情けないことに、僕は死んでしまいました。 ここだけの話ですが転落死です。 お恥ずかしながら僕はある女性に恋をしていました。 彼女の名前は由紀といいます。 その語感どおり雪のように綺麗な白い肌をした女性でした。 僕は一目見て、恋に落ちたのです。 由紀は大学二年生で、近所の書店でアルバイトをしていました。 無類の読書好きの僕は、これは紛れもなく運命だと思いました。 僕と由紀は結ばれるためにここで出会ったのだと、そう確信したのです。 僕は勇気を振り絞って、彼女に手紙を渡しました。 とは言っても手渡しでは恥ずかしがるだろうと思い、自転車のカゴへ。 アルバイトが終わり、僕の手紙に気付いた由紀は、それを鞄に入れて帰りました。 僕は幸せでした。 これで彼女に想いが伝わったからです。 明日からは晴れて、運命の相手である僕との幸せが彼女に待ち受けていました。 ですが、彼女からの返事はありませんでした。 むしろ毎日足繁く書店に通う僕と目が合うたびに、由紀は怯えた表情を浮かべるようになったのです。 僕は心外でした。 由紀のことを幸せにできるのは僕だけなのに、彼女は何も分かっていないのです。 それからというもの、僕は毎日アルバイトが終わる由紀を待ちました。 雨の日も、風の日も、夏の暑い日も、雪の日も。 彼女は僕を避けるように、急いで自転車をこいで去っていきます。 毎日、毎日、去っていきます。 僕は逆に考えました。 由紀の家で待ったほうが効率がいいのではないか?と。 我ながら名案だと、よろこび勇んで由紀のマンションに行きました。 八階建ての彼女のマンションは、非常階段からはしごで屋上に行けるようになっていました。 以前下調べをしていたのが役に立ちました。 僕は由紀の部屋に、屋上からそっと訪問するつもりでした。 ですが、あいにく雨の夜。 僕は足を滑らせて転落したのです。 そうして僕は死にました。 暗い、深い闇に僕は吸い込まれていきました。 その後で急に真っ白な光に包まれた僕は、驚きました。 気がつくと僕は、由紀の部屋の中にいたのです。 僕は自分の想いがどれほど強いものだったか、改めて実感しました。 死んだ後もなお、僕は由紀を見守りながら、永遠に側にいるのです。 僕はじっと由紀のベッドの枕元で、由紀の帰りを待ちました。 夏の雨上がりの、湿度の高い夜でした。 由紀は帰ってくるなり白いブラウスを脱ぎ捨てました。 その下の黒いタンクトップの胸元に、僕は吸い込まれるように近寄っていきました。 でも由紀は僕に気付かず、べたつく汗を流したいのか、お風呂へ向かいました。 僕は紳士的な守護霊となり、由紀を見守ることを誓いました。 お風呂から出てくる彼女を、天井に佇みながらじっと待ちました。 やがて、さっぱりした顔をして由紀が部屋に戻って来ました。 恥ずかしながら初めて見る女性の全裸でした。 その柔らかな白いカーブに、僕は見とれました。 ああ、本当なら僕が生きている間に、その肌に触れたかった。 でも今は叶わぬその想いを、せめて一瞬でも味わいたいと僕は願いました。 気がつくと僕は由紀の裸の胸に近づいていました。 細身だと思っていた由紀の美しいその丘陵に、僕は迷わず触れました。 柔らかさや、肌のすべらかな感触を味わうことはかないませんでした。 僕はもう生身の人間ではないのです。 それでもこの高まる情熱をどうしても伝えたくて、僕はそっと胸元にキスをしました。 するとどうでしょう。 僕の中に、彼女の火照った情熱が、激流のように流れこんでくる気がしました。 初めて触れる彼女の肌、由紀の胸元に浴びせた僕の熱いキス。 次の瞬間、奇跡が起きました。 由紀と僕の目が合ったのです。 強い想いがやっと通じ合ったのだと、僕は喜びに浸りながら、由紀をじっと見つめました。 一瞬驚いたような、困惑したような表情をした由紀ですが、すぐにいつもの表情に戻りました。 ふっと強い風が僕の身体を吹き抜ける感覚がありました。 「あー、刺された。最悪」 手のひらで潰れた蚊と、吸われたばかりの赤い血を由紀はティッシュて拭くと、それを丸めてゴミ箱へ捨てた。 出典:2ch リンク:2ch |
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