再婚した友人・続 (エロくない体験談) 42049回

2007/06/01 12:57┃登録者:ちントレア◆PXjAgPiU┃作者:ちントレア
前編 「再婚した友人」(URLは↓)の続きです。
http://moemoe.mydns.jp/view.php/6649
旦那と子供を捨てて、他の男の元に走った女性のその後の話です。エロはありません。興味のない方は前のページに戻ってください。
 
【前編のあらすじ】
主人公の太郎(33)は、長男ユウタの入学式直後、前妻の礼子(30)に逃げられた。中年の会社社長と再婚するのだという。父子で生活していたところ、かつての同級生、真梨子と再会。旦那と死別した真梨子も結奈(小6)、若奈(小4)との母子家庭で困窮していたので、二人は再婚。幸せな家庭生活を送っていた。
真梨子は生活に慣れて来るにつれ、昔の地が出てきて段々と図々しくなってくるのがちょっとだけ困りもの。もはや、10年連れ添ってきた古女房と変わらない。
そんな中、翌年の元旦に礼子から年賀状が舞い込んだ。
「旦那が収監され、家族がなつかしい。辛い、ユウタに会いたい」
礼子が返事を書いた「ユウタは幸せに暮らしていますよ。見に来てください」と
 
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【現れた来客】
2月のある日。真梨子から太郎の所にメールが入った「今夜、弟が来るので、18時までに帰れますか??」
真梨子に弟なんていたっけ??と、疑問に思いながらも「うん、帰るよ」と返信。
でも、自宅にやってきたのは・・・・
 
父の知り合いの津田弁護士と、前妻礼子の弟、卓也君(25)だった。
建設技師である卓也君は、真っ黒に日焼けした姉思いの好青年。気が合うので、礼子と暮らしているときは時々遊びに行っていたし、離婚後もメールで近況報告はしていた。
とりあえず客間に通すと、真梨子の手を引いて台所へ
「真梨子、どういうことだ」
「ごめん、本当のこというと、あなた会ってくれないかと思って・・・でも、私『弟』としか言ってないよ。嘘ついてないもーん。話だけ聞いてあげて、お願い」
 
太郎は客間に戻ると、警戒心丸出しで「今日はどういったお話でしょうか・・・」
卓也君は、畳の上で土下座した「太郎さん、お久しぶりです。この度は、姉のことでは 本当に太郎さんに ご迷惑おかけしました」
「卓也君、気持ちは嬉しいけど・・・・・・君らしくないよ。顔を上げて話をしよう」
津田氏と卓也君は口を開いた。
 
【礼子の暮らしぶり】
再婚禁止期間が終わった10月、前妻礼子は、貿易会社社長 鬼山と入籍をしたものの、11月に鬼山は取引相手の社長宅に殴り込みをかけ、乳児を含む家族全員にけがを負わせ、逮捕された。
直後、鬼山に恨みを持つ者からの告発が相次ぎ、鬼山の余罪がゴロゴロ出てきた。
暴行、傷害、強姦、脅迫、詐欺、私文書偽造、産業廃棄物処理法違反、商標法違反、著作権法違反、猥褻物陳列、薬事法違反。そして、大量の覚醒剤が鬼山のセルシオの中から発見された・・・・・
鬼山は取引先の他、仲間からも見放され、会社は倒産。人手に渡ってしまった。
礼子も、通訳や翻訳家としての仕事先の多くを失った。カリスマ弁護士も彼から手を引いた。(カリスマ弁護士は、礼子のことを不憫に思い、礼子だけはかつての交渉相手である津田弁護士に引き継いだ)
 
家も人手に渡る可能性が高く、鬼山を訪ねてくる人(=怒鳴り込んでくる人)も多いので、卓也が名義人となり、仕事部屋として2DKのマンションを秘密裏に借りた。礼子は、仕事道具と荷物をマンションに移す。
 
