名探偵コナン 完結編[其七] (ジャンル未設定) 13745回

2011/08/11 10:49┃登録者:えっちな名無しさん◆p2P0m7XM┃作者:名無しの作者
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真悟が先に眼を覚まし、まだ熟睡している美薗を起さないように、
そっとベッドを抜け出してリビングに入ると、有子の姿はなかった。
時計を見ると、まだ6時半だ。

真「また、大浴場にでも行ったのか・・・」

テーブルの上には、新聞がニ紙、手書きのメモと一緒にチケットが
2枚置かれている。
メモを拾い上げて読んでみると、有子の筆跡で何か書いてあった。

『母さんは、友達に会いに行って来ます。
 夕食時間には帰って来ます。(たぶん)
 朝食は、朝食券を使って、一階の和食の
 お店で食べてね。
 買い物をしたり、外出しても構わないけど、
 事故には気をつけて。
              有子   』

『ほんとに、のんびりとしてられねえ性格だよな』と、自分のことを
棚に上げて、ぶつぶつ言いながら新聞を広げた。
有希子の性格がそのまま新一に受け継がれていることを、本人は
自覚していないらしい。
新聞を見ると、いきなり『関西が誇る高校生探偵・服部平次君 また
お手柄』の見出しが躍っていた。

真「ハハ、相変わらず派手に動いてやがるぜ」

一紙を手に取り、本文を読み進めていくと、服部本人のコメントが
載っていた。
『西の服部と東の工藤が組んだら、完全犯罪や迷宮入りの
 事件なんか日本では起こさせない。今頃、工藤は国外の
 事件を追っているようだが、帰国して俺と組んだら最強
 のコンビになる』

真「オイオイ、こっちの深刻さも知らねえで・・・。
  まだ早えけど、連絡しておくか。
  メールなら構わねえだろ」

真悟は、服部に宛てて『今、京都に居る。今日、会えねえか?』と
メールを打った。
そのまま新聞を読んでいたら、メールの着信が入った。
『やけに早い返信だな』と思ったら、有子からだった。
『いろいろとお金も必要だろうから、あなたと美薗ちゃんに現金を
 置いて来たから、金庫を見てね。他の人に見られるとまずいから、
 メモには書いておかなかったから』と、あった。
『ありがたい。母さん感謝!』と思いつつ、金庫を開けると、大きめ
の封筒が二つ。『真悟様』『美薗様』と書かれている。
自分の封筒の中身を確認すると、和紙の札入れの中に、20万円が
入っていた。
『多過ぎだっちゅうゆの!』と思ったが、何しろ緊急事態の渦中に
いる。何があるか、どういう急な出費が要ることになるかは分から
ない。
全てをカードで賄えるわけではないし、纏まった現金は必要だろう。
美薗の封筒も一緒に金庫から出した。

洗顔をして着替え、テレビを点けたら、美薗が起きてきた。

美「おはよ。ごめん、随分ゆっくり寝ちゃった」

真「昨日、遅かったからな。
  それに、コナンの時、俺もそうだったけど、子どもに戻ると、
  睡眠を多くとらねえと、体がもたねえだろ?」

美「うん。子どもは寝てる間に成長するからね。
  『寝る子は育つ』って言うけど、あれは本当のことだから。
  特に中学生くらいの男の子って、寝ている間に、骨が軋む
  『ミシミシ』という音を立てながら、数センチも伸びるこが
  あるのよ」

真「そうらしいな。牛乳をガバガバ飲んでも、十分に睡眠を取ら
  ねえと、期待したほど背は伸びねえのかもな。
  それに、頭の整理も寝てる間にやってるらしいから、睡眠
  時間が短けえと、記憶が断片化しちまう」

美「生理学上は、その通りね。日中は、陽にあたることも大事よ。
  ま、身長は遺伝的要素も大きいんだけどね。
  そういえば、お母さんは?」

真「起きてきた時は、出掛けてた」

話しながら美薗も歯を磨き、着替えを済ませた。

真「母さんが朝食のチケットを置いてってくれたから、喰いに
  いこうぜ。
  それと、俺とおめえに当面の小遣いだってよ」

真悟が美薗に封筒を渡そうとすると、美薗は驚いて、「そんな、
受け取れないわ」と、手を出そうとしない。

真「これから、ここに篭り切りになっているわけにもいかねえし、
  外に出れば何があるか分からねえから、ある程度の現金は
  必要だって。
  母さんだって『自分の娘も同然だ』って言ってたろ。
  貰っとけよ」

それでも美薗は遠慮していたが、真悟が美薗の手を取って、
強引に預けた。

美「いいの?・・・」

真「メガネやサングラスも必要だし、服も一着を着たきりって
  わけにはいかねえんだから」

美薗が封筒の中、更に和紙の札入れを覗くと、10万円が入って
いた。真悟の半額にしたのは、同額では美薗が受け取りにくい
だろうという、有子なりの配慮だった。

美「こんなに?・・・やっぱり駄目よ」

真「俺には20万円だったぜ。確かに多すぎるけど、母さんの
  金銭感覚がどうこうじゃなくて、緊急時対応用ということだろ。
  これから一週間、ジョディからの連絡を待って、連絡があれ
  ば何を差し置いてでも指示された場所に行かなきゃいけねえ
  わけだから、いざという時に金がなくて動けない、準備が
  出来ないじゃ、何にもならねえって。
  持っていた方がいい」

