優 (ジャンル未設定) 52061回

2007/01/27 15:01┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
  
今年の春。幼馴染の優と結婚することになった。

年は一つ違うけど、ずっと一緒でどっちかというと兄弟みたいな存在。

俺は優を妹のように思っていたし、あいつも多分俺を兄だと思っていたと思う。

(今もその兄弟感は変わってないけどな)


優と付き合いだしたのは俺が中学2年生の時。
お互い恋愛感情なんてまったく持っていなかったけど、
かといって他に好きな人とかがいたというわけでもない。
なんとなく「付き合っちゃおっか」みたいな流れだった。
それでも今日まで約10年間。
別れることなく続き、結婚にまでいたったのは奇跡だと本気で思った。

嫌いじゃないけどすきでもない。異性としても見ていない。
家族みたいな、そんな存在。大切ではあるけれど。
俺と優の関係はこんな感じだった。
でもお互いヤキモチは妬いていたようで、「やっぱり好きなのかな」と思った。
それでもやっぱり「違うな」と思った。何度それを繰り返したことか。
うまくいえないけど、恥ずかしい話はなれると不安になった。

初めて(?)離れたのは高校。
俺は就職希望だったから商業系へ、優は進学校を目指していた。
家は近所だわ、部屋は近いわであんまり離れた感はなかったけど、
でもやっぱりなんか微妙ななんともいえぬ感じだった。
最初半年は遊んだりもしてたけど、優が本格的に受験勉強を始めると
それも少なくなった。

優が志望高校に合格したとき、初めて恋人らしいことをした。
優の部屋に窓から乗り込み、プレゼント(安物)を渡す。
優は「ありがとう」といって、俺のプレゼントを受けとろうとするが俺は離さない。
「ん?」って感じで上を見てきた優にキスをした。
優は俺を思いっきり突き放した。
そんなこと予想もしていなかった俺は、思いっきりしりもち。
いてて・・といいながら立ち上がり、優をみるとないていた。
まさかなかれるとは思っていなかったからおろおろするばかり。
「ごめん」といって去ろうとすると
『まって!ごめん、、、別にイヤだったわけじゃない・・・のね
 ただビックリして・・恥ずかしくて・・・なんていうか・・・///』
俺は優がかわいく見えて抱きしめた。
「イヤじゃないなら・・・よかった。嫌われたかと思った」

それからキスは何度かしてるけど、その先はまだ行っていない。
俺のうちはいわゆるできちゃった婚で、親父たちが相当苦労した話を聞かされて
「経済的に養えるようになってからよ。じゃないと大切な人守れないじゃない?」
ハハが真剣に言ったのを覚えている。
やりたくなかったわけじゃない。(人並みに欲した)
もし赤ちゃんができたら、優に迷惑だし、大変だし。
優にするにはちょっと気がひけた。

翌年(俺高3 優高2)
俺と優が歩いていると、いきなり車が突っ込んできた。
2人とも飛ばされたが、俺は奇跡的にも軽症で(全治2ヶ月の骨折のみ)
優も俺よりは重いが、命にかかわるような状態ではなかった。
一応頭を打っていたので、異常がないか検査するために入院。
俺は何も異常ないと結果がでて、事故後初めて優の部屋へ。
ひょこっと覗いたら、優はテレビ見てた。
「おーい元気かぁ。俺頭悪いだけで異常なしだったwお前の結果もでたか?」
しばらく優はだんまりしていた。
「なんだなんだ。お前らしくない。」
やっと優の口が開く。
『あなた。。。誰?」
いまいち優のいっていることが分からなかった。顔がひきつる。
「誰って・・・お前。冗談きついだろ〜彼氏の顔を見忘れたか!」
『彼氏・・・?あなたが・・・?』
優の様子を見て、冗談で・嘘で言っているようには見えなかった。

優は記憶をなくしていた。

原因は頭を打ったことによるものではなく、ショックからきたという。
車にはねられたとき、俺は気を失っていたが優は意識があったらしく
薄目で俺を見ると血だらけだったそうだ。
俺と優が一緒にいたのは、優が「あそこよろ!」と言ったので向かっていたからで、
≪自分のせいで≫というのにショックを受け、記憶を失った。
俺が血だらけだったというのに疑問を受けたが、目撃者からそれは本当らしい。
でも別に俺の体には異常がないし、多少の擦り傷程度。
もしかしてなんかのみ間違いじゃないかと今では思う。

