中学2年の夏休み、学校のプールが開放されることになった。 生徒限定だけど、暇ならただで遊びに来れば〜?っていう適当な感じの。 平日はほぼ毎日開いてたけど、思ったよりは不人気だった。 (先生もいろいろ面倒くせーってことで、翌年から数日間×数時間のみの開放となる) 夏休み後半になると、朝早い時間に行けば、ほとんど1人貸切状態だった。 プールは職員室の窓から見えるので、監視員役の先生も常駐はしてない。 俺は学校まで徒歩3分の近所に住んでたので、1人でもちょくちょく行ってた。 その日も朝から1人で、のんびりぷかぷかしに行った。 まず職員室で先生にひと声かけて、プール利用者ノートに名前を書くことになってる。 ここんとこ俺が一番乗りだったけど、その日はちょっと遅くなった。 ノートを見ると、すでに女子が3人来てるらしい。 その中に「マコ」の名前があった。 マコがいるー!マコの水着見れる! いっぺんにドキドキしてきた。 マコ部活サボったのか、まあ理由はどうでもいい。 ※マコは幼小中とずっと同じ、その後も高校まで同じだった女子です。 マコとは小4くらいまで、毎年同じクラスで一緒にはしゃぎ回る大の仲良しだった。 中学では割と真面目な性格になったみたいで、そこそこ優等生。 クラスも違ったし、俺なんかと話す機会はほとんどなくなった。 でも控えめな佇まいもかわいくて、ちょい天然なとこもあって、ずっと大好きだった。 夏休みのプールは、普段の男女別の授業とは違って、混浴状態。 男子に水着を見られるのが恥ずかしいのか、もともと女子の利用者は少なかった。 別に俺は最初から、女子の水着目当てでプールに通ってたわけじゃないよ(力説) けど、好きな女子がいるとわかったら話は別だよ! ふふふ〜んと鼻歌でワクワクしながら更衣室に入った。 *** ところで。 実は俺には、ちょっとした露出願望がある。 公共の場でパンツ脱ぐだけで、なぜかぼっ起することがあるっていう、プチ変態です。 周りに女がいなくても、ちんこを外界にさらすと興奮する。 授業のプールの着替えでも、ぼっ起しそうになる。 宿泊研修の風呂とかもやばかった。(ゲイではないです) そんな中で心頭滅却という言葉とその実践の難しさを知った。 でもこうして1人の時は、自分を抑える必要がない。 更衣室という公共の広い空間で、堂々と全裸になれる! 空いてるプールに1人で来ると、こういう副産物的な楽しみがある。 だからズボンの下に海パンを穿いてくる、ってことはしてない。 思い切り全ぼっ起して、更衣室の中を歩き回るのは楽しい。 誰かが急に入って来た時のために、バスタオルだけは手に持っている。 この、全裸だけど最後の砦だけはあるっていう、緊張感のバランスがたまらない! といってもプチ変態はその程度で、こんなとこでオナニーとかする度胸はなかった。 ※実際に露出狂になったことはないので、どうかこんな変態少年を許して下さい。 *** さてこの時は、水着のマコを思い浮かべて、もう脱ぐ前から小ぼっ起してた。 そして全裸になった瞬間、むくむくぼっきんとちんこが完全体に。 バスタオルは手に持っている。 いつもはちょっと歩きまわったら満足して、プールサイドに出る。 でも今日は、出たらそこに人がいるとわかってるので、ぼっ起が治まるまで行けない。 早くマコを見たいけど、治まるのを待つ。 むしろほんとは、ぼっ起をマコに見せたかったりして。 とか思ってみるけど、イヤーンやっぱり恥ずかしい。 結局いつもより大胆に全裸ではしゃいでしまって、ちんこは治まる気配がない。 腰を突き出してちんこをぶんぶん回して、ふーんっふーっと鼻息が荒くなったり。 ちんこをタオル掛けにして、直立不動で意味もなくニヤリとしてみたり。 