星泉 絶体絶命(生体解剖) (オリジナルフィクション) 4360回

2018/05/10 22:27┃登録者:えっちな名無しさん◆RXcNtpf.┃作者:名無しの作者
 星泉は高校2年生で暴力団の新任組長。死んだ先代組長の縁者ということで祭り上げられてしまった。亡父からヘロインを預かっていると疑われ、対立する別の組に捕らえられてしまう。脅して隠し場所を吐かせようというのである。
 ドクと名乗るボスの手で機関銃の人間標的にされたり、ずぶぬれにされて冷凍室に入れられたりしたが、知らないものは言えるわけがない。

 次に連れていかれたのは手術室のような部屋だった。頭上に大きな照明、手術台、手術道具を満載したワゴンのようなもの・・・。なめらかなリノリウムの床、清潔に明るいグリーンに塗られた壁。手術台には真っ白なシーツがかぶせられていた。
 手術道具のせた台には、メス、ハサミ、ノコギリ、ドリルなどが磨き上げられた光を放っている。その冷たい輝きに背筋に戦慄が走った。
 壁のホワイトボードにふと目をやると、<手術予定>とあり、<患者・星泉>とあった。その下を見て、一瞬、恐怖に肌が粟立った。<摘要・生体解剖>とあるのだ。
 ドクが泉を見て言った。
 「私は麻薬を扱っている。主にヘロインだ。金になるのも事実だが、他の意味もあるのさ。分かるかね?」
 泉は黙って肩をすくめた。
 「私の趣味は拷問の方法を考えることでね、すでに二つ御披露したが、麻薬も一種の拷問なのだよ。ヘロインを乱用すると、体内の筋肉に激痛が走り、骨がばらばらになって飛び散ると思うほどの痛みを感じる。そして、悪寒、嘔吐、失神などの激しい禁断症状に苦しむことになる。あまりの苦しさから精神異常をきたすこともある。禁断症状から逃れるために続けると、最後は、呼吸困難、昏睡の後、死に至る。それを思うと快感を味わえるのさ。
 それに、中毒患者は苦しみのために罪を犯してでも薬を手に入れようとする。そのためには強盗殺人さえいとわない。ヘロインの取引を巡っても多くの血が流れることを考えると、恍惚とさえしてくる」
 「ヘロインが罪を作るとでも言いたいの? もともと、犯罪傾向のある人間がヘロインの勢いで罪を重ねるだけでしょ!」
 と、泉は言ってやったが、ドクはそれには答えず、
 「今度のヘロインは、3kgあるから、2億円以上の品なんだよ。これだけあれば、どれだけ多くの人間を苦しませて死なせられると思うかね?
  注射100万回分になるが、1度でも使えば例外なくやめられなくなる。致死量で1万人分になるのだよ。これだけばらまけば多くの人間が殺し合うだろう。すでに君のところの組員とか、何人か死人が出ているようだがな。
 もっとも、習慣性ならニコチンの方が上だな。ニコチン中毒は必ずしも病気になるとは限らん。確率の問題だから、ロシアンルーレットみたいなものだな。肺癌になると肺に水がたまって実際溺れ死ぬこともある。苦しみは言語を絶するそうだ。癌治療は進んでいるが、まだ肺癌だけは有効な治療法がない。そこで、最後はヘロインのお世話になるというわけだ」
 「治療に使うのは、モルヒネでしょ?」
 「アヘンに含まれる鎮痛成分がモルヒネで、それを加工して依存性のある麻薬にしたのがヘロインだ。だから、拷問にはヘロインの方がいい。痛み止めにはモルヒネだが、末期なら禁断症状の心配をするどころではないから、効果の強いヘロインだな」

 ドクが手術台のシーツをめくった。
 手術台に見えた台は緑色の綺麗な台で、胴体部分と両脚両腕部分が分かれていて、それぞれにいくつもの頑丈そうな革ベルトが固定されていた。端には流しが付いている。
  台の脚も普通ではなく、複雑な工作ロボットのようだった。台の頭の方向には、半円形の装置がある。断層撮影装置だろうか。
 「これは特注品の解剖台だよ。生体解剖用に意識のある人間でも固定できるように作ってある。
  ここで何人も解剖してきた。ただ残念ながら全部死体だ、しかし、死体は解剖してもつまらん。コチコチになっとるので、えらく骨が折れるばかりでな」
と首を振る。
 「この部屋にあるのは、そのときに作った標本だよ」
 部屋を見回すと、周りの戸棚に、人体標本らしきものが並んでいる。骸骨、内臓や手足、ゆがんだ顔の頭部もあった。
 「日本軍の731部隊では、中国人をマルタとよんで3000人以上捕まえて人体実験をし、生体解剖もした。毎日2〜3人、多いときは5人も解剖したという。子持ちの慰安婦を泣き叫ぶ子どもの前で生体解剖をし、そのあとその子どもも犠牲になったそうだ。フィリピンでも捕虜をやっているし、九州では墜落したB29の搭乗員が犠牲になった。
  中国での日本軍の病院では、軍医の訓練のために日常的に生体解剖がされていたそうだ。拷問で尋問した捕虜や容疑者をそのまま帰すわけにはいかないからと、使ったらしい」
 「わたしもやろうっていうの?」
 どうやら、本当に泉を生きたまま解剖するつもりのようだ。何とか助かる手はないだろうか。助けがくる見込みは少ない。佐久間はこの場所を知らないだろう。
 何を言っても、もうこの異常者は、予定を変えないだろう。<包み>の場所を知っているとでたらめを言ったとしても、彼女を助けるつもりはないだろう。純然たる楽しみで人を殺すのだ。損得ではない。
 「君の意志の強さはよく分かった。あの人間標的や、寒さに耐えた君だ。今さら私が<包み>はどこにあるのかと訊いても、答えてはくれないだろうね」
 「知らないものは答えられないわ、あなた、日本語が分からないの?」
 「いや威勢がいい!実に結構。では、今から、君を私のものにする」
 泉が身を固くするのを見ると。
 「私はセックスには興味がない。何せこの体ではね・・・。」
 と巨体を揺すった。
 「私は永年、それにふさわしい女性を捜してきた、誰でもいいというわけにはいかない。すぐに失神してしまうようではつまらないしね。そして今やっと見つけたんだ。私はこの解剖台の上で君を自分のものにする」
 「だったら早く殺して」
 「殺しては生体にならない」
 とドクが笑った。
 「本気なの?」
 「ただ切るだけだ。それなら私にもできる。道具も揃っている。」
 「いやよ! 生きたまま・・・そんな・・・」
 「生きたまま・・・麻酔もなしでやる」
 「悪魔!」
 ドクは微笑んだ。
 「そう呼ばれるのが私の夢だった。光栄だよ。
 一人殺せば殺人犯、百万人殺せば英雄だという。人数ではその英雄たちにはかなわないが、誰にも負けないような残酷な方法で殺してやる。それでも、原爆症で一生苦しめるのなんかに比べたらかわいいものだ」

