地にも優れる、防水加工済み、ジップポケットが3個、それぞれのポケットの内側にもメッシュポケットやジップポケット、ペンポケット等があり収納性も抜群。

これは迷い無く頂きだ、今現在俺が使っているリュックなんてバーゲンで買った1,980円の安物だしね、比べようもない。



ついでに『レッグポーチ(17,220円)』なんてのも付けてみた。

これは腰から足部分にかけてくっ付けられる収納バッグで容量もそれなりにある。

とっさに必要とされるアイテムを入れておくのに丁度良いかもしれない。



次、『防弾・防刃ベスト(139,800円)』

いわずと知れた超有名防具、ゾンビ相手には大して意味ないかもしれないけれど人間相手には心強い。

銃やナイフで武装した暴徒に遭遇した時なんかには俺の命を守ってくれる頼もしい存在になってくれそうだ。

そのうえ最新バージョンらしく、超軽量で長時間の着用においても身体への負担が少なく疲労感をあまり感じないらしい。

これなら通常のベストと同じ感覚で違和感なく着用できそうだ。

値段は相応に高価だが、店員がいない現在では関係ないな、好きなだけ取り放題だ。



一緒に『防刃グローブ(45,000円)』なんてのもゲットしてみた。

ケブラー製の素材に内部に一部鋼鉄を仕込んでいるらしく防刃性能だけでなく直接的な攻撃力も高いらしい、現代版ガントレットと言ったところか。



さてここからお楽しみの武器編だ、まずは『クロスボウ・185ポンド・コンパウンド(499,800円)』

店内で一番高価、かつ最も強力で高性能らしいクロスボウ、展示品にはドットサイトスコープ(暗視機能付き)、ショルダーベルト、コッキングメカ(リールを巻くように弦を引っ張る装置)付きでデカデカと《最強クロスボウ!》と宣伝していた。

実際に試し撃ちしてみたが想像よりも遥かに強力だった、的にしたマネキンを貫き砕き、そのうえ店内の壁に深々と突き刺さってしまったのだ。

非常に心強い威力ではあるが、ヘタな銃よりも強力そうに思えるのは俺だけだろうか。

ただし弦を引き、矢をセットするまでにちょっと手間がかかり連射は難しい、集団で襲われたらアウトだろうな。

重量は約4.5キロで結構重いがようやく手に入った貴重な飛び道具だ、少し悲しいがシャベル(シャーリーン)を手放せば持ち歩ける重さだろう。

さらに攻撃力を上げるために『4ブレードヘッド(2,590円)』というアルミ矢の先端にくっ付ける付属品もゲット、流石にこれならゾンビの頭も一撃でフッ飛ばしてくれること間違いなしだ、アルミ矢24本と合わせて当然持っていく。



次なる飛び道具は『スリングショット(15,200円)』

要するにゴムで鉄玉を飛ばすパチンコだ、弾はそこいら辺に落ちてる石でも代用できるお手軽さ、意外な攻撃力、携帯性の良さ、とても経済的な飛び道具である、ただし攻撃力はあまりない、人間相手に牽制程度に使えれば良いかもしれない。

命中すればかなり痛いが、それだけだ、殺傷能力が低いので役に立たないだろう、コレはここに置いていく。



次はお馴染み『スタンガン(24,800円)』

護身用のアレです、殺傷能力は皆無に等しいが人間相手なら怯ませることくらいは出来る。

ゾンビには効くかどうかわからないが、痛みを感じていないような連中だしそう大した効果は望めなさそう。

一応コンパクトだし邪魔にもならないだろうから持っていくか。



同じようなアイテムで『催涙スプレー(5,980円)』

CN(クロロアセトフェノン)ガスという物質を吹き付ける、このタイプのガスは眼はもちろんのこと皮膚に付着するだけでも火傷のような激しい痛みがでる、らしい。

とはいえゾンビには効かないだろうね、これも人間用かな。

怯ませて逃げる時間くらいは稼げるだろうし持っていこう。



今度は接近戦用の武器『消防斧(18,000円)』

シンプルな武器だ、金槌に刃が付いたようなもので鈍器の性能も併せ持つ以外と高性能武器、至近距離で力いっぱいゾンビの頭に叩き下ろせば一撃必殺できるのは間違いなし。

ドア破壊用に刃の反対側にピッケル状の尖った台が付いていて、こちらも攻撃力は高そう。

厳ついフォルムもカッコ良いし、持ち運びしやすいコンパクトなサイズも良し、ここに置いていくことになるシャベルに代わる新たなる相棒となってくれるだろう。

専用のアタッチメントで腰後ろのベルト部分に取り付けられ携帯性も高い、是非持っていこう。



今はこんなところか、その他に小物を数点持っていくことになるがそれほど重要でもないので箇条書きしていく。

・防犯ブザー → 大きい音を出してゾンビどもの気を引くアイテム、多分すぐ壊されるから脱出用の使い捨てかな、10個くらい持っていこう。

・手錠 → 暴徒・犯罪者・略奪者を拘束しておく時に使うかも、念のため一個持っていこう。

・アーミーナイフ(十徳ナイフ) → 缶切り、栓抜き、工作等に利用する。

・ゴム底のスポーツスニーカー → 足音対策。

・迷彩系服装一式 → 軍隊仕様で頑丈で防御力も高い、皮ジャンよりも軽い。

・携帯非常食 → カロリーメイト、缶詰、カンパン、レトルトパック等、おおよそ三日分の食料。

・水筒 → 軍隊仕様でアルミ製の非常に頑丈な水筒、1.5L入る。

・オイルライター(Zippo) → 伝統と信頼の人気ブランドライター。

・その他 → ミニコンロ、救急セット、ミニラジオなど。



持っていく荷物はこれくらいか、いざ全部装備してみるとズッシリ重い、欲張りすぎたかな?

当面必要なさそうなモノは全てここに置いていくことにする、この店の鍵は俺が持っているしいざとなればまた来て補充にくれば良い。

ああ、そうなってくると足となる車が欲しいな、後でカーショップもあれば覗いてみるか。


■10



新装備一式に身を包んでミリタリーショップを出る。

ゾンビが侵入しないように裏口のドアをすぐに閉め鍵をしっかりとかけた。

場合によっては今後何度もここに来ることになるかもしれない、安全のためにも必要な措置だ。



肩にクロスボウを吊り下げ、腰には消防斧、二つともいつでも使用できるようにしつつ普段は両手はフリーにしておく。

これなら両手を使えるので身動きを取るのに楽だ。

以前は常に片手にシャベル(シャーリーン)を持ち歩いていたのでちょっと不便だった。



ところでその肝心のシャベル(シャーリーン)であるが、実はまだ持っている。

店を出る直前くらいまで置いていく気満々だったのだけれども、なぜか出発直前になって俺の本能が「持ってけぇ〜」と騒ぎ出したのだ。

接近戦用の武器は既に消防斧があったから必要ないんじゃないかなぁと思っていたが、一度考え直し愛着もあったのでやっぱり持っていくことにした。



とはいえシャベル(シャーリーン)は重い、そのうえ持ち歩くのも一苦労だ。

そこで俺は登山用のアタッチメントをリュックに取り付け、シャベルをそこにセットして持っていく用にした。

鏡で見た俺の姿は『ヘルシ○グ』でみた吸血鬼兵みたいな様相になってしまい随分とゴツくなってしまった、重量もプラス4kgである。

これじゃあまるで第二次世界大戦中のドイツ軍人だ。



だが俺はこの姿を大いに気に入っていた。







ゾンビの徘徊する街中をラッキーと歩きながらS市グランドハイツを目指す。

地図で確認すると結構距離がある、歩きで行くのはちと辛いかもしれない。



あ、ちなみに俺はこれまでゾンビのマネをしてノロノロ歩いていたんだけど、実はこれ、普通に歩いても大丈夫ぽかった。

ミリタリーショップを出た後、武器を得てちょっとだけ強気になった俺はゾンビのマネを止めて普通に歩いてみた。

いや、正直に言うと装備が重すぎてゾンビのマネする余裕がなかっただけなんだけどね。



まぁ、理由はともかく普通に歩いてみたわけだが、ゾンビは一向に関心を示さなかった。

ちょっとだけ調子にのってみた俺は早歩きも試してみたが、それも辛うじて大丈夫だった。

二・三匹こっちに振り向いた奴がいたが、早歩きを止めたらすぐに俺を無視してフラフラどこかへ行ってしまった。

ここで俺はゾンビにぎりぎりバレない身動きの限度を『早歩き』までと定義して、それ以上の無茶はしないと決めた。







一時間ほど目的地を目指して歩いていると全面ガラス張りのカーショップを発見した。

展示車が室内に並べられており、どれも一目で高級車とわかるほど豪華なフォルムだ。

以前の俺だったら10年働いても買えないような車ばかりだ、正直憧れてもいた。

丁度足となる車が欲しかったところだしここで何か頂いていこう、フヒヒ……。



俺はおもちゃを選ぶ子供のようにワクワクしながら店内に入りすばやく中の様子を伺った。

店員らしき制服を着たゾンビが二匹いる、こちらの存在に気が付いてはいないようだが、邪魔だな。

俺はクロスボウの実戦慣れも兼ねてこいつらを始末することを決意した。



ゾンビに見つからないよう忍び足で受け付けカウンターに隠れ、クロスボウを肩から外し手にとる。

レッグポーチからアルミ矢を取り出し先端に4ブレードヘッドを取り付ける。

その作業に意外と手間取ってしまい矢をセットするまでに数分かかってしまった。

これじゃあ襲われたら一発アウトだな、これからはあらかじめ矢に4ブレードヘッドを取り付けておくことにしよう。

少し嵩張るかもしれないが発射準備までにこんなに時間がかかってしまうのは致命的だ。



俺は弦をコッキングメカでキリキリ引っ張り、アルミ矢をクロスボウにセットして狙いを近いほうのゾンビに定める。

ドットサイトスコープを覗き込み中心に光る赤い点をゾンビの頭部にピッタリ合わせた。

どうか当たってくれよ、南無三ッ!

祈りを込めてトリガーを引く、シュパッ、という空気を切り裂くような短い音がして矢が放たれた。

グジャアッ、という肉と骨を同時に叩き潰すような音がしてゾンビの側頭部に矢が命中、ゾンビはそのまま案山子のように床に倒れた。

俺はすばやくカウンターの後ろに隠れながらガッツポーズを決めた。



もう一匹のゾンビは仲間の倒れた音に一瞬だけ振り向くが、すぐに関心を失って再びフラフラ彷徨いはじめた。

クロスボウを発射した時の音にも気がついていない様子だし、この武器は大当たりだな。

銃とかだと発砲音とかで気付かれそうだがクロスボウならほぼ無音で発射できる、この利点は対ゾンビ戦においてはかなり大きいぞ。

一撃必殺の威力、無音発射……連射できない不利を考慮してもクロスボウはゾンビに対して非常に有効な武器だと思う。



再び矢をセットし、カウンター越しに残りのゾンビにも狙いを定める。

最初よりも幾分落ち着いた気持ちでトリガーを引く、アルミ矢は吸い込まれるようにゾンビの眉間に命中した。

ゾンビは一瞬だけビクリと体を痙攣させて、そのままあお向けになって倒れた。



俺は倒れた二匹のゾンビから突き刺さったアルミ矢を回収し血脂を拭って再びポーチに収納した。

24本しか持ち歩いていないのだ、消耗品とはいえ壊れるまではこうして再利用して大事に使っていこう。



俺は倒したゾンビに手を合わせていつも通り「南無〜」と冥福を祈った。







店内のゾンビを掃討し終わり、ようやくお楽しみの車選びをすることができる。

一応念のためラッキーを店内に入れ、店の入り口はしっかりと閉めきりゾンビが入ってこないようにもしておいた。



店内には5台の展示車がありどれも超高級車だ、きっとここは金持ち専用の車販売店だったんだろう。

キャデラック、マイバッハ、ポルシェ、フェラーリ、どれも数千万円はする。

だが俺の視線はそれらブランド系の高級車ではなく、もっとも厳ついフォルムをした最後の車に向けられていた。



『ハマー』、軍用車ハンヴィー(高機動多目的装輪車両)の民生用車種で、これはそれのさらにカスタマイズ版、アウトドアや釣り好きの有名人なんかがよく好んで所有している車だ。

ディーゼルエンジンと蓄電池によるモーターの回転動力の両方使えるハイブリッド車でもあり、このシリーズでは最新モデルだ。

走行性能、静粛性能、居住性に優れ、頑丈で車高も高いので悪路も気にせずガンガン突き進める。

説明用のカタログ片手に車内を軽くチェックしてみたところオプションパーツも取り付けられており、富裕層向けにカスタマイズもされているようだ。

DVDプレーヤーやテレビ、飲み物のための冷蔵庫、エアコンもそれぞれの席に完備、シートは全席に上質な本革を仕様し、フロントとセカンドシートには背もたれとクッションに3段階温度調節式のヒーターも装備。

サンルーフやクローム製のランプガードも付いており、少しくらいゾンビを跳ね飛ばしても平気だろう。

それに6人乗車用とあるが、やろうと思えば10人くらい乗れそうなほど車内空間も広い、ちなみにコレは左ハンドルだ。

……か、完璧だ、コレ欲しい、コレに決めた。



俺はハマーに一目惚れし、さっそく鍵を置いてあるであろう奥の事務室へと向かった。

事務室は階段を上って二階にあり、俺は念のため足音に気をつけながら階段を上った。

事務室の扉をそっと開け一応ゾンビや人間の有無を確認するが人影はなし。

キョロキョロ部屋周りを見渡し壁に鍵をいくつか引っ掛けてあるスペースを見つけた

多分コレだろう、引っ掛けてある鍵を全部手にとって一階に戻る。



鍵はリモコン式が主流なため、いくつか試して鍵の開閉が確認できれば本物だ。

ポチ、ポチ、と何度か試し三回目でハマーの鍵が見つかった。

残りの鍵は要らないのでカウンターの上に置いておこう、もしかしたら俺以外にもここに来て車を探す人がいるかもしれないし。

俺は最高にご機嫌な気分で重たいリュックを車内に乗せ、ラッキーも後部座席に乗り込ませた、そしてさっそく出発しようとハマーに乗り込もうとした時だ。



外から生存者、それも若い女の悲鳴が聞こえてきたので俺はビックリして動きを止めた。



■11



一階からでは先ほど叫んでいた生存者の姿を確認できなかった。

急いで二階に上がり窓を開け外を見回す。

いた! そう遠くない場所を男女二人が追いすがるゾンビ集団から必死に逃げている。

二人とも高校生なのか、黒の学ランとセーラー服の少年少女二人組だ。



学ランの少年は片手に金属バットを持っており、もう一方の手で少女の手を引いて必死で逃げている。

どう見てもカップルです、本当にありがとうございました。

一瞬だけ「リア充死ねっ!」とも思ったが流石に声には出さない。

そんなこと言ったら世間様に俺が童貞だとバレてしまうからだ、この年でまだ童貞とか恥ずかしいじゃないか。

風俗にいく金に勇気もなかったから右手がずっと恋人だったのだ。



それにしてもゾンビ連中が音に寄って来るということを知らないのか、さっきから少女の方はキャーキャー叫びまくって逃げている。

少年はそんな彼女に襲い掛かるゾンビを金属バットで蹴散らしながら逃げるのに必死だ。

腰の入ったなかなか見事なフルスイングだ、彼は野球少年なのかもしれない。



掴まれてしまえば怪力で押さえ込まれてしまいまずアウトだが、ああして吹き飛ばすように攻撃すればその心配もない。

ゾンビを倒すことはできないが、こちらも倒されないための手段なんだろう、結局は時間稼ぎにしかならないだろうけれど。



圧倒的な物量と、無限の体力を持つゾンビの追跡から人間の徒歩で逃げ切るのは難しいと思う。

マラソン選手とかなら別だろうけど一般人の体力なんて底が知れる、せいぜい2・3km走ったらダウンだ。

どこか堅牢な建物に逃げ込むか、車や自転車などの移動手段を得て離脱するしかない、でなければいずれ追いつかれて食い殺されてしまう。



あの二人を見る限り今の状態ではどちらも難しそうだ。

ピッタリと追跡してくるゾンビの群れを振り切れるとも思えない、このままじゃあ体力が尽きて捕まるのは時間の問題だろう。



それでも命がけでヒロインを守る、健気な姿である、まるで彼は物語の主人公のようだ。

きっと非童貞に違いない、イケメンっぽいし。







うむむ、どうしようか、助けようにも向こうとはちと距離がある。

クロスボウで狙撃も不可能じゃないんだろうが、扱いに慣れていない今の俺にはこの距離でゾンビの頭に矢を命中させられる自信がない。

無駄に矢を消耗するのは避けたいところなんだが。



それに彼等に追いすがるゾンビの数もかなり多い、二十・三十匹はいるんじゃないだろうか?

到底俺一人で倒しきれる数ではない、いっそ見なかったことにして見捨てるか?



いや、別にカップルが妬ましいとかそんなんじゃないよ? まぁ、ちょっとはそれもあるけど。

だが現実的に考えて二人の救出は難しいなぁ、車で助けに行こうにも五・六匹程度ならまだ吹っ飛ばせるだろうけど、あれだけのゾンビ集団に囲まれたら逆にこっちがひっくり返されそうだし。

そうなると今度は俺のリスクが許容範囲をオーバーしている、車での救出も駄目だな。



うーむ、クロスボウや車による直接的な救助は諦めて、別方向から援護してみるか。

幸い俺には対ゾンビ用ステルス装備があるし、脱出用の小道具も豊富だ、車(ハマー)もある、連中の注意を引き付けて彼等が逃げ出す時間を稼ぐくらいならできるだろう。

その後で俺は脱出をはかれば良い、小道具の有効実験をするチャンスでもあるし。



うん、比較的俺にもリスクが少ないし、彼らも逃げ切るチャンスを得られる、良い案じゃないか。

そうと決まればさっそくやるか、俺は窓から上半身を乗り出しヘルメットを外して大声で叫んだ。



「おぉーーーい!! 今から俺がゾンビを引き付けるから、お前らは全速力で逃げろよーーー!!」



そう言うやいなやさっそくゾンビ連中が大声をあげる俺の方向に向き直りこっちに向かってワラワラとやって来る。

俺はなおも大声を張り上げゾンビどもの注意を引きまくった。



視線の向こうでは例の高校生カップルが俺のいる建物とは逆方向へ走って逃げている姿が見えた。

一瞬だけこちらに振り向いて二人揃って同時に頭を下げる、仲良いね君たち。

まだ何体かゾンビが追いすがっているみたいだけど、あの調子なら逃げ切れるだろう。



それから俺は5分ほど叫び続け、ゾンビどもの引き付け役をまっとうした。







もう十分かな、彼等もきっと逃げきれただろうし、そろそろ俺も脱出するか。

だがちょこっと問題もある、叫びまくったおかげで現在この建物周囲はゾンビが予想以上に群がりまくっていて車でも容易に突破は難しい状態になっている。

軽く見回しただけでもざっと百匹以上はいる。

このままハマーで飛び出しても轢いたゾンビの死体とかでタイヤを取られて横転するのがオチだろう、そしてゾンビの餌食になるしかない。



そこでこの『防犯ブザー』の出番と言うわけだ。

ミリタリーショップの防犯グッズコーナーでゲットしておいたコレは中心のボタンを強く押すとけたたましい音をあげまくる仕組みになっている。

読んだ説明書にはその音量は120デシベル、ジェット機のエンジン騒音並みの音が出るらしい。

作りも頑丈なので遠くに投げつけてもしばらくはもってくれるだろう。



俺はフルフェイスヘルメットを被りなおし、レッグポーチから防犯ブザーを一つ取り出す。

中心の赤いボタンを強く押し込み、手榴弾を投げるように窓からできるだけ遠くへ投げた。

ビィィィィッッ!! という鼓膜を破りそうな大音量を上げて防犯ブザーがゾンビ集団の中に飲み込まれていく。

そして音の発生源に群がるようにゾンビが中心へ中心へと密集し始め、俺のいる建物周辺の密度がみるみる下がっていった。

だが、あの防犯ブザーだっていつまでも鳴り続けるわけじゃない、今の内に急いで脱出せねば。







俺は大急ぎで階段を駆け下り、ハマーの運転席に乗り込む。

ラッキーが歓迎するように「ワンッ」とひと吠えし俺を出迎えてくれた、ちょっと癒される。

俺はラッキーの頭をひと撫でし、キーを回しエンジンをかける、よし、燃料は満タンだ、蓄電池の充電もMAX、いけるぞ!

俺は初めて乗り回すハマーの重量感とパワフルなエンジン音を聞きながら、興奮を押さえきれずつい叫んでしまった。



「うおりゃあぁぁぁッ!! どけどけゾンビどもーー!! ハマーのお通りだぜーー!!」



アクセルを一気に踏み抜き急加速、勢いよくカーショップの大ガラスを突き破って外へ飛び出した。

まだわずかながら周囲に残っていたゾンビどもを頑丈な車体で軽快に撥ね飛ばしながら一気に離脱、大通りへと突き進む。



途中車のエンジン音に引かれて何体かのゾンビが近寄ってきて道を塞いだりもしたが気にせず撥ね飛ばす。

避けられるゾンビは避けたが、なかなかに愉快・爽快・痛快なドライブだ。

俺はまるでゲームでもしているような感覚でゾンビを跳ね飛ばしながらハマーの運転を存分に楽しんだ。

■12



カーショップから脱出し、大通りを軽快に進みながらちょっと思いついたことがあった。

このハマーはハイブリッド車で、ディーゼルエンジン(ガソリンではなく軽油で動かす)と蓄電池によるモーターの両方で動かすことができるわけだが。

内燃機関(エンジン)に蓄電池(バッテリー)と電動機(モーター)を組み合わせたハイブリッドカーはエンジン音がやかましい場合、動力をモーターに切り替えることで電気自動車のように静かに走行することもできる。



今現在のようにエンジン音が響けばゾンビどもを招くことになり危険が付きまとう、そこでモーターならば静かだしゾンビも近づいてこないのでは?と考えたのだ。

ギアをロウにして徐行運転すれば動きでバレる可能性も低いだろうと思うし、以前早歩きくらいまでならゾンビは無視してくれるのは確認済みだ。



あ、ちなみにカタログにはフル充電の状態で約80kmの走行が可能と書いてあった。

電力は外部供給の他に、蓄電池(バッテリー)の交換、ディーゼルエンジンで走行することでも充電されるらしい。



さてと、大通りをある程度進んでゾンビの数が少なくなってきた、良い頃合だ、ここいらで実験してみよう。

俺は一端車を停車させてエンジンを切る、先ほどまでワラワラと群がってきていたゾンビの勢いが弱くなったような気がした。

まぁ、それでも結構な数が今も寄ってきているわけだが。



動力をモーターに切り替え発進、ほぼ無音でスゥー、と滑るように動き出した。

すごい、想像していたよりもぜんぜん静かだ、動力音がまったく聞こえてこない。



そうして数百メートルほど走りワラワラ寄っていたゾンビを引き離し、改めて徐行運転をはじめる。

時速5〜10kmくらいの速さでゆっくり進める、殆どアクセルは踏まず徐行運転を意識した。

ふと、横切るゾンビがいたので車内から様子を伺うと全くこちらに関心を示していない。

試しにちょっとだけアクセルを入れてみると、ようやくこちらの存在に気が付いたように寄ってきた。



なるほどね、徐行速度なら大型車でも人間同様襲い掛かってこないわけか。

ゾンビの密集する場所を通過する時にこの電動モードはなり助かるかも知れないな、やはりこのハマーを選んで正解だ。



俺は改めて動力をディーゼルエンジンに切り替えると再び軽快な速度で大通りを走り進めた。







『S市グランドハイツ』

富裕層向け、要はお金持ち用高級マンション、地上25階地下1階建、総戸数259戸 、地下駐車場完備。

今月末から入居者を募る予定で、家賃は約180万円/月。

ちょっと前の俺だったら一生縁のない建物なんだが、今はそこが俺の隠れ家になるかもしれないわけだ。



世の中って不思議だよな、平和な世の中じゃ貧乏サラリーマンだった俺がゾンビが溢れ出したとたんクロスボウを手にとって戦ったり、こうして高級車を乗り回したりしてるんだから。

素直に喜べば良いのか崩壊した社会に嘆けば良いのか、ちょっと判断に困るよね。

まぁ、正直なところ7:3くらいで喜んでいる自分がいるわけだけど。



お目当てのマンションに到着した、入り口前でエンジンを切り、ラッキーと一緒にすばやく降りる。

ゾンビに見つからないよう車の陰に身を隠しながらこちらにゾンビを確認、合計三匹。

留守中に車を壊されちゃかなわない、連中はここで始末しておく。



車を挟んでゾンビどもの反対方向に回り込み、その背後から無防備な頭部に狙いを定める。

あらかじめ4ブレードヘッドを装着したアルミ矢を6本ほど出しておき、すぐに拾えるようにしてもおく。



まず一つ! トリガーを引き発射、ゾンビの後頭部にアルミ矢が突き刺さった。

すばやくクロスボウの弦を引き絞り、アルミ矢をセット、続けて二射目!

