むかしのはなし。#3 日時: 2007/07/28 00:26 名前: E_jan #3立てさせて頂きました。 よろしくお願いいたします。 Page: [1] Re: むかしのはなし。#3 ( No.1 ) 日時: 2007/07/28 13:10名前: E_jan その36 「ったく、いろいろびっくりさせるよなぁ、江口は……」 「ほんっっっっと。入院だってだけで大騒ぎだったのに……」 一般病室に移ってすぐ、佐川と日高が連れだって見舞いに来てくれた。 ふたりは、ベッドに横たわる俺ではなく、その側にたたずむ瞳ちゃんをマジマジと眺めていた。 俺が入院した日、手術の成功を見届けた後、瞳ちゃんは会社に出向いて辞表を提出した。 その後、佐川、日高、恵利瀬を呼び、3人の前で土下座をした、らしい。 俺の入院は全部自分のせいで、その罪を償うために会社を辞めて、入院中の俺の面倒を見る、と言ったそうだ。 そんな話、今はじめて聞いた。 ちらりと瞳ちゃんを見やると、涼しい顔で手土産の花を花瓶に生けていた。 ……何を考えているのかはわからないが、彼女がその場所にいるのを認めさせるには、最高のシチュエーションを作り上げたことだけは間違いない。 辞表を出した上で土下座されて、そんなことを言われたら、誰だって許さざるを得ないだろう。 それに、言わずに置いていることはあるものの、たしかに嘘はついていない。 多少、ニュアンスは変化しているし、どこまでいってもその手法は詐欺師まがいだが、嘘をつかずにあの状況を見事に丸め込んだ、その物言いと演出には、舌を巻く。 この女は、これまでもこんな風に、いろんな状況を丸め込んで生きてきたのだろう。 そして、たぶん、今の俺も丸め込まれたクチなのだろう。 「退院は3週間後ぐらいだって?」 「ああ。2週間ぐらいで抜糸して……そのぐらいだな」 「まあ、安心して寝てろよ。プロジェクトは俺と日高主導で動かしてるから。帰ってきたら、バシバシこき使ってやるから、そのつもりで体力も付けとけよ」 と、佐川が笑う。 「来週から新人ちゃんたちも入ってくるし。えぐっちゃんの居場所、なくなってるかもよ〜」 日高が八重歯きらめかせながら、嫌なことを言う。 「しっかし、瞳ちゃん、ホントに世話女房気取りだね」 着替えを畳んでいた瞳ちゃんに、日高が棘のある言葉を投げつける。 今となっては誰よりも瞳ちゃんを軽蔑している日高らしい台詞だ。 瞳ちゃんが「俺の側にいる」という役割を認めさせたとはいえ、すべてを丸く収めるには、まだまだ時間が必要なのだ。 「まあ、そういうな。……実際のところ、ずいぶんと世話になってるんだ。入院してから」 そういって日高をなだめた。 これも、嘘偽りのない言葉だ。 本当に瞳ちゃんはよく面倒を見てくれている。 それは、今のような台詞を俺に言わせるためかもしれないが、事実は事実だ。 本当に、瞳ちゃんが居てくれるおかげで助かっているのだ。 「やっぱり日高にはそうとう嫌われてるなぁ……」 ふたりが帰ったあと、瞳ちゃんはぼーっと窓の外を眺めながら、ぽつりと言った。 「しょうがないですよ。たとえ本気で悔い改めたとしても、過去は過去だ。誰もが許してくれるわけじゃない。……世間は甘くない、ですよね?」 「ふん、偉そうに。あんたはそうやって寝転がってるだけじゃない。私は自分のケツを拭いてるだけよ。あんたも動けるようになったら、自分の尻ぬぐいは自分でやりなさいよ。……甘くないぞ、世間は」 そう言われて、ぐっと言葉に詰まる。 まさしくそのとおりだ。 瞳ちゃんの舌鋒には、いつもかなわない。 たがだか3歳しか違わないというのに、経験の豊富さでは、数段上を行かれている。 それに、たった3日だが、それなりの時間を共にしてみて強く感じたが、瞳ちゃんは……わかりやすく言えば、極度のツンデレだ。 言葉はキツいが、その裏には、なんらかの導きが隠されている場合が多い。 どんな偏屈な人生を歩んできたら、こんな性格になるのだろう……。 「じゃあ、今日はこれで帰るわ。また明日」 そういって、俺に顔を近づけると、軽く、唇を重ねた。 にこっと笑うと、やはり、とてつもなく可愛い。 その笑みと香水の香りを残したまま、瞳ちゃんは病室を出て行った。 あの女は、男心の掴み方を、熟知していやがる。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.2 ) 日時: 2007/07/28 01:05名前: 名無しのゴンベエ キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!! Re: むかしのはなし。#3 ( No.3 ) 日時: 2007/07/28 01:28名前: バラバラ 更新お疲れ様でした。 ツンデレですか、それはこの板にもあいそうなお話で。(笑) 瞳ちゃんの二面性がかなり出てきているようですね。 まじめに今後の展開が読めません。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.4 ) 日時: 2007/07/28 02:47名前: ドイツ人 E_janさん、更新お疲れ様です。今回もE_jan節を堪能させてもらいました。 それにしても、瞳ちゃんの印象が、ずいぶんと変わってきました。 別の人を描いている、っていう訳じゃなくて、同じ人なんだけど、 当てる光の角度を変えると、こんな風に見えるんだな、って感じでしょうか。 瞳ちゃん、実在するなら、どんな人なのかとても興味があります。 笑うと、「とてつもなく可愛い」らしいですが、トゲもあって経験も豊富で・・・ (タレントで言うなら、杉本彩?ちょっとベタ過ぎ??それとも、篠原涼子?) Re: むかしのはなし。#3 ( No.5 ) 日時: 2007/07/28 08:37名前: 名前はまだ無い ドイツ人さんの >当てる光の角度を変えると という例え、これはなかなか言いえて妙だと思います。 ドイツ人さんの人生の歩み方にも興味が出てきました。 E_janさん、今後の展開がまったく読めません。 この次も期待! Re: むかしのはなし。#3 ( No.6 ) 日時: 2007/07/28 13:55名前: E_jan コメントありがとうございます。 >パラパラさん 度の過ぎたツンデレですがw >ドイツ人さん E_jan節、ワロタ。 でも、そう言ってもらえるのはすごく光栄なことだと思っています。 ありがとうございます! あと、瞳ちゃん、恐ろしいことに実在するんですよ。もちろん作中では多少ならず、誇張してますが。 >名前はまだ無いさん この先も、もうちょっと、なんだかわけのわからない流れが続きます。 ご期待にそえるといいのですが……。 その37 だいぶ動けるようになってきた。 抜糸はまだ先だが、かなり回復してきているのが実感できる。 そろそろ退院を意識するようになったころ、ふみちゃんが、見舞いにやって来た。 佐川から入院先を聞いたそうだ。 ずいぶんと長くなった髪に、白いフェミニンなノースリーブのワンピースがとてもよく似合っている。 麦わら帽子をかぶせれば、ステレオタイプのカントリー系美少女が完成するだろう。 ただし、清楚なイメージを醸し出すには、ちょっと胸が大きすぎるかもしれない。 前から巨乳だとは思っていたが、こういう格好をすると、それがよりはっきりとわかる。 だが、間近でそれを見ても、以前のような強い欲望を、不思議なぐらい感じなかった。 「江口さん……大丈夫ですか。すごく……痩せちゃって……」 痩せてしまった俺を見て、かなりショックを受けたようだ。 俺は、どちらかといえば肉付きのいい方だったから、体重が15キロちかく落ちて、ずいぶん貧相になっていたのだろう。 「ああ、胃の手術したから、物食えなくてさ。でも、もう大丈夫だよ」 「そうですか、よかった。すごく心配してたんですよ、私……」 「ごめんな、心配掛けて。……それと、コンサート。すまなかった」 俺は、兄が妹に接するような、そんな心地でふみちゃんと話していた。 俺には妹は居ないので、実際の妹にどんな気持ちで接するのはわからないが、とにかく、不思議なぐらいおだやかな気持ちだった。 「いいんですよ。事情が事情だし。それに……コンサートはまた行けますから」 俺の手を握りしめ、目に星が浮かぶような表情で、そう言うふみちゃん。 俺は、態度をはっきりさせなければならないだろう。 「ごめんね、ふみちゃん。俺は、君の気持ちには応えられない。だから、コンサートには一緒に行けないよ」 「……そうですよね」 ふみちゃんは、ふっと視線を逸らした。 「約束の日、佐川さんがいらして、江口さんは病気で来れないって言っているの聞いたとき、『ああ、振られたんだ』と思いました。その前日のやりとりで、もうダメだろうなあ、って思ってましたから……」 俺好みの大きな瞳に涙を溜め、細い肩を振るわせながら、そう言った。 「ごめんね」 それしか言えない。 「いいんです。こちらこそご迷惑お掛けして……」 ふと、言葉が途切れた。 病室の入り口を見ると、そこには瞳ちゃんがいた。 「こんにちわ」 『先制攻撃』は瞳ちゃんからだった。 いや、ただの挨拶なのだが、にっこりと笑顔を作って言い放った、その時の「こんにちわ」は、俺には攻撃のようにしか思えなかった。 戸惑いながら、俺と瞳ちゃんを交互に見る、ふみちゃん。 ふと、表情を引き締めると、瞳ちゃんに向き直り、お邪魔しています、と、頭を下げた。 かつて感じた「危険な臭い」が、ふみちゃんから立ち上っているのを感じる。 瞳ちゃんとふみちゃん。 水と油、というよりも、酸性とアルカリ性だ。 洗浄剤などに書かれている「混ぜるな、危険」という注意書きが俺の脳裏を過ぎった。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.7 ) 日時: 2007/07/28 15:31名前: バラバラ >度を過ぎたツンデレw これはには大笑いですね。 ふみちゃん再登場!といいたいところですがこうなってしまってはふみちゃんを振るしかないですよね、残念ですが。 ふみちゃんとはいい感じになりかけたのになぁ…。 しかし、ラストの「酸性とアルカリ性」には笑わせていただきました。 入院中でも修羅場の大予感?(笑) Re: むかしのはなし。#3 ( No.8 ) 日時: 2007/07/28 19:53名前: 名無しのゴンベエ 「酸性とアルカリ性」を混ぜたら中和しちゃうぞww Re: むかしのはなし。#3 ( No.9 ) 日時: 2007/07/28 20:49名前: E_jan >No8名無しさん わっはは。そのとおりでww その38 「ええと……。こちらはふみちゃん。よく行くバーで仲良くなった娘で……」 「三浦芙美代です、はじめまして」 俺の紹介を受け、ふみちゃんが自己紹介をする。 その緊張感がこちらにまで伝わってくる。 「ふうん。ふみちゃんはふみくんの彼女さん?」 一方、瞳ちゃんの方は余裕綽々だ。 俺は「ふみあき」なので、ときどき顔を出す姉が「ふみくん」と呼ぶことがあるが、瞳ちゃんがそんな呼び方をしたのは初めてだ。 それに、俺に瞳ちゃん以外に女がいないことなど、充分承知しているだろうし、先ほどの会話を聞いていたはずなのに、なんとも嫌味な言い方をする。 「あ、彼女じゃないです。その、……呑み友達です」 可哀相に、ふみちゃんは目を伏せてしまった。 「そっか、よかった。ふみくん、二股掛けてるのかと思った〜」 必要以上にニコニコしながら、瞳ちゃんが言う。 ふみちゃんは完全に固まってしまっている。 これは、さすがに見ていられない。 「ちょっと、瞳ちゃん」 「なあに?」 棘のある声で返事が返ってきた。 その表情にもダークサイド瞳ちゃんのソレが浮かびつつある。 「飲み物、買ってきてくれ。喉かわいた」 俺はぶっきらぼうに言った。 すでに、ダークサイドな瞳ちゃんも、怖いとは思わない。 「あ、私が買ってきます!」 この場に一番痛くないであろうふみちゃんが、声を挙げた。 「いや、ふみちゃんとはまだ話があるから。瞳、ちょっと席外せよ」 強い口調で言うと、瞳ちゃんは、ふと寂しげな表情をつくり、うん、といって部屋を出て行った。 ざわざわと、病室が騒がしい。 なにしろ6人部屋だ。カーテンで仕切られているとはいえ、今の会話は筒抜けだろう。 退屈な入院生活に、ちょうどいい話題が降ってわいた、と、他の患者さんたちは思っただろう。 「……ちょっと、出よう。」 そう言って、俺はベッドからはい出した。 病室の入り口に一番近いベッドだったため、ふみちゃんを好奇の目に触れさせずに済んだことは、不幸中の幸いだった。 小さな中庭へとふたりで歩いた。 「動いて大丈夫なんですか?」 心配そうな顔のふみちゃん。 「ああ、もうほとんど大丈夫」 まだ、ちょこっと手術跡が気になるものの、もう痛みは感じない。 「今の女の人……江口さんの彼女なんですか?」 意を決したように、ふみちゃんが聞いた。 「……押しかけ女房みたいなもんだけど……彼女といえば、彼女だ」 「かわいいひと、ですね」 見た目だけはね、と言いたいところ我慢し、無言で頷いた。 「そっか。あんなにかわいくて若いコが相手じゃ、私に勝ち目はないですよね」 「瞳ちゃん27歳だけど……」 「うそぉ!」 ふみちゃんは心底驚いていた。 瞳ちゃんの若作りには同性も惑わされるらしい。 それはそれで悩みのひとつだ。 姉にも、同じ病室の人たちからも「高校生はやめておけ」、「犯罪だぞ」などと、言われたことがある。 俺だって初めて逢ったときは、バイトの女子高生かなにかだと思ったものだ。 「それ聞いて、なんか、ますます落ち込んできました」 ふみちゃんは、ため息をつく。 「本当に、ごめん」 それぐらいしか、言う言葉が思いつかなかった。 「あの人が、失恋したっていうひとなんですか?」 「いや、違う」 「え? じゃあ、もしかして、私が告白したあとにあの人と付き合ったって……そういうことですか?」 眼鏡の奥の瞳が震えている。 たとえ、ふみちゃんを傷つけることになっても、嘘やごまかしで答える気は起きなかった。 「……説明は難しいが、そういうことだ」 「そうですか……」 ついに、ふみちゃんは泣き出した。 胃ではなく、胸が痛い。 ふみちゃんと付き合う気がないのであれば、あのとき、ちゃんと断っておくべきだった。 