平安時代へようこそ (オリジナルフィクション) 4541回

2015/10/09 08:32┃登録者:あでゅー◆UokxQKgo┃作者:あでゅー
20151005-『平安時代へようこそ』byあでゅー


それは突然だった。私は時空を超えたのだ。タイムリープだ。

道を只横切っただけなのに、私は突然知らない場所にいた。眼に見える景色が私が今まで居た世界とは違う。背の低い木の建物、車も無ければ舗装道路も無い、そして如何にも昔風の着物をまとった人々しか見当たらなかった。初めは映画のセットの中に迷い込んだと思い出口を探した。だが何処まで行ってもセットは終わらない。疲れて座り込みこの状況を必死で考えた。

これはとんでもない所へ来てしまった。俺はこの世界で生きていかなきゃいけないのか。凄く不安だ。どうすれば良いのか?

まず、この服装では目立ち過ぎるし怪しすぎる。この時代の服装にしなきゃ。しかし、この時代のお金が無いと無理だ。後回し。

それから一体西暦何年なんだ?これから何が起こるか知らなきゃ危険すぎる。いや是非知りたい。しかし、西暦なんて分かりようが無い。天正2年とか言われちゃうんだろう。

そして食べるために働かなきゃ。この事が唯一私に残された事だった。

なんの仕事で?
身体で稼ぐのは体力的に無理。この時代の人は兎に角歩くので体力が違う。なにせ乗り物が無いのだから。

文書書き。平仮名が普及するのは900年辺りからだ。どうやらもう既に使われている?だが用心の為に止めとこう。漢文?出来る訳無い。

数の計算。これなら九十九は多分行けるだろう。割り算なんてそれ何?の世界だろう。よし、これで行こう。

運良く道端に落ちていた御座を腰に巻いて、私は大きな建物へ行った。
「済みません。私は算術が出来るのですが、何か働き口はありませんか?」
「戯けた事を申すな。どっか行け」
「5の6倍は30、7の9倍は63、4の9倍は36、・・・」
「ちょっと待て!適当な事を申すな。今計算させているから待て」
「合ってる!ちょとこっちへ来い」

上手くいった。これで生きていける。

私を救ってくれたのは高槻楠根。私はこの人に忠誠を誓い一生ついて行くと誓った。それはそうだろう。あのまま何処にも雇って貰えなかったら私は飢え死にしてた。御座を纏っていた奴を雇うだなんて私だったら御免だ。本当に高槻様、彼には感謝している。

後で知ったことだが九十九は貴族の中では教養の一つとして勉強するらしい。何れにしてもこれが出来ると貴族だと思われる。きっと私も貴族の家を勘当されて、みすぼらしい格好をしていたと思われたらしい。結果オーライだ。

私は今で言う税務所に就職が決まった。そこでは規律と根回しと賄賂が重要だった。この時代からもうやっていたのか賄賂・・・。取り合えず毎日せっせと出所して誰にでも丁寧に挨拶して仕事は一生懸命やった。所内で時折意見が分かれたが私は迷わず高槻様に付いた。そして高槻様に意見を求められれば真剣に考え一番良い方法を伝えた。

噂話で分かった事だが、やっぱり平仮名は普及し始めている。だが男は相変わらず漢文しか使っていない。まだ中国の威信に憧れているのか。ご苦労なこった。私はプライドなんて無いから平仮名OKだ。喜んで使わせてもらう。私は昔パソコンでやった様に紙に物語を書き始めた。楽しいなー。

そして漸く平安京に遷都して137年だと分かる。これはお坊さんが言っていた。お坊さんは頭が良いなー。それで今は西暦931年。後4年で平将門の乱か。狩り出されないように気をつけよう。それにしても平将門さん。いいなー、一度会ってみたいなー。いや、遺憾。余計なことに首を突っ込まないようにしないと・・・。



就職して3年目に高槻様と私は中央に呼ばれた。多分税の徴収が上手くいっていなのだろう。私は高槻様に事前に税の徴収方法を人頭税から土地に対して課税することを進言した。それまでは人数を誤魔化したり重税で土地から逃げたりで税の目減りは深刻だった。これで少しは良くなるだろう。そう高槻様に言った。高槻様は私の話を理解されたようで、彼の説明を中央の偉い人は大層熱心に聞いてくれた。そして帰り際に私の名前を聞かれた。

