禁断の呪術 (恐怖の体験談) 15311回

2013/11/30 07:12┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
禁断の呪術

陰明道には、相手に呪いをかける呪詛が存在し ますが、その中で禁断とされている術があるそ うです。

私の叔父は神主なのですが、明治の頃に叔父の 曾祖父の代に近隣の神社と合併したそうで、合 併された神社の中に古い日記があったそうで す。 現在その日記は叔父の神社に保管されているの ですが、お払いしてその日記を処分することに なった際、私にその内容を読んでもらいまし た。

その内容は禁断の呪詛にかけられた男の悲痛な 思いが綴られていたのです。

その呪詛は儀式の際、自分の命を犠牲にして相 手に呪いをかけるというもので、かけられた人 間は四十九日苦しみ抜いて死んでしまうとい う、とてつもなく強い呪いで、詳しい作法は現 代には残っていないそうです。 呪詛を取り払う方法は、霊場(霊力のある場 所)に立て篭もり、四十九日間飲まず食わずで 耐え忍ばなければ助からないというものでし た。

日記が書かれたのは江戸の後期らしく、叔父が 現代語に訳しながら私に聞かせてくれました。 以下、叔父による訳と私の会話になります。

『さよが死んで四日目の今日、妻の絹江が血便 (赤痢)で死んだ。昨日は長男の忠之助が首を くくった。俺はこのことがさよの呪いだと知 り、今日からさよの四十九日の間、この境内に て物忌みをすることにした』

『ここにさよの懺悔も書こう。俺は妻と息子も 省みず、さよと一時の間燃え上がる仲になっ た。しかしさよに子供を宿したのを知ると、い よいよ俺は恐ろしくなり、これまでの事をすべ てさよの付き纏いのせいにし、宿した子供も、 無理矢理さよの体を縛って降ろさせ、奉行所の 命にて一方的に縁切りをした。さよはお咎めは なかったものの、二度と俺の前に姿を現しては ならぬことを条件に解放された。さらに、無理 な避妊をしたため、さよの体を二度と子の産め ない体にしてしまった。俺は枕元にさよが現れ るまですっかり忘れていたのだ。さよ、すまな かった。どうか赦してくれ、どうか』

五日目(立て篭もりから二日目)

『昨日の晩、さよが現れた。窓の隙間からこの 室内を見ていた。俺は一瞬目が合ったが、あの 恐ろしく怨みに満ちた顔はもはや妖怪の類と同 じで、この世のものではない』

三日目

『飢えは我慢できるものの渇きはどうすること もできない。何もないこの境内の中で口にでき るものは活けてある花と雨漏りの水くらいなも のだ。昨日の晩もさよが現れた。彼女は血の涙 を流し、髪は乱れ放題のまま、歯を剥き出しに し、境内の扉をガタガタガタと激しく揺らすの だ』

十日目

『昨日の大雨で部屋の隅に置いてあった壷に吹 き込んだ雨水が溜まり、激しい渇きから久々に 解放され、いくらか冷静に考える事ができるよ うになった。さよは毎晩現れた。しかも日に日 に姿が醜くなって。昨日現れたさよは、両目が 空洞で顔の肉も朽ち始め、口が裂けたような容 貌だった』

この辺りから文体や表現が、だんだん乱れてい きますので、一部読みやすい様に改帳しまし た。

十一日目

『腹が減った。活けてあった花は、もはや葉も 茎も食い尽くし、柱にかじりついてなんとか気 を紛らわしている。なんでも構わない、とにか く何かを口にしないと気が狂いそうだ』

十二日目

『昨日までは座禅もしながら時を過ごす事も あったが、もはやそんな気は失せた。どうして オレばっかり。チクショウ畜生ちくしょうチク ショウ!こんなノロイはねつけて倍返しシテヤ ル!』

十三日目

『毎晩毎晩オレを睨みつけヤガッテ!コロスな らさっさとコロシてみやがれ!オレがここに居 ればナニもできないくせに!』

十五日目

『溜まったツボの水が尽きた。雨が来なければ オレは死ぬ。死はすぐ隣だ。運が悪ければここ で飢えるし、逃げてもさよに殺される。シニタ クナイ』

二十二日目

『もはやウゴくキにもナラナイ。マドのスキマ からさよのクちハてたテがオイデオイデとこま ねいている』

三十日目

『ゴトリとオトがした。そちらをミるキリョク もない。ツギにオソロシイほどの腐臭がした。 どうやらさよのナイフ(内臓)がはらわたから 落ちたオトらしい』

三十五日目

『絶食からイクニチ経ったダロウカ。幻覚なの か、さよはオレに語りかけてきた。

「ココカラデレバラクニナレルヨ、ミズモタベ モノモクロウシナクテイインダヨ」

オレはソノ声でトビラを開けようとシタ。シカ シさよの殆どドクロのカオがこちらに大きなク チを開けてタタズンデイル。ハナハダオソロシ ク、再びモトの場に伏した』

四十日目

『むせ返るホドのニオイが夜になるとヤッテク ル。これはオレの死のニオイだ』

四十二日目

『またさよのコエがキコエテきた。なにやら歌 のようで、か細い高いコエだった。

「キコエルキコエル、赤子ノコエガ、ワタシノ ワタシノカワイイコドモ、キコエルキコエル、 赤子ノコエガ、アナタノアナタノカワイイコド モ、コドモハシンダ、アタシモシンダ、アナタ ハ…」

