俺も妹とやっちゃったよ。2 (妹との体験談) 64841回

2005/11/11 19:39┃登録者:えっちな名無しさん◆rBQWtf4.┃作者:ホンダ
めっきり妹と接する機会が減った。 
朝は妹の顔を見ないうちに、朝ごはんもそこそこに食べずにさっさと出かけて 
昼は踊り場へ行かずに教室で食べて 
帰りも妹を無視して、帰る。 
夕食が済めばとっとと部屋に戻って、妹が入ってきてもずっと無表情。 
休みの前の日はどこかしらへ俺を誘いたがるけど、 
「お兄ちゃん、明日の土曜日さぁ、一緒に買い物に行・・・」 
「あ、明日俺用事あるから・・・」 
みたいな。 
そっけない態度。 そっけないあいづち。 
妹に対して笑顔を見せることは、なくなった。 
昔は、休みの日はいつも妹と遊んでいたのにね。

それでも俺は、あるすばらしい自己弁護を思いついた。 
妹にそっけない態度を取る理由・・・ 
「妹にはちゃんと学校に友達を作って欲しいから」これですよ。 
俺にそっけない態度を取られて悲しそうな顔をする妹に対して 
心の中では、谷底へ我が子を落とす何とかの気分。 泣いておるよ。 

最初は、早く元のように仲のいい兄妹に戻りたかったけど 
もはやだんだん、それが自然な感じになってきた。 
どーでもよくなってきた。 考えるのはめんどくさくなった。 
それなりに学校が楽しいからかな。

母が言う。 
「最近あんた、あやかとケンカでもしてるの?」 
「なんで?」 
「こないだまでなんてあやか、あんたの分のお弁当も早起きして作ってたくせに、 
 最近は一個しか作らないから・・・」 
「別に、ケンカしてないよ。」 
「よく休みの日は一緒に遊びにいってたじゃない。」 
「俺だって友達と遊びにいくっちゅーねん。」 
「・・・まぁ、仲よくしなさいよ。 最近あやか元気ないんだから。」 
「あ、うん。」 
ちなみに、この時明らかに母の方が元気がない顔をしていた。 
顔は前よりやせこけてきたし。 
まぁこれはこれで、後で人生最大の大変な事件になるんだけどね。

ある日、昼休みに購買へパンを買いにいった帰り、妹の後姿を見かけた。 
妹は例の屋上の踊り場へ向かっていた。 
俺はちょっと気になったけど、そのまま教室へ戻りお昼を食べた。 

お昼休みの終わりかけごろ、トイレへ向かったとき、 
ふと妹のことが気になった。 
なぜか気になった。 あいつは未だに踊り場でご飯を食べているのだろうか。 
俺は踊り場へむかって、こっそりとのぞいてみた。 

案の定、妹は一人で弁当を食べていた。  
しかも驚くくらい無表情で。 まぁ表情豊かな方がおかしいけど。 
それにしても後10分くらいで昼休み終わるというのに、まだ食い終わってないのか。 
そして未だにクラスに友達が出来ないのだろうか? 

出て行ってあげたかったけど、そのまま静かに教室へ逃げ帰った。

そのまま月日は流れて、12月22日。 
俺は真鍋と付き合いだした。 
きっかけは、妹と教室でモメたあの日から、 
よくしゃべるようになって、休みの日とかに二人で遊びに行くことも多くなってた。 
クリスマスはどう過ごす?的な話題になり、 
二人とも彼氏彼女がいないだのという流れになり、 
(夏休みにプールで一緒に来てた奴とは別れたらしい?) 
勢いで俺から「どうせなら」という枕詞と共に告白した。 
こういう振られても「あはは、冗談だよ」みたいな 
保険付きな告白しか出来ない俺。 かこわる。 
でもOKもらった後の俺のリアクションのでかさ、輪をかけてかっこわる。 

心のどこかで、妹をまだ好きだという感情は残ってたはず。 
「妹離れしなきゃ」ってことで勢いでの告白だったからね。

クリスマスイブ、真鍋と放課後一緒にスケートに出かけた。 
終業式だけだったからお昼にはもう終わっていた。 
その頃(5年前か)はまだいたるところに 
スケート場ってのがあったけど最近はめっきり見かけなくなったなぁ 
と思うのは俺だけ?後楽園のスケートリンクってまだあったっけ?てな感じ。 

電車で30分くらいのスケート場へ。 
俺は生まれたての子馬状態。真鍋は手すりにつかまってリハビリ中の患者状態。 
二人してどうしようもない感じ。 
スケートやろうと言い出したのは真鍋の方なのにどういうことだと。 
あまりに無様で30分後には半笑いでスケート靴の紐をほどく二人の姿があったそうな。 
その後二人で思いっきり笑ったけどね。 何しに来たんだろうって。 
真鍋はそれほど遊びなれしてないんだろうなって新鮮に思ったりもした。 
でマックでスケート靴吐いた後の余韻を楽しみ、 
ゲーセンとかアクセサリーだの靴だの売っている店でブラブラして 
セットで3000円くらいの祭りの出店で売っているような指輪買って 
コンビニで使い捨てカメラ買って 
夕方の公園でジャケット撮影してみたりしてた。 

この間、あまりにも楽しすぎて妹のことなんてまったく頭になかった 
ってのはウソで 
本当は妹のことばかり考えてた。 

ちょっと時間をさかのぼって、 

・・・・・・・

放課後になって、久しぶりに妹が教室にやってきた。 
席のところまで来られてはたまんないので、俺は即効妹のそばへ駆け寄った。 
「あのさ、お兄ちゃん・・」 
「何?」 
「今日さ、部活ないでしょ? その、一緒に帰らない?」 
「今日ちょっと用事あるから無理だよ。」 
「・・・どうしてもだめ?」 
「あ、うん。」 
いつもと違ってちょっと気が強い系だった妹。 
返事についどもってしまった。 
すぐそこへ真鍋が来て、 
「みずし、行くよ。」と俺の手を引っ張った。 
妹の顔をちょっとみて 
「あ、あやちゃん久しぶり。元気?」 
と話しかけたけど、妹は悲しそうな顔でもごもご返事をしただけだった。 
「じゃあね、あやちゃん。」 
と、俺を引っ張って行く真鍋。 俺はちょっと妹の方を振り返って 
そのまま真鍋に引きづられる格好で昇降口へ向かった。 

あの時の妹の表情。 

スケートしてるときも、マックでポテトをモグモグやってるときも 
あの表情が頭から離れなかった。 
それにしても何か大切なこと忘れているような。 

夜もだんだん遅くになってきて、 
「明日から冬休みだから帰らなくてもいいよね?」って聞いた。 
「オッケ〜で〜す」との返事。 
本当は家には帰りたくないから聞いただけ。 
なんとなく家には帰りづらい。妹がいるから。 
「今夜は帰さないぜ」なんてセリフだって言えてしまいそうなくらい。 

真鍋がPHSでなにやら家に電話をかけ終わった後、またデートを再開した。 
でも、やっぱり俺はずっと妹の表情が浮かんだまま。 
「なんか楽しくなさそう。」 
「そんなことないよ?」 
「心配事?」 
「別に。」 
「あやちゃんのこととか?」 
「ち、違うよ。」 
「そういえば今日の帰り際、何話してたの?」 
「別になんでもないよ。」 
「ふーん、・・・、そういえばみずしってあやちゃんと付き合ってたんだよね?」 
「付き合ってたって、・・、アレは元はといえばオマエが広めたんじゃないか。」 
「でも学校でチューしてたことは本当だもんね。」 
「・・・まぁ、そうだけど。」 
「・・・やっぱり、今日は帰ろうか?」 
「え、何でだよ?もっといようよ。」 
「帰る。」 
「・・・・。」

俺はそれ以上何も言えなくなって、結局そのまま帰った。 
帰り際、何もしないんじゃカッコ悪いと思って、帰り道の別れ際に 
人気ないところを見計らってチューしたけど、普通にそのまま 
「じゃあね」って言って帰られた。 
おいおい、もっとなんかこう、ギューっとこう、なんか、ないの? 
高校2年生なのに、チューだけで終わらせていいのかよ? 
お兄さんガッカリよ。やれやれ。 
とはいうものの、実際は顔すごく真っ赤で 
どうせそれ以上はできなかったであろう俺。かわいい。 

時計を見たら9時半。 
まだ妹は起きてるだろうなと思って、コンビニで立ち読みして、 
ぶらぶら歩いて、時間を潰した。 
まだ11時。 
まだまだ帰れない。公園に行った。カップルがベンチで盛り上がっていた。 
無償に悲しくなり、家に帰る決心がつく。 