美薗は暫く考えていたが、別に遣ってしまえと言っているわけでは
ないし、どうしても必要な分以外は、お返しすればいいわねと思い、
受け取ることにした。

二人で朝食を摂りに行っている間に、服部から着信があった。
メールではなく、電話を寄越した。

服『なんや、工藤。京都におったんかい。
  京都のどこや? すぐに単車転がして行ったるさかい』

真悟は、美薗に『ちょっと悪いな』と手で合図して、ひと気のない
方に移動し、手で受話器を覆うようにして、声のトーンを落とした。

真「いや、午前中はいろいろと立て込んでてな。
  2時頃はどうだ?」

服『何や、また事件なんか?』

工藤が声のトーンを落としたことで、事件を追っているのかと思った
らしい。服部の声は、無遠慮に大きい。

真「そうじゃねえよ。
  たぶん、会ったら驚くから先に言っとくけどな。
  俺、昨日から中学生の頃の体になっちまったんだよ」

服『何、阿呆なこと言うとんねん。
  高校生の工藤に戻っとんのやろ?
  また例の薬、つこうたんか。
  って、ことは、蘭ちゃんも一緒か?』

真「そうじゃねえって! 一緒に居るのは、
  小学校5年生の灰原だ」

服『なんやて?ちっさい姉ちゃんも薬飲んだんか?』

真「ちょっとややこしいから、メールにする。
  一旦、切るぞ」

真悟は、美薗の席の隣に戻って、ことの顛末を簡潔に纏めて、
メールを送った。
勿論、『実験』のことは明かさず、ジョディに打ち明けた時と同じよう
に、有希子の知恵を拝借して、毒薬の副作用が薄れて来たらしい
ということにした。

服部は、概ね理解はしたらしいが、
『ほなら、本来の工藤に戻れるのも近いんとちゃうか?』と、
ある意味、尤もな期待を込めたコメントを返してきた。
真悟は、「多分、それはない」と否定し、今自分は、「星真悟」という
中学生であり、灰原はその妹で、小5の「美薗」と名乗っているから、
呉々も本名や「コナン」「灰原」の呼び方をしないようにと念を押した。
外出先で会おうかとも思ったが、地声が大きく、空気の読めない
服部が相手では、周囲に話が丸聞こえになりそうだと考え直し、
滞在している旅館名を告げて、2時にここに来て貰うことにした。
『来るときに、和葉ちゃんも一緒に連れて来れないか?』と訊いて
みた。
『何でや?』と、当然の疑問を返してきたが、『二人だけで話したい。
和葉ちゃんに美薗を買物にでも連れだして欲しい』と頼んだら、
了解してくれた。
服部と話をすれば、『蘭ちゃんは、どないすんねん』としつこく訊いて
来るのは眼に見えている。美薗にそういう話を聞かせたくなかった。
和葉には、自分たちのことを明かすわけにはいかないから、「阿笠
博士の従弟の子どもたち」だと言うことにして貰った。

美薗には、服部が和葉を連れて来ることを伝え、真悟と服部が話を
している間、和葉にはその話を聞かれてはまずいので、一緒に買物
にでも行ってあげてくれと言った。

真「自分の洋服でも買って来るといいよ」

美「じゃあ、そうしようかな♪」

灰原になってしまってから、これまで、自分の欲しい洋服を買う楽し
みなどなかった美薗は、やはり嬉しいらしい。
和食レストランの中をそれとなく見回すと、少なくとも2人、FBIの
ガード役らしき人物がいる。
二人が外出すれば、どちらかが美薗をつけて行くだろう。何事かが
起きれば、彼らが助けるだろうから、安心して送り出せそうだと、
真悟は思った。

二人は、お昼に阿笠博士に渡す、元太たちへのメッセージを書いた。
真悟は、どのメッセージにも『かならず、灰原はなおると信じている
から』ということを強調し、『でも、灰原がさびしがっちゃうから、みん
なのかわりに、ぼくがついていてあげる』。だから、早く移植手術が
受けることができて、灰原が元気になれるように祈っていてねと。

美薗は、筆跡が力が出なくて震えるように見せるため、態と左手で
メッセージを書いた。
『きゅうにいなくなっちゃうけど、ごめんね。さびしくなるけど、
コナン君がついていてくれるから、こわくはないよ。きっと元気に
なってかえるから、またあそぼうね』

メッセージを書き終えた二人は、阿笠博士が旅館に寄る昼までに、
京都駅近くまで電車に乗って行き、眼鏡を買いに出掛けた。
真悟は、暗い時でも伊達眼鏡として掛けていられるように、黒の
偏光サングラスにした。美薗は、淡くて薄い青色の眼鏡を購入した。
二人とも、度を入れるわけではないので、ファッショングラスの
コーナーの既製品をそのまま購入できた。

昼は、阿笠博士を待ってメッセージカードを渡した後、一緒に食事を
した。
二人は、「明日は、宜しくお願いします」と、博士に土産を渡して
別れた。これが、日本を離れる前の最後の別れになることはある
まいと、あまり感傷的になることもなく、この後のことを考えて少し
緊張気味の博士を二人で励ました。

博士を送り出した二人は、そのまま、1Fのロビーの応接椅子に
座り、服部達が来るのを待った。
2時10分前、モトクロス仕様の独特のエギゾーストノートが近付いて
来た。kawasaki KX250Fが、正面玄関前に止められた。
純正の座席シ−トは2人乗りに不向きな為、二人乗り用のシート
が被せられていたが、スペースが狭く、後ろに乗る和葉は、ライダー
である服部より少し高い位置から、ぴったりと体をくっつけるように
してしがみついていた。
真悟と美薗が入口まで出て出迎えた。
初対面の設定であるが、服部は真悟に気付くと、やけに親しげに
話し掛けて来た。4人がお互いに挨拶を交わす。
真悟は、偏光グラスをかけていた。
和葉が、「あれ、平次は会ったことあるん?」と訊いて来た。

