人魚物語 (ジャンル未設定) 1682回

2015/09/25 09:39┃登録者:えっちな名無しさん◆UokxQKgo┃作者:あでゅー
20150911-『人魚物語』byあでゅー


1.出会い

ここは北海道、釧路市。
私は幣舞橋の欄干に佇む人魚像。
何時から此処にいるのか、誰に創られたのかは、知りたくは無い。
けれど、私のブロンズの身体は汚れて、誰も振り向いてはくれない。
それが悲しい・・・。


ある日、私の足元に一人の男が佇んだ。
彼は、私の身体についた鳥の糞を取っていたのだ。
私は一言「ありがとう」が言いたくて、立ち去る彼の手を掴んだ。
彼は一瞬驚いた。
(私も驚いた)
そして、裸の私を見て、慌ててコートを掛けてくれた。
私は嬉しくって彼を抱きしめた。
彼は驚いた顔と困った顔をして、

「もしかして、君は人魚像なんだね?」

私はこくり、と頷く。

「寒いだろう、お出で」

私を受け入れてくれた。
嬉しくって彼の左腕に掴まって付いていった。


彼の家で紅茶を飲みながら、私に起こった事を話した。

「・・・と言う分けなの」

彼はやっぱりか、と言う顔をした。
私は、『人魚像が人間に恋をして人間になった』と話した。
私にも今でも信じられないが、現実に起こったのだ。

どうしたものか、考えていたようだが。
どうやら、この運命を受け入れたようだ。

「僕の名前は北野タケル。よろしく」

彼はにっこりと笑って手を差し出した。
その手を握り締め、私も名前を言った。

「私はマリア・マーメイド。
こちらこそ宜しくタケル」

「さあて・・・。これからどうしようか?」

「あの・・・。私をお嫁さんにして!」

彼は少しの間考えていたが、どうやら決断してくれたようだ。

「分かった。
君をお嫁さんにするよ」

「嬉しいわー、ありがとう!」

彼の抱きついて、キスをしようとしたが、それを人差し指で止められた。

「その前にまず戸籍を作らないとね」

「戸籍?」

「これが無いと何かと面倒なんだ」


彼は、ネットと言う物で調べ物をした。
その結果・・・

「君は僕の友人の子供だ。
その友人が、君の出生届を出すのを怠っていた。
そして今度、提出する。
そうすれば、簡単に戸籍は作れる。
そうすれば、結婚も出来るし、お医者にだって掛かれる」

「タケル。嬉しい」

「さあて、明日は忙しいぞ
そうだ、その前に打ち合わせしないと」

彼は電話して、友人に約束を取ったようだ。


それから、彼の作ったカルボナーラとコーンスープを平らげた。
どちらも、最高に美味しかった。

次に、風呂と言うものに入れてもらった。
さっぱりした。
彼は目線に困っていたけど。

彼の服を借りた。
「ちょとブカブカだけど、明日買って来るから我慢してね」
って言われた。

それからベッドは彼のを借りた。
彼はソファーで寝た。
フッカフッカだった。
夢のような一日が終わった。


2.戸籍、そしてバイト

翌日、朝食を摂り、服を買いに出掛けた、二人で。

真っ赤なベレー帽、白いデザインシャツ、グレーのフレアスカート、カーキ色のダッフル
コート、中くらいのヒール。

大人になりきれない子供、がテーマなんだって。


昼食は、お気に入りになったパスタを食べた。
ペペロンチーノ、病み付きになりそうな美味さだった。
デザートにパンケーキを食べた、頬っぺたが落ちたよ(笑い。

人間になれてホント良かった。


午後から彼の友人に頼み事をしに行った。

「・・・と言う分けなんだ。
どうかお願いします」

彼は頭を下げて頼んだ。
唖然とする友人を前に、私も頭を下げた。

「お願いします」

その友人は開いた口を閉じて言った。

「分かった。任せとけ!」

良い友人を持ったと彼は言った。
恩にきるとも。

「それよか、サイン色紙書いてくれ。
本当の名と戸籍の名だぞ」

マリア・マーメイド、本郷マリア。
友人の本郷さんは、その色紙を大事そうにしまっていた。
人魚像から人間になった、初めての人の色紙という事だ。
そう多分、世界に私一人だけだろう。


用事は全て終わり、何をしようか考えた。

「そうだ!結婚の準備をしなきゃ」

「その前に・・・。
人間社会の勉強をしなくちゃ」

彼はそう言って、色々な所に連れて言ってくれた。

まずは、彼のやる事を見て、言う事を聞いて、やって見て、上手くいったら、褒めてくれ
た(山本五十六さんの言葉だって)。

そうして、買い物、銀行、バス、などが上手く利用できるようになった。

それから、やっちゃいけない事、しなくてはならない事、を教えてくれた。

「これで、一人でも外出できるね」

頭を撫でてくれた。
えへへへ

晩御飯は彼に教わって作った。
ペペロンチーノが美味しく出来た。
大満足!