仕事道具と衣類で乱雑に散らかったマンションに寝泊まりし、カップ麺をすすりながら、わずかな仕事をのろのろとこなす生活。
太郎の元を出るとき、1枚だけ荷物に紛れ込んでいた家族写真を眺め、涙を流す毎日。
年末、年賀状を1枚だけ郵便局で買い求めると、太郎宛に書いた。
(鬼山氏を刺激しないよう、礼子に対して再婚のことは伏せるように卓也と津田氏に依頼しておいたので、礼子は太郎の近況を知らなかった)
   
1月3日、卓也が姉の所に電話をしても出ない。胸騒ぎのした卓也がデートをキャンセルし、礼子のマンションに行くと、ガスの臭いが。合鍵で扉を開けると、睡眠導入剤を服用した礼子がベッドで寝ていた。
窓を開け、礼子をたたき起こす。
「礼ちゃん、馬鹿なことをするんじゃない!!」
「たっくんなの??、いや、死なせて、お願い!!」そういうと、礼子は卓也の胸に飛び込んで号泣した。
ふと、机の上を見ると、太郎から回送されてきた年賀状に添えられた手紙が置いてある。真梨子さんとユウタが入浴している写真も刷り込まれている。
 
「太郎が、太郎が、ユウタが・・・ひどい・・・私の帰るところがなくなった・・・・生きている価値なんてないよ」
「礼子、まさか?? 太郎さんのこと・・」
「うん、うん、そうなの。殴られても蹴られてもいい。何年かかってお詫びしてでも、帰りたかった。ユウタと暮らしたかった・・・・・あんた、知ってたの??、太郎が再婚した話を」
「うん、堅く口止めされていたから詳しくは言えなかったけど・・・ごめん」
「新しい奥さん、私に嫌がらせしているのよね、私のこと、憎くて憎くて仕方ないのよね、私なんて死ねばいいんだわ。こんな手紙書いて寄越して。卓也、私のこと、そこの包丁でひと思いに刺して」
 
パン!!卓也は礼子をひっぱたいた。
 
「太郎さんや真梨子さんが100%礼子のことを嫌っているのなら、こんな手紙、わざわざ入れるわけないだろ。姉さん、素直になろうよ、正直に生きようよ、愚直に生きようよ」
「ぐ、愚直???」
「うん、真梨子さんが『遊びに来てください』と書いてあるの、真に受けてみちゃおうか」
「でも私、本当に太郎にひどいことをした。許してくれるわけないよ」
「太郎さんは礼子の元には帰ってこれないと思うけど、子供には会わせてもらおうよ。礼子がお腹を痛めて生んだ子供だよ。僕も一緒に頼むから。土下座でも何でもするよ」
「卓也!!!」礼子は卓也の胸の中で涙を流した。
高校を出て、土建会社に勤めた卓也。今まで馬鹿にしてきたけど、本当に立派になった。
「姉さん、僕の結婚式に出て欲しいよ。遺影なんて絶対いやだからね」
「こくん」礼子はうなずいた。
卓也は婚約していたのだった。
 
1月中旬、卓也は、津田弁護士と面談した。
離婚交渉の主導権は鬼山とカリスマ弁護士が握っていたが、その関与がなくなれば、新たな交渉の余地はある。財産は動かせないけど、太郎を説得して子供との面会権ぐらいは何とかしてみよう。そう話した。
 
津田弁護士と卓也は、太郎のいない昼間に真梨子に接触、手紙の真意を尋ねた。
真梨子は「礼子さんのしたことはひどすぎる。太郎が怒るのも無理はないので、少し嫌がらせとも取れる言い回しにしました。が、自死しようとしていたなんて………。子をもつ母親としての気持ちもよく分かるので、礼子さんが心から反省し、私たちの家族をぐちゃぐちゃにしないのであれば、私は面会してもらっても構いません。太郎には直接話をしてください」と答えた。
 
一方、出版社などからは「鬼山との離婚」を条件に仕事を頼みたい、という内々の連絡が入り出した。礼子は有能な売れっ子通訳&翻訳家なのだ。
津田弁護士は、鬼山に付いている別の弁護士を通じ、拘置所にいる奴に対して離婚交渉中である。
 

