踏み入るべきではない場所 (恐怖の体験談) 26114回

2012/03/27 20:35┃登録者:痛(。・_・。)風◆pvNbTqv.┃作者:名無しの作者
私がまだ小学校低学年の幼い子供だったころに、
趣味で怖い話を作っては、家族や友達に聞かせていました。

「僕が考えた怖い話なんだけど、聞いてよ」と、きちんと前置きをしてからです。 
特にじぃちゃんが、私の話を喜んで聞いてくれました。 
私はそれがとても嬉しかったんです。熱心に聞いてくれるのと同時に、こわがってくれたから。 

そんな折、私の作った話が、クラスの中で流行りだしました。 
放課後の男子トイレで、個室を叩くとノックが返ってくる。といったありがちな話です。 
クラスの女子の間であっという間に流行り、噂は学年中、学校中へと広まりました。 

「男子トイレの前で、手招きする男の子を見た」とか言い出す女子も出てきていて、
私がやっとその噂を知って、「僕の作り話だってば」と言ってもきかず、 
その後もまことしやかに囁かれ続けました。 
ついには、そこで肝試しを始めるグループまで現れてしまいました。 


335:踏み入るべきではない場所 2/7:2005/09/30(金) 11:22:49 ID:ItZOrWPy0 
その肝試しでしたが、なにも起きるわけがないのに、
グループの子供が皆、「ノックの音が返ってきた」と言うんです。大変な騒ぎでした。 
そんなワケないだろ!?と思って、作り話だということをアピールしようとしたのですが、
当時の私は、皆に冷たくされるのが怖くて言い出せませんでした。 

そのうち私は、自分の話が本当になってしまったのではないか、と思うようになり、 
すごく恐くなって、自作の怖い話をすることをやめました。 
その騒動があってからしばらくして、じぃちゃんが怖い話をしなくなった私に、
「もう怖い話しないのかい」と聞いてきました。 

私はもう泣きじゃくりながら、その話をじぃちゃんにしたんです。 
「ほうかほうか」とやさしく聞きながら、こんなことを話してくれました。 


336:踏み入るべきではない場所 3/7:2005/09/30(金) 11:24:08 ID:ItZOrWPy0 
「それはな、みんなが坊の話を本当に怖いと思ったんだ。 
坊の話をきっかけにして、みんなが勝手に怖いものを創っちゃったんだよ。 
怖い話を作って楽しむのはいいけど、それが広まって、よりおそろしく加工されたり、
より危険なお話を創られてしまうようになると、 いつの日か『それ』を知った、
ワシらの目には見えない存在が、『それ』の姿に化けて、本当に現れてしまうようになるのかもな。
 
目に見えるものではなく、心のなかにね。『おそれ』はヒトも獣も変わらず持つもの。 
『おそれ』は見えないものも見えるようにしてしまう。本能だからね。 
だから恥ずかしくないから、怖いものは強がらずにちゃんと怖がりなさい。
そして、決して近寄らないようにしなさい。そうすれば、本当に酷い目にあうことはないよ」

私は、じぃちゃんも何かそんな体験をしたのかと思って、「じぃちゃんも怖い思いをしたの?」と聞きました。 
すると、予期しなかったじぃちゃんの怖い話が始まったのです。 


337:踏み入るべきではない場所 4/7:2005/09/30(金) 11:25:26 ID:ItZOrWPy0 
「昔じぃちゃんは、坊の知らない、すごく遠くのお山の中の村に住んでいたんだよ。 
そこで、じぃちゃんの友達と一緒に、お山に肝試しに行ったことがあるんだ。 
そうだね、じぃちゃんが今でいう、高校生ぐらいのころかな。 

お地蔵さんがいっぱい並んでいたけど、友達もいるし全然怖くなかった。 
でも、帰り道にじぃちゃんの友達が、お地蔵さんを端から全部倒し始めたんだ。 
『全然怖くない、つまらない』って言ってね。