それをほったらかして、瞳ちゃんとデキてしまう自分の愚かさが、恨めしい。 所詮、俺はその程度の馬鹿だ。 ちゃんとしなければならない、と、思った。 もっと、人として、男として、まっとうにならなければいけないと思った。 ふみちゃんには、心から申し訳ないと思っている。 色恋沙汰で女性を泣かすのは、ふみちゃんで最後にしたい。 俺は、俺のため、そして瞳ちゃんのためを思い……気が付けば、ふみちゃんに向かって、土下座していた。 「ごめんなさい」 許してくれ、とは言わない。許されなくて当然だ。 許してくれなくてもいい。 ただ、謝らずにはいられなかった。 なにも持たない、中身が空っぽの若造ができることなど、謝ることしかなかったのだ。 「顔、上げてください……」 そういって、ふみちゃんは、俺の前にしゃがみ込んだ。 こわごわと顔を上げると、ふみちゃんは笑っていた。 「私が、一方的に惚れただけですから」 そういって、頬に軽いキスをしてくれた。 「さようなら」 消えそうな声でそういうと、ふみちゃんは足早に去っていった。 俺は、立ち上がることができないまま、その場に蹲り続けていた。 「ありえねえなあ……」 ふと、気が付くと、俺の脇には田上さんと瞳ちゃんが立っていた。 「ほれ、立て。その体勢、どう考えても腹の傷に悪いぞ」 そういって、田上さんが腕を引いて立ち上がらせてくれた。 「見舞いに来たら修羅場かよ。ホント、お前は大物だなぁ」 愉快そうに笑う田上さん。 「しかし、どう考えても、あの娘を選ぶべきじゃねえの? どこがいいんだ、こんな怖い女」 そういって、瞳ちゃんを見ながら笑う田上さん。 田上さんの言う通りかもしれない。 「私もそう思うわ。今すぐ追いかければ間に合うんじゃない?」 瞳ちゃんは無表情のまま、言った。 俺は、ふみちゃんの去った方をちらりと見てから、瞳ちゃんに向き直る。 「もう、選んじゃったから、さ」 「はっはっは、馬鹿だなあお前」 愉快そうに笑う田上さん。 「ほんと、やっぱり大馬鹿ね」 瞳ちゃんは、懸命に無表情を維持しながら、それでも笑っていた。 そして、 「……ありがとう」 と、小さな声で付け加えた。 そのひと言が、とてつもなく嬉しかった。 泣き出したいくらいに嬉しかった。 それだけに、俺は強がって見せた。 「ただ、自分のケツ、拭いただけですよ」 俺の作った無表情は、ちゃんと無表情だっただろうか? Re: むかしのはなし。#3 ( No.10 ) 日時: 2007/07/28 21:27名前: バラバラ まぁまぁ、女泣かせですなぁ。 やっぱり私はふみちゃんを選んじゃいますねぇ。(笑) でもこれで名実ともに瞳ちゃんを恋人にしてしまったということで…。 その後のた〜さんと瞳ちゃんの対処が大人ですねぇ。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.11 ) 日時: 2007/07/28 23:19名前: 名無しのゴンベエ ふみちゃんハァハァ・・・ Re: むかしのはなし。#3 ( No.12 ) 日時: 2007/07/29 00:08名前: ドイツ人 E_janさん、毎度です。更新お疲れ様です。 「もう、選んじゃったから、さ」 ・・・くぅ〜〜〜っ、かっくいいなぁ・・・。 E_jan節、すこぉ〜しキザが入ってると思いますが、 ぜんぜんイヤミじゃないんですよね、不思議と。 それに、読後感がいいので、もっともっと読みたくなるのです。 (ま、キャバ嬢も忘れていないのですが、とりあえずこのお話、大応援です) Re: むかしのはなし。#3 ( No.13 ) 日時: 2007/07/29 08:18名前: 名無しのゴンベエ つらいなふみちゃん・・・・ そしてそれを本人に告げるE_janさんもつらいな。 でもすごく男らしい。 私にこんな対応できるだろうか? 絶対無理だ! ふみちゃんを選んじゃうだろうな。 ますます展開が読めなくなってきた今後に期待! Re: むかしのはなし。#3 ( No.14 ) 日時: 2007/07/29 08:21名前: 名前はまだ無い ↑あぁぁぁぁ・・・ 「名前はまだ無い」が書き込みました。 ふみちゃん、ごめん いや違ったE_janさんごめんだった。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.15 ) 日時: 2007/07/29 18:24名前: プリン 世の中は三日見ぬ間のサクラかな・・・。 数日間、目を離している間に予想外の展開ヽ(*'0'*)ツ でもスゴイことになってますよね。 でもって今後の展開が読めなくなってます。 ま、始めから読めてなかったってのがほんとのところ(^_^;) Re: むかしのはなし。#3 ( No.16 ) 日時: 2007/07/30 00:00名前: E_jan コメントありがとうございます。 土日ぐらいしか余裕がないので、時間のあるときに頑張って更新していきます。 >バラバラさん >名前はまだ無いさん ふみちゃんの再登場にご期待下さいw >ドイツ人さん ドイツ人さんのコメントにも、ドイツ人節、感じますよw >プリンさん 若気の至り、というか、主人公の軸がブレまくってる頃の話なので……。 というか、みなさんはどんな展開を予想されている(いた)のかなぁ。気になります。 その39 その看護婦は、とてもいい女だった。 明るく朗らかで、てきぱきしていて、頭もいい。 ショートカットがとてもよく似合う、健康的かつ知的な美人だ。 まだ新人だそうだが、それを感じさせない有能さを身に纏っている。 彼女には、俺よりも瞳ちゃんの方が入れ込んでいた。 「高木さん、いいわ。すっごくいい」 「ふうん……レズの血騒ぎまくり、すか?」 「ええ。抱きたいタイプだわ。あの細い腰、胸もやわらかそう♪」 「たしかにスタイルも抜群すからね、彼女」 「ああいうタイプはきっとよく濡れるわよ。間違いない」 「そんなもんすか?」 「そんなもんよ。頭のいい女はよく濡れるの。言葉責めとか、きっと好きよ」 「あはは、すげえ妄想っすね」 「単なる妄想じゃないわよ。経験から推測してるの!」 土曜の午後、中庭の片隅にある喫煙所のベンチで、瞳ちゃんと交わす中学生レベルの猥談。 その生け贄になっているのは、俺のいる病室を担当していくれている看護婦(当時は看護師なんていう色気のない呼称ではなかった)の高木絵里さんだ。 「……恵利瀬とどっちが好みで?」 アホな質問をしてみると、瞳ちゃんは真剣に困った顔をするから面白い。 「似てるのよね、高山さんと高木さん。どっちもいいけど、選ぶなら高木さんだわね」 「へえ、決め手は?」 「だって、いまさら高山さんは無理でしょ?」 「そういう理由かよ……」 格好いい系の恵利瀬と可愛い系の高木さん。外見的には、あまり共通点はない。 しかし、性格など、人としてのタイプは、たしかに恵利瀬によく似ているように思う。 どちらも仕事のできるいい女だ。 名前も高山恵利瀬と高木絵里と、ちょっと似ているな。 「あなたも好きなタイプじゃないの?」 意地悪そうな顔で、瞳ちゃんが聞く。 「そうですねぇ……確かに好みのタイプすね」 見た目はもちろんのこと、凛とした表情のなかに、優しさを併せ持った高木さんは、たしかに俺の好みに合致する。 「じゃあ、さ。今度ふたりして高木さん襲っちゃわない?」 「……瞳ちゃん、あんたって人は……」 「はっはっは。冗談よ、冗談」 ダークサイドを知っていると、少しも冗談に聞こえないから困る。 というか、絶対本気だ。 「あのね瞳ちゃん、相手が女性でも浮気は浮気ですからね。浮気は許しませんよ」 とりあえず釘を刺しておいたのは、浮気が嫌だからではなく、高木さんに迷惑を掛けないように、と思ってのことだ。 「あらまあ、器のちっさい男だね、まったく」 そういって、ため息を付く瞳ちゃん。 ……やっぱり本気じゃねえかよ。 「男は一生あんたひとりでもいいけど、女の子はね、ちょっと我慢するのつらいなあ……」 煙草に火を付けながら、瞳ちゃんがボヤいた。 「一生って……。今、さらりとすごいこと言いませんでした?」 「あ?」 「……なんでもないっす」 ふと、ベンチから立ち上がって、背を向ける瞳ちゃん。 ちらっと見える耳が真っ赤だ。 自分の失言に気が付いたのだろう。 「あはは、赤くなって。可愛いっすね、瞳ちゃん」 俺は、わざわざ指摘してやった。 「うるさいわね。……ところで、話変わるけど、その変な口調、もうやめない?」 「はあ」 都合が悪くなると、いつもこうだ。話を変えて攻撃に回る。 「ナントカっす、っていうの、全然敬語じゃないから。敬語でいきたいなら、徹底的に正しい敬語で話して。それができないなら、もっと普通にしてて」 「うーん、敬語のつもりないし、これが一番楽な話し方なんすけどね……」 「だめ。イケてなさすぎ。使えない若造丸出し。言葉は重要よ」 まあ、たしかに言うとおりではある。 「了解。んじゃ、もっとフレンドリーにやるわ」 「まあ、話し方ぐらいじゃ、駄目さ加減はあんまり変わらないけど、ね」 瞳ちゃんの物言いの方が、毒が強すぎて問題有りだと思うのだが。 「あなたは私になんか要望ある?」 ふっと、真顔になって、瞳ちゃんが言った。 お、来たな、と思った。 瞳ちゃんは、ときどき、フイに「彼女モード」に入ることがある。 直前まで「上司モード」だったり「ダークサイド・モード」だったりするのが、急に、だ。 先日も、俺の洗濯物を鞄に詰めながら、Tシャツの柄がセンス悪いだの、汗くさすぎるだの、毒舌を吐いていたかと思えば、急に「今日の服、似合ってるかな?」とか、切なそうな眼で乙女ちっくなことを問いかけて来る。 普段、あれだけ俺をいじめるクセに、ときどき「俺に嫌われたくない」オーラを全開にすることがあるのだ。 それはそれで可愛らしくていいのだが、そのスイッチがどのあたりにあるのか、未だにつかめていないため、俺としては戸惑ってしまうことが多い。 今回も、急に言われて、なにも思いつけずにいる。 「要望かぁ……急に言われてもなぁ……」 「あいかわらず優柔不断な男だなぁ……。そのへんしっかり主張できるようになんないと、将来割食う役回りばっかりになるよ」 「はぁ、仰るとおりで……」 「しっかりしてよね、まったく!」 口調は怒っているが、表情はとても穏やかだ。 言うべき事はキッチリと言わないと気が済まない瞳ちゃん。 それでいて、最低限の気配りもできてしまう。 ダークサイド全開でない状態の瞳ちゃんは、たしかに頼もしい。 デキる社員として、一目置かれていたのも頷ける。 「あらあら。噂をすればナントカね」 ふと、瞳ちゃんは俺の背後に視線を投げ、そういった。 振り返ると、恵利瀬がいた。 「ご無沙汰です、先輩」 恵利瀬は俺を無視して、まずは瞳ちゃんに挨拶した。 「どう? 宣伝営業部は慣れた?」 「まだ、右も左もわからない状態ですね」 「そっか、頑張ってね」 ニコリと笑って恵利瀬の肩をぽんぽんと叩く。 「まあ、積もる話もあるでしょうから、おねーさんは退散させていただきますよ」 そういって、煙草をもみ消した。 「どうぞごゆっくり〜♪」 俺たちを残して、飄々と立ち去る瞳ちゃん。 ふみちゃんの時と同じ轍を踏まないところあたり、さすがの処世術だ。 「よくここにいるってわかったね」 「ああ。同室の患者さんたちが教えてくれたわ。『あのふたりはいつも喫煙所にいる』って」 「……なるほどなぁ」 それ以外の面倒くさい噂話も聞かされたに違いない。 「部署移動して忙しかったから。ごめんね、なかなか顔出せなくて」 そういいながら、恵利瀬は煙草を取り出して銜える。 恵利瀬が煙草を吸っているところは、はじめて見た。 そんな視線に気が付いたのか、ちょっと笑って、 「高校んとき以来、やめてたんだけどね」 と言った。 「ずいぶん仲良さそうじゃない、瞳ちゃんと」 「ああ、まあな……」 「田上さんから全部聞いてるわよ」 「そっか……。説明省けて助かるね」 「……すごい展開になったものね。話には聞いていたけど、今さっき、瞳ちゃんと仲むつまじいところ見るまで、信じられなかった」 「だろ? 俺も信じられない」 他人事のような発言に、あきれ顔になる恵利瀬。 ふう、と大きく煙を吐き出した。 「……以前に何度か、『瞳ちゃんに惚れたんじゃないの?』って、聞いたことあったよね?」 「ああ……。あった、あった。そんときは、心から憎んでたなぁ、瞳ちゃんのこと」 「それが、どういう心境の変化なのか、どうにも理解できないのよね」 「俺も、わからん。……恵利瀬に惚れてて、それでも何故か恋人にはなれなくて、少しもその気がなかった瞳ちゃんと、一緒にいる……。なんでだか、さっぱりわかんないんだよ」 「……タイミング、かな?」 そういって、恵利瀬は寂しそうに笑った。 「かもね」 瞳ちゃんの件はさておき、絵里瀬との関係において、俺たちは明らかにタイミングを外していた。 恵利瀬が惚れてくれたタイミングも、初めて抱いたタイミングも、俺の気持ちが恵利瀬に傾いたタイミングも、すべてがあまりにもちぐはぐだった。 ほんの少しでも、どれかのタイミングがずれていれば、俺の介護をしてくれたのは、恵利瀬になっていたかもしれない。 それ以前に、胃穿孔などにはならずにすんだ可能性が高い。 「ひとつだけ、気になってること、聞いていい?」 「ん? ああ、なに?」 「私と瞳ちゃん、どっちが抱き心地、いい?」 ぐっ、と言葉に詰まる質問だ。 だが、俺は躊躇なく、おまえだよ、と断言した。 嘘を吐いたとは思わないが、それが真実か、自信はない。 だが、言い淀むことだけは避けたかった。 『優柔不断な男』。 瞳ちゃんの言葉が脳裏を過ぎったのだ。 「へえ。ちょっとはいい男になったじゃない」 恵利瀬は、くすっと笑った。 俺は、二度と抱くことはないであろうその身体の感触を、細部まで思い出していた。 「私の抱き心地、一生忘れないでね」 そんな邪な想いを見透かしたように、恵利瀬は微笑んでいた。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.17 ) 日時: 2007/07/30 00:13名前: 名無しのゴンベエ 看護婦さんの絵里さんってもしかして・・・ Re: むかしのはなし。#3 ( No.18 ) 日時: 2007/07/30 00:19名前: 名無しのゴンベエ 恵利瀬さん、完全には吹っ切れていない気がします。 