【太郎、四面楚歌??】
「という具合です。どうか、姉を許してやってください。ユウタ君と会わせてあげてください。」卓也は再び土下座をした。
「ちょっと待ってよ、卓也君。今、この話を初めて聞いたんだ。いきなり言われても困る。やっぱり礼子のことは許せない。ユウタもそう言っている。せっかく5人で仲良く暮らしているのに。今日はお引き取りくださ………」
「太郎さん、姉は本当に反省しているんです。一目だけでいいから、ユウタ君を、お願いします。お慈悲を……。太郎さん、姉を、姉を………助けて………」
卓也は畳に突っ伏して畳を叩き、おいおいと男泣きした。卓也は、歩けないほどにやせ衰え、自死寸前だった礼子の姿を思い浮かべていた。姉に報いたかった。
ふうっ、太郎はため息をついた。
「卓也君、わかったよ。君の顔を立てよう。とりあえず最初1回だけはOKするように、ユウタに話してみるから、数日待ってくれないか。あとは成り行きだ」
「はい、太郎さん。よろしくお願いします」
「太郎君。卓也君は婚約者とのデートの時間を削ってまで、お姉さんのために飛び回っているんだ。私からも頼む。この通りだ」津田弁護士も深々と頭を下げた。
 
二人を玄関で見送った後、真梨子と太郎は寝室へ。お互い、自分のベッドに腰掛ける。
「真梨子、知っていたんだろ。どういうことなんだ」
「あなた、ごめんなさい。でもね、自分のお腹を痛めた子供のことが気にならない母親っていないよ。私も、最初は礼子さんのこと、悪く思っていたけど、自死しようとしていたなんて………………あんまりだわ」
「でも、礼子は『子供はいらない』と俺の前から出ていった。俺のこと『男らしくない、ぼんやりしている』とか さんざん罵ってな。どんなに俺が傷ついたことか・・・真梨子は知っているのか!!」太郎は、また真梨子に罵声を浴びせた。

次の瞬間、太郎の頬が熱くなった。真梨子が平手打ちしたのだ。

「あんたばかり被害者面しないでよ!!」
「どういうことだ!!」
「あのね、津田先生から電話があってから、ユウタと少し話してみたの。今のお父さんと昔のお父さん、どっちが好き??って」
「………………………………………」
「もちろん、『今のお父さん』って答えたわ。昔のお父さんはって聞くと、『ママとあんまり仲良くなくって、あんまり遊んでくれなくて、いつも機嫌悪くしていた』って言うの。本当に礼子さんのこと大切にしていたの??。あなたにも耳かき一杯分ぐらいの責任はあるはずよ。母親としてお願い、ユウタを礼子さんに会わせてあげて。みんな仲良くしようよ。けんかなんてしてほしくない。ね、お願い。あなたが傷ついたら、私がどんなことをしても癒してあげるから・・・・・・叩いてごめんね」
そう言うと、真梨子は太郎に抱きついた。
「真梨子、分かったよ。とにかく一回来てもらって、様子を見よう」
「ありがと、チュッ。ユウタと卓也さんには私から話しておくわ」
 
真梨子はユウタに話した。礼子の名を聞いてユウタは凍り付いたが
「礼子さんはお母さんのお友達として来るのだから、ユウタが嫌になったらいつでも席を外してもいいし、いつでも帰ってもらえるからね」と言い繕い、何とか納得してもらった。

 
【礼子、太郎の家へ】
とある日曜日の午後、居間の窓越しに礼子のミニバンが到着したのが見える。運転席からは卓也君、助手席から礼子が降りてきた。
礼子は、玄関のアーチに吊された表札に目を留めている。以前は、礼子が注文したアルミ製の表札だったが、離婚騒動の際に引きずり下ろし、その後、家族全員で手作りの木製の表札を作ったのだ。
呼び鈴が鳴り、「こんちはー」と卓也君。その後ろに礼子。
太郎と目があった瞬間、礼子は「太郎さん、ユウタ、ごめんなさい」とタタキの上で土下座。
「ちょっと、卓也君、やめさせてくれ。ったく、こんなところで…」と太郎。卓也はあわてて礼子を抱え起こし、リビングへ。
 