そーっと家のドアを開けて、そーっと階段を登り 
そーっと部屋のドアを開けて、そーっと閉める。 
そしてジャージに着替えた後、とっとと布団をかぶって寝ようとした。

やっぱり妹は起きていて、そして帰ってきたことに気づかれた。 
妹の部屋のドアが開いた音を聞いたとき、もはや俺は諦めた。 
布団に入りかけのところで妹が部屋に入ってきた。 
ちなみに我が家では部屋に入るときのノックの習慣はなかったので 
オナニーするにも一苦労だった。 
実際父親に半ケツ見られたし。 
そのときの親父のセリフ、「すまんすまん」だってよ。 
同じ男だったからまだよかったけど、母親や妹に見られていたらもっと悲惨だったな。 

話を戻してと、妹がなんか紙袋もっていた。 
「お兄ちゃん、コレ。」 
「何これ?」 
「クリスマスプレゼント。」 

そこで思い出した。 
クリスマスにはプレゼント交換しようねって約束したことがあったんだって。 
まだ俺と妹が踊り場で弁当を食べていた頃。 
口移しでいちごオレ飲ますのがだんだん上手くなってきた頃。 
なんでコイツ覚えているんだ。 
しかも絶対決行の約束ではなかったはずなのに・・・

「あ、ありがとう・・・・」 
かなり痛い顔で受け取る俺。  
「ごめん、俺、プレゼント、買うの忘れた・・・」 
申し訳なさそうに、でも無表情で、俺が言うと 
「別にいいよ。私が覚えてただけだから。」 
つとめて明るく振舞う妹。 

すっげー、妹がかわいそうになってくるのと同時に 
自己険悪の猛吹雪が俺の中を吹き荒らしていた。 

「俺もなんか買って来てあげるから。」 
「・・・、じゃあ、明日、・・・一緒に買いに行かない?」

「え、明日?」 
「・・・ダメかな?」 
「・・・いいよ、別に。」 
「本当?!」 
「あ、うん。」 
「絶対だよ!絶対だからね!」 
「わ、わかった。」 
「ふふふ、やった・・・」 
久しぶりに妹の笑顔を見た。 
ちょっと俺、どうしていいかわからなかった。 
どうして今まで妹を避けていたんだろうか。 


でも、その後はまたそっけなく、妹を追い出した。 
もう寝るからとかいって。 
だっていままで散々冷たくしておいて急にやさしくなるのも変だから。 
妹が仕方なしに部屋から出て行った。 
出て行く間際「絶対だからね!約束だよ!」って念を押した。 
「わかったわかった」といいながら俺はドアを閉めた。

後で気づいた。 もらったプレゼントあけていなかった。 
中身はTシャツだった。 
まぁバイトをしていない高校一年生のこずかいで買える物らしかった。 
まさか明日はこれを着て出かけるのか俺? 


次の日、朝早く妹が起こしに来た。 
「お兄ちゃん!朝だよ、起きて!」 
目覚まし時計は9時。 良い子はまだ寝ている時間。 
超目覚めが悪かった俺は仕方なしにベットからなだれ落ちた。 
「ご飯作ったよ!朝ごはん!」 
「あやが?」 
「お父さんとお母さん、また出かけちゃったから。 
 でも夕食までには帰ってくるって。」 
「ふ〜ん」 
最近、両親は家を空けることが多い。  
この時はまだ深く考えていなかった。

顔洗って、もらったTシャツに着替えて、 
ちょっと恥ずかしそうに俺は 
「あ、これ、ありがとね。」と言うと妹、 
「ふふ」とか笑っちゃいながら 
「すごく似合ってるよ。」って満面の笑みで、俺のシャツのすそをひらひらさせた。 

リビングには朝ごはんが用意されていた。 
目玉焼きと塩焼き玉子が、どう考えてもカブッていたけど 
和食という点では評価できた。 
なにより、ちゃんといちごオレが用意されていたのにはかなりヤラれた。 
コンビニ行って買ってきたんだろうか、かわいい奴。 調子が狂うね。 

「今日はどこへ行く?」 
「・・・あまり考えてない。」 
「別にプレゼントのこととか、気にしなくても、いいよ。」 
「いや、あのな、プレゼント買いに行くんじゃないか。」 
「そうだけど・・」 
「何が欲しい?」 
「何でもいいよ!」 
「何でもいいならチロルチョコでもいいんだな?」 
「それでもいいよ!」 
「・・・」 
冗談で言ったことをストレートに受け止められるとすごくつらい。 
あとは無言でご飯を食べていた。 
妹はずっとニコニコしていた。

ご飯をだいたい食べ終わった頃、家の電話が鳴った。 
妹が出る。 

「お兄ちゃん、まなべさんてひとから電話・・」 

「みずしぃーーー?おはよーーーー!」 
受話器を受け取る前から、やけにテンションの高い声が響いた。 
外からかけているらしい。 
「あ、おはよう。何?」 
「今日ヒマ?」 
「あ、今日は、これからちょっと・・・」 
そばには妹が心配そうにこっちを見ている。 
「何?どっか出かけるの?」 
「あ、うん。」 
「もしかして・・・あやちゃんと?」 
「あ、いや、うん。」 
「・・・、ちょっとだけ話したいことあるんだけどな。」 
「何?」 
「ちょっとだけだから、今からみずしんち行ってもいい?」 
「え、今から?」 
「つーか実は結構近くまで来てるよ」 
「え?マジで?」 
「ちょっとだけ話するだけだから。ね?」 
「う、うん。」 
「じゃ、あと10分くらいで〜。ばいばい〜」

受話器を置いて横をみると、妹はやっぱり不安げな顔してる。 
「どうした、あや?」 
「何でもない・・・」 
なんか俺のTシャツのすそを掴んで離さない。 
そのまま、食べ終わった食器を流しへ運んで 
一緒に洗い物をしていた。 
「これ片付いたら、でかけようね。」 
妹が言う。 
だけど、真鍋も来る、らしい。 
俺はなんて言って良いかわからなかった。 

そうこうしているうちに、玄関のチャイムが鳴った。 
俺は玄関のドアスコープをのぞいた。 来た。 

ドアを開けると、まぶしいくらいの笑顔で真鍋が立っていた。 
「お〜っす!」 
「ああ。おはよう。」 

妹が玄関までやってきた。 
「あやちゃん、おはよう!」真鍋が声をかける。 
やっぱり妹は、人見知り丸出しで挨拶を返す。 
「ちょっとお兄ちゃん借りるね。 ちょっとみずし、ちょっと。」 
「何? 話ってここじゃダメなん?」 
「まー、いいからいいからー。」 
真鍋は強引に俺を外へ連れ出した。 

で、そのまま俺をひきづったままテクテク歩いていく。 
「どこまで行くんだ?そして話ってなんだ?」 
「あー、えーっとねー、あれだ、あれ。」 
「何さ?」 
「どっか遊びに行かない?ってこと。」 
「え?これから?」 
「そう。」 
「いや、だってちょっとだけの話じゃなかったの?」 
「冗談っすよ、冗談。」 
「俺これから、出かける用事があったんだけど・・・」 
「あやちゃんと?」 
「・・・そうだよ。」 
「何しに?デート?」 
「いや、そのクリスマスプレゼント、俺だけもらってあげてないから、 
 それを買いに行くんだよ。 一緒に。」 
「一緒に行く必要ないじゃん。」 
「まぁそりゃそうだけど・・・」

「で、あやちゃんには何もらったの?」 
「これ。」 
今着ているTシャツを引っ張った。 
「これかー、あやちゃんけっこういいセンスしてんだね。」 
「うん。」 
「お兄さん思いだね。あやちゃん。」 
「・・・うん。」 
「っていうか付き合ってたんだものね。」 
「・・・・」 
「今でも付きあってたりして。」 
「そんなわけないだろ。」 
「あーあー、あたし二股かけられちゃってんのかー・・・あーあ。」 
「付き合ってないって。」

「うそうそ、ごめんね。デートなのに邪魔しちゃって。」 
「デートじゃ・・」 
「じゃあ、帰るわ。 またね。」 
そういって真鍋は帰ろうとした。 
俺はずっと黙っていた。 


「兄妹にはかなわないしね。」 


ついとっさに、真鍋の腕を掴んだ。 
「待てよ。 やっぱ予定変更。」 
「え?」 
「遊びに行こう。これから。」 
「あやちゃんは?」 
「ちょっとここで待ってて。」

俺はダッシュで家に戻った。 
(よくよく考えたら、プレゼント買いに行くのに一緒に行く必要なんてないんだ。) 
(よくよく考えたら、俺は今は、真鍋と付き合っているんだ。) 
(よくよく考えたら、血が繋がっていないとはいえあやは妹なんだ。) 
(よくよく考えたら、妹と付き合うってのはおかしいんだ。) 
(よくよく考えたら、お風呂一緒に入ったり、) 
(よくよく考えたら、キスしたり) 
(よくよく考えたら、いちごオレ口移しで飲ませたり) 
(よくよく考えたら、エッチしたり) 
(よくよく考えたら、ゴムつける時手伝わせたり) 