服「いや、初対面やけど、阿笠博士から二人のこと聞かされてたし
  なあ、、宜しゅう頼むと言われてたさかい、なんや親しみが湧く
  んや」

和「ふーん。なんか真悟君て、誰かに似てへん?
  雰囲気が・・・」

服「まあ、誰かて似てる奴はおるんちゃうか?」

真悟と美穂は、当初打ち合わせていた通り、兄妹で、イギリスに
在住しているという設定は、そのまま踏襲していた。
真悟は、和葉に「妹の服の買物、連れて行って貰えるそうで、
ありがとう。美薗も日本で服を買うのは初めてなんで、宜しく
アドバイスお願いします」と、礼を言い、「ママが、妹を見てくれる
子もお買い物ができるようにお渡しいなさいと、お金をくれたので、
遣って下さい」と、封筒に入った2万円を渡した。

和「そんなん、ええがな」

和葉は、受け取ろうとしなかったが、真悟が「受け取って貰えない
と、僕が怒れられる」と、困った顔をして見せ、押し問答が続いて
は面倒だと思った服部が「せっかくの御好意やさけ、もらっとき」
と助け船を出したので、和葉も「済まんなあ」と」受け取り、バッグ
にしまった。この時はまさか、2万円も入っているとは思わなかった。

和葉と美薗は、すぐに旧知の仲のように打ち解けて、キャッキャと
騒がしく駅に向かった。
服部は、バイクを指定のパーキングに止めながら真悟に言った。

服「あのちっさい姉さん、あんなに陽気やったか?」

真「今回のことで、何かふっきれたのかも知れねえな・・・」

真悟は服部を部屋に招き、自分たちが今どういう状況にあり、
これからどうなるのかを話した。
服部は、真悟と美薗の置かれている現状については、我がことの
ように辛そうな顔をした。オーストラリアに行ってしまえば、二人は
守られるのかも知れないが、自由な生活が保障されるわけでは
ない。むしろ、閉ざされた空間に、二人が支え合って生きることに、
甘んじなければいけなくなるだろう。
服部は、新一に会う事はおろか、声を聞くとさえ難しくなる。
そして、やはり・・・「蘭さんは、どないすんねん?」と訊いて来た。

真「それは、今更どうしようもない。
  もう新一に戻って、いざという時には蘭に会う事も出来なくなるし、
  携帯を使い、変性機を使っての連絡すら出来なくなる。
  近いうちに、欧米で高校生らしき身元不明者の遺体があがれば、
  その遺体を工藤新一のものとして、事故か事件に巻き込まれて
  死んだものとして処理される手はずになってる」

服「工藤新一の存在を、この世から抹殺するってことか。
  そこまでせんと、あかんのか・・・」

真「ああ、そうだ。
  黒の組織に『工藤新一は死んだ』と確信を持たせ、コナンも灰原
  と一緒にアメリカに渡る。
  工藤新一はこの世にいなくなり、江戸川コナンも灰原哀も、既に
  日本にはいない。
  奴らのターゲットをこの日本から消すことで、これまで関わって
  来て、巻き添えを食うかも知れない人達の安全を確保しなけれ
  ばいけない。
  俺たちだけ、安全な場所に逃げてるわけにはいかねえんだよ。
  皆を守れる状況を作る。それは、蘭に対しても。
  工藤新一やコナンがいつまでも蘭に纏わりついていては、蘭を
  危険な状況に追い詰めることになる。
  俺が死んだことにするためには、未だに蘭と連絡を取り合って
  いては、時系列的におかしなことになりかねない。
  だから昨日、蘭と新一が連絡を取り合うための携帯を折った。
  そして、穴を開け、ジョディに預けて処分してもらった」

服「そうなんか・・・。
  この一年近く、逢いたい、追いかけたい気持を健気に、気丈に
  耐えて来たっちゅうのに、結局、報われないんか・・・。
  でも、お前らがそこまでして身を隠すのは、ただ逃げるためや
  あらへんのやろ?
  黒の組織とかっちゅうのんを壊滅させるためちゃうんか?
  だったら、目的が達成されさえすりゃ、工藤新一は生きてました
  いうて、また戻ればええんやないんか?」

真「蘭との間の4歳の差、本来の工藤新一と今の俺のギャップは、
  何年経とうと、もう埋めようがない。
  高校も、とっくに留年確定だしな・・・ハハ。
  何よりも、俺が別の人間として生まれ変わるためにプロファイル
  を提供してくれる人や、その家族に申し訳ないじゃねえか」

服「そんなら、工藤はこの先、身を隠す必要がのうなっても、あの
  小っさい姉さんと一緒に生きて行くんか?」

真「それは、分からねえよ。
  身を隠していなきゃいけねえ間は、俺は灰原の側にいて守って
  やらなきゃいけない。それは、どんなことがあっても、そうすると
  決めたことだ。
  そして、俺の体がこのまま安定してくれるかどうか・・・1年位は
  経過を観察する必要がある。
  いざという時、俺が頼れるのは、灰原しかいねえんだよ。
  だけど、機が熟し、そのお互いの枷が取れた時・・・あいつの
  パートナーとしては、俺は相応しくねえような気がする。
  半端じゃねえぞ、あいつの頭脳は。俺なんかと一緒にいるのは、
  俺に気兼ねするのは、あまりにも勿体ない。

服「でも、今は間違いなくお前に惚れてるよな? あの姉さんは」

真「それは・・・そうなのかも知れねえな」
 「幼馴染で、初恋で、両想いで・・・。
  そういうカップル自体が稀なことで。
  それでも、どちらかが心変わりで離れていくことなんざ 珍しくも
  ねえ。
  たとえ、双方が想いを貫けたとしても、いずれかが病気や事故で
  死んじまうことも少なくない。
  お互いに好きなのに、いろいろな事情で引き離されちまう。
  そういうことも、けして珍しいことじゃねえ。
  俺と蘭も、そういう多くのカップルの一つだってだけだ」

服「・・・分かってはいても・・・釈然とせん・・・がな」
  
服部は、工藤と蘭のこと、コナンと灰原(志保)のことに、自分と
和葉のことを重ね合わせ、複雑な思いに駆られていた。

真「バタフライ効果って、知ってんだろ?」
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%90%E3%82%BF%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E5%8A%B9%E6%9E%9C