コエがキコえなくなったとオモッたら、さよは 自分のクサッたナイフ(内臓)をまるで赤子の ように愛おしそうに抱いている』

四十三日目

『夜明けがコンナニモ待ち遠しくオモえるのは 生まれてハジメテだ。夜明けの度に五十日目の 朝を夢見てきた。さよは未だニオレをミツメテ イル。お前さえ!オマエサエイナケレバ!』

四十六日目

『あと三日。だがオレの命もそろそろ限界らし い。気持ちはかなり落ち着いている。ここにい ればオレは死ぬが、さよは悲願を成就できな い。オレは化け物に勝ったんだ。オレや絹江や 忠之助の恨みだ!さよ!テメエは負けるんだ よ!せいぜい成仏できずにこの世で苦しんで ろ!』

四十九日目

『一昨日の雨で死にかけた体が今日まで生き延 びた。もうすぐ夜明けだ。この飢えから、渇き から、呪いからすべて解放される』

『ああ、明るくなってきた。遂に夜明けだ。さ よ!聞こえるか!俺はお前を絶対に許さない! ここから出たらお前の墓を掘り返して無限地獄 へ突き落としてやる!』

一通り訳し終えた叔父は、

「一応これでこの男の日記は終わってるみたい だな」

私は一息ついて

「でもこの人は助かったみたいっすね。四十九 日間よく耐えたなあ」

しかし叔父は、

「いや、俺はそうは思わないな。もし助かった なら、なぜ続きが書いてないんだ?それに…」

叔父は急に黙って紐でくくられた日記帳をぱら ぱらとめくっていました。

すると、

「待て、後ろのページに誰かの書き足しがあ る」

それは当時、男が物忌みした神社の神主が書い たものでした。

『わたしはこの男が物忌みをしているのを離れ から見守っていた。夜中、丑三つ時を過ぎた夜 明けの暗い頃、何もない場所から影が動めくの が毎日見えた。そして五十日目の夜明け前につ いにわたしの目にも女を確認することができ た。わたしは女を禊おうと、九字(除霊の術) を切ったが、女はそれを跳ねつけ、女の念に よってわたしは気を失ってしまった。気を失う 瞬間、まだ暗いにもかかわらず男が扉を開けよ うとするのが見えた。目を覚ますとすでに明る く、卯の刻はとうに過ぎ、辰の刻にさしかかる 頃合い(午前七時過ぎ)だった。急いで境内に 向かうと、扉の呪が解いてあり、扉も開いてい た。中には誰もおらず、部屋の隅にはあの女の 着ていたボロボロの着物と、長い髪の毛が大量 に散乱していた。そして鳥居の外に捨ててあっ た釜に水が溜まっており、そこにあの男の草履 が一足浮かんでいた。わたしは男の行方を探し たが、二月経った今でも遺体さえ発見されてい ない』

私は恐ろしくてしばらく言葉も出ませんでし た。

叔父は「おそらくこの男は女に連れて行かれた んだろうな」と言いましたが、私は納得できま せんでした。

「でもちゃんと四十九日耐え抜いたじゃないで すか。それなのになぜ…?」

不思議がる私に、叔父は禁断の呪術の内容につ いて知っていることを語ってくれました。

「詳しくは知らないけど、もし物忌みをしな かったらこの男は四十九日経つことなく殺され てた筈なんだ。しかしこの男は呪いが解けるま での四十九日間、境内に立て篭もった。そのた めに渇きや飢えや女の霊の恐怖に苦しみ抜いた んだな。男はとてつもない極限の状況から早く 抜け出したかっただろう。五十日目の朝がやっ てきたら真っ先に境内から出るのは誰もが予想 できることだよ。だから最後の夜に女は朝日の 幻覚を見せて、男を外に出そうとしたんだと思 う。この呪いからは逃げることは出来なかった んだな。結局苦しみ抜いて殺されたわけだ」

そう言われ、私はなんとなく納得しました。

「それにな」

叔父はそう言うと私に日記帳を渡してくれまし た。

その日記帳を見ると長年経って薄くなっていま したが、男の字の上に、そして日記帳のありと あらゆる余白に血の字で怨みの言葉が書き足し てあったのです。

『コノウラミユルスマジ、ユルシテナルモノ カ、死死死死死死死死死死死死死死死死死死死』

出典:これもある種呪術やも
リンク:http://m.youtube.com/watch?v=f_1wmj3kkSs&desktop_uri=%2Fwatch%3Fv%3Df_1wmj3kkSs
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