絵里と千春7 (ジャンル未設定) 16103回

2012/11/01 21:08┃登録者:ゆうじ◆2XKpuVss┃作者:ゆうじ
休日のある日、自宅で写真アルバムやビデオ映像を見ていた。懐かしい
色んな思い出が蘇る。あっちこっちで撮影した景色、バイククラブで撮った
集合写真、絵里と2人、仲間とふざけあった写真や映像もある。

そこには20代前半だけど、まだ幼さの残る顔で絵里が笑っていた。
むじゃきで、本当屈託のない笑顔。その写真、映像一つひとつの瞬間が
凄くまぶしく輝いて見えた。彼女が傍に居た事は本当なんだろうか。
時間が経つに連れ、実は夢だったんじゃないかって思う時がある。 


8月に入る。強い日差しと連日の猛暑で若干夏バテ気味だったけれど、
仕事を何とか詰めてつめてお盆休みも返上。その甲斐あってお盆休み
後に有給が取れた。

出発の前週に、その時お世話になっていたバイクショップで、工具を借りて
自分でバイクを整備する。走行距離は軽く10万キロを越え、年期の入った
各パーツは傷みも目立つ。最後に結構な距離を走る事になりそうなので、
消耗部品を交換し入念に整備した。こいつを整備するのもこれで最後だろうな。

ショップのオーナーに、近いうちにバイクを手放す事を伝え、次の候補の
バイクカタログをもらった。

出発の日
時間的なものを考えて深夜に出発する事にし、それまで仮眠を取る事にした。
目覚まし時計で目を覚まし、シャワーを浴びる。バイクに合わせたデザインの
このブルーのつなぎも袖を通すのはこれが最後になると思う。

荷物をバイクに載せてエンジンを掛ける。野太い集合マフラーのアイドリング。
シュルシュルと吸気音が聞こえる。静かにクラッチを繋げスタートさせた。

実は絵里の故郷はこの辺りだろう?って事しか分からない。付き合って
いる時に実家の話しを聞いて、大体このあたりだって目星はついていたん
だけど、後は現地に行って聞き込むつもりでいた。間違っていたら、目も当て
られんが、それならそう言う巡り会わせだと、自分に納得をさせてた。

とりあえず、バイククラブで撮った絵里や仲間の写真数枚もバイクに積み
役所の臨時職員と手紙であったので、その町の役所に向かう事にしていた。

夜の街を走り、途中から高速道路を走る。かなりのロングラン。ひたすら西へ
向かう。何時間走ったろうか?あまり思い出せないが、日が明けかけた頃、
高速を降りて、少し迷いながらも某フェリー乗り場に到着。フェリーに乗る
のはこれが初めてで少してこずったが、バイクの乗船種別が特殊手荷物
扱いなのには少し笑った。

フェリーに乗り込み仮眠を取る。乗船していたのは30分ほどだったかな?
いつの間にか到着していて、乗務員にお客さん着いてますよぉって起こ
されて、慌ててバイクに向かった。まだ朝方にもかかわらず日差しは既に
強い。つなぎを着たままだと暑かったので、上半身だけ脱いで、つなぎの
袖を腹の部分で結び、島を南に走る。

南の端につく手前で、隣の県と島を結ぶ海峡大橋を渡り、橋の上から見える
景色の雄大さと美しさに目を奪われた。すっげぇw日本じゃないみたい。

その県に入って遅い食事を取る。レーサーレプリカ乗りの宿命なんだけど、
ずっと前傾姿勢で肩と首が痛いのなんの…。肩こりと首の疲れで長めの
休憩を取って、地図を調べた。ここから先は国道1本、高速道路もなく
その国道をただひたすら南に走る事となる。既に絵里の住む街と同じ
陸地に足を置いているって、それだけで嬉しくなってた。子供だな俺…。

さらに日差しはきつくなり、バイクの影もくっきりして色も濃い。繁華街を
抜けると徐々に山の景色が増え、建物がまばらになった。やがて完全に
山間を走る事となり、気が付くと行きかう車の数も少なくなっていた。

山の空気のせいか幾分涼しく感じて、緩やかなワインディングは走りや
すかった。途中ですれ違うバイクのピースサインをもらう、俺も同じく
ピースサインで返した。今もピースサインてするんだろうか?