「ああ、マコぉ…」と、つい独り言も出た。 ((モゾモゾ、クフン)) …おや、何?今の…。 ((フンック)) え?何か聞こえたよね、ひいぃい!!! 何だろ今の音。声か?…ええぇ? 周りを見渡して、俺は…あることに気付いた。 更衣室の隅に、カーテンで仕切られた個室的な一角があります。 これは先生が着替えるところ。 先生と生徒が同時に着替えることは、あまりないけど、一応そういうスペースがある。 そのカーテンが閉まってた。 いつもは開いてるのに。 今日に限って浮かれてた俺は、そのことに全然気付いてなかった。 あ の 中 に 何 か が い る!! 先生じゃないのは確か。 たまに定期見回りを兼ねて泳ぎに来る体育のムキムキ先生は、さっき職員室にいた。 じゃあ何だよ!怖いいいぃ! 心霊的なお化けを想像して全身鳥肌が立った。 ぼっ起している理由が「生存本能」に変わった気がした。 カーテンは少しだけ隙間が開いていた。 俺は怖いのに、いや怖いからこそ、そこに背を向けることが出来なかった。 ちんこだけはタオルで押さえて隠していた。 ちんこをお化けに見られる恥ずかしさじゃなくて、守らなきゃいけないと思った。 すると、「アワワ…ムッチャン…ガ」 ビクン!睦ちゃんって俺の名前だっ。 カーテンの向こうのお化けが、なぜか俺の名前を知っている。 って言うかその声は? 俺は思わずカーテンをがばっと開けた。 そこにいたのは… マコ!何でマコ!((どうしてこうなった!)) *** スクール水着のマコが、壁際にへたり込んでいた。 なぜか水着を、おへその辺りまでしか着てなくて、胸は両手で押さえてる。 まさかレイプとか!でも違う、そんな雰囲気じゃないことだけはわかる。 俺の思考は停止した。 ぼっ起ちんこをタオルで押さえたまま、後ずさりした。 後ずさりって言うか、後ろによろめいた感じ。 そしたらスノコにつまづいて地味にひっくり返った。 「うわあ大丈夫っ?」 駆け寄って来るマコ。 一瞬タオルを離してしまって、ちんこをもろに見られたけど、またすぐに隠す。 マコもあわてていたのか、胸を押さえていた両手を離した! おおおっぱい!ああ、同級生のおっぱい!フー(鼻息) おっぱい見えたよ大好きなマコのおっぱい! ちゃんとふよふよ揺れるくらい大きく育ってるよ! 乳首乳首!乳首見えたよ!色は薄いよー。 おっぱいが見えてることに、すぐに気付いたマコ。 あわてて背中を向けて水着をちゃんと着直した。 停止していた俺の思考が、支離滅裂に回転し始める。 おっぱい見たちんこ見られた、マコがいる理由わからない足ぶつけた痛い、あーマコが心配して俺のそばにいる見たかった水着姿、おっぱい見たちんこ見られた、今俺裸だマコが俺の顔見てるかわいいでも泣いてる、おっぱい見たちんこ見られた…何これ何か来たぞ、ちんこが…ちんこがぞわぞわする!あー!あー! …混乱しまくってる俺にはっ!突然の射精感を止める方法がなかったっ。 *** 俺はタオルの中に精液を、たっぷりどっぷり、どっぴゅんどくどくと放出し続けた。 そんなこと知る由もないマコは、倒れている俺のそばに座っていた。 射精の快感で下半身がびっくんびっくん震える。 マコも俺の様子に気付いて、反射的にびくっと少し後ろに下がった。 俺が震えた理由は…、どうか知らないでいて欲しい。 イっちゃったからか、俺はほんの少しだけ冷静になった。 ちんこは急激にしぼんで元に戻った。 「ごめん、大丈夫」と言ってささっと海パンをはいた。 でも、やっと訪れた冷静さは、当たり前の事実に気付くとすぐに吹っ飛んだ。 血の気が引くような恥ずかしさで吹っ飛んだ。 マコは俺が来る前からそこにいた、ってことは、最初から全部? 