服「後に学術的に認められて、『初期値過敏性の法則』と呼ばれる
  ようになったんやったな」
http://www.goodluck-mylife.jp/article/13969871.html

真「黒の組織のボスも、初めは不治の病にでもなって、絶望から
  脱け出す為に、自分が不死身の存在になれないものかと考えた。
  そういう極めて個人的で不可能な妄想を抱いたものの、幸か
  不幸か、資産と地位を握っていた。
  そいつは、そういう即物的なものに縋って人を動かし、不老不死
  の妙薬を手にいれようと考えた。
  当然、そんなものが、そう簡単に作れるもんじゃねえ。
  年数を重ね、医療技術の進歩で、病の進行を遅らせることは
  出来たが、不死の欲は消えたわけじゃなく、執拗に追求し続け、
  その研究のために、人材を集める。
  更に組織は肥大化し、肥大化した組織を維持するためには無限
  に資金が必要になり、犯罪にも手を染め始めた。
  組織の実態は、そんなところなんじゃねえのかな」

服「それは、容易に想像できるな」

真「俺も、興味本位でそいつらのひとつの事件に深入りし過ぎた。
  本来は、そこで毒薬を飲まされて死んでいた。
  ひとりの高校生が、疲労からか、急性の全身衰弱で死んだ。
  それで終わる筈だった。
  それが、何かの間違いで、体が幼児化して生き延びちまった。
  その結果、多くの人を危険に巻き込み、今や世界的なテロだの、
  日米豪の国家間の重大機密作戦だのの、重要な当事者になっち
  まってる」

服「どんな大事件でも、たった一人の偶然の思いつきや、些細な
  興味本位から始まるちゅうことやな」

真「その通りだ。
  原子の動きが止まる極低温を絶対零度と定めたわけだが、
  実際には原子の動きが止まることはねえし、あり得ねえ。
  原子の動きが止まることは、その空間の放出エネルギーが
  無になることを意味する。
  それはない。時空のバランスが崩れる。
  つまり、人間の観察上では、絶対零度になれば原子の動きが
  止まっているように見えるというだけだな」

       ※絶対零度:華氏0度=摂氏-273.15度

服「言うてることは分かるけど・・・・、
  なんや、話が飛躍して来てへんか?」

真「まあ、聞け。
  灰原の話の受け売りだが、量子力学上、ある素粒子を運動して
  いない状態で観察することはできないそうだ。
  常にいずれかの方向に空間を移動している素粒子の、ある一瞬の
  位置が観察できた時、次の瞬間にその素粒子がどこに移動して
  いるかは、確率でしか予測できない。
  aという地点に存在している可能性が60%、bという地点に存在
  している可能性が20%、全く別のどこかに存在している可能性が
  20%というような表現しかできねえんだと。
  更に、ある時空で素粒子と反粒子とが衝突すれば、双方が対消滅
  してしまうことになる」

服「・・・」

真「量子学の理論上は、この旅館のほかの部屋と区切られた分厚い
  壁を、誰かが或は何かの物質が、何のトリックもなく、お互いに
  破壊されずにすり抜けてしまう可能性も『ゼロ』ではない。
  確率的には、この広大な宇宙空間の特定の一地点で、そういう
  ことが起きているかも知れないという、天文学的に微小な確率
  だが、確率が『ゼロ』でない以上、今、目の前で起きてもおかしく
  はない」

服「理論上は、そうなんやろな」

真「結局はな、この世の中に『絶対』なんてことは存在しねえんだ。
  今、当たり前だと思っていることや、明日はこうしているだろう
  なんて思い込んでいる『普通の現象』、『普通の日常』も単なる
  確率の問題でしかねえんだよ。
  人間ごときに、『こうだ』と確定することなんて、不可能なんだ。
  明確なことは、昨日から今日、今日から明日へ、一瞬も停滞する
  ことなく、全てが変化しているということ」

服「工藤や小っさい姉さんの境遇も、その確率の範囲内ってことを
  言いたいんか」

真「そういうことさ。俺と蘭の関係もそうだ。俺とお前の関係もそうだ。
  灰原が言ってたよ。『普通の生活が、どれだけ大事なことなのかっ
  て、つくづく思う』ってな。全く同感だ。
  だからこそ、服部・・・」

服「俺と工藤の関係もどうなるか分からんてか・・・」

真「そうじゃねえよ。
  だからこそ、和葉ちゃんを大事にしてやれ。
  和葉ちゃんとのことは、いつかどうにか、はっきりさせる時が
  来るじゃなくて、今、きっちりとお前の想いを伝えておけ。
  そうでなきゃ、後悔する時が来るかも知れねえぞ。
  どうせ一生、一緒に生きて行く。
  それが当然だと思ってんだろ?」
  
服「それは・・・そうやが・・・」

真「今まで言ってきたように、『当然』なんてんもんは、思い込みに
  過ぎねえ。時間の経過とともに、期待なんてのは儚いもんだと、
  思いい知るされることになりかねない。
  だったら、さっさと抱いてやったらどうだ?
  お互いにおかしくはねえ歳だし、遊びで付き合ってるわけじゃ
  ねえんなら、いいじゃねえか。
  両家の親も公認なんだし、和葉ちゃんが『結婚するまでは』
  なんて思ってんなら別だけど、俺にはそうは見えねえけどな。
  子どもを作らないようにさえ気をつければ、いいと思うぜ」

服部は、新一の置かれている状況や今後のこと、なぜ今こんな状況
に追い込まれなければいけなかったのか、関わってきた人達との
関係性などについて聞かされ、憤ったり、感心したり、辛くなったり、
同意したり、不安になったり、悲しかったり・・・と、実に様々な思いと
表情を浮かべたが、日本における諸外国の諜報活動や日本政府や
公安の動きについては、驚くわけでもなく、実に平然としていた。