「この者は近畿五郎と申す者。私の良き相談相手です。これは他言無用に願います。取られては堪りませぬからな。はははは」
「本当か近畿?」
「ははー。高槻様は大げさに言ってるだけです。私は高槻様の僕ですから」
「面白い事を申すな。ふふふ。高槻、良い部下を持ったな。大事にせいよ」
「はは。その様に致します」

私の名は都でまことしやかに噂された。高槻が相当な知恵物を手に入れたと。私としてはそんな気持は無く、只歴史をちょっと知っていたから言えた事で、本当に歴史をちゃんと覚えていればもっと適切なアドバイスが出来たと思う。なんせ私は数学と化学以外はオール3だったから相当頭が悪い。

これで高槻様の出世は相当早まったな、とほくそ笑んでいた。彼も益々私を信頼して色々な事を聞いてくれた。私は無い頭を使って一生懸命に高槻様のお役に立てるように努力した。そして息抜きとして平仮名を使った物語をたくさん書いた。

所がひょんな事から高槻様に遊びで書いている平仮名の物語を見られた。彼は暫く考えていたが眼を見ひらいて言った。

「まさかこれほどの才能が有るとは・・・。ちょっと考えてみる。まあ悪いようにはしないから」

それっきり高槻様は行ってしまった。翌日高槻様は私を家に呼んだ。そこには高級な服を着た者が居た。高槻様が言うには、

「お前は今日から源氏だ。名は順と書いて『したごう』と呼ぶ」
「えっ?何故私がそんな恐れ多い名を語らなきゃいけないんですか?」
「それは私が話そう」

要するに嵯峨源氏はいまや衰退の一途だ。それを打破するために有能な者ものをヘッドハンティングしている所だ。そして私が選ばれた。是非嵯峨源氏を清和源氏に負けないくらい守り立てて貰いたい、と言う事だ。私はちょっと間考えさせほしい、と言って返事は後日にして貰った。

私なんかが歴史の表舞台に立っても良いのだろうか?もしもタイムリープして来たってばれたら拙いな。それに私はそれ程頭が良くない。単に現代の知識を利用させて貰っているだけだ。でも断れる雰囲気じゃない。きっと断ったらあの腰にある刀でバッサリ切られるかも。そうだよな、俺みたいなどエセ貴族に内情をあそこまで晒しちゃ殺すな、きっと。

翌日私は渋々OKを出した。今日で高槻様とお別れだ。本当にお世話になった。涙でお別れが言えない。

「高槻様・・・ううう。お世話に・・・うえええん」

もう何を言ってんだか分からん。それを聞いていた高槻様も貰い泣きか。

「元気で暮せよ。達者でな・・・」

こうして私は嵯峨源氏の一族に貰われていった。これからどんな運命が待っているか、本当に全員見方なのか、後からバッサリ、って事も考えられる。それを思うと高槻様の広い心が思い出されて余計泣けた。私はその偉そうな人に付いて歩きながらドナドナを口ずさんだ。



嵯峨源氏、この一族は800年頃に天皇の次男か何かが源氏の姓を賜った様に記憶する。この一族は根回し付け届けが下手で、何時の間にか後から出てきた清和源氏に美味しいところを持っていかれたと聞いた。最近は地方の役所の仕事を細々とやっている、言わば落ち零れ貴族の成れの果て。これをどうやって再興すれば良いのか、頭が痛い。

それなのにこの一族は未だに昔の栄光にすがって生きている。まずその考えを改めることが必要だ。しかし私なんぞが言う事に耳を貸す分けは無い。まずは清和源氏に取り入って地位向上を図った。

「源の満仲様ー。貴方の漢文が一番優れているとお聞きしました。是非私にもご指南を」
「そちは名を何と申す?」
「ははー。私目は源順です。嵯峨源氏で貴方の足元にも及ばない若輩者ですけど」
「分かった。付いて参れ」
「ははー」

漢文は難しかった。物覚えが悪い私の頭では教えられた事の十分の一も覚えられなかった。

「難しいですね漢文は。私の頭では理解不能です。平仮名だったら簡単に覚えられたのに」
「ほほー。そちはその様な女子の文字をやっているのか・・・。どれ私にもその簡単な平仮名と言う物を教えてくないか?」
「ははー。満仲様のお慰みになるか、努力いたします」