俺は何より、優が責任を感じて俺との記憶をすべて消してしまったこと。
一般常識や、知識は残っているものの、自分のことや俺のコト、家族のコト、
友達のコト。すべて忘れてしまったことにショックを受けた。
俺がかばってやれればよかったのに。俺が気を失わなければよかったのに。
本当は俺のせいだったんじゃないか?と何度も思う。
当の本人の優は、思ったよりは明るいが、時々鬱になる。
何も思い出せないことへのイライラなのか。以前より暗くなった。

数ヶ月後、優は退院し学校にも通うようになった。
友達はまた一からの作り直しだと笑って、駅でバイバイする。
俺がしっかりしなきゃと思うけど、敬語で話す優をみていると悲しくなる。
前みたいに、兄弟のようにいることはできないんだなと思うと、
今までの時間が急に大切に思えてくる。

俺が20歳になると、俺は優との結婚を考え始めていた。
俺から見れば、付き合ってから約8年。そろそろだろうと思う。
でも優からしてみれば、《はじめてあってから2年》
親から「幼馴染で、彼氏」と紹介され、俺と一緒にはいるが、
2年やそこらで結婚なんて考えるわけが無い。
俺もいい加減、優から離れなくちゃと思い始めていた。
いっそのこと、兄弟でいいのかもしれない。
でも俺は優以外というのが考えられなかった。
事故のことで同情しているだけかもしれない。偽善かもしれない。
でもただ優に近くにいて欲しかった。

多少の距離間はあったけど、徐々に近くなってきた気がした。
事故から 4回目の優の誕生日。
優はいつもより女の子っぽい服装で、俺を出迎えてくれた。
「ほら、誕生日おめでと」
『ありがと!開けていい?』
「うん。」
『え、、これって。。』
「俺がはめてあげようか?」
『え///あ、うん///』
俺は指輪をプレゼントした。給料3か月分とはいかなかった安物。
(結婚指輪は頑張ってもうちょっとしたのを買ったけど)
「俺と結婚してください。」
正直無理だとは思った。優にとってはまだ早すぎるとおもったけど、
優に何回かお見合いの話もきてるらしく(まだ大学生なのにおかしいだろ)
それを考えると今日しかないと思った。
優はゆっくり喋り始めた。
『ありがとう・・うれしい。だけど結婚って・・早いよ。』
「そんなに難しく考えないで。結婚って言っても今までどおり変わらなくていいから」
『・・・その「今まで」が思い出せないの。だから・・・』
「俺が全部話すよ。全部知ってるから」
『でも・・・ごめんなさい。』
優は指輪を外して、箱に戻した。
「そっか・・・ごめんな、急にこんなこと。あ、でも指輪は誕生日プレゼントとして
 受け取って。返されても困るしw付けなくてもいいから。な?」
『うん・・・』
 俺は窓から自分の部屋に戻った。

それから気まずくて、優と距離を置いた。
両親からは「ケンカ?」と聞かれたけど、「別に、あいつ勉強で忙しいだけだから」と
いっておいた。あいつがおそくまで勉強していたのは事実だったし。
ある日、優が俺の部屋に来た。
「どうかした?」
『うん、、、ちょっと話したいことがあって』
「何?あ、座って座って」

『私ね。。。やっぱり智にそばにいて欲しい。記憶はないけど、なんか智のそばが
 一番安心する。一度断っておいて勝手なこと言ってるって分かってるし、智に
 好きな人がもういるかもしれないけど、、、』
「いいの?俺で?」
『智がいいの。』
思わず抱きしめてしまった。
優も俺の背中に手をまわしてきた。
『立派な奥さんになれるかどうかわかんないけど、頑張るね。』
「笑ってくれればそれでいいw」
『え、いるだけでいいの?』
「あ、食事は作って」
『はいはいw』

その後、互いの両親に挨拶し、反対も無く結婚できることになった。
ただ1つ条件があって、2人だけですむのは、優が大学を卒業してからということだった。
でもあと1年ほどだし、優も「花嫁修業するぞ!」と意気込んでるので
まぁいいだろうってことになった。

記憶はまだないみたいだけど、時々思い出すように「〜なことあったよね!」という。
もし事故を思い出したときは、俺といるのがつらいこともあるかもしれないけど、
でも俺はそばにいてあげたいと思う。



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