ジジイと老婆と山羊 (恐怖の体験談) 9253回

2016/06/12 06:48┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
721 :本当にあった怖い名無し:2009/08/16(日) 06:47:26 ID:11KLgdvXO 俺が小学生の頃だから、今から10年以上前の話 だ。 その時、俺は家族でF県I市にある、母方のばあ ちゃんの家に泊まりに行ってた。 ばあちゃんちに行くと、俺と2つ上の兄は、 よく叔父が飼っている猟犬のダルメシアン(名前 はコテツ)を借りて、山を探検していた。 コテツの首輪には発信器がついてたから、うちの 両親も、コテツが一緒なら大丈夫だろうという感 じで、 俺達を自由に遊ばせてくれていた。

そんな俺達が、「絶対に近づくな」と言われてい る場所があった。 ばあちゃんちから1~2キロぐらい離れていたとこ ろにある家だ。 その家はボロボロの平屋で、とても人が住んでい るようには見えなかった。 でも、人は住んでいた。 名前が喜一(漢字が合ってるかは分からない)と いう、70才くらいのアル中のジジイと、その奥さ んである老婆。 老婆は、たまにばあちゃんちに逃げてくることが あった。 酔った喜一が暴力を振るうみたいで、確かに老婆 の目の上が大きく腫れ上がっていたのを覚えてい る。 それを、怒鳴り声をあげながらナタを持った喜一 が、探しに来たことがあった。 ばあちゃんは、「知らない」と軽く流して老婆を 匿っていた。 そういった事があったから、俺達は子ども心に、 あの喜一というジジイが危ない人間である事、だ から親や親戚は近づくなと言ってるんだ、 という事を理解はしていた。

それでも、俺達はその言い付けを守っていなかっ た。 理由は、喜一が二頭の山羊を飼っていたからだ。

722 :本当にあった怖い名無し:2009/08/16(日) 06:48:43 ID:11KLgdvXO 小学生にとって山羊という生き物が、どれ程興味 をそそるかは言うに及ばないだろう。 紙を食べさせてみたり、ばあちゃんちの畑から適 当に食べそうな野菜を持って行って、 木でできた格子越しに山羊に与えたりした。 山羊の檻は庭にあって、喜一の家から20メートル ぐらい離れていた。 物陰に隠れながら、こっそり山羊と触れ合う。 喜一に見つかるかもしれない、というスリルでま た楽しさが増した。

そしてその秋、俺達にとって一生のトラウマとな る事件が起こった。

また今回も、「山羊のところにいくぞ」と兄が言 い、俺も賛同した。 両親や親戚には「裏山に行く」と言い、コテツを 連れて家を出た。

家を出て坂を下り、一度平坦な道に出てしばらく 歩いた先で、また段々畑の脇道を上る。 秋でトンボが多くて、道の途中で振り返ると、黄 金色の水田が段になって続いていて、美しい風景 が広がっていた。 突然コテツが吠えだし、もの凄い力でリードを振 り払って駆け出した。 やばい! 道の真っ直ぐ先は喜一の家だ。 俺達は焦って、猛ダッシュでコテツを追いかけ た。

723 :本当にあった怖い名無し:2009/08/16(日) 06:50:41 ID:11KLgdvXO 息を切らしながら、俺達は喜一の家の手前まで来 た。 すぐ先でコテツが、けたたましい鳴き声で吠えて いる。 コテツが吠えている先の物を目にしたとき、俺達 は戦慄した。 真っ赤な血に溢れた金ダライ。その横に、山羊の 頭が転がっていた。 叔父も亡くなった祖父も猟師だったので、俺達は それを見て喜一が何をしたのか理解した。 喜一は山羊を喰ったんだ。

でも今はそれどころじゃない! 早く逃げないとやばい!! コテツが吠えているので、喜一が出てくるのも時 間の問題だと思った。 兄がリードを掴み、しっかりと手に巻きつけて、 俺達は一目散に坂を駆け下りた。

少し離れた所で、喜一が追いかけてきていないこ とを確認すると、兄が言った。 「山羊の頭、ひとつだけだったよな?」 …確かに、転がっていた頭はひとつだけだった。 「うん」 「もう一匹は逃げたのかな。助けに行こう」 兄が何故そういう考えに行き着いて、そして何故 自分がそれを了承したのかも、今となっては思い 出せないが、 あわよくば山羊を貰ってしまおう、という考えが あったのかもしれない。

喜一の家とばあちゃんの家の間にある隠居さんの 所にコテツを預けて、俺達はまた喜一の家の坂を 上りだした。 夕暮れで、日は既に落ちかけていた。

725 :本当にあった怖い名無し:2009/08/16(日) 06:52:08 ID:11KLgdvXO 喜一の家に辿り着くと、さっきの頭と金ダライが 消えていた。 それでも、まだ乾いていない血の跡が地面を濡ら していた。 俺達は気付かれないように周囲に注意しながら、 喜一の家の裏に回った。 最初に来たときにすれ違わなかったから、山羊は きっと、逃げたなら裏山に入るはず。そう考えた からだ。 迷っても、南に行けばばあちゃんちの裏山に繋が るはず。 傾斜の方向の左手に行けばなんとかなるだろう、 と適当な事を考えながら、俺達も山に入った。 山に入るとすぐ、きちんと舗装された道に出た。 「ばあちゃんちの方にはこんな道ないよね!?」 と、新たな発見に興奮しながら俺達はその道を 辿った。

