相方と俺 (アニメキャラの体験談) 10587回

2007/08/16 09:41┃登録者:えっちな名無しさん◆Y/vRvEXw┃作者:名無しの作者
久しぶりに相方に会った。 
相方は驚く程の頑張り屋だ。 
俺が仕事をテキトーにこなしている横で、相方はいつも全力投球だ。 
そんな相方だから、上の人間からも可愛がられる。ピンでの仕事もジャンジャン入ってくる。 
フットサルだのスキューバダイビングだのバンジージャンプだの、休む暇も無いくらいに 
次から次へと、顔色が悪くなるまで働いている。 
俺はと言えば、相方が一人で仕事をしている間は完全にオフだ。 
パチンコに出かけたり、朝からずっと飲んでたり。 
時々そんなだらけきった自分を客観視してしまい、ひどい自己嫌悪に陥る。 
そしてその自己嫌悪から逃れるために、全てを頑張り過ぎの相方のせいにする。 
昨日もそんな一日だった。 
だから今は、正直言って顔を合わせたくなかった。 
「今日も頑張ろうな」 
にこやかにそう言う相方と、なるべく目を合わせないようにしてスタジオに入る。 
「俺の場合は『今日も』じゃねえんだよ・・・」 
酒が抜け切っていない俺は、案の定ミスを連発した。 
台詞を噛み、段取りを忘れ、出演者の名前まで間違えた。 
赤い顔で目をクルクルさせながらミスを繰り返す自分の姿は、惨め過ぎて逆に笑えるほどだった。 
収録後、ディレクターに散々嫌味を言われて楽屋に帰ると、相方に思い切り頬を引っ叩かれた。 
当然の仕打ちだと思った。いっそ死ぬまでぶん殴って欲しかった。 
「俺もうこの仕事辞めるわ」 
言い終わらないうちに二発目が飛んで来た。 
「俺にはもう・・・」 
「ポンキッキは!! お前がいてくれるから面白いんだ!! 
だから・・・だから・・・!」 
相方は泣いていた。泣きながらもう一度俺の頬を張った。 
泣くようなことかよ。クズが一匹、お前の前から姿を消すだけだろ。 
そんな台詞を思い浮かべながらも、俺は心底嬉しかった。 
俺は足手まといでしかないと思っていた。 
とっくに見放され、軽蔑されているものと思っていた。なのに・・・。 
「目ぇ・・・覚めたわ・・・」 
相方の顔がぱぁっと明るくなる。 
その顔を見て俺は頷き、大きく息を吸い込んだ。 
「がんばりますぞー!!」 
心の中の闇が完全に晴れた、そんな気がした。 




出典:古典
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