高木さんとのエピソードも出てくるのでしょうか。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.19 ) 日時: 2007/07/30 01:13名前: バラバラ え?ふみちゃん再登場するんですか? それはそれで楽しみですねぇ。 さて、新キャラの登場に恵利瀬さん久々の登場。 恵利瀬さんにいたっては長々とした会話。 何だかこのままいい関係になって欲しかったというのは私の我侭なんでしょうか?(笑) Re: むかしのはなし。#3 ( No.20 ) 日時: 2007/07/30 01:48名前: 名無しのゴンベエ ふみちゃんが最初の奥さんだと思ってたんですが・・・ もしかしたらまた出番があるのかな? Re: むかしのはなし。#3 ( No.21 ) 日時: 2007/07/30 01:59名前: 17 20の名無しさん 僕もそうなのかなって思ってたんですが、奥さんの名前は絵里さんでしたよね・・・ Re: むかしのはなし。#3 ( No.22 ) 日時: 2007/07/30 11:43名前: 名無しのゴンベエ 確かに奥さんの名前→絵里さんでしたね。 ここからどういう展開になるのかすごい楽しみですね。 期待してます。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.23 ) 日時: 2007/07/30 11:46名前: 名前はまだ無い ええっ!また新しい登場人物だよ。 一体どうなるんだろう・・・・ 次の展開に興味津々。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.24 ) 日時: 2007/07/31 21:14名前: 名無しのゴンベエ 奥さんキターーーーー!!! キャバ嬢にどうつながっていくのか?楽しみです Re: むかしのはなし。#3 ( No.25 ) 日時: 2007/08/01 15:32名前: オールドルーキーm ふみちゃん、キターー! と思ったら、恵利瀬さんもキターー!! と、このあとどうなって行くんだろーー?! Re: むかしのはなし。#3 ( No.26 ) 日時: 2007/08/01 15:47名前: 名無しのゴンベエ 看護婦の高木絵里さん・・・ が後の奥さんになるのかな?www Re: むかしのはなし。#3 ( No.27 ) 日時: 2007/08/04 14:35名前: E_jan コメントありがとうございます。 ああ。みなさん気が付いたんですね。 元嫁、登場です。といっても、この物語では出番少ないと思いますが。 その40 なんだかんだ言って、6人部屋の病室では、気が休まらなかった。 同室のオジサンたちは、長期入院で暇をもてあましているから、俺みたいなのは、格好のネタだったようで、ふみちゃんと瞳ちゃんの揉め事を見られて以来、執拗に俺をからかった。 それに腹を立てるわけでも嫌で嫌でしょうがなかったわけでもないが、やはり面倒くさかったのは事実だ。 だから動けるようになると、瞳ちゃんが来るたびに、すぐに喫煙所に行くようになってしまった。そこでダラダラと、どうでもいい話をしながら過ごす。 瞳ちゃんはほぼ毎日来てくれたから、ありきたりな話題はすぐに尽き、やがてお互いのプライベートな部分に踏み込んだ会話がメインになっていった。 学生時代の話や、親しい友人のこと。もちろん恋愛関係の話もずいぶんと話した。 退院を翌日に控えたその日、ふとしたことから常務の話題になった。 俺と瞳ちゃんがちゃんと付き合っていくためには、いつかは話さなければならなかった、「避けては通れぬ話題」だろう。 「安倍川常務って、俺ほとんど見たこと無いんだよね」 役員たちのフロアは俺たちのいるフロアの2階上にあって、エレベータも別だ。 だから、めったに会うことはない。 「……あの人は渉外の要だから、あんまり社内にいないし、『ご降臨』もほとんどないからね」 お偉いさんたちが企画部や編集部のフロアに降りてくることを社内隠語で「ご降臨」と呼んでいた。 まあ、俺らど新人にとって「ご降臨」は滅多に見られない珍獣を目撃するチャンスとして、イベント的な盛り上がりを見せるのだが、部長以下、現場を仕切る人間たちはやっかいごとの前兆として、忌み嫌われていた。 「私が出世のために安倍川を色仕掛けで籠絡したって噂あるでしょ。……それ、信じてる?」 「……うーん。悪いけど、信じてる。ていうか事実でしょ?」 「そうね、半分は本当。でも半分はデタラメ」 「ふーん。どの辺が本当で、どの辺がデタラメ?」 「まず、出世のために安倍川を墜とした、っていうのが根本的に間違いなのよ」 瞳ちゃんは煙草をくわえた。 すかさず、俺が火を付ける。 「へえ。純粋な恋愛感情だった、と?」 「そうは言ってないでしょ。違うのは、口説いたのは向こうからで、それも私が学生時代の話だったって部分」 「え?」 「大学3年の時にね、偶然、バーで出会った安倍川に口説かれたの。相手が妻子持ちだっていうのはすぐ解ったけど、けっこう格好いい じゃない安倍川さんって。半年ぐらいかな……本気で付き合ったわ」 煙を見上げる瞳ちゃんの目は、楽しかった過去を追う視線のようにも見えた。 「あの会社もね、安倍川のツテで入ったのよ。その頃は今より全然景気が良かったから、もっといい会社も山ほどあったんだけど、その頃はまだ可愛くてね。『安倍川さんと一緒の会社で頑張るっ!』とかいっちゃってさ……」 「ふーん。なんか想像できないなぁ。そんな純な瞳ちゃん」 「ああ。もちろん腹黒いところもあったわよ。安倍川が常務だって知ってたから、『この会社入れば将来は安泰だわな』とか、打算的なことも考えてたし。だから、出世のために、っていうのは半分本当」 半分程度までしか吸ってない煙草をもみ消し、新たにもう1本取り出してくわえる。 きっと、間が持たなかったのだと思う。 俺は、当然のようにライターを差し出し、火を付ける。 「愛情からスタートしたけど、そのうち相手を利用し始めた、と」 「大学4年になる頃には恋愛感情も冷めて、身体だけの関係になってたわね。所詮、相手は妻子持ちだし、相手の家庭まで巻き込むのも面倒くさそうだから、愛人ってポジションに収まっちゃったわけ。……もう内定出てたし、それ以外の就職活動は真面目にやってなかったから、会社はそのまま行こうと思った。奥さんにしてくれない変わりに、社内ではきっちりフォローしろよ、って安倍川脅してね」 「あはは。瞳ちゃんらしい話になってきたな」 「……これでも、安倍川とのこと、けっこう真剣に悩んだ時期もあったのよ」 そういって、瞳ちゃんは寂しげに笑う。 「同じ会社で頑張って出世して、安倍川を見返してやろう、ぐらいのことは考えたわ。でも、安倍川の力を利用した方が、なにごとも上手くいくし……そのうち仕事がすごく面白くなってね。仕事のために安倍川を活用できるなら、いくらでも使ってやろう、って思うようになってた。仕事と安倍川の主従が逆転してたのね」 「ふうん……」 「やがて、安倍川を利用するのが普通になってさ。今回のコンペんときみたいに仕事とは呼べない部分でも安倍川に甘えるようになってたのよね……。まあ、遅かれ早かれ、安倍川には捨てられたでしょうし、そうなったら会社には居られない。……こうなることは覚悟してたの」 「そっか……」 なんとなく黄昏れてしまう。 「さて。そろそろ帰るね。今日はちょっと早めにバイト行かないといけないからさ」 「ああ、そうなんだ……って、瞳ちゃんバイトしてるの?」 「それなりに蓄えはあるけど、とりあえず働いとかないとね」 「いや、ていうかなにやってんのさ、仕事」 「ん? キャバ」 「はあ?」 「会社辞めてすぐバイトはじめたのよ。言ってなかったっけ?」 「……初耳」 あはは、と、瞳ちゃんは笑った。 「昼、あんたの面倒見れるし、お金もイイし、けっこう理想的なのよキャバ嬢」 「……向いてないような気がするんですけど」 「あら、これでも人気者よ。世の中、意外とM男が多いみたいでね」 女王様キャラでフロアに君臨する瞳ちゃん。なるほど想像の範疇内だ。 「それに、おじさま受けするぶりっこも得意だしね」 一見、まったく向いてないように思えるが、冷静に判断すれば、瞳ちゃんはキャバ向きなのかもしれない。 それにしても、意外な転身である。 「あのさ……店だと何歳で通してるの?」 「ん? ハ・タ・チ♪ 疑う人、いないよ」 ああ、やっぱり。 その店にだけは行くまいと、俺は誓った。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.28 ) 日時: 2007/08/04 15:28名前: 名無しのゴンベエ 最後の会話最高です。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.29 ) 日時: 2007/08/04 16:03名前: 名前はまだ無い 瞳ちゃんのキャバ嬢って結構いいかも。 その店だけはぜひとも行ってみたい! Re: むかしのはなし。#3 ( No.30 ) 日時: 2007/08/04 16:36名前: バラバラ なるほど、瞳ちゃんにはそんな過去があったんですか。 途中考え方が逆転したのもわかるような気がします。 しかしこんなところでキャバが関係していたとは…。(笑) Re: むかしのはなし。#3 ( No.31 ) 日時: 2007/08/05 10:10名前: 名無しのゴンベエ E_janさんのまわりの女性はみんな魅力的ですね。 うらやましい。 キャバには、不思議なご縁があるようで。 偶然というか、寧ろ必然 Re: むかしのはなし。#3 ( No.32 ) 日時: 2007/08/05 23:04名前: 名無しのゴンベエ E_janさんなかなか読み応えあります! これって粗方構成作って書かれていますか? 文才が羨ましい・・・モテルわけですなぁ。 私は恵利瀬ファンですがw Re: むかしのはなし。#3 ( No.33 ) 日時: 2007/08/06 00:31名前: E_jan コメントありがとうございます。 >名前はまだ無いさん >パラパラさん >31ゴンベエさん キャバはいろいろ絡みますね、本当に。 >32ゴンベエさん あまり構成とかは考えてないんですよ。 その41 ようやく退院できたものの、すぐに会社に復帰する、というわけにはいかない。 部分的とはいえ、胃を切除したこともあり、とにかくモノが食えない。 食えないから体力がない。なにもしていないのに疲労感が抜けないのだ。 こんな状態では、通勤電車だけで全体力を消耗してしまうに違いない。 「そんな調子じゃ会社に行っても迷惑を掛けるだけよ」 退院直後に会社へ行こうとして、瞳ちゃんに止められた。 「わかってるけどさ……。なんかこう、じっとしてられないんだよ」 寝ているところが、病院のベッドから、より身に馴染む自分のベッドに移っただけで、結局のところ、俺はゴロゴロ、ぐだくだとしていることに変わりはない。 とにかく、仕事に復帰したかった。 自らが企画し、社内の賞賛を得た企画が、自分抜きで進行中なのだ。 これは、悔しい。 いや、悔しいというよりも、置いてけぼりにされるような。得も言われぬ疎外感が胸を締め付けるのだ。 「ずいぶん、欲求不満が溜まってるようだね。病院じゃ人目気にしてイチャイチャもできなかったし、大部屋だからオナニーも我慢してたんでしょ?」 ニヤニヤしながら、話をはぐらかそうとする瞳ちゃん。 「……そっちの欲求不満じゃねえよ」 「あれ、そうなの? 私はそっち方面の欲求不満よ」 そういって、ベッドに腰掛けていた俺の背後へと回り込んだ。 「ふたりっきりって、久しぶりじゃない」 後ろから抱きついて、耳元で囁く。 久しぶりに感じる「女」に、身体は素直に反応する。 たしかに、病院では禁欲的な生活を強いられていた。 瞳ちゃんと喫煙所でふたりになることはあっても、誰が来るかも解らない屋外だ。 ただでさえ噂の的になっている状態だったので、瞳ちゃんとの距離感には、必要以上に気を配っていた。 毎日、瞳ちゃんが帰る前、カーテンの内側で、軽いキスをしてくれるのが、ふたりにとって唯一といっていい接触だった。 パジャマの襟元から、手が忍び込んできた。 瞳ちゃんの、温かい手が、俺の胸を撫でる。 「……こんなに痩せちゃってさ」 切なそうな声が、耳をくすぐる。 「体重、何キロ落ちた?」 「15キロぐらい……かなあ」 「そのぶん、体力も落ちてるのよ。無理は禁物」 「わかってるよ」 「江口はさ、ちょっと休んだくらいで帰る場所がなくなるほどの小物じゃないんだよ、もう」 諭すように、優しい瞳ちゃんの声。 「期待されてるの。無理して戻って半端な仕事になっちゃうなんて許されないのよ。……だから、もうちょっとだけ休んで、力の出せる状態で、職場復帰しないと、ね?」 そういいながら、瞳ちゃんのもう片方の手が、俺の股間へと伸び、パジャマの上から、硬くなったモノを掴んだ。 「食べて、抱いて、寝て。今は三大欲求を満たしながら、活力を溜めましょう」 「……あいかわらず、瞳ちゃんはうまいこと人をそそのかすよね?」 体勢を入れ替え、俺は瞳ちゃんを押し倒す。 「そそのかす? 導いてるだけよ」 ふふっと笑う瞳ちゃんの、唇を塞ぐ。 舌を絡め合う、濃厚なキス。久しぶりだ。 考えてみれば、はじめて瞳ちゃんを抱いた夜、彼女に対して抱いていたのは、共犯者意識から芽生えた連帯感と、「未知の生物」に対する好奇心だけだった。 その直後に入院し、そのなかで、時間を掛けて瞳ちゃんを理解していった。 今、俺は迷うことなく、瞳ちゃんを愛していると断言できる。 彼女のへらず口にも、尊大な態度にも、理路整然とした嫌味にも、その裏にある「気持ち」を感じられるようになっていた。 ひねくれていて、かわいげが無くて、意地悪。そんな瞳ちゃんが好きだった。 いまだに、瞳ちゃんがなぜ俺に気持ちを寄せてくれたのかはよくわからない。 ただ、その気持ちが本物だっていうことだけは、わかる。 それさえわかれば、なぜか、なんて関係はない。 「……なに見つめてんのよ」 「ん? 綺麗だなあ、って思ってさ」 「見え透いたお世辞言う暇があったら……早く抱いてよ!」 照れたように、視線を逸らす瞳ちゃん。 