そんなことばっか必死に考えてた。 

家に帰ってくると、妹は玄関で待っていた。 
「遅かったね。はやく行こう!」 
目をキラキラ輝かせていた。 

「ごめん・・!」 

・・・・・ 
この間省略 
・・・・・ 


俺はダッシュでまた、真鍋の元へ戻っていった。

そのまま真鍋と出かけた。 
昨日一緒に遊んだばかりなのに、またいろいろな所へ行った。 

「はっきりいって、俺もうお金ないよ?」 
「いいよ、あたしがおごったげる。」 
「お前金もってるの?」 
「あ、え〜と、ガストでバイトしてるもん。 みずしもバイトしたら?」 
「部活やってるとなぁ、なかなか時間もないし。」 
「どうせ補欠でしょ?あはは。」 
「ほっといてください。 これでも俺、楽しんでるんだから。」 
「部活とかしてたらそんなに遊べないじゃん。」 
「ん、まあね。」 
「バイトしてピッチ買いなよ。結構みんな持ってるんだから。」 
「電話なんて持ってても別につかわないよ。」 
「あたしが毎日電話かけたげるからさぁ。」 
「ははは、それウザい。」 
「んだと?」 
・・・・・ 

・・・・・ 

昨日とまったく同じだ。 妹の顔が頭から離れない。 
しかも今日のは、泣き顔だからなぁ・・・ 
でも俺は決心した。 もういい。 
普通の高校生活を送らなきゃ。 これからだって。

ショッピングモールをぶらぶら歩いている途中で 
ちょっとトイレへ行ってくるとウソをついて、 
さっきちらっとアクセサリー屋の、ちょっと自己中的なアートをした 
皮のちっちゃい腕輪を買った。 
これが俺の精一杯。 
妹へのプレゼント用にキープしておいたなけなしのお金。 
それをポケットにしまって、また真鍋の元へもどった。 


さらに夕方前、昨日撮った使い捨てカメラを預けたカメラ屋へ行った。 
現像代は真鍋に出してもらって写真を受け取る。 
滑り台の登るところにぶら下がってたり、 
ブランコ立ち漕ぎしてる所を妙なアングルのポーズでキメてたり 
近くのオバサンに取ってもらった二人で肩組んでいる写真とか 
しばらくベンチに座って一緒に眺めていた。 
そしてしばらくしゃべってた。 

背伸びしながら言ってみた。。 
「こうしてしゃべってるだけなら金使わずに済むな。」

でも実際、こういう風に何もせずにまったりと過ごしてると 
どうしても妹のことを考えてしまう。 
考えるな考えるなと、今朝の決心で壁の落書きを塗りつぶしても、 
またすぐ上から新しい落書きが書かれる。 
上書き上書きで、俺の心はもういっぱいいっぱい。 
こんぺいのカバンほどの若干の余裕が欲しかった。 

不意に真鍋が言う。 
「じゃあ、ウチくる?」 
「お前んち?」 
「今日ウチ誰もいないんだよね。」 
かなりドキドキした。 
つーか、ビビった。 
ここでセリフをかんだらすっごくカッコ悪いんだろうな。 
それでもあたふた感をカモフラージュするために 
「何?それはヤらせてくれるってこと?」 
とかわざと言ってみた。  
からかわれているのかとも思ったし。 
「バカ。」 
と、ちょっとまんざらでもない反応をしたから、 
ちょっと面白かった。 
「よし、行くか?行こう。」 
「いっとくけど、やるとかやらないとか、無しだからね。」

真鍋が住んでいるマンションに着いた。 
本当にだれもいなかった。 
部屋に通されて、俺はちょっと落ち着かなかった。 
初めてくるところで、こういうちょっと狭い空間は苦手だった。 
部屋の中まで息が白くて真鍋がファンヒーターのスイッチを入れる。 
暑苦しい日にこの部分を書いていても、いまいち当時のアレが 
回想しにくいけど、その日はかなり寒かった。 
この辺で一応確認しておくけど、この場面、5年前の12月25日ね。 

なぜか真鍋はぷよぷよを持っていた(ゲームのね) 
俺が持ってるのと同じやつ。 
二人して並んでやってると、やっぱりあの頃を思い出す。 
妹と初めて一緒に眠った夜。 
でも真鍋は妹と違って、弱くなかった。強くは無いけど弱くは無い。 
真鍋を負かしても「あ〜〜、みずし、ずるい〜〜」とは言ってくれない。 
無性に申し訳なくならない。 
そんなことよりも、俺のすぐ横にいる2つのぷよぷよをどうにかして欲しかった。 
なんて思わなかった。 
横から見たら、上着と胸元の間にできた空間から見えるんだよ。 生プヨプヨが。 
別にどうってことはなかった。

「のどかわかない?なんか飲み物とってくる。」 
と言って、真鍋は台所へ・・・ 
そんなチャンスに俺はタンスの中のパンツをあさる気力も無く、ちょっとぐったりしていた。 
今ごろ妹は、一人家で何をしているんだろう。と考えて、その1秒後には 
妹のことなんて考えんなボケが。と自分自身に説教かます。  
独り言ブツブツ言ってるみたいで、はたからみたらそうとうキモい姿だったかもしれない。 

真鍋が持ってきたのは、カフェオレだった。グリコの。 
いちごオレではない。 
「いちごオレないの?」ってつい聞いてしまった。超失礼な奴。 
「え?ないよ?これでガマンしな。」 
で一緒にテレビ見ながらだらだらしていた。 
俺がうかない顔をしていると 
「さっきからあやちゃんのことばっか考えるでしょ?」って聞かれた。 
全身ジーンってくる感じのショックを感じて 
「んなことないよ。」ってカミカミで答えた。 
「知ってるんだよ。」 
「何が?」

真鍋はニッコリしながら続けた。 
「ポケットの中かな?」 
「え?」 
「プレゼント、何買ったの?」 
「あ、いや・・」 
「なにもさぁ、トイレ行く振りして隠れて買うことないのに。」 
「・・・」 
「どうして隠すの?」 
「・・・なんとなく。」 
「・・・・」 

次の瞬間いきなり抱きつかれた。 
でそのままキスをかわした。 
なにを考えてたのかは忘れたけど、この時思いっきり頭の中で 
真鍋と妹を重ね合わせてしまった。 
でも、うまくマッチしてくれない。どうしてだろう。 
そして何でマッチしてくれないからってイライラしてくるんだろう。 
なんでだろう。 

勢いに任せて俺は真鍋の胸をまさぐった。 
ちょっと唇を離して見つめ合ってた。  
どうしても妹の顔にぴったりとしっくりこない。 
ジャックも首を傾げ気味。 あなたそれ、左曲がりなだけです。

「うちの親、8時ごろになったら帰ってきちゃうよ。」 
時計を見ると7時。 
「たっぷり時間はあるじゃん。」 
「うん。」 
そのままお互い体をまさぐりあって 
唇だけじゃなく舌の先っぽにもキスを。 
首筋にもキスを。 
服の上から胸元にもキスを。 
ばんざいさせて服を脱がした後もキスを。 

ヒーターがいらなくなる位に体を密着させて、鼻の頭をこすりつけあった。 
「ファンヒーター、消そうか?」 
「うん。暖かくなってきたし。」 
「みずし、ちょっとおでこ汗ばんできてるよ。」 
「お前もな。」 

そして真鍋の体を起こしてベットの上に上がり 
服の脱がせあいになった。 
さすがにちょっと寒かったので布団をかぶる。 

シチュエーションは妹の時とちょっと似てる。 
もっと再現させるために電気を消してみた。 
窓の外の明かりでうっすらとわかる真鍋の表情を必死になって 
妹とすり替えようとしていた。 
ダメだった。 
じっと見つめていたので 
「そんなに見るな。恥ずかしいでしょ。」 
とキスされつつ怒られた。 
いいかげん妹にリプレースするのはやめれって何度も諦めようとしたけど・・・