 夢中で部屋を飛び出そうとしたが、多勢に無勢、大暴れをしたが、すぐに部下たちに取り押さえられてしまった。解剖台に引きずられていき、両手首、両足首をダヴィンチの人体図のように縛り付けられた。それでももがいて暴れていると、さらに押さえつけられ、両腕は真横に広げられ、両脚は大きく開いて、念のいったことに、両肘両膝の関節、太股と二の腕の根元も革ベルトできつく固定されてしまった。手足に力を込めて動かそうとしたが、ベルトが食い込むだけでびくともしない。手首から先、足首から先、頸から上がかろうじて動くだけになってしまった。これでは騒ごうがわめこうが全く身動きが出来ない。
 セーラー服は着たままだが、袖は肩が出るまでたくし上げられ、スカートはまくられて太腿まで丸出しになり、革ベルトで固定されている。口には猿ぐつわをかまされてしまったが、口でも呼吸は出来るようだ。

 解剖台の頭上の手術用の無影ライトが点灯され、まぶしいほどの光が投げかけられた。
 天井を見ると、なぜか鏡がつけられていて、全身が見えるようになっている。解剖される人間に自分が切り刻まれる姿を見せようというのか、、。天井や部屋のまわりにはテレビカメラが何台も据え付けてあり、解剖台に向けられていた。泉の様子がモニターに映し出されている。記録するつもりらしい。これを証拠に、こいつら全員死刑だな。標本も残すつもりらしいから、調べれば泉が生きたまま解剖されたことは明らかにされるだろう。もっとも、ビデオがなくても、証拠を残さずに解剖なんて無理な話だ。DNA鑑定なんてのもあるから、内臓の破片1つ、血の一滴でも残れば、犯行は隠しようがない。
 ドクと何人かの部下が手術着に着替えて囲んでいる。
 「服が邪魔だな。取ってしまえ。」
 「この状態で脱がせるのは無理ですよ。外せばまた暴れるし」
 「どうせ体はばらばらになって、もう服を着ることはない。切り裂いてしまえ」
 部下達がセーラー服とスカート、下着までもはさみで切り、引き裂いて、たちまち全身むき出しにされてしまった。
 「きれいに片付けろ」
 体と解剖台にはさまっていた服の切れ端も引き出され、固定ベルト以外、一糸まとわぬ姿にされてしまった。解剖台の横にぼろくずの山ができた。
 腕と脚を固定したベルトは締め直され、さらに、腰には内股から左右の骨盤にかけて斜めにベルトが掛けられ、肩にも鎖骨と肩胛骨に斜めにベルトが掛けられ、きつく締め付けられた。これで、腰と肩の左右を固定され、胴体はびくともしなくなってしまった。額にもベルトを掛けて頭を固定され、首にもベルトが掛けられてしまったので、顔を動かすこともできなくなってしまった。これだけ頑丈に固定されているのに、首から股まで体の中心を横切るベルトはなく、腹と胸は大きく開いている。解剖の邪魔にならないように考えているのだろう。固い解剖台に背中が押しつけられて冷たい。生きた人間ではなく、すっかり標本扱いである。手術台ならクッションがあるし、解剖台なら固定ベルトなどない。特別に作らせたのでなければ、こんなものはどこにもないだろう。天井に鏡があるので、自分で自分の体を眺めることになってしまった。
 「ふむ・・・」
 ドクはじっと泉の体を見下ろした。
 「素晴らしい! これこそ、私の望んでいた肉体だ。全く完璧だ!」
 ドクは微笑みを浮かべた。
 「猿ぐつわは窮屈だろうが、舌をかんで死なれては困るのでね」
 そして、傍らの台からメスを取り上げた。
 「解剖をはじめるぞ。まずどこからはじめるか?」
 部下の一人に話しかけているようだった。
 実際に解剖が始まると、激痛が延々と続くだろうが、どう反応したらよいのだろうか。痛みを我慢する意味は全くない。しかし、手術なら痛がれば加減したり麻酔を強めたりするだろうが、ここでは喜ばせるだけだ。むしろ、面白がってよけい痛い思いをさせられるだけだろう。
 いずれにしても、声を上げる力などすぐになくなってしまうことだろう。

 「まず、断層撮影装置でMRIの撮影をしましょう。内臓の位置などがよくわかります。」
 そう言うと、スイッチが入れられ、泉の体は、装置の中に吸い込まれていった。ゆっくり動きながら再び出てくると。
 「これで撮影ができました。内蔵を映し出してみましょう。」といって、泉の体に、体の内部が映し出された。

 「腹からでどうです?心臓や肺を傷つけると死んでしまうので、最後まで残しておいた方がいいですね。首から上には、触覚、視覚、聴覚、嗅覚、味覚と、5つの感覚器官が集中しているし、脳などの感覚をまとめる中枢神経がありますから、意識が鈍らないように、初めは傷つけない方がいいでしょう。脳へ行く血管を傷つけると致命傷になります」
 「解剖の様子は、しっかり見て、聞いてもらおう。血の匂いも感じるだろう。自分の内臓を食わせて味わあせてやろうか」
 「胆嚢あたりはすごい匂いと味がしそうですね。
 九州大の事件では、肝臓を料理して食べたという話があったそうです。実は米軍の捏造話でしたが。
 中国の劉遅刑では、ナイフに体の場所を書いて箱に入れておき、それから執行人が無作為に取って、手に取ったナイフに書いてあるところから切っていったそうです。鼻と書いてあれば鼻を削ぎ落とし、耳とあれば耳たぶを着ろ取る」
 「できるだけ長く生かして、感じさせたいからな。くじではなくて考えながら切っていった方がいいだろう」
 「では、やはり、切るのは腹からでどうでしょう?」
 「だが、武士は切腹で死ぬだろう。腹を切ったら死んでしまうのではないか」
 「切腹はなかなか死ねないそうですよ。すぐには死にきれず、介錯なしだと何時間も苦しみながら生きているようです。それに猛烈に痛い。それで、武士の強さを見せるために切腹というのがあったそうです。」
 「切腹を命ずる、なんて刑があったけれど、本当に自分で切ったのかな?」
 「実際は、形だけで、白扇子を当てて斬首というのがほとんどだったようですよ。武士でも自分で腹なんて切れるものではない。赤穂浪士だって、実際に腹を切ったのは大石内蔵助とか、数人だけだそうですよ。」
 この部下はインテリ風だが、ボスも一目置いているらしい。
 「では、腹から切り始めるとしよう」
 「四十六浪士のほとんどが実際にはできなかった分の切腹を、介錯なしで一人でやってもらうようなものですね。これだけしっかり縛り付けてあれば、暴れて困ることもないでしょう。出血がひどいとそのショックで死んでしまいますから、止血をして少しずつ様子を見ながら切った方がいいですね。」
 「内臓の説明をしてみてくれ」
 「画像で表示されていますが、胃がこれです。胃にはいろいろな臓器が接していて、前から右にかけて肝臓、裏に膵臓、左に脾臓、すぐ下には大腸がある。消化管としては、胃に十二指腸がつながって、その先に小腸と大腸ですね」
 泉の腹に内臓の輪郭がペンでなぞられていった。
 「心臓。肺がこれですから、初めは切らないように注意した方がいいです」
 「日本軍は、麻酔をして生体解剖したのだろう?