「あ、でも無理しないでよ、体力落ちてるんだからね」 あわてたように付け足した。 どっ、と、愛情が心の底からわき出してくるのを、感じていた。 「俺さ」 「ん?」 「瞳ちゃんにベタ惚れしちゃったみたい……」 たぶん、耳まで真っ赤にしながらの、告白だったっと思う。 瞳ちゃんは、一瞬、天使のような優しい笑みを浮かべたあと、 「言ったでしょ? 絶対あなたは私に惚れる、って」 そういって、ニヤリと下品に笑った。 どちらも、瞳ちゃんの顔だ。 「入院でのブランク、絶対にあなたにとっていい経験になるわよ。保証する」 「瞳ちゃんが保証するなら、焦ることはないか……」 なんとなく、素直にそう思えた。 この、とんでもない魔女の魔法に絡め取られてしまったのだろうか。 全身から、力みが抜けていくのを感じる。 やんわりと瞳ちゃんを抱きしめたまま、俺は心地よい眠りに落ちていった。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.34 ) 日時: 2007/08/06 06:57名前: バラバラ 退院できてもまだまともに動けない状態ですか。 しかしそんなときでも瞳ちゃんは口が悪くてもフォローにまわるようになっちゃいましたね。 押しかけ女房的ですが、江口さんもすっかりそのペースにハマっちゃいましたね。 病み上がりゆえにエッチはなかなか期待できないかな? 認められた仕事のへの復帰も期待したいところです。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.35 ) 日時: 2007/08/08 10:25名前: 名無しのゴンベエ つづきが気になる Re: むかしのはなし。#3 ( No.36 ) 日時: 2007/08/10 12:14名前: 期待age 楽しみにしてます!! Re: むかしのはなし。#3 ( No.37 ) 日時: 2007/08/12 22:44名前: E_jan その42 朝方、酔っぱらった瞳ちゃんがやってきた。 キャバの仕事明けに顔を出すなんて、珍しい、というか初めてのことだ。 「お客さんに呑まされちゃったよ」 真っ赤な顔でニコニコ笑いながら、服を脱ぎ散らかしていく。 「キャバ嬢っつーのも大変だね。ちょっと舐めてたよ、この仕事」 寝ぼけ眼の俺を無視して、ひとりでぶつぶつ言っている 相当、酔っているようだ。 酔っぱらっている瞳ちゃんを見るのは初めてだが、酒には強くないらしい。 「……コーヒーでも炒れるか?」 「いらない。寝る」 起きあがってキッチンへと向かう俺とすれ違うように、下着姿の瞳ちゃんはベッドに向かうと、大の字に転がってしまう。 その姿に、俺は柄にもなくドキドキしていた。 考えてみれば、瞳ちゃんを抱いたのは、まだ1回だけだ。 退院した日に抱くチャンスはあったが、疲労感から、俺はあっさりと眠ってしまい、結局抱けずじまいだった。 会社の屋上で無理矢理陵辱したときも、付き合うことを決めてガツガツとセックスしたときも、着衣のままだったこともあり、実はまだ、瞳ちゃんの裸というのをちゃんと見たことがなかったのだ。 俺は興奮気味に、下着姿で微睡む瞳ちゃんを見下ろしていた。 実に引き締まったいい身体だ。 巨乳ではないが、それなりにボリュームのある胸を包むのは、白地に赤い縁取りのあるブラ。お揃いの小さなパンティも可愛らしい。 右膝を立てるようにして、大股を開いて寝ているため、どうしてもそのあたりに視線が言ってしまう。 有り体に言って、俺は欲情していた。 覆い被さってキスをする。 「ん……江口……」 酒臭い息で、それに応える瞳ちゃん。 俺は、キスしながら、その背に手を回して、ブラのホックを外す。 形のいい乳房は酔いで桃色に染まっていた。 その頂上にある小さな乳首へと、むしゃぶりつく。 「あん」 瞳ちゃんは、短く喘ぎ、俺の頭を抱いた。 乳首を甘噛みしするように攻め、反対の乳房を強めに揉みしだく。 「あはぁん……酔っぱらいを襲うなんて、最低ね」 そういいながらも、頭を掻き抱く腕の力はどんどん強くなっていく。 さらに舌で転がすように愛撫をすると、瞳ちゃんは切なげな声を上げた。 「ああ……ん、ん」 キレイな肌の感触を楽しみたくて、空いているほうの手でわき腹から腰にかけてそっと手を這わせると、びくっと大きな反応を見せた。 そのまま、指先を下着に滑り込ませると、そこは、熱くぬかるんでいた。 ゆっくりと、人差し指を動かし、隠れている突起を捜した。探り当てた柔らかな突起を、指でなぶる。 「はあぁん……」 切なそうな声には、明らかに艶っぽさが加わっていた。 すぐにでも突っ込んでしまいたい衝動を抑え、ゆっくりとパンティを脱がせていく。 そして、俺もパジャマを脱いで裸になった。 ……付き合うことを決めた晩に、瞳ちゃんが言っていた言葉を思い出したのだ。 「抱きしめてくれればいい」 俺は、それを額面どおりに受け取ることにした。 セックスするんじゃなくて、抱きしめるんだ。 布一枚も隔たらない、素肌と素肌を合わせて、瞳ちゃんを抱きしめる。 「ああ……」 背中に腕を回し、力を込めて抱くと、瞳ちゃんはかすれるような小声で満足そうな声を上げた。 艶っぽさとは無縁の、素直な歓喜の籠もった響きだ。 瞳ちゃんの胸が俺の胸でつぶれる。腕に力を込め、足と足を絡め、俺たちは抱き合った。 「抱きしめられるの、好き。ずっと、こうしていたい……けど、無理そうね」 そういって、勃起しまくった俺の股間を太股で刺激する。 「無理だね。入れたくなる」 「ふふっ、私も入れて欲しくなる」 瞳ちゃんの中心に猛るモノをあてがうと、ゆっくりと中へと沈めていった。 「はぁ……ん」 くっと顎を逸らして快感を享受する瞳ちゃん。 あいかわらずキツい膣は、奥へと進入していく俺を歓迎するかのようにからみついてくる。 全てを沈めると、瞳ちゃんは俺の腰に脚を絡めながら嬉しそうに笑った。 「硬いね……。かなり溜め込んでたようで……」 「禁欲生活長かったしなぁ……」 「よく我慢した。今後は溜め込む前に私を抱きなさい」 「……そうだな」 繋がったまま、いつものノリで会話するというのは、妙に違和感がある。 瞳ちゃんもそう思ったのか、ふと目を閉じて、それから俺を抱き寄せて、キスをした。 「……やっと、ちゃんとエッチできたね」 少女のような無垢の表情で言った。 ……なんというか、萌える。 「ああ、まったくだ」 そういってから、俺は肉欲に任せ、激しく腰を使い始めた。 「ああッん」 瞳ちゃんの嬌声と、俺の荒い息が混じり合い、淫靡なリズムを生みだしていく。 俺は夢中で腰を動かしながら快楽を貪るだけで、瞳ちゃんは巧みに俺の勝手な動きを自分のいい場所へと導いてくれる。 「あん、ソコ……、それいいっ、えぐち」 ぐいっと奥まで注挿するたびに、瞳ちゃんの底に当たる。 小柄な瞳ちゃんらしい、浅い膣の最奥を攻め立てると瞳ちゃんは悲鳴にも似た声を上げる。 「や……も、ダメ」 「俺も……限界っ……」 「中で……中でいいよ」 そりゃ駄目だろう、と思ったが、もう腰が止まらない。 気が付けば、熱く滾る精子を、瞳ちゃんの最奥にぶちまけていた。 その晩は、何度、お互いの身体を貪り合っただろう。 気が付けば、夜は明け、心地よい疲労の中、俺は微睡んでいた。 瞳ちゃんは俺の腹を撫でている。 そこには、小さいとは言えない手術痕があった。 「けっこう、派手な傷ね。大丈夫だった?」 「うん……大丈夫みたい」 そういえば、手術のことなど、完全に忘れていた。 かなり腹筋を使ったが、どうやら問題はないみたいだ。 「体力も充分戻ってるわね。これなら仕事も大丈夫そうだわ」 そういって、ケラケラと笑う。 「明後日から、復帰だよ」 「……そうか」 瞳ちゃんは、ふと、遠い目になった。 やっぱり、仕事に未練があるのだろうか。 「ところで、今日、安全日だったん?」 俺は、わざと話題を変えた。 「ああ……。長いこと愛人やってたから、ピル常用してんのよ。心配しないで」 「……なるほど」 どうにも気まずい雰囲気に固まる俺を見て、ふ、と笑った瞳ちゃん。 「余計なことは心配しないで、おやすみなさいな」 そういって、瞳ちゃんはキスをしてくれた。 瞳ちゃんのキスは不思議だ。 いつも、俺を安心させてくれる。 俺は瞳ちゃんに抱きついて、力一杯抱きしめた。 「いいなあ、こういうの……」 そう呟いた瞳ちゃんの声が、とてつもなく心地よかった。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.38 ) 日時: 2007/08/12 23:31名前: バラバラ 更新お疲れ様です。 ついに本格的に瞳ちゃんとエッチしちゃいましたね。 しかも萌えちゃったようで。(笑) 今回はデレの部分が大きく出たようですね。 やはり恋人になったこともあってか体の相性もいいようで。(笑) Re: むかしのはなし。#3 ( No.39 ) 日時: 2007/08/13 05:02名前: プリン チャンと瞳嬢と抱きあえたことで、物語は 次の段階へと進む気配・・・? Re: むかしのはなし。#3 ( No.40 ) 日時: 2007/08/15 03:59名前: 名無しのゴンベエ 面白いわー Re: むかしのはなし。#3 ( No.41 ) 日時: 2007/08/15 07:09名前: 名無しのゴンベエ 怖い女相手に勃たないじゃなかったけ(遠い目) これから元嫁さんとどう結ばれていくのか気になります。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.42 ) 日時: 2007/08/21 12:49名前: 名無しのゴンベエ ま〜だ〜?? Re: むかしのはなし。#3 ( No.43 ) 日時: 2007/08/22 08:45名前: 通りがかりの人 いろいろ忙しいのでしょうウン 一ヶ月ぐらいなら余裕で待ちますぜb 続きも余裕があったときで Re: むかしのはなし。#3 ( No.44 ) 日時: 2007/08/23 04:30名前: ドイツ人 私も、待ちます。待っています。 こう言ってプレッシャーをかける気はないのですが、 「キャバ嬢を・・・」の方も待っています。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.45 ) 日時: 2007/08/25 08:22名前: 名無しのゴンベエ 期待してます Re: むかしのはなし。#3 ( No.46 ) 日時: 2007/08/25 11:03名前: E_jan 待っていてくださったかたがた、本当にありがとうございます。 なんとかがんばって書き進めていきたいと思います。 その43 会社に復帰した俺を待っていたのは、他部署への出向という、予想外の辞令だった。 プロジェクトの総元締めである安倍川常務からの呼び出しを受け、常務の部屋に出向くと、そこには日高と田上さんがいた。 部屋の奥に置かれた大きな机に安倍川がふんぞり返っている。 「復帰早々でナンだが、編集部へ行って貰う。お前の提案したプロジェクト、お前が形にするんだ」 有無を言わせぬバリトンの声色で、安倍川常務は言った。 今の彼女の元彼(まあ、愛人だが)と、こんなカタチで対面するというのは、実に妙な気分だった。それも、相手と自分とでは、圧倒的に権力が違うときている。 どうしても、昨日も抱いた瞳ちゃんの肢体やしぐさを思い出し、あまつさえ、目前のオヤジと瞳ちゃんの情事をも想像してしまう。 安倍川は、俺と瞳ちゃんのことをどこまで知っているのだろうか? 「編集部に行く、といっても、お前らの行くのは、新設の第7編集部だ。編集長は田上、副編集長として、第2編集部から多嶋田が来る。日高と江口は兵隊として働け。この4人体制で新規プロジェクトを転がしていくことになる。むろん、営業部、企画部などの他部署も全力でバックアップ体制を敷く。……質問は?」 キビキビとした口調で業務態勢を告げる安倍川常務の姿には、独特のオーラがあった。 「なければ以上。期待している」 そういって、場を締めくくると、安倍川は椅子から立ち上がり、そのまま黙って部屋を出て行ってしまった。 ばたん、と乱暴にドアが閉まるのと同時に、日高がはぁぁ、と大きくため息を付いた。 「緊張するわー。安倍川常務って……」 「まあ『力の安倍川』って言われている我が社の2大巨頭の一角だからな」 田上さんもネクタイを緩め、緊張を解く。 柔軟な交渉術で社長に登り詰めた『技の長谷川』と、胆力と行動力で業界内でその地位を不動のモノにした『力の安倍川』。この両輪が会社の二本柱であることは、俺ですら知っている。 「えぐっちゃんは緊張ひとしおでしょ。常務の女を奪ったんだから」 「奪ってねえよ」 「ああ、廃品のリサイクルだったわね」 どうにもこうにも棘がある。 日高とのあいだには、どうしようもない溝が出来てしまったことを痛感せざるを得ない。 「まあまあ、仲良くやろうぜ?」 田上さんが日高の肩をぽん、と叩く。 「俺たちは自分の知らない領域で仕事してかなきゃならねえんだ。いがみあっててなんとかなるほど甘くねえぞ」 ふと、真剣な光を目に宿し、田上さんがいった。 たしかに俺たちは出版社に勤務しながら、編集という作業にきっちりと関わったことはない。 実力派の田上さんにしても、マーケティングから導き出される「売れる本」のカタチを定義したり、出来上がった本をいかに売るか、ということには長けているものの、本そのものを作ることに関しては素人である。 チームの中に経験者は多嶋田副編集長ひとり、というのは、いかにも心細い。 それどころか、たった4人で「新しい雑誌」を作り上げることが出来るのかにも大きな不安があった。 あくまでイメージだが、雑誌というのはもっと大勢でつくるものだと思っていたのだ。 「とにかく、午後に新編集部でミーティングだ。……といっても、なにを話していいのやら。多嶋田さんに教えを請うしかないだろうな」 田上さんは背広の内ポケットから煙草を取り出し、銜えた。 「あの、ここは禁煙ですよ」 「……くわえてるだけだ」 日高のツッコミにあわててライターを取り出そうとした右手をズボンのポケットへと突っ込む。 目前の難題に、あの田上さんですら、動揺を隠しきれずにいたのだ。 まだ備品も揃っていないがらんとした編集部にあらわれた多嶋田さんは、でっぷりと太った長髪の小男だった。 