胸に唇をはわせて、そのままへそまでゆっくり降りて行って 
右手を伸ばして髪の毛をなでつつ、足の付け根の所まで俺の唇がたどり着く。 
真鍋は特に恥ずかしがってくれなかった。 
物足りない感に激しく襲われる。 
そのままもう一生懸命やみくもに舌をいれる。 
それはもう、いかにもホットドックプレス熟読して来ましたって感じの一生懸命さ。 
「んーーーー、ちょ、ちょっとそれ、んーーーー、んん・・・」 
って普段とは違った、困った感じの声を出す真鍋。 
気持ちいいのか、気持ちよくないのか、どうでも良かった。 
お互いの荒い息遣いだけが響く部屋の中で 
汗が混じって一つになってた。 
真鍋が体を起こしてきて、 
「みずしばっかずるいよ・・」とか言いながら 
真鍋も俺の乳首に舌を当ててきた。 
なんか慣れてる感じ。  
くすぐったいだけで特に感動はなかった。  
さすがにすごく照れ笑いしながら 
俺のあそこまでに唇をはわす真鍋。 
単純に気持ちよかったけど、やっぱり特に感動はなかった。 
だんだん冷静になってきて、ゴムを持っていないことに気づいた。 
それを告げると 
「平気だよ、今日あたし大丈夫な日だから。 多分・・」 
だと。 
「多分じゃ困るだろ。」 
「でも、ここまできて、やめる?」 
「・・・・無理。」

深く長く舌を絡ませながら、 
お互い足を広げた体育すわりの状態でひとつになった。 
真鍋は呼吸困難になってるような、苦しげな声を出してた。 
俺は自分のことだけ考えて、動かしまくった。 

そしてジャックの6度目の挑戦は、約20分後、静かに幕を閉じた。 
白い血を大量に流して倒れるジャック。 

しばらく無言で抱き合ってたけど、玄関で真鍋の親が帰ってきた音がして 
あわてて服を着た。 
消防士もビックリのスピードでそりゃもう即効で。 

真鍋はパンツとTシャツとスウェットの下だけをさっさと身に着けると 
玄関へ向かった。 
どうやらいっぱい買い物をしてきたようで、荷物いっぱいで玄関から上がるのに 
てこずっている様子。 おかげで助かった。 

帰り際、真鍋の親父にすっげぇ睨まれた。もう本当に申し訳ございません。 
そして家へ向かった。 

昨日とは違って、何故か今日は早く家に帰りたい気持ちだった。 
何故か今、むしょうに妹の顔が見たかった。 

今朝の決心はどこへやら。 
この気持ち、なんでだろう。 

家に帰ると、ウチの両親はまだ帰っていなかった。 
なのに家中の電気がついている。 
リビングのテレビもつけっぱなし。トイレもお風呂場も。 

家全体が明るかった。 

2階に上がると妹の部屋から、いつもより大きめのテレビの音。 
「あや〜?」 
と部屋のドアを開けると、妹は行儀よく座ってテレビを見ていた。 
「何?」 
「あ、あのさ、今日はゴメンね。」 
「・・・別にいいよ。」 
よく見ると、妹の目、まだ真っ赤。 
「・・・あ、なんで家中、電気つけてんの?」 
「怖いから。」 
「あ、あ、そうか。そうか。」 
「・・・・」 
「あ、そうだ、これ。ほら。クリスマスプレゼント。」 
俺はポケットから包みを取り出して妹に見せた。 

妹はまた悲しそうな顔をして 
「・・・・いらない。」 
といって、またテレビの方に顔を向けた。 
・・・・・。

「え?なんでだよ。」 
「いらないったらいらない。 別にいいよ。」 
「せっかく買ってきたのに。」 
「いらな・・・い・・・」 
突然妹は、顔をくずして涙をぽろぽろこぼし始めた。 
グズッって音を鳴らして、必死にテレビを見るために目を開けていようとする妹。 
「・・・あや、だからゴメンって。」 
「・・い・・らない。」 
「・・じゃあ、これ、ここに置いておくよ。」 
腕輪の包みをテーブルの上において、部屋を出ようとした。 
「いらない」 
妹はそればっか言ってる。涙が止まらない。 

もう見ていられなくて、そのまま自分の部屋に戻った。 


冬休み中は、部活いったり真鍋と遊んだりとで 
妹の顔はほとんど見なかった。 
大晦日も真鍋と過ごして、お正月は昼まで寝ていた。 
けっこう楽しいイベントを過ごしていたのに、心にあいた、ぽっかりホール。 
これでよかった。 よかったと思い込もう。

1月4日の夜。 母に呼ばれて、俺だけリビングに行った。 
父と母が俺の前にならんで腰掛けて、なんか面接を受けているようなポジション。 
何故か、他愛の無い雑談からスタートした。 
最近どう?なんて聞かれても、つい3日前に新年の挨拶したばかりじゃねーか。 
あと、あやかが最近元気がないことを心配された。 
心当たりありまくりの俺は、必死にとぼけておいた。 

父が口を開く。 

「とりあえず、まずはお前にだけ伝えておこうと思うんだけど・・・」 
「何?」 

「父さんの事務所な、最近景気が悪くて、・・・、その、潰れてしまうんだ。」 
「えっ。」 
父さんと倒産をかけたダジャレかな?と、必死に現実逃避を図った。

母が言う。 
「私達ね、なんとかお金を作ろうと頑張ったんだけど、やっぱりダメだったの。」 
最近二人とも家を空けることが多かったのは、金策にでも走っていたのだろうか? 
詳しい事はそれ以上聞いていない。っていうか聞きたくなかった。 

「それで、・・・、これは母さんともじっくり話し合った結果なんだけど・・・」 
「・・・」 
「父さんたち、・・・・、離婚、することに・・」 

言葉が出なかった。 

「何で? 何で?」 
「話し合った結果なんだ。」 
「え? 父さんの事務所がつぶれて、借金が出来て、・・・・、なんでそれで離婚? 
 意味わかんないんだけど? 何で?」 

母は涙目になりつつ、ぐっと堪えて、静かに言った。 
「借金のせいだけじゃないのよ・・・」 
すると父は声を荒げて、 
「英子、それ以上はたかひろに言う事じゃないだろ!」 

部屋の中が、一気に凍りついた。 

「あ、あのさ、・・・、俺お年玉返すよ・・・だから・・・」 
ショックのあまり俺は本気でバカなことを言った。 
自分でも何言ってるかわかってない。 
父はあきれて、 
「それはとっとけ、お前のこずかいだから。」 
と静かに言った。

またしばらく無言が続いた。 
俺は聞いてみた。 
「じゃあ、この家はどうなるの?」 

父が答える。 
「この家は売りにだす。 もっと安いアパートとか借りるだろうな。」 

「俺やあやかはどうなるの?」 
父は、静かに答える。 
「お前は俺と暮らす。 あやかは・・・、英子が引き取る。」 



・・・・・ 

1999年の初め。 ソファーに体を預けたまま、俺はボーゼンとしていた。

冬休み明け。 
センター試験までもう何日も無いって時、俺はそれどころではなかった。 
両親からあんな告白を受けたあとだから。 
父は 
「お金のことは心配しなくていいから、お前は大学受験だけに専念しろ。」 
なんて言っていたけど、そんなことは問題じゃないんだって。 
もう受験のことよりも、妹と離ればなれになるという事で 
頭がいっぱいいっぱい。 

予定では、2月の頭にごろに引越しをするらしい。 
俺と父は父の知人が経営している近くのアパートへ移るだけなので 
俺は高校を転校しなくてすむが、妹達は母の実家近くへ帰るとのこと。 
簡単に会える距離ではない。 

妹は、クリスマス以来一言も口を利いてくれないし、ろくに顔もあわせてくれない。 
はっきり言って以前よりも数段と元気がない様子だから 
両親も離婚することを言えないままだった。 
俺もしばらくは妹には言わないほうがいいと言っておいたし。

思い切って真鍋に言ってみた。 
両親が離婚すること。 
それによって家族がバラバラになること。 
単なる、「そういえばウチさぁ・・・」で始まる「雑談」のような感じで言ってみたんだけど 
俺にとっては「相談」のような気持ちでこのことを話してみた。 
妹と離れ離れになることを嫌がっている気持ちは抑えて話したのに、 
「何?あやちゃんと離ればなれになるのがいやなんだ?」 
なんて俺の心をズバっと言い当ててくる。 
「いや、別にそういうわけじゃないけどさ。」 
「無理しなくてもいいよ。」 
「無理してないよ。 ただそういう家族のトラブルでちょっとまいってるだけだよ。」 
「兄妹として、離ればなれになるのがいやだっていうならあたしは別にかまわない。」 
「え?」 
「でもさ、もし、それとは、また別なアレで、みずしがブルーになってるのなら・・・」 
「別なアレって・・」 
「・・・あ、なんでもない、忘れて。」 
「別にアレも何も無いよ。」 
「・・・で、みずしは・・どこかへ引っ越すの?」 
「ああ、家を引っ越すことは引っ越すけど、学校は転校しないよ。結構近所だし。」 
「よかった。」 
「よくないよ。」 
「あたしはよかったって思ったけど?」 
「・・・うん。」 
「大変だけど、これから受験とかあるんだし、がんばってこーよ! 
 家庭の事情とかにあたしが何か言えるわけじゃないけどさ。」 
「うん。受験とかどうでもいいんだけどね。」 
「ウチラのレベルじゃあ、たいした所いけそーもないよね。あはは。」 

