ドラえもんの最終回 (アニメキャラの体験談) 30772回

2005/09/29 17:27┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
のび太とドラえもんに別れの時が訪れます。それは、なんともあっさりと...。
のび太はいつものように、宿題をせずに学校で叱られたり、はたまたジャイ
アンにいじめられたり、時にはスネ夫の自慢話を聞かされたり、未来のお嫁さん
であるはずのしずかちゃんが出来杉との約束を優先してしまう、などなどと、
とまぁ 、小学生にとってはそれがすべての世界であり、一番パターン化されてま
すが、ママに叱られたのかもしれません。 とにかく、いつものように、あの雲が
青い空に浮かんでいた、天気のいい日であることは間違いないことでしょう。そ
んないつもの風景で、ドラえもんが動かなくなっていた...。

当然、のび太にはその理由は分かりません。喋りかけたり、叩いたり、蹴ったり、
しっぽを引っ張ってみたりもしたでしょう。なんの反応も示さないドラえも
んを見てのび太はだんだん不安になってしまいます。付き合いも長く、そして固
い友情で結ばれている彼ら、そしてのび太には動かなくなったドラえもんがどう
いう状態にあるのか、小学生ながらに理解するのです。その晩、のび太は枕を濡
らします。

ちょこんと柱を背にして座っているドラえもん...。

のび太は眠りにつくことができません。泣き疲れて、ただぼんやりしています。
無駄と分かりつつ、いろんなことをしました。できうることのすべてをやったの
でしょう。 それでも何の反応も示さないドラえもん、泣くことをやめ、何かしらの
反応をただただ、 だまって見つめ続ける少年のび太。当然ですがポケット
に手を入れてみたり、スペアポケットなんてのもありましたが動作しないのです。
そして、なんで今まで気付かなかったのか、のび太の引き出し、そう、タイム
マシンの存在に気がつくのです。ろくすっぽ着替えず、のび太はパジャマのまま、
22世紀へとタイムマシンに 乗り込みます。

これですべてが解決するはずが...。

のび太は、なんとかドラミちゃんに連絡を取り付けました。しかし、のび太は
ドラミちゃんでもどうにもならない問題が発生していることに、この時点では
気が付いていませんでした。いえ、ドラミちゃんでさえも思いもしなかったこと
でしょう。「ドラえもんが治る!」、のび太はうれしかったでしょう。
せかすのび太と状況を完全には把握できないドラミちゃんはともにかくにも
20世紀へ。
しかしこの後に人生最大の落胆をすることになってしまうのです。動かない
お兄ちゃんを見て、ドラミちゃんはすぐにお兄ちゃんの故障の原因がわかり
ました。 正確には、故障ではなく電池切れでした。
そして電池を交換する、その時、ドラミちゃんはその問題に気が付きました。

予備電源がない...。

のび太には、なんのことか分かりません。早く早くとせがむのび太に
ドラミちゃんは静かにのび太に伝えます。
「のび太さん、お兄ちゃんとの思い出が消えちゃってもいい?」
当然、のび太は理解できません。なんと、旧式ネコ型ロボットの耳には
電池交換時の予備電源が内蔵されており、電池交換時にデータを保持しておく
役割があったのです。そして、そうです、

ドラえもんには耳がない...。

のび太もやっと理解しました。そして、ドラえもんとの思い出が甦ってきました。
初めてドラえもんに会った日、数々の未来道具、過去へ行ったり、未来に
行ったり、恐竜を育てたり、海底で遊んだり、宇宙で戦争もしました。鏡の世界に
も行きました。どれも映画になりそうなくらいの思い出です。
ある決断を迫られます...。ドラミちゃんは、いろいろ説明をしました。
ややこしい規約でのび太は理解に苦しみましたが、電池を交換することで
ドラえもん自身はのび太との思い出が消えてしまうこと、
今のままの状態ではデータは消えないこと、
ドラえもんの設計者は、設計者の意向で明かされていない(超重要極秘事項)ので
連絡して助けてもらうことは不可能であるという、これはとっても不思議で特異な
規約でありました。
ただ修理及び改造は自由であることもこの規約に記されていました。
のび太はドラミちゃんにお礼を言います。そして「ドラえもんはこのままでよい」
と一言、告げるのです。
ドラミちゃんは後ろ髪ひかれる想いですが、何も言わずに
タイムマシンに乗り、去っていきました。 のび太、小学6年生の秋でした。

あれから、数年後...。
のび太の何か大きく謎めいた魅力、そしてとても力強い意志、どこか淋しげな目、
眼鏡をさわるしぐさ、 黄色のシャツと紺色の短パン、しずかちゃんが惚れる
のに時間は要りませんでした。 外国留学から帰国した青年のび太は、最先端の
技術をもつ企業に就職し、そしてまた、めでたくしずかちゃんと結婚しました。
そして、それはそれはとても暖かな家庭を築いていきました。ドラミちゃん
が去ってから、のび太はドラえもんは未来に帰ったとみんなに告げていました。
そしていつしか、誰も「ドラえもん」のことは口にしなくなっていました。
しかし、のび太の家の押入には「ドラえもん」が眠っています。あの時のま
ま...。

のび太は技術者として、今、「ドラえもん」の前にいるのです。
小学生の頃、成績が悪かったのび太ですが、彼なりに必死に勉強しました。
そして中学、高校、大学と進学し、かつ確実に力をつけていきました。
企業でも順調に、ある程度の成功もしました。そしてもっとも権威のある大学に
招かれるチャンスがあり、のび太はそれを見事にパスしていきます。
そうです、「ドラえもん」を治したい、その一心でした。
人間とはある時、突然変わるものなのです。
それがのび太にとっては「ドラえもんの電池切れ」だったのです。修理が可能で
あるならば、それが小学6年生ののび太の原動力となったようでした。



自宅の研究室にて...。

あれからどれくらいの時間が経ったのでしょう。しずかちゃんが研究室に呼ばれ
ました。絶対に入ることを禁じていた研究室でした。
中に入ると夫であるのび太は微笑んでいました。
そして机の上にあるそれをみて、しずかちゃんは言いました。
『ドラちゃん...?』 のび太は言いました。『しずか、こっちに来てごらん、
今、ドラえもんのスイッチを入れるから』頬をつたうひとすじの涙...。
しずかちゃんはだまって、のび太の顔を見ています。この瞬間のため、まさに
このためにのび太は技術者になったのでした。なぜだか失敗の不安はありません
でした。こんなに落ち着いているのが変だと思うくらいのび太は、静かに、
静かに、そして丁寧に・・・・何かを確認するようにスイッチを入れました。
ほんの少しの静寂の後、長い長い時が繋がりました。

『のび太くん、宿題は済んだのかい?』

ドラえもんの設計者が謎であった理由が、明らかになった瞬間でもありました。
あの時と同じように、空には白い雲が浮かんでいました。
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