特撮スタッフの生活 (エロくない体験談) 14208回

2012/04/25 21:33┃登録者:<`∀´r >◇nidanida┃作者:名無しの作者
※僕らの知らない生活をする人たち4人目※ より

※エロと萌えの要素は一切ありません※

327 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:04/11/22(月) 01:43:48 ID:XFB+uKxN [1/7]
特撮スタッフの生活。

特撮と一口に言ってもいろいろある。
怪獣やウルトラマンが闘う、お子様向けの「トクサツ」や
一般映画の中で絶対に「ああ、特撮だな」と観客に悟られてはならない
「本当に撮ったの?」と思わせるための視覚効果までですね。

まぁ、これらの仕事に携わる人々に共通している事。
それは「鼻毛がよく伸びる」という事ですな(w
何しろ特撮の現場には身体に悪いものがいっぱい撒かれる。
空気感を出すためのスモーク、燃える建物のミニチュアからは油煙、
火薬を使えばツンと鼻を突く硝煙が立ちこめるし、ナパームが爆発すれば
スタジオの天井からオタマジャクシのような黒いススが降ってくる。
さらに怪獣さんが歩く時の土埃。これは「フライアッシュ」と呼ばれる
石炭の燃えかすで非常に細かい灰。時にはこれの代わりにセメントを使う。
これを四六時中吸っているんだから鼻毛なんてアッと言う間。
ちょっと鼻の穴から出ている鼻毛の先を引っ張ると、鼻のビックリするくらいの奥で
「チクッ」という刺激があって、構わず抜くと惚れ惚れするほど長い鼻毛が抜けたりする。


こんな環境で一日中働いているので、ナリは非常に汚い。
おまけに相手はミニチュア。「二階の窓に黒い紙貼って」と言われたら
普通の映画の撮影なら脚立を持って来なくてはならないが、ミニチュアの場合は
屈むだけでは足りず 、床の上に這いつくばらなければならない。
床の上には↑で書いたようなキチャナイ埃などがいっぱい積もっている。
何が悲しゅうて大人になって泥だらけにならにゃアカンのか知らないけど
こんな仕事ばかりしていると、ただでさえ汚い格好の多い映画界でも非常に目立つ。
撮影所の食堂で飯をかきこんでいると、出会った知り合いに何も言わないうちから
「あ、いま特撮やってんの?」と図星を指されたりする。
鼻をかむとティッシュは真っ黒。耳掃除をすると綿棒は真っ黒になる。
そんな職場なので女ッ気は非常に少ない。

ここまで読んでいると恐らく多くの人が「汚い格好をした特撮ヲタのなれの果て」が
ウヨウヨしている現場を想像するかも知れないが、意外にヲタな方はとても少ない。
何と言っても火薬が毎日のように炸裂し、下手すりゃ200kgもある怪獣さんがワイヤーで吊られて
ドドドドドと飛んでくる現場なので、コミュニケーションが欠けると怪我人が出る。
なので、すぐに自分の世界に籠もってしまうような人間に現場は勤まらない。
時には「怪獣映画やりたくてこの世界に入りました‥‥」って感じの大人しい「大きくなった怪獣少年」
みたいな新人が入ってきたりするが、現場に馴染めずヒッソリと消えていくか
世間の波に揉まれて、1年後くらいに会うとバカな冗談ばっかり言ってる特撮野郎になっていたりする。
女ッ気が非常に少ないと書いたが、全くいないわけではない。
特に怪獣やミニチュアを作ったりする工房には美大あがりの女性も多く
何故か非常に可愛い子率が高かったりするのも事実。


さて、こんな人々が居並ぶ特撮現場。
荒々しく賑やかなものなのか?と言うとそうではない。
基本的にヒジョーに地味で静かです。時折、主演俳優や監督などがセット見学に来たりする。
最初のうちは細かく作られたミニチュアに感嘆したりしているが、十分も経たないうちに飽きて
つまらなそうな表情になります。普通の映画の撮影ではカメラの周りは各パートが入り乱れて
カオスの様相を呈しているんだけど、特撮の場合は撮影する世界が狭いので一度に「それッ」って
わけにはいかない。演出部が怪獣の動きを決めたあと、撮影部がカメラを設置。
そして「操演」と呼ばれる人々がミニチュアを吊ったり、ビルが倒れる仕掛けなどをセット。
次に特殊効果スタッフが火薬を仕込んだり、崩れるビルに(壊れやすいように)切り込みを入れたりする。
そういう仕掛けが終わって美術部の飾り込みが入る。ここは見ているだけでも一応面白い。
彼らは整然と整理された箱の中に面白いミニチュアを沢山しまっていて、それを飾り付けていく。