真鍋に話してちょっと気が楽になったのか、 
俺は調子に乗ってクラスの友達らにもしゃべった。 
(父の事務所が潰れたことまでは、 
 しょーもない同情とかさせたくなかったので友達にも真鍋にも言わなかったけど。) 
「じゃあ、愛しい妹ともお別れなのか。かなしーな、お兄さん。」 
「あれからあやちゃんとお昼一緒に食べないね。」 
「そういえば、妹さんとは別れたんだっけ?」 
「最後くらい仲直りしときなよう。」 
・・・なぜか妹ネタの流れになってしまった。当然といえば当然か。 

そんな会話の途中、真鍋が俺のところにやってきて 
「みずし、明後日の土曜日さぁ、用事ある?」 
とか言ってきた。 
「え?なんもないけど?」 
「いい店みっけたんだよね。つーか図書館なんだけど。勉強やるよ。」 
「店て・・おいおい。」 
「そろそろちゃんと勉強しないと一緒の大学は入れないでしょ?」 
それを聞いて、周りは 
「え?真鍋とみずしって付き合ってんの?」 
とかざわめく。 気づいてなかったのか? 
といっても付き合いだしたのクリスマス前からだから、まだ知らんかったか。 
真鍋は 
「あ、ごめん、うちら超ラブラブだから。」と高々と宣言する始末。 
「こんなところで何言ってんだよ、こっ恥ずかしい・・・」と真鍋を軽く睨む俺。 
すると流れは一気に妹vs真鍋な感じになった。 
「妹と二股かけてんのか?」 
「バトルってますね〜」 
「ガチンコだったら『一体どうなってしまうのか〜』ってナレーション入るな。絶対。」 
「おい、みずし、とりあえずアゴを中心に5〜6発殴らせてくれ。」 
「あ、俺も。」 
さっきまで妹と別れたって言ってたじゃねーか。 
また俺アゴのあたりを殴られるのかよ。 
真鍋のバカも何も公表することないのに、はぁ。

その日の夜。 
やっぱり学校帰りから部屋から一歩も出てこない妹。 
友達に言われた「最後くらい仲直りしときなよう。」の一言を思い出す。 
別にケンカしてるわけじゃないけど、 
今の妹は、明らかに向こうから俺を避けている感じ。 
もうすぐ会えなくなるってこともあって、俺は相当あせりみたいなものを感じていた。 
家族みんなで食事することも、最近はない。 
俺と妹は別々に降りてきて、母に夕食を作ってと言って、簡単なものを食べる。 
そんな感じ。 家族全体でのコミュニケーションはほとんどない。 
自分の部屋に戻って、テレビつけるのも面倒で、 
そのままベットに倒れこんで天井を眺めていた。 
俺にとって、妹とは・・・・ 

土曜日、真鍋と一緒に下校。 
「ここ、ここ。図書館。」 
「・・・」 
真鍋んちだった。 
「はー、いい店だな、オイ。」 
「でしょ。ふふふ。」 
「つーか、勉強に身がはいらないかもな。」 
「いっとくけど、今日はお母さんがちゃんといるからね。」 
「なんだ、つまんねー。」 
「勉強しに来たんでしょ?」

そのまま冬の昼下がり、真鍋の部屋で一緒に黙々と勉強を・・・ 
と思ったけど、真鍋の母親がいちいちお茶やお菓子や 
なんやかんやと俺を見に来て、ちょとうっとおしかった。 そういうもんなのかね。 
しばらくは大人しく勉強していた。 
時々休憩して、雑談して、いいムード?になりそうなところで 
真鍋の母親が入ってくる。 いいタイミングじゃねぇか。 

夕方ころ。冬だからもう外は真っ暗。 
真鍋の母親が 
「ちょっとお母さんでかけてくるから。2時間く〜ら〜い〜。うふふ。」 
なんてわざわざ報告しに来てくれるのには、まいった。 
まるで男女ふたりの宿泊客の男の方に、そっとコンドーム渡す仲居さんのようだ。 
うーん、この母ちゃんとは仲良くやっていけそうな気がする。 

その間、何気にイチャイチャしだしてきて勉強どころではなくなった。 
「なんだかんだ言ってもさ、みずしが転校しなくていいからよかったよ。」 
「うん。こんな時期に手続きとか面倒だしね。」 
「・・手続きとかじゃなくてさ。」 
「あ・・うん。」 

そのままのムードでいつのまにか、 
やわらかい胸の感触とやわらかい舌の感触を同時に感じていた。 

でも一言、余計な一言。 
本当に何気なく言ったつもりの、間違った方向の一言が・・・ 
「あやかは転校しちゃうんだけどね。 あいつはまだ高2だから・・」

その次の瞬間、真鍋はすぐに体を離してうつむいてしまった。 
俺は、しまったって思った。余計な事を・・・って。 

「・・・。 ・・・あやちゃんも大変だね。」 
「あ、うん。」 
「みずし、心配?」 
「あやかの事?」 
「うん、心配?」 
「そりゃ、心配だよ。」 
「・・・」 
「あ、いや、兄としてね。」 
「本当に?」 
「うん。」 
「・・・一応さ、まだ気にしてんだよね。」 
「何が?」 
「みずしとあやちゃんのこと。」 
「何を気にすることあんの?」 
「・・その、まだ、みずしはあやちゃんのことが・・・」 
「えっ?」 
「好きなんじゃないかなー?とか」 
「・・・」 
「そんなこと、ないよね?」 
「・・・」

部屋の中が急に涼しくなった。気がする。 
動揺を隠し切れない俺。 
ここで、「うん」って一言言えたら、それで済んでいたのに。 
真鍋の、これまでとは違った真剣な表情に、つい即答が出来なかった。 
だってまだ自分でも分かっていないもの。 
優柔不断で、臆病で、そういう好きとか嫌いとかの気持ちに 
はっきり答えを出したくなかっただけだからかもしれないけど、 
それすらも分かっていないもの。 

「なんで黙ってんの?」 
「・・あ、うん。うん。」 
「何、いまの間は?」 
「そんなことないって!なわけないって!勘弁してよ!」 
「・・・。」 
「だって、あいつは妹なわけだし。」 
「妹だから?」 
「え?」 
「みずしにとって、あやちゃんは妹だから、そういうことはないんだよね?」 
「妹だから・・・」 
「そういうんじゃないんだよね?」 
「・・・えーっと」 
「・・・」 
「わかんない。 どうなんだろう・・」 
「何それ。」 
「・・・あ、あ〜、うん。ごめん。俺は、・・・・。」 
「・・・」 
「ん〜っと・・・」 
「あ〜、じゃあ分かった。みずし難しく考えすぎ。こうしよう。」 
「え、何。」 
「みずしは・・」 
「・・・」 

「誰が好きなの?」

窓の外の夜空には月。 
静まり返った部屋。 
真鍋はじっと下を向いたまま。 

「あ、あのさ・・・」 
俺が声をかけようとしたら、真鍋は顔を上げてすぐこっちを見つめてきた。 
「つーか、そっちから告っといて、ずるくない?そういうの」 
「えっ」 
「なんか覚めちゃった。あ〜あ・・・」 
「・・・ごめん。」 
「もういいよ。 みずしの好きなようにすれば?」 
「・・・あ・・う・・」 
「あー、あたしよく考えたらすごい恥ずかしいこと言ってた?」 
「・・・」 
「うああぁぁぁなんか、すっごく恥ずかしくなってきたんだけど・・あはは。」 
「・・・いや、恥ずかしくは・・ないよ。」 
「ははは・・・」 
「恥ずかしい事は言ってなかったよ。 っていうか、その・・ありがとう。」 
「え?」 
「マジでありがとう。 ていうか、・・・。その、本当にゴメン。」 
「え、何で謝るの?」 
「何でっていうか、とにかくゴメンね。 本当にゴメン。」 
「意味わかんないんだけど。」 
「俺、帰る。 うん、また学校で。ごめん。」 

部屋を出ようとした。 

「・・・うん、じゃあね。」 
真鍋はあっさりした表情でうしろから声をかけた。 
玄関までは見送ってくれなかった。 

で、俺は、ゆっくり歩いて家へ帰った

家へ帰ってきて、 
俺は妹の部屋のドアを、初めてノックした。 
向こうから声は掛からなかったけど 
「入るよ?」 
って言ってからドアを開けた。 

クリスマス以来、久しぶりに面と向かって妹と話した。 
「明日、ヒマ?」

「明日ヒマ?」 
それを聞いて妹はちょっとびっくりした表情。 
こういうシチュエーションは想定していなかっただろう、 
「う、うん、ヒマ・・・だけど・・」 
なんてすごくあたふたして答えた。 

