学校から帰ったら 茹だるような暑さだというのに、窓を閉め切り、カーテンを閉じる。 ギシギシと軋む音を嫌ってベッドは使わず、わざわざ床に布団を敷く。 家の中には、誰もいないのに相変わらず臆病なことだと思う。 無言のままに背中を向けて服を脱ぎ、スカートを落としたら、中に身に付けているのは、男を誘惑するための下着。 これから女に戻りますと、言っているようなものだ。 そう言えば、家の中で着る普段着も、わりと洒落たものが多くなった。 納得はしていなくとも、やはり、視線を気にせずにはいられないといったところだろう。 いつも下着だけになったら、背中を向けて布団の上に座り込む。 きちんとひざを折り、まっすぐに伸ばした背中が、勝手にしなさいと、言っているようにも見える。 だから、勝手にさせてもらう。 後ろから細い肩を抱いて、白い背中に唇を寄せていくと、すぐにもため息にも似た声が漏れ出 す。 そのまま布団の上に倒していくと、脅えた目を向けられるが、その目はすぐに閉じて、そして、最後まで開かれることはない。 決して、拒んだりはしない。 顔を跨いで鼻先にかざすと、ちゃんと柔らかい唇を被せてもくれる。 乱暴に突き入れても、怒ったりしない。 そのまま身体の向きを変えて、股間に顔を埋めていっても、彼女が悲鳴を上げることはないし、口にしているものを離すこともない。 目の前にあるものをじっくりと眺めて、指で開いて奥まで覗いたりする。 すぐには、口をつけたりはしない。 ひどくグロテスクな眺めだが、どうしてもそこに心が惹かれてしまう。 ここが、自分が生まれてきた道かと思うと、不思議な感慨にも囚われる。 そして、手に入れてはならないものを、手に入れた喜びを実感する。 望んでも手に入らないもの。 決して手に入れてはならないもの。 それが、目の前にある。 ゆっくりと顔を近づけて、息が掛かるほどに唇を寄せる。 気配を感じて、僕のお尻を掴む手にもわずかに力が込められる。 胸一杯に匂いを吸い込んでから、おもむろに口付ける。 一度口を付けてしまえば、あとは狂ったように舌を這わせていくだけだ。 すぐに苦しげな声が聞こえてきて、僕のお尻を強く抱きしめてくる。 深くまで飲み込まれて、躍るように舌が舞う。 最初の頃は、何度もそれだけで逝ってしまった。 でも、ちゃんとこの穴を塞いで征服するまでは、決してやめたりしなかった。おかげで、だいぶ強くなった。 もう、口でしたくらいじゃ、簡単には逝かない。 存分に味を堪能してから、彼女を下にして中に入っていく。 僕たちの間に恋愛感情は存在しない。 だから、機械的な作業にも似ている。 彼女は足を開いているだけ。 僕は、目がけて押し込んでいくだけだ。 今でも、大事な人であることには違いない。 けれど、愛や恋などという感情は邪魔なだけだ。 向こうにしても、それは同じだから、僕にそういったものは求めないし、求めようともしない。 きっと、その方が救われるのだろう。 一方的に略奪されている。 そう思えばこそ、彼女は堪えられるのかもしれないし、甘受できるのかもしれない。 何度入っていっても、その温かさと柔らかさには胸を熱くさせるものがある。 肌とは違う体温は、いつも高めで僕を優しく包んでくれる。 すぐにでも出してしまいたくなるのを必死に堪える。 それでも彼女の膣はどんどん濡れていって、さらに気持ちよくしてしまうから、僕は途中で動きを止めざるを得ない。 小休止ではないけれど、胸を合わせて彼女を抱きしめていく。 キスをしようとすると、わずかに顔を背けようとするけれど、そんなことは許さない。 頭を抱え込んで、強引にキスをする。 舌を乱暴に潜らせていくと、荒い息を吐きながら、すぐに彼女は応えてくれる。 結局負けてしまうくせに、なかなか素直にならないのは、なぜなんだろうといつも思う。 途中からは、彼女の方が夢中だ。 そしてまた動き出せば、僕を抱きしめて、必死に舌を伸ばしながら、自ら腰を使い出しもする。 それまでは、歯を食いしばって我慢していたくせに、一度口を開いてしまえば、止め処なくはしたない声を上げたりするのだ。 そうやって、舌を絡ませあいながら、いつも最後は彼女の中で果てる。 いくよ、と教えてあげるのに、僕を抱きしめたまま離さないから、どうしたって彼女の中で逝くことになってしまう。 でも、彼女が僕の子供を身籠もることはないし、家族を崩壊させることもない。 彼女がピルを飲んでいることを僕は知っている。 妊娠を防ぐのならゴムを使えばいいだけの話だけど、今まで使ったことはない。 彼女も僕の体温を直に感じたいのだ。 そして、中に出してもらいたいのだ。 それを口にしたことはない。 でも、両親の寝室のベッドのヘッドボードにはコンドームが隠してあるはずなのに、それを一度も使ってくれと言ったことはないのだから、僕にはそうとしか思えない。 逝く寸前には、すごく大きく膨らむ。 ああっと悲鳴にも似た声を上げて、僕はすごい力で抱きしめられる。 ビクビクと脈打ちながら吐き出していくと、すごい・・、と消え入りそうな声で 彼女はつぶやく。 とても満足げな顔をして、今にも眠ってしまいそうな穏やかな表情で目を閉じている。 終わってしまえば、すぐにでも身体を離したいけれど、彼女はいつまでも僕を抱きしめていて、なかなか離してはくれない。 やがて、パタリと力尽きたように両手が落ちて、ようやく僕は解放される。 抜くと白いものがドロドロと溢れ出す。 彼女は、胸を大きく喘がせながら、目を閉じているだけですぐには起きようとしない。 自分の下着を探して、さっさと身支度を調えてしまうと、足を開いてだらしなく溢れさせているだけの彼女を残して、僕は静かに部屋を出る。 廊下の窓から差し込む強い西日が、僕の姿を照らしていた。 夜になって父が仕事から帰ってくる。 しばらくしたら、「ご飯よ。」と、下から声が掛けられる。 降りていくと、台所に立っている彼女は、夕方まで着ていた洒落た服とは違ったものに着換えている。 きっと下着も替えているのに違いない。 時々、夜中になると両親の寝室からは、彼女の苦しげな声が聞こえてくる。 まだまだ父は現役らしい。 そして父は、まだ僕には、それが何なのかわからないと思っているのかもしれない。 テーブルの上を見たら、おかずはナスの挟み揚げだった。 お味噌汁にもナスが入っている。 この世でナスが死ぬほど嫌いな僕。 最近、僕の嫌いなものばかりがテーブルの上に乗る。 「母さん、他におかずないの」 きっと、これは彼女のささやかな意地悪に違いない。 「ダメよ、好き嫌いしちゃ。嫌いなものでもちゃんと食べないと大きくならないわよ。」 台所から振り返り、満面の笑みを浮かべてそう言った彼女は、しっかりと母親の顔になっていた。 出典:a リンク:a |
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