全 部 見 ら れ て た ? 俺が!更衣室に入ってからとった行動! すっぽんぽんニヤニヤ〜の変態奇行、全部見られてた! マコが何でここにいるかってことより、そのことだけで、頭がいっぱいになった。 「見、みみみっみ見」 怖くて「見てた?」と聞けなかった。 でもマコの表情を見れば、聞くまでもなかった。 マコもまだパニック状態で、あわあわしていた。 「ごめんごめごめん、でも睦ちゃんで良かった」とマコ。 何だよそれ…、やり場のない恥ずかしさが怒りに変わった! 「何が良かったんだよ!何で女がいるの、もう勘弁してえええ!」 わめいてしまってちょっと後悔、マコは泣いていた。 *** 泣きながらマコが話し始めた。 「○○先輩があ、私を好きで、それで、森ちゃんと泉ちゃんが、ああああ」 …全然意味がわからない。 あとから知ったことも合わせて、ちょっと話をまとめます。 ○○先輩というのは、安易なキャラ説明をすると、さわやかチャラ男な部活のOB。 森と泉は、マコの部活仲間で同級生、今日3人でプールに来た。 最近さわやか先輩がマコに告白したみたいで、森と泉はマコを憎たらしく思っている。 マコが告白を受けようが断ろうが、妬み女子にはそんなの関係ねー。 嫌がらせのために、マコをプールに誘って、男子更衣室に放り込んだ。 「告白は断れ、先輩とはもうしゃべるな、でないと許さん」 「お前はここで着替えて、男の裸でも覗いとけ。一緒に着替えてもいいぞプププ」 「ちんこ見たらサイズ教えろよ、ウチらは先にプールで待っているからな」 というようなことを言われた。 これを言うために、服の下から水着を着てこないように、急かして誘い出したようだ。 用意周到なずる賢さである。 そして、誰か男が来るまでは出てくるな、と釘を刺された。 つまり、【マコが男(この場合俺)よりも後に】プールサイドに出てくる状況を見たいと。 そしたら森と泉は【マコは男が着替えしてる更衣室にいた】と確信して断罪できる。 「変態だプププッ」とあざ笑って楽しむわけだ。 という状況に置かれて、恐る恐るカーテンの裏で着替え始めるマコ。 するとそこに鼻歌まじりの俺が来た。 物音を立てたくないので、マコは水着を半分まで着た状態で、息を潜めた。 いじめられてる最中だけど、何だかんだ言ってもやっぱり気になる。 カーテンの隙間から、マコはドキドキしながら覗く。 ((うわ、睦ちゃんだ)) 来た男子が、よく知ってる俺だったから、安心感と罪悪感が両方あった。 (その安心感の部分で、さっき「睦ちゃんで良かった」と言ってしまったらしい) そして、1人だからと何も隠さず堂々と全裸になる俺。 それどころか、歩き回ったり、誰もいないのに見せびらかすような動き! ちんこも振り回す!なぜかぼっ起している! ((何これ…)) ドキドキして息を飲むマコ。 初めて見る同級生のぼっ起ちんこに心臓バクバクのマコ。 とどめは俺の「マコぉ」というつぶやき。 見てるのがバレたっ?と思ってちょっと動いてしまい、喉の奥を鳴らしてしまった。 頭の中は真っ白、パニック、無意識に俺の名前を声に出した。 そして俺に見つかって、今こういう状況。 *** マコの話は取りとめがなくて散漫で、この時点ではよくわからなかった。 でもこれがいじめの現場だってこと、それだけは理解できた。 混線してた俺の怒りの感情が、ようやく2人の女子、森と泉に向けられる。 あの2人の性格ブス加減は、俺も一応覚えがある。 どうやらマコは普段から、この2人に軽くいじめられてるらしい。 「あいつらめー、ちょっと殴って来る!」 と言う俺に、マコはやめてと言ったけど、俺は怒りをあらわにし続けた。 そうしないと話が、「睦ちゃん裸で何やってたの」とか恥ずかしい方向にいっちゃう。 