ミニチュアの車とかなら誰でも持ってるかも知れないけど、美術の棚にしまわれているミニチュアは
そんな「誰でも持っているもの」では収まらない。「信号機」「室外機」「のれん類」「ビル・袖看板」
「ゴミ袋(東京都)」「ポスト・立て看板類」「道路標識」なんて書かれた箱を開けると
その中には10分の1や25分の1のそれらが整理されて収められている。
電話ボックスの中には風俗のチラシとかが貼ってあって、ナカナカ芸が細かい。
「どうせ写ってても誰も気付かねーだろ」と誰でも思うかも知れないが、彼らは彼らなりの職業意識に沿って
一瞬で壊れてしまう靴屋のミニチュアの中に、バービーが履くための靴を飾り込んでいったりする。すげー。
さて、美術部がフィニッシュに近づくと、照明部が600kwくらいの電力を使ってライトを当て
撮影部のチーフが光量の測定を行って「じゃあ、そろそろ本番に参りますか」と相成る。
この間、短くて1時間。長い場合は二日目の夕方辺りに「そろそろ本番」になったりする。
そんなわけで、部外者には「この人達、ちゃんと仕事してるのか?」と写ってしまうこともしばしば。
念願の特撮映画を監督出来て、怪獣が暴れるのをこの目で見てみたいから本編の現場を抜け出して
特撮現場に日参したのに、一度もそんな華々しい場面に出会えなかった監督もいたりする(w


さぁ、各パートが交代で地味ーな仕事をしている現場。
手出しが出来ない他パートの人々は何をしているのか?
もちろん、次のカットの準備の仕事があればそれに没頭するのだが、それも無い場合は暇つぶし。
と言っても自分がいつ呼ばれるのかわからない状況では、表で車を磨いたりするわけにもいかない。
「緊張感を保ちつつ暇つぶし」というのは案外難しい。な訳で壊れた撮影機材を修理して
買った時よりもピカピカにしてしまったり、一輪車に乗れるようになったり、メル友を何人も作ったり
妙に凝った食器棚を作ってしまうような人が続出したりする。

「いかに地味な現場なのか」という事を書いてきたのだが、撮影終了が近づくと現場はさらに地味になる(w
ミニチュアセットは綺麗に片付けられ、40m×20mくらいの青や緑や黒の布の前での
合成用の素材の撮影に入るからだ。最初の頃の予定表には「ビル爆破・墜落する飛行機の主観」なんて
華々しい事が書いてあったりするが、撮影終了直前になると「合成用埃・泡・煙・破片」なんていう
地味この上ないメニューばかりになる。合成して画面を盛り上げるためには必要な素材なのだが
現場そのものは盛り上がらない。この頃になると各パートとも撤収の準備に入ったり
次の仕事の打ち合わせなんて始めたりして、撮影現場の寂しさはピークに達する。
本編の撮影の終了は主演女優への花束贈呈やら華やかな行事があったりするけど
特撮の場合は花束を贈呈する相手もいやしない(w
プロパンガスの炎を真っ暗なスタジオで撮影したあと「三ヶ月どうもお疲れさまでした!!」となったりする。

過去ログを読むと「勤務時間は何時〜何時まで・休憩は何時〜何時」という事が書いてあったりするが
特撮に限らずこういう仕事にはそんなものは存在しない。

「時間が守れないのなら、こんな仕事辞めちまえ!」と集合時間にのみに関しては厳格な業界だが
終了時間なんてあって無きが如しもの。予定表には「終了予定時刻」という書き込み欄があるけど
映画やドラマの撮影ではその欄に数字が記入されている事は非常に珍しい。
ロケセットで借りた施設の(営業時間の)都合などで終了時刻が決まったりする時は例外だけど。
CMの撮影では書き込んである事が多いが「28:00終了予定」と、小学校で習った事のない
時刻が当たり前のように書き込んであったりする。
CMでもなく、施設の使用時間に左右されない特撮ではここは空白がデフォルト。