今度はちょっと狙いが外れゾンビの延髄部分に突き刺さった、一瞬「失敗したか!?」とビビッたがゾンビは頭部に当たった時と同様に一撃で地に倒れた。



ふぅ、と安堵の息をつきながらも三射目の準備を整える、まだ三匹目のゾンビはこちらに気が付いていない、すぐそばで仲間が2人もやられたというのに鈍感な連中だ。

だんだん手馴れてきた俺は今度こそよーく狙いを定めて矢を放った。

アルミ矢はゾンビの頭部に狙い通り命中し、その活動を永遠に停止させた。







最後のゾンビにトドメをさし俺が安堵の息を吐き緊張を解こうとすると、珍しくラッキーが俺の袖に噛み付いてひぱってきた。

何事かと背後を振り返るとすぐ目の前にゾンビが立っている、ま、まずいッ! 矢を撃つところを見られた!

急いでアルミ矢をセットしようとするが焦って上手くセットできない、しまいには矢を地面に落としてしまう。

そうこうしているうちに、ゾンビは恐ろしい怪力で俺に組みつき肩部分にガブリと喰らいついてきた。



い、痛いッ!! ギリギリと締め付けるような圧力が肩にかかる。

そのうえクロスボウをもつ腕を抱きこむようにして組み付かれているので反撃も脱出も出来ない。

俺を押さえ込む腕の怪力も人間離れしていて、ミシミシと全身が軋みをあげる。

強烈な圧迫感に内臓が口から出てしまいそうなほどの嘔吐を覚える。

や、やばい、このままじゃ、し、死ぬッ!!



「ウオォォォンッッ!!」



組み付かれ上手く身動きが取れない俺を救ってくれたのはラッキーだった。

これまでの大人しい性格からは考えられないような獰猛な雄叫びを上げてゾンビに体当たりをかます。

組み付かれていた俺はゾンビと一緒に吹っ飛ばされるが、その拍子にゾンビの拘束からも解放された。



地面を転がるように移動し、すぐさまゾンビと距離をとった。

クロスボウを投げ捨て、咄嗟に背負っていたシャベル(シャーリーン)を手に取る、未だ上手く起き上がれない様子のゾンビの頭めがけて全力で振り下ろす!



「くたばりやがれッ!!」



ゾグンッ、と縦に振り下ろしたシャベル(シャーリーン)の刃が頭蓋骨ごと脳を叩き割る音と感触が手に伝わり、俺は確かな手応えを得た。

動かなくなったゾンビにシャベル(シャーリーン)を刺したまま俺はしばらく振り下ろしたままの姿勢で硬直していた、いつまた動き出すかわかったものじゃない。



いや、正直に言おう、俺は心底ビビッていた、襲われた恐怖が抜けきっていなくて動けなかったんだ

これまでステルス装備のおかげで幸か不幸かゾンビに無視されるような形で過ごしてきたからこいつらの本当の恐ろしさを忘れていた。

ゾンビどもは、発達した人類社会をメチャクチャにするくらい恐ろしい相手だったということを。







しばらくして、ゾンビの不意打ちをなんとか退けラッキーのおかげで九死に一生を得たことをようやく自覚した俺は一気に緊張が解け腰が抜けて地面に座り込んでしまった。



なぜ咄嗟により軽く、使いやすく、攻撃力のある消防斧ではなくシャベル(シャーリーン)を手にとってしまったのか。

自分でも良くわからないが、これはこれで正解だったのではないかと思う。

目の前で頭にシャベル(シャーリーン)を突き刺したまま事切れているゾンビを見ると、やはりシャベル(シャーリーン)を持ってきて良かったと確信できたのだ。

……ありがとうシャーリーン。



ラッキーが心配そうに俺に駆け寄ってくる、こいつのおかげで助かった。

軽く頭を撫でてやるとラッキーは嬉しそうに尻尾を左右に振り俺の無事を喜んでくれているようだった。

俺は感謝の意を込めてラッキーの頭を誠心誠意グリグリ撫でまくった。



「ありがとうなラッキー、お前は命の恩人……いや……恩犬だよ!」







奇襲のパニックから落ち着きを取り戻し、装備を回収した後自分の状態も確認してみることにした。

気になるのはゾンビに喰らいつかれた肩部分だ、ゾンビスレでも確認したように噛まれればゾンビ化してしまうらしいし。

もしかしたら自決する覚悟も決めなければならないかもしれない、恐ろしいが今すぐ確認せねばならない。



周囲にゾンビの姿はなかったが俺は念のため一端車の中に戻り、そこで恐る恐る服を脱いでみた。

迷彩服の上着は肩部分が少し破れている、ゾンビの噛む力はかなり強かったしこの頑丈な服が食い破られても不思議じゃないな。

その下に来ていた防弾・防刃ベストと肌着も脱ぎ、素肌の肩部分を確認する。

多少赤くなって痣ができてはいるものの、直接噛まれたような痕跡はなかった。



ホッ、と一安心する、上手い具合に防弾・防刃ベストが俺の身を守ってくれたようだ。

さっそくこいつに命を助けられたわけだが、肩以外の場所に噛み付かれていたらと想像するとゾッとする。

首や腕や足に噛み付かれていればきっと服ごと食い千切られていたことだろう、そして俺もゾンビの仲間入りに……。



本当に運が良かったというべきか、今回はラッキーのおかげで助かったわけだし、ラッキーは名前通り俺にとっての『幸運』かもしれないな。



俺は装備を着なおし、改めてS市グランドハイツに向かうことにする。

今後は背後にも十分に気を配らないと。

ゾンビは気配もなく近づいてくるから目に映らないと気がつかない場合が多いみたいだ、注意しておこう。

もう、絶対にバックアタックは受けたくないしな。


■13



S市グランドハイツの正面入り口は当然のように開かなかった。

巨大な強化ガラスでできた自動ドアは正面に俺が立ってもまったく反応せず、不動のまま沈黙を保っていた。

電力はまだ生きていると思うんだが、やはり入居前だし閉めきっているのだろうか。



いっそのこと「消防斧で叩き割るか?」とも考えたがとりあえず今のところは止めておこう。

あまり目立つようなマネはしたくないし、消防斧で破壊できるかどうかもわからない。

それに、わざわざゾンビが侵入しやすいような通路を作るのも控えておきたいからだ。

ちなみにシャベル(シャーリーン)は使わない、強度的にこの強化ガラスを破壊できるとも思えないしね。

さっきゾンビの頭を叩き割った時に刃が少し歪んでしまったし、頭蓋骨って想像以上に頑丈だったんだな。



外周をぐるりと巡りどこかに入り口がないか探し回る。

侵入できそうな場所、ないね。

マンションの全体像を見上げ改めて圧倒される、まるで塔だ。



ベランダなどから侵入しようにも高すぎる、目算でも一番下のベランダまで30m以上あるぞ。

たしか一階から三階までは温泉とかプール、フィットネスジムなんかの施設だったはず、どうりで全面強化ガラス張りなわけだ、登ろうにもプロのロッククライマーでも絶対無理だな。

防犯的な意味もあるんだろうが一階は全て頑丈なコンクリートとレンガだけで組み上げられているし。

そして正面玄関は強化ガラス製、しかもよく見れば奥にもう一枚同じのがあるじゃないか。

ちょっと侵入は難しいかもしれないな、甘く見ていたのかもしれない。







とりあえず試すだけ試してみるか、万策尽きた俺は当初の考え通り消防斧で正面入り口を突破してみることにした。

周囲にゾンビの姿がないことを確認してラッキーも少し後ろに下がらせる。

腰に取り付けた消防斧を手に取って、俺はそれを大きく上に振りかぶり―――



『ちょ、ちょっと待て! 今開けるからちょっと待て!』



入り口横の小さなスピーカーから焦ったような声がかかり動きを止めた。

声の様子からは中年の男っぽかったが、俺より先に篭城している人がいたとは、ここのオーナーとかかな?

監視カメラか何かで俺の様子でも見ていたのだろうか、見渡せば入り口の斜め上あたりにそれっぽいカメラがあった。



『いいか、一瞬だけ開けるからすぐに入るんだぞ、連中が入ってくる前にすぐに入れよ!』



念を押すように二度同じ事を言われ俺はカメラに向かってコクリと肯いた。

ネタ芸人じゃないのでゾンビを招くような事は絶対しない、命をかけでまで笑いを取るつもりはないし。

今のところ指示に逆らう意味がない、素直に開けてくれると言うのならば大人しく従うまでだ。



だが、以前のレイパー四人組やミリタリーショップでの仲間割れの例もある、十分に注意しながら行くことにしよう。



俺は正面入り口の自動ドアが開くと同時にラッキーと一緒に中に身体を滑り込ませた。

そのすぐ後に自動ドアは閉じ、再びなんの反応も返さなくなった。

一瞬だけ電源を入れたのだろうか、なかなかに器用な真似をする。



俺たちを建物内に入れてくれた人物のことも気になる、悪い人間でないことを祈ろう。

しかし油断はすまい、俺はいつでもシャベル(シャーリーン)を振り回せるように手に持ち直して気を引き締めた。







俺がラッキーと一緒に中に足を進めると広いエントランスホールに出た。

床は大理石が敷き詰められていて、いかにも「高級です!」とでも言わんばかりの雰囲気だ。

ただし電気はついていない、薄暗い中をラッキーと一緒に進む。



すると奥の方から一人のおっさんが出てきた。

作業着を着た、ちょっと禿げ気味な、人の良さそうな顔をした中年のおっさんだ。

こちらを見て苦笑しながら歩み寄ってくる、その手には何も武器を持っておらず一見無害そうに見えた。

だが、まだ背後に何か武器を隠している可能性もある、注意は怠らない。



「いやービックリしたよ、まさかあんな危ない中を通って来る人がいるなんて思わなかったからさ、お前さん、怪我とかはないのか?」

「え、えぇ、なんとか大丈夫です、ここに入れてもらえて助かりました、ありがとうございます」

「あ、いや、実は最初から見てたんだけど、いろいろ躊躇しちまってな、こっちこそすぐに入れてやれなくてすまん」



おっさんは素直に頭を下げた、見た目通り良い性格をした人みたいだ。

こう正直に自分の非を認め、理由を教えてくれるなんてなかなかできることじゃない。

まして俺みたいな迷彩服一式で身を固め武装している怪しい奴相手に初見で普通はできない。



武装した相手に対してあまりに無警戒・無防備とも言えなくもないが、こんな状況だからこそ人間の本性が剥き出しになることを俺は知っている。

だからこそ俺はおっさんの態度に好印象を抱いた。



「気にしないで下さい、こんな状況ですしそれも仕方ないかと思います、あ、俺は高田了輔っていいます、よろしく」

「瀬田渋蔵(セタ ジュウゾウ)だ、ここのメンテナンス主任をやってる……と言っても今は俺一人しかいないがな」

「たった一人で篭城してたんですか?」

「あぁ、四日前からな、あの日はもともと簡単な設備チェックだけだったんだが途中でいきなりあんな連中が外で大暴れしだしやがってよ、俺はずっとここにいたから助かったが外の方は酷い状態らしいじゃねぇか」

「そうですね、俺もアパートから脱出してきたんですが、生き残りは殆ど見かけませんでしたよ、町中ゾンビだらけです」

「ゾンビ? あぁ、まぁ、たしかにゾンビだわな、TVとかでも言ってたけどよ、あんまり信じたくねぇけどありゃゾンビだわな、まったくよ……」



瀬田さんは禿げ気味の頭をぽりぽりかきながら、苦笑いしながら言った。

認めたくないのかもしれないな、ゾンビなんてフィクションの世界の化け物が地上に溢れ出したなんてそれこそ悪夢だろうし。



俺はそれ以上特に何も言わず、隣にいるラッキーの頭を撫でた。

瀬田さんはそんな俺の様子を見ながら、今度はちょっと気まずそうにしながら話し掛けてきた。



「な、なぁ、ところで高田さんよ、何か食いもん持ってないか? ここ四日間一度もメシ食ってなくて死ぬほどハラペコなんだわ」

「ありますよ、缶詰とかカロリーメイトみたいな非常食ばっかりですけど、それで良かったら」

「あ、ありがてぇっ! 助かるぜ!」



思わず飛び上がりそうな勢いで喜ぶ瀬田さん、よっぽど腹を空かせていたのだろう。

まぁ、食料なら後でまたどこかに取りに行けば良いしな、今は必要なだけ提供しよう。

こんな状況だ、コンビニやスーパーなどを漁ればいくらでも食料は手に入るだろう、生鮮食品は無理かもしれないけど。

ステルス装備を持つ俺なら他の人間に比べて物資補給の苦労は格段に楽だろう、この利点を活かすべきだ。

それにここで物資の出し渋りして悪印象を与えたくないし、せっかく見つけた条件ピッタリの重要拠点だ、そこに住む彼とは仲良くしておくにこしたことはない。



見たところ悪人ではなさそうだし、しばらく様子見だな。


■14



エントランスホールには待合室みたいな場所があり、三つほどテーブルが用意されていたのでそこで食事を取ることになった。

とはいえ食べるのは瀬田さんだけだ、俺はちょっと前に食事をとってあるし、ラッキーもコンビーフを一缶食べてる。

リュックからあるだけ食料品を取り出しミニコンロも用意した、サバ缶なんかは温めないと味が悪いからね。



瀬田さんは俺が用意した食料を猛烈な勢いで腹に収め、わずか30分ほどで全部平らげてしまった。

三日分は用意したつもりだったんだが、まさか全部食べるとはね。

俺は苦笑いしながら瀬田さんに水筒を渡す。



「ありがとう、おかげで生き返ったよ、ここは水も温泉もいくらでも飲めるんだが、いかんせん食べ物がまったくなくてな、危うく飢え死にするところだった」

「そう言えばここは温泉をひいているんでしたね」

「あぁ、金持ちの道楽で穴掘りしてたのが偶然当たったらしくてな、その上にこんなでっかい温泉つき高級マンションを立てちまったわけ、俺はその時から技師として呼ばれててさ、ここ無駄に豪華だから作るの大変だったんだぜ?」



瀬田さんはおどけた様子で笑っていたが、それってかなり凄いことだと思う。

見た目はお人好しそうなおっさんだけど、こんな大きいマンションの建設に関わるってことは結構凄い人なのかもしれない。



「そういえばお前さんはこれからどうするんだい? ここに来たってことはこのマンションに篭城するつもりなんだろうが、さっきも言った通りここには食いもんが無いから厳しいぞ?」

「食料関係ならまだしばらくは近隣の店を物色すれば大丈夫だと思います、モノによっては2・3年くらいは持たせられるでしょうし」

「かなり危ねぇが、それしか方法はないか……でもなんでわざわざここに? 確かに食料関係を除けば水も電気もある程度自給できるから最適と言えるだろうが、それでも篭城向きとは思えんぞ、実際俺なんかはたった四日で飢え死にしかけたくらいだからな、大人しく皆が集まるような避難所にでも行った方が良いんじゃないのか?」

「実は―――」







俺は大まかに自分がここに来た経緯と目的を話した。

ゾンビのせいで社会秩序が崩壊し、暴徒化した人間の凶行を何度か目撃したこと。

それゆえ人間同士の小競り合いを恐れて、いざという時に逃げ込める隠れ家を探してここに来たこと。

最終的には避難所に行くつもりだが、その前にここを個人的な避難地として確保しておこうと立ち寄ったこと。

対ゾンビ用ステルス装備のことなどは説明せず、だがその他の事に関しては一通り正直に説明した。



瀬田さんはそれらの話を難しい顔をしながら黙って聞き続け、ときおり「なるほどな」と呟いた。

本当は対ゾンビ用ステルス装備のことも話すべきなんだろうが、俺はいくら好印象をもっていても出会って数時間しか経っていない他人にそこまで秘密を話す気にはなれなかった。

それにまだ瀬田さんが完全に信頼できる人間だとわかったわけじゃない、笑顔で話していても内心ではまだ警戒心は解かない。

我ながら疑り深い性格になったものだと思うが、レイパー四人組の凶行を見た後だけに今はこれくらいの方が丁度良いのかもとも思えてしまう。



「……お前さんがここに来た目的はわかった、こんな状況だし、メシを食わせてもらった恩もある、好きにするといいよ」

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」

「いや、正直言うと礼を言いたいのはこっちさ、あのままじゃどの道飢え死にかゾンビの餌だったろうしな、あ、これマスターキーな、一つしかないから無くさないように気をつけろよ」



瀬田さんは笑いながら懐から『マスターキー』を出して俺に渡してくれた。

ありがたい、でもなぜそんな大切な鍵を俺に?

俺が不思議そうな顔をしながら瀬田さんの顔を覗くと、彼はガハハと笑って理由を説明してくれた。



「実はな、お前さんの姿を見て俺もようやく決心がついたんだ、俺はここを出て実家に帰る、妻と子が待つ我が家にな」

「あの、瀬田さんのご実家は?」

「A県H市だ」



ちょ!? 隣のさらに隣の県じゃないか、ここM県S市からはかなり遠いぞ。

それに家族といったが、酷な話だがこんな状況じゃその家族だって生きているかどうかもわからない、むしろ死んでいる可能性の方が高い。

瀬田さんはそんな状態でどうしようと言うのか、無謀としか思えない。



「瀬田さん、それは……」

「いや、言わなくてもわかってる、だがな、馬鹿げているかもしれんが命よりも大切な家族なんだ、生きている可能性がちょっとでもあるなら助けに行ってやりてぇじゃねぇか!」

「でも、どうしていまさら? 四日間もここに一人で篭城していたんでしょう?」

「あぁ、情けねぇことに心底びびっちまってな、だがお前さんが身一つでここに来た時にゾンビどもと必死に戦う姿を見て勇気付けられたんだ、俺だって戦わなくちゃいけねぇと思った、家族を助けず何やってんだ俺って思った、怯える自分にいい加減嫌気がさしたんだ……それにな、いままでハラペコで弱気になってたがこうして満腹になれば勇気百倍よ! また弱気になる前に何か動かねぇとビビッちまいそうでな!!」



悲壮な覚悟を告げながら陽気に笑う瀬田さん、これじゃあ、俺にはもう止められないな。

ならばマスターキーを預かった恩義もあるし、俺にできる範囲で彼の手助けをしよう。

A県まで行くのならいろいろ必要になってくるものだって多いはずだ。

せめて彼に俺と同じような武器と車を用意する手助けをしよう、それくらいなら十分できる。



「わかりました、でもこのままじゃ瀬田さんに大きな借りができてしまいますので、せめて武器と食料、あと車を手に入れるお手伝いをしましょう、あまり威張って言える事じゃありませんが幸い俺はここに来る途中でいろいろ店を物色してきてますし、それで貸し借りナシです」

「そりゃあ助かる! 嬉しいねぇ、こういう状況でそういうこと言ってくれるのは本当にありがたいよ、じゃあ俺も何かしてやりたいんだが……そうだな、このマンション施設の使い方全部教えてやるよ、なぁにそれほど難しくはねぇ、今夜一晩あればマスターできるさ! 出発は明日にすれば良いしな!」

「え、あ、ありがとうございます?」

「おうっ、任しとけ、じゃあさっそく教えるからついてきてくれ! 時間が無いからビシバシ教えるぜ、覚悟しな!!」

「りょ、了解しました……」

「声がちいせぇぞ!!」

「イ、イエッサーッ!!」



俺はこれまで飄々としていた瀬田さんの突然変わった大迫力に圧倒され、ドナドナと言われるがまま管理室の奥へと連行されていった。

そしてこの日は殆ど眠る暇が無いほど厳しいスパルタ教育を受けることになってしまった。

せ、瀬田さん……ありがたいんだけど……少しは、手加減してください。


■15



ゾンビ大発生から五日目、俺は明け方にほんのちょこっとだけ仮眠を取った後、瀬田さんと一緒に出発準備を整えた。

念のため瀬田さんにはラッキーと一緒に後方でゾンビを警戒するだけにしてもらい、ゾンビ掃討はもっぱら俺が受け持つことにした。

クロスボウも持っているし、俺は既に何体かゾンビを倒してもいるので戦闘経験も俺が上なのだ、この配置は自然と言えよう。

ちなみに瀬田さんには消防斧を持たせてある、俺にはシャベル(シャーリーン)があるので接近戦も問題ない。



「じゃあ行くか高坊(タカボウ)、この命、預けたぜ!」

「無茶をする気はありませんが、全力は尽くしますよ」



昨夜一晩ほぼ徹夜しながらスパルタ教育を受けた際、瀬田さんは俺のことを高坊と呼ぶようになっていた。

俺と瀬田さんでは年の差が親子ほど離れていたし、俺もそう呼ばれるのが嫌じゃなかったので結構気に入っている。



ちなみに瀬田さんは46歳で、実家には22歳の嫁さんと3歳の娘さんがいるという、ちょっと犯罪ちっくなおっさんだった。

家族写真を見せてもらったが嫁さん超美人だったし、どうやって落としたんだこのハゲおやじ。

リア充ってレベルじゃねぇぞ! そりゃあ命かけて実家に帰ろうともするわな、羨ましい限りである。



さて、これからの予定であるが、まずは昨日俺が来た道順を逆に進むルートで行こうと思う。

カーショップ、ミリタリーショップの順にまわり車と武器・食料等の物資を手に入れるのだ。

はじめは俺の車で一緒に行くことになるだろうが途中からは別々になるだろう、あ、でもミリタリーショップに行く時は俺の車で静かに行った方が良いかもな、あそこはゾンビが多いし。



若干計画に修正を加えつつ、俺は瀬田さんと一緒に出発することにした。







大通りをハマーのディーゼルエンジンを唸らせてガンガン走行し、邪魔するゾンビを跳ね飛ばしていく。

カーショップに近づいたところで一端エンジンを切り、モーター動力に切り替える。

徐行運転で静かに進み、ゾンビに気取られないよう徐々にカーショップへの距離を詰めていった。



やがてカーショップの店舗が見えたので車を寄せていく、昨日俺が突き破った大ガラスの真横に出入り口を横付けし車を臨時バリケード代わりとした。

車内から店内を確認したところゾンビの姿は見当たらない、幸運だと言えよう。

俺は助手席に緊張した面持ちで座っている瀬田さんに声をかけた。



「店の中にゾンビはいないみたいです、でも注意してくださいね、連中は音とか匂いとか早く動くものに反応して襲ってきますから、怖くてもできるだけ静かにして落ち着いて行動してください」