年の頃は30前後だろうか。黒いTシャツの上にアロハを着ている。 口ひげに眼鏡をかけており、いかにも編集者、といった出で立ちだ。 スーツ姿の俺たちとは、あまりにも対照的である。 「気にくわないんだよね、本当は」 多嶋田さんは、開口一番、不機嫌そうに言った。 「俺はね、ずーっと『売れる本』を作ることだけを考えて仕事してきたわけ。死にそうになりながら企画ひねり出したり、何日も寝ないでそれをカタチにしたり……。売り上げを伸ばすことに命を削ってきたんだよね。それをさ……。タダで配る本を作れっていわれてもねぇ」 それは、予想していた反発だった。 ……俺の提起したプロジェクトとは、今で言う「フリーペーパー」だ。 しっかりとした雑誌の体裁をとりながら、それを書店流通には乗せず、無料で配布する。 制作費・印刷費などはすべて広告費でまかなう、というビジネス・モデルだ。 なんだ、そんなモンかよ、と思われるかもしれないが、当時にしてはあまりにも画期的なプロジェクトであった。 今でこそフリーペーパーは、あまりにもありふれた存在だが、当時は、フリーペーパー専門の小さな会社はあったものの、大規模にフリーペーパーを展開している出版社はなかった。 というのも、今ほど本や雑誌が売れなかったわけでもなく、価格固定の再販制度に守られた出版社が、あえて無料の媒体を手掛ける意味が希薄だったからだ。 フリーペーパーをやっている小さな会社は、出版というよりも広告会社に分類されるようなところばかりだった。 そこからから出されているフリーペーパーは、おのずと、ほとんどが広告の固まりで、記事は添え物でしかない。その意味ではチラシの域を出ていないと言えた。 それを本格的な雑誌編集・出版のノウハウを持つ会社が、立派な雑誌に仕上げ、圧倒的な部数をばらまくことで広告媒体としての価値を高め、無料化してやろう、というのがプロジェクトの骨子であった。 誰もが「売れる本を」、と考える中で、「売らない本」を、「売らなくても儲かる本」を作る、という発想の転換が、コンペを勝ち抜けた原動力と言えた。 しかし、現場の人間にすれば、本格的雑誌のフリーペーパー化というのは、自分の仕事に対する冒涜のように思えるのかもしれない。 「江口くんが発案者らしいけどさぁ。企画部って、いつも大雑把なパッケージングを企画書にまとめて、詳細はよろしくって編集部に投げるだけでしょ。俺らがどんな思いでそれを具体化してるか、想像したこと、ある?」 多嶋田さんは長い髪をなでつけながら、より一層、不機嫌な口調で言った。 ……正直にいって、想像したことなどない。 なにしろ、本格的な企画を手掛けたのはこれがはじめてなのだ。 それまでの不真面目な俺は、編集部がどんな苦労をしているかどころか、自分の部署の苦労すらはっきりとはわかっていなかったぐらいである。 「まあまあ、多嶋田さん、そんなに責めないでくださいよ。企画と編集、立場は違っても、いい物を作りたいって気持ちは同じなんですよ」 田上さんがなだめる。 「……まあ、雑誌一冊立ち上げるまでの苦労、存分に味わってもらいましょう」 そういって、多嶋田さんは不敵に笑った。 退社後、瞳ちゃんと合流し、久しぶりに「Ber 14」へと足を向けた。 ふみちゃんとのニアミスも考えたが、たぶん、ふみちゃんは二度とあの店には行かないだろうという、妙な確信があった。 退院後、飲酒は控えていたから、酒を呑むのは久しぶりだった。 それに、瞳ちゃんと酒を呑むのは、これがはじめてだ。 「ふうん……いい店じゃない」 カウンターについてすぐ、瞳ちゃんがぼそりと言うと、迷う風もなく、メーカーズマークをストレートでオーダーする。 「ここであの娘と出会ったってわけ?」 さすがにツッコミが鋭い。 俺が黙っていると、 「あの娘には似合わない店かもね」 小声で付け加えた。 それは率直な感想で、嫌味ではないのだろう。 「んで、久々の職場はどうだった?」 当然のように仕事の話を振ってくる。 「ああ……。また胃の痛くなりそうな展開だよ」 俺は弱々しく笑うしかなかった。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.47 ) 日時: 2007/08/25 11:18名前: You 面白いです。 続き楽しみに待ってます。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.48 ) 日時: 2007/08/25 11:52名前: バラバラ 会社に復帰ですね。 新規のプロジェクトって最初は異端児扱いを受けるものの、いざ成功すればガラっと周りの目も変わるもの。 あまりフリーペーパーが一般化していなかった時代にコレを立ち上げるのは江口さんの目が一つ時代の先にあったということでしょうか。 周りからの痛い視線も受けつつ大変な思いで立ち上げたんでしょうね。 暫くは江口さんのかっこよさを堪能しましょうか。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.49 ) 日時: 2007/08/25 12:31名前: 名無しのゴンベエ あんまり具体的に仕事内容書くと身元割れる可能性が。。。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.50 ) 日時: 2007/08/26 05:42名前: E_jan コメントありがとうございます。 古い話なんで、大丈夫だとは思うんですが……身元は詮索しないでほしいですね(汗 その44 「編集部へ出向? 転属じゃなくて?」 俺の話に瞳ちゃんはかなり驚いたようだ。 「そうか、『向こう』の人間になるのも楽じゃないっていうのに、『こっち』の肩書きぶらさげて行くわけね……」 「「正確に言うと、出向ですらないんですよ。第7編集部っていうの、名前は編集部だけど、管轄は企画部で正式には企画部編集課っていうらしいです」 瞳ちゃんから指摘を受けて以来、敬語調の話し方はしないようにしていたが、話に仕事が絡むと、どうしても元の口調に戻ってしまう。 「それは……」 ついこの間まで、同じ会社にいた彼女には、そのことが何を意味するのか、よくわかったようだ。 「不可侵領域に踏み込んだってこと?」 「ええ、安倍川さんの肝いりで」 「そうか、田上くんが抜擢されるわけだわ……」 ウチの会社は大きくコンテンツ事業セクションと経営管理セクションのふたつに別れている。 コンテンツセクションは通称「現場」と呼ばれる制作サイドで、編集部、広報部、マーケティング部などが属している。 一方、経営管理セクションは通称「ケイカン」と呼ばれており、企画部、営業部、経理部、総務部、執行部などが属している。 同じ会社ながら、これらのセクションは利害の不一致が多く、関係は険悪といえる。 どちらの部署も「よりよい商品(本)」を作り出そうとしている点は同じなのだが、そのアプローチには大きな差があるのは、想像に難くないだろう。 俺の所属する企画部は、「ケイカン」に属しているが、立ち位置としては「現場」に非常に近い。 それだけにコンテンツ、特に編集部との連携での動きが多く、そのぶんトラブルも多発している。 今回、企画部の主導で「編集部」が立ち上げられた、というのは、「ケイカン」が、「現場」に出島を築いたようなもので、これまで守られてきた両セクションの境界線を踏み越えるものだった。 「安倍川がやりそうなことね」 「力業っすよ、本当に」 「上層部としては両セクションがいがみ合ってるのはまったく無意味だから、そのへんの再編は近いうちにあると思ってたけど……」 瞳ちゃんは、くい、と、ショットグラスを空ける。 「『売らない本を作る』って企画、領空侵犯にはもってこいだったわけね」 「……みたいですね」 俺も、薄めに作ってもらったソルティドッグを飲み干した。 飲み口にはまったくアルコール感はないが、胃にしみわたるのがわかる。 「いろいろ最悪っすよ。自分の企画が商材の開発以外の目的で利用されるってのも腹立ちますけど……企画コンペって、ケイカンしか参加しないじゃないですか。現場抜きでなにがコンペだ、っていう現場の腹立ちはそれどころの騒ぎじゃないですね」 「……めんどくさい話ね」 「なんというか、ルビコン川越えちゃったというか、賽は投げられた、というか……」 「江口らしくないアカデミックなたとえね」 「……ほっといてください」 瞳ちゃんのツッコミにリアクションする気も起きない。 「……でも、これから大変そうよね。あの企画、よくよく考えれば現場の神経逆撫でするような事案だらけじゃない?」 「……はあ」 まさにその通りなのだ。 企画部という立場からの立案だけに、企画の完成度を高めることだけに集中し、現場の気持ちなど少しも考慮していない。 まさか自分が現場に立つとは予想すらしていなかった投げっぱなしの企画なのだ。 「ちょっと、現場の人たち舐めすぎてましたね……」 「なによ、弱気な声出して」 「弱気にもなりますよ。急に編集部だなんて。編集のこととかまーったくわからないし」 それを聞いて、瞳ちゃんはふん、と鼻で笑った。 「あんた、もとの部署の仕事だって、まーったくわかってなかったでしょ」 瞳ちゃんらしい、実にむかつく口調である。 「同じよ同じ。どこの部署に行こうが、ようやく社会人2年生になったばっかのひよこちゃんじゃない。まぐれ当たりの大ホームラン打っちゃっただけなんだから、そんなに気負うことないの」 言葉はキツイが表情は優しかった。 あいかわらず瞳ちゃんは感情のアウトプットが下手だな、と思う。 気持ちが表情にはにじみ出ているというのに、言葉はいつも無愛想で攻撃的だ。 プライドが高いのかなんなのか、本当のところはいまだにつかめていないが、とにかく気持ちを素直な言葉で表現することを、あまりしない。 「多嶋田さんっていうひとの事、聞いたことあるわ。ひねくれ者だけど、実力は一流だって。あなたはしっかり教えを請いなさい。バカなんだから」 そこまで言って、俺の表情からなにかを感じたらしく、 「絶対、あなたのプラスになるわよ」 と、あわてたように付け加えた。 最近は、こういった小さなフォローを入れるようになってきた。 少しは自分の毒舌を意識して、相手の気分を考慮するようになってきたようだ。 そんな、小さな変化が、とても愛おしく感じてしまう。 殺伐とした気分が、ちょっとだけ紛れたように思えた。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.51 ) 日時: 2007/08/26 09:13名前: バラバラ いやあ派閥って困ったものですねぇ。(笑) でも瞳ちゃんが支えになっている? Re: むかしのはなし。#3 ( No.52 ) 日時: 2007/08/26 10:35名前: さく丸 やっぱり面白いッス また暇な時に続きお願いします Re: むかしのはなし。#3 ( No.53 ) 日時: 2007/08/26 23:55名前: E_jan その45 プロジェクトは、どうにも上手く進行していない。 その理由は企画そのものに浮かび上がっている「現場軽視」にあるのは明白だ。 まず、新創刊するフリーペーパーの雑誌名。 これはまったく新しいものを採用するよりも、すでに購買層に浸透している、既存雑誌のタイトルを流用し、その増刊、もしくは兄弟誌とする、というのが俺の企画案だった。 自社の看板雑誌のタイトルを拝借する予定だったのだが、その編集部が猛烈な反発をみせている。 雑誌自体、自社の資産だし、それを自社のために活用することになんら問題はないはずなのだが、これまで地道に部数を重ね、ようやく看板雑誌に育て上げた側からすれば、そのタイトルを流用し「タダで配る雑誌」を作るなど言語道断、という気持ちなのだ。 もちろんこのプロジェクトは社命だから、結論からいえば、タイトル流用を拒否することなどできないのだが、どうせなら互いにコンセンサスを持って、気持ちよく流用したいという思いから、俺はその雑誌の編集長のもとに日参し、懐柔を続けていた。 「あんたら企画部はね、いつだってごり押しだ。現場のことも解らずに、経営の理論で非現実的なテコ入れをして雑誌を駄目にしてしまう。それで本の売り上げが落ちれば責任は全部現場だ。今回だってウチの雑誌の名前でタダ本を配ったら、ウチのイメージに傷が付くだろう?」 編集長の柳下さんは、紳士的でスマートなインテリ系編集長だが、彼にしても今回の件は腑に落ちないらしく、真っ向から対立してくる。 「いえ、だからイメージを損なわないクオリティの雑誌を作るつもりです」 柳下さんは、食らいつく俺を見下したように、中指で眼鏡を持ち上げる。 「それが可能かどうかは別として、もしもそれだけハイクオリティな雑誌を無料で配ってしまったら、ウチの売り上げに影響が出るでしょう? 『タダの方を読めばいいや』って」 「……そこは編集の方向性に変化を付けて、本誌とは別の色を出してですね」 「だったら、ウチの名前を使う必然性、なくなるじゃないですか?」 「……」 どこまでいっても平行線なのだろう。 必然性は、ある。訴求力を生むというための大きな必然性が。 だが、それは現場サイドにとっての必然性ではないのは明らかだ。 あくまでケイカン・サイドの必然性でしかない。 それを説くことは、彼らにとってゴリ押しに他ならないのだろう。 編集部に戻り、デスクに突っ伏していると、誰かに肩を叩かれた。 顔を上げると、多嶋田さんがニヤニヤ笑いながら、脂ぎった髪をなで上げていた。 「誌名、どうなりました?」 「……交渉中です」 「ふうん。柳下さん、簡単には折れませんよ。他の人もそうですが、自分の雑誌には愛着強いですからね」 「そうですね……」 「いっそ、新しい誌名でいったらどうです? その方が江口さんも自分の雑誌に愛着持てますよ?」 そういって、多嶋田さんはふふふ、と笑った。 明らかに嘲りの笑いだ。 「……ご忠告ありがとうございます」 俺は力の籠もる拳をデスクの下に隠し、精一杯の作り笑顔で応えた。 「まあ、なんか進捗があったら教えてください。それまでやることないんでブラブラしてますから」 掴みかかりたい衝動を押し殺し、立ち去るその背を睨み付ける。 しかし、ここでキレても、事態は悪化するだけだ。 