3人がけのソファには礼子と卓也が並んで座り、向かいには太郎と真梨子。子供たちは食卓に座っている。
「結奈、挨拶を。」「はい」
「礼子さん、初めまして。長女の結奈です。中学校1年です」
「次女の若奈、小学校5年です」
「長男のユウタです。小学校2年です」教えたとおりに自己紹介する。
 
「ユウタ・・・大きくなって」礼子の目が潤む。
「ユウタ、ごめんね。お母さん、どうしてもあなたに会いたかったの・・・許してなんて、言えるわけないよね・・・・」
 
と、ユウタが傍らにあったパンフレットを丸め、礼子に突進してきた。
「ママのバカ!!」と、怒鳴ると、礼子に向かってパンフレットを振り下ろした。
「ユウタ君、止めなさい」卓也はとっさにユウタを引きはがそうとしたが、礼子はそれを制した。
「いいの、いいの、ユウタの気の済むようにさせて」
ユウタは十数回ひっぱたくと、床にかがみ込んで、「えーんっ、ママのバカーっ」と号泣した。礼子の顔にはアザ。鼻血に、口からも血が出ている。口の中が切れたのだろう。
「おい、礼子」太郎は礼子に声をかけた。
「は、はいっ」礼子は、鼻に栓をするより早くユウタを抱え上げ、抱きしめた。
 
結奈と若奈は呆然として見ていたが、真梨子に促されて3人で二階に上がる。
礼子は、泣き寝入りしたユウタを膝の上に載せ、頭を撫でている。
 
「礼子、話は卓也君から一通り聞いたよ。大変だったな」
太郎は、ティッシュとおしぼりを卓也に渡し、礼子は卓也からそれを受け取ると、手当を始める。
「ごめんなさい。本当に愚かなことをしました。毎日後悔しています。」
「まあ、俺の方はごらんの通り、うまくやっているよ。」
「・・・あのう、話は聞いていると思うのですが、取り決めの中での『子供との面会不要』の部分を削除して欲しいんです」
礼子は、津田弁護士の作成した『離婚協定書』のフォーマットを差し出した。
面会不要の部分が消され、「子供との面会は  ヶ月に1回とする」と書いてある。
書類を見て、太郎は約1年前のことを思い出した。書類を前にカリスマ弁護士と並ぶ礼子は鼻高々で、只の会社員である俺を見下していた。「もっといい人がいるの」と自慢げに語っていた。思い出すだけで気分が悪い。
「礼子、今はそれを片づけてくれないか。話はちゃんとするから」「はっ、はい」
 
「礼子、奴とは別れるのか??」
「はい・・・・」
卓也君が話を続ける。離婚届は彼の手元に届いてはいるはずだが、返事がない。拘置所が絡んでいるにしても遅すぎる。もう少ししたら、津田氏に頼んで離婚調停に進むのだという。
「仕事は??」
「今までの半分ぐらいです。何とか食べていくぐらいは・・・」
 
話が止まってしまった。太郎は礼子を見る。礼子はブランド物のパンツと、長袖のカットソーを着てはいるが、いずれも柄物で、コーディネートがちぐはぐである。カットソーのボタンの中には取れかかっている物もある。スーパーで買った服でまとめた真梨子の方が清楚でよっぽどセンスがいい。
元々細かった体は、少しやせているようだ。卓也の話だと、自死しようとしていた頃はもっとひどかったという。そして、毎日のお手入れを欠かしていなかった自慢のロングヘアーは、ばっさりとショートに切りそろえられていた。
「髪、切ったの??」
「はい、太郎さんにお詫びするつもりで、昨日切りました。ごめんなさい、許してください」
湿っぽい雰囲気の中、また静まりかえったリビング。
 