撮影開始は基本的に9:00。だが「準備開始」ではなく「撮影開始」なので準備に時間のかかるパートは
8:00頃に動き出したりもする。日光に左右されるオープンセットでの撮影は8:00頃に撮影開始。
準備に手間のかかるパートの切なさは倍増する。日が無くなれば撮影終了だし開始が早かったので
という事で昔はオープンの撮影の日は辛いながらも何となくノンキに「終わったら飲みに行くかな」
と構えていたものだが、世知辛い今日に於いては「オープン終了後、セットへ」となったりする。

定時は基本的には18:00であるが、守られても週一度。スタッフに「定時」と呼ばれる平均終了時刻は
作品によって全く違う。が、2・3日でスタッフ使い捨てのCM撮影とは違って2ヶ月以上もスタッフを
拘束している映画の場合は、あまり無茶な事はしない。「生かさず殺さず」で通常は遅くても10時頃には
終了する。もちろん、これは仏心のみによるものではなく、終電を逃すと制作部がタクシー代を
出さなくてはならないので、終電ギリギリでスタッフを帰そうという台所事情も関係している。


時間の話が済んだら金の話。

技術スタッフは各パートとも「技師」と呼ばれる親方と助手で構成される。
技師というのは「撮影:だれそれ」と映画の冒頭で一枚看板を貰える人ですね。
この人達のギャラは本当にピンキリ。映画やドラマのギャラは「一本辺りのグロス」が基本。
多い人は一本こなすと800マソ以上稼いだりする。でもこの辺は本当のネ申。
TVドラマなどに参加する技術会社の社員とかだと、給料+お手当程度。
社員スタッフの切なさは助手も技師もあまり変わりない。

「チーフ」と呼ばれる助手頭になると一ヶ月拘束で60〜70くらいかな。
それ以下「セカンド」「サード」「フォース」と階級順に5づつくらい下がっていく。
もちろん、この過程でキャリア、熟練度も考慮される事はある。
大手制作の映画はこんな感じ。「町場(まちば)」と呼ばれる中小プロダクションの場合は
これより多い場合もあるが、少ない場合も多い。

ちなみにCMのスタッフは日当で計算される。
技師は映画やドラマ同様に一本辺りのグロス計算。7日ほど稼働して50マソだったり
忙しくて撮影当日のみ参加で300マソ稼ぐ人もいたりする。
フリーのCM助手にはランクが無い。「チーフ」はいるけど他は一律で「セカンド」扱い。
ギャラはプロダクションによって違うが日当は1の後半から2の前半まで。
ただし、CMは日数計算が厳格。9:00〜18:00まででこの値段。
集合時間がそれよりも早かったり、終了時間が遅いと単価の1.5日分で計算される。
24:00を越えると2日計算。これで「今日帰れないから明日の仕事を断わらなきゃならないじゃん!」
というスタッフ側の文句を慰撫する事が出来る。朝までかかると3日分。
下手すりゃ3日のCMの撮影で10以上稼ぐことも可能。つか、そんなに珍しくない。
な訳で身を粉にして働いている助手の中には、へたな技師よりも年収が多いのもいる(w



336 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:04/11/22(月) 03:22:53 ID:zGnYNjvH
>>327
すごく面白かったです。
よかったら特撮スタッフになるまでの経緯なども話していただきたいです。
怪獣さんの中の人の話なども。
あとやはり特撮の番組や映画などを見ると背景や効果をチェックしたりしてしまいますか?
注文多すぎかな…。



343 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:04/11/22(月) 08:23:36 ID:tYCHEMV5
>「28:00終了予定」と、小学校で習った事のない
>時刻が当たり前のように書き込んであったりする。
ここもワロタw
特撮技師さんなのになんでこんなに文章が上手いんだ!!
>>336さんとかぶりますが、327さんはどうやってこのお仕事に就いたんでしょうか?