車のように音楽を聴く事も出来ないし、ちょっと油断して操作が荒くなると、
色んな危険が付きまとう。人間が外にむき出しなのに、その気でアクセルを
捻ると、200キロ近いスピードも出る。バイクは危険な乗り物だって思う。
快適性なんて皆無の乗り物。だけど、しっかり操作すると、その操作に
答えてくれるし裏切らない。何となく俺がバイクを乗り続ける理由の一つ。
合法的な乗り物で、こんな危ないのって少ないんじゃないかな?


淡々と今できる事をして、自分の過去を思い出しながら、山を右に左に走り
抜ける、考えたら、ずっと人に求めてばっかりだったなぁって。人目は気に
なったし、色んな劣等感もある。きっとこれからも心無い、茶化しや煽りも
あるだろう。そんな自分は変わりたくても、心根はそんなに変わらないだろうし。
だけど、この旅が終わったら、少しだけ物事に立ち向かう勇気を持ちたい。
次に、どこかで絵里に会っても、胸をはれる自分でいたい。そう願った。

せめて、きっと。そして絵里の後ろ姿を思い出す。


もう随分ワインディングを走ったと思う。気が付くと山の間から遠く海が
水平線がチラチラ見えていた。やがて山間をくだり小さな町を抜けると、
とたんに巨大な海が目の前に開けた。

おぉ太平洋!潮の香りがする。岩場に当たって砕ける波は白く、高くて
遠くまでうねって見えた、そして、小さな漁港町を過ぎると、そこからは、
右側が山で、山に沿って道が曲がりくねりながら続き、左手が海。その
景色は遠く潮にけむって見えていた。もし操作を誤ってガードレールを
突き破れば、海に落ちてただじゃすまないだろう。

そして、もうそれほど遠くない所まできているはずなんだが、この場所に
来るのは初めてだったし、何時頃着くのか予想がつきにくかった。

…随分遠くに来たなぁ。実感する。

目的地近くの岬の町まであと30キロくらいを切ったろうか。もう少し。
今日はそこで宿を取ろう。宿もまったく予約なしなので、町に入ったら
電話帳で調べるつもりでいた。日も傾きだしていたし、腹も減った。明日から
役所を回って絵里の事を調べるつもり。ここまで来たんだ。きっと後悔
する事ないと思うよ。なんか自分に言い聞かせながら、国道をひた走った。


何とか岬の町に入り宿を探す。タイミングよく宿も見つかり、そこで1泊
できた。食事と風呂に入り、部屋でボーっとする。これだけの距離を1人で
走ったのは久しぶり、かなり疲れもたまっていたんだが、明日の事を
考えるとなかなか寝付けなかった。ちゃんと絵里に会えるんだろうか?
会ってもらえるのか?その前に見つけられるの?色んな事を考えて…。


山側から打ち寄せる波の音が聞こえる。音が山に跳ね返って聞こえている
みたいだ。

ふっと目が覚めて時計を見た。朝の7時。いつの間にか眠っていた。
やっぱり、しばらくボーっとする。両手で顔を叩き、洗面所に立って自分の
顔を鏡で見る。疲れか冴えない顔がそこに映っていた。ふぅ。歳食って
きてんだなぁ…。

支度をして宿の主人に礼を言い出発。とにかく該当する町の役所に向か
おう。


1日目
つなぎを着たままで役所に入ったせいか、役場の人がギョッとした顔で
こちらを見てた。事情を説明するも、なんか冷たい…。俺そんなに変な
人のつもりないんだけどなぁ…。仕方がないので頭を下げて、役所を
出てくる…。それらしい女性もいなかった感じだし。臨時職員だからもう
いないか?次どうしようかな?しゃあない!この付近を聞き込もう!

その日は1日、その町の人に手当たりしだい声を掛けた。声を掛けるのっ
てそれだけで勇気が要るなぁ。おっかなびっくりで、最初の頃は絵里の
写真だけ見せて聞いて回ったんだが、変に思った人もいたみたいで、
逆にあんた何者?と聞かれる始末。探偵の仕事は俺には向いてないな。

途中から、俺と絵里と他の人が写っている写真に変えてみたんだけど、
結局それらしい情報は聞き出せず。あぁ最初からその写真にしとけば
よかったよ…。仕方ない。1日目に泊まった民宿に戻り、そこでもう1泊
する事にした。明日こそ。


2日目、隣町の役所へ向かう。でも同じ感じだった。知りたい情報は
得られずで、だんだん自分の目星に自信がなくなってきてて、そもそも
この県の周辺でよかったんだろうか?暑さと流れる汗、焦りで自分に
ちょっとイラついてた。でも地道に。地道に探さなきゃな。

