俺が中学に上がる前だから、もう大昔の話。 地元の小学校で開かれた地区の運動会に参加した時のことだ。 お昼どき、ご近所の親子何組かで運動場の隅に集まって、弁当を食べた。 うちの母は仲良しの奥さんたちとお喋り。俺は餓鬼どもの遊び相手をしてた。 餓鬼の中に「ヨシオ君」という男の子がいた。当時小学1年生くらい。 普段からひょうきんで愉快だが、ちょっと度が過ぎてる感じもする子だった。 場所をわきまえずおどけた言動を連発して、何が何でも受けを狙うタイプだ。 頭が弱いわけじゃないと思うが、今なら何かの障害に分類されてたかもしれない。 その日もヨシオ君は、お笑い芸人のギャグをまねたり、ヘン顔を披露したり。 運動会の雰囲気に気が高ぶったらしく、普段よりテンションが上がり気味だった。 しまいには何を思ったか、いきなり仰向けに寝ると、両脚をM字に広げて叫んだ。 「昨日のお母さんのマネ〜」 その体勢で手脚を激しく震わせ、「あっ!あっ!あっ!あぁ〜っ!」と始める。 背中を弓なりに反らせ、白目を剥いて顔を左右に振る迫真の演技ってやつだ。 俺は一応、何をまねてるか分かったから、心の中で『うわああぁ』と思った。 うちの母や他の奥さんたちは、ギョッとした表情で言葉を失った。 他の餓鬼どもは単に「愉快な仕草」と受け止め、キャッキャと喜んでた。 ヨシオ君を中心に半径数メートル、ものすごく変な空気が流れた。と、その時… ゴツッ!★☆ 漫画じゃないが、本当にそんな音がしたように思う。 頭を押さえてうずくまるヨシオ君の横で、ヨシオ君のママが拳を握り締めてた。 「もうっw この子ったら、いやねえw」 必死で笑顔らしきものを作るが、口元は引きつり目は怒りに燃えてる。 可愛らしい感じの美人だけに、張り付いた笑顔が般若みたいで、むしろ怖かった。 その場にいたのは、うちの母を含め中産階級のそれなりに上品な奥様たちだ。 しかも、ヨシオ君のママは子供と真逆で、普段から口数が少なくおとなしい。 怒りの大きさが容易に察せられたのか、鉄拳制裁を咎める雰囲気じゃなかった。 『あの優しいママも、子供を殴ったりするんだ…』 子供で最年長という立場上、俺は泣きじゃくるヨシオ君を連れ、その場を離れた。 餓鬼どもはかなりショックを受けたらしく、硬直した表情で俺たちを見送った。 母たちはこわばった笑顔で「おほほ」「子供って、や〜ねえ」とお喋りを再開した。 ヨシオ君のパパが2カ月前から外国で単身赴任中なのは、近所じゃみんな知ってた。 なのにその後も、ヨシオ君の行動で揉め事が起きたって話は聞かない。 ご近所奥様の結束って案外強いんだなー、と子供心にちょっと感心した。 ヨシオ君の頭にはコブができてた。グーで思いっきり殴られたようだ。 なぜ制裁を受けたか理解できてないらしく、泣き止まない彼の頭を撫でながら、 俺は昨日抱いたヨシオ君ママの柔らかな体を思い出してた。 出典:トラウマになった子供時代の思い出 リンク:年代別掲示板(30代) |
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