明け方の子猫ちゃん (オリジナルフィクション) 37229回

2011/12/08 22:30┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
いつも私は朝の5時に犬を連れて散歩に行く。
ある日いつものコースを散歩中、道端のバケツに何か浮かんでいるのを見かけた。

近寄ってみると生き物のようだ。子猫のように見える。
死んでるのか?
かろうじて顔は水に浸かっていない。

動いた?
いや今、確かに動いた。
私はあわててその子猫をすくいあげ、行きつけの動物病院のドアを叩いた。
「先生、起きて下さい!!」
しばらくドアを叩くと眠そうな顔で先生が起きてきてドアを開けてくれた。
「どうしたんですか?こんな朝早く。」

「この子猫が...」
「ん?どうしたんだこれは...ひどいことをするやつがいたもんだ。入りなさい。」
先生が死にかけた子猫を診察している。

「全身骨折している。内臓も破裂しているかもしれん。このままでは早かれ遅かれ...」
「何とかならないんですか?」
先生は子猫に何か注射をした後、小さな保育器のようなものに入れた。
「とりあえず様子を見るしかない。幸いなことに生命力はある。」

子猫はやっとの思いで息をしているように見える。
「頑張れ。頑張るんだ。」
私はその子猫が復活することを願って、その病院をあとにした。

翌日の午後、病院に行ってみた。
「先生、どうですか?」
「私の打つ注射だけでかろうじて生きている。昏睡状態が続くかもしれん。」
子猫を見た。息をしている。生きているようだ。よかった。

その状態が2週間以上も続いた。
ある日、先生から電話があった。
「目を開けたぞ!!」
私は病院に飛んで行った。

子猫の入っているケースに近づいた。確かに目を開けている。
先生は子猫の目に光を当てた。
「物は見えていない。目を開けてるだけだ。」
「そうですか...普通の猫に戻れるんでしょうかね?」
「おそらく無理だろう。仮に動けるようになったとしても障害は残るだろう。」
「そうですか...」

さらに2週間。また先生から電話が。
「ミルクを...ミルクを飲んだぞ!!」
私はすぐに病院に向かった。

「見てみろ。哺乳瓶の口を吸っている。」
「本当だ...」
子猫が哺乳瓶から一生懸命ミルクを吸っている。ように見える。
「どうやら内臓は無事だったようだ。」
「頑張れ!!頑張れ!!」
私の目からは涙があふれ出た。

それからは週に2〜3度病院に通って子猫の様子を見た。
ミルクは飲む。目は開けている。時々動く。しかし、泣き声は聞こえない。
「寝たきりになってしまうんでしょうか。」
「脊髄をやられているかもしれん。それならこれ以上動くことはできない。」

次の週。
「手が動いた。手が動いたぞ!!」
先生からの電話で私は病院へ走った。
確かに。手がピクピク動いている。
「すごいぞ!!すごい!!頑張れ!!その調子だ。」
「こんなに強い猫は初めて見た。」
「先生!!この子、何とかなるんじゃないんですか?ねえ?先生!!」
「そうだね。頑張れる子なのかもしれんなあ。」
「そうですよ。先生。この子は強い。生きられますよ。」

次の週。
「見ろ。すごいぞ!!」
子猫がわずかではあるが顔を持ち上げている。
「糞もするようになったぞ。」
水っぽいものではあるが糞か尿もしているようだ。
「ミルクを飲めるようになってから確実に回復している。まだ油断はできんが。」
「そうですか!!もし、もし復活したら...」
「ハハハ。飼い主を探さないとな。」
「先生、名前をつけましょう。」
「何がいいかな。」
「白いからシロちゃんなんてどうですかね。」
「そうだな。」

私は毎日のように病院に通っては子猫の名前を呼び続けた。
名前を呼ぶとわずかに動く。
少しずつではあるが回復しているように見えた。

そして...次の週。夜中に電話が鳴った。
「子猫が弱っている。すぐに来てくれ!!」
私は動物病院に向かって走った。ただひたすらに走った。
「先生!!子猫は...」
先生が天井を見上げている。

「先生...」
小さなケースの中に子猫がいる。いつもと同じように見える。私は近づいた。
「...」
子猫は動かない。ピクリとも動かない。
間に合わなかった。

ケースから出して手のひらに乗せてみた。まだ温かい。けれども呼吸はしていない。
「ついさっきだった...小さい声だったが一度だけ鳴いたんだよ。」
「ホントですか?聞きたかったな...シロちゃんの声...」
私の目からはとめどなく涙があふれ出てきた。

「シロちゃん...回復してると思ったのに...」
涙でかすんで子猫の亡骸が見えない。
「この子は頑張った。本当に頑張ったよ...」
先生の目からも涙があふれている。

「先生...ありがとうございました。」
私は自分の家の庭にシロちゃんを埋めた。土の上に線香を立ててあげた。
「天国では元気に跳ね回るんだよ...」

その時だった。
どこかでかすかに子猫の鳴き声が聞こえたような気がした。
私の愛犬がその盛り上がった土をずっと見ていた。


出典:リアルな
リンク:夢だった?
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