  九州大では、捕獲飛行士を生体解剖したそうだが、たっぷり麻酔して、麻酔薬が致死量になったくらいだったらしい。非人道的行為として死刑判決下出たが、飛行士たちは無差別部爆撃で銃殺刑になるところだったから、それよりは楽に死ねただろう。無差別爆撃のほうがよほど残酷だ。今日は麻酔なしだから画期的だな」
 「九州大は病院だから麻酔薬は充分あったでしょう。戦場での生体解剖も麻酔をしたという証言はありますが、実際は、麻酔剤など薬はほとんどなくなっていて、使う余裕はなかったようです。臓器への薬の影響を避けるためにわざわざ麻酔なしで生体解剖したという証言もあります。野戦病院では、手足を大怪我した場合など、麻酔なしで切断していたそうですから、捕虜にまで使う分はなかったでしょう」
 ドクは少し白けたようだった。
 「だが、どうせすぐに殺してしまったのだろう?」
 「そのようです。麻酔なしで切り始めますが、さすがに苦しんでいるのをそのままは続けられず、絶命させたり、気絶させてから続けたようですね。それに、こういうときは普通以上の力が出ますから、麻酔もせずに生かしておいては、暴れて押さえておくのも大変でしょう。」
 「そうだろう。今日はいくら苦しんでも簡単には死なせはせん。気絶しても目を覚まさせて、たっぷりと苦しませてやるぞ」
 ドクの顔に笑みが戻った。
 「学生がやるカエルやマウスの生体解剖でも麻酔はしますね。脊椎動物の解剖は麻酔を使うことが動物保護法で決まっています。麻酔が切れると暴れ出してやっかいです。麻酔なしで、それも人間の生体解剖なんて珍しいでしょう。戦時下の日本軍はやったようですが、、。麻酔のない時代の手術はあまりの痛さで地獄図のようだったそうですよ。大勢で押さえつけながら手術したのだとか。朝鮮王朝の医女チャングムの時代の宦官の去勢手術では、麻酔なしで一気に切り落としていたとか。
  今回は、念入りに固定したので、いくら暴れようとしても動けませんから、意識があるままでも落ち着いて解剖できます。無麻酔の手術は一部切るだけですけれど、ショックで失神してしまうことも多かったようです。今日は全身切り刻みますから、どこまで持つか」
 「痛みを感じなくなってしまってはつまらない。何とか気絶させないようにしたいな。これだけ残酷な殺し方は、過去にも例はないだろう」
 「気つけ薬にブランデーとアンモニア水を用意しています。これを口にたらしたり鼻から嗅がせます。氷水も用意しました。顔に冷水をかけるだけでも効果はあるでしょう」
 「覚醒剤も意識や感覚を戻すには役に立つのではないか?」
 「そうですね。いろいろためしてみましょう。それより、気絶しない程度に切っていきましょう。強い痛みは切っているときでしょうから、様子を見ながら少しずつ・・・。開腹手術では何時間も開けていて大丈夫なのだから、血管を切らないように気をつければ、すぐには死にませんよ。麻酔というのは身体にはかなりダメージを与えるようです。麻酔なしだと、むしろ全身麻酔の手術なんかよりずっと長く持つかもしれませんよ。
  生きている内臓なんて医者でもよくは見られませんよ。手術では必要なところしか切りませんからね」
 泉は血の気が引いてきた。このまま失神して意識がなくなってしまえばいいのに、なぜか逆に頭が冴えてきてしまっている。
 ドクがのぞき込んで言った。
 「心配するな。私は素人だが、こいつは少しは分かっている。医者のなり損ないだからな。金を積んで医学部に入ったが、落ちこぼれた。人体解剖の経験ぐらいはしているさ。傷口を縫い合わせる技術は怪しいが、出血多量ですぐには死なないように切っていくだけならこいつにもできる」
 この場合、早く息の根を止めてもらった方がましだ。
 別の部下が口を挟んだ。
 「これだけの女、このまま殺すのはもったいない。みんなで頂いてからにしてはどうですか」
 脚を大きく開いているから丸見えである。争って、つついたり引っ張ったり、泉の体のその部分を調べ始めた。
 「生娘らしいですぜ」
 「それならなおさらいい標本になる。生きたまま切り取ろう。無傷の処女膜付きなんて珍しい標本だぞ」
 医者のなり損ないに向かって
 「死なせずに取れるかな。無傷の子宮を取ってしまったなんていうニセ医者がいたな。なくても生きていけるものなら大丈夫だろう。本人にも自分のを見せてやりたい」
 今度は別の色のペンで、腹の上に書き始めた。画像が変わっている。深さを変えて表示できるようだ。
 「子宮はこのあたりで、小腸をどかせてやれば奥にあります。子宮だけでいいのですか?」
 「いや、入り口から全部つながったままとろう」
 「膣は、骨盤の真ん中に開いていて、体の中心を通っているから、体をくりぬくように丁寧に切っていかなければなりません。太い血管とか神経とかがすぐ横を通っているので、慎重に避けながら切りましょう。膀胱が膣のすぐ前、直腸がすぐ後ろにくっついています」
 「妹を殺して、下腹部を切り取ったなんて事件があったな。死体が女だとわからないようにしたかったらしいが」
 「そんなことをしても、死体の一部を調べれば男か女かなんてすぐにわかりますけれどね。骨の形でわかるし、形がわからなくなってもDNAがあれば一発です。あの事件の場合は、もちろん殺してから切り取ったのでしたね」
 「アフリカの未開の村では、まだ割礼なんてのをやっているところがけっこうあるらしいな。あれは女性器を切るのだろう?」
 「それで、反対派ははっきり女性器切除とか女子性器切除というそうです。国を挙げて撲滅運動なんかやっていたりしますがね。なくならないようですね」
 「いったいどこを切るんだ?」
 二人は、メスで泉の下腹部をつつきながら話し始めた。
 「少女のクリトリスを切り取ったり、小陰唇や大陰唇まで全部切ってしまうこともあるようです。逆に小陰唇を縫い付ける場合もあるとか。どちらにしても、エクスタシーなんか感じられなくなって、生涯セックスが苦痛だし、出産も大変なようです。もちろん、正規の医者はそんなことをせず、怪しげな呪術師がお清めと称してやるわけですから、麻酔はしないし感染防止もいい加減で、死んでしまう場合も少なくないそうです。感じやすいところを切られる本人は痛くて泣き叫んでいるところを押さえつけられて大事なところを切られてしまうわけです。まあ、これをされれば、不倫なんかする気にはならなくなるでしょうが、そんな女の相手をするくらいなら処女膜がすり切れていたほうがましですな」
