(特に女の人には)あまり共感を与える話じゃないから、箸休め程度に読んで欲しい。 東京で生まれ育った俺は、大学で初めて大阪に行った。 太っていて不細工で、見るからに元々ヒッキーの容姿と性格から脱却したくて、 それっぽいサークルにも入ったのだが、やはり付け焼刃ではどうしようもなく、 やがて俺はサークルを去り、友達もできず、ただ学校とバイト先のコンビニだけが「 俺の大阪」となった。 二年のときは「まだこれから」三年のときは「そろそろ」 そして四年になり「もうダメだ」と、俺は東京の会社の内定を夏に早々と決めた。 もちろん俺が受け入れられなかったのは、土地柄でなく俺の人格によるものだと、 痛い程よくわかっていたが、それでも四年間いた大阪から何も得ることなく、 ただ大学行って帰って行くだけの自分を、みじめに思いつつ残りの日々を消化していった。 最後のテストが終わり、少しずつ荷物を東京に送り返していた頃、 バイト先の高校生の女の子が、映画に誘ってくれた。 生まれて初めての幸運に俺は舞い上がり「大阪のせめてもの思い出に」と 彼女と「ラストエンペラー」を観に行った。 女の子と映画に行くなんて、どんな奴も高校生くらいにやってそうだが、 デブでネクラの俺には、23にして初めて経験した幸せだった。 下心ではない、それは諦めていたから本当にお礼のつもりで 帰りに夕食を奢ろうと思って、すし屋に連れて行こうとしたら、 彼女がホカ弁買って俺のアパートで一緒に食べようと言い出したとき、 恥ずかしいが、俺はわずかにパンツを汚した。 あまり物のなくなった殺風景な部屋で弁当を食いながら俺と彼女は色んな話をした。 「泉州の空港っていつできるのか?」とか他愛もない話だ。 すると不意に彼女が、俺に訊いた。 「○○○さんって、大阪に来て彼女いた?」 あまりに唐突な問いに、俺は見得を張る余裕もなく正直に答えてしまった。 すると彼女は、う〜〜んと唸って立ち上がると、突然電気を消すと、 あっけらかんとベッドに座って服を脱いだ。 生まれて初めて目の前に下着姿の女の子が現れて、俺はたまげたが、 彼女は意に関せず、さっさと布団にもぐりこむと「ほれ・・ほれ・・おいで!」 と誘った。 まったく絵にならない光景。だけど俺は汗だくになりながらも彼女のリードで 無事初体験を済ませた。 オナニーとは違う虚脱感の中、急にこの四年間が一気に浮かんで来た。 本当に何もなかった四年間だった、つい声に出してしまった瞬間、 俺は彼女の上に乗っかったまま、泣き出してしまった。 しまった、と思ったが一度涙が出てしまうと止まらなかった。 俺より6つも年下のこの女の子は自分の上でブヒブヒ泣いてるこのデブの 背中をポンポンっと叩きながら「とりあえず大阪で童貞捨てたでしょ?」と 言ってくれた。 それから大阪には行っていないのだが、今俺は会社で「宴会隊長」である。 大学のときの自分からは考えられないけど、今の俺の原点はあの夜だと思ってる。 女の腹から男の子として生まれ、女によって男にしてもらう。 男は一生で二度、女から産まれるんだと思う。 |
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