服部は、父であり、大阪府警本部長である服部平蔵から、
http://conan.aga-search.com/501-4-31heizo.html
戦後日本の警察捜査の現状や検察庁の内部抗争の歴史、国策捜査
や公安の動きなどを聞いており、興味を持った事柄については、個人
的にもいろいろと探っていた。
それらのことを彼は、新一に話して聞かせた。
 
自分たちが生まれる前の日本で起きた数々の事件」の真相を探って
みれば、日本はスパイ天国であることが分かるし、戦後間もない頃
から1960年代にかけて、日本の公安が反日・反米勢力や活動家に
眼を光らせ、凶悪事犯に対しては、強引な誤認逮捕や意図的な
でっち上げまで警察や検察に指示して来ているのは明らかだと言う。
米国をはじめとする西側諸国から日本政府への働き掛けや資金提供
の主な目的は端的に言えば「レッドパージ」であり、逆に日本共産党
や社会党は、ソ連から資金的な援助を受け、共産党と社会党極左勢
力は日本国内における「暴力革命」を公然と標榜してもいた。
自衛隊の軍事機密が、ソ連のスパイに流されていたという事実が
明らかになった事件もあった。
韓国からのスパイ事件としては、金大中事件が有名である。
1973年8月8日、大韓民国(韓国)の政治家で、のちに大統領となる
金大中が、韓国中央情報部(KCIA)により日本の東京都千代田区の
ホテルグランドパレス2212号室から拉致され、ソウルで軟禁状態に
置かれ、5日後ソウル市内の自宅前で発見された事件。
北朝鮮の日本人拉致事件などは今尚、その全容が解明されていない。
おそらく、日本で活動する各国のスパイの数は、戦後から1960年代
にかけては、数万人規模と見積れるし、今なお、帰化人を含めて、
数千人はいるだろう。
それに対して、日本が諸外国に送り込むスパイは、先端技術を担う
企業=たとえばアメリカのシリコンバレーに拠点を構えるベンチャー
企業に潜り込ませて、先端技術情報を盗もうとする企業スパイくらい
なものだろう。
(実際に、1980年代、日本の当時のトップ電機メーカーが、シリコン
バレーでの産業スパイ活動で、ベンチャー企業の機密資料を盗んだ
としてアメリカで起訴され、有罪判決を受け、日本に強制送還されて
いる)
日本は国家機構としてのスパイ活動や工作には殆ど手を染めていな
い。それは、諸外国から送り込まれて工作活動をしているスパイに、
どう対応すべきかのノウハウも持たないということでもある。
だから、テロ支援組織として黒の組織が浮上しているのであれば、
アメリカだけで数百人規模の捜査員や工作員を日本に送り込んで
来ていても、何もおかしくはないし、日本は手も足も出せないだろう。

戦後の日本の検察機構も、戦前の検察幹部の生き残りで、かなり
右に偏った人物を中心とする守旧勢力と、民主国家に相応しいリベラ
ルな思想信条を持って台頭してきた新興勢力が、主導権争いに凌ぎ
を削ってきた。
国策捜査で暗躍し、力を発揮したのは、公安と手を組んだ生き残り組
の守旧勢力である。

「結局」と服部は言う。
警察や検察、更には公安など、国の治安を守る国家機構は、その名
の通り「国家を守る」「国益を守る」ために存在するのであり、「国民
のために働く」組織ではない。
「国民の為に働くことが、国益に繋がる」という状況にあれば、国民
から見て、彼らが日本国民のために汗を流しているように錯覚して
しまっているだけだ。
それは、日本に限らず、どの国もそうだと、服部は言いきった。
但し、「国家や地方自治体に忠実」が当てはまるのは、キャリア官僚
組ではある。
末端の警察官や公務員は、至ってまじめに、国民の方を向いて、誇り
を持って仕事をしている者が多いことも事実だ。
「だから、俺は親父のようにキャリア警察官を目指したいとは思わん」。
あくまでもフリーで中立な立場で事件に関わりたい。
そうでなければ、真実が見えて来ない。

そういう現実があればこそ、アメリカの国益にとって、新一や灰原が
邪魔な存在になれば、日米政府はいつでも二人を見捨てるだろうと、
服部は心配した。

服「この先、今持っている携帯や通信手段は、全て使えなくなり、
  新たに成り済ます人物の物として、パソコンや携帯を持つこと
  になるんやろうけど、俺との通信手段は切らさんようにしとって
  くれんか。
  工藤たちの通信記録は、検閲されるかも分からんけど、二人に
  何事かが起きた時は、暗号をつこうてでもええから、そのことを
  必ず俺に知らせてくれ。
  どんな手段をつこうてでも、助けに行くよってに」

二人の話は尽きなかった。
既に3時間以上話し込んでいたが、急に部屋の扉が開かれ、賑やか
な話声が聞こえて来た。
和葉と美薗が戻ってきた。

真悟と服部が「お帰り」と、戻ってきた二人を見ると、和葉の脇には、
可愛らしい女の子が立っていた。
髪には、シルバーを中心に何色かのビーズが埋め込まれた華やかな
カチューシャが付けられている。
紺のTシャツの上に、薄いピンクのボヘミアンブラウス、スカートは
ピンク地の入ったラメチェックのフリルスカートという出で立ちだった。
勿論、美薗である。

真悟と服部は、しばし呆然としていたが、はにかんだ美薗の手を引い
て、和葉が二人の座っていたリビングのすぐ側まで連れて来た。

和「ジャーン!どうやぁ。美薗ちゃん可愛いやろ?」

真「これは・・・可愛すぎる・・・」

服「ほんまや・・・。まさに、馬子にもい<<スパーンッ>>ってぇ!」
和葉に後頭部をひっぱたかれた。

和「なぁ。ゆうたとおりやん。
  おでこ出したんも正解やろ?
  ほんまは、もっと髪が長かったら、ポニーテールにしたいとこ
  やけど、これから伸ばした方がええと思うで」