そこに、真梨子が入ってきた。
「ねえっ、太郎」
「何だよ」
「礼子さんと二人で話がしたいから、二階に行っててくれない??」
「うん、ていうか、真梨子、その、手に持っている物はなんだ??」
「太郎、こういうもの隠していちゃだめでしょ。礼子さん、太郎ったらひどいんだよ。このアルバムの中、礼子さんの写真もちゃーんと保管してあるんだから。」
礼子の顔に赤みがさす。
「おい、勝手なこと言うなよ。単に整理しないで、つくねておいただけだよ。」
「あーら、私なんて、こっちに越してくるとき、身辺整理して、前旦那の写真、ぜーんぶ捨ててきたのに。遺影も実家に返したから 手元にはないんだよ。どうして太郎は身辺整理出来なかったのかな〜??」
「・・・・・・・」
「ねえ、礼子さん。ユウタが生まれたときの話、聞きたいんだけどいい??」
「はい」礼子の顔のこわばりがとれた。
まったく、わけがわからん。
太郎は、卓也を伴うとリビングを後にした。
 
二階に上がると「あれ、お母さんは??」と娘たちが部屋から出てきた。
「礼子さんとおしゃべりしているよ」
「お父さん、礼子さんってかわいそうなんでしょ」
「・・・・・・」
「ねえねえ、卓也さん、でしたっけ。お暇でしたら お父さんと礼子さんとユウタが暮らしていたときの話、聞きたいんだけど。お父さん何も話してくれないんだもの」
卓也は、20畳大の子供部屋に入ると、なにやら結奈と若奈としゃべり始めた。階下のリビングからは、真梨子と礼子の笑い声が聞こえてくる。(ユウタは礼子の膝の上)
いったい、どうなっているんだ。わけがわからん。
太郎は、書斎に入り、戦記物のDVDを観ながらふて寝した。
 
結奈が太郎を起こしに来た。「お父さん、みんな集まっているわよ」
リビングに入ると、さっきのお通夜みたいな雰囲気はどこかへ消え去っていた。
元々新聞部(=文章が好き)だった真梨子、翻訳家の礼子とうち解け、友だちになったとのこと。
「離婚協定書」とか「子供と面会」とかいう堅苦しい話ではなく、友人である真梨子の所へ礼子が遊びに来るという形でユウタの姿を見る、ということになった。
 
あと、卓也の結婚式には、友人として太郎一家全員が招待されることも決まった。

 
【寝室で】
夜の夫婦の時間。
「あなた、疲れたでしょ」
「もう、参ったよ。それより、真梨子はあんなオチでいいのか??。俺と寝たことのある女だぞ」
「私だって前に亭主がいたんだから、気にしていないわよ。ねえ、礼子さんったら、もし私とあなたが知り合っていなかったら、復縁したかったって。そこまで言っていたのよ」
「そんな、いまさら勝手なことを」
「だからぁ、許してあげなきゃだめよ。ねえっ、仲良くしてあげて。お願い。家庭を壊されるのは困るけど・・・友達づきあいとか、そうねぇ、浮気するだけなら見逃してあげる。結婚するときの約束だもんね。わたし、太郎の怒っている所見るぐらいなら、まだ浮気される方がいいわ。私が争いごとの嫌いな性格なのはよく知っているでしょ」
「ああ。」高校時代、友達が喧嘩するとバタバタと走り回って仲裁していたことを思い出した。
「それに、少しは未練あるんでしょ、礼子さんに」
「そんなことないよ。俺は、真梨子の方がいいよ。真梨子が大好きだ。おっぱいも大きいし」もみもみ
「ああんっ、太郎ったら。でもね。礼子さん、卓也さんに励まされるようになってから、少しずつ太っているんだって。これで、ユウと会えるようになって、グラマーになったらどうする??。あんっ、いやんっ」
 