ふいに、兄が小声で「隠れろ!」と俺の体を掴ん で、道の脇の木の陰に潜ませた。 「喜一だ」 道のだいぶ先を、こちらに背を向けて喜一が歩い ていた。 何やら叫んでいるようだったが、何を言っている のかは分からなかった。 ここに来て、俺は急に怖くなった。 もう辺りは薄暗く、さらに知らない道だ。 何よりも、あんなに可愛かった山羊を喰った喜一 が、とても怖かった。 喜一は狂ってる。 真っ赤な顔。戦時中の軍人がかけていたような丸 眼鏡。常に緩んで、よだれが垂れかけている口 元。 「お兄ちゃん、もう帰ろう?」 後で馬鹿にされると思いながらも、必死で訴え た。 「じゃあ帰れば?俺はアイツを尾行する」 本当に一人でも帰りたかったが、兄を一人で行か せるわけにもいかず、 俺は半泣きになりながらも、兄と喜一の後を追っ た。

726 :本当にあった怖い名無し:2009/08/16(日) 06:54:23 ID:11KLgdvXO 道を進んだ先に、上に有刺鉄線の付いたフェンス と、開きっぱなしの南京錠のついた金網のドアが あった。 どうやら喜一はこの先に進んだらしい。 兄が先行して、俺はそれについて行った。

坂を上がると、開けた土地に出た。 本当に驚いた。 そこには、少し大きい古い木造の建物があった。 それを見つけた時点で、もうどうしようもなかっ た。 怖くて、兄の手を掴んで必死でもと来た道へと駆 け出そうと振り返った。 その時、建物のある背後から怒鳴り声が聞こえ た。 「あぁ゛殺しっちめ●△*」 殺し~の部分は、確かに聞き取れたので覚えてい る。 振り返ると、喜一が薄暗い影の中から追いかけて きていた。 俺達は、無我夢中で来た道を走った。 喜一は年寄りだったから、早く走れなかったのだ ろう。声と気配はすぐに消えた。

さっきのフェンスの所を通り過ぎた時、兄が立ち 止まってドアを閉め、南京錠で鍵をした。 喜一がそこから出るには、かなり回りこんでフェ ンスの途切れるところまで行くか、 鍵を持っていればそれを使って、金網の隙間から 錠を開けなければならない。 いずれにせよ時間稼ぎにはなっただろう。

俺達はそのまま山を降り、喜一の家の庭を突っ 切って来た道を戻った。 もう辺りは真っ暗だったが、途中で隠居さんの家 に寄り、そこで電話を借りて、 足を捻ったということにして、両親に車で迎えに 来てもらった。 両親は帰りが遅くなった事について特に何も言わ なかったが、 俺達も喜一のところに行ったことと、山羊のこと は黙っていようと口裏を合わせていた。 ただ、あの建物のことはどうしても気になってい た。

727 :本当にあった怖い名無し:2009/08/16(日) 06:55:48 ID:11KLgdvXO 次の日、喜一が死んでいるのが見つかった。 酔って道路で寝ていた所を、早朝に石切場に向 かっていた大型トラックに轢かれたということ だった。 あんな事のあった次の日に喜一が死んだという事 で、俺達は怖くなった。 そして、事の顛末をばあちゃんに話した。 叱られると思ったが、ばあちゃんは悲しそうな顔 をして色々教えてくれた。 ・喜一が山羊を喰うのは昔からで、金がなくなる と一頭ずつ喰っていた。 ・昔は沢山いたが、前にいた二頭がもう最後だっ た。 その二頭には、出て行った娘二人の名前をつけ て可愛がっていた。 ・あの建物は昔の校舎。(分校) 母の10才上の姉の代に廃校となったが、取り壊 す理由も無く、そのままになっていた。 喜一はその土地と建物の管理者だった。 ・分校が廃校になって、そこを喜一が出入りする ようになってから、彼がおかしくなった。 (昔は温厚で誠実な人柄だったらしい)

あの建物に何があるかはわからないが、もう二度 と近づきたくないと思った。 というより、あれ以来俺も兄も、ばあちゃんちに は行っていない。

そして先日、喜一の奥さんである老婆が、数年前 に亡くなっていたことを聞いた。 亡くなった場所が、どうやらあの廃校とのこと。 あの場所の管理を彼女が引き継いだのだろうが、 管理とは一体何をしていたのか。

秋の夜の匂いを感じると、今でも鮮明にあの時の 事を思い出す。 霊感が無い俺には何も感じることができなかった が、きっとあの建物には何かがあるんだろう。 あの校舎は、今でもあの場所に立ち続けているの だろうか。

出典:わかんね
リンク:https://m.youtube.com/?hl=ja&gl=JP#/watch?v=Rkor09EFGH4
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