346 名前:327[sage] 投稿日:04/11/22(月) 12:37:12 ID:8o7mntTi [1/7]
下手な駄文にお付き合いいただき、まことに申し訳ない。

>>336 >>343
当たり前のようだけど、この仕事に就くキッカケは人それぞれだったりします。
怪獣やミニチュアを作る人の場合は最初から「特撮やりたい!」というモチベーションがあって
スタッフロールの名前から技師の住所を調べたり、特撮雑誌からミニチュア工房の住所を割り出して
自分の作品を持ち込んで採用、というケースが多い。あと、ファンクラブなどからツテを見つける場合も。
美大からアルバイトで派遣されて、そのまま居付いてしまったケースもある。

ただ、演出や撮影や照明のように一般の撮影にも出番がある人の場合はちょっと違う。
最初から特撮志望の人間はあまりいない。普通の映画のスタッフ集めと同様に
知り合いの紹介などでチーフから連絡があって、特撮の世界に足を踏み入れる事になる。
実際に選別されるのは一本の作品を終えてから。前にも書いたように地味で待ち時間の多い現場。
なので、通常の撮影のように一日にン十カットも撮影するテンポに慣れきっている人間には
待ち時間の多い撮影は大変なストレスになる。目を楽しませてくれる女優さんもいないし
毎日同じスタジオでの変化のない生活は、毎日ロケであちこちに行ける生活と比べると
どうしても刺激が少ない。慣れてくればその中に「普通の映画と違う面白ポイント」を見つけて
楽しむことも出来るのだが、大半は「もう二度と特撮はやらねえ!」と決心して去ってゆく。

さて、「やらねえ!」と思わず、特撮に魅力を見出して残った人間の場合。
こういう奇特な人間は非常に重宝される。なにしろ特撮は「特殊撮影」の略なので
一般の撮影では必要の無い知識や経験が求められる世界だ。
そこに居付いてしまった人間は、映画界の片隅に存在する「特撮業界」の中を
グルグル回る事になり、一本の映画が終わって次の現場にいくと
スタッフの大半が顔なじみ、なんて変化もクソも無い生活の中で
女優やメイクのおねーさんの知り合いよりも、怪獣の中の人の知り合いが増えていく。


さて、怪獣の中の人。
ビルを叩き壊したり、ウルトラマンと取っ組み合いをしたりする彼らはどんな人々なのか?

経験上、彼らは爽やかで腰が低く、人当たりの良いナイスガイです。
今まで例外は見た事が無い。間違っても「おらおら、俺がウルトラマンだぞ!」と
肩で風を切ってスタジオに入ってくる、なんて事は無い。
撮影現場に来ると、どんな下っ端スタッフにでも笑顔で挨拶してくれる彼ら。

もともと体育会系出身なので当たり前なのかもしれないけど、
やはり「スタッフに命を預けている」という気持ちがあるのではないかと推測する。
ウルトラマンや怪獣のスーツ(着ぐるみ)というのは一人では絶対に着れない。
必ずスタッフの手助けが必要となる。大掛かりな怪獣の場合は6人がかりで着用することも。

そして着てしまったら最後、誰かが背中のチャックを下ろして助け出してくれない限り
彼らは絶対に外に出る事が出来ないのだ。おまけにスーツの中は狭くて暑い孤独な世界。
スーツに火薬が仕込まれて一斉に炸裂しても、中では手で軽く叩かれた程度にしか感じられない
スーツの中では外の音は殆ど聞こえない。怪獣の口を開けたりするモーターの音の方がよほどうるさい。
外を見るのは小さい覗き穴。周囲の状況は全くわからず、足元くらいしか見えない。
時折、ナパームが引火して怪獣が火ダルマになり、スタッフが慌てて消火器を持って駆けつける事態が起こるが
そんな時にも彼らがケロっとしているのは、別に図太い神経のなせる業ではない。
単純に我が身に何が起きたのか知らなかっただけだ。試写を見て初めて彼らは青ざめる(w

そんな環境に10分や20分も閉じ込められている彼らは、ケアしてくれるスタッフが頼みの綱。
背中のチャックを下ろして風を送ってくれたり、覗き穴から話しかけて周囲の状況を教えてくれるスタッフに
彼らが丁寧に接するのは自然な感情から来るものなのであろう。彼らも声があまり外に漏れないスーツの中から
スタッフと懸命にコミュニケーションを図ろうとする。イカツイ怪獣が身振り手振りを交えて
スタッフとお話している場面は絵として見るととても微笑ましい光景だ。