「クリスマスの時は・・ごめんね。 それでさ、 
 その埋め合わせっていうか・・・」 
俺も結構どもってたけど、なんとか言葉に出して言った。 

「ともかく、明日、・・・、そうだ、映画見に行こう。エーガ。」 
妹はちょっと間を空けてから 
「う、うん。いいよ。」 
とかわいくうなずいた。 
「じゃあ、明日。な。」 
と言い残して、部屋を後にした。 
出るときにちらっとテーブルに目をやった。 
クリスマスの夜、俺が置いていったプレゼントの袋・・・、そこにはなかった。 
捨ててしまったのだろうか? 
ちょっと不安になった。

その夜はこんな夢をみた。 
朝、二人で出かけようとするところへ妹に電話が。 
楽しそうにしゃべる妹。受話器から聞こえるのは男の声。 
そして妹は満面の笑みで俺に向かって、 
「ごめーん、遊ぶ約束しちゃったから、お留守番よろしくねー」 
といって、突然姿を消してしまう。 

目が覚めたときは、しばらくボー然としていた。 
時計を見たら9時、よいこはまだ寝ている時間。 
そうか、クリスマスの日、あの時の妹はこんな感じだったのか・・・ 
そういえばこの夢、初めて妹とチューした時みたのと寂しさ具合が非常にそっくり。 
こんなときは、早く誰かの顔がみたい。 
自分ひとりでは生きていけない。 

廊下に出ると、洗面所で妹が歯を磨いていた。 
こっちを向いて目が合う。 
そこに妹がいることに何故か心の底から安心感がわいてきた。 
「おはよう」って一言、その安心感をぶつけるようにかけた。 
妹は歯磨きの途中だと言うのに、口をもごもごさせながら 
なんとか必死におはようを言おうとしていた。

下へ降りると、両親はまだ寝ていた。 
夕べもかなり遅かったようだし、いろいろあって疲れているんだろう。 
なにがあったのか詳しく聞けるほど、勇気は持ち合わせていない。 
どんなに重いものを背負っているのか、想像もしたくない。 

ちょっとして後から妹もパジャマのまま降りてきた。 
「お父さんとお母さん、まだ寝てるんだね。 あ、朝ごはん、作るね。」 
「いや、コーンフレークあるから俺これでいいや。 あやは?」 
「私もそれでいい。」 
ということで 
すこし肌寒い1月の日曜日の朝、二人食卓に並んでコーンフレークに牛乳かけていた。 
俺から話しかけてみた。 
「何見たい?」 
「えっ、何が?」 
「えーが。」 
「あっ、えっとね、あの、『恋愛小説家』・・・」 
「恋愛小説家? ふーん、あれってけっこうエロい話らしいよ?  
 それにまだやってんのかな? 上映してたの去年の夏くらいじゃなかったっけ?」 
「あ、でも、なんでもいいよ。 その、お兄ちゃんは何見たいの?」 
「・・・考えてないや。 行った先にあった面白そうなやつでいいかな。」 
こんな感じで淡々と会話していた。 
やっぱり、最近はそっけなかったからまだちょっとギクシャクしてたな。 
それでも俺は少しだけ、浮かれていたかもしれない。 あ、ちょっとだけ。うん。 

コーンフレーク食べ終わって、俺は歯みがきと顔を洗いに行き、妹は着替えに行って 
なんだかんだで出かける頃には10時を回っていた。 
出かける間際、母に5000円渡されてこれで夕食も済ませて来いといわれた。 
やっぱり今日も二人して遅くなるのか。 
5000円も要らないって言ったのに 
「いいから、あやかのことよろしくね。」 
だって。

駅に行くまではちょっと離れて歩いていたけど、 
電車に乗って降りるときから、手を繋ぎだした。 
人がたくさん歩いている中で、まわりのにぎやかな雰囲気のよさに 
二人ともだんだんテンションを高くしていった。 
「そういえばお兄ちゃんと二人で出かけるのって久しぶりだよね。」 
妹はいつの間にか笑顔になっていて、そんなことを言い出す。 
「うん。・・なんか、いい感じ。」 
俺もはにかんで答える。 
センター試験は来週。 経済事情から私立には入りづらい俺にとって 
とっても大事な追い込み時期だけど、そんなことはどうでもよかった。 
いや、どうでもいいことはないけど。 

ららぽーとの映画館では、まだタイタニックがやってた。恋愛小説家は上映してなかった。 
結局、どれも面白そうなのが無くて、「オースティンパワーズデラックス」を見た。 
その時感じた映画の面白さはほとんど覚えていないけど、 
妹と一緒に映画を見ている時間ははっきり覚えている。 
映画館を出たあとはやっぱり映画の話で盛り上がるんだけど、 
妹の方がペラペラ勢いよくしゃべりまくる。 
前作見ていない人にとってはちょっとつらかったと思うが・・・

「でさ、これからどうする?」 
「もっといろんなところ行きたいな。 久しぶりなんだし。」 
「どこがいい?」 
「お兄ちゃんはどこがいい?」 
「お前はどこに行きたいんだよ?」 
「えー、お兄ちゃんが行きたいところでいいよ・・・」 
「じゃあこの時計台の周りをぐるっと一周。」 
「それでもいいよ。」 
「・・・・。」 
で、もちろんちゃんと二人で手つないで直径10mくらいの時計台をぐるっと一周きめた。 
元の位置に戻ってきて、「はい、終了。」って言ったら、「もっと、、、その、どこかへ、、」って。 
だから俺は言ってやったよ。「じゃあ今度はあやの番。 あやがどうするか決めるんだ。」 
妹は、真剣な表情でなやんでいた。  
俺はそれを映画館の近くの広場にある時計台のベンチで、 
ずーっと眺めていた。 奇妙な絵だけど、なんかいい感じだったよ。 

いい感じっていうか・・デジャブ? 

30分くらい悩んで、やっと声を出した。 
「・・・ディズニーランド。」 
「ディズニーランドねぇ・・」 
とりあえず舞浜駅までは遠くなかったから行ってみた。 
すごい人、人、人、お昼どきなのに駅はすごく混んでいた。 
この大切なシーズンなのに、お前ら家に帰って勉強しろよと言ってやりたかった。 
「なんか混んでそうだね。 どうするあや?」 
「だね。 もう午後だから、あまり乗り物乗れなさそうだね。」 
「あ、もうちょっと行けば水族館あるぞ? 葛西臨海公園。」 
「水族館か・・ うん、それで行こ!」

で、結局電車乗りなおして、水族館に。 
いい年こいた高校生が水族館ってのも、なかなかオシャレでいいんじゃないか? 
と気軽に思っていたが、残酷なまでにつまらなかった。 
でも妹は終始楽しそうだった。 
深海魚コーナでは係員に大声出さないでくださいと注意される始末・・・ 
近くにいたファミリーづれの小さい子供にまで、 
「おねぇいちゃん、おおきなこえだしちゃだめだよ」 
と怒られていた。 
そんな絵を遠目から見ていてかなりほのぼのだった。そしてちょっと幸せな気分だった。 
その時は、一緒にいるのが恥ずかしかったから遠目から見ていたんだけど。 

その後はあたりを一緒に散歩して、 
また電車で移動して戻ってきて、あとは思いつかなかったから 
普段のように適当に駅前のにぎやかなところで過ごした。

日も暮れて、もう空ではオリオン座がはっきりと見えるようになった頃 
二人してぐったりして、ゲートボール大会終了後の老人のようにベンチにもたれかかっていた。 
「そろそろ帰ろうか?」って言ったら 
「まだ、もう少し・・遊んでいこうよ。」 
って、腕にしがみついてそういった。 
「でも疲れただろ?」 
「うん、少し。」 
「そういえば、夕飯、母さんがお金くれたんだ。 何食べようか?」 
「お兄ちゃんは何が食べたい?」 
「お前は何が食べたいんだよ?」 
「えー、お兄ちゃんが食べたいのでいいよ・・・」 
「じゃあカップラーメン。」 
「それでもいいよ。」 
「・・・さっきもこんなやり取りあったな・・・。」 
というかこの文、さっきのコピペです。 
さっきの文も前スレからのコピペです。 
「えへへ・・だって、・・・え〜っと・・ 
 ・・そうだ! お家でなべやろうよ。」 
「なべ?」 
「うん。なべ。」 
「それ、いいかもね。」 
「じゃあ、材料買いに行こう!」 
「今度は、何なべがいい?とかで悩みそうだな・・」 
「あはは・・」 