美薗は、少し顔を赤らめていた。
まるで、自分のキャラじゃないんだけど・・・と言いたそうに。

服部たちは翌日には学校がある。
話したいことは尽きなかったが、帰ることにした。
真悟と美薗も、ロビーから外に出て服部と和葉を送り出した。
真悟の携帯に有子から着信があり、『今晩、お友達数人とパーティー
をするから、遅くなる。夕食は、フロントでオーダーしてね』とあった。
フロントで、夕食を7時に部屋まで運んで貰うように依頼して部屋に
戻った。

真悟は、リビングのソファに座り、改めて美薗をまじまじと見詰め、
あまりの可愛さに、膝の上に向かい合わせに抱っこしてあげた。
これまでの灰原の地味で大人びたイメージから、小学校5年生に
相応しい、まさに少女の可愛さになっていた。

真「これは、どこのお嬢様だ?」

美「私じゃないみたい・・・でしょ?」

そのまま美薗から抱きつき、真悟にキスをした。
真悟も倒錯した性衝動に駆られ、Tシャツの中に手を入れ、膨らみかけ
の扁平なバストをさすり、乳首を人差し指と中指の間に挟んで転がす。
未発達のバストではあっても、美薗はゾクッとした感覚を得て、真悟の
口を貪る。
真悟は一旦、美薗を自分の腿の上から下ろして、目の前に立たせ、
全身を眺めた。そのまま上から下まで両手でなぞり、お尻を撫でた手を
太腿に回し、フリルの入った短いスカートの中に手を差しこみ、お尻の
方からパンツを下げて行った。
上から捲れて裏返しになったパンツを膝下まで下ろすと、美薗は真悟の
肩に手を置いて、足を内股気味に折り曲げながら、脱ぎ去った。

真悟は、美薗を立たせたままスカートのなかに頭を突っ込み、割れ目に
舌を這わせる。
割れ目の上端から下になぞり、突起を強めに舌先で弾くと、美薗が、
「ハンッ」と可愛い声を出し、膝がガクっと折れた。
真悟は、美薗の腰を手でガッチリと押さえながら、陰裂に吸いつき、
舌で舐め回す。
美薗は、膝の震えが収まらず、全身の力も抜けて、立っていられなく
なった。

美「ハッ・・アンッ・ア・ア・・だめ、立って・・ン・ハァッ・・られない」

真悟の前に崩れ落ちた。
美薗の陰部もそうだが、真悟の口周辺もビチョビチョになっている。
美薗は「ヤダァ」と言いながら、手で真悟の口を拭い、「しよ♪」と
言った。
真悟も自分のジーンズをもどかしそうに脱ぎ捨て、ソファの端に置いて
あったバッグからコンドームを取り出した。
美薗は、まだ初潮は先だとは言っていたが、普通に過ごし、成長して
いた以前のままに成長するとは限らない。いつ、急激な成長のスイッチ
が入ってしまうか分からないところがある。
美薗を妊娠させるわけにはいかなかった。
いろいろな意味で・・・。
それに、事後の始末もコンドームをつけた方が楽だろうと、午前中に
二人で眼鏡を買いに行った時に調達してきていた。

真悟も初めて使うコンドームの被せ方にちょっと戸惑っていたが、
美薗が慣れた手つきで、包皮を剥き、被せてあげた。
小学生の女の子が、中学生の男の子のチンチンにコンドームを被せる
という絵は、非日常の倒錯した世界だった。
美薗は、衣服を脱ごうとしたが、真悟が「そのまま」と言って止めた。
真悟は、ソファに浅く腰を落とし、両手を掲げて美薗を手招きした。
また抱っこの形だが、真悟は下半身を露出し、いきり勃ったものに
コンドームが被せてあり、美薗は、パンツだけを脱いで真悟に跨って、
既に粘液でトロトロの秘部を露わにして、腰を下ろして行った。
ソファを使った体面座位である。
美薗は、後ろ手に真悟のペニスを握り、自分の膣に当てて、ゆっくりと
埋めて行く。
ペニスの先が入ったところで手を離し、真悟の肩越しに首に巻き付け、
ゆっくりと小刻みに腰を上下させながら、埋め込んで行く。

美「ンッ・・・へへ、入っちゃった」

美薗は真悟にキスをし、舌を絡める。
真悟は、美薗の尻を両手で持って、上下させ始めた。
美薗は、口を離さないまま、「ンッ・ウンッ」と小さく喘いでいたが、
もっと深い快感が欲しくなり、自ら腰を上下に振り始めた。

美「アッ・ンッ・ンッ・アッ・ア・アッ」

美薗は顔を仰け反らせ、自分の快感にのめり込んで行く。
真悟は、初体験以来、ずっと生挿入だったので、初めてのゴムの感触
に違和感もあり、少し感度が落ち、物足りなさを感じていた。
美薗が快感のなかに彷徨って半ば意識が飛んでいる中、美薗の上半身
の着衣をたくしあげ、片手ずつ抜いて、身に纏っているのは、スカート
だけにし、乳首に吸いついた。
美薗が上半身をブルブルと震わせ始めた。
絶頂が近いのかも知れない。
真悟も腰のグラインドを強める。美薗の体が激しく上下する。
美薗が、強くギュウッと真悟に抱きつき、一層激しく腰を上下と言うより
は、前後に振り出した。
クリトリスが刺激されて、快感が高まるらしい。
強く抱きつきながら、顎を仰け反らせ、ひと際大きく喘いだ。
真悟のペニスは、キュウキュウと根元が締めつけられ、奥が蠢く。
美薗が先に逝った。
真悟は力が抜けていく美薗を支えながら、腰のグラインドを速め、
最後は、美薗を真悟の体にもたれ掛けさせ、美薗の尻を激しく上下させ
ながら、放出した。
暫く、二人は重なったまま放心していた。