こうやって源満仲に今流行の平仮名を教えることで上手く取り入った。私達はお互いの下の名前を呼び合う仲になった。もっとも私は様を付けていたが。歳も私が一つ上だが低姿勢で行った。所で私の名は順と書いてしたごう、と呼ぶ。それは嵯峨源氏一族に従えと言う意味だと聞いた。私はその名前を利用して、有力者に『従って』行った。

それで私は遂に成果を挙げた。満仲様に嵯峨源氏の姫君(後のかぐや姫のお母さん)をお嫁入りさせたのだ。これには主人の源昇(のぼる)も大層満足気で、良くやった、との言葉を人伝に聞いた。勿体ぶらないで直接言ってくれれば良いのに。こんな所が衰退の原因なんだ。私はここぞとばかりに満仲と源昇の息子源仕(つこう)の交友に尽力した。しかし、源仕は武蔵の国へ赴任してしまった。私の工作は不発に終わった。

そして遂にあの有名な乱が起こる。935年平将門(まさかど)の乱と939年藤原純友の乱だ。前にも言ったが私は平将門さんは凄く好きで憧れだった。一度会ってみたいと思っていた。そんな折私に説得してみないかとの話が来た。私が彼に憧れているとの噂が朝廷のお偉いさんの耳にでも入ったのであろう。ちょっと怖かったが私は引き受けた。

私は藤原秀郷の一歩前に平将門さんに会った。私は将門さんの熱心な信望者だと言ったらすんなり会えた。

「将門さん。お会いできて嬉しいです。貴方は私達の世界ではヒーローですよ」
「ヒーロー?何語だ?どうせ悪い噂だろう」
「貴方の事は良く知ってます。農民の為に立ち上がった勇者だって」
「そうか。分かる人には分かるんだな・・・」
「でも今回は将門さん、幾らなんでもやり過ぎでしょう?まさか国司を襲撃するなんて」
「・・・」
「だからあんな最後を・・・」

しまった。口が滑った。

「お主は相当な知恵者だと聞く。そうか私は近いうち死ぬのか・・・」
「・・・正直に言います。あなたは940年に死にます。いや違った。5年後に死にます。しかし、貴方の勇士は千年も語り継がれます。民衆を救ったヒーローもとい英雄として」
「千年もか!・・・ふふふふ。悪く無いぞ、悪く無いぞ、我が人生は。立派に花を咲かせようぞ。わははは。お主、名は何と申す?」
「源順と書いてしたごうです。本当の名は近畿五郎です」
「達者でな近畿。では」

説得は初めから無理な事は分かっていた。私は丁寧な接待を受け将門さんの元を後にした。胸に痛みを残し・・・。

私の噂は一時都でも噂された。あの乱暴者の平将門と対等に話したと。これには主人の嵯峨源氏の棟梁である源昇様も驚いた。只の知恵袋から勇者として敬られた。いや、私は単なる馬鹿ですからと言っても誰もそうは思ってくれない。そして940年、平将門は最後を遂げた。農民の裏切りによって。私はこの話を物語にしよう思う。思い込みたっぷりで。

藤原純友の乱も同時期に有って、彼の説得もやってくれないかとの打診も有ったがそれは丁重にお断りした。私はそんなに説得は上手くない。だって頭が悪いんだもん。将門さんは個人的な気持でお会いしただけで。彼だけは特別なんだ、私の中では。

それから私は源仕(つこう)が武蔵の国から帰るのをずっと待っていた。しかし彼は中央には戻らず武蔵の国に土着してしまった。950年の事だった。お役御免と成った私はする事無しに竹取地方に隠居した。隠居するだけの蓄えが出来たのだ。

私はもう39才に成っていた。この歳でまだ独身なのは何時元の世界へ帰っても良いように。だって奥さんと子供をこちらに残して自分だけ現代に帰る訳にはいかない。そう思ってこの歳まで独身だったが、今となってはもう元の世界に返る事は諦めていた。

今日も溜息を付いて竹を切っていた。その時だった。突然私の前に若い美女が現れた・・・。


(終わり)

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この後は『転生』へ続く。
『転生』
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