今日、近所の交差点で車に乗って信号待ちをしていると、前方の右折車線でジリジリ前進している車がいた。 明らかに信号が青になった瞬間に曲がっちまおう、っていうのが見え見え。 この道路は主要幹線(って言っても所詮田舎のだが)で交通量も多い。確かにこのチャンスを逃したら、右折信号が出るまでの数分は足止めを食らうだろう。 俺は「ほんの数分も待てねーのかよ。やらせっかよ、このDQNが」と毒づきながら、信号が変わる瞬間を待っていた。 当然譲る気は無い。昼飯前の空腹感と暑さが俺を少々苛立たせていた。 すると、いきなり、俺の左の車線の車から中年の男性が降りてきた。自分の車を放っておいて。その車には誰も乗っていない。 もうすぐ信号が変わる大通りで信じられない出来事。 そのおっさんは、俺の車の前に背を向けて立ち、『止まっとけ』のサインを出しつつ、右折しようとした車に『早く行け』と手を振った。 右折車が結構なスピードで右折していく。しかし、俺の目にははっきりと見えた。 苦しそうな顔の女性が。助手席の窓にまで達した大きな腹。明らかに妊婦。 俺は、咄嗟に助手席の窓を全開にし、小走りで車に戻ろうとしていたおっさんに叫んだ。 「ありがとう! 全然気づかなかったよ!」 おっさんは、ちょっとびっくりしたような顔をすると、 「仕事が交通整理なんでな!」 と、笑いながら言い返してきた。その顔の誇らしげなこと。とても眩しく見えた。 後続車の猛クラクションの中、俺たちは慌てて発進した。ハザードを2回焚く。多分、隣の車も。 結果的に俺は何も出来なかった訳だが、あそこで「ありがとう」と言えた自分に感謝したい。 素直な感謝の気持ちをそのまま言葉にする。 自分が本当に思っていることを口にして言うだけなのに、それが恥ずかしくて出来なかった、愚かな俺。 いままで、本当に言いたいことも言えず、へらへら生きてきただけの自分を後悔する毎日だったから。 それがちゃんと出来ることを教えてくれたおっさん、本当にありがとう。 そして、あのときの妊婦さんが、元気な子供を生んでくれることを、心からお祈りします。 出典: リンク: |
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