美「気持ち良かった・・・」

美薗は、よろよろと膝立ちになり、ゴムが外れないように真悟のペニス
を抜いて、ソファの前に跪き、酸素が足りていないのか、一呼吸してから
コンドームを外し、ティッシュの中に丸めた。
真悟は、けだるさから、なすがままにされていた。
美薗は、半勃ちで敏感になっているペニスを咥えて舐め、右手で根元
からしごきながら、残った精液を吸い取った。
余韻で敏感なときに刺激され、真悟は、「ハァアーン」と変な声を上げて
しまう。
可愛らしい「小学生の女の子」の姿と、若き天才科学者の頭脳。
そのどちらの姿にも似つかわしくない「性の快楽を知った大人の女」の
淫らさとのギャップ。
ロリコンだとは思っていなかった真悟も相当に萌え、癖になりそうだった。

美薗は、最後に自分の股間をティッシュで拭うと、先ほど丸めたゴムと
一緒にビニール袋に入れ、ベッドルームの屑かごに捨てた。

美「そろそろ、お夕食持ってきてくれる時間よ」
と、自分も着衣を整えながら、真悟にも促した。

二人が夕食を摂っている頃、服部は大阪への帰途、山間部の裏道の
ネオンが灯るところにあった自販機の前でバイクを止め、飲み物を
買った。

服「あの、さ・・・」

和「なん?」

服「お、俺、和葉のことが好きや!///」

和「えっ!?」

服「だから、俺は、和葉のこと、大好きや!!」
ひと際大きな声で言い放った。

和「///やっと・・・いうてくれた」
  「わ、私も・・・平次のこと好き!・・・やで」
  「・・・でも、何でここなん? 何で今なん?」

服「いや、どうしても言うときたかった。
  人生、何があるか分からんし」

和「ふうん・・・まあ、そやなあ」

服「でな・・・あの・・・な?」

和「???」

服「か、和葉とエッチしたい」

和「な!・・・いきなり、何言うてんねん!」

服「やっぱ、だめやろ・・・な」

和「だめ・・・ちゅうか・・・心の準備がでけてへん・・・もん」

服「・・・そやな。忘れてくれてええわ。
  ど、どれ、行こか」

和「あのな? 駄目なことあらへんけど、順番、違うとらへんか?」

服「順番?」

和葉は、服部に抱きついて、顔を上げ、目を瞑った。
さすがに、服部も躊躇なくキスをした。啄ばむような軽いキスを。
長い付き合いの二人、まだキスすらしていないし、きちんとした告白
すら初めてだった。
和葉は、抱きついたまま恨み事を言った。

和「平次を信じてはいたけどなあ、不安やったんやで。
  蘭ちゃんと新一君のこともあるし、さっき平次が言ったように、
  いつ、どうなるか分からへんから・・・。
  何年、待たせんねん!」

服「ん・・・ああ、ごめん・・・」

和「あそこの中、入てって・・・その・・・エッチするん?」

和葉は、ラブホの入り口を示す、煌々と光るネオンを指して言った。

二人は、思わぬところで、お互いに初体験を済ませることになった。
ギコチなく、思考錯誤の初体験で、和葉は勿論、初めてのセックスは
痛みの方が勝って、気持ち良さなど全く感じなかったし、服部も失敗
しないようにすることに必死だった。痛がる和葉を気遣っている内に、
何とはなしのボヤっとした快感の中で放出した。
二人とも、「セックスて、こんなもんなんか?」と言う感じだった。

和葉は、服部がコンドームを持参していたことを訝しがったが、服部は、
「真悟君からもらってん」と言うと、和葉は、「やっぱ、イギリスの子は
進んどるんやなあ」と、感心していた。
真悟は、自分で買った1ダースのうち、4個を服部に分けてやっていた。
偉そうに「男の嗜みだ」と言いながら。

時間はまだたっぷりあったので、手持無沙汰でテレビのスイッチを
入れた。
いきなり、男が女の股間を嘗め回している画面が大写しされた。

服「うわっ・・・切るか?」

和「・・・いい。見たい」

服「・・・」。 和「・・・」

服「・・・して欲しい? 前戯ていうんか?
  それ、せえへんかったから痛かったんちゃうか?」

和「・・・痛いんは、初めてやからしゃあないんちゃうの?
  ・・・でも・・・」

服「ん?・・・」

和「・・・気持ちええんかな? 汚なないか?」

服「好きな相手なら、汚なくないで」

画面は、フェラチオに変わった。かなり大きい男優の一物を、
女が口いっぱいに頬張り、ストロークしている。

和「今度は、女がチンチン銜えとお・・・。
  平次のより、だいぶ大きいで・・・」

服「そりゃ、・・・そういう男を選んどるからやろ!」

和「いや、平次のでもきっついのに、あんなん入らへんわ・・・」

服部は、画面を見ているうちに復活してきていた。
二人とも裸のままだから、和葉にも丸分かりで、「また、したい?」
「銜えてあげよか?」と言われ、「ほなら、舐めっこしよか」と、
誘った。画面は、シックスナインへと進んでいた。