再びデスクに突っ伏して怒りをやりすごしていると、営業部との打ち合わせに出かけていた日高が戻ってきた。 「あらあら、えぐっちゃんお疲れのようで」 「んー。柳下さん、手強くて」 「……タイトルの件、まだ停滞中なんだ」 「うん……」 「時間、ないよ。広告の方はもうタイトル確定で動いてるからさ」 「うん……」 フリーペーパーの基本構造である「制作費は広告料でまかなう」という部分をクリアするために、ウチの看板雑誌のタイトルを流用することは、広告営業サイドとして重要な要素になっている。 「あの雑誌」のフリー版だから、という文句が営業には欠かせないのだ。 だから、編集部がどう言おうと、それを活用することは会社的に確定している。 当時の状況では、オリジナルの誌名では成立しない企画なのだ。 それだけに編集部はいきり立っている。 結局は「ゴリ押し」で決められてしまうことだと解っているから、俺が必死になって説得しているのもカタチだけのことだと思っているのだ。 いや、空しいことに、このままでは、まさに「カタチだけ」で終わってしまうだろう。 「ね、今日はこの辺で仕事切り上げて呑みに行かない?」 固まったままの俺に同情したのか、日高には珍しく気を回してくれているようだ。 「ああ……そうだな」 ちら、と時計に目をやると、午後6時を回ったところだ。 「ちょっと早いけど……呑むか」 「そうしよっ! いろいろ聞きたいこともあるし」 日高は、かつて俺たちが「作戦本部」と呼んだお好み焼き屋を指定した。 それだけで、彼女の気持ちが伝わってくる。 日高とはちゃんと話をしなければ、と常々思っていたので、それも好都合だろう。 なにしろ、企画段階からの戦友であり、これからも机を並べて「現場」で共闘していく大事な仲間である。 妙なわだかまりを解消できるのならば、それに越したことはない。 とはいえ、それが言うほど簡単ではないということは、日高の表情を見れば一目瞭然だった。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.54 ) 日時: 2007/08/27 00:34名前: バラバラ やはり一筋縄ではいかないようで。 最初の段階で躓いてしまいましたね。 考えているところと実際にやろうとしているところの矛盾みたいなものがあからさまになってしまったというところでしょうか。 さて日高さんとは元のようなわだかまりのない関係になるのでしょうか? Re: むかしのはなし。#3 ( No.55 ) 日時: 2007/08/27 01:32名前: KEVIN なんかすごくリアルですね・・・・。 お仕事どうなるのか、すごく気になります。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.56 ) 日時: 2007/08/27 02:05名前: ドイツ人 KEVINさん、同感です。 お仕事の方が、気になります。 このさい、「モエハドウナッタノカ?」という疑問は置いといて、 お仕事の方に注目させて頂きましょう。 (雑誌のタイトルって、そんなに揉めるモノなのですね?) Re: むかしのはなし。#3 ( No.57 ) 日時: 2007/09/02 22:04名前: 名無しのゴンベエ 続きまだかな〜・・・ Re: むかしのはなし。#3 ( No.58 ) 日時: 2007/09/03 12:57名前: 名無しのゴンベエ こっちの更新もよろしく〜!! Re: むかしのはなし。#3 ( No.59 ) 日時: 2007/09/16 11:10名前: 名無しのゴンベエ 続き、切望しています!! Re: むかしのはなし。#3 ( No.60 ) 日時: 2007/09/26 17:55名前: 名無しのゴンベエ 期待age Re: むかしのはなし。#3 ( No.61 ) 日時: 2007/10/05 22:20名前: 名無しのゴンベエ 忙しいのかな〜〜?? Re: むかしのはなし。#3 ( No.62 ) 日時: 2007/10/06 00:41名前: 名無しのゴンベエ 再開は無理だろ Re: むかしのはなし。#3 ( No.63 ) 日時: 2007/10/06 03:41名前: E_jan すみません。 仕事かわってからとてつもなく忙しくて……。 待っていてくださる方がいてくださるのは、本当にありがたいです。 間が空いてしまうとは思いますが、なんとか細々と書き続けていきたいです。 その46 日高は、驚くほど酒が強い。 それは数多くの逸話で知ってはいたが、俺はまだ、全開で呑む日高をみたことがなかった。 だが、まさに今、その逸話たちが少しも誇張されたものではなかったということを、実感させられているところだった。 彼女にとってはビールなど水以下の存在なのではないか、そう思わせる飲みっぷりで、あっという間に3杯目のジョッキを空けた。 酒の肴はもちろん、俺と瞳ちゃんのことだ。 目先には「雑誌創刊」という大きな難題がぶら下がっているのだから、本来ならそちらについて意見を交わしながらの酒になるべきなのだろうが、日高は執拗なまでに瞳ちゃんにこだわっていた。 俺はせっせとお好み焼きを焼く係で、まだ最初のチューハイを飲み干せないまま、ここまでの経緯をかいつまんで説明した。 それまで黙って聞き役に徹していた日高が動いたのは、4杯目のジョッキを空けたあとだった。 「そろそろ、本格的に行きますか」 そういって、日高は冷酒2合をオーダーする。 「あたしね、瞳ちゃん、すっごく好きだったの。美人で仕事ができて、頭がよくて、威厳があって、それでいて優しくて。とっても尊敬してたんだ」 ため息と共にそういって、ぐびりと猪口を空けた。 あわてて冷酒を注ごうとする俺を制し、酒は手酌がいい、と若い女性らしくないことを言う。 「なのに、えぐっちゃん辞めさそうと画策したりだとか、常務の愛人だとか、なーんか、すっかりイメージ壊されちゃったんだよねー」 「俺も驚いたよ。鬼の形相で怒り狂ってる姿見たときは、マジ、びびった」 「そのうえ、なんだ、その、レズだとか奴隷契約だとか……? 狂ってるとしか思えない。瞳ちゃんも、えぐっちゃんも」 「……まあ、売り言葉に買い言葉、みたいなもんだったんだけどね」 「それが、なんだかんだでそのまま付き合うことになった、と。話を聞くと、なんか瞳ちゃんに言い寄られて、そのまま押し切られちゃった、っていう印象じゃん」 「印象……というか、ズバリそのとおりな気がする」 「そこんとこがわかんないのよ。えぐっちゃん、どう考えても瞳ちゃんのこと嫌いだったじゃない。嫌いな女でも股開けばチンポ勃つのが男だって言うのはわかるし、勢いでヤっちゃうこともあるかもしんないけどさ」 なんとも直線的かつ見事な表現だ。……男というものをよくわかってらっしゃる。 飲みっぷりといい、無遠慮な表現といい、日高は不思議な年輪を感じさせる女だ。 「でも、それっきり彼氏彼女です、っていうのは解せないね……そんなに瞳ちゃんの身体が良かったの?」 ぶっ、と、思わずチューハイを吹き出す。 「い、いや、そういうわけじゃないんだけど……」 「じゃ、抱いて情が移ったの?」 「……それともちょっと違う」 「ふーん……」 そういったきり、日高は溜まり。なんともいえない沈黙が漂ってしまった。 その間も、日高は手酌でカパカパと冷酒を空けていく。 「俺の心で起きた変化はわかりやすいと思うぞ」 瞳ちゃんを抱いたあと、情が移る暇もなく、ぶったおれて入院した。 勘違いとはいえ、死をも覚悟したその場で、支えてくれたのが瞳ちゃんだったのだ。 そして、退院までの間、2日と空けずに付き添ってくれた。 「一番心細いときに、ずっと側にいてくれた女性に心が動いたとしても、なにも不思議じゃないと思う」 それも、共犯意識を持った相手で、すでに肉体関係もあるのだ。 心が傾かない方がどうかしているようにすら思えた。 「それに一瞬で情が移ったんじゃなくて、入院の長い期間を掛けて徐々に惚れていったんだ」 「でもさあ、それって本当に愛?」 徳利を逆さにして、残り少ない酒で猪口を満たしながら、日高はぼやいた。 「思うに、えぐっちゃんと瞳ちゃんはふたりで傷をなめ合って、都合のいいところだけ仲間意識で逃避行してるんじゃないの?」 日高はくいっと猪口を空けた。これでもう合計4合だ。 冷酒とウーロンハイのおかわりをオーダーしながら、俺は日高の台詞に得も言われぬ違和感を覚えていた。 「なあ、日高……それは駄目なことか?」 「ん?」 「傷をなめ合うのが、どうしていけないんだ?」 俺には傷をなめ合うことと愛しあうことに差があるようには思えなかった。 誰にでも傷口をさらして、それを舐めてくださいなんて、言えない。 同時に、誰の傷でもなめられるわけではない。 「もし、傷をなめ合うことができるような相手に出会え、そして、お互いが傷口をさらけ出せたのだとしたら、それはものすごいことなんじゃないかと思うんだけど」 その関係は愛しあうことと、とどこが違うのだろう? 「それに、少なくとも俺は逃避しているつもりはない」 ただし、ひとりで現実に立ち向かうだけの強さがなかったのは事実だ。 だから、俺は瞳ちゃんに依存しつつ、一生懸命前を向こうとしているのだ。 逃避するのではなく、戦うために、誰かに依存することは、そんなに悪いことなのだろうか? 依存だって愛の一部のように、俺には思えてならない。 誰もがやっている、ふつうのことなんだと思う。 「……まあ、だいたいわかった。納得はできないけど」 なんとなく、脱力した感じで、日高が呟く。 「わかってくれたか」 「うん。おふたりとも、想像以上に鬼畜で馬鹿で……純なんだなぁ、みたいな」 「……お恥ずかしい限りで」 俺は、ぐいっとジョッキを空け、もうひとつ猪口を頼むと、日高に習い、手酌で冷酒を注いだ。 「ところでさ、えぐっちゃん」 「ん?」 「もし、今私がえぐっちゃんのこと、誘惑したらどうする?」 そういった日高の顔は、真顔だった。 「お前さ、彼氏いるんだろ?」 「もう、いない。……っていったら?」 そういって、日高は片膝を立てて座り直す。 タイトなスカートがめくれあがり、その奥の白い布がはっきりと見える。 「……襲いかかるには酒が足らないね」 俺は目線を逸らして、猪口を空ける。 「じゃあ、酔っぱらったアリなの?」 空いたばかりの猪口に、日高が冷酒をつぎ足した。 「……そこまで馬鹿だと思うか?」 「馬鹿だったらいいな、とか思った」 「本気か?」 「どう思う?」 にやっと笑う日高。八重歯が口元に妖艶さを与えている。 なんともいえない沈黙が流れていた。 俺は背けた視界の隅で、日高の笑みと、さらけ出されたパンティを捉え、勃起していた。 いっそのこと、本当に酒が自制心をブチ壊してくれればいいのに。 そんな思いとともに浮かび上がったのは、恵利瀬の悲しそうな顔だった。 恵利瀬の顔は、表情をそのままに、瞳ちゃんの顔に変わっていた。 「やめとくよ。同僚を片っ端から食い散らかしてたんじゃ、本当に居場所がなくなっちゃうし」 それが、大きなため息と共に、俺の出した結論だった。 「ふーん」 と、意地悪く笑う日高。 「襲いかかってたら、絶交するところだったよ」 そういった日高の顔には、一抹の寂しさのようなものが浮かんでいた……ように思えたのは、俺の奢りだろうか。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.64 ) 日時: 2007/10/06 05:02名前: プリン お久しぶりですね。 蘇ってきましたよ、素敵な物語の世界が・・・。 すごく嬉しいです。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.65 ) 日時: 2007/10/06 06:21名前: ドイツ人 日高の絡み方が、ちょっとおかしいと思ったんだよなぁ・・・・ やっぱ、そうか。ちょっと嫉妬してたのかな。 日高のは「白い」布だったんだな。 白っていうのは、けっこうキツイね。 で、真ん中にシミが出来てたら、もう気が狂ってるね。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.66 ) 日時: 2007/10/06 16:26名前: 名無しのA お久し振りです。 瞳ちゃんも凄いですが 日高さんも負けてないですね。 女の奥の深さを思い知らされます。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.67 ) 日時: 2007/10/06 19:01名前: バラバラ お帰りなさいませ♪ 日高さんの心情が表れてきたかな? 少なくとも江口さんにも何かの感情を持っている? Re: むかしのはなし。#3 ( No.68 ) 日時: 2007/11/01 23:49名前: 名無しのゴンベエ 続き楽しみにしてます Re: むかしのはなし。#3 ( No.69 ) 日時: 2007/11/05 18:21名前: 名無しのゴンベエ 長らく更新されていないのですから今後の更新は期待できないだろう。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.70 ) 日時: 2007/11/30 07:38名前: 名無しのゴンベエ それでも、俺は待ってる Re: むかしのはなし。#3 ( No.71 ) 日時: 2007/12/02 00:02名前: E_jan 2ヵ月ぶりぐらいのご無沙汰です。 待っていてくださった方、本当にありがとうございます。 細々とですが、続けていこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。 その47 看板雑誌の編集長、柳下さんとの打ち合わせは毎日のように行っているものの、彼を納得させるような提案ができず、毎日夜遅くまでそのための資料や企画の練り込みに精を出す。 また、配布の方法論を検討するために営業部や流通を担当している関連会社とのミーティングも連日連夜の定番となっている。 激務を極める、というのはこういう状態のことを言うのだろう。 とにかく暇なく動き回り、交渉とデータ収集に明け暮れる日々が続いているのだ。 しかし、上層部からは進捗の遅さをなじられ、編集部からは目の敵にされ、営業部からは無能扱いされる。