自然界には擬態というものがあることをご存知と思う。 擬態と言っても色々あるが、自分は毒を持たないのに、毒のある虫やヘビの外見上の特徴を持つことで、外敵となるものを近寄せないためのものもあれば、逆に、ある種の虫のメスに似た姿をした植物が、その虫のオスをおびき寄せて食べてしまうとかいったものもある。 そういえば、人間にも、本当は弱いのに強いフリをしたり、あるいは、美人で気立ての良い風を装って男を引き寄せるが、実は自分勝手で欲深な女であるということもあるのかもしれないが、これらも一種の擬態と言えるのかもしれない。 私は、幼い頃、ある非常に堅そうな黒い色の物体を見た。その艶、光沢、直線的に張った感じが、いかにも堅そうだった。しかし、触ってみると非常に柔らかく、ちょっと指で押すと簡単に穴が空いた。私は、驚くと同時に面白かったし、また、とても感銘を受けた。 昔から人間は、「見かけに誤魔化されちゃ駄目だ」ってよく言うが、そんなエピグラム(警句)を肝心な時に思い出さないものなのだ。 私は以前、あるアメリカの成功プログラムのカタログを、そのプログラムのセールスマンに見せられた。そのプログラムを使えば、富も人間関係も、家庭の幸福も、その他、あらゆるものが得られるというものだった。 その豪華なカタログの中に、そのプログラムの制作者自ら登場し、自分の豪邸の庭で、にこやかな大勢の親族達に取り巻かれ、幸福そうにしてみせていた。そして、「人生の成功者○○○○(彼の名前)」というキャッチフレーズが大きな文字で書かれていた。 今の私なら、さしたる直感を働かせるまでもなく、それは嘘だと分かる。みんな作り物の偽りの笑顔だ。 これも愚かな客を引き寄せ、金を儲けるための擬態というものか? 私は高額なそのプログラムを購入し、熱心に使ってさらに実践し、とことん惨めになったものだった。 だが、当時の私だって、心の奥では、それがまがい物だって気付いていたはずなのだ。しかし、欲望が心を支配し、真実を歪ませて見せるのだ。 幸せそうな者が幸せなのではないし、美味しそうなものが美味しいのではない。 いや、美味しそうであり、実際に食べてみても美味しいと感じるものだって、身体や心にとっては有害なものも多いだろう。 そして、人間は、偽りの自分を装う者ほど、薄っぺらで馬鹿げた見かけに騙されるものである。 逆に、自分を本物以上に強く見せることに興味がなく、実際には持っていない美質があるように思わせたいという願望の無い者は騙されることがない。 自然界の擬態は、弱い者を守るための自然の英知なのかもしれない。 しかし、人間の卑しい欲望が作り出す擬態は、愚かで浅はかな小知である。 出典:ぴんぽんぱん リンク:ぽんきっき |
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