次の日から、彼はお仕事に行った。
私はその間、町を散策したり、カフェで昼食を摂ったり・・・。
映画と言うものを観た。
あれはもう一人ではいかない。
涙が止まらなくて困ったからだ。

それからカフェの仕事がしたいなー、と思った。
色んな料理がお給料を貰って勉強できる。
帰ってきたら相談してみよう。


「おかえりー。タケル」

「只今。今日はどうだった?」

「うん、いろんな所へ行ったよ」

「それで・・・」

「川原沿いを散歩したよ。
それからカフェで昼食を摂ったんだ。
映画も観たよ。
涙が止まらなくて大変だった」

「もう一人前の人間だね」

「うん。ありがとう。
それでねぇ・・・」

カフェでバイトしたいと話した。

「賛成だよ。やると良いよ」

「ありがとう。ありがとう♪」


次の日から、カフェのバイトを始めた。
初めはギコチなかったが、慣れてくると笑顔がいいね、って言われた。

「店長、駄目ですからね。
私には、彼氏がいるのです。
あっ、もう直ぐ旦那さんになる人です」

店長は、「店の娘に手を出さないよ」って言ったけど、寂しそうだった。

私はお目当ての調理を教わった。
大好きなペペロンチーノ、パンケーキ、ホットサンド、それにご飯の炊き方、みそ汁の作

り方、etcを習った。
一度見ただけで上手く出来たので、才能が有るんだって。
次の日から、調理担当になった。

その晩、タケルに私の作ったご飯を食べてもらった。
すんごく、感激してた。


3.高校生へ

次の週、私と友人の本郷くんは市役所へ行って、晴れて本郷マリアとなった。
これでタケルと結婚できる。

誕生日は19XX年12月25日にした。
彼が私を人間にしてくれた日だ。
それに世界中の人がお祝いしてくれる特別な日だ。

「それで何時にする?、結婚式」

「終業式から始業式の間が良いね。
でも、マリアは誰も呼べないよね?」

どしようと、しばし悩んだが、

「そうだ、札幌の羊が丘展望台がある!
あそこだったら、二人っきりでも式を挙げれる!」

「二人で電車で行こうね」

タケルはそう言って、電話を掛けて予約をしてくれた。
終わった所で、疑問を投げかけた。

「ところで、タケルは何の仕事をしているの?」

「そういや、言ってなかったね。
高校の先生だよ。
高校名は釧路江南高校」

「ふーーん・・・。
私も行きたいなー」

「大学は大検があるけど、高校は無いなー。
どうした行けるんだろう」

そう言ってまたネットで調べ物をしていた。

「うーーん、載っていないなー」

私がしょんぼりしていると、

「大丈夫だよ。きっと入れるよ」

そう言って、教育委員会に電話をした。
親の虐待で戸籍が無くて学校に行けずに今まで来た。
今20才だ。
もし編入試験に受かれば是非高校に通わせたい。
それは可愛そうに、こちらも対応します。
と、話を付けた。

「4月まで勉強頑張るんだよ。
それが駄目でも、また中途で編入試験はあるからね」

「うん。大好きータケル」


それからは、私は忙しかった。
なにせ、バイト、勉強、花嫁修業?だから。

「それにしても、少1から中3までの勉強を、この短期間で出来るなんて、もしかして、天

才?」

ってタケルに言われた。
そうなのかな・・・分からない。
多分先生が良いんだよ。

余り目立たないように、少し間違えたほうがいいのかな。


4.結婚

編入試験を無事パスし、4月から高校生だ。
2割ほどワザと間違えたが、それでも出来すぎたようだ。

そしてその前に結婚式だ。
前日に電車で札幌入りした。
釧路を出たのは初めてだ。
あまりはしゃいだので、怒られた。
しゅん。

ホテルはJRホテル。
パンフレットに出てる、あの最上階のスイートルームだった。
ここで二人は初めてエッチした。
ちょっとフライングだけど、盛り上がってしまった。
最高にロマンチックだったよ。

次の日、羊が丘の展望台へ行った。
札幌ドームが魅力的だったけど、誘惑に負けなかった。
なにせ今から結婚式なんだと思うと、緊張するやら、涙で視界がぼやけるやら、兎に角緊
張する。

