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めに行った、
「そのまま続けてください!業務の邪魔にはなりたくありません!
 怪我をされても困りますし、いつも通りでお願いします!
 というか、手を休まれては”視察”する意味がありません」
”視察”という単語を強めに言うのを忘れない。
これで、奥さんは業務に必死で俺の視線などに構う余裕もない。
俺は汗びっしょりになって業務に取り組む美貌の人妻を視姦し放題にできる。
さらに
「ちょっと工場内を撮っても良いですか?上司に報告書を上げるので」
汗の滲んだTシャツを豊かに盛り上げる膨らみを目に焼け付けるだけでなく
スマホにも存分に納めることもできるというわけだ。
そんなことを1年ほど続けて・・・それだけでも俺は満足だったが
神の悪戯か・・・俺にとっては最高の、奥さんにとっては最悪の機会が巡ってくる。
そう。コロナ禍に始まる自動車不況だ。
この不況による影響は非常に大きく、下請け企業にとっては、
まったく先が見えない酷い状況だった。
特に寺田鍛造のような事業は、材料の高騰もあって、
とてつもない打撃を受けていた。
それが分かっていて、
俺は村松など子会社やサプライヤーと示し合わせて、
寺田鍛造に大幅なコストカットか契約の打ち切りを打診した。
「そ、そんな無理です!」
青くなって項垂れる社長に俺はふんぞり返りながら
「コストカットがダメなら、契約は打ち切り、他を探すまでです。
 うちから直接仕事を受けたいなんて会社はいくらでもありますから」と告げた。
すると
それまで緊張した面持ちで黙って話を聞いていた奥さんが突然土下座せんばかりに頭を深く下げた。
「御社からの仕事がなくなったら、私たちは立ちいかなくなります。
 コストカットは、どうか、せめて材料の高騰が終わるまでお待ちいただけないでしょうか」
実際に何社もの下請けが既に切られている事実は当然知っているはずだ。
社長も専務も情に訴えるしかないとでも思ったのだろう。
特に奥さんは「鍛造の仕事が好きなんです」と仕事がいかに好きか、
いかに仕事に誇りを持って取り組んでいるかを語りだした。
なるほど。
俺は目的もそっちのけで感心させられた。
しかし、奥さんの真摯な話だけだったら、良かったが、
社長の方の同情を誘うかのような話がまずかった。
社長は長引くコロナ不況から、借金がかさみ自転車操業状態になっているなどと言いだした。

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