学生時代、異常なまでの金縛りに困っていたことがある。
専門学校に入学した俺は実家を出て寮に住んでいた。
最初の2年は何ともなかったのに、3年目に入ると金縛りに遭うようになった。
布団に入り、ウトウトし始めると金縛り。
怖いから意地で金縛りを解除して、またウトウトし始めると金縛り。
一晩で十数回とか、ザラだった。
金縛りの時に見る幻覚は、決まってじいさん。
ニヤニヤしてて気持ち悪いじいさんだった。
(俺を苦しめて何がそんなに楽しいのか・・・)
そんな状態が何回も続くと、本当にイライラしてくる。
どっかで見た顔なのに、思い出せない。
夜中に1人で怒り狂ってる俺は、周りから見たら変かもしれないけど、
そのくらいあのじいさんが憎かった。
もともと俺には霊感はなく、今までそんなことはなかった。
しかも、母譲りなのか極度の臆病者で、金縛りの際の幻覚と幻聴には本当に参っていた。
ある日、金縛りの事をバイト先のパートのおばさんに話してみた。
俺「最近金縛り多いんですよー」
おばさん「疲れてるんじゃないの?たまには休んだら?」
俺「疲れてるのかな、休みの日も遭いますけど」
おばさん「疲れじゃないなら、霊じゃないかな」
俺「え、それはないですっ、俺霊感皆無だし。」
おばさん「ちゃんと墓参りいってる?行かなきゃダメだよー?
あ、でも土日も仕事だから家に帰れないか。」
俺「・・・・。あ、じいさん」
その週末、バイトを休んで地元へ帰った。
そういえば去年までは3週間に1回は帰ってきてたんだ。
そう遠くない距離なのに、今年は忙しくて帰るひまが無かった。
実家に帰る前に、ばあさんの家に寄る。
仏壇の写真を見ると、あのじいさんの写真があった。
俺が産まれる前に死んだじいさん。白黒のこの写真でしか見たことがない。
優しい笑顔で写っているじいさんの写真。
俺は仏壇の前で手を合わせ、実家に帰った。
その日の夜も金縛りに遭った。
でも、全然怖くなかった。
ゆっくり目を開けると、写真と同じ笑顔のじいさんがいた。
俺も笑うと、じいさんは「じゃ、またな」と一言残し、消えていった。
寮に戻る前に、もう一度じいさんの仏壇の前に座った。
手を合わせ、じいさんの写真に「またな。」と声をかけ、立ち上がった。
少し、軽くなった気がした。
出典:ゆず湯も
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じいさんの笑顔
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