……俺の精神状態はもはやボロボロだった。 「そろそろ休まないと、また入院する羽目になるぞ?」 デスクに突っ伏していると、見かねたように田上さんが声を掛けてくれた。 「……休んでるヒマないすよ」 「それもわかるが、もう3日も会社泊まり込みだろ。いいから今日は帰れ。日高ももう帰ったぞ」 「……でも」 「でもじゃねえよ。帰れ。命令だ」 田上さんに追い立てられるように、会社を出たのは終電間際だった。 寄り道して酒でも、と思う元気もなくふらふらと自分のアパートにたどり着くと、部屋に明かりがついていた。 「お久しぶりね」 10日ぶりぐらいで会った瞳ちゃんは、そんな言葉で出迎えてくれた。 「やつれちゃって。でも、ちょっと精悍になった感じ。男はそれぐらいの方が格好いいわよ?」 ……人の苦労も知らずに勝手なことを言う。 「格好悪いって。もうグダグダっす、俺」 「みたいね。お疲れ様」 そういって、ふわりと俺を抱きしめた。 「……今日ね、田上くんから連絡があってさ。いろいろ聞いたわよ。あなたの戦いっぷり」 「そう……」 それで来てくれたのか。 いろいろ複雑な思いが脳裏を過ぎったが、うまく思考が回らない。 俺は考えるのを辞めて、体重を瞳ちゃんに預ける。 ふうっと、全身の力が抜けていくのを感じていた。 「人に寄りかかるのって、楽でいいでしょ?」 俺が思っていたことを、瞳ちゃんはそのまま言った。 「……うん」 さらっと肯定するのはちょっとシャクだったが、そこで言い争うほどの体力は残っていなかった。 そのまま、瞳ちゃんは俺を抱きかかえるようにして、ベッドまで連れて行ってくれた。 俺はベッドへと身を投げ出す。というか、仰向けに倒れた、といった方が正確かもしれない。 瞳ちゃんは妖しく笑うと、俺に覆い被さるようにして、優しいキスをしてくれた。 「江口はさ、真っ向から勝負挑むタイプで、それはそれで格好いいんだけど、ビジネスマンとしてはそれだけじゃ失格よね」 「かもなあ……」 「いろいろ絡め手でいかないとね」 瞳ちゃんは、俺のネクタイを緩め、襟元の薄汚れたワイシャツのボタンをひとつひとつ外していく。そして、首元に軽くキスをした。きっと汗くさいだろう。 そのままはだけた胸元に唇を這わせ、乳首を軽く噛む。 「……っ!」 首だけもたげて瞳ちゃんを見る。……それは実に扇情的な姿だった。 俺の上で四つんばいになっている瞳ちゃん。ハーフアップにまとめた髪はやや乱れ、大きく胸元の開いたシャツからは、まろやかな乳房の上部が覗いている。黒のタイトスカートは下着が見えそうなほどに捲れ上がっている。 疲れ果てたはずの身体に、力がみなぎってくるのが解る。特に下半身に、だ。 「先輩として、ちょっとだけヒントをあげる」 妖しい笑顔を見せながら、かちゃかちゃという金属音を響かせて、瞳ちゃんは俺のベルトを外す。 疲労と興奮と、そして話への興味が入り交じり、俺の目は冴えてしまった。 帰ったら思いっきり寝よう、なんて思っていたのにな、と、ジッパーを下げる音を聞きながら考える。 細い指に掴み出されたモノが、みるみるうちに硬くなっていく。 小刻みに上下する瞳ちゃんの、白い手。 「仲間、増やしなさいよ」 そういって、瞳ちゃんは先端を舌先でつついた。 3日も着替えもせず、風呂にも入っていない。だというのに瞳ちゃんは躊躇なくそれに口に含んでいく。 「周りはみんな敵、とか思ってるでしょ?」 いったん口を離すと、そういってから裏筋をゆっくりと舐めあげる。 「くっ……」 すさまじい快感が背筋を突き上げる。 「柳下さんって、あれで敵の多いのよ。わかるでしょ、スマートそうにみえるけど頑固で、融通きかない人なの」 指先でゆっくりと俺のモノをさすりながら、繊細に舌を這わせる。 「敵の敵は……味方かもよ?」 そういってから、俺を深く銜え込んだ。 「うあ……」 喉元までのディープ・スロートが生み出す快感に、俺は耐えることができず、すぐにたまりに溜まっていた欲望を吐き出してしまった。 それを喉の奥で受け止める瞳ちゃん。 しかし射精の量が思っていた以上に多かったらしく、最後には口を離して、げほげほとむせかえってしまった。 「もう……すっごい濃いじゃない。溜めすぎは身体に毒だよ」 「は、はぁ……」 快感に脳みそが痺れ、間抜けな返事を返すのがやっとだった。 俺ので汚れた口元をぐいっと手の甲でぬぐうと、にやりと笑う。 「今度は私の番」 そういって、ブラウスのボタンを外し始めた。 「いや、ちょっとまってよ。俺、クタクタで。明日も早いんで……」 「あら、明日はお休みだって、田上さんが言ってたわよ」 「え?」 「業務命令、きっちり休め。ってさ」 「えええ?」 「そういうわけだから。さあ」 微笑みながら、だらしなく力を失ったモノに手を伸ばす瞳ちゃん。 「だ・い・て♪」 死ぬかもしれない。そう思った。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.72 ) 日時: 2007/12/02 01:22名前: バラバラ お久しぶりですねぇ。 ↑の内容じゃないですけど、お仕事で疲れていませんか? 続けていただけるのは当然うれしいことですが、決してご無理はなさらぬように。 しかし仕事で帰ってから一戦交えるなんて確かに死にそうですよね。(笑) 相変わらず描写の細かさには興奮させられますね☆ Re: むかしのはなし。#3 ( No.73 ) 日時: 2007/12/02 06:13名前: ドイツ人 E_janさん、ご無沙汰です! 更新お疲れ様です。 まだ、この萌えちゃん覚えてくれてたんだなぁ、って少し感激しています。 これからも、マイペースで更新、よろしくお願いしまっす。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.74 ) 日時: 2007/12/02 12:19名前: 名無しのゴンベエ キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!! 最高です! Re: むかしのはなし。#3 ( No.75 ) 日時: 2007/12/02 21:38名前: プリン お久しぶりですね。 小生は相変わらずの日常です。 休日出勤で、業務用システムのグレードアップ工事の立ち会いでした。 帰宅後、少し前まで読み返しました。おかげで話がしっかり繋がりましたです。 これからもよろしくです。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.76 ) 日時: 2007/12/03 00:13名前: 七無し キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!! お待ちしていました!!! Re: むかしのはなし。#3 ( No.77 ) 日時: 2007/12/03 11:12名前: 名無しのゴンベエ 2ヶ月ぶりに・・・ キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!! ゆっくりで構いませんので、今後もヨロシクです♪ Re: むかしのはなし。#3 ( No.78 ) 日時: 2008/02/12 10:48名前: 名無しのゴンベエ これって、ホントに死んじゃったの? Re: むかしのはなし。#3 ( No.79 ) 日時: 2008/03/02 09:46名前: 期待age 気長に待ちましょう Re: むかしのはなし。#3 ( No.80 ) 日時: 2008/03/15 04:56名前: ドイツ人 期待してるので、ageずにレスしときます・・・・。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.81 ) 日時: 2008/03/22 22:42名前: E_jan スレが上の方にあるのに驚きました。 みなさん、本当にありがとうございます。 その48 「たしかにな。柳下くんが育てた雑誌ではあるが、会社の利益のためにその誌名を使うことが悪いとは思えないね」 朝イチで訪れた第一編集部で、編集長の岬敬一郎を捕まえてこれまでの経緯を説明すると、岬さんは腕組みをしながら頷いてくれた。 「柳下くんは、最近独自で突っ走りすぎているからね。会社に歩を合わせて貰うにはいい機会かもしれないね」 そういって岬さんは席を立った。 「その件、今日の編集長会議で議題に挙げるよ。説得は任せておいてくれ」 あまりにもすんなりとしたコトの運びに脱力感すら覚えていた。 まさかこれほど簡単に「現場」の人間の援護を得られるとは思ってもいなかった。 「自分の企画」の話をするのではなく、「柳下さんの態度」の話をする、というだけで、「現場」の対応がこれほどまでに変わるとは。 「柳下さんはあれで敵が多い人だから……かあ……」 瞳ちゃんの忠告の的確さには舌を巻く。 たしかに岬さん的には俺の企画が上手くいけば、口添え(それも社命に沿った正統な口添えだ)をした自分の評価が上がるし、失敗だったとしても、あまり仲の良くない(であろう)柳下さんのセクションに打撃があるだけで、自分自身にはほとんど不利益はない。 いや、むしろこの企画によって柳下さんの雑誌に悪影響が出ることを望んでいるのかもしれない。 それほどまでに柳下さんの編集部は販売部数の拡大を背景に、鼻持ちならないデカい態度で「現場」に君臨しているのだ。 あれよあれよという間に、柳下さん以外の編集長クラスが結託し、翌日には社長まで顔を並べる臨時の会議が開かれることになった。 お偉方の揃う中、俺と田上さんが呼ばれ、事情説明を求められた。 萎縮しまくる俺をかばうように、田上さんが口を開く。 「私たちは、強引に事を進めたくなかったんです」 進捗の遅れと、柳下さんの編集部との確執について、田上さんはそんな風に話し始めた。 「そりゃ柳下さんに『社命ですから』と誌名の流用を強要すれば話が早いのはわかっていました。しかし、有望な新規事業の立ち上げには、そんなやり方は似合わない。社内一致のコンセンサスを持って、この事業に乗り出したかったんです」 なにしろ御前会議である。そう言われてしまうと、柳下さんも無碍な対応はできない。 「もちろん、柳下くんも協力してくれるよね?」という、安倍川常務のトドメのひと言に、柳下さんは頷くしかなかった。 社内でのパワーバランスやら、管理職クラスの思惑やら、ビジネスというのはホントに一筋縄ではいかないモノだと、いまさらながらに実感していた。 田上さんの尽力によって、肝となる広告営業の方面はクリアになっていたし、流通の形成は日高が力量を見せてくれていた。 あとは多嶋田さんが雑誌そのものを高品位で編集してくれればいい。 「なんとかね。上手くいきそうだよ」 珍しく混んでいる、いつものバーのカウンターの隅で、瞳ちゃんに報告する。 動き出してしまえば、あとは「現場」が主役である。俺も田上さんも日高も、これまでの会社連泊が嘘のように、少ない残業で帰れるようになっていた。 「そうね。禍根は残るでしょうけど、最小限に抑えられたってところね」 「うん。俺たちに対してよりも『現場』同士の軋轢の方が気になるけどね」 「しかたないわ。今までも表に出てなかっただけで、編集部同士の軋轢はけっこう大変なもんだったんだから。膿を出し切るにはいいキッカケだったんじゃない?」 そういって、瞳ちゃんはグラスを空けた。 「……私も仕事はじめようかな」 「ん?」 「なんか、江口見てたら、ちょっと羨ましくなってきたの。キャバ嬢ってのもけっこう大変な仕事でやり甲斐あるけど、やっぱり表舞台で踊りたいわ」 寂しそうな口調だった。 「瞳ちゃんなら、この不況でも就職先ぐらいすぐ見つかるだろ?」 「どうだろ? けっこう狭い業界だし、悪い噂はすぐ広まると思うし、ね」 たしかにその通りだった。 出版業界というのは、ライターや印刷会社など、共通のクライアントを使っていることや、同業種内での転職も多いことから、意外に横の情報連携は早いし、深い。 瞳ちゃんはその美貌からも業界内ではちょっとした有名人だっただけに、その悪女ぶりが滑稽に誇張されて、広まっている。その悪女の彼氏の座に納まっている俺に対しても、良くない噂があると、間接的に聞いている。 「まあ、別業種でもいいんだけど」 そういいながら煙草を銜えた横顔には、この業界への未練がにじみ出いているように見えた。 「あんたさ、ウチで働いてみない?」 ふいに掛けられた声に振り向くと、そこには恰幅のいいオバサン……結城さんがいた。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.82 ) 日時: 2008/03/23 00:15名前: バラバラ 3ヶ月ぶりの復帰ですね、お待ちしていました。 久々の話は仕事のこと。 相変わらず描写のリアリティは凄いですねぇ。 業界の話も中々興味深いです。 時間的に余裕がなさそうですが、ご自分のペースで書いてくださいね。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.83 ) 日時: 2008/03/23 01:16名前: 名無しのゴンベエ 良かったです。話もE_Janさんが続投してくれることも。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.84 ) 日時: 2008/03/23 18:11名前: プリン 久々に懐かしい思いで読ませていただきました。 そして、良いですねと書いてみたくなりました。 ほんと良いですね。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.85 ) 日時: 2008/03/24 02:49名前: E_jan コメント、ありがとうございます。 書けるときに、頑張って書きます。 その49 「まあ、たしかに唐突だし、無礼なカンジではあったけど、そんな怒るような会話じゃなかったと思うんだけど?」 「プライドの問題よ」 「プライド、ねえ……」 家に帰ってからも、瞳ちゃんの機嫌は悪かった。買い置きのワインをすでにボトル1本空けている。 「あの人、私がキャバ嬢だってことも聞いてたんでしょ、きっと」 「……そこですか」 なるほど。