「わ、わかった、落ち着いて、静かにだな、わかったよ」

「あと念のためコレをかぶっといてください」



俺は昨日大急ぎで作っておいた『脳波遮断安全ヘルメット』を瀬田さんにかぶせる。

時間がなかったので内側にアルミホイルを一層だけ貼り付けた簡易版だ、多分大丈夫だと思う。

ついでにファブリーズを瀬田さんの全身に吹きかけ臭い消しもおこなっておく。



ちなみに瀬田さんにはゾンビが視覚・嗅覚・聴覚を利用して人間に襲い掛かってくることまでは教えてある。

これはゾンビスレでもわかっていたことなので教えてもそれほど影響はないはずだ。

最も秘密にしなければならないのは脳波遮断に関してだ、これは本当に信頼できる人以外には教えるつもりはない。



残念ながら今のところ俺にそんな人物は一人もいないわけだが……。







俺と瀬田さんは二人で音を立てないようにしてこっそり店内に侵入した(ちなみにラッキーは車内待機)。

昨日訪れたばかりなので配置や構造はよく知っている、俺はすぐにそれぞれのキーをカウンターから拾い集め瀬田さんと車選びをすることにした。



車の選別は瀬田さんに任せることにした。

俺が余計な口を出すべきじゃないし、こういう場面でお楽しみがあってもいいと思ったからだ。

10分ほどあれこれカタログとにらめっこしていた瀬田さんだったが、なんとか候補を二つまで絞り込んだところでまた悩みだした。



瀬田さんはキャデラックかマイバッハで結構悩んでいたようだが、最終的にはキャデラックを選んだ。

興味本位で決め手は何かと聞いてみたら「石原裕次郎がこれを愛車にしていたから」だそうだ、ファンらしい。



俺達はとりあえずキャデラックをそのままに、今度はミリタリーショップへと向かうことにした。

なぜハマーで行くのかというと、エンジン音を出しながら都市中心部に行くのはあまりにも危険だと判断したからだ。

そのことは瀬田さんも納得してくれたし、武器装備を確保したらまたここに戻ってくる予定だ。







ノロノロと徐行運転を続けながらゾンビの闊歩する中央区を進んでいく。

時々進行方向を遮るようにゾンビが立ちふさがるので、そのたびに進路の微調整をしたり、立ち去るまで待ったりしている。

その他にも放置車両や事故車も避けていく必要があり、とにかく手間がかかってしょうがない。

これが思ったよりもストレスの溜まる作業でいっそのことディーゼルエンジンに切り替えて全員吹っ飛ばしてやりたい衝動にかられる。

もちろんそんなことは周囲を徘徊するゾンビ数百匹相手には物理的にも不可能なので実行しないが、イライラ度は増加するばかりだ。



ゾンビはちょこっと接触したくらいでは反応を示さないが、吹っ飛ばすレベルの接触では猛然と襲い掛かってくる。

一匹・二匹ならまだしも、ここは中央区、ゾンビが数百・数千と密集する場所だ、自殺行為でしかない。

俺の隣で蒼褪めた顔をしている瀬田さんは恐怖でイライラどころじゃないようだが、ここ最近でゾンビにすっかり慣れてしまった俺にとってはあまりにも退屈な時間だった。



結局、ミリタリーショップに辿り着くまでに3時間近い時間をかけてしまった。

帰りも同じくらい時間がかかると思うと、つい暗鬱な気分になってしまう。



店舗の裏側に車を停め、ゾンビが周囲に見当たらないことを確認して裏口へと向かう。

すばやく鍵を開けて瀬田さんと一緒に店内に入り込んだ。

ちなみに先ほどから車内で暇そうにしていたのでラッキーも同伴している。







とりあえず必要なのは武器・食料・防具類である。

瀬田さんはA県までの長距離移動もするので特に食料品は大量に持っていく必要があるだろう。

日本中がこんな状態なのだ、どこで補給できるとも限らない。

最低限自力でA県までたどり着けるだけの物資は最初から積み込んでおくべきだ。



俺と瀬田さんは店内にあった缶詰や非常食類をありったけ集め、もてるだけダンボールに詰め込んだ。

少なくともこの一箱で人間一人を一ヶ月くらいは生き残らせることはできるだろう。



次に武器を選ぶわけだが、瀬田さんはここでちょっと変わった武器を選んだ。

俺が使えないと判断した『スリングショット』である。



「瀬田さん、それは威力がそれほど出ないですし、射程も短いですよ? それよりもこっちのピストルタイプのクロスボウなんかどうですか、軽くて威力もありますよ?」

「うーむ、確かに高坊の言うことも最もなんだが、俺はコレが一番慣れ親しんだタイプの飛び道具だしなぁ、ガキの頃よくこういったパチンコで遊んだものさ、ピストルみたいなそれはどうも馴染めなくてな、それにこれだって上手く使えば結構強いんだぜ、ホラよ!」



そう言って瀬田さんが鉄弾をすばやく打ち出す、標的となったマネキンの頭部にビシリッと深々めり込んだ。

おお、確かに凄い威力だ、狙いも正確だし、俺では到底ああ上手く使えはしないだろう。

俺が歓心しながら瀬田さんに振り返ると、彼は「どうだ!」と言わんばかりにふんぞり返ってニヤついていた。



「……確かに凄いですが、態度がなんか子供っぽいですよ瀬田さん」

「男なんてしょせん永遠の悪ガキさ、俺は少年の頃の綺麗な心を失っていない大人なんだ!」

「言い方はアレですが、つまりは身体は大人、心は子供というわけですか」

「そうなんだけど……なんかその言い方だと能天気な馬鹿野郎にしか思えないな、なんでだろう?」

「さあ、なぜでしょうかね?」



などとくだらない話を続けながらも武器を見繕い、最終的にはクロスボウ×2、スリングショット×2、消防斧×1、スタンガン×2、特殊警棒×1、防弾・防刃ベスト×3を持って行くことになった。

俺も前回シャベル(シャーリーン)を持っていく際に重量を減らすため置いていくことになった、持っていけなかった物資を大量に回収してホクホク顔だった。

ハマーは積載空間が大きいので大量に荷物を詰め込めて大いに助かる、俺は必要そうなモノはとにかく積み込むようにした。







ミリタリーショップを出て再び3時間のイライラドライブの後、俺たちはようやくカーショップに戻ってきた。

出発したのは朝方だったのに、もうお昼を大きく過ぎてしまっている、随分時間がかかってしまったな。

俺は瀬田さんがキャデラックに物資を移すのを手伝いながら、ふと、気になったことを聞いてみた。



「瀬田さん、ちょっと聞いても良いですか?」

「ん、なんだ?」

「瀬田さんは家族と合流した後、どうするつもりなんですか?」

「まぁ、会えるかどうかわからんが……とりあえず近くの大きな避難所に行ってみるつもりだ、それが駄目ならやはりどこかに篭城かな、どこにもめぼしい場所がなかったら家族でここに戻ってくるからその時はよろしく頼むわ」

「じゃあもう一つ質問なんですが、怒らないで聞いてくださいね?」

「なんだよ、言ってみろよ」

「もし家族と合流できなかったら、どうするんですか?」

「……わからん、今は家族に会うことしか考えないようにしているが、会えなかったら果たして俺はどうなるのか、絶望して自殺でもするのか、それともまだしぶとく一人で生きていくのか……正直全然わからん」

「意地悪な質問してすいませんでした」

「いいさ、どうせ近いうちに直面する問題だ、遅いか早いかの差だけだ」



俺はなんと言ったらよいのかわからず、とにかくその後は黙々と積み込み作業を続けた。

しばらくして全ての荷物を積み終えると、瀬田さんは黙って俺の手を握って力強い握手をした。



「いろいろ世話になったな、高坊には感謝してる、もしかしたらもう生きて会うことは無いかもしれねぇが、元気でな!」

「瀬田さんも道中お気をつけて、俺も瀬田さんの家族の無事を祈っておきます」

「ありがとうよ! じゃあ、いってくらぁっ!!」



瀬田さんを乗せたキャデラックは元気良く外へ走り出していった。

エンジン音にさそわれて何体かのゾンビが立ちふさがるが、瀬田さんのキャデラックは「知ったことか!」といった感じで容赦なく撥ね飛ばす。

それで良い、ゾンビ相手に遠慮は不要だ。

人間の姿を残しているから攻撃するのに躊躇を覚えそうだが、そうすれば喰い殺されるのはこっちなのだ。

ミリタリーショップへの行き帰りで暇な時間を持て余していた俺はそのことを瀬田さんによく言って聞かせていた。

容赦なくゾンビを撥ね飛ばした瀬田さんの車を見送りながら俺は彼とその家族の無事を祈った。



あ、ちなみに脳波遮断安全ヘルメットは瀬田さんに預けっぱなしだ。

詳しい説明こそしていないが、彼がアルミホイルを見つけて自力で答えにたどり着けるならそれで良い。

それはあくまで瀬田さん本人の功績になるからね、俺には関係ない。



……俺ってツンデレ属性持ってたっけ?


■16



ゾンビ大発生から六日目、今日はいよいよS市第三中学校の避難所に行く予定だ。

昨日は瀬田さんと別れたあと、街とマンションを何往復かして物資を運びまくった。

主に食料品や生活必需品ばかりだが、ミリタリーショップから運び込んだ武器類も十分にある。



S市グランドハイツは温泉経由で水も自給できるので食料さえあれば篭城には最適な場所なのだ。

昨日一日で必死になって運び込んだ物資量からいって少なくとも2・3ヶ月は余裕で篭城できる。

こうして隠れ家の準備は整った、なので今日は避難所に接触をしてみようと思う。



安全な拠点を確保したこの段階にきてなぜいまさら危険をおかしてまで避難所に拘るのかと疑問に思う人もいるかもしれない。

大人しく篭城していれば安全なはずなのにと考えるのも当たり前だ。



もちろん理由がある、一つは自衛隊や警察による救助活動が行われた際に置いてけぼりにされないためだ。

こういった救助の対象は必ず規模の大きな所から優先される、つまり個人宅等で篭城していると救助されるのがかなり最後の方になってしまうのだ。

今の現状を鑑みるに、もし俺がこのままマンションに引き篭もっていればどれほど放置されることになるのか見当もつかない。

もっとも、救助活動は自衛隊等の組織がある程度安全圏を確保してからになるだろうから、ゾンビに圧倒されている現在では救助活動が何時になるのかすら定かではないわけだが。

つまり、あくまで保険である、上手いこといって救助活動が行われればそれで良し、もし駄目ならば別の生き残る手段を考える必要がある。



二つめの理由は、情報収集をするためである。

ラジオやTVでは地元の細かい状況まではわからない、どこで何が起こっているのか、危険地域はどこいら辺なのか、危険人物が発生していないか、周囲にどれだけの生き残りがいるのか。

現地の人にしか流通しないそれらの情報には生死を分かつ貴重な情報も当然含まれる。

特に危険人物に関する情報は避難生活が長期化するにつれて今後重要になっていくだろう、知っておかねばいつのまにか危険人物の接近を許しゾンビではなく同じ人間に殺される可能性もある。

その点避難所には各所から大勢の人々が集まってくる、当然さまざまな情報も集まってくるというわけだ。



情報は篭城するうえでも大切なものだ。

篭城は基本的に外部からの救助活動を前提としてするわけだが、最悪の場合救助活動自体が行われない可能性も高い。

そうなるといつまでも放置されてしまい、いつか物資を使い切って死ぬことになるだろう。

だが事前に救助活動が絶望的であるとわかれば早期に対処のしようもある、農業をはじめるなり、自給自足できる環境を作るなり、時間はかかるだろうができることはあるのだ。



こうした理由があり、俺はなんとしても避難所へ行かなければならなかった。



ちなみに移動に使う車は地下駐車場に停めてある、地上入り口は一箇所だけで、しかも普段は頑丈なシャッターが下りている。

開けるには内部から操作するか、専用のリモコンを運転手が操作して開けるしかない。

居住者に配る予定だったらしいリモコンが管理室に無数にあったので、その中の一個を失敬してきた。

生身で正面入り口から入るよりも、車で地下駐車場に入ってから降りた方が遥かに安全と気がついてからはもっぱら地下駐車場を利用している。



そういえば、昨日の夜は久しぶりにラジオを聞いてみたのだが殆どろくな放送はしておらず。

唯一まともに現状を報道していた番組からは、自衛隊が各地で孤立している避難民の救出に手子摺っているという嬉しくない情報を得た。

やはり避難所に接触してもすぐには救出は期待できそうにないな、あまり期待はし過ぎないようにしていこう。







朝食をしっかり食べ、シャワーを浴びヒゲを剃る、軽く休憩した後お昼過ぎに出発し、避難所を目指す。

ゾンビが多いのでモーター駆動で徐行運転しているが、それほど遠い距離じゃない。

30分も走らせると目的のS市第三中学校が見えてきた、遠目から見える限り正面ゲートは閉じていない。

校庭を覗き込むと何匹かのゾンビがうろうろしている。

校舎の入り口は破壊されており、下駄箱の付近には学生服姿のゾンビも見えた。

もしかしたら既に壊滅しているのかもしれない、こんな状態じゃあ生存者はもういないのかもしれないな。



車をゆっくり進め校庭の中ほどまで移動すると、大きな体育館が見えた。

そこは以前見た家のように体育館周辺に大量のゾンビが群がり、明らかに中で人が篭城している様子を伺わせた。

体育館の入り口にはしっかりと閉じられており、鉄製の扉はゾンビ相手に堅牢なバリケードと化していた。

格子の付いた各窓にも内側から板が張り付けられていて、こちらからでは中の様子が伺えない。



外からの接触は難しそうだ、体育館はゾンビの侵入を防ぐためにガッチリ出入り口になりそうな場所は塞いでいるようだし。

ガラス窓等も内側から張り付けられた板で何も見えない。

ゾンビが体育館周辺に群がっているので外から直接声をかけるわけにも行かないし。

上から侵入しようにも民家と違って天井が高すぎる、困ったな。



俺はしばらく何か方法がないか考えつつ、注意深く体育館の観察を続けた。

すると校舎側に面する二階部分に渡り廊下のようなものが通じているのを見つけた。

校舎の二階からのびたその渡り廊下は体育館の上部分まで通じており、あそこからならゾンビに邪魔されずに接触できるかもしれないと考えた。







俺はラッキーと一緒に校舎に侵入した、装備は以前と同じクロスボウと消防斧、そしてシャベル(シャーリーン)。

ただし前回の反省をふまえて防具類を大幅に強化してある、防弾・防刃ベストの他に昨日ミリタリーショップから持ち帰ったネックガード(首保護具)や防護スリーブ (腕保護具)、防護ゲートル(足保護具)も装備してきた。

おかげで総重量が10kgほど増えてしまったが、まぁ、命には代えられない。



背中のリュックも一回り小型なタイプにして携行品も減らしてあるので、おそらくプラスマイナス0だろう。

応急セットやライター、ガムテープ、ファブリーズ、などの必需品は入っているのでそれほど心配はない。

万が一ヘルメットを何らかの原因で失った時用にアルミホイルも持ち歩いているので安心だ。



校内は酷い有様だった、窓ガラスは割れ、扉は破壊され、机や椅子が散乱している。

そのうえ所々に血や肉片、果ては臓物が飛び散ったあとらしきものも多数残っていた。

教室を覗けば生徒の物らしきカバンや開いたままの教科書、さらにはどう見てもここで多人数が生活していたらしき痕跡も見つかった。

缶詰やペットボトル、食べかけの非常食、毛布や衣類。

どうやら避難民は始めこの校舎でも生活していたようだ、校内をうろつくゾンビに学生服の奴等以上に一般人っぽい服装の連中が多いのはそのせいか。



三階ある校舎内を虱潰しに見回って見るが人影は見かけない。

恐らくゾンビに校内へ侵入されたことで全員が体育館に避難したんだろう、そして今俺の周りをうろついているゾンビは逃げ遅れた人々ということか。

それほど数は多くないが、こんな狭い空間で気付かれでもしたら厄介だ、できるだけ戦闘は避けて進もう。


■17



俺は細心の注意を払いながら血塗れの廊下をラッキーと一緒に歩き続けた。

ふと、二階へ登る階段に差し掛かったところでラッキーが何かに反応しだす。

しきりに鼻をくんくんと動かし、どこからか臭いの発生源を探っているようだ。

犬は人間の100万倍の嗅覚を持つと言われるくらいだ、こんな血生臭い空間でも何か別の臭いを嗅ぎつけたのかもしれない。



俺は短い付き合いだがラッキーがかなり賢い犬であることを知っている、滅多に吠えることもないし、俺のピンチには身体を張って助けてもくれた恩犬でもある。

だから俺はラッキーのことを信頼しているし、こいつが何か気になることがあるならそれはきっと大切なことなんだろう。

無駄に校舎を探索するよりはラッキーに任せた方が良いのかもしれない。



俺はラッキーの頭をひと撫ですると、先導をラッキーに任せ案内役をしてもらうことにした。







二階は一階に比べるとゾンビの数がかなり少なかった。

ゾンビは階段を上れないこともないが、それは這いずるように登るのであって俺たち人間みたいに足を使って登ることはできない。

どっちみち上の階に行けば行くほどゾンビの数は少なくなっていくのは明らかだ。

以前、俺が高層マンションを隠れ家にしたいと考えていたのはそのことが理由でもある。



ラッキーは階段からちょっと歩いた先のとある教室に入っていった、見上げると『2-3』と書いてある。

俺も続いて入ると机や椅子が散乱した教室の隅で一匹のゾンビが掃除用ロッカーをひたすら引っ掻いていた。

カリカリとロッカー表面をを飽きもせず引っ掻き続けたせいだろう、爪は剥がれ、指先の肉が磨り削られてロッカーには真っ赤な血肉がベットリくっついている。



なにか、あの中に執着するものでもあるのだろうか?



ん、待てよ、ゾンビの執着するものなんて一つじゃないのか!?

そう、生存者だ! まさかあの中に生き残りが隠れているのだろうか?



だったらマズイな、校内の様子を見たところゾンビに襲撃を受けたのはおそらく数日前だ、乾いた血の跡や肉片から大体想像できる、一日やそこらであれだけ大量の血肉が全て乾くわけがない。

となると、そこのロッカーに隠れている生存者は少なくとも二・三日水も食事もとっていないことになる。

食物は一週間くらいは食べなくても死にはしないが、水はヤバイ、三日も飲まなければ脱水症状で死んでしまう。

この間ゲットした防災関係の本に書いてあった。



となれば一刻も早くロッカーの中に隠れている生存者を助けださなければいけないわけだが、いかんせん目の前のゾンビが邪魔だ。

殺すか、いや、待て、この階には少ないとはいえ複数のゾンビがまだいるんだ、周囲に複数のゾンビがいる状況で迂闊に動けば前回のように攻撃中にいつのまにかバックアタックされかねない。

今は俺が連中に何もせず、目立たないよう目立たないよう心がけているから無事なだけであって、一匹に感ずかれたら一気に全員で襲い掛かられることになるだろう、そうなれば俺に勝ち目はない。



優先順位を間違えてはいけない、最優先すべきは俺の安全確認、他人を助けるのはその次だ。

まずは周囲の偵察が先だな、ゾンビの数と配置を確認せねば。







俺はいったん教室を出て校舎二階の偵察をすることにした。

教室は六つ、2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、理科室、そして男女別にそれぞれトイレがある。

通路の最奥には例の体育館へと続く通路もあったが、残念なことに防火扉がバリケード代わりとなり塞がれていた。



ゾンビは廊下に三匹、2-1に一匹、2-3に一匹、2-5に二匹、理科室に二匹、防火扉前に五匹いた。

幸いなことにトイレには一匹もいなかった。

合計で十四匹、数えてみると結構多い。



とりあえず2-1と2-5と理科室のゾンビに関しては教室の戸を閉めれば隔離できそうだったので、そっと音を立てずにゆっくり閉めておいた。

ついでに2-3にこれ以上ゾンビが入ってこないよう、ここも内側から閉じておいた。



残るは九匹、特に注意すべきは廊下の三匹だ。

俺はその三匹が2-3教室前から見えない位置まで移動するのを我慢強くじっくり待ち、ようやく連中から教室内が死角となる位置まで移動したのを見計らって少々大胆な行動に出た。



まずはゆっくり例のロッカーに近づき、引っ掻くのに夢中になっているゾンビの背後を取る。

手を伸ばせば届くくらいの超至近距離まで近寄るとクロスボウの狙いをゾンビの後頭部に定めた。

トリガーを引き、アルミ矢を発射する、先端に取り付けてある4ブレードヘッドがゾンビの頭蓋骨を突き破って脳を破壊し尽くした。

そしてとっさに倒れそうだったゾンビの身体を掴み、ゆっくりと床に下ろした。

倒れて大きな音を出さないための措置である、幸い作戦は上手くいき廊下のゾンビに感ずかれた様子もない。



敵に気がつかれないようそっと忍び寄り、無音必殺でトドメを刺す。

俺はまるで自分が某潜入ゲームの主人公にでもなったような気分になった。

といっても、俺はCQCや何か特殊技能を身に付けているわけではないので単なる思い込みに過ぎないのだが。







ゾンビを静かに始末した俺は焦らずまずはロッカーの中に本当に生存者がいるのか確かめることにした。

開けてビックリ実はゾンビでした! なんてオチは御免こうむりたいからな。



ヘルメットのバイザーを少しだけ開けてロッカーにできるだけ顔を近づけてみる。

すると中からは微かに「はぁ、はぁ……」という少々苦しそうな呼吸音が聞こえてきた。

これは間違いなく生きてる人間だ、俺は確信した。

ゾンビは基本的に呼吸音ではなく「あぁ〜」とか「うぅ〜」とかいう呻き声だからな、息してるのかすら怪しいし。



「おい、聞こえるか? 聞こえたら大声を出さず小声で返事をしてくれ」



俺はできるだけ小さい声でロッカーの中に話し掛けてみた、その際に気を付けるべきことは相手を驚かせないようにすることだ。

ビックリしたりパニックになられて大声を出されちゃかなわん、最悪俺まで巻き添えになりかねない。

俺がそんなことを考えているうちに、ロッカーの中からは微かに聞き取れるくらいの声で短く「はい」と返事が返ってきた。

良かった、まだ意識はあるみたいだ。

それにしても随分幼い声だったな、逃げ遅れた学生とかだろうか?。



「今からロッカーを開けるが、決して大声を出したり、暴れないでくれ」



そう言って俺が静かにロッカーを開けると、中には小柄な女の子が入っていた。

この学校の制服らしい黒と白のコントラストが特徴的なブレザーと黒いニーソックス。

だがそれらは今は酷く汚れ、そのうえかなりきつい悪臭を放っていた。

原因はすぐにわかった、ずっとロッカーに閉じこもっていたのだ、そりゃあトイレにもいけなかっただろうさ。

また、少女の髪の毛は汚れと汗でボサボサになり乱れきっていて、さながら和製ホラーに出てくる怨霊のような外見をしていた。



衰弱しきった少女の姿を一言で表せば『悲惨』である、状況は違えど以前出会った阿部育代を思い出した。



「……た……たすけて……ください……」



少女は絶句している俺に弱々しく手を伸ばしながら助けを懇願してきた。

もちろんせっかく見つけた生存者だ、俺の危険度が低い限りはできるだけ手助けするつもりである。

危険な足手纏いと判断した時点で見捨てることも念頭においたうえでの考えあるが。



少女の声は渇ききったガラガラ声で、皮膚も信じられないくらい乾燥している、それだけでも深刻な水不足だと伺えた。

今すぐにでも水分補給と休息が必要だ。

俺は少女の手を取り、安心させるように握り返した。



「……とりあえず、安全なところまで逃げるぞ、歩けるか?」

「ごめ……なさい……むり、です……」

「わかった、じゃあ俺が抱えていくから大人しくしててくれ、声を出さない、動かない、守れるな?」

「……はい……」

「それとちょっと苦しいかもしれんが、しばらくコレかぶっといてくれ、安全な場所に到着したらはずすからそれまでは大人しくしてろよ」



そう言って少女の頭にアルミホイルをグルグル巻きつけていく、予備として持ってて良かった。

もしなかったら移動中にゾンビに察知されかねない。

今のこの娘の状態なら、酷い話だが臭いに関してはそれほど気にする必要はなさそうだが、脳波はそうもいかないしな。

あ、いや、臭いについては逆に危ないかもしれん、汗臭さ以外でも引き付けられるとしたら危険だ。

脱出を急いだ方が良いかも、最悪この子を囮に置き去りにしてでも脱出だな。



鼻と口の部分を開けておき、頭全体を覆うようにしておいてアルミホイルを巻きつけた。

なんかシュールだな、銀色のミイラみたいだ。

気休めだがファブリーズも吹きかけておく、さぁ、覚悟を決めていくか、南無三ッ。







俺は衰弱しきった少女を抱え、静かに、焦らず、だができるだけ迅速に校舎から脱出することにした。

一番近い体育館避難所の方に行こうかとも思ったが、防火扉で封鎖されている上に、ゾンビが五匹も群がっている、到底接触は無理だろう。

よって消去法で俺の車へ退避することにした、場合によっては彼女を隠れ家まで連れ帰って治療する必要も有りそうだし。



彼女を隠れ家まで連れて行くことで発生するであろうトラブルも頭に浮かんだが、今のところ俺にとってそれほど致命的な問題ではないので見送ることにした。

それに「もしかしたら俺に惚れてくれるかも」、なんていう童貞らしい下衆な下心もあった。



抱きかかえられた少女は俺の腕の中で殆ど身動き一つせず、やや苦しそうに息をするだけだ。

恐らく恐怖を感じたり、自分がどういう状況にあるのかさえよく理解できないほど疲労しているのだろう。

汚れボロボロになったその悲惨な姿から容易に想像できる。

だが、哀れではあるが命が助かっただけまだマシだ、そういう意味では運が良いのかもしれない。



ところで、こんな状況でなんだが俺は女の子をこうしてお姫様抱っこするのは生まれて初めてだ。

映画やコミックではイケメンが余裕をもった笑顔でヒロインを抱えたりしているが、現実はやっぱ違うね、正直重い!

