数日ほど前にあったお話。

俺悩んでいることがあって、ちょっと鬱が入っていた。
将来に対する漠然とした不安、みたいな悩み。詳しくは言いたくない。
周りの友人に相談もしてみたが、適当なことしか言ってもらえず未解決。
いよいよ精神科医にでも診てもらおうか?、とか思っていた。
そんな時に、大学のゼミの先輩に相談に乗ってもらおうと考えた。

この先輩は「変わり者」と評判の人だった。
「医者に行く前に、最後に相談でもしてみるか。どうせ医者に行くのは変わりないし。」
とか考えていた。

先輩との会話の内容は、かなり俺の中で補足されている。
正確な内容では無いかもしれないけど、意味はあっていると思う。

大まかな俺の悩みを先輩に聞いてもらった後に、会話が始まった。

先「例えばさ?こう考えてみれば?」
俺「はぁ」
先「10年後のことは、10年後のお前が何とかしてくれる。」
俺「はぁ。」
先「5年後のことは、5年後のお前が何とかしてくれる。」
俺「はぁ。」
先「明日のことは、明日のお前が何とかしてくれる。」
俺「はぁ。」

全く意味がわからない。たぶん俺、変な顔をしていた。

先「例えばさ、お前が明日AかBを選ばなければならないとするだろ?」
俺「はぁ。」
先「そのAかBってのは、何でもいいんだけどさ。」
俺「はぁ。」
先「例えばさ、明日の昼飯にラーメンを食べるか、チャーハンを食べるか、という選択でもいいよ。」
俺「はぁ。」
先「でさ、その選択をするのは誰?」
俺「それは、俺自身でしょうね。」
先「それがちょっと違うんだよな。」
俺「はぁ?」
先「それを決めるのは『明日のお前』なんだよ。」
俺「?」

ますます意味がわからない。たぶん俺、すごく変な顔をしていた。

先「例えばさ、明日の昼飯にラーメン食べるかチャーハン食べるか、今決められるかな?」
俺「はぁ、暑いから冷やし中華食いたいですね」
先「それもありだな。今冷やし中華を食べたいと決めたよな?」
俺「はぁ。」
先「明日の昼飯に、お前は冷やし中華を食べる?」
俺「食べろと言われれば、食べますね。」
先「どうかな?」
俺「どういうことですか?」
先「明日涼しかったら?隣でチャーハンをうまそうに食べている客がいたら?どうする?」
俺「それは、冷やし中華を食わないかもしれませんね」
先「だろ?」
俺「はぁ。」
先「つまりさ、明日のことは今の時点で決められないんだよ。」
俺「…」

言いたいことが何となく解かってきた。でも納得できない。

俺「でも俺の悩みって、そんな飯の話じゃないですよ?」
先「同じ同じ」
俺「どこが?」
先「その時になってみないと、結局結論が出ないところが。」
俺「…」
先「思い悩んで、苦しんで、あれこれ推論を出して、結局どうなる?」
俺「…」
先「その状況に立たないと結論は出ないんだよ。」
俺「…」

何となく理解はできる。でも、反論したくなった。

俺「先輩は過去のことで、後悔したこととか無いんですか?」
先「あるよ。」
俺「それじゃ、あの時こうしていればよかったとか思うわけですよね?」
先「ちょっと違うかな。」
俺「?」
先「高価な落し物をしたとか、不注意で怪我をしたとか。凡ミスは悔やむ。」
俺「…」
先「でもね、3年前とか5年前の自分が、自分自身で選択したことについては後悔しないんだ。」
俺「…どうしてですか?」
先「3年前の自分がどうだったか、5年前の自分がどうだったか、今の自分が状況を知っているから。」
俺「?」
先「過去の自分がその状況で悩んで、ちゃんと結論を出しているのを知っているから。」
俺「…」

あんまり聞いてはいけないことを聞いてしまった気がする。

先「過去のことについては、自分自身で状況を知っている。」
俺「そうですね。」
先「未来のことについて、正確に自分自身の状況を理解できるかい?」
俺「無理です。」
先「だろ?」
俺「…」
先「だからさ、3年後、5年後、10年後のことは、その時のお前に任せればいいんじゃないの?」

ちょっとだけ気分が晴れた気がした。

俺「でも、それって無責任ですよね?」
先「どこがよ?」
俺「何年か後の俺に丸投げですから。」
先「そうじゃないよ。」
俺「?」
先「例えば今凡ミスをすれば、未来の自分から死ぬほど恨まれる。」
俺「その時は俺、後悔しますかね?」
先「そんなことは10年後のお前に聞いてみなよ?」

笑った。死ぬほど笑った。先輩と二人で笑った。


医者に行くのは止めた。

出典:俺の脳内
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