3日目、昨日の町の、更に隣町に向かいそこの役場に入る。連日つなぎ
姿が不評だったので、白の長袖Tシャツを着て袖をまくり、ジーンズを履いた。
なれない笑顔で爽やかなライダーを装ってみたりして。なんだかなぁ…。
まぁ、それが功を奏したか、役場で冷たくあしらわれる事はなかったけれど
その代わり、絵里の情報も何も得られなかった。

うぅ〜ん…。途方にくれる。…どうしようか。

首筋に汗が流れる。暑い…。のどが渇いたので、役場前の自動販売機で
スポーツドリンクを一気飲みし、タバコを吸っていた。

と、初老の男性が俺に声を掛けてきたんだ。

「役場で話しが聞こえてたんだが、さっきの、どれ、写真もう一度見せて
くれんか」
「あっ!はい、すみません、どんな情報でも良いので、お願いします。」
慌ててタバコを消して写真を見せる。

「……○○さんとこのお嬢さんに似とるな?」
「えっと…、そのお嬢さんのお住まい付近はどちらで?」

この道を行ってそこを…って地元の言い方で説明してくれたが、さっぱり
分からない。急いで地図を引っ張り出して、地図で教えてもらった。

「ありがとうございます!」
「気をつけてな」

男性にお礼を言い、地図上で確認したところ、役場から5キロほど離れた
小さな町で、はやる気持ちを抑えつつ、そこから海沿いの県道に向かった。

県道は相互1車線の小さな道で、左手に砂浜。そして堤防。その堤防に
沿って県道が走る。右手は大きな田園が広がっていた。殆ど車も通らない。
所々県道から右に一直線にあぜ道が続いている。民家も遠くにポツリ、ポツリ。
遠くに山が見え、高い入道雲。青々とした稲穂群が風に揺れ、波のようにさざ
めいていていた。

堤防側にバイクを止めてヘルメットを取ってみる。夏の熱気と青臭い空気。
辺りは静かで、わずかに波の打ち寄せる音と、遠くセミの鳴く声が聞こえる。
そしてギラギラ照り付ける太陽の日差し。やっぱりくっきりとした俺の影。
シャツは身体に張り付き、首筋と背中に汗が流れた。


………ここも違うか。

堤防に腰掛けてみる。県道の先は陽炎に揺れていた。

もうあきらめて明日帰ろうか…額からも流れる汗。俯いて目を閉じる。


「…」


ふぅ。とりあえず元の町に戻るかな。なにげに顔を上げる。…と。    




……そこに恵里がいた。

「…絵里」
つばの広い麦わら帽子と、薄手の白いシャツ、クリーム色のスカート。
2年ぶりに再会した絵里の姿は年齢を重ねた分、その雰囲気は可愛い
から綺麗な印象に変わり、髪も短くなって幾分落ち着いた感じに見える。



「まだこのバイク乗ってたんだね」
「…」

堤防の切れ目、丁度そこから砂浜に降りるコンクリートの階段がある。
絵里はそこを上がって来た所で、俺の姿を見つけたらしい。

「あ…あのさ、きちゃった」
良い大人がまるで少年のように言葉に詰まる。絵里はニコって微笑んで
「おそかったねぇ」
「え?」

「とりあえずそこに座ろう。ここじゃ暑いよ?」
指差したその先に、バス停があって、トタンで出来た日よけ?雨よけ?の
屋根つきベンチと、その横に海風のせいか?錆びた自動販売機が見える。