 「痛そうだが、男だったらどんなことになるのかな」
 「男の割礼は先っぽを切るだけですけれどね。クリトリスは陰茎、陰唇は陰嚢に当たりますから、これを切り取ったり縫いつけたりというのは相当痛そうですね」
 「今日は、外だけでなくて、中までえぐり出すから、究極の割礼というわけだ。何とか生きたまま取り出そう。切るときに苦しむ様子も見たい」
 「やってみましょう。足を開いて固定してあるから、股下からと下腹部の両方から切っていきましょう。腹の前の大腸から直腸を通って後ろの肛門につながり、背中の腎臓から前の膀胱に輸尿管がつながっていて交差しています。このあたりは複雑です。みんな一緒に切り取って、直腸と尿管はあとで別にしましょう。血管や神経がつながった状態で刺激してみて、反応をみるのもいいかもしれませんね」
 言いながら、性器を囲んでペンで線が引かれ、そこからさらに下腹部の両側に線が引かれていった。
 「では、割礼から始めますか?」
 「そうしよう。まずは腹を裂いて、腸を引き出してから、後ろにある子宮を見つけ、中側からそっくりえぐり出すことにしよう」
 「では、まず、膣と尿道口、外性器のまわりに沿って切っていきましょう。膣と尿道を傷つけないように注意しながら、表皮を切ってまわりの筋肉と切り離していきます。そこから、下腹部の皮膚と腹筋を切り開いてめくりあげ、小腸をゆっくり切りながら持ち上げていきます。腸を引き出せば、裏に子宮が見つかるはずです。卵管や卵巣も一緒にていねいに切り取っていきましょう。膀胱も一緒にしておいた方がよさそうです。今度は内側から外性器に向かって切っていけば、全体を切り出せるでしょう」
 「神経が近くを通っていそうだな、切ってしまって下半身が感じなくなってしまったらつまらない」
 「それは気をつけて、感覚神経を切らないように慎重に切っていきます」
 「切り出したのを本人に見せながら刺激してみたいな」
 「血管や神経は切り離さないようにしておきましょう。持ち上げていろいろ反応を見てみましょう」
 「途中で意識がなくなってしまってはつまらんな。」
 「出血がひどくなると血圧と体温が下がって感覚が鈍くなるから、点滴でブドウ糖と昇圧剤を注入して、体温が下がったら暖めながらやりましょう。普通の手術なら感覚が麻痺した方がいいのですけれどね。弱ってきたら、休ませてアミノ酸の点滴をしましょう」
 「充分感じてもらわなければつまらない。その後はどうしたらいいかな」
 「外性器から子宮までのセットで取り出したものを、標本の一号にしたらどうでしょう。ただ、感覚が残るように、血管や神経はつなげておいて、他の部分の解剖も終わってから最後に切り離すといいですね。
  昔の死刑で腸を少しずつ伸ばして引っぱり出すというのがあったようです。おなじようにしますか? 腸の中身を絞り出してきれいにしましょう。 消化管を引きのばすと9mくらいになります。水を入れてふくらませてみるのもおもしろいかもしれません」
 「いや、形が崩れてはつまらん。内臓でまとまったまま標本にしたいな」
 「では、消化器官はまとめて取り出して標本にします。シリコンで固めてプラスティネーション標本にする準備は出来ています。新鮮な標本だからきっと綺麗にできますよ。内臓には血管がたくさんつながっていますが、はじめは、太い血管や血管や神経を切らないようにして、なるべく長く生かしておくようにしましょう。血液を止めてしまっては臓器もいたみだすし、大量出血すると死んでしまいますから。腹腔の中の消化器官全体をを取り出すと、後ろに大動脈や大静脈が見えてくるはずです。大動脈を傷つけると、血が1mの高さまで噴出すそうです。消化器官の後ろの腎臓は膀胱とセットの標本にするといいですね。手足はどうしましょうか」
 「皮をむいて、筋肉を見たいな。引き締まった筋肉をしていそうだ」
 「太い血管は切らないようにして、表面の皮をみんなむいてしまいましょう。死体の皮を剥ぐより、柔らかくて作業は楽でしょう。その後、皮下脂肪をブラシでこすり落とすと、筋肉が綺麗に見えていいですね。」
 「これだけしっかりベルトで押さえていると、なかなか綺麗に皮を剥げないかな。といって、ベルトを外すと暴れてしまいそうだ」
 「それなら、初めに神経を麻痺させて動かないようにしてしまいましょう。ファーブルの観察では、狩人バチは獲物に麻酔をかけて動けなくして、子どものえさにするそうです。獲物は生きたまま、餌になって食い尽くされることになります」
 「麻酔をかけて感じなくなったらつまらないではないか」
 「大丈夫です。運動神経だけ麻痺させるのです。作業をする腕や脚を1本ずつ、感覚神経を傷つけないようにしながら、筋肉につながる運動神経だけ麻痺させてしまいます。そうすれば固定ベルトを外しても動きませんからゆっくり作業ができます。でも皮膚につながる感覚神経を残しておけば、痛みはしっかり感じるし、まだ運動神経を麻痺させていない部分は反応してくれるでしょう」
 「それはいい考えだ。生きたまま、全身の皮を剥ぐのだから、なかなか刺激的な作業だな。全部剥ぐのにどのくらい時間がかかるものかな」
 「片腕で3時間ほどかかります。片脚も同じくらい。胴体もそんなものとすると、全部で15時間ほどでしょうか。それぞれ休みながらやりましょう。首から上は死ぬのを早めそうだから後回しですね」
 「内臓の解剖もあるから、全部やるには1日では終わらないな」
 「夜は休ませて、何日かかけてやりましょう。その方が脳の働きが戻って、意識もしっかりしてくるかもしれません」
 「重さも結構な量になるのかな」
 「人によって3kgから30圓泙任気泙兇泙任后こいつは脂肪が少なそうだからそれほど重くはないでしょう。全部剥がしたら測ってみましょう」
 「心臓が生きて動いているのも見たいものだ」