和「なんちゅう格好なん? あれは恥ずかしいて・・・」

服「こういうの、先にせえへんかったから、あまり気持ち良う
  なかったんちゃう?」

和「・・・」

服部は、仰向けになり、和葉を誘った。
和葉は、少し躊躇していたが、画面を見ていると、女の方がどんどん
気持ち良くなって、男のものから口を離し、握ったまま激しく喘いで
いる。「やってみたい」という気持ちが湧いてきた。
おそるおそる、服部の顔を反対向きに跨いで来た。
ゆっくりと下ろされてきた陰部と腰。
同時に、服部のペニスに暖かい感触が走る。
服部は、降りて来た腰を両手で押さえると、陰裂を舌先で舐めた。
「ヒャンッ」と和葉が言って、腰が上がる。
服部は、また手に力を入れて腰を自分の顔に近づける。
膣の周りを舐めると、錆びた鉄の味がした。
二人は、見よう見まねと相手の反応で、初めてにしてはお互いに感じる
つぼをおさえて刺激し始めた。
服部が、和葉のクリトリスを集中的に責め始めると、和葉は、画面の
女と同じように、服部のものに集中できなくなり、顔を上げてよがり
始めた。陰裂からは、とめどなく愛液が迸る。
『もういいやろ』と、服部は和葉の下から抜け出し、急いでゴムを装着
して、後背位でいきり勃ったペニスを挿入した。
今度は、苦もなくヌルリと、和葉の中に飲み込まれていく。
服部もかなり気持が良かったが、和葉も気持がいいらしく、甲高い
喘ぎを奏でていた。

くんずほぐれつ、服部が早撃ちのせいもあったが、コンドーム4個を
使い切って、モーテルを後にした。
服部が「和葉は、逝けたんか?」と訊いたが、「んー・・・よう分からへん
けど、2回目からは、すごい気持ちええ感じだったで」と、応えた。
和葉は、これまで自慰も経験していなかったため、「逝く」という感覚が
分からなかった。


一方、真悟たちが夕食を終え、二人でそれぞれに大浴場に行き、部屋に
戻ってくると、酔っ払った有子が戻って来ていた。
有子は、部屋のバスルームを使い、化粧を落とすと、「眠い」と言って
ベッドルームに行き、さっさと寝てしまった。

真「明日が、いよいよという状況で、呑気だよな・・・」

美「でも、不安がってても仕方がないし・・・ね」

概して、いざという時は、女の方が肝が据わっているものである。
二人も、その日は早めに床に着いた。
有子が同じ部屋に寝ていても、美薗は真悟のベッドに潜り込んだが、
流石にエッチは自重した。


翌朝、真悟たち三人は、朝からテレビニュースを観ながら部屋を出ず、
情勢を見守っていた。
午後3時過ぎになって、ジョディから真悟に電話が入った。
阿笠博士は、うまく計画通りにことを運んでくれた。灰原の身代わりに
なった少女と、付き添いのコナンも無事、成田を飛び立った。
しかし、今日公開する予定だったニュース報道は明日に延期にした
という。
理由は、その子達が目的地に着くまでに報道してしまうと、飛行機に
黒の組織の構成員が乗り合わせていることも考えられるし、到着の
空港で待ち伏せされ、二人が本当に灰原とコナンなのかを確認されたり、
まかり間違えば、暗殺されかねないからだという。
そのことに気付いた今回の作戦チームメンバーの一人が、報道は、早く
とも二人が成田を出てから10時間以上を経過してからにすべきだと
進言し、皆、その提案に賛同したからだという。
成田からサンフランシスコまで約7時間。
(上空を流れる強い偏西風の影響で、成田→サンフランシスコは、約
7時間で行けるが、サンフランシスコ→成田は、8時間程度かかる)
悪天候や何らかのトラブルで遅れることも考慮し、更に効果の高い
報道時間帯を選択した結果、公開報道は明朝6時から9時の間に、
各局で放送されることになったという。

ジョディは、大事な用件をもうひとつ伝えて来た。
美薗と真悟が成り代わる人物のプロファイルを今晩届けるので、
明日中には、自分のものにしておいて欲しいということだった。
更に、明後日には現在投宿している旅館を引き払い、大阪でFBIが
拠点のひとつにしているビジネスホテルに移って欲しいと言う。
日本を出るまでの間は、そこで、新しい人物としてのレクチャーや
オーストラリアで仕事をするための基礎知識を習得してもらうと。
現在、真悟と美薗が持っている携帯電話は、その時点で没収させて
貰うとも言ってきた。

真「って、言うことだ。母さんはどうする?」

有「それじゃ、そろそろ私の出番は終わりのようね。
  明日、私は日本を出て、優作のいるイギリスに行くわ。
  明日、あなたたちが成り代わる人物のプロファイルを見て、
  必要なものは買い揃えなさい。
  今日渡したお金じゃ足りないかも知れないわね。
  新一名義の口座は今日、全て閉鎖したから、引き落とし
  できなくなるし、あなたが持っているキャッシングカードも
  使えなくなるから」

有子はそう言って、真悟に30万円、美薗に20万円渡した。
美薗は、そんな、私まで貰うわけにはいきませんと固辞したが、

有「渡航費用はFBIで用意してくれるでしょうけれど、
  新一としてもコナン君や真悟としても、志保ちゃんも哀ちゃんや
  美薗ちゃんとしての存在も、痕跡を全て消さなくちゃいけない。
  取り敢えず、物入りの時は現金しか頼れないから持っていなさい。
  私も、今後は事件が全て決着するまでは近づけなくなると思う
  から、力を合わせて頑張るのよ。
  特に、真悟。美薗ちゃんを宜しく頼むわよ」

いよいよ、事態は具体的に動き始めた。

服部からメールが入った。

服『昨日、和葉に告白した。
  ありがとな。工藤のお陰や』

真『ちゃんと、抱いてやったか?』

服『抱いたった。和葉も満足したようや』

真『ところで、この作者は、俺たちがオーストラに出国するまでを
  盆休み前に投下したかったらしい』


服『急ぐことあらへんやろ』

真『蘭の動向と、秘めた強い思いを書いておきたかったようだ』

服『ああ・・・。コメ蘭に気にする人がおったな』

真『作者の都合っちゅうか、盆休み前の日程がハードで、
  無理だったんだと。
  長くても【その十】までには完結させるって言ってたから、
  あと2話か3話で終わるんじゃねえか』

服『それくらいが適当やろな』

真『盆休み中は、なんかボランティア活動したいとか言ってるから、
  盆明けから残りを投下しても、今月中に仕上がるかどうかだろ』

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