出向先で出合った真琴 (泣ける体験談) 38281回

2007/09/25 00:30┃登録者:えっちな名無しさん┃作者:名無しの作者
僕の会社には変な習慣がある。
それは新入社員を2年間採点し、各部門のそれぞれ最上位の者が販売会社へ3年間出向させられるというものだ。
ただし出向者は最低でも一つ、通常は二つ役職が上がりエリートコースとして本社か開発部門へ戻るのが通例であった。
また、出向になる者は基本大卒であり、稀に短大卒や高専卒が選ばれることもあったが高卒は査定対象から除外されていた。

僕の年の入社人数は部門別まで憶えていないが確か176人だったと記憶している。
しかし大卒事務職の出来が悪く「該当者なし」との噂が広まった春の終わりに僕は人事部へ呼ばれた。
そして人事部長から異例ではあるが(高卒入社の)僕が四国支社へ出向する事に決まったと告げられ、直属の部下になる人間も含めて社員全てが年上になる事も付け加えた。

大きな不安と少しの期待で帰宅し高校から付き合って3年目になる彼女に連絡をした。
若干20歳だった僕と彼女は冷静な話ができず、遠距離恋愛という選択肢は毛頭なく喧嘩別れをし、翌週には失意のまま四国へ赴任した。

出向先の四国支社は高松にあり、住まいは徒歩圏内の会社の用意した2DKの賃貸マンション。僕の赴任した頃はまだ「うどん」ブームの来る前で赴任当初の休日には良く食べ歩きをした。

仕事では僕は経理のサブマネージャーという立場であった。
しかし何せ全員が年上で仕事中も「メーカーからの腰掛け」と冷遇された。
そして鬱積したものの捌け口もなく、精神的に追い込まれ、辛くなってきた夏前に転機が訪れた。
販社で中途採用された真琴がやってきたのだった。
彼女の年齢は僕より4歳上。関西の某メーカーに就職したが身体を壊し、二年足らずで退職。実家のある香川で療養後、販社での欠員補充で入社してきたと説明された。

彼女は僕がメーカーからの出向と言う事も気にせず意見を出し、何事にも積極的にこなしてくれた。時には意見の対峙からお互いに声を荒げるほどだった。
そんな積極的な彼女に刺激され僕もようやく支社の一員として周りからも認めて貰えるようになった。

そんなある日、真琴が3日連続で会社を休んだ。僕はお節介とも思ったが自宅へ見舞いに行った。
僕にとって彼女の存在が日増しに強くなっていた事も事実だったし、何より彼女は職場の華だった。
そしてこの後、僕と彼女の仲は急速に近くなっていった。

僕は本気で本音を真琴には話せたし、彼女も流されるのではなく自分の意見をしっかりと主張してくれた。
そんな彼女に僕は惹かれていた。彼女も年下の僕を一男性として、また一上司として暖かくサポートしてくれていた。

そんな僕達が男女の仲に成るにはそれほど多くの月日は必要としなかった。
しかしながら他の社員の手前、職場でも社外でも必要以上に警戒していた。
なにせ都会と違って移動手段は車が圧倒的に便利であり、出くわす確率が高かった。
その為、彼女の指定席は後部座席となっていた。
そんな甲斐もあってか僕と真琴の愛も順調に育んでいた。

月日は流れ、僕の出向満了が近くなった頃、本社へ会議で出向いた。
会議後、人事部長に呼ばれ昼食を一緒に摂りながら選択を迫られた。
…名鐵未蝓任期満了で主任として本社へ戻る。
⊇亳期間を2年延長し係長として本社へ戻る。
人事部長は「出向先の評価は係長として本社に戻すのに値する。だが高卒者の出向は前例が無いので現状では年齢が不足している。」と付け加えた。
僕は即答をせず、週明けに返事をすると言い席を後にした。

僕は2つの事で悩んでいた。
真琴の事と昇進の事だ。この時僕23歳、彼女は27歳。彼女は結婚するには丁度良い年齢だ。しかし2年出向を延長するだけで係長の肩書きが手に入る。僕の会社では高卒者の昇進は目処が立ってしまっている。しかし打破できるチャンスが目前にぶら下っていた。
もちろん結婚して出向を延長すれば一石二鳥だと思うかもしれないが、僕にはこの時の選択肢に無かった。

高松までの帰りの電車ではどちらがよりベターかの結論を出せずにいた。
僕は戻ってから真琴に会い、正直に相談した。
彼女の答えはあっさりとしていて即答であった。「2年延長して将来の事を大事にしなよ!」と…
僕は週明けを待たず人事部長に直接連絡を入れ、翌週末には2年の出向延長が正式に辞令として出た。

出向延長中は仕事も順調であり、真琴との仲も喧嘩一つしないほど順調であった。
変化があったのは週末のみの半同棲生活になった事位であった。
しかしながら一つだけ気掛かりだったのは、僕のプロポーズを「正式に出向が終わってから」と先延ばしにされていた事だけだった。

そして待ちに待った本社へ戻る辞令が出た夜、僕は真琴にもう一度プロポーズをした。
期待通りの答えが聞けるものと思っていた僕は心をときめかせていた。
しかし予想に反し真琴の答えは「私と結婚したらノブが不幸になるよ」というものだった。
僕は真琴と過ごした4年半、仕事以外で彼女に声を荒げた事は無かったがこの時ばかりは彼女を攻め立てるように声を張り上げた。
彼女はすまなそうな顔で「騙す心算は無い。本当の事を言ったら貴方の方が傷付くと思って先延ばしにしてた」と話しだし、そして涙ぐんだ…

彼女は、実父は実母(妻)を殺そうとした殺人未遂犯であり服役中である事、母はその後自殺した事、先天性の病気で子供が出来ない体質である事を告白した。そして僕が交際中に挨拶したのは亡母の兄で養父だという事だった。

僕は涙を流しながら真実を告白した真琴の頭を抱き寄せていた。
そして、「結婚する・しないは真琴に任せる。ただ僕は真琴と一緒にこれからも過ごしたい」とだけ伝えて泣き止むまで抱き寄せていた。

その後、彼女は会社には出社するものの僕との接触を出来る限り避けていた。
支社の皆が催してくれた送別会にも欠席した。
そして体調を理由に退職届を出した。
僕は都合5年の出向生活最後の1週間を胸の張り裂ける想いで過ごした。

高松を去る日、ドラマのように見送りに来て抱き合うシーンに微かな望みを抱き、駅のホームを隈なく探した。しかしながら現実はそういう事は起こらなかった。
失意で始まった僕の出向生活は失意で幕を引いた。


本社へ戻り、身の回りの整理も一段落付いた頃、未練がましいかも知れないが便箋にぎっしりと気持ちを綴った手紙と婚姻届、そして家の合鍵を真琴に送った。
一週間ほど後、真琴から小包が届いた。
僕の送った婚姻届と合鍵、そして出合った頃から毎日つけていた日記が同梱されたいた。
一冊目の日記は出会う前の部分は切り取られていたが、そこには出合った頃の事。
出合った後は僕のことと真琴の葛藤する気持ちなどが毎日のように綴られていた。
僕は泣きながら夜通しで読み耽った。
そして最後のページには大きな文字で「私の事を愛してくれてありがとう。ノブに似合う人と幸せになって下さい。長い間本当にありがとう。辛くなってしまうのでこれ以上追いかけないで。真琴より」と書かれていた。

出典:今は
リンク:課長
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