 「両脇の肋骨の下の二対は背骨から脇までで終わっていますが、上からそれぞれ10本目までは胸の真ん中の胸骨につながっていますから、これを肋骨専用の解剖はさみで脇のところを切り開いて、胸骨の上部を鎖骨から外せば胸板を丸ごと外せます。肺に穴を開けないようにゆっくりはがしていきましょう。まだ生きていれば、心臓と肺の動きが見えるはずです。ただ、肋骨を切り開いてしまったら自分では肺を動かして呼吸をすることがができなくなってしまいますから、その前に人工呼吸器を取り付けておきます。肺の伸縮は人工的に動かすところを見ることになります。この時まで意識を持たせられるといいですが、、。
 九州大の解剖では、肺や心臓、肝臓の切開実験だったので、最初に切って長くは生きていなかったようで、死んでから内臓をいろいろ切りだしています。肺をどのくらいまで切ったら死んでしまうかという実験もやったようです。今日は、肺や心臓は最後にして、出血大量にならないように、太い血管は切らないようにしましょう」
 「おまえたちにも、肋骨を一人一本ずつ切らせてやろう。いい音がしそうだな。痛みも強烈だろう」
 「老人の肋骨は柔らかいのでメスでも切れてしまいますが、若くて肋骨が丈夫そうだから、専用のハサミでも切るのは大変かもしれません」
 「切りにくい方が、刺激が強くでおもしろそうだ。一瞬のうちに切ってしまうより、ノコギリでゆっくり切っていくのもいいかもしれない」
 「一本一本、強い衝撃でしょう。普通の骨折の何倍もの痛みになるでしょう。これが20回続くから、充分楽しめます。気絶したら少し休んで気付けをしてからゆっくり続けましょう。
  皮を剥ぐときに運動神経を止めながらやっていれば、もうこのときはいくら刺激があっても全身が暴れ出すことはありません。でも、感覚神経と顔面神経は残しておきますから、まだまだ楽しめるでしょう。もう、固定ベルトは必要なくなりますね。
  そういえば、公害病で何年も骨が折れ続けるというのがありましたね。あれも痛そうですね」 
 「予定通りいくと、このときまでに、もう腹の内臓は全部とってしまっているし、全身の皮をむいているから、神経も麻痺してしまっているかもしれないな。」
 「ここまでは胸から上は無傷で残しますから、うまくするとまだ意識があるでしょう。脳の方は傷つけていないですから、血液が行っている間は生きています。下半身の神経が麻痺しても、今度は、背骨に直接つながる骨を切るわけで、刺激が脊髄にそのまま伝わるから大丈夫でしょう。腹が空っぽだから、肋骨は下から切っていくといいですね」
 「さすがに、肋骨を切ったら、1本で気絶してしまうだろうな」
 「そのまま続けたらつまらないので、1回ごとに、意識を回復させて休ませながら続けましょう。気絶しているところで次を切ると、ショックで目が覚めるかも」
 「生かせておけるかな。反応がなくなってしまったらつまらないからな」
 「ここには最新の手術器具も生命維持装置も揃っています。レーザーメスも使って出血を押さえ、出来るだけ長生きさせましょう。
 AEDもあるから、ショックで心臓が止まったら使ってやりましょう」
 「肺や心臓までとったらさすがに終わりだろうな」
 「人工心肺をうまくつけて、頭部に血液と栄養分を送ると、しばらく生かしておけるかもしれませんよ。首だけ残って生きているというのも面白いですね。切り落とした首の目が動いて睨んできてなんて話があるから、案外大丈夫かも。
  臓器移植の時は、臓器を切り分け終わるまで、脳死患者を人工的に生かしておきますね。もちろん麻酔もかけませんから、もしまだ感覚があったりしたら残酷なことになりますね。完全に死んだわけではないですからわかりませんよ」
 「最後に残っているのは、内臓のなくなった胴体と皮をむいた腕と脚、それに首がついているということになるな。この状態で生きたまま標本作りをはじめよう。
  どのくらい生かせておけるものかな」
 「移植手術では、36時間かかったなんてのがあります。致命傷を与えないように注意しながらやれば、結構長く、生きたままの解剖が楽しめるでしょう」
 「100年前まで中国でやっていた凌遅刑では、気絶したら起こし、夜は眠らせて3日間かけて少しずつ何千片にも切り刻んだそうだ。今の技術ならもっと長く生かしておくこともできるのではないか?」
 「最新設備の用意もあるし、うまくいけば、休みながら解剖して何日かもたせられるかもしれません。その間、苦しみ続けることになる。
  医学部の解剖では、1体を何ヶ月かかけて切り刻んでいくそうだから、そこまでは生かせてはおけませんけれどね。死んだ後は、丁寧に標本にしていきましょう。
  脳と感覚器官を傷つけないようにして、血液を人工的に循環させて酸素と栄養を供給すれば、頭部だけで生き続けるかもしれませんよ」
 「生体解剖で作る標本なんて珍しいだろうな」
 「死ぬときは必ず死因がありますからね。怪我なら致命傷になった大きな傷があるし、病気ならだめになってしまった臓器がある。それも一つではなく、死ぬときはいろいろな臓器が少しずつ悪くなってしまって、健康な臓器はなかなかありません。全身の臓器が健康な状態で標本になるなんて前代未聞ですよ。それもこんなに若くてピチピチの肉体の標本なんて貴重品です。ナチスや731部隊では生体解剖をやりましたが、解剖前に人体実験をしていますからね。無傷ということはない」
 「それは素晴らしい。
  生きたまま切り始めると、血管に気をつけてもずいぶん出血があって邪魔になるだろう。準備はしてあるのだろうな」
 「洗うためにシャワーで食塩水が出るように用意してあります。生理食塩水を人肌に暖めておくのが刺激が少ないでしょうが、それでは面白くないので、もっと濃い食塩水を、熱めに暖めておきました」
 「傷口に食塩水とは、刺激が強くて面白そうだな。だが、熱いのをかけたら、やけどをして標本を傷つけるのではないか?」
 「触ると熱いけれど、やけどをしない程度の温度にしています。試してみましょう」
 と言うと、シャワーでしばらくお湯を出してから、泉の手にかけた。
 熱さを感じるより前に、泉の全身の筋肉が反射で収縮を始めた。普通なら瞬間的に飛び上がっていたところだろうが、固く縛り付けられているので、全身がけいれんしただけだった。
