萌ちゃん 5 (恋人との体験談) 19403回

2012/02/12 22:59┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
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小学校生活最後の日が来た。
外は雪だった。
萌ちゃんが在校生に囲まれてる。

両手に持ちきれないほどの贈り物をかかえていた。
萌ちゃんの目には涙が光っている。

体育館に卒業生と在校生が集まった。
みんなで校歌を歌う。
僕の後ろから変な泣き声のようなものが聞こえてくる。

教室に戻ると萌ちゃんが号泣していた。
もうずいぶん前から泣き通しだったようだ。

下から萌ちゃんの顔を見上げると鼻水があとからあとから流れてくる。
ハンカチが絞れそうなほど濡れている。
「萌ちゃん、これ使いなよ。」
「ありがとうぅぅ、うえっうえっ。」

「萌ちゃんがそんなに泣くなんて。」
「雄太君はさみしくないのぅ?うえっうえっうえっ。」

「さみしいけど横でそんなに泣かれちゃうとね。」
「だってだって。」
...萌ちゃんって泣き虫だったんだ...
以外な一面を初めて見た感じだった。


やがて雪も溶け、桜も咲いて僕らは中学生になった。
萌ちゃんの制服姿はキレイでカッコよかった。

「ねえ萌ちゃん、ちょっとスカート短すぎない?」
「え?みんなこの長さだよ。」

「だって...他のやつにパンツ見られたら...ぶつぶつ...」
「何ブツブツ言ってんの?さあ行くよー。」

僕はダブダブの詰襟で大きなカバンをかついでいるような感じで中学の門をくぐった。
偶然にも僕と萌ちゃんは同じクラスになった。
いきなりあちこちで萌ちゃんのファンクラブができた。
上級生が次々を萌ちゃんをひとめ見ようとやってくる。
先生までもがしばらく見とれるくらいだった。

「目が大きくってまつ毛が長くてカワイイ。」
「モデルになればいいのに。」
「ハーフタントみたい。」
萌ちゃんはいきなりクラスでも人気者。

小学校からの仲間は僕と萌ちゃんが付き合ってことを知ってるけど
僕のことを考えてそれを言わないでいてくれた。

あっと言う間にGWになった。
僕の体に異変が現れた。そう、やっと毛が生えたのだ。

「きゃー、うぶ毛が濃くなってきたよお。」
「あんまり見るなよ。恥かしい。」

「だってだって生えてきたんだもーん。」
「何で萌ちゃんがそんなに喜ぶの。」

「うれしいもん。」
「変なの。」
萌ちゃんはそれからと言うもの毎日のように僕の毛が生える工程をチェックした。
ポヨポヨとヒゲのようになってくると萌ちゃんはそれをさわるのが楽しみだったようだ。

中学生になって僕は授業にまったくついて行けなくなった。
放課後僕は萌ちゃんに勉強教えてもらうのが日課になった。

「ねえ、萌ちゃん。」
「ん?」

「部活やらないの?」
「うん。」

「あんだけいろんな運動部から勧誘受けてるのに。」
「別に興味ないもん。」

「いいの?僕のために時間割いてくれてるようなもんじゃん。」
「いいの。雄太君のためだから。勉強頑張ってね。」

「うん...」
なぜか将来の日本の宝を独り占めしてるような気がして気が重くなった。



「ねえ、雄太君、最近元気ないね。」
「そう?そうかなあ?」

「うん、何か雄太君らしくない。」
「僕、元気しか取り柄がないからかなあ。」

「そんなことないよ。雄太君の取り柄っていっぱいあるよ。」
「ありがとう。」

「何か気になることでもあるの?」
「いや、別に...」

「ならいいけど。」
そんな感じで数週間が過ぎた。


ある日。放課後の帰り道。
「ねえ、いつまでそんなに塞ぎこんでるの?」
「気にしなくていいよ。」

「いやん、気になる。何で?教えて?」
「いや、いいよ。」
こんなやり取りがしばらく続き、僕は白状させられた。

「だって、萌ちゃんってスポーツもやればできそうだし...」
「え?」

「見た目はモデルみたいだから芸能界だってやって行けそうだし...」
「え?」

「だから僕なんかにくっついていたって何にもいいことないよ。」
「!?」

パーンっっ!!!

僕は萌ちゃんにひっぱたかれた。
久しぶりのビンタに左ほほがジンジンしびれている。
スカートめくりしてたたかれたことを思い出した。

「雄太君なんか大っっ嫌いっ!!!」
萌ちゃんは走って行ってしまった。
僕はその夜、ご飯が喉を通らなかった。


僕と萌ちゃんは口をきかないまま2週間が過ぎた。
同じクラスだから目を合わせることはよくあるが会話に発展することはなくなった。

僕はさみしくなった。
萌ちゃんの存在が大切だったことが初めて身に染みた。
謝らなくちゃと思った。


僕はなけなしの小遣いをはたいて女性もののTシャツを買った。
今でもおぼえてるけどバッタの絵がプリントされている変なやつ。
何であんなTシャツ買ったんだろうと思う。

僕はそれを持って萌ちゃんの家に行った。
呼び鈴を押すと中から萌ちゃんが出てきた。

僕は無言でそのTシャツが入った袋を差し出した。
「何よこれ。」
「あの...これ...」
謝りに行ったはずが僕はなぜかごめんなさいが言えなかった。
Tシャツだけ渡してそそくさと帰った。


また数日が経過した。
やっぱりちゃんとごめんなさいを言いたくなって僕は萌ちゃんの家に行った。

「入って。」
「うん。おじゃまします。」
普段言わないことを言って僕は萌ちゃんの部屋に入った。

「何しに来たの?」
「あの...あの...」

「ん?」
「萌ちゃん、ごめんなさい!!!」

「...」
萌ちゃんの目から大粒の涙があふれ出た。

「も、萌ちゃん...」
「バカ...雄太君のバカ。」

「萌ちゃん...」
「私のことが重いの?うざいの?イヤになったの?」

「え?いや、そんな...」
「イヤになったんなら正直に言って。束縛してたつもりはないから...」

萌ちゃんは泣きじゃくっていた。
萌ちゃんの顔が涙と鼻水だらけになった。
僕は自分の発した言葉の重みをこの時初めて知った。

「萌ちゃん。ゴメン...ホントにゴメン。」
「...」

「僕のことを許して。僕、萌ちゃんがいないとダメなんだ。勉強もできないし...」
「...」

「それに...さみしくって...」
萌ちゃんが僕に飛びついてきた。思いっきり抱きしめられた。
そのまま何もしゃべらず泣いていた。
僕も泣いた。

...萌ちゃんは僕のことを許してくれた。


「ねえ、泣いたら暑くなってきたね。」
萌ちゃんは薄手のカーディガンを脱いだ。
中から緑色のバッタが現れた。


「ねえ私、雄太君にお願いがあるの。」
「なあに?」

「絶対、絶対、絶〜対、将来イイ男になってね。」
「イイ男?」

「うん私、信じてるんだ。雄太君は絶対イイ男になるって。」
「何だかよくわからないけど...頑張るよ。」

お互いの大切さを知った日だった。
僕が精神的にひとまわり成長できた日でもあった。


出典:org
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