それもあって、ほんとに殴るつもりはないけど大げさに、 「許せん、殴る!マコのカタキ!」とか言い続けた。 でも無駄だった。 心優しい、と言うか気弱なマコには、仕返しを考える度胸はなかった。 「睦ちゃんもういいよ、来たのが睦ちゃんだったから私平気だよ。でもそれよりさ、」 やっぱりこの流れ来た。 やっぱり俺の奇妙な変態行動が気になるよね。 でもさ…ヤメテ、ヤメテ…。 裸で何してたのって聞かれたら俺…。 ハッ、まさかイったのもバレてるんじゃ…。 そうに決まってるよ、俺ちんこ押さえながら、あんなにびっくんびっくんしたもん。 ああもうどうしよう…。 「何で私がいるってわかったの」 …?まずはそっちか…。 全裸の俺が高揚して「マコぉ」とつぶやいてしまったのを、呼ばれたと思ったらしい。 マコがいるって思うわけない、ただつぶやいただけ、としか言えなかった。 するとそれも当然、「じゃあ何で?」と聞かれたわけで。 もうやけくそだよー。 「そんなの知るかよーっ、マコが好きなんだよー! 裸で好きな人のこと考えたら、嬉しくてぼっ起するんだよー! 名前も言いたくなっちゃうんだよー!裸踊りもするよー! おっぱい見たから精子も出ちゃったよー!」 何だよこの告白。 何で俺こんなシチュエーションで、涙目で愛の変態告白してるんだよ。 余計なことまで言った気がするよ。 もうマコ早く行けよ、キモイキモイ言いながら立ち去れよー! *** マコはとまどっていて、表情が引きつって目もキョロキョロしていた。 もういい、マコの返事を待ってる余裕はないし、どうせ聞きたくない返事に決まってる。 誰か来るかも知れんから、今は早くマコをここから出さないと。 でも今さらプールに出て行っても、マコは森と泉に笑われるだけ。 俺は「もう帰れ」と言った。 「あいつら絶対凹ます。殴ったりはしないから安心しろ。マコはもう帰れ。 あとでまた仕返しが来るようなやり方はしない。何とかうまくやっとく」 カッコつけてそう言うしかなかった。 どうしようもない恥ずかしさと怒り。 その元凶となった2人のバカ女を凹ますことでしか、消化出来そうになかった。 マコは黙ってうなずくと、また個室に入ってカーテンを閉めた。 水着の上からささっと服を着ればいいものを、いちいち着替えるつもりか。 思った通り、水着を脱ぐ音が聞こえた。 何て言ったらいいかわからないけど、ああ水着脱ぐ音だな、ってわかる音。 もうやめてよ、また興奮するよー。 ああ、やっぱり俺またぼっ起してる…。 早くここから出てもらわんといかんのに! こうなるなら最初から女子更衣室に移動してもらうべきだった。 多分おっぱいまでは出してるであろうマコに、カーテン越しに言った。 「着替えてんの?そのまま服着ればいいのに!」 「あっあっ、そうだよね、でもちょっと濡れちゃったから」 濡れたって何だよー、もうやめてそんな台詞ぅぅ。 さっき座り込んだ時とかに、ちょっと水着が濡れちゃったんだろう。 そんなのわかってても、おっぱい丸出し(多分)で「濡れちゃった…」とか言われたら。 俺もうやばい。タオルを持っておくことにした。 「とにかく早くして、誰か来たらまずいよ」 「あっうん、やっぱり水着は着たままにする、ん、んしょ」 また着ようとしてるー!このどっちつかずっっ!俺は思わず叫ぶ。 「もういいよ!途中まで脱いだんなら、全部脱げよー」 「わわごめん、そうだね、脱ぐね」 ごそごそ動いてる音がして、多分マコはすっぽんぽんになった。 俺が「脱げ」と言ったら、マコはそれに従った…。 脱げという命令に、好きな女の子が素直に従った…。やばい。 それはすごくエッチなことだと思った。 