仕事のデキる女同士の衝突には、俺なんかが想像もできない機微があるようだ。 「キャバ嬢をヘッドハンティングだなんて、馬鹿馬鹿しいにもほどがあるわ」 「いや、それはちょっと被害妄想過ぎる気がするんですけど」 「……プライドの問題なのっっ!」 そういって、グラスに残っていたワインを飲み干した。 「次の開けて」 「はいはい」 「最後、あの人ふみがどうのって言ってたけど、アレ、あのふみちゃんって娘のことよね?」 「うん……」 やっぱりそこ来ましたか。聞いてなければいいのに、と思ってはいたが、そんなに瞳ちゃんは甘くない。 「ふみちゃんと結城って人の関係は?」 「……おばさん、らしいですよ」 自然と口調が硬くなる。 「……ますます気に入らないわ」 コルクを抜き終わるのと同時にボトルを奪い取り、なみなみとグラスに注いでいく。 久しぶりにブラック瞳ちゃんの顔つきだ。 椅子に投げ出してあった上着を探り、貰った名刺を取り出す瞳ちゃん。 「明日、訪ねてみるわ」 「え?」 「……なんか逃げたままってイヤじゃない」 「いや、その逃げるとか、そういうんじゃないと思うんですが」 「そーゆー風に見えるシチュエーションだったでしょ」 語気が荒い。 勝手にプライドを持ち出して、どんどん被害妄想を深めていく。 瞳ちゃんらしいといえば、瞳ちゃんらしい。 かつての、俺との衝突も、きっとこんな感じで一方的に盛り上がっていった結果だったのだろう。 「おい、江口」 「はい」 すでに目が据わっている。 「抱いて」 そういって、覆い被さってくる。 「ちょ、ちょっと瞳ちゃん!」 「なに? 専務に捨てられてキャバ嬢やってる女なんて抱けないとでも?」 「誰もそんなこと言ってないでしょ」 「言ってるようなもんでしょ」 今度は泣き出した。やれやれ、である。 俺は瞳ちゃんの華奢な肩を掴むと、力任せにひっぱがして、椅子に押し戻す。 「なあ、瞳ちゃん」 「なによ」 「過去なんてどうでもいいだろ。今のアンタはなんだ?」 「……キャバ嬢」 「違う」 「でも、」 喚こうとする瞳ちゃんの唇を、塞ぐようにキスをする。 「俺の、彼女だろ」 「……」 「しっかりしてくれよ。アンタのプライドをつまらないものだって言う気はないけど、そこにだけ固執して、感情的になるのはみっともないよ、正直」 「う……」 「俺は、変わったと思う。瞳ちゃんが変えてくれた部分は大きいと思ってる。だから、俺も瞳ちゃんを変えたいと思ってる」 瞳ちゃんの眼から、狂気の色が消えたのがわかる。ふと、その眼を伏せると、ぷいっと横をむいた。 そして、ぼそっと言った。 「ありがと」 俺は立ち上がると、瞳ちゃんの手を引いた。 「来いよ。抱いてやる」 自分でも信じられないぐらい強気な発言だった。 「……江口のくせに、生意気な」 そういいながらも、瞳ちゃんは素直に身体を預けてきた。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.86 ) 日時: 2008/03/24 08:50名前: 名無しのゴンベエ 更新 キテタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!! ゆっくりで構いませんので・・・ 続きを期待してます♪ Re: むかしのはなし。#3 ( No.87 ) 日時: 2008/03/24 18:22名前: バラバラ 早速の更新ご苦労様です♪ 前回と違って江口さんの逆襲ですね。(笑) この後瞳ちゃんは結城さんの元へと向かうのでしょうか? Re: むかしのはなし。#3 ( No.88 ) 日時: 2008/03/25 04:13名前: 名無しのゴンベエ 「素直に身体を預けてきた」瞳ちゃん、萌えます!! いままで、ツッぱってきた瞳ちゃんだけに、よけい。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.89 ) 日時: 2008/03/27 02:44名前: E_jan その50 瞳ちゃんは、結城さんに会いにいくと言う。 ただし、気持ちは前向きだ。 いろいろと結城さん会社のことを調べた結果、そこで働いてみたいと真剣に思ったのだそうだ。 バブル崩壊後、逆風吹き荒れる広告業界で、しっかりと成長を見せている魅力的な会社だという。 「のし上がって、あのババアの上に立つの。私を誘ったことを後悔させてやるわ」 強気でブラックな発言は相変わらずだが、そう語る眼には、真摯な光が見て取れる。 たぶん、本気でこの再就職に賭けているのだろう。 応援しない理由は、なかった。 なにもかもが上手くいく。 ようやく、そんな手応えを掴んだ矢先のことだった。 だいぶ和やかになった編集部だが、多嶋田さんの偏屈ぶりは相変わらずで、その朝も誌面のことで激しく口論していた。 たしかに仕事はできるが、独断専行の多い多嶋田さんのやり方に噛みついていたとき、真っ青な顔をした田上さんが編集部に飛び込んできた。 手には経済新聞を持っている。 「まずいぞ」 そういって差し出した紙面には、金融破綻の記事が踊っていた。 ウチの会社と取引のある某銀行の名も、その記事にあった。 記事をのぞき込んだ多嶋田さんも真っ青になって、絶句している。 俺には、なにが「まずい」のか理解できてはいなかった。 「これ、ヤバいんですか?」 「ああ。かなりヤバい。T銀行は今度のプロジェクトに、裏で一枚噛んでるんだ」 「……そうなんですか」 と、いいつつも、あまり実感は沸かなかった。 たしかに今回のプロジェクトは大掛かりなもので、いろいろと大手資本が絡んでいるらしいことは知っていた。 しかし、いかんせん俺は兵隊でしかなく、具体的な金の動きなど、末端のもの以外は把握しているはずもない。 「この記事どおりだと、プロジェクトは消し飛ぶぞ」 絶句するしかなかった。 田上さんがあわてるほどのことだ。よくはわからないが、かなり深刻な状況であることは、間違いないのだろう。腹の底の方が、妙にきゅーっとする。 「午後に緊急の役員会があるそうだ。覚悟はしておいた方がいいかもしれない」 覚悟? なんの? わからない。 わからないはずなのに、どうにも目眩がする。 どうなっちゃうんだ、俺。 いや、俺個人がどうなる、なんてことはないだろう。問題はプロジェクトなのだ。 わかってはいるが、わからない。 「とにかく、情報を集めてみる」 そういって、部屋を飛び出していく田上さんの後ろ姿をぼうっと見つめていた。 多嶋田さんは、チラリと俺を見ると、 「仲良く喧嘩してる場合じゃねえなあ。俺もツテ当たって情報仕入れてくる」 と言って、編集部を後にした。 残された俺には、立ちつくす以外にできることはなかった。 翌朝にはプロジェクトの無期停止がアナウンスされた。 俺たちのプロジェクトだけではなく、動きつつあった社内の新規企画のほとんどが、作業停止を言い渡されていた。 難しいことは、わからなかった。 社内は騒然としており、安倍川専務の失脚や、長谷川社長の責任問題がまことしやかに語られているのが、耳に飛び込んでくる。 どこまでが事実で、どこからが妄言なのかの区別を付けることは難しかった。 俺は、とりあえず元の部署へ戻るように、と、田上さんに言われた。 「そうきたか」 いつものバーのカウンターで、バーボンを呷りながら、事の成り行きを瞳ちゃんに説明すると、彼女はひと言、そう言った。 「江口は苦労する星の元に生まれついてんだよ、絶対」 「そんな星、いりませんよ」 「いや、あえて受け入れるべき。そんな星の巡りを。それは絶対にキミを強くする。うん」 いかにも瞳ちゃんらしくない物言いに、気遣いを感じる。 だが、その程度で癒される程度の徒労感ではなかった。 どっしりと、両肩にのしかかる重苦しいなにか。 自分のミスや力不足で招いた事態なら、死んでお詫びをしようがなにをしようが、とりあえずの納得感はあるし、気持ちを決められるかもしれない。 また、誰かの策謀や、悪意によるものであれば、反発や不屈の気持ちも生まれたのだろう。 しかし、今回の出来事は、俺にとっては天災に近い出来事だった。 あらがう術も、なにもない。ただ、事の成り行きを受け止めるしかないのだ。 「ありえない……」 その言葉を呟くのは、その日、何回、いや、何百回目だったろうか。 そして、もう何杯目かわからないバーボンを、呷る。 ぐるぐると、店と瞳ちゃんとが、回り始めていた。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.90 ) 日時: 2008/03/27 04:13名前: プリン そうか。丁度あの頃なのか。 大変な荒波が襲ってくるんだよね。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.91 ) 日時: 2008/03/27 23:58名前: バラバラ あちゃ〜っ、ついに夢の時代に終わりを告げるときがきたんですね。 これから世間はどん底に堕ちていくのかぁ…。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.92 ) 日時: 2008/03/29 02:30名前: E_jan その51 柔らかくて、暖かい。 なんともいえない優しいさに包まれている。 ……そんな風に感じながら、目覚めた。 ゆっくりと、目を開くと、そこには懐かしい顔があった。 ふみちゃん。ふみちゃんが、心配そうな顔で俺を見下ろしている。 視線が絡みあった。あいかわらずの、大きくて綺麗な瞳だった。 ああ、そうか。俺はふみちゃんの膝枕で寝てるんだね。 ……って。なんでだよ。 急速に覚醒していく意識。 「大丈夫ですか?」 優しく響く、ふみちゃんの声。 俺は、大袈裟に飛び退いた。 周囲を見回すと……いつものバー。『14』だ。 ふみちゃんの他に客はおらず、カウンターの向こうでマスターが静かにグラスを磨き上げていた。 ふと、その手を止めると、「おはようございます、江口さん」 と、抑揚のない声で言った。 たしか、瞳ちゃんと呑んでいたはずだ。 「マスター、お水……」 ぼけっとしている俺を見て、芙美ちゃんが水を頼んでくれた。 なんで、瞳ちゃんはいないのか? どうして、芙美ちゃんの膝枕で寝ているのか? さっぱりわからない。 「酔っぱらって、お連れさんと口論になってしまい、置いてかれたんですよ。覚えてませんか?」 そんな俺の表情を読んだのか、水の入ったグラスを差し出しながら、教えてくれた。 「その後もヤケ酒を続けて、ぶっ倒れる寸前に芙美さんがいらして……」 「わかった!」 そういって、水をひったくり、マスターを制止する。 実際はまったく覚えていないし、よくわかっていないのだが、その先の展開は、聞きたくなかった。聞けば、間違いなく惨めな気分になるだろう。 「ごめん、芙美ちゃん。迷惑掛けちゃって……」 「いえいえ、いいんです。それより、大丈夫ですか?」 そういって、小首を傾げる芙美ちゃん。 ちょっと髪が伸びた。化粧も格段に上手になっている。 初めてあったときに感じた、あの純朴さはそのままに、彼女は「少女」から、「女性」へと成長しているようだった。 思わず、視線を逸らす。 「も、もう大丈夫だから」 そういって、一気に水を呷ったが、焦っていたせいか、むせてしまった。 ゲホゲホいってる俺の背に、芙美ちゃんの手が添えられる。 「大丈夫じゃないじゃないですか!」 「あー、いや。もうホント、大丈夫だから」 いいながら、スツールを降り、トイレへと向かう。いたたまれなかったのだ。 トイレに入ると、便器に腰を下ろし、頭を抱えてしまう。 思い出せない。……瞳ちゃんとどんな風に喧嘩をして、芙美ちゃんに何を言って、どーゆー展開で膝枕に至ったというのだ? 想像するだけで、死にたくなる。 こんなことなら、さっきマスターにきっちりと事の次第を聞いておけば良かった。 何分ぐらい頭を抱えていたのだろう。 こんこん、と、ドアがノックされた。 「江口さん……」 芙美ちゃんの声だ。 「大丈夫ですか?」 「ん……大丈夫」 ドア越しに応える。 「あの、なんにもなかったですから。……私が来たとき、もう江口さんは半分寝てて。椅子から落ちそうだったんで、私が勝手に支えてただけで……」 ドア越しに、芙美ちゃんが語りかけてくる。 「私、もう帰りますね。……久しぶりに逢えて……嬉しかったです……」 芙美ちゃんの気配がドアから離れていくのがわかる。 一瞬の躊躇の後、俺はトイレを飛び出していた。 店を出ようとしている芙美ちゃんの後ろ姿へと駆け寄ると、彼女は驚いたように振り向いた。 「送ってくよ」 芙美ちゃんは一瞬、寂しそうな表情をして、それから笑顔で、はい、と応えた。 Re: むかしのはなし。#3 ( No.93 ) 日時: 2008/03/29 15:20名前: 名無しのゴンベエ 今度はふみちゃんと・・・ですか?w Re: むかしのはなし。#3 ( No.94 ) 日時: 2008/03/29 18:54名前: バラバラ ふみちゃん久々の登場ですね♪ まさか急展開に…? Re: むかしのはなし。#3 ( No.95 ) 日時: 2008/06/09 01:17名前: 名無しのゴンベエ 続きお願いします♪ Re: むかしのはなし。#3 ( No.96 ) 日時: 2008/06/15 06:48名前: 名無しのゴンベエ け Re: むかしのはなし。#3 ( No.97 ) 日時: 2008/08/31 14:35名前: 名無しのゴンベエ SEさんも戻ってきたことだし E_janさんもお願いします Re: むかしのはなし。#3 ( No.98 ) 日時: 2008/08/31 14:53名前: 名無しのゴンベエ あげるな!! SEさんも戻ってきたことだし E_janさんもお願いします Re: むかしのはなし。#3 ( No.99 ) 日時: 2008/08/31 15:14名前: 名無しのゴンベエ ↑ こいつみたいな馬鹿が板を荒廃させている!! Re: むかしのはなし。#3 ( No.100 ) 日時: 2008/08/31 15:01名前: 名無しのゴンベエ 100GET Page: [1] 出典:あ リンク:あ |
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