教室を出て階段を下りる辺りまではまだ余裕があったんだが、階段を一歩下りる度に地味に重みがズシリと腕にかかってきて……。

そのうえゾンビどもに悟られないようにゆっくり動かなくてはならない、まるで10分かけて腕立て伏せ一回をこなす時のように辛い!



今や彼女を抱える俺の腕はほぼ限界に来ている、非常に情けないことだが生まれたての小鹿のようにプルプルしてるぜ。

ヤ、ヤバイぞ!? ここで彼女を落っことそうものなら彼女もろとも俺までゾンビの餌食になってしまう。

俺は思わぬピンチに見舞われながらも、必死に自分を励ましつつなんとか車までたどり着くことに成功した。

脳内でずっと「ファイトォ〜いっぱぁーーつッ!!」のフレーズが流れていたのは秘密だ。



……あ、明日の筋肉痛が恐ろしいや。


■18



S市第三中学校の校庭を抜け、ゾンビの合間をすり抜けるように車を走らせて大通りへ、その後はディーゼルエンジンに切り替えまっすぐ俺の隠れ家へと直帰した。

その間、少女は後部座席でぐったりした様子で大人しくしていたが、あれはただ単に暴れたりするだけの体力がないだけだと思う。

普通なら俺みたいな怪しい野郎に連れ去られたら身の危険を感じて抵抗するだろうし。

先ほど水筒から水は飲ませておいたが、体力はすぐに回復するものじゃないしな。



助手席のラッキーが少し居心地悪そうにしている、無理もない。

少女の身体から臭ってくる悪臭はかなり強烈だ、ゾンビどもの死臭とも違う、なんというか、まぁ、生ゴミの強化バージョンだと思ってくれればわかりやすい。

後で時間を見つけて車内も消臭しておかないとな、臭いが染み付きそうだ。



まずマンションに戻ったら彼女の身体を清潔にしてやらないとろくに看病もできないぞ。



……ん? あれ? そう言えば彼女の身体を洗うのって俺がやるのか!?

うわ、それってもしかしなくても犯罪なんじゃ、この娘どう見ても中学生だし流石にマズイだろう。



でも今のこの娘の状態を見るに自力で風呂に入れるとも思えないしなぁ……。

あぅー、俺以外彼女の面倒見てやれる人間もいないし、ラッキーじゃ流石にできんだろうし。

うーむ、これも人命救助か、ま、まぁ、仕方ない、大義名分は得たさっ!



現実世界の女の子の裸を拝めるまたとないチャンスだし、正直なところちょっと嬉しいし。

ただ一つだけ残念なのは、彼女がもっと年上で、できれば20代後半くらいだったら俺のストライクゾーンど真ん中だったんだがなぁ。

俺、ロリ属性よりも姉属性の方が強いんです、『姉、ちゃんと○ようよっ!』とか『つよ○す』は楽しませて貰いました!



そんなアホなことを考えているうちにマンション到着、地下駐車場のシャッターを開けてさっさと入っていった。

とりあえずは風呂、それと食事の用意か、あと寝床も確保しておかないとな。







俺はこのマンションの24階の一室に荷物を運び込んでおり、そこで寝泊りをしている。

武器などは別の部屋に置いてある、基本的に部屋は余りまくっているので使い放題だ。



ちなみになんでわざわざマンションの高層階を選んだのかというと三つ理由がある。

・万が一、ゾンビが侵入してもさすがに24階までは簡単に登ってこれないだろうという考えがあって

・生存者(この場合、暴徒・犯罪者・略奪者)が侵入してきても容易に発見されずらくするため

・高層階の部屋の方が景色を楽しめるから

最後の理由はごく個人的なものだが、前者二つは命に関わるため真剣だ。



さらに、このマンションは屋上のソーラーパネルのおかげである程度の電力は自給できるので、エレベーターも常時とまではいかないが好きな時に動かせる。

荷物を運んだり、自室まで移動するのもそれほど苦ではないのだ。



俺は自室に少女を運び、まずは風呂場でその汚れた身体を洗ってやった。

疲れきって気絶しているのか、それとも抵抗する気力もないのか、少女は俺が話し掛けても返事はなくただなすがままにされていた。

童貞ゆえ生の女の子の裸体にドキドキしたが、流石にこんな衰弱した女の子にどうこうするわけもなく、俺はきわめて紳士的に対応した。

俺の肉体の一部はきわめて紳士的ではない状態になっていたが、頭から冷水をかぶることでなんとか静めることに成功していた。



ちなみに女の子のあそこにはまだ毛が生え(ry







身体を洗っている途中、中学生とはいえ成長期にある少女の微妙に色気を発しはじめている肢体に思わずゴクリと生唾を飲み込む場面もあったものの、特に問題もなく作業は終わった。



ただ、少しだけ気になったのが、少女の身体のあちこちにどう見ても殴打した後らしい青紫色のアザが無数にあったことだ。

確かにゾンビに襲われれば暴れまわって青アザくらいは付くかもしれないが、彼女の場合数が異常だ。

それにあの状況下で少女がゾンビに襲われて生き残れるとも思えない、間違いなく人間による暴行のあとだと思うのだが……。



ふと、彼女の手の甲にいびつなでこぼこがあったので良く観察してみると、俺の考えは確信に変わった。

タバコによる『根性焼き』の痕だ、昔高校時代に知り合った不良に自慢気に見せられたことがある。

いじめか、虐待、そのどちらか、もしくは両方か。

今も昔も社会の闇はそう変わっていないわけだ、いじめ撲滅とか騒いでいたが効果は薄いっぽいし。



かくいう俺も実は小学校時代にちょびっとだけいじめられたことがある、まぁ、誰にでもある経験なんだろうけど。

だけど俺は先生にチクったり親に頼るのは男の子としてはちょっと情けないような気がし、暴力行為で解決するのも嫌だった。

だから俺はこっそりいじめっ子のリーダー的存在の子供の後をつけて家の所在を確かめた後、一週間ほどその子の家に悪戯をしたら、いじめはあっさりおさまった。



なに、子供の考えた可愛げのある悪戯さ、そんなに凶悪なモノじゃない。

ゴキブリを詰め込んだ箱をプレゼントしたり、玄関前に生ゴミを山ほどブチ撒けたり、ちょっとアンダーグラウンドなサイトの掲示板にその子の住所と家族構成を書き込んでみたり。

まぁ、俺のせいじゃないと思うがその後、その子の家族はどこか別の地域に引っ越して行っちゃったけど。



ともかく、いじめというのは今も昔もなかなか無くならないものらしい。

根性焼きまでされるのは流石に可哀想だが、まぁ、所詮は他人事だ。

自分で解決するか、それが無理なら親・教師を頼るべきだろう。

赤の他人である俺が気にすることじゃないな、見なかったことにしよう。







風呂からあがり、清潔な服に着替えさせた少女をベッドに寝かせ、俺はしばらく彼女の看病をすることになった。

といっても、彼女の症状は極度の疲労と栄養不足、脱水症状などで、俺ができることなどたかが知れている。

せいぜい時々目を覚ます彼女にストローでポカリスエットを飲ませることくらいだ。



じゃあなぜ付きっきりで看病しているのかって?

理由はコレ、この娘さっきからずっと俺の手を握って離さないんです、かなりしっかり握られてるのでちょっと痛い。

寝ていても無意識なのか離そうとしないし、それを振り解くのも人としてちょっと、ねぇ?

まぁ、原因は大体想像つくけどね、狭いロッカーの中で長時間ゾンビの恐怖に晒されたんだ、トラウマやPTSDにだってなるだろうさ。

こうして誰でも良いから人の温もりが欲しくなる気持ちもわかるような気がするよ、相手が俺で悪いけど、フヒヒ。



本当なら臭いが染み付く前にハマーの車内を綺麗に掃除したり、ラッキーに食事をあげなきゃいけいけないんだが。

こうして誰かに必死で頼られるのも悪くない、あくまで俺に害がない程度の範囲内であるならば。



それに普段なら俺みたいなオタには絶対ありえないシチュエーションだしな、普通なら女の子にキモイとかクサイとかウザイとか言われながら蔑まされる立場だったし。

せっかくだし、この機会に生の女の子の手をしっかり堪能しておこう、もう一生こんなチャンスないかもしれないし。

俺はニギニギと女の子の柔らかい手を触りつつ、今日一日のことをゆっくり思い出していた。



うはwwww女の子ってマジでやわらけぇwwww



■19



さて、S市第三中学校の避難所にはまた改めて向かうとして、問題はどうやって内部の人間と接触するかだ。

今日見た限りでは体育館への外部からの接触はかなり難しいし。

校舎二階の渡り廊下からの接触も防火扉前にゾンビが五体もいるので危険だ。

今のところ良い案が思い浮かばない、いっそのことあそこの避難所は諦めてもっと遠方の避難所を探してみるか?



しかし、あそこが俺の知る限り一番大きな避難所だし、アレより大規模なのは全部中央区に集中している、だが中央区はもうゾンビの巣だ、生き残りがいるとは思えない。

うーむ、これは時間がかかりそうな問題だな。

焦ると碌なことにならない、ここはじっくり時間をかけて最良案を考えよう。



ふと、隣で眠る少女の顔が目についた、風呂に入り、水分もたっぷり補給したおかげだろうか、校舎で出会った頃に比べれば格段に顔色が良くなっている。

校舎で出会った当初は髪はボサボサ、服は汚れまくり、長すぎる前髪の所為で顔が半分以上隠れ、まるで『貞子』のような風貌をしていたがどうしてどうして。

身奇麗になって、その素顔を見てみると目の覚めるような超美少女じゃないか。



前髪がちょっと長すぎるような気もするが、タレ目気味なところといい、薄幸美人そうな顔つきといい、とあるNice Boat.なアニメに出てきたヤンデレヒロインによく似ている。

もっとも、中学生らしい未発達な胸とかはぜんぜん似てないがな、アハハハ!



……ここいら辺で芸能人とかアイドルとかじゃなくて二次元キャラが出るあたり、俺がいまだ童貞な原因かもしれないな。

ふぁ〜、どうしょうもないこと考えてたらなんだか俺も眠くなってきちまったよ……。







「……あの、すいません、起きてください」



ゆさゆさと身体を揺すられ目を覚ますと、俺の目の前には例の少女がいた。

いかん、いつのまにか眠っていたようだ、腕時計を確認すると3時間ほど時間が経っていた。



少女の顔色を見るとまだ幾分顔色は悪いが、これならそれほど問題にはならないだろう。

後は食事をとってしっかり休めば数日で完全回復するはずだ。



「おはよう、気分はどう? どこか痛い所とかはない?」

「えっと、その、だ、大丈夫です、すみません」

「そうか、よかった……あぁ、自己紹介がまだだったな、俺は高田了輔、ここは一応俺の部屋ね、ここに来るまでのこと覚えてる?」

「ハイ、あの、私は児玉由衣(コダマ ユイ)といいます、その、助けて頂きありがとうございます」

「うん、まぁ気にせず今は休むといいよ、今何か食べ物持ってくるから、お腹減ってるだろ?」

「あ、ハイ、すみません、ありがとうございます」



俺はしきりに頭を下げる由衣ちゃんに背をむけキッチンへと向かった、ここにはレトルト系の食料も持ち込んである。

しばらく食事をとっていなかった彼女にいきなり油っこいものなど重い食べものを与えるのも酷というものだし、まずはお粥とかで慣らしていくのが最善だろう。



まだ運び込んだ物資の大半はまだダンボールの中に仕舞ったままであるので、近場のダンボールをてきとうに開けていき中身を探してみる。

缶詰……カンパン……カロリーメイト……お、あった、お粥のレトルトパックだ。

種類も豊富だ、梅粥、卵粥、鮭粥など、ここはオーソドックスに梅粥でいこう。



小鍋に移した梅粥をクッキングヒーターで温めながら、俺は先ほどの由衣ちゃんとの会話を思い出した。

常に何かに怯えるような口調、しきりに此方を伺うような目、ことある毎に連呼する「すいません」。

ありゃ典型的ないじめられっこのモデルケースだな、実にわかりやすい。



こうして命は助けたものの、俺は彼女の個人的な事情に興味もないし介入するつもりもない。

いじめられている彼女に偉そうに説教するつもりもないし、第一俺に上手く話しができるかすらもわからん、そんな経験もないし。

だが由衣ちゃんにああしていちいち謝られたりするのは気まずいし、話し辛い、気分も良くない。



「お待たせした、熱いからゆっくり食べるといいよ」

「あ、すいません、その、ありがとうございます、高田さん」

「それだ、いちいち謝るのは止めないか? 別に悪いことをしてるわけじゃないんだから」

「え、あの、ご、ごめんなさい、私……」

「あー、悪い、言い方が少しキツかったか、別に怒ってるわけじゃないんだ、ただもっと気楽に会話したいだけでさ」

「は、はい、わかりました、その、頑張ってみます」

「うん、ありがとう、そうしてもらえると助かるよ、さ、まずはこれを食べて元気を出そう!」

「ハ、ハイ!」







由衣ちゃんにお粥を渡し、俺自身も軽く食事をとることにする。

ベッドの上で上半身を起こしフーフーと熱いお粥を冷ましながらゆっくりと食事をする彼女のベッド横に腰を下ろす。

カロリーメイト(フルーツ味)の袋を開ける、ちなみに俺はチーズ味よりもチョコ味、さらに言えばフルーツ味が一番好きだ。

ポリポリとブロックを齧りながら、さてこれからどうしようかと考えていた。



食後、まだ体調の芳しくない由衣ちゃんをベッドに寝かせながら、簡単な質問をいくつかしてみた。

避難所で得られなかった情報を彼女から少しでも得ておくためだ。

ゾンビ発生からこれまでどうやって生活してきたのか、避難所の様子はどうだったのか、誰が避難民をまとめているのか等、特に気になる情報を選んで聞いてみた。

彼女はたどたどしい口調ながらも俺の質問に素直に答えてくれ、断片的ながらも俺は避難所の実態を知ることができた。



S市第三中学校の避難所ではゾンビ発生の当日、いち早く駆けつけた警察官達が混乱を押さえ、ゾンビを押しとどめながら避難民を校内に誘導したそうだ。

由衣ちゃんもそうして避難してきた一人で、クラスメイトと一緒に2-3教室で避難生活していた。

やがてゾンビの圧倒的物量に押され、校舎と体育館を閉めきって篭城することになったのだが、この時点において外のゾンビ以外はそれほど深刻な問題は起きていなかったらしい。

生き残った警察官は上手く住民をまとめていたし、避難民達も比較的落ち着いていたそうだ、校内には非常時用の物資が大量に備蓄されており篭城するにしても余裕で一週間はもつほどであったらしい。



だが問題が発生したのは二日後だった、ラジオで知らされた自衛隊によるゾンビ制圧の失敗、これで皆に一気に不安感が蔓延したという。

そして三日目、いつまでもこない救助にイラ立ちを覚えた一人が勝手に正面入り口を開けて外へ飛び出してしまったらしい。

そいつはすぐにゾンビの餌食になってしまったらしいが、問題はその後だった。

開けっ放しの正面入り口からゾンビがワラワラと入り込んできて避難民に次々と襲い掛かったのだ。



残り少ない警察官が必死になってゾンビと戦い、その間に校内の人間はゾンビに襲われつつもなんとか半分くらいの人が体育館に避難することができたそうだ。



ここで由衣ちゃんは顔を蒼褪めさせながら自分の身に起こった出来事も話してくれた。

彼女もゾンビ侵入の騒ぎを聞き急いで避難しようとした時、なんとあろうことかクラスメイト数人によって逃げ出すための囮にされてしまったらしい。



もともと学校でいじめられていたという彼女は、クラスメイト達にとって死んでも心の痛まない便利な存在だったのかもしれない。

囮にされゾンビの前に差し出された彼女は必死に逃げ、なんとか教室のロッカーに隠れることができたがそれだけだった。

一匹のゾンビがずっとロッカーの前に張り付き、彼女が出てくるのを永遠と待ちつづけていたのだ。



四六時中聞こえてくるゾンビの呻き声と、ロッカーを引っ掻く音、飢えと乾き、それらがガリガリと由衣ちゃんの精神と体力を削っていったのだろう、俺が最初に見た彼女の姿はその結果だった。



一通り話して由衣ちゃんはガタガタと震えだした、その時のことを思い出したのだろう。

クラスメイトの残酷な仕打ち、ゾンビの恐怖、一人狭いロッカーに取り残された孤独な時間。

涙を流しながら自分自身を抱きしめ必死に恐怖のフラッシュバックに耐えていた。



……ふむ、ここでエロゲの主人公なら何か気のきいたカッコ良い台詞の一つでも言ってフラグを立てるんだろうが、俺にはそんなイケメンスキルはないし何と言ってよいのかも全くわからん。

無理して何かカッコ良さげなこと言っても多分キモイだけだろう、どうすべきか、ほっとくか?



とりあえず俺は言葉ではなく態度で示してみることにした、流石にこのまま放置は気まずいしね。

俺は由衣ちゃんを力一杯抱きしめグリグリ頭を撫でた。

昔、俺が泣いていた時に母ちゃんがよくしてくれた慰め方だ、今でも思い出す。



ふわりと香る女の子の匂いに邪まな心が揺り動かされるも、ここでセクハラすればせっかくの信用を失ってしまう。

それに俺は以前見た四人組のようなレイパーになるつもりはない、これまでだって右手が恋人だったんだ、これからもそれは変わらないだろうし。



オタは紳士であるべき、三次元に興味なんてないのさ(嘘)、yesロリータnoタッチ!

……とにかく我慢、我慢だ!