じぃちゃんはそこで始めて、その場所に居るのが怖くなったよ。
なんだか、お地蔵さんに睨まれた気がしてね。 
友達を置いて、さっさと逃げてきちゃったんだよ。 
そうしたら、その友達はどうしたと思う?」

「死んじゃったの?」
「ううん、それが、何も起こらないで普通に帰ってきたんだよ。 
でもじぃちゃんは、もうそれからオバケが怖くなって、友達と肝試しに行くのを一切やめたんだ。 
その友達は、その後も何度も何度も肝試しといっては、
ありがたい神社に忍び込んだり、お墓をうろうろしたり、
お地蔵さんにイタズラしたり、色々するようになってね。

周りの人からは呆れられて、相手にされなくなっていったよ。  
人の気をひくために、『天狗を見た』なんていうようになってしまった。 
じぃちゃんに、『見てろ、噂を広めてやる』なんて言って笑っていたよ」


338:踏み入るべきではない場所 5/7:2005/09/30(金) 11:26:17 ID:ItZOrWPy0 
「そしてある日、ふっと居なくなったんだ。 
じぃちゃんもみんなと色々と探したんだよ。 
そしたら…山の中の高い木のふもとで、友達は死んでた。 
木の幹には、足掛けに削った跡がてんてんと付いていてね。 
友達は自分で木に上って、足を滑らせて落ちたんだ。ばかなやつだよ。 

坊、世の中には、人が入ってはいけない場所っていうのがあるんだ。 
それは怖い場所だ。坊だったら、タンスの上もその場所だよ。 
落ちるのは怖いだろ。そういうことだよ。 
じぃちゃんの友達には、怖い場所が見分けられなかったんだ」

「怖いね。ばちがあたったのかな」
「いいや、怖いのはここからさ。 
友達が死んでから、村の中のひとたちが次々に、『天狗を見た』って言い出したんだ。 
じぃちゃんは、『あれは友達のでまかせだ』と言ったんだけどね。 

『友達が天狗の怒りに触れた』『祟りだ』『呪いだ』と、皆は自分達でどんどん不安をあおっていった。 
夜通しで見張りの火まで焚いたんだ。
皆が顔をあわせるたびに天狗の話をするので、村の中がじめじめしていた」


339:踏み入るべきではない場所 6/7:2005/09/30(金) 11:27:12 ID:ItZOrWPy0 
「そんな時に限って具合が悪くてね、村の中でケガをするのが4件続いたんだよ。 
どうってこともない、ねんざまで数に数えられてね。どう見てもあれは、皆おかしくなってた。 
さらに噂に尾ひれがついて、『天狗に生贄を出さなくては皆殺される』とまで酷い話になっていた。 

そしてついに、本当に生贄を出そうという話をするようになったんだ。 
友達が死んだのは、木から足を滑らせて落ちたからなのに、完全に天狗のせいになってた。 
村の中の皆も、人が入ってはいけないところに踏み入ろうとしていた。 

それはね、人の命だよ。誰にもそれを奪う権利なんてないだろうに。 
じぃちゃんはね、天狗よりも、村の中の皆がすごく怖かったんだよ。 
だからね、じぃちゃんは、その村から逃げてきたんだ…」


340:踏み入るべきではない場所 7/7:2005/09/30(金) 11:28:00 ID:ItZOrWPy0 
じぃちゃんのこの話は、その後もねだって2度程聞かせてもらいましたが、
「絶対に内緒だぞ」と言われ、両親の居るところでは決して話しませんでした。 
でも、今でも私の家には父方の実家はありません。 

「農家の次男のじぃちゃんが、庄屋の娘のばぁちゃんと駆け落ちしてきたからだよ」
と、私の両親からはそう聞いています。 

じぃちゃんが私に、自作の怖い話を聞かせてくれたのかとも思いましたが、多分違います。 
その長い話が終わった時、じぃちゃんは大粒の涙をぼとぼと、私の小さな手の甲に落としたのですから。 

今も思い出して涙腺が緩みました。 
長文を読んでくれてありがとうございました。

出典:((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
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