夫婦の時間が更けていく・・・・

  
【礼子、再び】
翌週の日曜日の午前中。真梨子は礼子を呼んだ。納戸にしまったまま持ち出されなかった礼子所有の絵画が多数発見され、その取り扱いについて、らしい。
(協定書によると、礼子が持ち出さなかった財産は太郎のものになる所だが、真梨子のせいで一部は死文化しつつある。)
礼子は箱を一瞥すると「私、人生やり直すことにしたから、もういらないよ」と言う。相談の結果、売り払って礼子の生活費に充てることにした。
その席上、礼子はユウタと話をする。学校のことなど少し聞き出すものの、共通の話題があるわけでもなく、話が途切れると、ユウタは庭の花壇をほじくり返している姉たちの所に合流してしまった。

居間では、太郎と真梨子、礼子と絵のことなどしばらく話していたが、真梨子は「お昼作るね」と席を立ってしまった。
「太郎さん・・・」
「何だよ、礼子」
「本当にごめんなさい。許してもらえるとは思っていないけど・・・時々ここに来ていいでしょ」
「ああ」(まったく、真梨子の奴は・・・)
「6年間、夫婦していたのに、話すこと・・ないね」またお通夜になってしまった。

そこに真梨子が入ってきた。「フルーツ切ったよ」
「真梨子、それは??」大皿に盛られたフルーツに、フォークが2本添えられている。
「はい、二人分よ。太郎、あんたが礼子さんの隣に座りなよ。元は夫婦でしょっ。お皿洗うの私なのよ」そう言うと、子供たちの分を用意するため、再び台所に真梨子は戻っていった。
太郎はしぶしぶ礼子の隣に座り直す。
久しぶりに近くで見る礼子の横顔。礼子の体温を感じる。
礼子は、太郎が機嫌を損ねたのではないかとおどおどしている。ついに、切なさから礼子は泣き出してしまった。

「くすん、くすん」礼子の泣き顔なんて初めて見た。今まで、キャリアウーマンとして威張っていた印象しかない。
「泣いてるの??」
「私、鬼山が収監されてから、いっぱい泣いたよ。いっぱい後悔したよ。本当にバカなことをした。死のうと思ったこともあったよ。あなたが許してくれるまで、私一生泣いて暮らすのかも知れない」
礼子はそう言うと、長袖Tシャツの袖で涙を拭いた。(あれ、真梨子が持っているのと同じ、ユニクロだ……)
短く切りそろえられた髪が痛々しい。太郎は、礼子がつわりで苦しんでいるときのことを思い出した。礼子は太郎の膝の上で甘え、太郎は礼子の長い髪を撫でたっけ・・・・
生まれたばかりのユウタを抱き上げた母親らしい表情も思い出した。ユウタが1ヶ月になったとき太郎に預け、久々のひとり外出に行ったものの、自分の買い物をしてこないで、ユウタのためにブランド品のベビー服を山のように買ってきたときのこと・・・・
別れる間際の礼子は本当に許せない。でも、復縁話ではなく、単なる友人関係の構築でいいのなら………。(もちろん、鬼山と関係が切れていることが前提だが)
「礼子、分かったよ。もう、泣かなくてもいいよ。」
「許してくれるの?太郎さん」
 
「ああ・・俺のこと『太郎』って呼び捨てにしてくれていいよ・・でも、許したところで元には戻れないんだよ。俺は、結奈と若奈の父親になったし、ユウタのママは真梨子なんだから。」
「それは、いいんです。私が悪いんだから。真梨子さんにはお友達になってもらって。こうしてユウタが遊んでいる姿を目にして、あなたと話が出来るだけで・・・・」
「じゃあ、俺ともお友達??」
「うん♪。お友達なら、手ぐらいつないでもいいんだよね」
そういうと、礼子は太郎の手を握った。礼子の手は昔と違い、暖かった。
 
いつのまにか、真梨子が自分用の小盛のフルーツを抱えて食卓に座っていた。俺たちと目があった真梨子は右手の指を立てて「よかったね」と合図してくれた。

  
【ドライブ】
ゴールデンウイークのある日。
礼子のミニバンが自宅前に止まった。今から家族5人と礼子でドライブに出かけるのだ。セッティングしたのはもちろん真梨子である。卓也とフィアンセは現地で合流することになっている。(礼子が落ち着き、卓也とフィアンセはやっと二人だけの時間を持てるようになったそうだ)
「すごーい、このミニバン、外車じゃん」結奈と若奈は感激している。
 