そうして10分ほど抱きしめているとようやく震えがおさまってきて、由衣ちゃんも落ち着きを取り戻した様子だった。

俺は彼女をベッドに寝かせ、これ以上の無理はさせないようクールに退室しようとしたが(しかし身体の一部はホットになっていた)。



「あの、すいません……い、一緒に、いてください、お願いします」



と、涙目+上目使い+頬染め攻撃を受けてあっさり留まってしまうことに、やるじゃない。

その後、由衣ちゃんが眠るまでしばらく彼女と話をしていたが、やはり彼女は俺の思っていたとおりの環境にいたようだ。



学校でのいじめ、さらに家庭では父の再婚相手の義母からの虐待。

頼るべき父は義母との間にできた妹にばかり愛情を向け彼女には殆ど関心を示さなかったそうだ。

例の根性焼きも義母にやられた痕らしい、痛ましい話だ。



一度、ボランティアの相談窓口に掛け合ってみたこともあったそうだが、受付の人物に「貴女のその卑屈な態度にも問題があるんじゃないんですか?」と門前払いされてしまったらしい。

学校の先生は事なかれ主義で見て見ぬフリをしていたし、助けてくれるような友達もいない。

由衣ちゃんには味方が一人もいなかった。



そこまで話を聞いて、俺は彼女が何を考えて俺にそんな個人のプライバシーに深く関わる話をしてくれるのか少しだけわかった気がした。

由衣ちゃんは俺を味方に引き込もうとしているのだ。

危険な場所から助けられたことで俺を『良い人』だと思っているのかもしれない(勘違いなのだが)。



同情、憐憫、色仕掛け、とにかく利用できるものは何でも利用して自分の味方にしようとしている。

それが無意識の行動なのか、それとも意識的にやっているのかは別にして、とても賢い行動だと思う。

特に俺みたいな童貞男には効果バツグンだろう、現に俺には由衣ちゃんを「守ってあげたい!」という強い保護欲が生まれているし。



単なる俺の思い込みかもしれない、だが、事実ならば同時にこれは俺にとって非常に危険な感情だ。

一歩間違えば俺は由衣ちゃんのために死ぬことになるかもしれない、それは嫌だ。

逆にこれは由衣ちゃんにとっても危険な感情だ、いつ俺が彼女を求めるようになるかわかったものじゃない。



こんな状況下だ、あまり想像したくないが保護欲がいつしか支配欲に変わってムリヤリ彼女を犯す、なんて事態は避けたい。

俺だって男だ、二人っきりで近くに女がいれば理性を守りきれず獣になってしまう事だってあるかもしれない。

前に見かけたレイパー四人組のようにはなりたくない、お互いのためにも由衣ちゃんとは距離を取るべきだな。



話し疲れて眠る彼女の横顔を見ながら、俺はそう一人で決心した。


■20



ゾンビ大発生から七日目、朝、ラジオ放送をチェックしていると重大なニュースが流れてきた。

ついにライフラインが断絶してしまったらしい、電気、水道、ガス、全部だ。

原因はこれまで発電所を警備していた自衛隊部隊がゾンビの襲撃で壊滅してしまい、施設維持が困難となり、連鎖的に他の施設への電力供給もストップし各施設も運行を止めざるをえなかったらしい。



俺はついに恐れていた事態になってきたなと思った、これで今後の夜は本当の闇と化すことになる。

いままでは街の街灯もついていたが、今日からは全て真っ暗だ、夜出歩くのは絶対に避けるべきかもしれない。



そしてさらに問題となるのは各所における水不足だろう、貯水タンクなど備えていない限りもう水の供給は無いのだ、三日と経たずに脱水症状で弱りきってしまう。

学校や大学などの公共施設は基本的に井戸を備えている場合が多いのでそれほど心配ないが、個人宅や商店などに篭城している連中は非常に困ることになるだろうな。

場合によっては無茶な脱出を迫られることになるかもしれない、となればここいらの人が集まるのはS市第三中学校の避難所か。



やはり一度あそこの避難所とは接触を取っておいた方が良いのかもしれない。

ラジオ以外からの情報も欲しいし、由衣ちゃんが回復したら改めて保護を頼む必要もある。

もっとも、未だ有効なコンタクト手段が考えつかない以上何もできないわけだが。



昨日、いろいろ考えて由衣ちゃんには体力が回復しだい避難所へ帰ってもらうことにした。

俺のためでもあり、彼女のためでもある、こんな状況下で楽しく恋愛ごっこに興じることができるほど俺には余裕があるわけじゃない。

できることと言えばせめて彼女に大量の物資と護身用の武器を渡しておくくらいだ。

冷酷な判断かもしれないが、俺が性犯罪者にならず安全確実に生き残るためだ、仕方ない。







「由衣ちゃん、俺はこれから用事があるんで出かけるけど、君はここで休んでおくように、食事は用意しておいたから温めなおして食べるといい」

「あ、はい、ありがとうございます、高田さん、あの―――」

「一応、ここにラッキー残していくから、暇だったら遊び相手くらいにはなると思うよ、じゃ」

「あ……」



軽く手を振って部屋を出る、会話は簡潔に、余計なことは言わない、言わせない。

これ以上情が移ると困ることになる、まるで拾った捨て犬をまた元の場所に連れて行くような後ろめたい心境だ。

俺はできるだけ由衣ちゃんのことを考えないようにして下の階へと移動した。



地下駐車場に降りてきて、俺はさっそく車(ハマー)の掃除にあたることにした。

先日、汚れたままの由衣ちゃんをのせたことで後部座席はかなり汚れてしまっている。

ドアを開けっ放しにしておいたが未だ臭いも消えていない、これは念入りに掃除をしておかなくてはいけないな。



俺はまずぬるま湯を絞った雑巾でシートを念入りに拭き取り、次に乾いた雑巾で表面の水気も全部拭った。

一通り終わった後は車内全体も掃除し、最後にファブリーズを吹きかけて仕上げを行う。

それでも微妙に臭いが消えていなかったので、車用芳香剤(カーアクセサリータイプ)をバックミラーに引っ掛けておいた、爽やかハーブの香りだ。



車の掃除が終わった後は管理室に向かいマンション内の設備をチェック。

瀬田さんに教えられた通り温泉設備や電気系統に異常がないか調べ、すべて太陽発電設備からの電源供給に切り替えておく。

必要の無い設備電源は俺の部屋や地下駐車場シャッターなどのごく一部だけを残し全て落とす。

エレベーター等の設備を使うにはマスターキーで始動させる必要があり、もし無粋な侵入者があったとしても使えない、流石に24階までは容易に上ってはこないだろう。







必要な雑務を終え、やることが無くなった俺は再び体育館避難所へどう接触するかについて考えてみることにした。

由衣ちゃんとラッキーがいる隣の部屋(武器や道具類を保管してある)に行き、何か使えそうな物はないかヒントを探してみる。



一番の問題は渡り廊下にある防火シャッターとその前に集まっている五匹のゾンビだ。

防火シャッター越しに中の人間とコンタクトするにしても、目に前にゾンビがいては気がつかれてしまう。

ゾンビをどうにかするのは必須条件だ、一匹・二匹ならば奇襲で何とかなろうが五匹は流石に難しい。

遮蔽物に隠れながら一匹ずつ始末する方法もなくはないが、渡り廊下にそんな都合の良いものは無い。



アイテムを漁っていたダンボール箱を手に取った時、ちょっとふざけた思いつきが浮かぶ。

いっそのこと、某蛇な傭兵のマネをしてダンボール箱をかぶって潜入してみるか、氏曰く超便利アイテムらしいし?

中身を床にぶちまけ、空になったダンボール箱をかぶってみる、大型なタイプなんだが猫のように背を丸めてないと身体が入らない。

……この状態で動くとか無理だろ、中腰ってレベルじゃねーぞ。

ダンボール作戦は却下だな、視界も狭いし、武器も構えられん。



情けない気分になりながら床に散乱した道具類を集めなおす。

ふと、手に取った一つを見て俺の脳裏に閃きが走った、コレは、もしかしたら使えるんじゃないのか?



それは『暗視スコープ』、双眼鏡を小型化したような形で、暗闇の中でも視界がよく見えるようになる道具だ。

ミリタリーコーナーで懐中電灯が切れた時にでも使えるかもなと気軽に持ち帰ってきたものだった。

二度・三度手にとって眺めてみる、軽く、コンパクト、ゴツイ水中眼鏡みたいだ。



試しに部屋のカーテンを締め切り、電気を消してみる、とたんに部屋が暗闇に包まれ何も見えなくなった。

自分の手を振ってみるがそれさえも確認できない、どこに何があるのか、遠近感すら危うくなってくる。

俺は手に持っていた暗視スコープの電源を手探りで探し、スイッチを入れてみた。

淡い緑の蛍光色が視界一面にひらけ周囲の様子がハッキリ見えるようになる、すごいな、ここまで明瞭に見えるものなのか。



ニヤリ、と邪悪な笑みが浮かぶ……フ、フフフッ、これなら十分使えるぞ!

暗視スコープごしの景色を眺めながら、俺は自分の閃きに確かな自信を持った。







俺は今までの経験上、ゾンビどもが視覚、特に早い動きをするものに対して襲い掛かる性質を持っていることを知っている。

以前、油断してゾンビにバックアタックされた時もクロスボウの発射準備をしようと手をすばやく動かしていたのを見られてしまったのが原因でバレてしまったわけだし。



だが、逆に姿さえ見られなければアルミホイルで脳波を遮断しているうえに体臭も防いでいる俺はゾンビの反撃を受けることは無い、はずだ。

カーショップでカウンターに隠れながら狙撃した時にそれは確認済みだ。

つまり、姿さえ見られなれなければ例えどんなに早く動こうともゾンビに襲われることは無い!



そうなると今朝のラジオで聞いたニュースで発電所が停止したことは、ある意味で俺にとっては幸運だったのかもしれない。

町中の明かりが太陽光以外なくなった現在、夜は月明かり以外の光は一切なくなる。

それは生きた人間にとっては暗闇に包まれ視界がきかなくなる恐怖となるだろうが、同じことはゾンビにも言える。

むしろ視力が人間よりも劣ると思われるゾンビこそ夜の闇の中では何も見えないはずだ、代わりに連中はその他の嗅覚や聴覚、脳波を察知して生存者に襲い掛かっているのだろう。



だが、そこに俺のつけいる隙があるかもしれない、これまで嗅覚・聴覚・脳波に関しては小道具を利用してステルス性を保ってきたが、動きの速さについてはただゾンビのマネをしてゆっくり動くことで誤魔化してきた。

それでさえもゾンビを攻撃したり、すばやく手足を動かしただけでバレてしまう程度の脆いものだったが、暗闇の中でなら話は違う。

ゾンビどもは人間以上に暗闇で視界が利かない以上、闇の中でならいくら早く動こうがバレることはない!



そして今俺の手元にあるのは暗視スコープ、どんな暗闇の中でも視界がきく便利アイテムだ。

この意味がわかるだろうか? 



そう、俺は夜の暗闇の中でならゾンビ相手に『ずっと俺のターン!』ができると言うことだ!

昼間や光のあるところではこれまで通りゾンビのマネをしなければならないが、闇の中では自由自在に動くことができる。

もしかしたら、これからの主な活動時間を昼間ではなく夜に変更する必要もあるかもしれないな。



俺はワクワクしながらさっそく脳波遮断ヘルメットに取り付ける暗視スコープを選ぶことにした。







俺は持ち帰った暗視スコープの中で最も高機能なものを一品選びぬいた。

『第2.5世代型暗視スコープ・単眼タイプ(242,500円)』

非常に軽量でコンパクトな第2.5世代の高解像力暗視スコープ、小さく軽いので携帯にも大変便利。

単眼タイプで僅かな光を増幅させる通常モードと熱感知による赤外線モードの二通りの利用ができ、5倍までの望遠ズームもできる。

のぞきにでも使ったら丸見えだろう、もっとも、赤外線モードだから輪郭しかわからんが。

電池寿命は約50時間で長持ち、言うことなしだな。



俺は鼻歌を歌いながら上機嫌でさっそく工作作業に取り掛かった。

フルフェイスヘルメットのバイザーを取り外し、左眼部分にノコギリとヤスリを駆使して丸い穴を開ける。

そこへ単眼式の暗視スコープを通し隙間を工作用プラスチックパテで埋めて固定、俺の目にピッタリ合うように位置を微調整しつつ取り付け作業を終えた。



明るいところでは裸眼の右目中心で行動し、暗いところでは暗視スコープの左目中心で行動するコンセプトを取った。

完成後、改めてパワーアップしたヘルメットを見ると、なんだか『装甲騎兵ボト○ズ』に出てきたAT(アーマードトルーパー)見たいなデザインになってしまっていた。

……か、カッコ良いじゃない。

■21



時間もかなり経ったので、俺は一度由衣ちゃんの様子でも見ておこうと部屋に戻ってきた。

情がうつらないようあまり仲良くするつもりは無いが、命を助けて保護した責任はしっかり負う必要がある。

ここで無責任に放り出したり、死なせてしまっては目覚めが悪い。



彼女の体力が回復し、避難所まできっちり送り届けるまでが俺のできる精一杯のことだ、それ以上は己の身を滅ぼすことになる。

そんなことを考えながら部屋に入ると驚くべき光景が目に映った。



「あ、お帰りなさい高田さん」

「これは……由衣ちゃん、君がやったのか?」

「は、はい、その、助けていただいたお礼もしたいですし、私に何かできることがあればと思いまして」



部屋の中、きっちり整理整頓された物資が整然と効率的に並べられていた。

物資を入れておいたダンボール箱は綺麗にたたんであるし、彼女が寝ていたベッドもきれいに片付けられていた。

さらに由衣ちゃんは腕をまくって床を雑巾がけしている途中であり、丁度玄関前で入ってきた俺と出くわす形になってしまっていた。



「あの、勝手に荷物を出しちゃ駄目だったですか? その、ごめんなさい、すぐに元に戻しますから!」

「あ、いや、そうじゃない、ちょっと驚いただけだ、それよりも体調の方は大丈夫なのか?」

「はい、ご飯を食べて半日ほど寝たらすっかり良くなりました、高田さんのおかげです、ありがとうございます!」

「そうか、なら良いんだが、一応念の為にもう掃除はいいから休んでいなさい、病み上がりで無理をするべきじゃない」

「あ、は、はいっ、その、ありがとうございます」

「それと申し訳ないがラッキーをちょっと借りていくよ、今から少し出かけてくるのでその間の留守番頼むね」



そう言って俺はラッキーを連れてそそくさと退室した。

驚いたな、回復が早いのもそうだが、部屋の整理や掃除までしてくれているとは、これが若さか。



それに、いきなりの出来事だったんでつい『体調が回復したら彼女を避難所へ帰す』ことを話しそびれてしまっていた。

今から引き返して話すのもなんかかっこ悪いしなぁ、また今度でも良いか。



ところで先ほどからラッキーが首に巻いているスカーフのようなものはなんだろうか?

オシャレか? 昔のアニメに出てきた犬とかがこういうの付けているの見たことはあるが。



「ラッキー、それ由衣ちゃんに付けて貰ったのか?」

「ワンッ」

「ふーん、良かったじゃん、似合ってるよラッキー」

「ワンッワンッ♪」



俺はラッキーの肯定とも取れる返事を聞きながら頭を撫でた。

尻尾を左右に激しく振り回し目をキラキラさせながらラッキーも喜んでいるようだ、なにこの可愛い生き物。







さあ、いよいよ実験だ、俺にとっての幸運の女神であるラッキーを連れて行くことで成功を祈ることにしよう。

今日の女神様はすこぶるご機嫌だ、きっと幸運を運んできてくれるにちがいない。



地下駐車場から車で外に出ると周囲は既に薄暗くなっていた、あと一時間も経たないうちに真っ暗闇になるだろう。

幸い今日は曇りだ、日が沈めば月明かりさえも遮られて本当の暗闇に包まれることになる。

俺の仮説を試すには最適の条件というわけだ。

ヘルメットをかぶり暗視スコープの電源を入れる、左眼いっぱいにひろがる蛍光緑の視界、数百メートル先にいたゾンビの姿が見えた、うん、視界は良好だな。



車のライトはつけない、ゾンビに存在を知られては意味がなくなるからだ、これからは暗視スコープを頼りに運転していく。

はじめから生身で実験しようなどとは思わない、まずはこのハマーで試す。

モーター動力で運転すれば静かに移動できるし、もし俺の仮説が間違いでゾンビに感ずかれても車なら撥ね飛ばして逃げることができる。

安全に、かつ安心して行える実験だ、それに大型車が早く動いて気付かれないのならばそれよりも小さい人間はもっと気付きにくいことだろう。

比較対象としてもより俺の安全を確認できる実験というわけだ。



日が完全に沈み、周囲を漆黒の闇が覆い尽くすのを待って車を発進させる。

まずは徐行運転、昼間と同様にゾンビは此方に関心を持たずひたすらフラフラしている。

徐々にスピードを上げていく、時速10km……時速15km……時速20km。

まだゾンビは気がついていない、いい調子だ、時速25km……時速30km……時速35km。

もうほとんど普通自動車が車道を走る速さと変わらない、次々と視界を横切っていくゾンビどもは此方に見向きもしようとすらしない。



完璧だ! やはり俺の考えは当たっていたみたいだ「暗闇で見えなければ大丈夫」という考えは正しかった。







実験は成功した、だが、最後にもう一つだけ試してみたいことがある。

この状態でゾンビを撥ね飛ばしてみることだ、それも死なない程度に手加減して。

なぜそんなことをするのかといえば、暗闇の中、見えない相手から攻撃されてゾンビがどういう反応をするのか知っておきたいからだ。

暗闇の中でも此方を見つけることができるのか? それともただされるがままなのか?



俺は丁度よく道路の真中をフラついているゾンビに目をつけ、そいつ目掛けてアクセルを踏んだ。

ドンッ、という衝突音とともにゾンビはハマーのクローム製ランプガードにぶつかり撥ね飛ばされる。

俺は一端停車して、すぐさまバック、30mほど後ろへ車を下がらせた。

さて、これであのゾンビがコチラの存在に気が付いてしまえば、今後も俺はゾンビに攻撃を仕掛けるのを控えねばならないわけだが……。



「あぁうぁ〜〜?」



俺の目の前で撥ね飛ばされたゾンビがのそりと起き上がり、その不自然に折れ曲がった首をキョロキョロ動かすのを俺は黙って観察していた。

何体かのゾンビも先ほどの衝突音につられてハマーの少し前方にぞろぞろ集まってくるが、そこには何も無い。

起き上がったゾンビも衝突現場にフラフラと歩いてくるが、他のゾンビ同様何も無い場所で存在しない何かを探すようにウロウロするだけだ。



よしっ、一匹もコチラに気が付いていないぞ!

音がした場所にこそ集まってくるが、そこから離れてしまえばあっさり対象を見失ってしまう。

せ、成功だ! これなら俺でも暗闇に乗じてゾンビを始末できるぞっ!!



ようやく避難所への突破口となる手段を発見し、俺は湧き上がる興奮を押さえながら急いでマンションまで帰還した。

これで、あの防火扉前のゾンビどもを始末できる!







大収穫を得ることができた実験が終わり、俺はウキウキ気分でマンションへ戻ってきた。

既に時間帯を深夜に達しており、今日はもうすることがなく後は寝るだけだ。

さすがにこれからS市第三中学校のゾンビを掃討する元気もないし、それなりに準備も整えていきたい。

やるとすれば明日の夜からだろうな。



一応、就寝する前に由衣ちゃんの様子見をしておいた方が良いか。

留守番を頼んだままだし、帰ってきたことだけでも報せておかないと。

それと、数日後に避難所へ帰ってもらうことも話しておかねば、正直気が重いけど。



俺はラッキーを伴って由衣ちゃんの部屋(仮)にやって来た、玄関の呼び鈴を鳴らすと「どうぞ」と返事が返ってきたのでお邪魔することにする。

由衣ちゃんは前のように起きて掃除や片付けなどしておらず、俺の言うことをきちんと守ってベッドで大人しくしていたようだ。

顔色も悪くない、心配はいらないようだな。



「留守番ありがとう、今日は俺ももう寝るから君も無理せず休むようにね」

「は、はい、わかりました、あの、すみま……ありがとうございます」

「うん、それと君の体調が完全に回復したらきちんと安全な避難所へ送り届けるので安心して欲しい、それまでは居心地が悪いだろうがここで大人しくしていてくれ」

「え? あの、それってどういう……」

「このマンションは俺が一人で住んでいるんだが、そんなところに若い女の子を何時までも置いておくわけにもいかないだろう? 明日俺がS市第三中学校の避難所に行ってなんとか話をつけてくるから、後日ちゃんと送り届けるよ、もちろん道中危険がないようにするし、その点は任せて欲しい」

「え? え? あの、私ここにいちゃ―――」

「じゃ、じゃあまた明日、きちんと休むんだよ!」



有無を言わさず背を向けて部屋を出る、彼女の言葉を聞いてはいけない。

同情心がわいてしまうし、内心で「勿体無い」とも考えてしまう。

「せっかく女の子がいるのだから楽しめば良いのだ」と考えてしまうゲスな自分を心底嫌になる、これが男のサガというものだろうか。



だからこそ余計な感情が生まれる前に由衣ちゃんとの会話を一方的に終わらせた。

コミュニケーションは必要最低限で良い、それが俺にとっても由衣ちゃんにとっても最善だ。



今回のことで人を助けた後発生するトラブルについても十分学んだ、これからはこのことも念頭に置いて行動するよう心掛けよう。



既に由衣ちゃんを助けてしまった以上その責任は果たす、彼女の体を癒し、安全地帯まで送り届ける。

だがそれ以上の重荷は俺自身を殺しかねないから避けるべきだ。

少々心苦しいがこういうことのケジメはしっかりしておいた方が良い、後々情愛に血迷ってとんでもない行動に出てしまわないためにも。

最も大切にすべきなのは俺の命なのだから、それを危険に晒すような真似は断固慎むべきだ。



ただ、俺が彼女に「避難所の帰す」と告げた時のあの悲しそうな表情はしばらく忘れられそうにもない。



■22



ゾンビ大発生から八日目、昨日のこともあり俺は少し寝坊してしまった。

今日は夜にさっそくS市第三中学校に行ってみるつもりだ、ある意味で丁度良かったのかもしれない。



時計を確認すると既に10時をまわってしまっている、朝食には遅すぎるし昼食にはちょっと早い。

だが腹は減っている、俺は仕方がないので少々早めの昼食を取ることにした。



熱いシャワーを浴びて目を覚まし、髪を整えヒゲも剃る、ものの20分ほどでさっぱりした俺は部屋を出た。

食料類は全て由衣ちゃんがいる部屋の方に運び込んである、食事をするためには向こうの部屋に移動する必要がある。



俺同様に腹をすかしているであろうラッキーと一緒に由衣ちゃんの部屋玄関前で呼び鈴を鳴らす。

さすがにもう10時をまわっている、彼女も起きているだろう。

5秒もしないうちに扉が開かれ彼女が出迎えてくれた、だが俺はその姿にまたもや驚かされた。



腰まで届く長い髪を後ろで一束に纏めたポニーテール。

前髪も綺麗に左右に分けられ、可愛い素顔がよく見えた。

そして着ているのは男物のワイシャツのみ、着替えがなかったのでしょうがなかったのだろうがサイズが合わないため胸元などがチラチラ見えてしまう。

童貞である俺にはあまりにも目に毒だった。



「お、おはようございます高田さん、ど、どうぞ上がってください」

「あ、ああ、お邪魔するよ、何か食べ物を取りにきたんだが」

「あ、じゃあ、私が用意しますね、その、高田さんはリビングの方で待っててください、すぐに用意しますから!」

「いや、別にそんなことしなくても自分で」

「だ、大丈夫です! 任せてください、ささ、高田さんはここでリラックスしててください!」



俺は由衣ちゃんの妙な迫力にグイグイ押されるように座らされてしまう。

本当ならさっさと食料だけ持って部屋から出るつもりだったのだが。

彼女、あんなに押しの強い子だったっけ? 気弱ないじめられっこじゃなかったっけ?

予想以上に元気なのもそうだが、由衣ちゃんの積極的な性格の変化にも驚かされた。



俺はしばし呆然としながら、とりあえず言われるまま大人しく待つことにした。

仕方がないので隣にちょこんと座っているラッキーを撫でて暇を潰すことにする。



「なぁ、ラッキー、どうなってんだろうな?」

「ワン?」







10分ほどして由衣ちゃんが持ってきてくれた食事はなかなか立派なものだった。

レトルトや缶詰が中心なのだが、こうして温められてきちんと皿にのせられて出されるとやけに美味しそうに見えてくる。

組み合わせもちゃんと考えられているようで、ライス、みそ汁、さんま蒲焼、味のり、ちゃんとお茶も煎れられていた。



「あの、とりあえずあった材料でやってみましたけど、ど、どうぞ」

「……ありがとう、いただきます」

「は、はい!」



正直、空腹も手伝って目の前の食事が素晴らしく美味しそうに見える。

最近はカロリーメイトとか、缶詰オンリーとか、不味くはないけど少々味気ないものばかり食べていたからこういう食事はすごく嬉しい。

作れないこともないが、どうにも手間が面倒で簡単に済ませられるモノばかり食べていたのだ。

手を合わせ「いただきます」といって食べはじめる、隣ではラッキーも俺同様にごはんを貰っておりご機嫌な様子でムシャムシャ食べていた。







「ごちそうさまでした」

「あ、私が片付けますね、高田さんはゆっくり座っててください、今熱いお茶持ってきますから」

「あ、ありがとう……」



しばらくして食事も終わり、腹を満たした俺が食器を下げようとすると、その前に由衣ちゃんがすばやく持っていってしまった。

食後に熱いお茶まで出してくれるサービスぶりだ、お礼のつもりなのだろうか?



もともと特に見返りを求めて助けたわけではないが、こういう形でお礼してくれるのであればありがたいのもまた事実。

感謝されれば嬉しいし、なにも感謝されないよりはずっとマシだ。



だが、ありがたいのだが、何かひっかかるものがある。

昨日の俺の態度を思い出しても、ここまでお礼をされるような人間の態度じゃないと思う。

情をこれ以上もたないように、ろくに話も聞かず一方的にこっちの意見だけを告げ、さっさと去っていったのだ。

普通の人間ならそんな態度の奴には怒りこそすれ、感謝を念を抱きづらいと思うのだが。

なのに、なぜ彼女はいきなりあんなに元気な態度で俺にサービスしてくれるのだろうか?