「脱げ」「うん脱ぐ」 やばい、俺もうやばい、限界だ。 *** 俺も海パンを下ろして、勃起したちんこをタオルで押さえて、揉んだ。 そして、聞かなくていいことを聞いた。 「全部脱いだ?」 マコも答えなくていいことを答える。 「うん脱いだ、もうちょっと待って」 その言葉で俺は…射精したっ! どぴゅん、どっぷどぷ、びゅるるるっていう聞こえるはずのない音が、ちんこに響く。 マコの「うん脱いだ」っていう震える声が、頭の中で何度もこだました。 そして、さっき目に焼き付いた、マコのおっぱいふるるんを思い浮かべていた。 カーテンに向かって腰を突き出して、タオルの中に射精した。 カーテンとタオルがなかったら、裸のマコに、精液が無駄に元気よくぶつかったはず。 そんな気がするくらい、すごい量と勢いだったと思う。 その瞬間、いろんな意味で「ああ、終わった」って思った。 一瞬だけ頭の中が真っ白になって、気付いたら、静かだった。 「睦ちゃん…」 カーテンの向こうで、抑揚のない小さな声でマコがつぶやいた。 「…何?」 「何でもない」 そして、パンツを穿く様子が音で伝わってきた。 ぱちん、っていう、ゴムが腰に当たる微かな音で、パンツを穿き終えたのがわかった。 俺もマコもただ黙っていた。 そして制服姿のマコがようやく出てきた。 ※夏休み中だけど、登校時は制服か学校指定のジャージと決められている。 ぼんやりとした表情で、何か言いたそうにしてるマコ。 俺はぼっ起が治まらなくて、もう隠す気力もなかった。 マコはそれをしっかりと見ていたと思う。 またひとつ、俺の変態ぶりが証明されたんだな。もうどうでもいい。 マコは「ありがとう」とも「ごめん」とも言わなかった。 何も言ってくれないし目も見てくれない。 いろんな思いをふり切って、俺は更衣室からマコを追い出した。 ふと気付くと、海パンが濡れていた。 全部タオルの中に出したと思った精液だった。 しみ込み切れない白いドロドロが、海パンにべっとりと付いていた。 マコはさっきこれを見ていたのか。 精液ってどんなものか見たことはなくても、察しただろうな。 ((ああ、本当にもう終わったな)) 泣きそうだった。て言うか笑えた。 *** ふう、気分は全然落ち着かないけど、ちんこは元に戻った。 それにしても。 マコにちんこ見られた。変態だって思われた。絶対嫌われた。 しかも彼氏が出来たってわかってる相手なのに、告白してしまった。 マコのそばで2回も射精したし、それもバレた。 一体何が起こったっていうんだろう。 俺は露出願望があって、見せることを妄想の中で望んでた。 でも実際に見せたら、やってきたのは絶望感だったよ。 【見られた】からかな。見せるのと見られるのは違うってことかな。 あーもうよくわからない。 もういい、終わった。 俺はこれ以上ない恥ずかしい失恋をしたんだ。 だけど同じ時間と空間を、裸のマコと共有出来たこと。 それだけは、オナニーのおかずとして忘れずに生きて行こう。 1人になって泣いちゃいそうだけど、まだ泣かない。 俺はいじめのことを何とかするって、マコに約束したんだ。 気を取り直して、さっきからおぼろげに考えていた作戦を整理する。 森と泉、あのバカ2人を凹ますのだ。 でも、何のために?わからない。 こんなことしてスッキリしても、俺の情けなさは変わらない。 マコにカッコ付けたいって気持ちもあるけど、もう意味がない。 …いや違う、見返りを求めてはいけない! 俺はマコが好きなんだから、嫌われても、マコのためになることをする。 中2病的にでも、そう思わんとやっとれんわー。 いろんな気持ちがぐるぐるして舞い上がって来たから、その勢いに任せて行動開始。 *** 思いつきの適当な作戦だけど、失敗してもリスクは少ない。 悪いのはあっちなんだから、いざとなれば開き直ればいいんだ。 しょっちゅうプールに来てる俺は、あることを知っている。 それは体育のムキムキ先生が、最初の見回りに来る、おおよその時間だ。 もうすぐそれくらいの時刻になる。 先生はいつも、プールの建物に入ると男子更衣室を通る。 泳ぎたい場合はまずそこで着替えるけど、そうじゃなくてもまず更衣室から入る。 そして更衣室のもう1つの出口、プール側に続く出入口から、プールサイドに出る。 その先生を利用するために、建物の外に出て遠目にうかがいながら待つ。 最悪男子生徒でも実行可能だけど、期待通り、ムキムキ先生がこっちに歩いてきた! しかもスポーツバッグ持ってるのを確認。 着替えてプールに入るつもりだ! 数分間更衣室にとどまることになるわけで、さらに好都合。 俺は更衣室に戻って、プールサイド側の出口の横で、息を整える。 入口側のドアでガチャっと音がした。 先生が入ってくる! それと同時に、俺は出口からプールサイドに飛び出す。 そして、さも今来たかのような顔で、森と泉のところに駆け寄った。 「おお、睦ちゃんお早う、ニヤニヤ」と邪悪な笑顔を見せる森泉。 多分こう思ってるだろうな。 ((マコの奴、睦ちゃんのちんこ見たかな!変態って罵ってやるー、ウヒヒ)) でも俺の口から出た言葉は、 「更衣室でマコが倒れてるんだけど!」 森と泉は一気に顔面蒼白ポカーン。「ハ、ハア?何それ!」 「お前ら一緒に来たんだろ?(名簿ノート見たから知ってる) 何でマコだけ男子のとこにいんの!息してないかも知れん、早く見て来い!」 何が起こったんだ〜、と不安そうな顔を見合わせる2人。 ((まさか自殺じゃねーだろーな!))とかヒヤヒヤしたんじゃねーの、バーカバーカ。 そしてムキムキ先生が着替えの真っ最中とは知らずに、2人は男子更衣室に走る。 先生ごめんよー。 *** ぐちゃぐちゃ説明したけど、要は2人と先生を、男子更衣室で鉢合わせさせたかった。 【更衣室に忍び込んだ2人が現行犯で先生に捕まる】という筋書きを作りたかった。 これが俺の作戦でした。 失敗したら補足案もあったんだけど、結果的に全部思い通りに運んだ。 いちいち中の様子を見には行かなかったけど、まあ大体わかる。 先生のムキムキ大人ちんこを見たかどうかまでは知らんし、どうでもいい。 先生にど叱られてるのは見た。 2人はあくどいけど知能はサル以上だから、マコや俺のことを言い訳には使わない。 いじめがバレかねないからな。 俺の仕業と先生にバレても、こっちは構わない。 いじめや変態痴女よりも、泥棒だと先生に疑われたのは、2人にとって幸か不幸か。 それもどうでもいい。知らん。 当然のように俺に文句を言いに来た森泉に、俺は言ってやった。 「お前らマコに謝れ絶対謝れ。 もしこれから先マコに何かしたら、絶対許さん。 何かあったら、今日のこと尾ひれ付けて噂にするからな。 言っとくけど当事者が先生っていう事件だからな、信憑性のない噂で済むと思うなよ」 ここまで言えば、もうマコがいじめられることはない。 でも負け惜しみみたいな悪態をついてくる2人。 「ちっ何それ。ちょっと助けただけでマコの旦那気取りかよ、うぜー」 「カッコ付けたつもりだろ、どうせマコはさわやか先輩と付き合うって知ってんのかね」 「ウチらが邪魔しないと、マコは先輩と付き合っちゃうよ?それでいいのかよ」 負け惜しみは惨めだな。俺はもっと惨めな変態だけどな! 「うるさいうるさいうるさい!俺は謝れって言っただけだ。 先輩とか何とかそんなの知るかっ、大体お前らのせいで俺は! 俺は…っもういい何でもない」 …お前らのせいで俺は、マコに変なとこ見られちゃったんだよ。 