凪子〜空蝉 (オリジナルフィクション) 5680回

2018/10/17 15:20┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:あでゅー
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『西暦二千年ころ、俺は大学生で家庭教師のバイトをしていた。予習の時間も入れると、それほど時給はよくなかったが、教職を目指す者にとっては、やっておいて不利になることはないと、割り切って家庭教師を続けていた。
 そして、二年目。厄介なことが起こった。通常、同性が担当するのだが、ある女子生徒の親は、なぜか男性の家庭教師を望んだ。それで、俺に話が来たのだ。
 レポートによると、その子の家は平凡なサラリーマンの家庭で、そんな家庭に生まれた中二の女の子は、虚弱体質で引っ込み思案の生徒だった。俺は、面倒くさい子だと思って、正直逃げたかった。だが、これも教師になるためだと思って、引き受けた。
 駅から歩いて二十分の家に出向いた。チャイムをならすと、パートのような制服を着たおかあさんが玄関に現れた。
「はい?」
「すみません。K家庭教師センターの者ですけど」
「お待ちしたました。さ、どうぞ」
 俺は、顔合わせに来たのだが、おかあさんは仕事を抜けて来たようだ。
「凪子、なぎこー!」
 階段を下りて居間に現れたのは、身長百五十センチも満たないか細い子。俺が挨拶すると、おかあさんの陰に隠れてしまった。
「これ! 凪子!」
「いいんです、おかあさん。凪子さん。僕は、K家庭教師センターから来た、小野渉(あゆむ)です。どうぞ、よろしくね」
「凪子。どうだい?」
 凪子は、しばらくおかあさんの陰で俺を見ていたが、わずかにコクリとうなずいた。
「じゃ、先生。よろしくお願いしますね」
 そう言って、おかあさんは急いで玄関を出て行った。まさか、ふたりきりになるとは思ってなかった俺は、途方に暮れた。
「おかあさんて、忙しいんだね?」
「うん。この前パートをはじめて、張り切っているんだ」
 小学生のような会話に、学力の程度を心配した。
「えーっと、ここで勉強しようか?」
「うん」
 居間の低いテーブルの上で簡単なテストを解いてもらうと、凪子の学力は思ったほど低くなかった。ただ、数学が苦手なようで、四則計算の順番がわからなかった。それを、教えると順調に解いて行った。
「よし。よくできたね、凪子さん」
 頭は悪くない、人見知りが激しくて、子どもような会話しかできないかも知れない、そう俺は分析した。しかし、なぜ俺に対しては普通に話せるのかわからなかった。俺の心理学の知識は浅い物で、それ以上は考えられなかった。
 採点が終わって目線を上げると、食卓の上にコンビニで買ったようなケーキがふたつ。それと、インスタントコーヒーのビンと、カップもふたつ置かれてある。
「あれ? ケーキが置いてあるね? もしかして、あれは食べなさいってことだよね?」
「うん」
「それじゃ、いただかこうか」
 ケーキとコーヒーをテーブルに置いたのだが、凪子はそれをジーっと見るだけで、決して手を付けようとはしない。不思議に思い、
「どうしたの? 食べないの?」
 と語りかけると、凪子は信じられないことを言った。
「だって、子供が食べるとお腹が痛くなるんでしょ?」
 これには、驚いた。それに対して、俺は極力冷静に教えた。
「いいや、そんなことはないよ。大丈夫だよ」
 凪子は、驚いた顔で
「ほんと? ねえ、ほんと?」
 と言った。よほど、食べてみたかったのだろう、俺が本当だよと言うと、凪子はホークも使わずに手づかみで食べた。そして、自分の分を食べおえると、俺の分のケーキをジーと見ていた。俺が、これも食べていいよと言うと、まるで狩りをするオオカミのように襲い掛かった。
「美味しいかい?」
 俺の問いにただコクリとうなずく凪子。目がランランと輝いている。

 俺の中で結論は出た。これは、心理的な虐待ではないのかと。言葉で行動を縛って、満足に食べ物を与えない。だから、栄養失調になって身体が発育しなかったのだ。
 だが、最近は虐待は止めて、家庭教師に丸投げしたようだ。おそらく、パートをはじめて世界が広がったからだろう。
 俺は、母親の一種、洗脳と思われる虐待に、寒気を感じた。