彼女の煎れてくれた熱いお茶を口に運びながら、俺の疑問は尽きなかった。







キッチンで洗い物をしてくれていた由衣ちゃんが戻ってきて、今度は洗濯物があれば出してくれと言ってきた。

さらに隣で俺が使っている部屋も掃除したいとも申し出てきた。



だが、流石に病み上がりの彼女にこれ以上何かさせるつもりはない。

俺は彼女の申し出を断ったのだが、そこで由衣ちゃんの態度は予想外の反応を見せた。



「あ、あの、私がんばりますから、役に立ちますから、どうかここにいさせてください!」



先ほどまでの元気な笑顔を一気に崩し、必死な形相で縋りつくように懇願してきた。

いや、現に俺の服をしっかり掴んで離さない、少女らしからぬすごい力だ。



だが、なんとなくそれでこれまでの彼女のサービスたっぷりな態度の原因がわかった、やはり昨日の俺の話が原因だったのだ。

恐らく由衣ちゃんは自分を見捨てたクラスメイトのいるあの避難所に再び戻るのが嫌なんだろう。

間接的とはいえ殺されかけたのだ、苦手意識は相当なものだろうし、無理もない話だ。



食事の世話をしたり、掃除を率先してやろうとしていたのは必死になって自分が役立つ人間だとアピールしようとした彼女なりの努力なのかもしれない。

そして、昨日の俺の態度に怒るよりもそちらを優先したということなのだろう。



だが、それでも彼女をここに置くわけにもいかない。

俺の個人的な問題に過ぎないのだが、正直こんな状況で女の子を匿う余裕は俺にはない。



それに昨日も思ったことだが、女の子とたった二人での生活でいつまでも紳士でいられる自信もないのだ。

相手の弱みに付け込んで身体を求めるなんてことはしたくないし、させたくもない。

だが、気持ちでいくら思っていようと生理現象には逆らえない場合もあるだろう、だからこそ一緒には暮らせない。



由衣ちゃんの話を聞く限りS市第三中学校の避難所は警察官がリーダーとなり治安も保たれているだろう。

備蓄も十分あり大人だって多いはずだ、あれだけ大規模な避難所なら自衛隊だって優先して救助してくれるだろうし、俺と二人でいるよりは彼女の身は安全であると思える。



いじめっこのクラスメイトだってそんな状況下で無茶はできないだろう、なにより一緒にいる警察官がさせてくれないだろう。

もっとも、肝心の警察官が暴徒化していたら話しは別だが、何も分からない現状でそうだと決め付けるのは早計かもしれない。

それに送りとどける時にスタンガン等を持たせるつもりなので、いざとなれば自衛手段だってある。

さらに以前の教訓を踏まえてゾンビ侵入に対する警戒は強いだろうし、その点でも心配はいらないはずだ、と思う。



そしてなによりも、俺は対人関係のトラブルを恐れてこの隠れ家を確保したのだ。

例えここで本格的に暮らすにしても、他人に頼らず自力で生きていけるような(例えば瀬田さんのような)大人でないと困る。



一人で生きていくのも大勢で生きていくのもそれぞれメリットとデメリットがあり、一概にどちらが良いかなんて俺にはわからない。

ただ、自分の面倒は自分で見る、そう言うことができるならば対人関係のトラブルは格段に少なくなるだろう。

それが無理で他者に頼り依存して生活するならば避難所へ行った方が良い、そういう人々が助けを求めて集まる場所なのだから。

無理に自力で生きていこうとしてもどうせそのうち自滅するだけだ、それなら多少生活環境の不備を我慢しても集団の中で暮らすべきだと思う。



ここは一人二人くらいなら一時的に保護して面倒を見るくらいならできるが、ずっとは流石に無理だ。

自力で動けるようになったのなら他の避難所へ行ってもらうのが俺にとっても最善である、一緒に暮らしていくうちに追い詰められて殺したり殺されたりはごめんだ。

人として最低限の義理人情は果たすつもりでいるが、必要以上に善人になって自分を犠牲にするつもりもない。



そして俺は足手纏いの世話をして死ぬつもりもない。

酷い話かもしれないが、由衣ちゃんは間違いなく俺にとっての足手纏いなのだから。






俺は由衣ちゃんを落ち着かせながら、いかに避難所の方が彼女にとって安全かよく話し説得した。

そして俺が人間関係のトラブルを恐れてここに住んでいることも説明した。



さらに、情けない話だが、つい「性欲に負けて襲い掛かるかもしれない」という正直な懸念事項も話して彼女を蒼褪めさせてしまった。

これまで俺のことを良い人と思っていたかもしれない彼女にとってはその告白はショックだったんだろう、しばらく無言で俯いて黙っていた。



だが俺はトドメとばかりにここで暮らすには『自分で自分の面倒を見れる人間』でないと許可できないとも話した。

それは食料などを自力で確保し、誰にも頼らずに一人で生きていけるということが絶対条件、か弱い女子中学生の由衣ちゃんには到底無理なことだった。



流石の由衣ちゃんも俺の言っている意味がわかったのだろう。

黙り込んでそれ以上懇願してくることはなかった。

俺は少々の気まずさと、罪悪感もあって、出発する準備があると言って部屋を出ていった。







マンション内の通路を歩きながら自分の言動をちょっと反省、さすがにハッキリ言い過ぎたかもしれない。

彼女としても必死なのだろう、それをああもボロクソに論破したのはさすがにやり過ぎだ。

なにか後でフォローしておかないとな、このままじゃちょっと可哀想だし。



……そうだ、せっかくここには温泉があるのだし大浴場を用意してあげよう。

お湯の無駄使いかもしれないが少しは喜んでくれるはずだ。

避難所にいけばろくに風呂にも入れないだろうし、その前に温泉でちょっと良い思いをしたっていいはずだ。



あと何か綺麗な服とかも用意してあげよう。

いつまでもあんな男モノのワイシャツじゃ可哀想だしな、サイズとかわからんからテキトウにいっぱい持ってくることになるだろうが、まぁ、選ぶ楽しみもあるということで。

これまで女の子にプレゼントとかしたことないけど、服とかが定番なのは知ってるし多分大丈夫だろう。



……はぁ、しょせん偽善か。



■23



大浴場を軽く掃除し(とはいえかなり広いので一人で3時間くらいかかった)、お湯が丁度良い時間に満タンとなるようセットしておく。

それが終わると武器を保管してある部屋に戻り今夜の校舎内ゾンビ掃討の準備を整える。

避難所への接触で必要となる条件を考え、装備もそれにあわせて持っていく。



暗闇の中で戦うことになるため暗視スコープはいざという場合に備え予備も持っていく。

さらに大量のゾンビを始末するためアルミ矢も普段よりも多く持っていく、拾ってリサイクルできるとはいえ三回に一回は折れ曲がってしまうのだ。

単純計算で十匹のゾンビを倒したら3本は壊れてしまう、念のため60本持っていくことにする。

また、万が一大量のゾンビに囲まれた時に備え防犯ブザーも持っていく、脱出の時間稼ぎくらいはしてくれるはずだ。



それらとは別に嗜好品も僅かながら持っていくことにする、酒やタバコ、お菓子類である。

これは避難所とのスムーズな接触をするための小道具として使う。

ゾンビが大発生して既に一週間以上たっている、食料や生活必需品はあってもこういった嗜好品は既に底をついているはずだ。

そこで俺が嗜好品を持っているとわかれば、少なくともそれ目当てで門前払いをくらうことはないだろう。



向こうにとって一番面倒なのは、何も持たず危険だけ持ち込んでくる避難民だということは容易に想像できる

俺自身は酒もタバコもしないが、こういった事態も考えてある程度は物資として嗜好品を運び込んでいる。

きっと今回は役に立ってくれるだろう。



もっとも、それを狙われて避難民から襲われたら世話ないので、十分武装と覚悟を決めて行くつもりだ。

武装しているとはいえ俺は貧弱一般人、死なないためにも簡単に気を許すことは絶対にしない。







一通りの準備を終える頃にはすっかり日が沈んでいた。

俺は晩飯代わりにリュックに入っていたカロリーメイトを食べ、そのまま出発することにした。

由衣ちゃんとは一緒に食べる気にはなれなかった、あんな酷いことを言ったのだ、気まずくて会わせる顔がない。



一応、大浴場を利用できることや、今夜避難所の様子を見に行く旨はメモにして玄関前に置いてきたのでそのうち気が付くことだろう。



車のライトをつけず、暗視スコープの視界を便りに道路を走らせる。

ゾンビはコチラに気がつかない、以前ノロノロ徐行運転していたのが馬鹿らしくなるような光景だった。

10分もしないうちに学校に到着した、さっそく校舎の正面入り口前に車を止める。

依然周囲は暗いままだ、屋内ゆえ月の光も届きづらい、暗視スコープがなければ数メートル先も見えなかっただろう。



ラッキーを伴い校舎内へ、まずは前回と変わりないかどうか偵察だ。

一階、二階、三階、それぞれの教室と通路などを細かく見回りゾンビの数と密集度を記憶しておく。

数は一階が圧倒的に多く二十八匹、次いで二階が十三匹、最後に三階で七匹確認できた。

合計四十八匹、そのうち二階防火扉前に五匹の集団、一階エントランスに十一匹の集団がいる。

改めて数えてみると流石に多い、今の装備で倒しきれるだろうか?



60本持ってきたアルミ矢は一矢一殺でいけば数は十分だが、現実はそう上手くいくわけもないだろう。

一応、シャベル(シャーリーン)や消防斧も持ってきているが、できることなら接近戦は避けたい。

場合によっては今日一日での殲滅を諦めて日数を分けて行う必要もあるだろうな。



闇の中、俺は計画変更も視野にいれていよいよゾンビ掃討に乗り出した。







まずは数の少ない三階から掃討していくことにした。

いきなり大集団に挑むのは流石にキツイ、それにまずはゾンビを倒す作業に慣れる必要もあった。



三階に上り、廊下にいるゾンビから撃ち殺していくことにする。

立ったままだと狙いが定まりづらいので床に寝そべるようにしてクロスボウを構える。

床に肘を立て『骨格』で支える、これなら約4.5キロの重量も安定して固定できる。

10mほど離れた位置から右目で暗視機能をオンにしたドットサイトスコープを覗き込む。

狙いはまったくブレない、映画やTVでスナイパーがなぜ無防備に寝そべってまで狙撃するのかわかった気がした。



一つ、二つ、三つ、続けてアルミ矢がゾンビの頭部に突き刺さっていく。

面白いほどよく当たる、これまで立って構えていたので狙うのが大変だったが、姿勢ひとつでここまで命中率に影響するとは予想外だった。



ゾンビ連中は仲間が倒れるたびにその音の発生源へぞろぞろ集まってくるから俺にとっては良い的だ。

エサにつられた得物を狙うように一体一体仕留めていき、確実にその数を減らしていく。

例えアルミ矢が狙いを外れゾンビの肩や胴体に当たったとしても、暗闇の中こちらが見えないゾンビには反撃の術がない。



これまで通り、ただその場をうろつくことしかできないのだ、俺は安心して狙撃を続けた。。

やがて15分もしない内に、俺は一箇所に留まったまま三階のゾンビを全て抹殺できた。







ゾンビ掃討のコツを掴んだ俺は二階に下りて再び作業を繰り返すことにした。

ただし以前来たときに2-1と2-5と理科室の戸を閉めてゾンビを隔離していたので、今回は一箇所に集めて殲滅するためはじめに戸を静かに開け放っておいた。



ゾンビからある程度距離を取り、床に伏せてクロスボウを構える。

やることはさっきと変わらない、一体一体仕留めていくだけだ、倒れたゾンビの音に引き寄せられて他のゾンビは勝手に集まってくる。

そのマヌケな連中を俺は確実に射殺す、まるでチープなシューティングゲームをしているようだ。

制限時間なし、敵は攻撃してこない、外れても反撃されない、敵の動きは鈍くほぼ動かない、小学生だって余裕でクリアできるような内容だ。



予想以上に簡単な作業に俺は少々拍子抜けしていた。

これまでのイメージではゾンビは人間を食い殺し、自衛隊を圧倒し、社会秩序を崩壊させた最悪のモンスターだと思っていた。

だがどうだろうか、こうして俺の目の前であっさりと殺されていく連中を見ているとそう大した事のない相手のようにも思えてくる。



要は発想なんだろう、ゾンビの視覚・聴覚・嗅覚を封じ、脳波も遮断すれば連中からしたらこちらは透明人間だ。

無限の体力を持ち、頭部以外はいくら攻撃されても不死身、一度噛みつかれれば問答無用で死亡確定、そんなチート性能を持っていながら全く役に立っていない。

たかが頭にアルミホイルを巻いて、消臭スプレーを吹きかけて、大人しくしているだけでゾンビはこちらがわからなくなるのだ。

暗闇の中、無音で攻撃されれば反撃の手段はなく、ただただ狩られるだけの存在と化す。



俺のような一般人のオタでさえ考えつくことだ、すでに世界の何処かで頭の良い連中がより良い装備を考えついているの違いない。

……意外とゾンビが地上から掃討されるのも早いかもしれないな。







二階のゾンビが掃討し終わり、俺がゾンビ連中の頭からアルミ矢を回収しようとした時、とある存在を見つけた。

警察官だったゾンビの死体である。



他のゾンビ同様に頭部にアルミ矢が深々と刺さっており、既に絶命している。

俺は警察官ゾンビが動かないことを確認して、とある期待を胸にその制服を入念に調べてみた。

案の定、お目当てのものがすぐに見つかった。



『ニューナンブM60、回転式拳銃』。

日本の警察官全般に採用されている有名な拳銃だ、銃オタでない俺でもその存在はよく知っている。

装弾数5発、小柄なフォルムをしているが黒光りする鉄の銃身は十分迫力があり超カッコ良い。



思わぬ場面でついに手に入った念願の拳銃である。

俺は言い知れぬ興奮を押さえながらそれを手にとって状態を確認してみる。

表面は血で汚れているが特に破損箇所などは見当たらない。

だが、弾倉(シリンダー)をずらし中身を確認すると残弾が二発しかなかった。

非常に残念だが仕方ない、二発も残っているだけマシだと考えよう。



俺は拳銃の汚れを丁寧に拭うと、警察官ゾンビの死体からホルスターも頂き自分の腰ベルトにくっつけ拳銃をそこに収納した。







拳銃を手に入れホクホク顔の俺はご機嫌なまま一階のゾンビ掃討に取り掛かった。

もはや完全に作業である、ドットサイトの赤い光点にゾンビの頭部を重ねトリガーを引く、クロスボウの弦を引きアルミ矢をセット、再び狙いを定める、この繰り返しだ。

順調にゾンビを掃討しながら、さきほど手に入れた銃のことについて考えてみる。



弾はたった二発だけだが銃は非常に強力な武器だ、その点については疑いようがない。

当たり所が悪ければ即死だし、少なくとも身体のどこかに当たれば激痛で動けなくなるだろう。



そういう意味ではクロスボウも性能面では大して変わらないが、銃にはハッキリとした恐怖を伴う威圧感がある。

TVや映画で嫌というほどその威力は認知されているし、身近でもっとも強力な武器といえばすぐ銃だと思い浮かべられる。

普段見慣れないクロスボウよりも容易に攻撃力が想像できるだけに、人間相手になら持っているだけで抑止力としても大いに期待できる。



一方でゾンビ相手には残念ながらかなり役立たずな武器と化してしまうだろう。

クロスボウのように無音で発射できるわけでもなし、弾が再利用できるでもなし。

逆に発砲音でゾンビを招き寄せる結果にすらなりかねない。

ゾンビ相手になら銃を使うよりも、消防斧を使ったほうが効果的かもしれないくらいだ。



だが俺はこうして拳銃が手に入ったことが堪らなく嬉しかった。

銃なんてのはある意味で男の子の浪漫なのだ、とにかくカッコ良い、憧れる、一度は撃ってみたい、そういったイメージを持っている。

俺もその例外じゃない、だからこうして胸が躍る。

流石にこの場で撃つわけにはいかないが、状況が落ち着いたらどこか人気のないところで一発だけ撃ってみよう。



すごく、楽しみです。


■24



一階のゾンビを掃討したが、正直言ってここはキリがないだろう。

正面入り口が破壊されているため大規模なバリケードでも築かない限りは外からゾンビの侵入を防げない。

俺は一階の部分にゾンビ侵入防止用のバリケードを作ることを早々に諦め、二階へ続く階段部分に小規模なバリケードを作ることにした。



集めた椅子や机をスキマができないよう規則的に並べ、それぞれを荷造り用の紐で固定、その上にガムテープを巻きつけて強度をさらに補強した。

そうして固めたバリケードを階段途中に高さ2mほど高さで設置していく。

階段を這いずるようにしか上れないゾンビにはそうそう越えられない壁となるが、人間にとってはよじ登ってしまえば比較的あっさりと越えられるバリケードの完成だ。

簡易版なので強度的に不安が残るが今はこれで十分だろう、これで一階からのゾンビ侵入を防げる。



さあ、準備は整った、いろいよ避難所と接触だ、果たしてどういう状態になっているのか。

あ、その前に拳銃はリュックにしまっておいた方がいいかもな、見つかったら没収されるかもしれないし。







俺はとりあえず防火扉越しに接触をはかるため扉を叩いてみたり、声で呼びかかけてみた。

本来ならこの声に呼び寄せられてゾンビが集まってくるが、階段に設けたバリケードがゾンビの侵入を今しばらく防いでくれるだろう。

とはいえ何時までも安心できるものではない、早めに気が付いてもらうに越したことはないのだから。



「おーい! 誰か返事をしてくれー!」



10分ほどそうして声をかけ続けていると、防火扉の向こうに物音がするようになり人の気配が感じられるようになってきた。

少なくとも全滅はしていないようだ、あとは暴徒化していないことを祈るだけだな。

俺はわざとらしすぎるくらい能天気な声をだしてこちらが無害であるということをアピールした。



「こっちにゾンビはもういませんよー、俺がこうやって大声あげているのが何よりの証拠ですよー」



扉の向こうからざわざわと音が聞こえてくる、もう一押しかな。

用意しておいた切り札を出すことにする。



「お土産にタバコや酒も持ってきてますよー、あけてくださーい!」

『!!?』



ざわざわと扉向こうのざわめきが大きくなっている、わかりやすい反応だね。

後は向こうの出方を待つだけか、これで追い返されたら別の手段を考えないとな、それと襲われた場合に備えて覚悟もしておかないと。

いざとなれば人を撃つことも有り得るだろうし、死なないためにも必要だ。

そうして数分待っているとようやく向こうから声がかかってきた。



『おい、あんた一人か? 怪我はしてるのか?』

「人間一人と犬一頭です、怪我はしてませんよ、もちろんゾンビに噛まれてもいません」

『そっちには本当にゾンビがいないんだな?』

「ええ、いたら今ごろ俺は生きていませんよ、こんな大声だして襲われないわけありませんし」



ざわざわと向こうで何事か話し合っているようだ。

避難者の受け入れにも慎重になっているんだろう、別に悪いことじゃない。

むしろ簡単に受け入れる方がヤバイ、そう言うところは長くはもたないだろうな。

あっさり避難民を受け入れた所為で内部から怪我人がゾンビ化したり、人が増えすぎて暴動に繋がる危険性もある、これくらいで丁度良いのかもしれない。

俺がそんなことを考えているうちに、向こうでは結論が出たようだ。



『……わかった、少しだけ開けるからすぐに入ってきてくれ』

「わかりました」



ギギギと巨大な防火扉が少しだけ開かれる、俺とラッキーは開ききる前に人一人通れるくらいのスキマに身を滑らせ中へと入っていった。

とりあえず真っ先に目の合った警察官の兄ちゃんに挨拶でもしとこうか。



「どうもこんばんわ、俺、高田了輔っていいます」

「あ、あぁ、本多一哉(ホンダ カズヤ)だ、よく来たな」







俺は入れてくれた人々に簡単な挨拶を済ませ、本当に怪我がないのか本多さんによってごく簡単な身体検査を受けさせられたあとでようやく体育館の中に入ることができた。

なお、その際に俺の過剰な重武装に皆が驚いていたのでつい「これくらいじゃないとゾンビと戦えない」という微妙に真実の混じった嘘をついてしまった。

皆は素直に信じてくれたようだが、ぶっちゃけアルミホイルとファブリーズがあれば勝てるので結局は嘘をついたことになるのだろうか。



体育館の中には約40人ほどの避難民が生活していた。

最悪の場合に備えて武器を握り締めていた俺であったが、避難所は比較的治安が保たれていた様子で静かなものだった。

それぞれの人が決められたスペースで毛布を敷き思い思いに過ごしており、大半の人々は無気力に寝ていた。

時間帯が深夜だし、すでにライフラインが途切れているため明かりもない。

暗くなれば寝るというのは実に自然なことだった。

ただ、今日は俺という珍しい来客があったため目を覚ました人たちにジロジロと見られてしまうことになってしまったが。



俺はヘルメットを外し、避難民をまとめているらしき警察官のリーダーに会うことになった。

本多さんに案内された先には背広を着たヒョロい眼鏡男がいて、人を小馬鹿にしたような視線を遠慮なくぶつけてくる。

その手にはなぜかニューナンブ、なぜここでそんなものを常に見せびらかすようにして持ち歩いているのか。

しかも指トリガーだし、危なすぎる。



まさか、コイツがリーダーだなんていわないよね?

思わず隣の本多さんに顔を向けるも、彼は無言で首を縦に振った、その通りらしい、マジかよ。



「僕がここの代表者をしている海堂淳一郎(カイドウ ジュンイチロウ)警視だ」

「……高田了輔です、よろしくお願いします」

「僕は別に君とよろしくするつもりはないが、まぁいい、とりあえず君の持っている例の所持品を出したまえ」

「は?」

「聞こえなかったのかね? 君の持ってきた物資を早く出せといっているのだよ!」



目の前の男はチラチラとこちらに銃を見せつけながらトンデモないことを言いはじめる。

いきなり銃を突きつけながら仲良くする気はないとか、物資を出せとか、何考えてるんだこいつ?

まるでコイツだけ暴徒じゃないか、銃をもってるし、そういうことなのだろうか?



周囲を見渡すと、さきほどまでこちらをジロジロ見ていた避難民達も皆目を逸らしてしまう。

本多さんに顔を向けるとすまなさそうな表情で「言う通りにしてくれ」と頭を下げられた。



……なるほどね、とりあえず今揉め事は起こしたくないし、ここは理不尽でも素直に従っておくべきか。



「わかりました、じゃあ他の人に分配するためにも皆に集ま」

「いやっ、その必要はない、物資は一度僕が全部預かってから皆に分けることにする、不平等があるといけないからね!」



そう言って俺がリュックから取り出した酒やタバコを根こそぎ持っていってしまった。

まるでひったくるかのように奪い、それらを抱えて海堂は体育館の用具室の方へ歩いていってしまう。

その姿を周囲の人々は睨むようにして見送っていた、しかし彼の持つ銃に臆して誰も文句を言える空気ではないようだ。



「じゃあ本多巡査長あとは任せたよ、僕は忙しいからこれで失礼する」



そう言ってそそくさと去っていった、用具室の扉が閉められ、残されたのは俺と本多さんのみ。

……アイツ、一体何しにきたんだ? まさかただ嗜好品を独占したかっただけなんじゃ。







「海堂警視が失礼な態度を取ってしまいすまない」

「あ、いえ、別に良いんですけど……本当にあの人がここをまとめているんですか?」

「彼は所謂キャリア組という奴でね、事件当日に丁度本庁から出向してきた人なんだ、人格的にはちょっと問題があるがあれでそれなりに優秀なんだよ」

「……そうなんですか、あ、一応これとっておいたんで本多さんもどうぞ」



そう言って俺はレッグポーチから酒とタバコを少量ながら取り出す。

リュックにしまってあったモノは海堂に全部持っていかれてしまったが、レッグポーチにしまってあった分は念のため少しだけこうして取っておいたのだ。

タバコ3箱と小さな酒一瓶、あとキャラメル4箱、これだけだが少量なら欲しい人に行き渡るだろう。



俺が本多さんにそれら嗜好品を手渡すと、それまで周囲で遠巻きに見ていた人達が数人ワラワラと寄ってきた。

本多さんは独占することなくそれらを集まってきた皆に全て提供した。

大人はタバコを何本か貰ったり、子供はキャラメルをいくつか貰ったりしている。



「ありがとう高田君、おかげで皆喜んでくれたよ」

「いえいえ、そんな大したことしてませんし、気にしないで下さい」



本田さんにお礼を言われながらも、俺は避難所の人々を観察していた。

比較的中高年の人が多い、次いで成人、最も少ないのは子供か、5・6人しか見かけない。

この中に由衣ちゃんをいじめた子も混じっているのだろうか?