ウエディング・ドレスを着て、タケルに見せに行ったら涙ぐんで、今からこれじゃ式まで
持たないよ、って抱きしめられた。

「新郎タケルはxxxx誓いますか?」

「はい、誓います」

「新婦マリアはxxxx誓いますか?」

「はい、誓います」

「それでは指輪の交換を」

「新郎は新婦に口付けを(ハート」

キンコンカンコンと鐘がなる。


「きっと写真を見て幸せな気分になるんだろうね」

「そうだね、今日の日をずっと忘れずに居ようね」


結婚式の後は、タケルの運転でミニ新婚旅行へ行った。
北海道一周旅行だ。

釧路を出て、阿寒(マリモ)、摩周湖、根室、花咲岬(カニ)、網走(刑務所)、宗谷岬
、利尻、礼文、旭川(動物園)、札幌、小樽、余市(ウイスキー)、函館(トラピヌチウ
ス修道院)、襟裳岬、そして釧路に到着。

いっぱい見て、いっぱい食べて、いっぱい笑って、そしていっぱい愛を語り合いました。
タケル、ありがとう。


5.高校生に

私は春から高校生になった。
タケルの居る、そしてタケルが通った学校だ。
机の傷や、黒板のチョーク跡、廊下の凹み、黄色の校舎、満開の桜、どれもタケルの居た
侭なんだ。
私は嬉しくって、一つ一つに手を当て、その呼吸を感じた。

「おはよう。マリアさん」

同級生の春君だ。
私に色々優しくしてくれる、良い人だ。
私を虐待されて今まで学校に通えなかった可愛そうな子、と思っている。
(でも20歳だが)
噂は皆知っているようで、殆どの人がどう接していいのか分からず、腫れ物に接するよう
にしていたが、春君は違う。
何かと話し掛けてくれる。

「おはよう。春君。
昨日貸してもらったCD、聞いたよ。
本当にほんわかする声だったね」

「だろう。高鈴ってなんか懐かしい温もりがあるんだよね」

「ねえ、もう少しだけ、もう少しだけ、聞いていて欲しい・・・」

「愛してる。いいよね」

春君は、高鈴の素晴らしさを、切々と語った。
それは、もう恋人でも語るように。

タケル以外で、こんなに話したのは初めてだ。
私は学校に行くのが益々楽しくなって仕方が無い。
それをタケルに話すと、タケルはニコニコしながら聞いてくれた。


ある、日春君が学校を休んだ。
お見舞いに行くと笑って迎えてくれたが、二人になると笑顔が消えた。
彼は親から虐待されていたのだ。
私はどうして良いか分からず、彼を家に連れていった。

「大変だったね」

とタケルは言って、どこかに電話をした。

「はい、はい、明らかな虐待です。
緊急避難が必要です。
よろしくお願いします」

電話を置いた。

「春君。君は今日から暫くここの住所にある施設にお世話になる。
いいね?」

「有難うございます」

そう言って春君は泣いた。
いや、涙を出さずに、泣いていた。
そう感じた。

係りの人が来て春君は連れて行かれた。
神様、彼に安住の時を。


6.禁忌

それからは、春君は施設から学校に通った。
袖口から見える傷は少しずつ癒えてきた頃。
新しい引き取り手が決まった。
転向の前日、春君に呼び出された。

「前から好きでした」

それは分かっていた事。
うん、私も春君が好きよ。
でも、それは口に出せない。
沈黙が続く。
それを破ったのは春君だった。

「僕は君を抱ければ、これから強く生きられる気がするんだ。
おねがいだ。
最後に君を抱きたい!」

精一杯の告白だった事は、震えてる彼の足元を見れば分かる。
私も勇気を出して言おう。

「・・・いいよ」

そっと彼の唇が私に甘い時間をくれる。
やがて、彼の手と唇は私を快楽に導いてくれる。
そして、彼が私に入って来る時、
それは起こった!


気が付くと私は、橋の欄干にいた。
裸で。
腕も足もブロンズだった。
ああ、彼以外の人を愛する事が禁忌だったのね。
それが分かっても、もう遅い。
遅いのだ。

私はこれから、この悲しみを背負って、
ここに佇まなくてはいけないのか。
神様はなんて残酷なのだろう。
いっそ壊して欲しい。
私の像に涙の跡を見付けたら、
誰か私を壊して・・・。


ああ、タケルだ。
タケルが来た。
ねえ、私を壊して。

涙を流しているの?
ごめんね、タケル。
私の過ちで、こんなになって。
ごめんね。

でも、楽しかったよ。
タケルと過ごした時間は、私の宝物だよ。
だから、もう泣かないで。
お願いだから泣かないで。

誰かを見つけて、今度こそ幸せになってね。


それじゃ、さようなら。
私の愛しい人。


(終わり)

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