恥ずかしくてしょうがないよ。 何で俺こんなに熱くなってるんだろうな、こいつらの言うとおり、おかしいな。 マコに嫌われたのに。何の見返りもないのに。 「とにかく明日もっかいここ(プール)に来て、マコに謝れ。俺も見てるからな」 いつの間にか俺は泣いてて、それに気付いた森泉は、何も言わなくなった。 翌朝のプールサイドに、マコを呼び出して謝罪する、森泉の姿があった。 俺はそれを、プールの外からこっそり、金網越しに見届けた。 それから夏休みの間、俺はプールに行かなかったし、マコにも会わなかった。 俺の初恋は終わった。 *** 新学期になって最初に会話したのは、同じクラスの泉だった。 マコがさわやか先輩への返事を、実は保留し続けていたことを知った。 そして、夏休み中に、丁重にお断りしたらしいことも。 泉は言った。 「睦ちゃんを好きになったからに決まってるだろ!」 森と泉は、あの日更衣室で俺とマコに起こった真実までは知らない。 いじめで閉じ込めたマコを、俺がヒーロー気取りで救った、とだけ認識している。 俺とマコが自然にくっ付くと思うのが当たり前かも。 マコが先輩をフッたとなればなおさら、その理由は俺への好意だと思うだろう。 でも、廊下ですれ違っても、マコと目が合うことはなかった。 いつ見てもマコは暗い表情をしていた。 今までは、クラスは違うけど顔を合わせば、話すことは出来た。 それもなくなった。 いじめを解決したことと、変態行動を見られたこと。 これを合わせたら、良くてプラマイゼロだ。 でもマコの態度を見れば、マイナスだってわかる。 お礼ぐらいは言われたっておかしくないのに。 それすらないんだから、マコが俺を避けてるのは明らかだった。 付き合う付き合わないは置いといても、急接近どころか疎遠になった俺とマコ。 森と泉も、何か不自然だな〜、と感じ始めたみたいだった。 *** いじめと謝罪を経たことで、マコと森泉が仲直りしたかどうかは興味がなかった。 でも時々3人でいるのを見るようになったから、そうなのかも知れない。 その秋、次期生徒会役員の選挙運動が始まった。 マコが生徒会長に立候補したと知って、俺はびっくりした。 勉強は出来るけど、こんなふうに表に出てくるような性格じゃなかったのに。 さらに驚いたことに、推薦人は森と泉だった。 仲直りまではともかく、何があったんだろう。 もうマコと関われない俺は、理由を聞くことは出来なかった。 俺は一応マコに投票したけど、結局落選した。 でも落選しても、生徒会のナントカ役員になれたらしい。 年が明けて、生徒会役員として活き活きした表情で働くマコを見た。 元気になったのかな? 嬉しかったけど複雑な気持ち。もう俺には関係ないことだ。 と思っていた。 *** ある日、森と泉に呼び出された。 場所は、冬なので閉鎖されてる、プールの建物の前だった。 何じゃー、と思って行ってみると、マコもいた。何じゃー…。 2人に突っつかれて、マコが話し始めた。 「ほんとは、会長に当選できたら話そう、と思ったんだけど。 落ちちゃったけど、いろいろやってみて、ちょっとは自信が付いたから、言うね。 あれからすごい恥ずかしくて、睦ちゃんと話ができなくなって、ごめん」 マコは、しっかり俺の目を見て、言ってくれた。 「あの時は、ありがとう。好き」 俺は目の前が真っ暗になった!(いい意味で) マコは俺のことを見捨ててなかった!しかも好きって!でも何で! 泉が、原稿用紙みたいのを俺に渡してきた。 会長選挙の最終演説の、ボツ原稿の一部だそうだ。 こんなことが書いてあった。 【私は少し前までいじめられていた、冴えない人間です】 【本当は、こんなところに立つような人間ではありません】 【でも私は変わりたい。