皆どこか無気力で虚ろな表情をしている、疲労とストレスでかなり参っているようだった。

それに本多さん以外には警察官の姿は見えない。



リーダーはあの海堂とかいう野郎らしいし、大丈夫なのか、この避難所?


■25



気を取り直して俺はさっそく本多さんから主目的である情報収集をすることにした。

ここは救助の見込みがあるのか、他の避難所と連絡はできているのか、何か気になる情報はないか。

俺の質問に本多さんは今現在わかっていることを大まかに話してくれたが、残念ながら素直に喜べるような内容ばかりではなかった。



まず自衛隊による救出に関してはまだしばらくは望めないとのこと、持ち込んだ警察無線によっていくつかは連絡は取れるものの、自衛隊も迫り来るゾンビの撃退と部隊再編に忙しいらしく少なくとも一週間以上は絶対に来れないらしい。

また、避難所の備蓄に関しては皮肉なことに数日前のゾンビ襲撃の際大幅に犠牲者が出たおかげで余裕で一ヶ月分以上はあるという。

水に関しても貯水タンクがあるので、飲み水だけに限定すれば大丈夫という見解だった。



また、S市第三中学校の避難所と同様に警察官や自衛官が駐在し指揮をとる避難所とも連絡はある程度取れており。

S市内だけでも既に大規模な避難所が12ヶ所ほど確認されているそうだ、生存者もそれなりにいるらしい。

ただし救出優先度は食料の備蓄が逼迫している所から優先される予定らしく、ここの避難所はかなり最後の方になる予定だという、長ければ救出されるまで数ヶ月はかかるだろうと言っていた。



なるほど、海堂みたいな暴徒紛いの奴がいるなかでまだ辛うじて致命的な状態になっていないのも肯ける。

最低限の希望はまだ残され、備蓄もある、だが時間の経過とともにそれもなくなっていくだろう。

残念だけどここの安全崩壊も時間の問題かもしれないな……。



ラジオで知っている事を多少補完したような内容だったが、俺にとってはそれなりに満足できるような内容だった。

特に自衛隊の救出までの大まかな期間を知ることができたのは僥倖だ。

ゾンビに負け続けの自衛隊が本当に助けに来てくれるのか情報の信憑性は疑わしいが、当面の行動計画の目安にはなる。



俺は知りえた情報を吟味しつつ、落ち着いた環境でこれからの自己の身の振り方についてよく考え直す必要性があると強く思った。







俺がある程度の情報収集を終えると、今度は本多さんからこれまでの俺の話を聞かせて欲しいと頼まれた。

俺は少し悩んだ、別に俺のこれまでの経緯を話すことはなんでもないことなのだが。

彼等の視線や態度にやや危険な思惑を見て取れたのだ。



具体的には俺を何かに利用しようとしているようだった。

この危険な状況下を潜り抜けてやってきた俺が多少なりとも物資を提供したことで彼等は味をしめたようだ。



露骨に「どこでそんな装備を手に入れたのか?」とか「どこかに大量の物資が保管されている場所はなかったか?」とか「ここ以外に安全な場所はなかったのか?」などと聞いてくる。

終いには自分達にも俺の持っている武器類を寄越せと言ってきた、これにはさすがに焦ったと同時に呆れ果てた。



迂闊だったかもしれない、ここ最近由衣ちゃんとのことで焦っていたこともあるがこういう事態をもっと考える必要があったのかもしれない。

ミリタリーショップの件で学んだはずの教訓が活かせていない、危険予測が甘かった。

もっと慎重に、じっくり時間をかけて、様子見をしてから接触するべきだったか、拙速に動きすぎた。

いまさらだが反省しよう、クソッ、本当にいまさらだ。



できるだけ穏便に拒否する俺から強引に奪おうとする人まで現れはじめ、俺がいよいよ覚悟を決めてクロスボウを構える前に、詰め寄る人々を本多さんが押さえてくれたが避難所内の空気は非常に悪くなってしまった。

誰も彼も神経を尖らせてピリピリしていた、こちらが身の危険を感じるほどに。



「皆ストレスで怒りっぽくなっているんだ、海堂警視の態度も原因なんだが」



本多さんが言うには、海堂は先ほど俺に見せた態度のように常に銃をチラつかせて一種の恐怖政治をしているらしい。

それが原因で避難民はストレスを溜め、チャンスがあれば武器を持とうとしているようだと説明してくれた。



海堂本人は「この非常時に避難民が馬鹿な行動をしないようにするための仕方ない措置」と言い張っているらしいが、先ほどの態度を見る限り怪しいものだ。

今のところ目立った失策をおかしていないため皆大人しく従っているが、避難生活が長期化すればするほどそれも困難になっていくだろうな。

ああして銃をちらつかせて自分勝手な事ばかりしていれば暴発も早まってしまうだろうし。



俺はこの避難所の脆さと危うさをまざまざと目の当たりにしたような気がした。

ここは以前見かけたミリタリーショップでの仲間同士の殺し合いを引き起こすような問題を多数抱えている、横暴なリーダー、ストレスを溜めつづける人々、それに危機感を抱かず解決させようともしない状況。

……この避難所の崩壊も案外近いかもしれないな。







結局、俺は本多さんに当り障りのない程度の真実のみを話し、ステルス装備のことや隠れ家のことは秘密にしておくことにした。

数日前まで自宅アパートに篭城していたが食料が尽きたので何とか脱出。

そこから命からがらここまで避難してきたと説明し、装備に関しては自分が熱心な軍事オタクであると嘘をついて誤魔化した。



ミリタリー系装備でかためた見た目と、ジャンルは違えどオタクという元々の俺の雰囲気が助けとなり本多さんはあっさり信じてくれた。

クロスボウガンや消防斧など、持っていた装備が銃のように基本的に所持できないものでなかったのも理由にあったのだろう、事前に拳銃をしまっておいて本当に良かった。



俺はこの避難所の危機的現状と、自衛隊による救出活動が行われるまでの目安期間に関する情報を得たことですこし計画を変更することにした。

ここに来る前までは避難所に接触し、必要な情報を得た後に由衣ちゃんの保護も頼むつもりであった。

だが、実際に避難所に来てその様子を見たことで少し考えが変わってしまった、ここはあまりに酷い。

未だ致命的な事態には陥っていないが、それも時間の問題だろう。



リーダーたる海堂はいつも銃をチラつかせ、物資を独占する横暴な男。

避難民は自己中心的で他力本願、そのうえストレスのせいでキレやすくなっている。

唯一の良心とも思える本多さんも、海堂に逆らってまで現状を変えようとするほどの気概がある人ではないし。



こんな危険な状況の場所にあの弱気な由衣ちゃんを置いていったらどうなってしまうのだろうか?

きっとろくなことにはならないだろうな、少なくとも再び虐げられる立場(この場合、ストレス発散の意味も兼ねて)になることは間違いない。

人間ってやつの本性は誰でも弱者をいたぶるのが大好きなものなのだから。

まして彼女は女の子だ、最悪阿部さんのように暴徒と化した男連中の慰み者になってしまう可能性すらある。



俺はそんな所に彼女を置き去りにするのはあまりに非道ではないのだろうかと考えてしまった。

いじめ問題は自己解決すべきというのが俺の考えだが、こんな状況下では中学生の彼女にとってはそれも難しいだろう。



ここに彼女を置いていくのはゾンビだらけの街に放り出すのに等しいのではないかと思えた。

だから俺は少々計画を変更することにした。



本多さんの情報によれば自衛隊による救出活動のはじまる目安は一週間から数ヵ月後、少なくとも半年後には行われるらしい。

つまり俺の篭城期間も最長半年と仮定すれば今後の活動方針も変わってくる。



何年も由衣ちゃんの面倒を見るのは、前にも言ったように俺には無理だ。

だが半年くらいなら何とかなると思う、それくらいなら俺の理性も頑張ってくれるだろうし。



だから今すぐ彼女をここに預けるのは中止にしよう。

急場しのぎだが少なくとも半年間は俺が彼女を保護しよう、それくらいなら俺のリスクもギリギリ許容範囲だろうし。

もし長期化するようなら、その時はまたその時考えよう、最悪の場合も覚悟した上で。



俺は頭の中で今後の活動方針を組みなおすと、一気に気が楽になった。

自分の安全を守るためとはいえ、幼い少女に酷いことを言ってしまったことは流石の俺でも罪悪感があった。

出かける前に見た由衣ちゃんの落ち込む姿が未だ気になっていたのも事実、だがそれもこれで解決される。



俺はさっぱりした気分でさっそく行動することにした。


■26



俺は「どこかに避難しているはずの家族を探しに行く」と嘘を言って避難所を出ることにした。

瀬田さんの設定をそのまんま使わせてもらったわけだが、本多さんは素直に信じてくれた。

はじめは危険だと引き止められたが「愛する家族を守りたいんです!」という、まんま瀬田さんの名言をそのまま引用することで渋々諦めてくれた。



避難民達は特に止めようともせず、物資を全て提供してしまった俺に興味を失っているようだったが、今度来ることがあればまた物資を持ってくる旨を話すと手の平を返したように丁寧に見送ってくれた。

海堂に関してはずっと用具室に閉じこもっていたので最後まで顔を合わせることはなかった、俺としてはムカつく奴の顔を見ずに済んで安心していたが。



非常時とはいえ人間の汚い部分を見せ付けられたような気分になり俺は疲れていた。

これからも情報収集のために定期的にこの避難所には来る事になるだろうが、あまり積極的に関わりをもちたいとも思えなくなっていた。

できれば外から様子見だけして終わらせるだけにとどめようと思う、今後は直接接触を取るのはできるだけ避けよう。

今回の件で自分自身の見通しの甘さもわかったことだし、慎重すぎて困ることはないだろう。



それにしても、こういう考えが浮かぶってことはやはり俺は集団生活にはとことん向いていないようだ、隠れ家を確保しておいて良かったと心底そう感じた。







避難所を出て、マンションに帰還する頃には既に明け方近くになっていた。

校舎内のゾンビ掃討、その後に避難所での一騒動、情報収集、結構時間がかかってしまったみたいだ。

俺は車を地下駐車場に入れると、ラッキーと共に疲れた身体でマンションへ戻った。



こんな時間帯だ、由衣ちゃんもぐっすり眠っていることだろう、今から起こすのは流石に可哀想だ。

しばらく保護することに考え直した旨を話すのは後でも良いか、特に焦って報せなければいけないことでもないし。



俺は欠伸をしながらこれから一眠りでもしようかと考えていたところで、ふと、大浴場の存在を思い出す。

由衣ちゃんのために用意したものだけど、俺も入ろうかな。

きっともう入った後だろうし、大丈夫だろう、それにこのままにしてお湯を流してしまうのも勿体無いし。

そう考え俺は久々の温泉を楽しむべく足取りを軽くして大浴場へと向かって行った。



脱衣所で汚れた服を脱ぎ去りウキウキしながら大浴場へと入る。

ここの温泉はお金持ち仕様なためか無駄に設備が充実していて、サウナやジャグジーはもちろん、さまざまな種類の温泉も楽しめるようになっている。

中にはラブホテルみたいな全面ガラス張りの個室温泉(?)まであるから驚きだ。



ちなみにラッキーは一緒じゃない、彼女は多くの犬に良くあるように水に濡れるのがあまり好きではないようだ。

俺が大浴場に向かうと逃げ出すように通路へ出て行ってしまった、今ごろ入り口付近で不貞寝でもしているに違いない。

ラッキーには悪いが俺は温泉を思う存分楽しませてもらおう、なにしろ今日はいろいろ疲れたのだから。







まずかけ湯をして身体を軽く洗い流してから浴槽に浸かる。

温泉の温度はちょっと熱めの42℃に設定されており俺には丁度良い。

思わず鼻歌まで歌いそうになり、ご機嫌な自分を自覚する。



だがそれも無理ない事なのかもしれない、由衣ちゃんを救出してからここ数日いろいろ悩んだり罪悪感を感じたり忙しかった。

特に彼女を避難所に帰すと言った時の反応で、自分の命を守るためとはいえ容赦なく彼女の懇願を拒否したのだから。

いくら割り切っているとはいえ、目の前で女の子に泣かれるのは流石にこたえた。



だけどもうそんなことは気にしなくても良い、半年間の期間限定とはいえ一度保護すると決めたのだ。

ならば後は迷う必要などなく実行するのみ、自分にふりかかるリスクを『命の危険性は低い』と考え、それを勘定に入れて決めたのだ。

例えそのことで死ぬことになろうともあくまで自己責任、俺の危険予測が甘かっただけのこと。

必要以上に自己保身に走るつもりもないが、必要以上に善人になるつもりもない。



俺はただこんな狂った世界で一人の人間として生きていきたいだけだし、それ以上の望みは今のところない。







温泉に入って15分ほどしてからだろうか、ふと脱衣所の方で物音がした。

ラッキーだろうか? もしかして気まぐれで一緒に入りたくなったのかもしれない。

そうならば丁寧に身体を洗ってやるとするか、きっと今以上にサラサラの毛並みになるに違いない。

俺はそんなことを考えながらラッキーが入ってくるのを待っていた。



やがてカラカラと脱衣所の方から音がした、俺はようやく来たかと笑顔で振り向き……あらゆる意味で硬直した。



「……あ、あの、わ、わ、私も一緒に、一緒に入らせてくださいっ!」



目の前に立っていたのは身体にタオル一枚巻いただけの由衣ちゃん。

雪のように白い肌とか、肉付きの良い太ももとか、膨らみかけの胸だとか、とにかく俺には目の毒となるであろう姿がそこに存在していた。



「あ? え? あ? へ?」



「なんでここにいるの?」とか、「一緒に入れてくださいって何考えてんの?」とか言うべきことはたくさんあったのだろうが俺の口からでた声は言葉になっていなかった。

とにかくその中学生らしからぬ色気を放つ姿に見とれてしまい思考回路が焼き切れてしまっていた。



俺が呆然としている間にも由衣ちゃんはこちらへ歩み寄ってきて、「し、失礼します」と言って勝手に湯船に入ってきてしまう。

しかもなぜか俺の真横に陣取ってだ。



チラチラと見える胸元や、太股の付け根から目が離せない、こ、これが女体の魔力というやつなのか?

衰弱した彼女の身体を事務的に洗っていた時とは違い、なぜか今は無性に魅力的に見えてしまうから不思議だ。



「あの……そんなに熱心に見つめられると、その、ちょっと恥ずかしいです」

「はっ!!? ご、ごめん、じゃなくて、なんで勝手に入ってきてんの!? 俺いるのわかってたなら普通入ってこないでしょうが!?」

「た、高田さんと一緒に入りたかったんです」

「はぁ!?」



彼女が何を言っているのかよく理解できない。

どこの世界に見知らぬ男と一緒に温泉に入りたがる女の子がいるだろうか?

仮に混浴マニア(?)だとしても不自然すぎるだろう。



「と、とにかく俺はもうあがるからっ、由衣ちゃんはゆっくりしてってね!」

「だ、だめですッ!!」



俺はようやく呪縛から解放されると同時に温泉から何とか脱出しようとするが、背後から彼女に抱きつかれて身動きが取れなくなってしまう。

いろいろ背中に柔らかいものがプニプニ当たってヤバイ、下半身的な意味でも身動きが取れなくなってしまう。

動けばバレる、いろいろと。



由衣ちゃんはそんな俺の葛藤を知ってか知らずか、抱きついたままの姿勢でいろいろ話し始める。



「わ、私今朝からいろいろ考えたんです、高田さんに言われたように私このままじゃ役立たずだし迷惑にしかならないかもしれません、で、でもここにいたいんです! だから考えたんです、どうすればここにいられるのかなって……そして今朝高田さんが言った事を思い出しました、その、わ、私とえ、え、え、えっちしたいって」

「ブッー!!?」

「そ、そういう経験はありませんけど、一生懸命がんばります! だからここを追い出さないで下さい! 一緒にいさせてください! 何でもしますから!」



とんでもないことを口走りながら必死にお願いしてくる由衣ちゃん。

俺は思わずそのトンデモ発言に噴き出してしまった、この娘はなんつー台詞かましてんだ。



そして先ほどの話の内容も理解した、俺は今朝説得できたものと思っていたが彼女はまだ諦めていなかったのだ。

まさか身を差し出す覚悟をしてまでここに留まりたいと申し出てくるとは流石に予想外だったな。



だが彼女の覚悟も無駄に終わる、なぜなら既に俺は彼女を保護することを決めているからだ。

そのことを知らない彼女にここまで思いつめさせたという事実にちょっとビックリしながら、俺はとりあえず事情説明を行うことにした。



「えーと、とりあえず落ち着いてきいて欲しいんだが、実は由衣ちゃんを避難所に送り帰すっていうあの話ね、止めることにしたんだわ」

「え?」

「今日例の避難所に行って様子見してきたんだけど、かなり酷い状況でね、とても由衣ちゃんを預けられる環境じゃなかったんだ、いろいろむこうの方が安全だとか言っちゃったけど期待を裏切って御免」

「え、あの?」

「だからとりあえず半年間は俺が責任持って面倒見るって決めちゃったんだけど、それでもいい?」

「あの、それって、私ここにいても良いって事ですか?」

「ま、まぁ、そうなるね、嫌ならやっぱり避難所へ送っていくけど、どうする?」

「こ、ここにいたいです! 絶対ここがいいです!」 



凄い勢いで肯く由衣ちゃん、驚いている様子だが嫌がられなくて良かったよ。

俺が勝手に送り帰すとか、やっぱり保護するとか、コロコロ意見を変えるから怒るかとも思ったけど、そんなことはなかったようで一安心か。



「じゃあもう由衣ちゃんが無理してこんなことする必要はないってわかってもらえただろ? だからそろそろ放してくれないかな?」

「……だ、ダメです」

「え? なんで? 別にエロイ事とかしなくてもちゃんと面倒見るから大丈夫だよ、約束する、女の子に状況を利用して身体を求めるなんて外道なこととかするつもりないし」

「そ、その、そういう意味じゃなくても、私……が、したいんです」

「えぇッ!?」

「た、高田さんは、初めて私を助けてくれた人ですし、優しくしてくれた人なんです、義母やクラスメイトからいじめられてた私を初めて同じ人間として扱ってくれた人なんです、だから好きなんです! 大好きなんです!!」

「うぇ!? ま、マジですか?」

「マジです、だから好きな人だからエッチだってできます、私がしたいんです!」



力強く宣言するものの、やはり恥ずかしいのか耳まで真っ赤にして俯いてしまう由衣ちゃん。

さすがに好きになる段階まで飛躍しすぎじゃないかと思わないでもないが、これまでろくに恋愛をしたことのない童貞の俺にはそれが間違っているのか正しいのか良くわからなかった。

ただ、こうして女の子から好きだと告白されて決して悪い気分ではなかった、むしろ有頂天。



そこ、ロリコンとか言うな、年下でも女の子から好きと言われれば何だかすげぇ嬉しいもんなんだぜ?

姉属性を持つ俺でさえもそう思えるのだから、世の中のロリコンどもは今ごろ涙目だろうな、サーセンwww



とはいえこの場でいきなり中学生に襲い掛かるのも人としてどうだろうか、本人の了承があれど気が引けるのもまた真実。

と、とりあえずこの場は一時撤退して、体勢(?)を立て直した後で後日改めて気持ちを静めた環境でじっくり話し合うべきではなかろうか?

うん、それが良い、きっとそれが最善だ、衝動的なセックルはきっとお互いに後悔を残してしまうだろうし、まして相手は中学生、倫理的にも早すぎるって、よくないよ、いや、別に俺へタレじゃないよ、紳士なだけさ。

俺はなんとか賢者の心を取り戻し、まずはこの場から離脱すべく由衣ちゃんを落ち着かせ説得することにした。



「由衣ちゃんの気持ちは良くわかった、俺もそんなこと言われたの生まれて初めてだから凄く嬉しいよ、でもいきなりこの場でそんなえっちな事は―――ゲッ!!?」

「あ……」



賢者の心を取り戻した俺であったが、下半身は相変わらずの独立愚連隊状態であった。

そのことを忘れていた俺は由衣ちゃんを説得しようと彼女に振り向いた時、マヌケにも俺の暴れん棒が丁度彼女の眼前にさらされることになってしまった。

一瞬、目の前に現れた凶悪なソレを目にして驚いた彼女だったが、その次に取った行動は完全に俺の予想外だった。



「うれしい……私で興奮してこんなに立派になってくれたんですね、初めてで上手くできるかわからりませんけど、精一杯がんばってご奉仕しますね、チュッ♪」

「え? ちょ、ま、ちょ、そんな、どこにキスして、アッーーー!!?」







……わけがわからないうちにわけがわからないことになって、俺は気が付けば彼女とベッドで二人横になるはめになっていた。

キングクリムゾンとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ、もっと恐ろ(ry

思わずポルナレフになりそうだったが、幸か不幸か自分の身に起こった出来事は全て記憶していたのでそれもできない。



まさか初体験(?)が中学生相手とは、夢にも思わなかった。

これで俺も性犯罪者の仲間入りか……。



いや、まだだ、俺は頑張ったんだ、童貞は守りきったさ!

やっぱり中学生はまだ早いと思った俺はギリギリ本番行為『だけ』はしなかったんだ!



……それ以外のプレイはあらかたヤっちまったけど。



大浴場で3回、自室に戻って4回、シャワーを浴びながら1回、一日でここまでがんばったお猿さんな俺を褒めてやりたい。

お互い初めて同士だったのによくもまぁハッスルしたものだ。

後半からは俺も吹っ切れてガンガン攻めるようになっていたが、調子にのって気絶するまで攻め立てたのは流石にやり過ぎだったか。

手とか足とか口とか胸とか脇とかス○タとかア○ルとか、あれ? 本番よりスゴイことしてね?



