義妹が結婚した。 (ジャンル未設定) 62684回

2012/03/12 20:20┃登録者:名無し┃作者:名無しの作者
義妹 Rが結婚した。

Rが家にやって来たのは、俺が11歳 弟が9歳の春だった。
突然、父親がダッコして家に帰ってきた。
父「今日からお前たちの妹だから。」後ろの母は、「そうゆうことだから。」
Rは、その日から我が家のアイドルに就任した。R11ヶ月のことだった。

父親は無類の子供好きで、子供の虐待や犠牲のニュ−スを見るたびに、激怒したり同情
したりする人だし、よく施設にプレゼントや寄付をしているようだった。

父親は会社を経営していて、その地域でもそこそこ名の通った会社だし、本業以外にも色々な事 つまりサイドビジネスっぽいのもやっているようだった。その土地の大地主の1人でもあった。
時間に余裕があったらもっと子供を、欲をいえば女の子が欲しいと言うのが口癖だった。

というのも、弟は生まれつきの高度難聴で弟に手が掛かってもう一人子供が、という余裕が無かったからだ。

弟は高度難聴の障害の為、九州から近畿の大学病院で手術を受けるための入退院、定期検査を6歳まで繰り返していた。おかげで機械の補助があれば日常生活に支障がないまでになった。何ヶ月も父親と2人で生活していたその間、小学校を休んでいろんな所に2人で行ったのは、今でもよく憶えている。(温泉や海外−玄界灘の向こう)教室よりも勉強になる。が父親の言い分だった。
弟は、IQ140以上の天才だった。手術前の検査でIQテストがあってそのテストで最高値をたたき出した。その最高値が140以上という数字だ。大学病院の先生曰くこの子は、目から入る情報を全て頭で整理出来る特殊能力に近い物を持っています。ということだった。教育に関しては、注意してください。ということを言われたそうだ。

弟は何の勉強もしないまま、私立小学校に入学した。
そうして、俺6年生 弟4年生の4月にR登場。

Rが家にやって来てからは、父親はRべったりで甘やかし放題だった。
小学校−Rも弟と同じ私立小学校 Rは幼稚園から塾で勉強していたし、弟もよく教えていた。身内贔屓にしても、Rも頭はよかったと思う。
小学校を卒業するまで父親とRは一緒に寝ていた。Rは父親と一緒じゃないと寝られなかった。母親じゃダメだった。

中学校 そのまま私立中学校 卒業までの9年間父親が毎朝学校まで車で送って行っていた。仕事はそれから行っていた。 父親曰く朝は、重要な要件があるので遅れるが口癖だった。俺も弟も大学生で家を出ていたので、愛情が一身に集まっていた。
初潮のときは、とても焦っていたらしい。母親は見ていて、みっともなかった。と言っていた。
ちょうどこの頃Rは自分が養女だと知った。

地元の私立大学の4年生だった時、男は1人暮らしを経験した方がいいと言う理由から
父親の持つマンションで生活をしていた。でもRの顔を見たくてしょっちゅう家に帰っていた時、Rに誘われてドライブに2人で行った。

「お兄ちゃん。私、養女なん?」
車を走らせてすぐRが言った。運転中なんで顔を合わせなくてよかったのが救いだった。
「それ、父親や母親に言った?」
「まだ言ってない。言えるわけないやん!」
強い口調で言った。が半分涙声だった。
「父親に言ったらショック死するけん言わんほうがいい。」
そういう俺のほうが泣きそうだった。
「でもRは、俺たち兄妹の中で1番愛情を掛けられて育てられたやん。それは分かるやろ?」
「分かりすぎる位、わかってる。父親に言えんけんお兄ちゃんに聞きよるとよ。」
もうRは泣いていた。俺も涙が出てしかたなかった。が車を走らせていたほうが話がしやすかったので運転を続けていた。
「4月のある日、父親がRをダッコして家に帰ってきた。・・・それだけ」
「それだけ?」
「それからRは、うちの子。俺と弟の妹。父親と母親の子。誰がなんと言おうとそう。やけんもう言わん。言ったらイケン。変なこと言う奴がおったら俺が殴る・・・前に父親が殴るやろ。な?」
「そうやね。黙っとかんやろね。」
「くわしい事は、俺もわからんし、聞いてないんよ。・・・聞けんやろ?」
「そう・・・聞けんね。聞いたら悲しむもんね。・・・もう聞かんとこ。」
「聞いてもRが俺たちの家族の中心なのは変わらんけん。一緒やん、もう忘れろ。な!」

そういうやりとりがあって、家に帰った。
でも、その事を両親には、話せないままマンションに帰った。            
弟が家を出て、両親とRの3人になって、ますますR中心の生活になっているようだった。Rも1人暮らしをしたいと言ったが、父親が初めてRの希望を拒絶した。頑として認めなかった。Rはこの家からお嫁に出す。1人暮らしなんかしなくていい。の一点張りだった。ちなみに母親はどうしてもRがしてみたいなら、近くに手持ちで空室のマンションがあるからそこならいいと言っていた。と弟が言っていた。