ベンチから立ち上がる妹、本当に純粋な笑顔・・・ 
透きとおっているような感じ・・・ 
手を差し伸べて、俺をベンチから立ちあがらせようとさせる。 

なんとなく、今なら言えるって思った。

「あのさ、あや・・・」 
「ん?」 
「その、最近さ、なんか俺・・、冷たくしてたみたいで・・・ 
 クリスマスの時も、その・・・ごめん。」 
「え・・」 
「なんかあれ?謝るのも変かな? あ〜、でも、なんか、ごめんね。」 
「・・ふふふ、なんかそういわれると、照れる・・」 
「照れる?」 
「うん。」 
「ごめんね。」 
「・・許さないって言ったら?」 
「えっ?」 
「うっそ〜。」 
「ウソかよ!」 

「これからも、こうして、一緒に遊びに連れてってくれるなら、許してあげるよ。」 

「・・・・・うん。約束する。」 
「絶対だからね。 今度約束破ったら、もう絶好だからね。」 
「うん。」 

心の中で、ごめんってもう一回あやまった。 
たぶんその約束は、守れないから・・・

そして、家に帰ってきて、買って来た野菜だの肉だの魚だのお菓子だのジュースだので 
適当にナベを作って、二人で食べた。 
いろんなものがごったがえしているナベ。 
二人で食べるのはちょっと寂しいくらいだったけど、 
終始、おいしいねとかいいながらにぎやかに食べた。 
食べ終わって、食器を洗って、 
テレビ見ながらくつろいで 
今日の反省会もどきなのをやって・・・ 


「ごめんちょっと旅行帰りのオカンみたいなこと言っていい?」 
「え?いいけど・・」 
「あ〜、やっぱ家でくつろぐのが一番だ〜・・つかれた・・」 
「あははは、お兄ちゃん・・」 
「ん?」 
「なんだかんだで、今日は久しぶりに楽しかったよ。」 
「こうしてあやと長い時間いっしょにいるのって、本当に久しぶりだもんね。」 
「うん。 最近お兄ちゃん冷たかったから・・ふふふ」 
「だからゴメンて。」 
「もういいよ。」 
そうして、俺の左腕に抱きついてもたれかかってきた。

「どうして今日は突然・・・、誘ってくれたの?」 
「いや、別に、特に理由はないけど」 
「そう。」 
「たださ、」 
「何?」 
「今まで、自分の中でさ、・・・・、その気づいてはいたんだけどさ・・」 
「うん?」 
「やっぱり俺・・・あやのことが好きなんだなぁって、思って。」 
「え・・」 
「あ、その、変な意味じゃなくて・・・、いや、その、変な意味なんだけどね。 
 あははは・・何言ってんだ俺。」 
「・・・私は・・・ずっと前から・・・」 
「・・・」 
「お兄ちゃんのことが好きだったよ。」 
「・・・」 
「ずっと前から・・・」 
「・・・どのくらい前から?」 
「・・覚えてない。そのくらい前から。」 
「それは・・兄妹として?」 
「・・・そういう好きじゃなくて、その・・・違う好きの方。」 
「あ、そう。」 
「お兄ちゃんは?」 
「えっ、俺・・・?」 
「・・・」 
「・・・俺は・・『愛してる』の意味で、あやのことが好きだよ。」 
「・・・本当に?」 
「本当。」 
「・・・・」 
「・・・・」

いつの間にか、抱き合ってた。 
そしていつの間にか、キスしていた。 
俺はつい興奮して、つよく唇を吸いすぎた。 
それで唇を離すときに、糸が引いた。 
それ見て、二人で笑ってた。 

全身の力が抜けて、俺の肩からあやの腕がずれ落ちたとき 
そでがまくれてあやの細い肌が見えた。 
俺のクリスマスプレゼントの腕輪が、そこにあった。捨てられていなかったんだ・・・ 

「これ、しててくれてたんだ。」 
「あ、うん。えへへ、ありがとうね。お兄ちゃん。」 
「すごく高かったよ?これ。 プレミアもんだよ?」 
「え、そうなの・・?」 
「2000円な。」 
「・・・私があげたTシャツだって、すごく高かったんだよ。」 
「え?いくら?」 
「1500円・・・」 
「・・・ダメダメだな、俺ら。」 
「ふふふ。・・でもすごくうれしいよ。ありがとう。」 
「こちらこそ。」 

そして再び唇が重なりあう。 
離れたあとは、おでことおでこをくっつけたまま、一緒にソファーにもたれかかった。 
結構長い時間。 
ずっとこうしていたかった。  
散々歩き回って疲れた足も、肩も、腕も、 
一気にきれいな水が全身を流れていく感じで、癒された。 
二人ともうつろに目を開けて見つめあってる。

「ねぇ、お兄ちゃん・・・・・よく考えたら、チューするのも久しぶりだね。」 
「うん。 久しぶりっていうか、やっと初めてキスできた気がする。」 
「え?どうして?」 
「なんとなく・・・」 
「じゃあ、もう一回。」 
「ん・・」 
「・・」 

「・・・あや」 
「何?」 
「久しぶりついでに、一緒にお風呂はいろか?」 
「え、・・・うん。 いいよ。」 
「一人じゃ怖くて入れないだろ?」 
「うん、怖くて入れない。」 

で、一緒にお風呂に入った。 

一緒に服を脱いで、向かい合いながらお互いの体をスポンジでこすりあって 
その間はずっと唇もこすりあってて、よだれがたれても風呂場だから気にしなくて 
背中を洗うときなんかは、体をぴったりと抱きつけあって背中を洗いあった。 
でも、何故かその体勢のままから離れられなかった。 
肩や首や耳とか二の腕とか、キスできるところは全部した。 
こっちがしたところに、後を追うように妹も真似してキスをしてくる。 
ジャックはすでに臨戦態勢。 デフコン2ってやつです大統領。 

「お兄ちゃん・・」 
「あや、顔真っ赤だ。」 
「お兄ちゃんだって・・」 
「これは、ちょっとのぼせてるだけだよ。」 
「湯船に入っていないのに?んふふ・・」 
「あやの体がすごく熱いから」 
「お兄ちゃんだってすごく熱いよ。」 
「あやの体、やわらかくてすごく好きだ。」 
「なんか照れちゃうな。」 

湯船につかるときも抱き合ったまま。 
お湯の温度と、妹の体から伝わってくる体温と、唇から伝わってくる体温がまざって 
本当にのぼせそうになった。 
目はもともとうつろな状態だったから、 
意識がもうろうとしてくるまで気づかなかったのはやばかった。

お風呂からあがった後、俺の部屋で窓を開けて、夜風に一緒にあたっていた。 
いい湯冷ましになるんだ。これが。 
でもちょっと寒くなってきたから、窓を閉めて、抱きしめあった。 
さっきまであたたかかった妹の体はもう、冷たくなりかけてた。 

「湯冷めしちゃうかもね。」 
「お兄ちゃんがあたためてよ。」 
「うん。」 

・・・・・ 


布がこすれあう音、妙に興奮した。 
妹は必死に俺にしがみついて、俺の口の中で舌をくるくる回している。 
そんな姿が健気に見えて、俺もぎゅっと抱きしめる。 
背中と後ろ髪を何度もさすって、妹を好きだという気持ちを確かめる。 
「お兄ちゃんに、こうやってなでてもらうの大好き・・・」 
ちょっと涙目で言う妹、唇と唇が1mmくらいしか離れていないから 
ぶつかり合って、上手くしゃべれていないのがすごくかわいい。 
アゴの先から、そのまま首筋を通って、みぞおちのところまで 
俺は鼻の頭をなぞらせた。 ポイントを通過するたびにピクンと体を振るわせた。

「んふふ・・くすぐっ・・・たい・・よ・・」 
「あったかくなってきた?」 
「・・うん。・・すごく、なんか・・・ドキドキしてる・・・」 
「俺も。 あやのことが大好きでたまらない。」 
「私もお兄ちゃんのこと、大好き・・・」 
あやの息遣いが俺の首筋をくすぐる。 
パジャマを着たままだけど、肌の感じがすごく伝わってくる。 
だから別にパジャマは邪魔にならなかった。むしろパジャマごと、妹を愛した。 
妹を横すわりにさせたまま、全身をなでている。 
「・・・ん、・・」 
やっぱり胸とか、足の間とかを触ると、多少反応があった。 
やわらかい胸をもっとやわらかくさせる感じでぐにぐに、回す。 
「お兄・・ちゃん・・・なんか、・・へんな感じに、なってきたよ・・・」 
「俺ちょっと、なんか恥ずかしくなってきちゃったな。」 
「私も・・でも、もっとお兄ちゃんに触ってもらいたい・・・」 
「じゃああやも、俺のこと触れよ。」 
「・・・うん・・」

俺の両方のほっぺたを両手で包み込んで、妹はやっぱり必死にキスをする。 
でそのまま妹も俺と同じルートで唇を移動させていった。 
なんども俺の頭や耳元をなでてくれる妹。 