太郎は、1年ぶりに運転席に座る。太郎の右側、助手席に座ったのはユウタ。礼子に対し、まだまだ遠慮というか、わだかまりが残っているようだ。
2列目には結奈と若奈。やはり、礼子に対する抵抗感から助手席希望だったが、ユウタとの助手席争奪戦に敗れた。
3列目には真梨子と礼子が並んで座る。
 
最初、結奈と若奈は運転席の方に身を乗り出して、太郎たちとしゃべっていたが、気が付くと後ろの礼子としゃべっていた。
礼子は、親の転勤に伴って海外で暮らしていた時の話を始め、結奈と若奈がそれに食いついている。通訳をしているから、話も上手だ。まあ、みんな仲良くしてくれればいいか。太郎は、ゲームをしているユウタに目配りしながらそう思った。
 

【家を出る前のエピソード】
車に乗りこむ前、庭でこんなやりとりがあった。
「あれ、礼子。随分あっさりとした服を着ているじゃないか」
礼子の服は、ジーンズとチュニックのワンピースで、スーパーで見たことがあるもの。いつもはブランド品で身を固めているのに。
「あのね、太郎」
「ん??」
「最近、太ってきて、昔の服が着れなくなっちゃった」
「太ったの??」
「うん、やっと離婚交渉が成立しそうの。それで気が抜けちゃった。」
難題が解決して、礼子の顔は少し丸くなり、顔の血色も良くなっている。
鬼山の実家は財産家であり、負債を引き受けることはなかったが、離婚交渉を早く進めるため、財産分与にはこだわらず、わずかな慰謝料だけで良しとしたそうだ。
昔のブランド服は、古着屋に叩き売っている一方、新しい服は、スーパーや通販とかで探しているという。仕事は今までの半分に減って、何とか食べることは出来るが、ブランド品を買う余裕はないらしい。
 
「礼子、似合うよ」(ブランド品じゃなくても似合うと言う意味で)
「ちょっとぉ、私は??」と真梨子が割って入る。
「却下っ」
「ひどい!!」
「真梨子、お前、鏡、見て来いよ。なんていうひどい格好してるんだよ。」
「ああっ、またやっちゃった。ごめーん」
濃緑色のプリーツスカートに、紫色のキャミソール、茶色のカーディガンを着た真梨子は、家の中に駆け込んで行った。
状態のいい服を手当たり次第に着るという貧乏時代の癖が、真梨子母娘は まだ直っていない。時々注意してあげないと。
 
「ねえ、太郎」
「ん??」
「離婚した後・・・・・あなたの姓を名乗るけど いいかしら??」
「『鬼山』が嫌なのは分かるけど、独身の頃の姓だとまずいの??」
(確かに、通訳としての便宜上 礼子は再婚禁止期間、戸籍上は太郎の姓のままでいたが、家庭裁判所に審判を申し立てれば戻せるかと思ったので)
 
「審判がめんどくさいのもあるけど、それよりもあなたが・・・・好きだから。せめてあなたの姓を名乗りたいの」
礼子はきらきらとした瞳で太郎を見つめた。こんなきれいな瞳、つきあっている時も結婚してからも見たことがない。
おいおい、「あなたの姓を名乗りたい」って、普通はプロポーズの言葉ではないかよ・・・・・まずいぞ、この雰囲気。
「れ、礼子・・まずい…」「太郎、一度でいいから抱きしめ…」
二人は同時に声を発そうとした
 
そのとき…
「みんな〜っ、お待たせっ」
ピンクのスカート、白い長袖Tシャツに着替え直した真梨子が、バストをぶるぶると揺らしながらこちらに駆けてきた。

出典:解説↓
リンク:http://moemoe.mydns.jp/cbbs/cbbs.cgi?mode=one&namber=712&type=663&space=30&no=0
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