 「ご覧のように、感じはしますが、皮膚を痛めはしません。別のところでも試してみましょう」
 と、今度はすねのあたりにかけた。身構えたが、やはり全身けいれんして、今度は激痛が走った。大暴れをしたときに擦り傷を作ったらしい。傷口に熱湯の食塩水をかけられたからたまらない。反応すれば喜ばせるだけだと思っても、意思とは無関係に体が反応してしまう。
 「傷口の消毒になってちょうどいいでしょう。もっとも、化膿し始めるまで生きてはいないでしょうけれど」
 「これは面白い。解剖の切り口にかけたときの反応が楽しみだ」
 「これで洗いながら解剖を進めましょう。ブラシも用意してあります。塩を擦り込むのもいいかもしれません」
 「苦しみでゆがんだ顔の標本を作るのが楽しみだ。たっぷり痛みを味あわせるから、顔面が変形してしまうだろう。死んだら、その時の表情を、そのまま固定して標本にしよう」
 「死んでからも苦しみが続きそうですね」
 「中世のキリスト教の魔女裁判では、10万人が殺戮されたが、魔女はできるだけ残虐な方法で殺すのが、罪を消し、魂を救うことにつながるそうだ。殺すなかれのはずのクリスチャンに今でも死刑肯定派がいるのも、そういう理屈らしい」
 「それでは、この子も、きれいな魂を天国に送ってやれるわけですね」
 「そうだ、遠慮なく切り刻んでやれ。ジャンヌ・ダルクは4時間かけて焼かれたが、今日はもっと時間をかけてゆっくりやろう。では、そろそろ始めるか」

 こいつら、良心というものがないのだろうか。こんなにひどいこと、自分が被害者の身なって考えれば、やれるわけがないのに。もしかしたら、自分がひどい目にあって殺されることをそれほどには思っていないのかもしれない。殺されるときは恍惚として死んでいくのかも。
 でも、それなら、死刑があっても、残酷な刑罰があっても、こいつらには効き目がないのだろう。だから残酷な刑罰があった時代も悪いやつらはいたし、残酷といわれる刑罰がなくなったり、死刑を廃止する国が増えたりしても、凶悪犯が増えるわけではないのだろう。
 方法がどうあれ、死刑の存在自体が充分残酷だけれど。 

 部下らしいのが増えてきている。どうやら全員に召集がかかったらしい。みんな手術着を着ていて、顔が青ざめて見える。ドクと技師のなり損ないだけは紅潮させているが。
 「度胸試しだ。みんなで少しずつ切るんだ。全員悪魔の共犯だぞ。深く切りすぎないように慎重にな。じゃあ、切るところに線を引いて指示してくれ。どう切っていったらいいかな」
 「オーソドックスに、Y字切開といきましょうか。まずは、鎖骨に沿って左右に切れ目を入れ、中心を縦に切り下げていきます」
 といいながら、首の下あたりに骨の上にY字が書かれ、そこからまっすぐ下にペンで線が引かれ始めた。
 「鎖骨や胸の前は皮のすぐ下に骨があるので筋肉や内臓を切りすぎる心配はありませんが、胸骨が終わったあたりを切りすぎると、心臓や肺を傷つけて致命傷になるので注意が必要です。へそは切りにくいのでよけたほうがいいでしょう。次に、斜め下に逆Y字に切り広げます」
 腰のあたりに、左右斜め下に線が引かれた。まるで教科書にあるカエルの解剖の説明図である。
 「この線に沿って表皮を切り、まずは全体の皮を剥がして切り広げてしまいましょう」
 「それでは、乳房が左右ばらばらになってしまうではないか。せっかくいい形をしているから、そのまま標本に残したいものだ」
 「では、胸は後回しにして乳房の標本をあとで作りましょう。胸のあたりは切らずにおいておいて、腹の方を先に切っていきましょう。
 はじめは、この線に沿って皮を切り、腹全体の皮を左右に剥がしてきます。表皮の下あたりが一番敏感ですから、全部剥がすまでにたっぷり苦しめられるでしょう。切腹の切り口は線ですが、今日は面で切っていきますから、桁違いに刺激的です。痛みのショックで気絶するかもしれませんから、そのときは休んで気付け薬を使って意識が戻ってから続けることにしましょう。たっぷり楽しめそうですね。
 そのあと、内臓を切らないように、感じやすいところを探しながら腹筋を切っていって、脇腹で切って、さらにひとまわり深く切って腹筋を全部取り除き、内臓をむき出しにします。腹筋は3層になっていますから、一層ずつゆっくり切って剥がしていきましょう。上部は横に切って、胸部と分けたほうがいいですね」
 「そうだ、せっかくだから、全身の皮膚を残して剥製を作ってしまおう。剥製に内臓や筋肉はいらないから、2体分の標本ができるな。綺麗に皮を剥がして、蝋人形にかぶせて元の形を残したい。若い身体の線を半永久的に残せるぞ。江戸川乱歩の『黒蜥蜴』に、人間の剥製が登場していたな.。あれでは、剥製にする人間は生きたまま水槽に入れて溺死させて皮を剥がし、蝋人形の皮にするということだったが、溺死では生きている時間が短くてつまらない。今日は、生きたまま剥がしていくぞ」
 「それなら、切るところは考え直した方がいいですね。腹の中央は目立つから、脇を切っていくことにしましょう。手足の皮を剥がすときも、切り口を内側になるようにしましょう。
  始める前に立体写真を撮って記録を残しておいた方がいいですね。立体物をコピーする技術は黒蜥蜴の時代より発達していますから、生きているような剥製ができますよ。苦しんでいるときの顔の立体写真をたくさん撮っておきましょう」 
 といいながら、脇の下から横腹、そしてビキニラインを通って内股へと線が書き直されていった。
 「まず、周囲を切って腹と胸の前の皮を剥がして上にめくってしまいましょう。皮膚の表面を痛めないように、ゆっくりていねいに剥がしていきます。そして腹筋を取り除くと最初は大網という膜があるので切り開きます。そうすると小腸などの消化管が見えてきます。小腸の部分を引き出せば、裏側に子宮などの生殖器官が見えてくるはずなので、それを刳り抜いて切り出すところから始めましょう」
 「一人当たりの分担も決めてしまおう。一人分ずつ区切ってくれ」
 切り開く線のところどころに区切り線が入れられた。どうやら本気で泉をばらばらにするつもりのようだ。これでいよいよ最後か・・・。