自動販売機でジュースを買い、絵里に手渡してベンチに腰掛けた。

「オレンジジュースで良いか?」
「ありがとう」

「散歩してたらね。音が聞こえたんだよ」
缶ジュースのセンを開けながら絵里が呟く。
「音?」

「そう、ゆうじのバイクの音。覚えてるもの」
「あぁ。マフラーの音か」

「しかし、すんげぇ田舎だなw」
「でしょ?w」

「あの…その…結婚、おめでとう」
「ありがとw」

「千春がさ、よろしくだって」
「あぁ、分かりましたって伝えといてw」

なんだろう。言葉が続かない。やがてお互い黙り込んでしまった。
最初の出会いも確かこんなだったな。絵里は次の言葉を待って
いる感じにも思えて。

「絵里…俺な?俺さ…」
「…」
絵里は優しく微笑みながら俺を見つめている。

「……ちゃんと、さよなら言ってない」
心とは違う言葉が口に出る。いや違うだろ俺。おい!どうした?
「…じゃあちゃんとさよなら言おうよ」

「おぉ……さよなら」
「はい、さようなら」
絵里はベンチを立つと、俺に振り向いて

「ゆうじ?あたしね。今幸せだよ?だからね。ゆうじもきっと幸せになるよ」
「……」

「遠い所まで来てくれて嬉しかった、もう十分だから。ね。」
「うん。…そうだな」
俺はベンチに腰掛けたまま俯き、そんな俺を見つめる絵里。

「あたし、もう行かなきゃ。ゆうじ?」
「うん?」

「えへへw元気でね」
「あぁ…俺も…ボチボチ行くわ」

「うん」

ヘルメットをかぶりバイクにまたがる。
「じゃあ…な」
にっこり微笑む絵里。そして俺のヘルメットに顔を近づける。

「…ゆうじ?…ゆうじはあたしの事…好き?」
「え?」

「あたしはねぇ……だいきらい」
「……」

バイクが走り出す。サイドミラー越しに小さくなる絵里の姿。
やっぱり笑顔で手を振ってくれていた。

走りながら、さっきのヘルメット越しに見た顔を思い出す。

最高に綺麗で、可愛い笑顔の絵里。

そして………流れる一筋の涙…。



エピローグ。

もう30代も後半。その後2人ほど女性とお付き合いさせてもらった
けれど、長続きせず。会社の業績も一時に比べるとあまり芳しく
ない、社内の人間関係もあまりよくなかった。あぁもう潮時かもな。

再婚も焦ってはなかったけど、望めないような気がして、これからも1人
だと思っていたし、そこそこ貯金もあったから、会社辞めて1人で北海道
でも行こうかなぁ?って考えていた。1人身ゆえの気楽さでね。

そんな感じだったから、しばらくバイクからも遠ざかってけれど、北海道
行きの準備の1つとして、バイクを購入。改めてメットやブーツ、グローブ
その他、色々買い揃えた。

ところが、たまたま友達同士の飲み会で、俺の隣に座った女性、由美と
知り合う事になる。俺より1つ年上で、年齢の割に童顔。パッと見たら
20代後半に見える。芸能人で言えば…そうだなぁ。奥二重で、女優の
多部未華子さんに似てなくもない。背も低く152センチと聞いた。

飲み会では、初対面の人ばかりだったそうで、余り喋らずにずっと1人
だったから、場の雰囲気を悪くするのもなぁって、こっちから色々話し
かけた。時々笑う、笑顔がなんか良いなぁって思えて、良かったらって
メアドと携帯番号を交換。

それから、ちょくちょくメールのやり取りをするようになって、ご飯や映画を
見に行く仲に。地味だけど素直だったし、彼女といると気持ちがなんか
安らいだ。結局こっちから交際を申し込んで付き合いだし、半年ほど
経過していた。


実は彼女も×1で、結婚をした物のなかなか子供が出来ず、その事で
義母から随分嫌味を言われていたらしい。良くある嫁&姑のいざこざか。

そんな折、元旦那が浮気。すったもんだの末、離婚。育ちの街に帰ってきた
そうな。その時の飲み会も、友人から気分転換に来たらって、誘われて
参加したそう。お互い×1同士だし、それなりに歳も食ってたから、気負わ
ずに気長に付き合おうって話しをしていて、交際は順調だった。

まぁその代わり北海道行きは延期状態。バイクは乗っていたが、街乗りで
余り遠くには行かなかった。


その日
俺の車で、由美の希望の観光地までドライブデート。春先で天気も良く
日差しは柔らかでポカポカ。車でどこかに行く分には持って来いの天気
だった。

「ゆうじ?ここはどう?ここついたらな、ご飯食べてね…」
なんて助手席で、由美は目的地のガイドブックを広げて、色々俺に話し
かけて楽しそうにしていた。車の運転中なんで俺は前を見ながら、「良いよ」
とか「そうだなぁ」とかあいづちを打ちつつ、前方の事故渋滞の案内が
目に入る。