さすがにそんな妹にじかに触りたくなってきて、 
舌と舌をを絡めながら、パジャマのボタンをゆっくりはずす。 
妹は腕をバタバタさせながらパジャマを脱ごうとしていた。 
あわてなくてもゆっくり脱げばいいのに。 なかなか脱げない様子が妙にかわいかった。 
その間、パジャマの下を脱がす。 
恥ずかしかったから一気にスパッと。パンツと一緒に。 
Aタイプか・・・パンツ職人の大技、「二枚いっぺん」ですな。 

妹はよりいっそうあわてて、手で隠した。 
「ま、まってよ・・私だけ恥ずかしいよ。 お兄ちゃんも一緒に脱いで・・」 
「じゃあやも手伝って。」 
ということで妹にボタンをはずしてもらう。  
ボーッとした表情と脱ぎかけのパジャマの間から見える妹の胸と素肌。 
一生懸命ボタンをはずしてくれるその姿。 上目づかい。 
ありとあらゆる要素が集約されてジャック大佐のストライクゾーンに。 
デフコン1が発令されました。

そこからは加速度的に、妹を抱きしめた。 いろんな場所にキスをした。 
「ん・・・ふうっ・・く・・・」 
「んん・・んくっ、・・」 
「お兄・・ちゃん・・・はぁ・・」 
息も絶え絶えに、妹は何を言ってるのか分からないけど、頑張って何かを言っていた。 
胸のてっぺん辺りと足の付け根から中心にむかって、利き腕とは逆の腕の薬指で 
やさしくすべらせると、妹の言葉はさらに混乱してきた。 
俺の胸で荒い呼吸をする妹。 
「俺の顔、見てて。」 
というと、妹は顔を上げて俺の目を見つめてくれる。 
口のまわりがべとべとになるくらい、吸い付きあって 
「好きだよ」 
って言ってあげると「私も好き。」って返事をする。 
その言葉をいうタイミングと呼吸のタイミングが合わずに、途切れ途切れになる。 
それがまた妹の健気さを強調していてたまらない。 
だから俺はわざと、へんなタイミングで声をかけた。 

でもだんだん、返事をするのがつらくなってきたのか、 
妹はただうなずくだけでぎゅっと抱きついてくるのがやっとになった。 
かろうじて「お兄ちゃん」という言葉が聞こえてくる。

交代にさわりあいをして、 
同時にさわりあいもして、 
二人とも汗びっしょりになって 
妹のすべての場所に俺のキスのスタンプを押し終わって 
俺のすべての場所に妹のキスのスタンプが押されて 
愛のスタンプラリーってか、何言ってんだオメー。 

真鍋の時と同じように、体育すわりの状態で、妹と一つになった。 
寝かせた状態だと、なんかあらたまった感じで恥ずかしいからね。 
あと、ちゃんとゴムもつけた。 
さっきからの「代わりばんこ」のノリで妹につけさせた。 
できれば口でつけてもらいたいが、あとスライム10匹くらい殺さないと 
そんな必殺技覚えさせられないな。 

妹とするのは、これで6回目。 さすがに妹も痛がらない。 
と思ったけど、久しぶりだからかな? ちょっと最初は痛そうだった。 
でもすぐに慣れてきたのか、緊張していた体はもとのやわらかい体に戻った。 
表情は痛そうなままだったけど。 
あと何言ってるのか、完全に理解不能になった。 
かろうじて「お兄」という言葉は分かる。ちゃんがうまく言えていないな。 
ただ単に呼吸のリズムが合わないだけなんだろうけど、 
なんどもなんども同じ単語を繰り返し言っていた。

体を揺らしあっている最中 
俺はふと考えていた 
ひょっとしたら俺は残酷なことしたかな 
だってもうすぐ離ればなれになるというのに 
あのまま、きまずい仲のままでいればよかったのに 
また妹とこうなって 
そしてまた心もろとも離ればなれになって 
悲しませる 

そのまま倒れていればいいのに 
なんども起き上がって、また打ちのめされて倒されて 
苦痛ばかり受ける 

「お兄ちゃん・・・ずっと一緒に・・いてくれるよね?」 

終わったあと、抱き合ったまま、妹がつぶやく。 

うん。 
とだけ答えておいた。 

両親は夜中には帰ってくるだろうけど、かまわずこのまま 
裸で抱き合ったまま眠りについた。

それから1週間後、センター試験があった。 
ほとんど勉強はしなかったけど、前日は一応学校が休みで、一日中かけて 
妹と一緒に勉強に没頭していたし、「お守り」的なキスをもらった。 
そのおかげで、そこそこしのぐことが出来た。 
まぁこの辺は対したイベントではない。 

問題なのは、ここからさらに1週間後。 


両親と俺は、リビングのソファーに座っていた。 
そろそろ転校手続きとかもあって、妹には、話しておかなければならないから。 

事務所の倒産。両親の離婚。そしてこの家はなくなり、俺と父、妹と母。 
別々に暮らしていくこと。 
最近の明るい妹を見て、両親は話す覚悟ができたという。 

「ちょっと、あやかを呼んで来てくれ。」 
父に言われて、妹の部屋へ。 
妹を連れ出して、リビングのソファーに座らせた。 

「たかひろ、お前も一緒にいなさい。」 
冗談じゃない。とても俺はそんな空気に耐えられない。 
「あ、ちょっと、俺、コンビニ行ってくる!」 
妹をソファーに沈めたあと、すかさず俺は玄関へ逃げ出した。 
「待て、たかひろ! たかひろ!」 

父の言葉を無視して、ダッシュで。 
本当にコンビニに向かっていた。 

適当に立ち読みして、いちごオレを買って、 
そのまま近くの公園のベンチで夜空を眺めていた。 
つめたいいちごオレなんて買うんじゃなかった。寒い。

・・・・・・ 

結局、引越したのは2月の中ごろ。 
業者のトラックは荷物を載せて先に出て行った。 

俺は父といっしょに、駅のホームで見送り。 
妹は母といっしょに、電車に乗り、そのまま行ってしまった。 


あの両親の告白の夜。 
妹がどんな気持ちだったかはわからない。 
俺はただ、いちごオレを飲んでいただけだから。 

結局あの夜は、夜中に帰ってきた。 
妹は、泣きながら大反対したらしい。 
高校生にもなって、大粒の涙で泣きわめいたらしい。 
そしてそのまま、俺を探しに家を出て行ってしまったらしい。 
母があわてて後を追ったから、事なきを得たらしい。 
コンビニに俺がいなかったから、妹は探してまわると言い張って聞かなかったらしい。 
俺は父にこっぴどく怒られたらしい。 

そして、もう寝てしまっただろうと思っていたら 
やっぱり妹は起きていて、 
大泣きされた。 
何度も「うそつき」とか「もう絶好だ」とか言われた。 

俺はただ抱きしめることしか出来なかった。 

気持ちを落ち着かせるのに大変だった。妹も俺も。 

引越すまでの間はできるだけ妹と一緒にすごした。 
もちろん、登下校、毎休み時間、お昼は屋上の踊り場、夜は一緒に眠った。 


駅のホームで、最後の会話をした。 

「新しい学校では、ちゃんと友達作って、楽しく暮らせるよね?」 
「うん・・・」 
「約束だよ。」 
「うん・・・」 
「今度会うときは、新しく出来た友達を紹介してな。」 
「うん・・・」 

両親が見てる前で抱きしめあってキスをした。 
両親は、クリスマス前から俺たちのことは気づいていたらしい。 

だからこそ、俺と妹、いっしょに打ち明けられなかったんだろう。

電車が行ってしまった後、父と一緒に家へ帰った。 
「お前には本当に迷惑かけたな。  
 父親らしいことしてやれないばかりか、好きな女との恋路まで邪魔してな。 
 自分で本当になさけないと思ってる。 
 勘弁してくれ。」 
帰る途中、そんな父の言葉を聞いた。 
あんたはよくやったと思う。そんな言葉はむしろ聞きたくなかった。 
昔の明るい父に早く戻って欲しかった。 


妙に広くなった家、ガランとした妹の部屋を見て、一気に涙がこみ上げてきた。

  
  
そして今。 
俺はあれから無事、バカ大学だけど国立大学に合格し、 
家庭の事情から授業料も免除してもらって大学に入学している。 
バイトをしながら、親戚が大家をやってるアパートで一人暮らし。 

妹とは、あれから連絡を取っていない。 
新しい住所を教えていないし、あの頃は携帯も持っていなかったからね。 
妹もどこに住んでいるのかなんて、分からない。

でも、逢いたいけど、お互い新しい生活が始まって、 
それはそれで、また、今のままでも、いいんじゃないかな。 
昔の写真1枚さえあれば、 
いつだって、あの頃に帰れるんだし。

結局何を得たのかって言えば・・・・・・・・・ 

いい思い出。とでも言っておきます。
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