「ソープへ行け」と僕は彼女に言われた。 僕が人生で初めて告白した彼女だった。 優しくて、賢くって。とても綺麗で。 20歳超えて童貞なんて信じられない。私に幻想を抱かれても困る。 汚物をみるような目で、心底哀れむような目で、僕はそういわれた。 ぼきん、と僕の中で何かが折れる音がした。 そうか。幻想は求めてはいけないんだ。愛情なんて求めてはいけないんだ。 僕は少ない学生生活の残りを全て勉強に費やし、一流と言われるような企業に入った。 そして、得た金のほとんどを風俗に費やした。 そうか。やっぱり彼女のいった通りだった。とても簡単なことだったんだ。 それから、お金を使うのが惜しくなった僕は、適当に女を探した。 なるべく効率を上げるためには、弱い女が良かった。 親から愛されなかった女子高生や、夫から愛されていない人妻や、愛とかとくに考えていない頭が弱い女子大生。 みんな、簡単に僕と寝て、僕を愛した。 僕は人間の弱い部分を知っていた。 自分がとても弱い人間だったから、どこをどう揺さぶれば心が揺れるのか熟知していた。 少し揺さぶり、よろけてこけそうになったところを、そっと優しく支えてあげればそれでよかった。 僕があのときや、あのときに、そうして貰いたかったことを再現すれば良いだけだった。 どんどん弱い人間と効率的に寝て、学習した。そのうち、大抵の女は落とせるようになった。 他人の万能感をへしおるのはとても楽しかった。強い人間になれた気がした。 行かないでください。嫌いにならないでください。私を愛してください。 僕は首を横にふって立ち去った。 最初はとても自分がひどい人間に思えて何度も何度も吐いた。 けれど、じきになれた。だってさ。僕に幻想を抱かれても困るだろう? 強い人間には運もよってくる。仕事も順調にいき、僕はますます強い人間になった。 あるとき、街で僕は彼女に再会した。 僕にソープをすすめた女だ。 もうすぐ結婚をすると彼女は僕に話した。 色々話をしていたが、結局のところ、たくさんの男と付き合い、女を磨き、理想の男を手に入れたと言う成功譚だった。 そうか。と、僕は思った。理想の男なのか。 僕は自分の女の中から、できるだけ美しい女を選び、彼女の男を誘惑させた。 美しい女は最初は嫌がったが、僕がセックスしてやらないぞと言うと、しぶしぶ彼女の男を誘惑した。 男はすぐに美しい女と寝た。僕はそのときに写真を撮らせて、それを彼女に送りつけた。 彼女と彼女の男の関係は壊れた。 なんだ。彼女の試行錯誤と努力で手に入った関係は、そんなものだったのか。 それから、僕は彼女をとても優しく受け止めてあげた。 彼女は僕を愛し、僕と寝た。 ちょっとお金に困ってるんだというと、すぐにお金をくれた。 貯金が増えてよかったと僕は思った。 彼女がお金をくれなくなった。 彼女とのセックスにも飽きてきたので、僕は彼女とさようならをすることにした。 行かないで下さい、嫌いにならないで下さい、愛して下さい、セックスして下さい、借金があるんです。 どうか、どうか。 彼女はそう言った。うーん、そうなのか。 僕は言った。 あのね、僕に幻想や愛情を抱かれても困るんだよね。 お金がない?簡単なことだよね。 「ソープへ行け」 出典:たぶん リンク:既出 |
投票 (・∀・):1826 (・A・):437 →コメントページ | |
|
トラックバック(関連HP) トラックバックURL: http://moemoe.mydns.jp/tb.php/13394/ トラックバックURLは1日だけ有効です。日付が変わるとトラックバックURLが変わるので注意してください。 |
まだトラックバックはありません。 トラックバック機能復活しました。 |
Google(リンクHP) このページのURLを検索しています |
検索結果が見つかりませんでした |