さて、怪獣の中の人がどれだけ劣悪な環境でお仕事してるのかは大体説明できたと思う。

空から着地したウルトラマンが「デュワッ!」と背後に立っている怪獣に向き直ると言うのは
狭い覗き穴しか与えられていない彼らにとっては、それなりに大変なことなのだ。
解像度の低いテレビなら覗き穴も大きく出来るが、劇場の大スクリーンが前提の場合
覗き穴は余計に小さくなってしまう。「怪獣、倒れている高圧線の鉄塔を拾い上げる」
という簡単に感じられるアクションでも、拾い損ねてNGになるのもしばしば。
狭い覗き穴は中の人の遠近感も狂わせてしまうのだ。

そんな条件の中でどれだけの精神的なプレッシャーが彼らを襲うのか。
怪獣映画では欠かせない「ビルの破壊」の例をとって説明してみよう。

こういうシーンのリハーサルはビルの設置予定箇所に段ボールの箱を置いて行われる。
段ボールの上に倒れこんだり、歩いて行って突っ込んだり、納得のいくまで何度もリハーサルが行われる。
本番まであと何時間もあるのだが、実はこれが最終リハーサルなのだ。泣いても笑っても次は本番になる。
段ボールが置いてあった場所に石膏製のビルが慎重に運び込まれる。
じゃあ、これに怪獣が倒れこめばお馴染みの破壊シーンが生まれるのか?と言うとそうではない。
石膏板を組み合わせて作ったビルは、何も仕掛けをしなければ板のパーツごとにバラバラになるだけだ。
仕掛けを行うスタッフが、小さい鋸を片手にビルを取り囲み、何時間もかけて細かい切込みを入れていく。
破片の形に切り込んでいくのだが、切込みが多すぎてもビルが自重を支えきれないので駄目。
少ないと大きい破片が出来てしまい興醒め。勘と経験が物を言う世界だ。
切込みが終わると美術スタッフが、解いた石膏で切り込みの隙間に埋めていく。
その上から彩色。ビルの窓ガラスなどのパーツはこの時点で埋め込まれる。
これにそのまま怪獣が倒れ込んでも、怪獣が触れた場所しか崩れない。
跡形も無く崩すためにはビルが完全に崩れるように、ビルの内側から火花や煙の出ない火薬を
大量に仕込む事になる。怪獣の倒れこみと同時に火薬を炸裂させてビルを崩壊させるわけだ。
その作業と平行して、壊されるビルの周囲に町並みを飾りこみ、照明を決めてやっと本番。


この間、約半日。
怪獣の中の人は、半日前のリハーサルの経験だけをもとに一発勝負をかける。
下手してNGを出せば、半日間のこれらの努力は水泡と帰してしまう。
狭い覗き穴から床に書かれたマーキングだけを頼りにこんな大仕事をこなす彼ら。
少なくとも自分にはそんな事をする度胸は無い。

ちなみに中の人たちはセッティングの間、何をしているのか?
大半の中の人は何もしない。何もない場所でリハーサルをすると
却って本番での勘を狂わせてしまうので、最終リハーサルの体験を暖めているのだ。
時々、ビルの崩壊の予定を火薬の担当者に尋ねに来たりするが
基本的には休憩所から一歩も出ずに本を読んだり雑談して過ごす。
中の人の新人は、最初は物珍しそうに作業を見守ったりしているが
やがて先輩同様に休憩所に引き篭もるようになる。
多くの人の膨大な努力を目の当りにすることは、それだけで彼らのプレッシャーになるのだ。
変なプレッシャーで勘を鈍らせるよりも、彼らは無関心を装ってそれを避けようとする。

本番になって休憩所から出てくる彼らの目は、さすがに普段と違って険しくなる。
そして本番終了後、OKが出たときの彼らの顔は普段と比べて非常に晴れやかだ。

ちなみに「彼ら」という人称を用いていたが、中の人は男性だけではない。
細身で男性が入れないような怪獣の場合、女性の中の人が起用される事もある。


351 名前:327[sage] 投稿日:04/11/22(月) 14:20:31 ID:8o7mntTi [5/7]
>>336
>あとやはり特撮の番組や映画などを見ると背景や効果をチェックしたりしてしまいますか?