 ドクに聞かされた、麻薬取引の恐ろし目的を思うと、たとえ体をばらばらに切り裂かれてもヘロイン探しに協力する気はないが、この場を何とか切り抜けねば。

 ふと、猿ぐつわはされているものの、声が出そうだと気がついた。
 「ヘロインはいらないの?!」 
 思いっきり叫んでみた。猿ぐつわのせいで声がはっきり出ない。でも、反応があった。
 「しゃべる気になったのかな」
 首はほとんど動かなかったが、わずかに動かしてうなずくと、猿ぐつわが外された。
 「さて、<包み>はどこかね」
 このチャンスをと、一気にまくし立てた。
 「初めから言っているように、知りません。でも、私などが何で命を懸けて隠さなければいけないの? 知ってたらとっくに話していますよ。でも、私が何か知っていると思うから捕まえて無理矢理しゃべらせようとしたのでしょう? 殺してしまえば手がかりなしですよ! 」
 「なるほど、一理あるな。解剖はしばらく延期にしよう。協力してもらおうか」
 「なら、ここから外してちょうだい」
 「縛り付けるのに苦労したからな。まだ当分そのままいてもらおう。食事は口に入れてやるよ。排泄物はそのまま出せばさっきのシャワーで洗ってやる」
 「協力したら助けてくれるんでしょうね!」
 「お礼はたっぷりさせてもらうよ。
  ただ、君にはすでに二つの大きな罪がある。
   一つは<包み>を隠し、聞いても答えずに、さんざん手こずらせてくれたこと。ヘロインで大勢に拷問を加える楽しみが君のせいでお預けになってしまった。
  二つ目は、今の言葉だ。私の永年の夢を、ついに実現しそうになったところで中断させてしまったこと。この準備のために、10年の歳月を費やしている。手術室や設備・器具には特注品も多いからな、整えるために1億円近い金もかかっている。そして、ようやく理想的な材料も手に入れた。それをいいところでストップさせてしまった。今さらやめるわけにはいかないよ」
 「<包み>は私が隠したわけじゃないわ。知っていることはあるかもしれないけれど、あなた達が何も言ってくれないのに教えられることがある分けないでしょ!
  それに、協力しても助からないなら、何を話してもしょうがないわね」
 「<包み>が戻らなかったら、麻酔一切なしで生体解剖の続きだ。生きて感覚もあるままばらばらにしてやる。<包み>が戻れば少しは楽にしてやるよ。
  もし、<包み>が戻らないなら、さらに罪を重ねることになるな。
  君は、今度は<包み>が取り戻せるかと期待させるようなことを言い出している。これで期待を裏切ったらとしたら、それは三つ目の重い罪になる。罪はしっかり償ってもらわなければならない。二つの罪でも大きいが、三つ目も加わるとなると、このまま予定再開で解剖の続きでは足りない。待たされた分の利子を付けて、もっとたっぷりと時間をかけて楽しませてもらうぞ。
  消えた<包み>の2億円分も弁済してもらわなければならない。その身体で払ってもらおう。売りに出せばいくらぐらいになるかわかるかね?」
 「そんなのわかるわけないでしょ。人の体を売り買いなんて。」
 「外国から捕まえてきて日本で売ると女一人で100万円から400万円くらいだな。君の体なら500万円ぐらいにはなるかもしれない。もっとも、日本人を日本で売るわけにはいかないからな。日本では誘拐自体が難しい。だから外国から連れてくるわけだ。日本は人身売買大国だそうだよ。
  生きた臓器としてなら一人分で4000万円になる。治安の悪い国で誘拐してばらばらにして売りさばくのだよ。新鮮な体から作った標本は希少価値が認められるだろうから、1億円といったところかな。私は大切な記念の標本を売る気はないがね。イラクでは、米軍が爆撃して死んだり怪我をしたやつらを解剖して移植用の臓器を調達しているそうだ。生きたまま切り取れば、多くの臓器が使える。アメリカは臓器移植ビジネス大国だからな。中国では、臓器が必要になれば死刑執行して手に入れているそうだ。日本人もずいぶん世話になっている。
  簡単に死なれて解剖標本と剥製になっただけでは2億円分には届かない。これがあれば苦しんで死なせられたやつらの分の痛みを、一人で全部味わってもらおう。設備の1億円分も元が取れるように楽しませてもらわなければな。
  それには、リハーサルが必要だな。君の前にもう一人解剖して、完璧な解剖のために練習しよう。身体をばらばらにしながら、いかに失神させずに長く生かしておけるか、気絶したときにどう目を醒まさせたらよいか、痛みの感覚をいかに強く長く持続させるか研究が必要だ。激痛を感じさせながら組織は傷めないようにしたい。最後は綺麗な標本に仕上げる。君にも目の前でじっくり自分の運命を予習してもらう。
 そうだ、さっきへまをやらかしてこいつを逃がしそうになった派遣女がいたな。あいつにしよう。ちと皮下脂肪が多くてやりにくそうだが、練習にはちょうどいいだろう」
 「これ以上、関係ない人を巻き込まないで! 私だって無関係よ!」
 「素直に<包み>のありかを教え、取り戻せたら、リハーサルはやめるよ。君にもヘロインを分けてやる。直接場所を示さなくても、取り戻すのに役に立つ情報があればいい」
 「ヘロインなんていりません」
 「ヘロインは心地よい強烈な陶酔感をもたらすそうだ。冥土のみやげに体験してみてはどうだ。禁断症状が出るころはもう身体がばらばらになり始めているから関係ないだろう。切れてきたら追加もしてやるよ。ヘロインには強力な鎮痛効果があるのだよ。生体解剖の時の麻酔に使ってやる。もちろん、意識はなくならないように、局部麻酔にするがな。夢うつつのまま、いろいろな器官とお別れをしてもらうことになる。
  長い時間苦しみたくなかったら、<包み>探しに積極的に協力するんだな。<包み>が見つかれば1000人に拷問の苦しみを与え、100人を悶絶死させることができる。その代わり、君は苦しまずに死ねるよ。
  もちろん、<包み>を取り戻すのに直接役に立つ情報でなければだめだ。見つかったとしても、この手に戻らなければ意味がない。でたらめを言ってごまかし、時間稼ぎをしていたのが分かったら麻酔はなしだ。<包み>が途中で軽くなっていたら、それは君のせいだから、分け前はなしだ。