これからが本題

Rは地元でお嬢様高校−お嬢様女子大学を卒業して旅行代理店に就職した。
その間につきあった彼氏はいない。ように思う。贔屓目なしにきれいなお嬢さんに育ったのに。
門限も1度も破ったこともないし、外泊も1度もない。
「父親が悲しむやん。」時々、彼氏は、出来たか?と聞くとそう言う答えが返ってきた。

R24歳の時、家に彼氏を連れてくることになった。ので同席してくれるようにRから連絡が有った。
「やめたほうがいいんじゃね?」そう言うと
「私もそう言ったんだけど、結婚を前提につきあいたいから、どうしてもだって。」
「Rはどうなん?結婚を前提なん?」
「そうだけど。」
「じゃあ、会っといた方がいいよ。」

彼氏−S君は、話してみても誠実そうだし、頭の回転も速いし、礼儀正しい好青年だった。
「最初に言っとくけど、Rに指1本でも触れた?」
「いいえ。まだです。なにもしてません。」
「そう。Rに何かしたら俺も許さないけど、父親はもっと許さないよ!」
「はい!Rちゃんからそう聞いています。」
「よろしい。じゃあ打ち合わせましょう。」

作戦として奇襲作戦をとることにした。
Rが休みなのに家にいるので父親は機嫌がいい。一緒にお昼ご飯を食べに行こうか?とか色々言っている。俺が家に帰ってきてもまるで無視だ。

そこにいきなりS君登場

父親、機嫌がとたんに悪くなる。母親は、Rから聞いていたので平気。
そしてS君挨拶。母親は、S君のことを色々聞き出す。

父親、速攻退場 Rと俺 父親を追いかける。父親 背中を向けたまま話し出す。

「なあ、俺が初めてRをつれて来た日のこと憶えてるか?」
「ああ。」
「あの日な、施設にランドセルや筆記用具をプレゼントに持って行ったら、ちっちゃい子が居てな、ハイハイをしてこっちに来たんだ。そして俺の足にしがみついて立ち上がったんだ。俺は、その子をダッコしたら、その子、ちっちゃい手で俺の腕をつかんで離さないんだ。ちっちゃいのに強い力でな。・・・その子はとても良いにおいがしてな、暖かくて、柔らかくて・・・それで・・・俺、その子のこと離せなくなって、かあさん見たら、かあさんも笑っててな。それで連れて帰ってきたんだ。」
「ああ。」
父親は、涙声だった。横にいるRも泣いていた。
「で24年間、俺の我が儘で一緒に居させてもらったんだ。」
Rは、「そんなことない。私は、お父さんの娘だよ!」言いながら泣いていた。
「でもな、今でも離す勇気が無いんだ。」
「あのときのちっちゃい手の感触が残ってるんだ。」
「でも、いつまでもこのままで良いわけはないだろ? 女の子は、嫁に行くもんだろ。」
そう言いながら、俺も泣けてきた。

母親がS君を連れて部屋に入ってきた。
「Rの事は聞いてるね。」
父親が言った。
「はい。聞いています。」S君が答えた。
「Rは、養女だ。だから実子のこいつよりも責任と愛情を掛けて精一杯育てた。」
「それも聞いています。」
なにげにひどいこと言ったよう気がする。
「何か宗教に入っているかね?」
「いいえ、無宗教です。」
「じゃあ、結婚式で神様に誓わなくていいから、俺に誓ってくれ。・・・Rを精一杯守ると誓ってくれ。」
「はい。誓います。」
Rは号泣。母親苦笑い。何いってんだかこの親父は?という感じだったらしい。後でみっともないと怒られていた。
「それから嫁にやるんじゃないよ。Rが嫁に行くんだからね。だからいつでも帰ってくるように。」
そう言うと自分の部屋に閉じこもってしまった。

それから俺と母親 RとS君で食事をしに出かけた。母親は、父親のことをダシに俺たちの知らない笑い話をたくさんしていた。

結婚式までのことやまだまだ書き足りない事ばかりだけど、(弟のこと・Rのこと・母親や父親のこと)1つだけ最後に、

結婚式に父親は出席しなかった。父親がRにお願いした最初で最後のわがままだ。
「花嫁の父親が号泣しどうしじゃ、晴れの式が台無しだから。」というのが理由だ。
おかげでバ−ジンロ−ドは俺がエスコ−トをすることになった。

結婚式の日、みんなを送り出した後、父親は、Rを引き取った施設にプレゼントを持って行ったそうだ。24年前のあの日以降も時々、1人で行っていたそうだ。

有る春の日、小さな天使が我が家にたくさんの幸せを持ってきた。幸せをもらったのは、僕らのほうだった。だからR あなたには、家族全員が感謝しています。

これからもずっと。
 





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