 次の訪問日から、俺のリハビリとも思われる教育が始まった。おかあさんは、無関心のようで当然のようにいなかったので、できたことである。
 まず、むやみに人と話してはいけない言う決まり事を撤回した。これは、知識を遮断するもっともいけないことなのだ。そう俺が教えると、凪子は「ほんと?」と言ってなんども聞いた。やはり、俺の想像は正しかったのだ。
 凪子に気になっていた事を聞くと、おかあさんが俺の言う事は聞くように言ったそうだ。道理で、俺の言うことは素直に聞くと思った。
 それからは、やっていいことと、いけないこと。食べていい物と、食べてはいけない物。おおよそ、そんなことを教えた。それを、凪子は爆食するように吸収していった。
 考えてみれば恐ろしい物である。人を殺してはいけないと知らなかったのだから。だが、豚は食べていいと教えると、どうしてと聞かれた。返答に困ったが、それは人間が万物の頂点にいるからだよと言って、なんとか納得させたが、大丈夫だろうか? もしかして、この言葉を信じて傲慢になりはしないかと心配するが、ほかにいい説明が浮かんでこなかったので、仕方がない。
 そうして約半年で、凪子の身体も知識も、見違えるように成長した。身長は百七十センチに達し、胸もお尻もグラマーになって、手足はカモシカのようになってしまった。自然、女として意識する。
 そのことに気付いた凪子は、俺を誘惑し始めた。
「凪子。パンツ見えてるよ」
「どう? ムラムラする?」
 凪子はこう言って、上目づかいに俺を見つめ、ミニスカートのすそを持ち上げた。
「勘弁してよ」
「ゴムだって買って来たし」
 どこで買って来たのか、凪子の右手には、一ダースのゴムが。
 確かに、ときには人に隠れていけないことをする必要があると教えたが。俺は、中学生には早すぎるとしかった。だが、凪子の陰部を見せられて俺は落ちた。淫行と言う名の道へ。
 凪子は処女だった。だが、日頃行っていると言う自慰行為によって、陰部は赤く腫れあがり、いつでも受け入れ態勢はできていた。その膣をつらぬくと、凪子はハアーと息を吐いた。その方が、痛くないと教えたからだ。だが、やはり痛いのか、凪子は目に涙をためている。俺が、大丈夫かと問い掛けると、大丈夫だよって言って、無理して笑った。
 俺は、徐々に動き始めた。ゆっくりと、そして深く浅く、凪子の内臓を確かめるように。凪子の瞳、凪子の唇、凪子の首筋、凪子の鎖骨、凪子の胸、凪子の乳首、凪子の細い腰、凪子のおへそ、凪子の柔らかいお腹、凪子の恥骨、凪子の太もも、凪子の陰部、凪子の膣、凪子の子宮。そのひとつひとつを、俺は確かめた。
 凪子は、最後に俺の身体を逃さぬように、両足で凪子の奥底くへと、俺の陰茎を引き入れた。

「どうだった?」
 それは、女がもっとも気にすること。だが、凪子のようにそれを男に聞く女はまれだ。
「よかったよ。まるで、あそこ全体を強い力でしめ付けられるように」
「ほんと? 私のあそこはもしかして、名器じゃない?」
「言っておくけど、それは凪子の身体だから、俺のあそこははち切れんばかりに大きくなるんだ」
「それって、私がかわいいって?」
「凪子。もう一度」
「うん、いいよ。来て……」

 俺は、何度でも凪子を抱ける。たとえ、精子が空になっても、俺の陰茎は立ち続けるだろう。
 俺は、凪子が十八歳になったら、結婚しようと約束した。




 別れは、突然訪れた。凪子が中学三年になったとき、突然担当を外された。きっと、金持ちの男ができて、俺は用済みになったのだろう。大人しく違う生徒についた。

 俺は、あの日のことを思い出す。おびえておかあさんの陰に隠れていた凪子を。あの子を自由にしなければ、ずっと一緒にいられたかも知れない。そう思うと、やり切れない。
 それ以降、俺は教師をあきらめてサラリーマンとなって、誰とも付き合う事もできずに、ひとりで生きている』


「……と言う話を、宴会の席でハゲた先輩社員に聞いたんだ」
 そう言って、僕はためきを付いた。
「バカね。女はみんな魔性を持って生まれてくるのよ。それを、呼び起こしてしまったのよ。本当に、男ってほんとバカね」
 僕は、そう言い放つ瞳を見つめた。彼女も、いつか裏切るのかも知れない、そう思うと悲しかった。
「でも、大丈夫。あなたは捨てないわ。だって、あなたとのセックス、とても気持ちいいもの」

 僕は、その言葉にひどくガッカリするが、世の中の女は瞳と同じようなものだと思うと、無理して別れる気にはなれない。
 どうせ、人の一生なんて空蝉。せいぜい、楽しく生きて行こう、そう思い残り少なくなったバーボンのグラスをあおった。


(終わり)

出典:あ
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