 <包み>ありかを聞いて完璧に取り戻すことができたら、解剖には麻酔を使ってやることを約束しよう。気持ちよく天国に旅立てるだろう」
 そう言って、ちょっとの間、頭を傾げ、、、。
 「ただ、約束は守るが、せっかくの理想的な材料なのに惜しいことだ。麻酔をしての解剖では反応がないから楽しみが減ってしまう。せっかくの設備が、麻酔解剖一人だけでは無駄になってしまう。
 君のような理想的なのはなかなか見つからないだろうから、代わりに若いのをもう二・三人捕まえてきて今度は麻酔なしの解剖を楽しむことにする。まあ、もう君はこの世にいないから心配することではないがね」
 「ヘロインが見つかったら、かえって解剖される人を増やすことになるじゃないの。それも何の関係もない人たちを何人もなんてひどすぎる。それじゃあ、何も話すことはないわ。探すのを手伝うわけにはいかないから、ヘロインはあきらめて!」 
  ヘロインで1000人を苦しめて100人の命を奪うことになると聞けば、見つけるのを手伝うわけにはいかないが、そんな決意を言ってしまったらおしまいだ。何か聞き出せると思っているうちは殺しはしないだろう。
 「本当に変わったやつだな。他人の心配をしている場合ではなかろうに。君には選択の余地はないだろう。麻酔なしで解剖されたいのかね」
 「結局、殺されるというのに、何でヘロイン探しなんかを手伝わなければならないの。どうせ死ぬなら、協力するなんてまっぴらだわ。このまま黙って死んでやるわ! さっさと解剖をはじめなさいよ! その代わり、こんなことは私だけにして頂戴」
 「いまさらそうはいかないな。本当におかしなやつだ。自分の命より他人の命の方を心配するとはな。
 協力しないなら、話す気になるまで、目の前で何人でも生体解剖の見物をしてもらう。その方が効果があるようだ。
  <包み>探しを手伝うなら、考えてやろう。手こずらせれば手こずらせるほど、標本が並んでいくことになるぞ。
 そうだ、そんなに他人のことを心配するなら、取引をしよう。
 <包み>が無事見つかれば、君にも分け前をやる。解剖の時に麻酔に使ってあげよう。そのヘロインの権利を放棄すれば、引き替えに、追加の生体解剖はやめてやる。生体解剖は君だけにすることを約束しよう。私だって無駄に何人も殺したいわけではない。理想的な生体解剖が一人できれば満足だ。そのときは、麻酔はなしということになるがね。
   ヘロインは欲しいかね?」
 「そんなもの、いりません!」
 「それは結構。では、ご希望通り、生体解剖は君が最初で最後にしてやる。たっぷりと楽しませてもらうよ。話ができるように猿ぐつわは外したが、解剖を始める前に舌を噛み切ったりしたら、ほかの材料を探すことにするからな。解剖中はまた猿ぐつわをはめて舌を噛まないようにしてやる。
  取引は、<包み>が見つかって、君にヘロインの権利ができたときの話だ。まずは<包み>のありかを教えてもらおうか。もし見つからなければ、手こずらせた分だけリハーサルをたっぷり見てから解剖されることになるぞ。協力を渋るようなら、しゃべるまでに何人でも犠牲になることになるよ」

 やはり、<包み>が手に入ろうが入るまいが、泉が協力しようがしまいが、予定を中止するつもりはないようだ。何が何でも泉を生きたまま麻酔なしで解剖したいらしい。ただ、ヘロインにも未練があるようだ。ヘロインを探す間、少し猶予ができた。今はこれ以上何を言っても事態は好転しそうにない。といって、ドクには絶対にヘロインを手に入れさせたくない。死んでも手伝う気などはないが、黙っていては、本当にほかの犠牲者が出そうだ。でたらめでも言って、とりあえず、引き伸ばしをするしかない。協力しているように見せかければ、他人の解剖は見なくて済むだろう。
 泉をこんな目にあわせている元凶の<包み>はいったいどこに消えたのだろう。協力すると見せかけて、ドクたちの持っている情報を聞き出して推理してみようか。こちらから役立つ情報は出したくない。ドクたちより先に<包み>のありかを推理して、遠ざけるように誘導してやろう。
 <包み>がドクたちの手に入ったり、逆にあきらめたりしたら終わりだ。泉に協力する気がないのがばれても、解剖を再開してしまうだろう。何とか少しでも長引かせれば、助かるチャンスがあるかもしれない。 

 ドクが、なにやらスイッチを入れると、解剖台が動き出した。
 「もう一つ、面白い仕掛けを見せてやろう。この解剖台はどの向きにも360度自由に角度を変えられるのだよ。垂直に立てることも、裏返しにさえできる。立てた状態で解剖するのも、自然な状態に近くて悪くない」
 泉の頭が下になるように台が動いて身体が逆さまに垂直になったかと思うと、急に裏返しになり、全身を床に向けてまっすぐ落下していった。つぶされる、と思った瞬間、急停止してまた持ち上げられ、ひねるように回転して振り回されたあと、今度は頭を上に垂直になって静止した。最後は磔状態になってしまった。体重が全部固定ベルトにかかるのだからたまらない。痛みで全身ばらばらになるかのようだったが、幸か不幸か何ともないようだ。固定したベルトがゆるんだ様子もない。本数があるので1点に大きな力が掛かることはないようだ。それに、ベルトの掛かっているのは腕や脚の関節部分で、しっかり固定してあるので、皮膚が切れてしまうことはないようだ。
 「これも拷問用の装置だ。気分はいかがかな。遊園地の遊具にするには迫力がありすぎだろう。ジェットコースターの故障で首が飛んだ客もいたが」
 生きたまま解剖されることを考えたら、どんな方法でも死んだ方がましだ。泉は、もう恐怖感を感じなくなってしまっていた。
 「いい眺めだ。お楽しみはお預けだ。まあ、時間がある分、解剖の楽しみ方をいろいろ考えさせてもらおう。それまでこの状態でいてもらう。
 完全な<包み>が手に入らなければ、この状態で、麻酔なしの生体解剖の見物をじっくりしてもらい、その後、君にも体験してもらうことになるよ。
 では、<包み>について知っていることを洗いざらいしゃべってもらおうか」

出典:星泉 絶体絶命
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