ま、まぁ、いいか、とにかく俺も彼女もまだ清い身体(?)だし問題ないだろう。



今俺の隣で寝ている由衣ちゃん、いや、由衣(途中でそう呼んでくださいとお願いされた)の満足気な寝顔を見ながら考える。

保護するのは半年の期間限定なんて言ったけど、これじゃあもう手放せないよな……。

一度味わった女の味というか恋人の味というか、とにかく病み付きになりそうなものだった。



自分自身の感情がこのたった数時間で劇的に変化してしまったのを自覚している。

だから俺は怖かったんだ、こうして自分以外の他人の命を最優先に考えてしまうような感情を持ってしまうことに。



だがいまさら手遅れだ、こうなってしまっては由衣の安全を最優先にしつつ俺の安全も確実に確保していかなければならない。

手間はかかるだろうし、余計な時間も費やすことになるだろう、もちろん危険も増える。

だが妙なことに俺はそれを嫌がる気持ちはほとんどなかった、こ、これがリア充というものか……。



隣で眠る由衣の柔らかな肢体を抱きしめながら、俺は今の幸せを噛み締めた。



ゾンビが地上に溢れ、世界が崩壊し、メチャクチャになってしまった世の中だけど、生まれて初めてこんな俺にも彼女ができました。

いつまで続くかわからない生活だけど、これからの二人の時間が楽しみでしょうがない。

願わくば神様、このゾンビ天国と化した世界で、俺と彼女の二人だけのサバイバル生活を何時までも見守っていてください。



俺は彼女の体温を感じながら、これ以上ないほど幸せな気持ちで眠りに落ちていった。



■エピローグ  高田生存報告

−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−
【篭城】ゾンビから逃げ延びるスレ【脱出】 

1 :名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 12:05:29 
現在ゾンビに囲まれたボロアパートで篭城中。
自衛隊が頼りにならないんで自力で脱出したいんだけど何か良い方法ない?

ちなみに漏れのスペックうp
・24歳、身長174cm、体重68kg、普通のサラリーマン。
・アパート二階部屋、扉は一応鉄製。
・特技なし、普通免許あり。
・家で探した武器っぽいの(フライパン、包丁、ダンベル、ドライバー)

童貞のまま死にたくねぇ! オマイラの知恵をかしてくれ!

            ・

            ・

            ・

            ・

            ・

754:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 19:23:09
スレ主です、いろいろご意見ありがとうございました
一応スレに出た内容で実行できそうなのはやってみようと思います
とりあえず生き残れたら結果報告します、でわ!

755:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 19:25:12
ガンガレ、スレ主の健闘を祈る!

(`・ω・')ゞ

756:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 19:26:31
(`・ω・')ゞ

757:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 19:26:44
(`・ω・')ゞ

758:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 19:26:58
(`・ω・')ゞ

773:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 19:31:16
オマイラの優しさに感動wwww
脳内で『千の風になって』が再生されたwwww

776:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 19:35:51
>>773 節子、それ感動やない、死亡フラグや

777:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 19:42:37
スレ主\(^o^)/オワタ

781:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 20:23:50
>>1は無事脱出できたかな?

782:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 20:39:04
スレの流れ的にあぼんしたかも

795:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(木) 00:13:22
暇だから人生最後のエロゲするよ、題名は
【姫騎士アンジェリカ 〜あなたって、本当に最低の屑だわ!〜】

796:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(木) 00:28:54
>>785 
うわぁ・・・・

797:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(木) 00:34:07
>>785 
( ;∀;)・・・

798:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(木) 00:53:43
>>785 
(ノ∀`)アチャー

799:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(木) 02:12:41
>>785 
(; ・`д・´)…ゴクリ…(`・д´・ ;)

802:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(木) 07:26:34
一晩たって過疎ってきたな・・・・

ところでアンジェリカはどうなったんだ?

804:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(木) 11:13:19
>>1に生き残って欲しいからage
生存報告待ってるよ!

811:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(木) 18:26:04
>>1
生存報告(゚Д゚)マダー?

817:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 05:45:27
漏れも実家周りゾンビだらけでヤバくなってきたから脱出しるwwwww
とりあえずここで紹介されてる最強防具揃えるわwwwww

818:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 05:57:02
ウホッ新たな勇者が立ち上がったようです

伝説の始まりの予感wwww

821:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 06:03:43
母ちゃん台所でゾンビ化してたwwww首超噛まれたwwww
ヤベwwwww血とまんねwwwww母ちゃんドア超叩きまくってるしwwww
人生オワタwwww今バットもっrtくjにお」。;れdql」’¥・

822:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 06:04:56
ちょ

823:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 06:05:24
マジか

824:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 06:05:48
頼む釣りだと言ってくれ

825:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 06:06:12
嘘だと言ってよバーニィ

838:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 06:17:06
返事がない、ただのしかばねの様だ・・・ 

    伝 説 終 了 のお知らせ

866:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 14:01:39
食料切れたwwww腹へりまくりんぐwwww

ちょっとコンビニ行ってくるwwww

867:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 14:11:35
>>866
おーい、生きてる? マジでコンビニ行ったの?

868:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 14:24:10
>>866死んだか、飢え死にするよりは楽に逝けたのかもね

873:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 21:07:04
確かに飢え死にはキツイ
今リアルで空腹+脱水症状な漏れが言うんだから間違いない

苦し紛れにオナホ(TENGA)食べたら腹壊したし

874:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 21:12:32
TwwwEwwwNwwwGwwwAwww
なんつーもん食ってんだwwww

881:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(金) 23:40:14
使用後ですねわかります(蛋白摂取的な意味で)

889:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(土) 03:14:51
TENGAで抜きつつage

895:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(土) 07:38:40
今日も元気にオナニーするお!

897:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(土) 19:11:27
>>873 あなたって、本当に最低の屑だわ!

898:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(日) 02:28:33
マジで人少ない・・・・
ネットも繋がりづらいし、いよいよ人生終了か

901:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(日) 22:27:30
まだだ、まだおわらんよ! 

902:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(月) 08:22:19
うはwwww漏れスレ主と同じS市に住んでるけどついにライフラインあぼんしたwwww
自衛隊弱すぎwwwwノーパソの電気切れたら首吊るわwwww

907:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(月) 10:42:02
>>902 なんという絶望感wwww

911:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(月) 13:03:55
こっちは隣のF県だけどまだ平気っぽい
まあ、首吊りで苦しまずに逝けるだけマシじゃね?
首吊りってかなり楽に死ねるらしいし?

913:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(月) 13:41:28
こんなときのために完全自殺マニュアルを買っておいた俺に死角はなかったwwww
首吊りはマジお勧め、ビニール紐とかでもおkだし、一瞬で意識なくなるから苦しくない

ただし事前にトイレには行っとけよwwww糞まみれになるwwww

914:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(月) 14:06:23
オマイラのアドバイスに感謝wwww

915:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(月) 20:51:10
スレ主はまだ生きてんのかな?

917:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(月) 05:33:02
スレ主の無事を祈りつつage
(-人-) ナムー

918:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(月) 11:27:56
>>917 無事を祈ってねぇwwww

922:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 21:49:13
今地震こなかった? 漏れT県だけど

923:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 21:53:31
なんもナシ、A県

924:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 22:17:51
今いるやつちょっとニュースかラジオ聞いてみろ
糞アメリカンが発狂してまた核ぶっ放しやがった

925:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 22:18:43
ちょwwwwマジすかwwww

926:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 22:19:18
米「ヒャッハー、汚物は消毒だー!」ですねわかります

アメリカしぶとすぎwwww

933:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 22:27:30
今発表してるだけでロシア、中国、北朝鮮、中東、南米、欧州・・・・
日本にも北海道と東京と九州に一発ずつ落ちたらしいよ
どんだけ〜

938:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 22:38:56
ロシアと中国から報復攻撃が始まったようですwwwww

なんという最終戦争wwwww人類最後の日ktkr

941:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 22:43:13
wwww連wwww絡wwww途wwww絶wwww 

報復攻撃食らってアメリコ死亡のお知らせwwwww

ついでに核の冬で地球終了のお知らせwwww

943:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 22:51:59
『世界は核の炎に包まれた』

リアル北斗の拳はじまるよー

944:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 22:52:45
おまけにゾンビ付き
なんという世紀末的難易度ムリゲーwwww

945:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 22:58:24
東京があぼんしたせいか人すくねぇwwww

946:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(火) 23:04:05
漏れらだけでも頑張っていこうぜ!

951:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 04:45:18
いっそのこと核であぼんできてたら楽だったかも
ゾンビに食われるよりはマシに思える

955:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 10:23:09
マジで世界中が黙示録状態だなwwww

957:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:09:48
スレ主です、一応の安全地帯が確保できたので生存報告カキコ
ログ読んだけどなんかいつのまにか世界がとんでもないことになってる・・・・
現在S市の高層マンションにて物資を運び込み篭城中
あ、ちなみに助けた中学生の女の子(+犬)とで、二人と一匹で生活してます

これまでわかったことを結果報告、今後の参考にドウゾ
・ゾンビステルス迷彩は基本的には有効、それでも早い動きと音でバレるから要注意
・武器はミリタリーショップでゲットしたクロスボウ(音が出ないからマジお勧め)
・車は電気駆動(モーター)のやつがお勧め、エンジン音がしないから見つかりにくい
・ゾンビは頭(脳)を破壊すれば一撃必殺奥義(テーレッテー)、でも逆にそれ以外は全然ダメージないっぽ
・接近戦は超注意! 力が超強いんで一回でも捕まると多分脱出不可
・途中で暴徒化した人々を多数目撃したので注意! 特に女性、実際に集団レイポされた人を見かけました
・視力は弱いっぽいから基本的に暗所でゾンビステルス迷彩装備してスネークごっこしてれば無双
 ※暗視スコープがあればなおよし、音にだけは注意
・ただし過信は×、スレ主は一回ゾンビに見つかって殺されかけた

スレ主が有効だと思った小技を紹介
・防犯ブザー等は遠くに投げて発動させれば音で一時的にゾンビ用の囮にできる(ただし数分間だけ)
・ゾンビは階段の上がりが苦手っぽいので、できるだけ高所に避難した方が吉
・銃よりボウガン、基本的に音が出る武器は絶対に避けるべき
・接近戦武器はナイフよりも頭蓋骨ごと叩き割れる鈍器がオススメ
・ゾンビが集団で固まっている付近には生存者がいる可能性高し、避けるも良し、逃げ込むも良し
・最終奥義『ゾンビのモノマネ』、ステルス装備でゾンビみたいな動きをしてれば大集団の中だろうがまずバレない

958:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:11:34
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

スレ主生存!! スレ主生存!! スレ主生存!! 

959:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:12:02
ちょwwwwwマジで帰ってきた!!
なんという神タイミング、これがスレ主の真の実力とでもいうのか!?
ともかく生還オメッ!!!

960:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:12:53
キタ━━━ヽ(゚∀゚)ノ━( ゚∀)ノ━(  ゚)ノ━ヽ(  )ノ━ヽ(゚  )━ヽ(∀゚ )ノ━ヽ(゚∀゚)ノ ━━━!!
キタ━━━━へ ) ━ (  ノ ━(  )ノ━━(  )━━へ  )━━へ )━━ へ  ) ━━━!!
キタ━━━━━ > ━━ >━━━< ━━━ <━━━━ < ━━━ >━━━━ >━━━━!!

961:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:13:41
キタ━━━ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ━━━!!!!
キタ━━━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ゚)ノ)ノ━━━!!!!
キタ━━━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━━━!!!!
キタ━━━━━━(゚(゚∀(゚∀゚(゚∀゚)゚∀゚)∀゚)゚)━━━━━━!!!!!!
キタ━━━━━━(゚(゚∀(゚∀゚(☆∀☆)゚∀゚)∀゚)゚)━━━━━━!!!!!!

967:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:18:11
>>957 『中学生の女の子と』 『二人で』 『生活してます』

なん・・・だと・・・!?

968:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:22:38
あ、あの典型的なプロ童貞だったスレ主がそこまで成長していたなんて・・・
数々の冒険がスレ主を鍛え、一皮も二皮もムケさせたようだ(性的な意味で)

スレ主、お前がナンバー1だ!(ロリコン的な意味で)

971:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:26:00
べ、べつに羨ましくなんかないんだからねッ!

973:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:29:25
漏れはむしろ犬と暮らしているところがウラヤマシス

犬可愛いよ犬

976:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:37:42
なんというリア充wwww
しかもちゅ・・・C学生だと・・・!? 
死ね!氏ねじゃなくて死ね!!

ちくしょおおおおおおお orz

978:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:43:13
>>957、971、976
このロリコンどもめ!

979:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:44:53
>>978
たまにはロリコンもいいよね!

980:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:48:27
オマイラ落ち着けwwwww

981:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 13:49:20
サwwwwーwwwwセwwwwンwwwwww

c学生と聞いてテンション上がってたwwwww

985:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:08:31
ゾンビステルス迷彩マジで使えたのか・・・
なんかちょこっと希望が出てきたな、漏れもいっちょリア充目指してみるかwwww

988:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:11:03
>>985
c学生とワッフルワッフルしたいんですねわかります

991:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:15:03
貴重な情報をうpしてくれたスレ主に感謝ッッ!!

992:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:17:46
もうすぐ1000いきそうだから一言
スレ主として皆の無事を祈ってるよ、生き残ってる奴も、あぼんした奴も
俺が生き残ってるのは皆のカキコのおかげ

なんか核爆弾とかまで落ちてきて地球の未来がマッハでヤバイことになってるけど
漏れららしくほどほどに頑張って生きていこうぜ!

全員にありがとう!!
ここのスレ住人に幸あれ!!

993:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:18:37
スレ主のお陰で生きる気力が湧いてきた
漏れもリア充になれるよう頑張ってみるよ!
こっちこそありがとう、元気でなー!

994:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:21:50
乙でした!!!!!!!!!

995:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:22:15
希望ヲ(ノД`)アリガトー

996:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:23:48
ああ、終わる・・・・

997:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:23:56
1000なら漏れもリア充

998:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:23:58
1000ならゾンビ全滅

999:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:23:59
1000ならすべて夢オチ

1000:名無しのゾンビ:20XX/0X/XX(水) 14:24:01
1000なら人類に未来を

1001 :1001[]:Over 1000 Thread
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててください。 

−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−

「ふぅ……」



一息ついて、ノートパソコンを閉じる。

ふと思い出して掲示板をのぞいてみたが、丁度良くギリギリのタイミングで生存報告ができてラッキーだった。

あのまま放置していたら今日中には落ちてただろうし。



それにしても、ログを読んでて思ったが死者続出してたり核爆弾が落ちてたりと内容はまさに世紀末風味。

俺が市内を放浪している間に世界は凄いことになってたらしい。

日本の主要都市にも核爆弾落ちてきたらしいし、よくサーバーが生き残ってたな。



コレ、本当に救助とか期待できんのか?

東京とかモロ政治の中心だったろうに、大物政治家とか全滅しちゃったんじゃね?

地方の自衛隊とかは残ってるにしても上からの命令がないと身動きとれなさそうだし。

仮に動くにしてもそれぞれが勝手に判断して動かざるをえない。

最悪、独立勢力になってヒャッハーな集団になったりしないだろうな?



うむむ、明るい未来が見えてこない。

……やめとこ、なんか想像すると怖いし、今は考える情報も全然足りない。



まぁ、なにはともあれきちんと1000までいけたので今だけは俺的に大満足だ、スレのこと思い出して良かった。







達成感の余韻に浸る俺の背後から人の気配がした。

おずおずと遠慮がちに近づいてくる人物に向き直り、俺は彼女にぎこちないながらも笑顔をむける。



「あの、高田さん、お茶淹れたんですけど飲みませんか?」

「お、ありがとう由衣ちゃ……ゆ、由衣、丁度喉が渇いてたんだ、うん」

「そ、そうですか、よかったです!」



まだ彼女の名前を呼び捨てにすることにすら慣れてない俺。

気恥ずかしさもあるし、いまさらながら彼女にどう接すればいいのか判断しかねていいるのだ。

湯のみを受け取るときに指先が触れ合うだけでもドキリとする低レベルっぷりである。

「あれだけエロイことしときながら何を今更……」と思うかもしれないが、俺にとっては結構深刻な問題だったりする。



きちんと理由はある、俺はこれまでの人生で一度も彼女を作ったことがなく女友達すらいなかった素人童貞として生きてきた。

エロゲと右手のみを慰めにしてきた駄目男だ、リアル(三次元)においては恋愛のレの字も知らん。

いや、シミュレーション(二次元)だけは人一倍積んできたつもりだが、それがリアルで何の役に立とうか。



正直、恋愛経験ゼロの俺には小・中学生レベルの対応しかできない(由衣の場合、本物の中学生だが)。

そんな俺に初めてできた彼女(?)なのだ、どう扱えばよいかなどわかろうはずもない。



初日にいきなり愛の終着駅的な行為(かろうじて本番行為なし)までぶっ飛んでしまった所為もあって余計に対応に困っている。

あの時はお互いに暴走状態とでもいうか、頭に血が上ってしまっていて理屈よりも情動最優先みたいな感じになっていたため恥ずかしさとか感じている暇もなかったわけだが。

時間がたって落ち着いてみればお互い恋愛初心者に元通り。

こうしていまさらながら名前を呼び捨てにするだけでも気恥ずかしいといった小・中学生の恋愛ゴッコをしている訳である。



由衣だってあの日の夜以降はまったく大人しいものだ。

あの時の大胆すぎる色仕掛けをした本人とは思えないほど普段はおしとやかで清楚な女の子になっている。

彼女だって冷静になったのだろう、流石にあの時は異常なほどエロくて積極的だったけど、落ち着けばごく普通の女の子にもどる。



俺はそんなことを思いながらハァ、とため息を吐いた。



今の状態が決して嫌なわけではないが、とはいえ俺達は両思いなのに、なんというか24歳にもなってこんなザマな自分がちょっと情けない。

年長者として、いや、男としてもうちょっと積極的になるべきだろうか? もちろん健全な彼氏彼女レベルの範囲でな。







由衣から差し出されたお茶を受け取りゆっくり飲む。

少し熱めのお茶が美味い、火傷しないように少しずつ味わって飲んだ。



その様子をニコニコしながら見ている由衣、いつのまにか俺の隣にぴったり寄り添うように腰掛けている。

普段は遠慮がちで引っ込み思案な性格の由衣だが、こういうさりげない控え目なアピールはしっかりしてくる。

その相手が自分だと思うと彼女の心を独占しているようで凄く嬉しく幸せだし、彼氏の贔屓目かも知れないがそんな彼女のいじらしい態度がとても可愛く思える。



彼女が隣に座ってるだけなのにこんな幸せな気分になれるのはやはり俺が恋愛初心者だからなのだろうか?

これまでの人生でこういった経験がないから比較もできんが……



え? リア充死ねだって? 聞こえんなぁwwwwプゲラwwww



ところで、一応彼女の手元にもお茶があるんだが一向に飲む様子はない。

ふと疑問に思い尋ねてみた。



「由衣は飲まないの?」

「え? あ、私は猫舌なんで少し冷ましてからじゃないと飲めなくて……アハハ」



恥らうように苦笑しつつ、湯のみにフーフー息を吹きかける由衣、小動物ちっくで可愛いのう。

そんな可愛らしい姿を見て俺にちょっとした悪戯心がムラムラ芽生えてきた……フヒヒ。

ここらで小・中学生の恋愛を卒業して一つワンランク上のコミュニケーションを取ってみるべきだろう、彼氏彼女的に考えて。



「ふーん……じゃ、じゃあ、俺が冷ましてあげようか?」

「え?」

「よっこいしょ」

「え!? え!? え!?」



隣に座る由衣の小柄な身体を抱き上げ、膝の上に乗せるようにして背後から抱きしめる。

(ウハwwwwなんかイロイロ柔らけぇwwww)

後ろから彼女のうなじを撫でるように顔を寄せ、フーと息を吹きかける。

(ちょwwwwなんか女の子の良い匂いがするwwww)

吐息は彼女の耳裏と首筋をかすめて手元の湯のみへ。



「ひゃわっ!?」



奇妙な悲鳴をあげて由衣が驚く。

まぁ、ちょっとしたセクハラまがいの悪戯だったんだが、効果は予想以上だったみたいだ。

かくいう俺も顔が真っ赤になってるだろうけど、やってしまった後でなんだけど今更ながら恥ずかしくなってきた。



いや、俺こういうイチャイチャ空間に憧れてたんですよ。

ちょっと前までエロゲだけが唯一の慰めだったもんで、ヘタすりゃ一生味わえない世界だと思ってたし。



ただ、やっぱり天罰ってのはあるのかもしれない。

もしくは調子に乗ってたロリコン気味な俺にバックベアード様が罰を与えたのかもしれない。



由衣が驚いた拍子に手元から転げ落ちた湯のみ。

ばちゃん、と熱湯が俺の足にぶっかかりました。



「あっぢゃーーーーー!!?」

「はわわわッ!? だ、大丈夫ですか高田さーーーん!?」



ごめんなさいバックベアード様、正直調子に乗ってました。

生まれて初めて彼女できて超テンション上がってたんです。

なんか血迷って自分見失ってました、サーセン。



ついカッとなってやった、今は反省している。



〔高田了輔、両足太ももに全治三日の火傷を負って反省中(?)〕







【おまけ】



「本当にごめんなさい……」

「い、いいって、ホラ、いきなり驚かした俺も悪いんだしさ! 俺の自業自得だよ自業自得! ハハッ……」



火傷した太股部分をタオルで冷やしてくれる由衣が申し訳なさそうに謝罪してくる。

今回のことはどう考えても悪いのは俺であったので気にしなくて良いと何度も言うが、彼女はそれでも気にしてしまっているようだ。

甲斐甲斐しく何度もタオルを水で濡らして俺の火傷を冷やす作業を続ける。



……なんというか今時珍しいほど健気な子だよな。

ほとんど我侭も言わないし、女性特有のヒステリックなところもないし、控え目でおしとやかな性格だし、よく気が利いて献身的。

清楚で、慎ましやかな、文字通り大和撫子って言葉を体言したような女の子だよ。



それにこんな俺にここまで尽くしてくれる女の子なんて、それだけでも天使だ。

何より素顔は超がつく美少女、どうして由衣がいじめられていたのか俺には理解できないよ。



「高田さん、本当に大丈……あ……」



冷えた濡れタオルを太股に当てつつ看病してくれる由衣がとっさに頬を染める、その視線はある一点にそそがれていた。

俺はそこでようやく気が付く、下半身はお茶のかかったズボン脱いでてトランクス一丁だったんだ。



「す、すごい……こんなに大きくなって……」



でもって、由衣に太股を優しく撫でられることで刺激されてちょっと興奮してて……その……フルボッキしてました。



「ちょ!? こ、これは、ちがっ―――」



これは男の生理現象なんです、刺激されるとつい無意識で反応しちゃうんです、べつにいやらしいこと考えていたわけじゃないんです!

俺がそう言い訳しようとした瞬間、先ほどまで顔を赤らめていた由衣が今までとは比較にならないほど大人びた妖艶な微笑みを浮かべて俺を見つめてきた。

その目にはなにかギラギラした熱と色が宿り、びびった俺は反論する意気もなくなってしまったです。

あれ? この目、最近どこかで見たことがあるような……



「わ、私に任せてください、火傷している高田さんは動かなくていいですから……その、気持ち良くしてあげますから!」

「え!? ちょ、そんなとこ握らないで、アッー!」



急所を握られて言い訳する暇もないままあっさり押し倒されてしまう俺。

その上に覆い被さるようにしてなぜか荒い息をあげる由衣、これ発情してね?。

あ、あれ? これって普通、男女で立場逆じゃね? 俺の大和撫子はどこにいったの?



「ハァ、ハァ ……た、高田さん、高田さん、高田さん、きょ、今日こそ、私と一つになりましょう!!」

「ゆ、由衣サン、とりあえず落ち着いてくだ―――」

「高田さん愛してますッ!!」

「ちょ」



ガバァーッ、と襲い掛かられ、トランクスが剥ぎ取られてしまい俺のジュニアがXXXられる。

それをXXXした由衣がXXXXにXXXして一気にXXXX。

激しいXXXXにさらされた俺はXXXするXXXXもなくなりもうXXXXだった。



もはや由衣のなすがまま、そんな俺の心境を一言で表すならこれしかなかった。



『くやしい……でも感じちゃう! ビクビクッ!』 by高田了輔


ゾンビ天国 完






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