「あちゃあ、由美この先込んでるっぽいよ?」
「えぇ〜あっちに着く時間なん時になるんやろう」

「まぁ俺たちみたいに、気長に行きましょうw」
「そうやねぇw」

「ねぇ?ゆうじ、今日家からな?掛けて欲しいアルバム有ったから持って
きてん。掛けてもいい?」
「いいよ、どうぞ、どうぞw」

「これ。掛けて?」
「ほい」
丁度信号待ちだったので、由美からアルバムを受け取る。そのアルバムは
モデルの若い女性が、逆光で露出オーバー気味に写っていて、全体に淡い
色使いの白いジャケット。スピッツ、フェイクファー。
俺の音楽の趣味はかなり偏っていて、洋楽ばっかりで邦楽は余り聴く事が
なかった。

スピッツはちゃんと聴いた事がなかったから、このアルバムが初めてだった。
再生が始まると、軽快なサウンドと、ボーカル草野正宗氏の透明感のある、
でも淡々と歌い上げるその歌い方に、今の季節とドライブデートに中々あうん
じゃないか?って感じた。

「ナイス選曲ですなぁw」
「そうやろぉww?」

やがて6曲目、「楓」。

不意に思い出したんだ。
小学校の校庭を走り回る、俺や千春。いがぐり頭の俊夫。高校生の頃、千春と
堤防の上でふざけあってもう少しで、海側に落ちそうになり、思わず抱き
しめた。俊夫と校舎の裏でタバコを吸い、千春に注意される俺。千春を初めて
抱いた日。初めてキスをした日。結婚式。俊夫との大喧嘩。千春を殴った様子。

そして絵里と出会い、初めて喋った駐輪場。2人で見た映画。喧嘩した日。
笑いあった日。バイクでのツーリングの様子。絵里とはじめて手を繋いだ様子。
秀さんとキスをしていた絵里。居なくなって、がらんどうになった絵里の部屋。


そして………最後に見た絵里の涙。


色んな、たくさんの思い出。

その気持ちが頭の中でいっぱいになった。いっぱいにいっぱいになって、なり
すぎて、涙であふれ出してしまった。

急に黙り込む俺を見て、由美が
「…どうしたの?」
「いや…なんか、…色々思い出しちゃって。ごめんごめんw」


由美は少し進み始めた車の中で、ぼそっと
「……絵里…さん?」
「え!」

思わず由美を見た。
「ゆうじ、あぶないやんw前見てw前w」

「ごめんな?前にお部屋掃除してたら、押入れからゆうじと絵里さんの写真盾
見つけてしまってん。盾の後ろに「絵里&俺」って書いてたから…」
「あ…ごめん。それ気が付かなかった…。今度捨てるから」

「良いよ。捨てんでも。大事な思い出やんか?」
「いや、由美に悪いから」

「ゆうじ?」
「うん?」

「ゆうじは…あたしの事…好き?」
「…え」
…なんかさぁ…。本当、何で今その言葉が…。いよいよ景色が見え辛くって
きっと、ぐしゃぐしゃの顔してたと思う。

「好き。好きに決まってるだろ?由美の事、好き…だから、俺の傍にずっと
…居てください。」
思えば、女性に自分の言葉で、そんな気持ちを伝えたのは初めてだった。
図らずもプロポーズか?これ?

「よかったぁ」
由美は心底安心したように、ホッとしたように、ゆっくりそう言って。
にっこり微笑んでいたと思う。それからバッグからハンカチを取り出すと
俺の顔の涙を拭いてくれて…

「あんなぁ?」
「うん」

「その…ね?」
「どした?」

「…赤ちゃん…出来たみたい」
「えぇ!!!」

「ゆうじぃ!危ないってww前、前!w」

どうやら俺のは強いらしい…。まだそんなに回数こなしてなかったんだがw
由美からはもしもって前提で、自分はきっと不妊症だから、結婚する事が
あっても子供は諦めて欲しいって聞かされていた。だから余計にびっくり。

とにもかくにも、それからはバタバタで、母に連絡し、相手側の義父母にも
挨拶。北海道行きの貯金は、そのまま結婚資金となりましたww

そして現在。
娘は今小学生。由美と娘、家族3人。俺はマンションの住宅ローンに追われ
ている日々w でも幸せです。

読み返すと恥ずかしい限りの文面ですが、当時からの日記を読み返し、写真
やビデオ映像。仕事で使っていたシステム手帳の書き残しを参考に、文章を
起こしました。台詞回しは本当は方言ですが、標準語にかえてます。由美は
関西人なんですが、彼女だけ関西弁のままで登場させてます。

最後に、ここまで読んでくださった皆様。誤字脱字、駄文に付き合っていただ
きありがとうございました。それでは失礼します。ノシ

出典:さえたスレ
リンク:さえたスレから独立
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