そう思って立候補しました】 【私をいじめから救ってくれた人がいます。私もそういう人になりたい】 【自分が恥をかいても誰かのためにがんばれる、そんな人になりたい】 【まだその人には、恥ずかしくてお礼も言えていません】 【私にはまだ、恥をかく勇気がありません】 【私にはまだ、その人の前に立つ資格がありません】 【生徒の皆さんのためにがんばる生徒会長、という立場になれたら、その資格を持てるような気がします】 森と泉はニヤニヤ笑っていた。 「公開ラブレターみたいだからボツにした!でも睦ちゃん、良かったなあ」 そして俺とマコを2人にしてくれた。 でも、キスでもするんじゃねーか!と期待しながら遠くから見てたらしい。 その期待は外れたけど、でも、俺の初恋はまだ終わってなかったんだな…。 *** 俺はヒヤヒヤしながら聞いた。 「あんなことがあって、何で俺好きになんの…」 マコは涙目で笑った。 「ほんとは、前からちょっと好きだったよ」 まじですか! 「でも、だったらなおさら、幻滅されることじゃん!」 「うん、はっきり言って気持ち悪かった!」 「ぎゃふーん」 ちょっと間を置いて、マコが言った。 「睦ちゃん言ったよ、裸で好きな人の名前呼んだら、ドキドキして嬉しいって言ったよ」 「そんなこと言ったっけ(改変されてるような気もするけど)」 「私もあの時、ドキドキしたよ、何か嬉しくなったよ…」 思い出した! あの時マコは、すっぽんぽんのカーテン越しに、俺の名前を言った。 「何でもない」ってその時は言ってたけど、あれは、俺の真似をしたのか。 そして、ドキドキしてくれてたのか。 「気持ち悪いって言ってごめん、でもあとで思い出したら、そうでもなかった。 思い出しながら、お風呂とかで、睦ちゃんの名前呼んだらドキドキして嬉しくなる。 睦ちゃんの言った通りだ、だから、私は睦ちゃんが好きなんだなあって思った」 「でもマコ、そのドキドキって、」 「内緒!」 その時俺は理解した。 変態行動を見ても、俺を嫌いにならなかったのは、マコも変態だからだ! そのドキドキって、エッチな気分になるって意味だよ。 それはマコも自覚してるはずだけど、教えてはくれなかった。 俺のちんこを思い出して、オナニーしたのかも知れない!!! 全ぼっ起したけど、冬服(学ラン)だからバレなかった。 バレなかったけど、マコはその部分を見ていた気がする。 *** 中学3年になって、また夏休みが来た。 マコとプールに行こうと約束した。 でも前年と違って日数と時間がかなり制限されたので、すいてる日はなかった。 そこそこ賑わってるプールの前で、マコが残念そうに言った。 「更衣室も人がいっぱいかな」 「うん、でもしょうがないじゃん」 「去年みたいなことにはなりそうもないね」 去年みたいに、更衣室で2人になりたいって意味かな! 一緒に着替えたり、2人で裸になりたいって意味かな! それを期待して言ったのか、ただ何となく言っただけなのか、判断できなかった。 確かめるために、聞いてみた。 「…マコは服の中、水着着てる?」 「ううん」 「俺も穿いて来てない」 「何で穿いて来なかったの」 「マコは何で?」 お互いの質問には、どっちも答えなかった。 だからもうひとつ聞いてみた。 「じゃあ俺んち(学校から徒歩3分)で着替えてから行く?」 これには即答したマコだった。 結局この日、俺たちはプールに行かなかった。 <<プールの更衣室でちんこを振り回すと、かなりの低確率でこうなる>>終わり。 出典: リンク: |
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