初見の時は観客として楽しむよう心がけています。
気になる箇所はDVDで見返したり。そんなわけで我が家には映画そのものは「つまらない」と感じたのに
効果が良く出来てるばかりに購入してしまったDVDがチラホラ。


353 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:04/11/22(月) 14:35:09 ID:jVcq8pye
>>351
現場の人から見て「この特撮はすげえ!」って作品教えて



358 名前:327[sage] 投稿日:04/11/22(月) 17:10:08 ID:8o7mntTi [6/7]
何だかスレを乗っ取ってしまったみたいで申し訳ない。

>>353
個人的には『エイリアン2』『アビス』『タイタニック』。ベタで済みません。
もともと特殊効果マンあがりのジェームズ・キャメロンは「何でもCG」っていう
発想が無く、気を付けて観ていると意外に「セコい」撮り方を効果的に使っている。
CG使いまくりと思われている『タイタニック』でもこの事情は変わらない。
出航のシーンでレオ様と友人がデッキの上から手を振るシーン。
ここでキャメロンはゆっくりとカメラを動かすことによって、岸壁から客船のセットが
離れていく幻想を生み出している。その次に来るCGを使った岸壁から離れるタイタニック
のカットがこの幻想を強調しているのだ。そして、平台の上にカメラを固定し
同じ平台の上に立たせた見送り人のエキストラと共に平台を動かす事によって
動かないはずのタイタニックが前進し出しているように見せている。
もちろん、CGを使った壮大なショットも見所ではあるけど
個人的にはこういう「セコい」撮り方が好き。

『エイリアン2』も「セコさ」爆発の映画だ。
あの映画で使われたエイリアンのスーツは両手で数えられるほど。
それを編集のマジックでたくさんいるように見せている。
エイリアン・クイーンとリプリーの一騎打ちもなかなか良い。
あそこで船内の回転灯が画面にアクセントを与えているが、あれは「バレ隠し」の意図がある。
エイリアン・クイーンのスーツの胴体部分には人間が二人入っていて、右側の人が
右手二本を受け持ち、左側の人が左手二本を担当。スーツ自体は上からクレーンで吊るされ
足は棒でフレームの外から操作されている。そういう仕掛けを隠すのにあの回転灯が役に立つのだ。
目くらましがあれば観客は画面の隅まで目を光らせない。リプリーが乗っているロボットも
吊られている。中には重量挙げの選手が入っているのだそうだが、それでも重いので
ワイヤーで上から吊り下げている。あのロボットには二本のアンテナが立っているが
別にあれはデザイン上の要求から生まれたものではない。単純に上から吊るしているワイヤーの
吊り点を誤摩化しているだけなのだ。そして、ほとんど動けない両者をカメラの動きで
まるで動き回っているように見せている。



邦画では『ガメラ3』かな。
ストーリーに関してはいろいろあるけど、この映画の特撮は非常によく出来ている。
特に前半の渋谷の惨劇のシーンはショット設計も撮り方も非常に上手い。
予算が無いので渋谷の街を再現、というわけにはいかないので
実景との合成を非常に上手く使っている。丸井(版権の問題でQIQIなのだそうだw)
が崩れ落ちるカットは写真のPC上での切り貼りだけで成り立っている。
そのままではネタが割れてしまうので、向かいのビルのガラスへの映り込みとして処理。
ラストの決戦は京都なのだが、もちろんここでの京都の街のミニチュアによる再現は
とても限定されたものになっている。
そして限定させて浮いた予算をすべて精緻に作り込まれた京都駅のミニチュアに集約。
そんなわけでこの映画の迫力は邦画離れしていて一見の価値あり。

この映画の特撮を手がけた樋口真嗣が監督として参加した『ローレライ』。
特撮を熟知している彼がどんな映像を見せてくれるのか今から楽しみ。
ちなみにこの映画の特撮の現場も嫌になるほど地味なものであった(w

スレ違いどころか板違いなので、この辺の話題はこの辺で。









出典:※僕らの知らない生活をする人たち4人目※ 
リンク:http://life5.2ch.net/test/read.cgi/kankon/1100297252/
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